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( ^ω^)紙上の夢のようです
1
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:18:51 ID:xsJy4/yE0
成人式にも同窓会にもスカジャンを着てきたのを見て、相変わらず、少し浮いている人だなとは思ったのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「内藤さん。こんな同窓会、抜け出しません?」
ただ、これまた相変わらず、可愛らしい顔立ちと綺麗な声をしている人でもあって。
だから映画か何かみたいな誘い文句につい頷いてしまった。
正直浮かれていた。
そんなわけで内藤ホライゾンは、ヴィップ小学校4年1組の同窓会を30分と経たずに美女と抜け出し、
ξ゚⊿゚)ξ「いい儲け話があるんすけど」
近場のファミレスで、絶対に良くない話の切り出し方をされた。
ふざけやがって、と思った。
.
2
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:19:42 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)紙上の夢のようです
【一富士】
.
3
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:22:05 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「照本さんは見た目こそヤンチャっぽいけど、
悪事には手を染めないタイプだと思ってたから残念だお」
ξ;゚⊿゚)ξ「だから違うんすよお、マジ……ちゃんと説明しますんで。もっかい座って」
ファミレスの端っこの席、の前の通路で。
内藤とスカジャン女、もとい照本ツンは、帰る、待って、のやり取りをすでに5分は続けていた。
成人式──成年引き下げの都合で、ここヴィップ市では「二十歳の集い」に名前が変わったが──には、ほとんど義務感のみで参加した。
内藤にとっての本番は、午後から開かれる同窓会の方だったのだ。
それを放ってここまでついてきたというのに、この仕打ち。
ξ;゚⊿゚)ξ「注文したドリンクバー、私が奢りますし。食べたいものあればそれも!」
こちらのスーツに気をつかっているのか、腕を掴むツンの力はそこまで強くない。
内藤がそれを振り切れずにいるのは、彼女の声が本気の焦りに揺れているからだ。
それにやはり前言どおり、ツンは闇バイトだの何だのに手を出さない人だと信じたい気持ちもあった。
ただ本当にソッチの話であった場合が怖いので、一応として拒否の姿勢を示しているわけである。
だから事情を説明したいのならさっさと言ってほしい。それによって去るか残るか決めるから。
4
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:23:27 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「昔の照本さんは、困ってる子がいればそれとなく助けたり、進んで先生の手伝いをしたり、すごくいい人だったおね……」
ξ;゚⊿゚)ξ「情に訴えるための助走つけてません!? 違う、だから──」
この人でも割と焦るものなんだな、と頭の片隅で考える。
もっと淡々と、そして飄々としているイメージがあった。
そのとき、特徴的な音が近付いてきたのでツンの背後へ目をやった。
これが聞こえたときは、自身や他人の立ち位置をいつも以上に気にするべきだからだ。
要は「通行の妨げ」になってはいけない。
(*゚ー゚)「ごめんなさいね、お待たせして」
──予想どおり、音の正体は車椅子だった。
50代ほどの女性が、車椅子を押しながら頭を下げる。
振り返ったツンがほっと息をついた。
5
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:24:31 ID:xsJy4/yE0
固い床とゴムが擦れる音。タイヤの表面に付着した砂や床の塵がすり潰される音。車輪や座面の揺れ、軋み。その他。
女性が一歩進むごとにそれらの情報が内藤の耳に入り込んでくる。
普通の人間にとっては、よほど静かな場所で耳を澄ませなければ気付かない程度のものだろう。
(,,-Д-)
車椅子には女性と同じ年代であろう男性が座っていた。
目を閉じて眠っている。──覚えのある顔。
ξ;゚⊿゚)ξ「いや、こっちこそすんません、予定より早く呼び出しちゃったもんだから。
内藤さん、こちら羽生先生と、奥様のしぃさん」
( ^ω^)「……だおね」
羽生ギコ。
小学3年生から4年生までの2年間、内藤たちのクラスを受け持っていた担任教師だ。
しぃ、と紹介された女性が席に着き、その横に車椅子をぴったりつける。
その対面にツンと、彼女に押し込まれる形で内藤が座った。
6
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:25:25 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「えと……内藤ですお。ギコ先生には大変お世話に……」
(*゚ー゚)「いいえ、そんな。……今日は成人式だったのよね。
この人もきっと、皆さんの顔を見たかったと思うわ」
同窓会に参加するはずだったギコが急病で来られなくなった、というのは幹事から聞いていた。
それを残念に思っていたが、こんな形で会うことになるとは。
逃げるつもりはすっかり失せた。
そもそも内藤にとって本日のメインイベントこそが、彼との再会だったのだ。
.
7
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:26:14 ID:xsJy4/yE0
◇
(,,゚Д゚)『また悪口でも聞こえちまったのか?』
( ;ω;)" コクン
小学3年生までの内藤ホライゾンは、よく泣く子だった。
校庭の隅っこや人通りの少ない階段で丸まって泣いているのを、何度もギコが見付けてくれたものだ。
(,,゚Д゚)『耳がいいのも困りもんだな。今日は誰への悪口だった?』
( ;ω;)『つ、ツンちゃん……』
(;,゚Д゚)『また自分以外のことで泣いてるなあ、お前は』
優しい奴だなと頭を撫でられる。
褒められたのは嬉しいけれど、後ろめたさもあった。
8
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:27:48 ID:xsJy4/yE0
(,,゚Д゚)『さっきの、聞こえてたのか。あいつらは俺が𠮟っといたからな。
ツンも近くにいたから聞いちまったみたいだけど、
あいつは気にしてなかったな、いつもどおり』
なんとか内藤を元気づけようとしてくれている。そういう声だ。
たぶん嘘もついていない。
それだけに、ますます申し訳ない気持ちが湧いてくる。
涙の理由を正確に言い表すならば「悪意を持った人の声は、とげとげべとべとしていて怖いから」だ。
もちろん、それを向けられた人が可哀想だという気持ちはあるが、それよりも自分自身の不快感の方が強い。
そんな身勝手な自分を、優しいだなんて言って一生懸命慰めてくれる。
勘違いさせて、先生の優しさこそを消費していることにまた少し悲しくなる。
いつもこうだ。
さすがに何度も繰り返していては「このままでは良くない」という気も起こる。
だから徐々にではあるものの、自分なりに不安や不快感の処理の仕方を学んでいって、4年生の途中からはすっかり泣き虫ではなくなっていた。
9
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:29:08 ID:xsJy4/yE0
ギコによる直接的でドラマチックな救済があったわけではない。
でも、常に生徒を大切にして、こんな面倒な子供にもずっと寄り添ってくれていた彼の存在が、内藤を生きやすくさせてくれたのは確かだ。
そこに大きな恩を感じている。
ξ゚⊿゚)ξ
そして実はツンに対してもその辺りの恩がある。
彼女は少しばかり変わった雰囲気を振りまいているせいで、一部の生徒から陰口を叩かれたり嫌がらせを受けたりしがちで。
しかしそれを気にも留めず、ずっと彼女は彼女のままでいつづけた。
その平静ぶりが格好良くて、憧れて、せめて表面上だけでも彼女のように沈着であろうと努力できたのだ。
とはいえクラスメートだった2年間に話したことなど、数える程度の間柄。
とても本人にはそんなこと言えやしない。
◇
10
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:30:22 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「──失礼ですが、ギコ先生、何かご病気で……?」
一旦ドリンクバーから烏龍茶を持ってきた内藤は、おずおずとしぃに訊ねた。
しぃが困ったように眉を寄せる。彼女に代わってツンが答えた。
ξ゚⊿゚)ξ「病気じゃねえんす。ただ、なかなか睡眠から覚めなくなってるだけ」
( ^ω^)「それは……病気と違うのかお」
ξ゚⊿゚)ξ「違います。──実はこれが『儲け話』と繋がってくるんすよ。
ややこしいんで、順番に説明しますわ」
( ^ω^)「はあ。じゃあ頼むお」
アップルソーダを一口飲んで、ツンはまず初めに、一つの質問を寄越した。
11
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:32:57 ID:tQX2DiMg0
支援
12
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:32:59 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「内藤さんの夢とかって訊いても?」
( ^ω^)「夢……『1/2成人式』の?」
4年生のときにそういう行事があった。
保護者を呼んで手紙を送ったり歌ったり校長の話を聞いたり、まあ何の変哲もないイベント。
だが内藤たちの4年1組では、それとは別にもう一つの企画が立ち上がった。
「二十歳までに叶えたい夢」。
それを一人ひとりが紙に書き、誰にも見せずに担任のギコへ預ける。
10年後、その夢を達成できたか否か、みんなで結果発表しよう──といったものだ。
発表は今日の同窓会で行われる予定だった。
本日の流れから、なんとなくそのことを思い出したのでそう言ったのだが、ツンは面食らった様子で首を振った。
ξ゚⊿゚)ξ「え……や。いや、そっちじゃなくて。
いや別にそっちでもいいんすけど、まあ今の話でもいいですし、とにかく何か夢あります?」
( ^ω^)「特には」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そすか。ま、ま、それはそれで。
ともかく、その夢ってやつ。ありますよね。いや内藤さんはないのか」
アップルソーダをもう一口。内藤も烏龍茶を飲む。
もしかしたら、話とかはあまり得意な方じゃないのかもしれないな。
ツンに対してそんなことを思う。そもそも切り出しからして最悪だったし。
13
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:33:52 ID:xsJy4/yE0
目の前の話し声にも店内の賑やかさにも構わず眠り続けるギコを、ツンの手が示す。
ξ゚⊿゚)ξ「羽生先生は、夢の夢を見てるんすよ」
( ^ω^)「何それ?」
ξ゚⊿゚)ξ「おっけ、説明します。しぃさん、例のブツを」
何がオーケーなのかは知らないが、ツンに何かを頼まれたしぃがギコの懐へと手を伸ばした。
そこから折りたたまれた紙を取り出し、そっとテーブルに置く。
14
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:35:18 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「あざす。さ、内藤さん、これ」
と言いながらツンが開いたそれは、一般的なA4サイズのコピー用紙だった。
七人の男女が乗る船が描かれている。帆には「宝」の文字も。
ξ゚⊿゚)ξ「最近、各地でこんな絵が出回ってんですよ」
( ^ω^)「これって、宝船だおね。七福神の」
ξ゚⊿゚)ξ「です」
デフォルメされた絵柄。カラフルさもあり、全体的に可愛らしい絵だ。
船の横には以下の文字が記されている。
──なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな
長き夜の 遠の眠りの みな目覚め 波乗り船の 音の良きかな。
漢字にするとこうだ。
宝船の絵によく添えられるもので、いわゆる回文となっている。
15
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:37:42 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「宝船の絵を枕の下に敷いて寝ると、いい初夢を見られるとかなんとかって……
大昔からあるやつじゃないかお、最近出回ってるも何も」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、今ここにある『これ』、この絵が問題なんす」
ξ゚⊿゚)ξ「少し前からネットで流行ってる絵でして。
これを印刷して肌身離さず持ってると、よく眠れたりいい夢が見られたりするようになるらしいっす」
それだけ聞けば、ネットでよく見る都市伝説の類だ。
特定の画像をスマホの壁紙にすると運気が上がるとか何とかいう。
(*゚ー゚)「この人も、先月の頭だったかしら、寝つきが良くないからって試しに印刷してたの。
生徒さんがこの絵の話をしてるのを聞いたんですって」
なるほどと頷きながら、内藤は卓上から絵を拾い上げた。
SNSは程々に使っているが、これは初めて見た。
もしかしたら一度くらいは見かけているかもしれないが、だとしても、特に睡眠に悩んでいないのでスルーしただろう。
( ^ω^)「それで、この絵がどうしたんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「いわくつきなんすよ、これ。呪われてるっつーか」
速やかに絵をテーブルに戻した。
16
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:38:35 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「毎晩これを傍に置いた状態で寝ると、だんだん夢を見る時間が長くなる。
やがてはずっと夢を見続けて、起きられなくなって、衰弱して……。
そういう呪いじみたものが、この絵には込められてます」
ξ゚⊿゚)ξ「どこが出どころなのか、誰が作ったものかも不明。
不眠症の人や悪夢障害の人が集まる掲示板で話題になって一気に広まったけど、存在自体はその前から確認されてるらしいすね」
内藤はじっとツンを見つめたまま、彼女の声に耳をこらした。
──まいった。本気で言っている。
狂信的に、まるで当然のように喋ってくれていれば、ただ「かぶれて」しまったのだろうと思えた。
しかしツンの声には、真実を話すまっすぐさと同時に、信じてもらえるだろうかという不安も含まれている。
どう聞いても、正気のそれだ。
17
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:43:28 ID:xsJy4/yE0
内藤は考え込む。烏龍茶を二口、もう一口。
( ^ω^)「なんで起きられなくなるんだお」
真偽を問う時間は無駄だろう。
そう考えて掘り下げを優先させると、ツンがあからさまに安堵した。
ξ゚⊿゚)ξ「人の夢までもらうようになっちゃうんすよ。
それをずっと見させられて──なんだろな、『起きてる暇がない』って感じすかね?」
ξ゚⊿゚)ξ「で、ここが大事で!
見させられるのはただの夢じゃないんです。なんつーか将来の夢とか、あの」
( ^ω^)「願望という意味での『夢』?」
ξ゚⊿゚)ξ「それそれそれ。
他人の願い事を勝手に見させられちゃうんす、夢の中で。ずっと」
( ^ω^)「うむむ。……一応確認なんですが、本当にご病気とかではないんですかお?」
(*゚ー゚)「ええ。印刷してすぐの頃は、普通にいい夢を見てすっきり目覚められてたみたいなんだけどね。
でもどんどん起きてられる時間が短くなって、年の暮れにはもう今みたいになって……」
病院で診てもらっても体には何ら異常がなく、医者も大層困っていたらしい。
呪いの仕業であるというのなら、却ってその方が納得がいく。
18
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:44:45 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「そんなことが起こるんじゃ、世間で騒ぎになりそうなもんだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「全員に効くもんでもなくて。
波長とか周囲の環境とかが噛み合っちゃうと、羽生先生みたいになっちゃうわけです。
ほとんどの人には大した影響ないんすよ」
( ^ω^)「うーん……絵が原因なら、この絵を破ったり燃やしたりするのは?」
ξ゚⊿゚)ξ「今言ったように、絵と羽生先生がえげつなく噛み合ってる状態です。
へたに絵に手を出したら、先生も巻き添え食う可能性がある。
同じ理由で先生から絵を引き離すのも怖いんで、さっきみたいに持っといてもらってんです」
ツンが絵をたたみ直し、しぃへと返した。
引き離せないから絵を彼の傍に置くしかない。
傍に置くから、ずっと他人の夢を見させられる。
( ^ω^)「詰みでは?」
ξ゚⊿゚)ξ「ではないんすね、これが」
ツンの声に力がこもった。
おそらく、ここが一番の本題。
19
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:45:30 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「羽生先生が見させられてる夢の、本来の持ち主の『夢』を叶えてあげれば、
もうそれ以上先生が夢を見ることはなくなりますから起きられるはずです」
( ^ω^)「や、ややこしい〜〜〜」
夢だの夢だの夢だの、もうちょっと整理してほしい。
つまりだ。
現在、ギコは呪いによって、他人の「願い事」を反映した夢を見せられ続けている。
その元となっている「願い事」を解消させてやれば、ギコは目を覚ます。
どのみちややこしい事態だ。
20
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:47:18 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「で、その手伝いを内藤さんに頼みたいわけです」
( ^ω^)「そういうことだろうとは思ったけど、なんで僕?」
ξ゚⊿゚)ξ「内藤さんは羽生先生に特に懐いてたんで、先生のためなら引き受けてくれるかもってのと──
内藤さんの『耳』を借りたくて」
( ^ω^)「……そんなことまで覚えてたのかお」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃまあ」
内藤の聴覚は、人よりだいぶ鋭い方だ。
たとえば聴覚過敏のような、特定の音などが大きく聞こえて苦痛になるというものではない。
ただ単に耳がすこぶるいい。それだけ。
だから賑やかな店内で車椅子の音もすぐに聞き取れるし、人の声色とそこに乗っかった気持ちも──ある程度なら──聞き分けられる。
もちろん逐一分析せず、適度に聞き流す術もとっくの昔に身につけた。
なので特段、苦労はしていないつもりだ。
ちょっとした特技程度の認識で、別にそれを活かした仕事に就こうという使命感もないため、普通の大学の普通の教育学部に通っている。
21
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:49:44 ID:xsJy4/yE0
(*゚ー゚)「あの……ごめんなさいね。
内藤君もてっきり照本さんと同じ『お仕事』をしてるから呼ばれたのかと思ってたけど、その様子だと初耳だったかしら」
ξ゚⊿゚)ξ「しぃさんが来る前に軽く説明はするつもりだったんすけど、聞いてくれなくて……」
( ^ω^)「聞く耳を持たせないような話し方をしたのは君だお、照本さん」
軽く文句を言ってから、流しかけた言葉を引っ張り戻す。
( ^ω^)「お仕事って?」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ、まさにこういうのっすよ。
オカルトな事件が起きたら、お国の偉いとこから依頼もらって、解決して、収入を得る感じの。
父がそういう仕事してたんで、流れで継いだだけなんすけど」
「お国の偉いとこ」から依頼を受ける人間は全国各地にいるらしい。
最近起きている宝船の呪いについても各所で対応に当たっているそうだ。
そんな中、また新たな被害者が出たということでツンが派遣されてきてみれば、それがかつての恩師だった。
厄介な事件に対して人手が足りていないため、手伝ってくれる者を探し、同級生に目をつけた──
これが今回の経緯。
22
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:50:27 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「……儲け話って、そういうことね」
ξ゚⊿゚)ξ「案件にもよるけど、基本かなりもらえるんすよ。まあまあ危ないし働き手も少ない仕事なんで。
ま、だから父なんかは業務中に死んじゃったんすけど」
──ここで急に、10年越しに一つ、腑に落ちた。
4年生の1月下旬。件の1/2成人式が行われた直後、ツンは突然転校してしまったのだ。
理由の説明はなく、ただ身内に不幸があったという噂だけはちらほら囁かれていた。
ひょっとして、あのときに?
ξ゚⊿゚)ξ「あっ、今回のはそんな危険なもんじゃないはずなんで安心してくださいね。
……で、あの、どうでしょう。引き受けてもらえたりは……」
下から覗き込むようにツンが顔を近付けてくる。
わずかに身をそらし、内藤はため息をついた。
( ^ω^)「ここまで聞かされて、断れるほど心臓強くないお」
ξ*゚⊿゚)ξ「おお! あざっすあざす、さすが内藤さん!」
能天気な声でツンが何度も礼を言う。
対面のしぃも深々と頭を下げた。
23
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:51:37 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「なにが『さすが』なんだお。まったく、適当に。
──で? ギコ先生は、誰のどんな夢を見させられてるんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「それがまだ分かんないんすよ。
絵を持っている間に接触した誰かではあるはずなんすけど」
( ^ω^)「なら、しぃさんとか」
ξ゚⊿゚)ξ「もちろん可能性はゼロじゃないすけど──」
(*゚ -゚)「ごめんなさい。最近ずっと考えてはいるんだけど、身に覚えがなくて」
ξ゚⊿゚)ξ「とのことで。
他の被害者たちの例から考えて、接触っつっても、至近距離で一回会話をした程度でも充分なんですって。
重要なのは関わった頻度や濃度より、その夢──願望の大きさ」
そこまで大きな願い事はない、というのがしぃの回答だ。
ξ゚⊿゚)ξ「なんで、まずは対象者を特定しないと」
( ^ω^)「難しいことを言うお」
ξ゚⊿゚)ξ「だから手伝ってほしいってんでしょうよ」
内藤もツンも、この10年ほどはろくにギコと会っていない。
せいぜいが小学校卒業後に二、三度ほど年賀状のやり取りをしたくらい。
助手として充分に働けるかは正直なところだいぶ怪しい。
24
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:52:47 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「手がかりは?」
ξ゚⊿゚)ξ「あります。まず一つ、寝言」
寝言、と鸚鵡返しにしながら内藤はギコを見る。
(,,-Д-)
ここに来てからずっと、静かな寝息が聞こえるだけだ。
ξ゚⊿゚)ξ「しぃさんが言うには、たまーに喋るんだそうで。一言だけ、同じことばかり。
私はまだ聞けてねえんすけど」
( ^ω^)「どんな寝言ですかお?」
(*゚ー゚)「それが、声も小さいし、はっきり喋るわけじゃないから、たぶんそうだろうってくらいなんだけど……」
(*゚ー゚)「一富士二鷹三茄子──って」
富士、鷹、茄子。
初夢に出てくると縁起がいいと言われているもの。
25
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:53:31 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「それは、なんというか……いい夢見てそうですお」
ξ゚⊿゚)ξ「先生は今ヴィップ病院で面倒見てもらってんですけど、ベッドの周りに録音機とカメラを置かせてもらってます。
運よく寝言を記録できたら、内藤さんの耳でも確認してもらいますんでよろしく」
( ^ω^)「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「手がかり二つ目。
先週、私が先生のもとへ派遣されてすぐの頃、先生が目を覚ましたんです。
つっても半分寝てたようなもんで──」
.
26
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:54:09 ID:xsJy4/yE0
◇
(,,-Д゚)『……あ……?』
ξ゚⊿゚)ξ『羽生先生。お久しぶりっす。おはようございます』
(,,-Д゚)『あ……』
(,,-Д゚)『……おまえ……ツン……おおきくなったなあ……』
ξ゚⊿゚)ξ『……すぐ思い出してもらえたのは嬉しいすけど、置いときますね。
先生、何の夢を見てました? もしくは誰が出てましたか』
(,,-Д-)『……』
ξ;゚⊿゚)ξ『あ……待って、先生!』
◇
27
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:56:25 ID:xsJy4/yE0
──目が覚めたとて、またすぐに寝てしまう。
本人から詳細を聞き出せるかは時間との勝負。
これまで共有されてきた他所での調査記録から、それは分かっていたのだとツンは言う。
ξ゚⊿゚)ξ「だから、色々用意はしておいたんす。
身近な人たちの写真とか、言葉より絵の方が説明しやすい場合に備えての紙とか。
とにかく意思表示に使えそうなものは一通り」
それでもギコは、何も答えぬままに再び寝入りそうになっていた。
ツンは慌てて、せめてもの刺激として彼の手にペンを握らせたらしい。
すると彼はわずかに目を開き──
ξ゚⊿゚)ξ「なんとかこれだけ書いて、すぐに寝ちゃいました」
と、ツンがテーブルの上にメモ用紙を置いた。
( ^ω^)「……『元旦』?」
そう書いてある、のだと思う。
眠気に引っ張られてよれよれだが、形はなんとなく分かる。
28
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:57:06 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「一富士二鷹三茄子に元旦。いかにも関連性がありますね」
( ^ω^)「ううん……?」
──そうだろうか?
元旦といえば、元日、1月1日の午前中のことだ。
( ^ω^)「僕の中ではあまり繋がらないお」
内藤が首を傾げるのを見て、ツンは「あー」と小刻みに頷いた。
細かいとこ気にしやがって、と言いたげな目だ。被害妄想かもしれない。
ξ゚⊿゚)ξ「初夢って、一般的には1月1日の夜から2日の朝にかけて見る夢を指すんですっけ? でも諸説あるらしいすよ。
私は年越してから最初に寝たときに見た夢を初夢認定してます」
だから別に、この手がかりもおかしなものではないという主張だろう。
しかし違うのだ。内藤が気になっているのは、一般的な認識とかの話ではなく。
29
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:58:27 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「小学生の頃にギコ先生から宝船とか初夢の話を聞いたことがあるお。
そのときに先生が言ったんだお、
『1月2日の夜に宝船の絵を枕の下に敷くと、いい初夢が見られる』って」
少なくともギコにとっては、2日の夜から翌朝までが「初夢」のタイミングであるはずだ。
(*゚ー゚)「そうねえ。たしかに3日の朝に夢の内容を話すことが多かったわ」
ξ゚⊿゚)ξ「でも現に、こうして元旦って書いてますし」
3人で首を捻る。
分からない。
次のヒントが解決してくれるかもと期待してツンを見ると、彼女は両手を軽く広げて肩を竦めた。
ξ゚⊿゚)ξ「手がかりは以上っす」
( ^ω^)「二つだけかお……」
30
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 20:59:12 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「んで、これらをふまえてなお、しぃさんにはさっぱり心当たりがなかった。
だから、ひとまず他の近しい人たちを当たってみようと思います」
( ^ω^)「近しい人というと?」
ξ゚⊿゚)ξ「明日、羽生先生の職場に行ってみましょ」
.
31
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:00:41 ID:xsJy4/yE0
◇
3年生の3学期、内藤がまだ泣き虫を脱せていなかった頃だ。
今期の係を決める際、数人の生徒に推されて掲示係になった男子がいた。
掲示係は何かと仕事が多くて面倒だったので、気の弱い彼に押しつけようという流れがあったのだと思う。
しかし彼はクラスの中でもかなり小柄で、高い所へ掲示物を貼りつけることもある係を務めるには少々不安があった。
(,,゚Д゚)『あー……ショボン、掲示係でいいか?』
確認をとるギコの声は悩ましそうだった。
押しつけられているのを察知したのもあるだろうし、やはり体格の面もある。
しかしそこを指摘すれば本人のプライドを傷付けかねない。
内藤がすでに別の係を担当していたのでなければ、代わって立候補したのに。
いや、そんなの、後から記憶に付け足した言い訳かもしれない。
果たして当時の内藤にそんな勇気があったかどうか。
32
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:02:08 ID:xsJy4/yE0
男子は、はい、と消え入りそうな声で頷いた。
続けて、はい、と別の声が上がった。
しっかり芯があって、子供心に、綺麗だなと常々感じていた声だった。
ξ゚⊿゚)ξ『女子の方の係、やります』
挙手しながらツンが言う。
当時は──あくまで当時は──女子どころか、クラスの中でも背が高い方だったのだ。
係決めが始まる前の休み時間、内藤は、ツンが級友に向けた言葉を聞いている。
「本とか選ぶの楽しそうだし、図書係やりたいかもです、できれば」。
彼女が手を挙げたのは、図書係を決めるよりずっと前だった。
.
33
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:04:07 ID:xsJy4/yE0
その日の放課後。
友達と帰る準備をする傍ら、内藤はこんな会話も聞いた。
(´・ω・`)『ツンさんが立候補してくれて良かった。僕、チビだからさ……あはは……』
ξ゚⊿゚)ξ『……』
ξ゚⊿゚)ξ『私、絵も字もすげー下手なんすよ』
(´・ω・`)『え?』
ξ゚⊿゚)ξ『八木下君はどっちも超上手でしょ。
お楽しみ会のときの飾り付け、ヒサンなことにならなそうで良かったです』
(*´・ω・`)『……あはは! なあに、それ。もう……』
照本ツンに関する思い出は、こういうものだ。
◇
34
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:04:17 ID:z087wYx60
おもしろいー!
支援
35
:
>>33修正
:2025/12/31(水) 21:05:23 ID:xsJy4/yE0
その日の放課後。
友達と帰る準備をする傍ら、内藤はこんな会話も聞いた。
(´・ω・`)『ツンさんが立候補してくれて良かった。僕、チビだからさ……あはは……』
ξ゚⊿゚)ξ『……』
ξ゚⊿゚)ξ『私、絵も字もすげー下手なんすよ』
(´・ω・`)『え?』
ξ゚⊿゚)ξ『八木下君はどっちも超上手でしょ。
お楽しみ会のときの飾り付け、ヒサンなことにならなそうで良かったです』
(*´・ω・`)『……あはは! なあに、それ。もう……』
照本ツンに関する思い出は、こういうものばかりだ。
◇
36
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:06:21 ID:xsJy4/yE0
『途中でいなくなったろ!』
『まさか照本さんと一緒? 今も?』
『そういう感じ?』
『あのあとめちゃくちゃ盛り上がったんだぞ』
『返事せえ』
( ^ω^)(……めんどくさくて一晩置いといたら、なんか余計億劫になっちゃった)
翌日、駅前。
友人──同窓会の幹事の一人でもある──からのメッセージ数件を眺め、内藤は当たり障りのない返事を思考し、やはり面倒になってそのままアプリを閉じた。
37
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:07:41 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「あっ、内藤さん! こんちは」
ちょうどツンがやって来る。昨日約束した時間ぴったり。
今日の彼女は見知らぬ男性を連れていた。
(´・_ゝ・`)「どうも」
盛岡デミタス、と彼は名乗った。
年頃は内藤たちより10歳上かそこらといった具合で、品のいいスーツとコートをまとっている。
内藤もツンに言われて昨日のスーツを着てきたが、見劣りしてしまいそうで、並ぶのが少し恥ずかしい。
ξ゚⊿゚)ξ「盛岡さんは『お偉いさん』──の部下ってとこすかね。
サポート兼お目付け役で、私らの仕事ぶりを上に報告する人でもあります。
心証を損ねると報酬が減らされかねないんで、内藤さん気を付けて」
38
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:08:43 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「分かったお。……照本さんの助手を任されました、内藤です。よろしくお願いしますお」
(´・_ゝ・`)「よろしくお願いします。では二人とも、これを」
挨拶もそこそこに、デミタスが手帳のようなものを渡してくる。
黒くて縦に二つ折り。これは──
( ^ω^)「警察手帳?」
(´・_ゝ・`)「っぽく見えるように作ったものです。
詳しい人にまじまじ見られたらバレますからお気を付けて」
開いてみれば、どこから用意したのやら、しっかり内藤の写真や名前などが記載されている。
39
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:10:19 ID:xsJy4/yE0
(´・_ゝ・`)「羽生氏はこの近くのシタラバ小学校で働いていますが、
あのとおりの様子ですから、先月の途中からは体調不良として休みをとっています」
(´・_ゝ・`)「その『体調不良』の原因に事件性があると判明した、
我々はそれを捜査しに来た警察だ……という体で学校には話を通しました。
なので、そのつもりで調査に臨んでください」
( ^ω^)「あながち間違ってはいないですおね、身分以外は」
ξ゚⊿゚)ξ「あざす。んじゃ、さっそく行きましょーか」
手帳をスカジャンのポケットにしまって、早速ツンが歩き出す。
彼女の服装も昨日とほぼ同じだ。スカジャンにショートパンツ。
成人式の会場では色とりどりの振袖が行き来しており、それだけに彼女の出で立ちが目立って見えたのを思い出す。
彼女を指してひそひそ言い合う人間もいたし、仲の良かった同級生などは正面から笑ったり呆れたりもしていた。
40
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:11:49 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「照本さん、寒くないのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「や、スカジャンって薄いイメージありますよね。でも、これはあったかいやつなんすよ。インナーも」
( ^ω^)「いや上はともかく、脚」
ξ゚⊿゚)ξ「タイツ履いてるんで」
それだけでどうにかなる気温ではない気もするが。
しかも肉付きが薄いというか、見るからに脚がほっそりしていて、余計寒々しい。
だがツン本人は涼しい顔で──状況的には「暖かい顔」と言うべきだろうか──この寒空の下を堂々と歩いている。
小学生の頃もこんな風だった。
言動について何か指摘されても、それが他者に迷惑がかからない限りは意に介さない。
内藤はそういうのを、格好いいなあ、と思ってしまう。昔も今も。
.
41
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:12:52 ID:xsJy4/yE0
──シタラバ小学校。
同じ市内にはあるが、内藤たちが通っていたヴィップ小とは違う学校だ。
もう冬休みは終わっているものの、午後4時を回って、校内には教職員しか残っていないようだった。
(;´∀`)「いやあ、羽生先生のことは職員も生徒もみな心配していたんですモナ。
人望の厚い方でしたから」
(;´∀`)「それがまさか、その、事件に巻き込まれていたとは……」
出迎えた教員は困り切った様子でそう言う。
大前モナー。シタラバ小の教頭をやっているという壮年の男性。
初めは内藤とツンの若さ、ツンの服装にいささか怪訝な目をしたが、手帳を見せるとすぐに腰が低くなった。
42
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:13:45 ID:xsJy4/yE0
(;´∀`)「それで事件というのは、どのような?」
ξ゚⊿゚)ξ「諸事情で言っちゃいけねえんす」
(;´∀`)「は、はあ……。あ、こちらが職員室です。どうぞ」
案内された部屋へ足を踏み入れる。
コーヒーの匂い。ああ職員室だ、と無性に懐かしくなった。
プリンターの動作音、さらさらしたテスト用紙の上を赤ペンが滑る音、ノートパソコンのパンタグラフキーを叩く音。
すぐ近くの席でプリントのチェックをしていた女性教諭に、モナーが声をかけた。
( ´∀`)「渡辺先生、お茶をお願いしたいモナ」
从'ー'从「あ、は〜い。警察の方々ですね」
ξ゚⊿゚)ξ「ややや、大丈夫っす、大丈夫っす」
ほんとにいいんで、とツンが重ねて断ると、渡辺と呼ばれた教諭は上げかけた腰を遠慮気味に下ろした。
43
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:14:50 ID:xsJy4/yE0
彼女の頭を見ながら、デミタスが内藤とツンにだけ聞こえるように呟く。
(´・_ゝ・`)「綺麗な富士額ですね」
( ^ω^)「ああ、たしかに」
渡辺のふんわりした髪の生え際は、綺麗に山の形をしている。
よく見ると内藤たちと大して歳は変わらなそうだが、形のいい額が彼女の面立ちを品よく見せて、大人びて感じさせた。
ξ゚⊿゚)ξ「富士」
それだとばかりにデミタスを指差したツンは、歩き出そうとするモナーを制し、渡辺に話しかけた。
ξ゚⊿゚)ξ「渡辺先生、ちょっと訊きたいんすけど」
从'ー'从「は〜い」
ξ゚⊿゚)ξ「鷹とか茄子に思い入れありますか?」
( ^ω^)「照本さん、話の流れというものが」
渡辺は左右へ順番に首を傾げた。そりゃそうなる。
从'ー'从「いいえ〜、特には?」
ξ゚⊿゚)ξ「そっすか……」
ツンへ向けられるデミタスの視線が少しばかり冷ややかな気がする。
大丈夫だろうか、報酬。
44
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:16:31 ID:xsJy4/yE0
今度こそモナーが歩き出す。
5年生の担当教員が集まる席だと言って、そのうちの一つ、無人の机の前で止まった。
やや雑然としていて、机上にはノートやファイルが積みあがっている。
( ´∀`)「ここが羽生先生の席モナ。
必要であれば、ファイル類は持っていっていただいても構いませんが……」
ξ゚⊿゚)ξ「んじゃお言葉に甘えますか。盛岡さん、お願いします」
(´・_ゝ・`)「はいはい……」
デミタスが鞄から折り畳みのボストンバッグを取り出し、机上のものをしまっていく。
──ふと、隣の席に人がいるのに、何の作業音もしないことに気付いて、内藤はそちらへ顔を向けた。
('、`*川
そこに座る女性教諭は、きょとんとした顔で内藤たちを見ていた。
見た感じ、渡辺と同じくらいの歳か、もう少し上。
内藤の視線を追ったモナーがその人へ言った。
45
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:17:12 ID:xsJy4/yE0
( ´∀`)「さっき言ってた、警察の方々モナ。ほら、羽生先生の件で」
('、`*川「けーさつ。はあ……へえ……?」
彼女の首から下がっている名札には「伊藤」とある。
それを確認し、ツンが会釈した。
ξ゚⊿゚)ξ「照本っす。はじめまして、い」
('、`*川「待って、私のことは下の名前で呼んで。嫌じゃなければだけど。
ペニサスっていいます」
ξ゚⊿゚)ξ「ペニサス先生」
('、`*川「順応早い。ありがとう」
やや驚いた様子の伊藤、もといペニサスが小さく笑う。
46
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:18:50 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「理由とか訊いても?」
('、`*川「うん。私バツイチでさ。別れた夫とは幼稚園からの幼馴染だったのね。
だからずーっと下の名前で呼び捨てにし合うのが普通だったんだけど──」
そこでペニサスの顔と声が、ぐっと歪んだ。名札を指差す。
('、`*川「半年前に離婚した途端、この旧姓にさん付けで呼んでくるようになったの……
めちゃくちゃ当て擦るかのように……」
ξ゚⊿゚)ξ「きっちぃですねそれは。ちょっとばかし」
('、`*川「あっ、嬉しい。この感覚分かってくれる人、案外多くなくて」
( ^ω^)「離婚した相手なんだし、距離感とかに気をつかってるだけじゃ……」
ξ゚⊿゚)ξ「そういう意図で呼び変えてるならペニサス先生だって気にしないでしょうよ。長い付き合いなんだし。
でもそうは感じられないから嫌だわーって話なんじゃないすか」
('、`*川「そう! そうなの、絶対に嫌味でやってるのアレは! すごくもやもやするの。
それでなんか……他の人にも苗字で呼ばれると身構えるようになっちゃって」
47
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:19:48 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「しゃーねえですわそれは。
んじゃペニサス先生、よろしくお願いします」
はい、と答えるペニサスの声は明るい。
繰り返すようだが、ツンは変に目立つところがあり、集団にしっかり溶け込めるような人ではない。
しかし性根がこじれているわけではないので、気に入る人は気に入るし、友達も少数ながらいたはずだ。
(4年生の途中で転校していった彼女へ無事に同窓会の招待が届いたのも、まさに彼女の友達連中のおかげである)
そして今回はその性根が見事に効いたらしい。
ξ゚⊿゚)ξ「この二人は盛岡さんと内藤さ……あ。こっちも呼びかた変えた方がいっか」
なぜ、と浮かんだ疑問はすぐに解けた。
「ないとうさん」の響きには「いとうさん」も含まれている。
それはさすがに気をつかいすぎではないかとも思うが、こちらはどう呼ばれようと構わないので拒否する理由もない。
48
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:21:05 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「ブーンってあだ名で呼ばれることが多いお」
ξ゚⊿゚)ξ「でしたね。んじゃブーンさん」
ツンにそう呼ばれるのは初めてだ。
新鮮というか、新鮮すぎて落ち着かないというか。嫌ではない。
不思議そうにやり取りを眺めていたペニサスも、遅れて理解が追いついたらしい。
('、`*川「あっ。それは全然大丈夫だから」
ξ゚⊿゚)ξ「や、こういうのは慎重にいかないと。ね、ブーンさん」
( ^ω^)「おー……」
('、`*川「別にいいのに……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そだ、ペニサス先生。盛岡さんとか、どっすか。
歳もちょうどよさそうだし、かなり稼ぎますよこの人。
前の男なんか忘れちゃいましょ」
(´・_ゝ・`)「馬鹿言ってないで、捜査を進めてください」
あはは、とペニサスが朗らかに笑う。
もうすっかり彼女の懐に入り込むことに成功したようだ。
ツンも手ごたえを感じたか、いくらか弾んだ声で質問をぶつけた。
49
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:22:36 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「んでペニサス先生、富士とか鷹とか茄子とかで思い当たることありません?」
('、`*川「ええ? いきなり何? 思い当たることって、初夢の話かなって思ったけど今」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃなくて、普段、このへんを意識することあります?」
('、`*川「気にしたことないなあ……茄子の天ぷらが好きなくらい」
ξ゚⊿゚)ξ「茄子の天ぷらをいっぱい食いたいって願ったことは? たとえば富士山くらい山盛りの」
('、`*川「え……ない……何の話?」
( ^ω^)「照本さん。なんというか、照本さん」
当然のごとく戸惑いの表情と声をむき出しにしていたペニサスだったが、それでも真剣に考えてくれているらしかった。
根が真面目なのか、ただひたすら優しいのか。
少しして、あ、と声を上げた。
50
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:23:48 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「何か?」
('、`*川「教頭先生、山とかお好きでしたね。机に富士山の写真かなんか飾ってませんでした?」
しばらく静観していたモナーは突然水を向けられ、「は」と間の抜けた声をこぼした。
( ´∀`)「は。ああ……そうモナね」
ξ゚⊿゚)ξ「机、見せてもらっても?」
(;´∀`)「構いませんが、その、羽生先生の事件? と何か関係が……?」
ちょうどデミタスもファイルを詰め終えたようなので、ぞろぞろとモナーの席へ向かう。
残されたペニサスは、首を捻りつつ業務を再開していた。
51
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:25:06 ID:xsJy4/yE0
モナーのきっちり整頓された机の上には、たしかに富士山の写真があった。
( ´∀`)「山登りが趣味なもので……」
ξ゚⊿゚)ξ「鷹とか茄子とかも好きすか?」
(;´∀`)「その初夢セットの質問は何なんですモナ?」
( ^ω^)「照本さん、ちょっと。さっきからずっとそうだけど、探り方とかがちょっと」
デミタスのため息が聞こえる。なぜ内藤がはらはらしなければならないのか。
( ´∀`)「鷹も茄子も、特に好きでも嫌いでもないモナ」
ξ゚⊿゚)ξ「何かの機会に強く意識したことも?」
( ´∀`)「ないと思いますけど……」
──その後も職員室で聞き込みを続けたが、これといった成果はなかった。
富士鷹茄子以外にも元旦や正月の動向だとかを訊いてはみたものの、そちらも同様。
内藤の聞く限り、明確に嘘や隠し事をした人もいなかったように思う。
話者の演技が巧みだったり内藤の集中が切れたりしていれば普通に聞き逃してしまうこともあるので、絶対とは言えないのだが。
◆
52
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:26:22 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「進展なし」
シタラバ小学校、多目的室。
ひとまず3人だけで話し合いたいとモナーに頼んだところ、ここに案内された。
この人数で使うにはあまりに広々としすぎている。
( ^ω^)「照本さんの訊き方が良くなかった可能性も全然あるけど。
でなきゃ、あとは教師だけじゃなく生徒に聞き込むことも検討しないかお?」
ξ;゚⊿゚)ξ「範囲が一気に広がっちゃうから出来ればやりたくなかったんすけどねえ……」
不意に、デミタスが何やら操作していたスマホをポケットにしまい、扉へ手をかけた。
(´・_ゝ・`)「俺は一度、上に報告してきます。少し休んでてください」
声が少し硬い。緊張したときのものに近いと感じる。
「上」とやらはよほど怖い存在なのだろうか。
あるいは報告の内容がよろしくないのかもしれない。ツンには言わないでおいてやろう。
53
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:27:35 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「……」
そうして二人が残される。
手持無沙汰で、内藤はデミタスが置いていったボストンバッグの前にしゃがみ込んだ。
適当にファイルを一冊開いてみる。
どうやら受け持っている生徒の学習評価や指導要録をまとめたもののようだ。
かなりプライバシーに関わる資料だ、咄嗟に閉じる。
それでも目に入った文章がいくつか記憶に残ってしまう。
昔と変わらず、よく生徒のことを観察して、真剣に考えてやっている人だ。
54
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:29:58 ID:xsJy4/yE0
昨日。ファミレスで今後の方針を取り決めて解散した際のことが脳裏を過ぎる。
(*゚ー゚)『この間、照本さんが主人に会いに来たとき、一瞬だけでも起きてくれたでしょう。
また別の生徒さんと会えたらもう一度起きないかしらと思って連れてきたのだけど……。
本当に寝ぼすけで、失礼な人ね。ごめんなさい、内藤君』
そう言って車椅子のハンドルを握るしぃは、苦笑いを浮かべていた。
ひどく寂しそうな声だった。
──ギコには恩がある。
そのギコの、大切な奥さんがしぃだ。
ギコのためにも、しぃのためにも、早く彼を起こしてあげたい。
であれば、生徒のプライバシーに配慮している場合ではないのではないか。
調べられるものはとにかく調べるべきではないか。
のしかかる後ろめたさに固まる手をむりやり動かし、再び表紙を──
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンさん」
──開こうとしたら、いつの間にか隣にしゃがんでいたツンに呼びかけられて、不安と罪悪感と驚きが内藤の体を思いきり跳ねさせた。
どきどきしながらファイルをボストンバッグにしまう。
55
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:31:07 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンさん、ブーンさん」
( ^ω^)「なんだお、照本さん」
ξ゚ -゚)ξ「……ううーんん……」
ものすごく不満げだ。
ξ゚⊿゚)ξ「こっちがあだ名で呼ぶのに、そっちは『照本さん』じゃ、なんか均衡がとれてなくてもやもやするんすよ」
( ^ω^)「そんなこと言われても。
……照本さんはあだ名とかあるのかお」
ξ゚⊿゚)ξ「ないっす」
( ^ω^)「……じゃあツンさん? とか」
さらっと言ってみたつもりだが、内心かなり緊張していて、勝手に視線が横へずれていった。
56
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:32:50 ID:xsJy4/yE0
しかし小学生、特に高学年に上がるまでは、クラスメートなんて下の名前で呼ぶ方が普通だったはず。
だから内藤はツンちゃんと呼んでいたし、ツンも──ツンはあの頃からみんなを苗字で呼んでいたっけか。
やっぱり間違えたかもしれない。
ツンは何も言わない。むしろ言わないでほしい。声に拒絶が滲んでいたらと思うと怖い。
せめて表情を、と、そらした視線をこわごわ戻す。
ξ゚ー゚)ξ
微笑んでいた。
ああ。そう。
じゃあ。まあ。
いいか、とりあえず。
──甲高い電子的な音が、広い部屋の中に響き渡った。
また体が跳ねる。ツンに呼ばれたときよりも激しかった。
57
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:34:10 ID:xsJy4/yE0
音の出どころは、ツンのスマホ。
ξ゚⊿゚)ξ「しぃさんから」
と言って、彼女は画面の上、通話アイコンを押した。
ξ゚⊿゚)ξ「はい、照本です」
『照本さん! さっきね、あの人が久しぶりに寝言を言ったの。やっぱりいつもと同じだったけど……』
スピーカー状態ではないが、この距離なら、内藤の耳は容易に向こうの声を拾えてしまう。
ξ゚⊿゚)ξ「マジすか。記録はとれてます?」
『ええ、たぶん。カメラはずっと回ってるはずだから』
ξ゚⊿゚)ξ「データ、こっちに送れますか?」
『ええと……どうしたらいいのかしら……』
電話越しにツンが機器の操作方法を指示する。
少々まごついたが、無事にファイルを受け取れたらしい。
58
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:35:23 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「あざす。確認しますね」
通話を切り、ツンが手招きする。
すぐ横にいるのだからこれ以上近付くこともない。スマホを見ろという合図だろう。
内藤が画面に目を向けると同時、動画ファイルは開かれた。
病院のベッドの上。ギコが眠っている。
栄養補給のためか点滴を施されていて、姿だけはすっかり重病人めいた様相だ。
このまま眠り続ければ衰弱して──という話だったので、似たようなものなのだろうけど。
ツンの指がシークバーを動かした。
動画が終了する直前あたりで指を止め、映像を再開させる。
画面の中、乾いた口が薄く開いた。
(,,-Д-)『──……い……ふじ……たか……──なす……──』
それから数秒無音が続いて、動画は終わった。
59
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:36:22 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「……富士に鷹に茄子っぽいすね、たしかに。一富士二鷹三茄子」
ツンが窺うように内藤を見る。
内藤はコートのポケットから私物の無線イヤホンを引っ張り出して、スマホに接続させてもらった。
もう一度、該当の箇所を再生する。
(,,-Д-)『──……い……ふじ……たか……──なす……──』
( ^ω^)「……?」
もう一度再生。やはり、「そう」聞こえる。
もう一度。同じだ。
もう一度。──確信する。
イヤホンを外し、内藤は口を開いた。
60
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:36:44 ID:B67S1ufY0
支援
61
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:37:08 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「ツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ。あ、はい」
( ^ω^)「たぶん、一富士二鷹三茄子とは言ってないお、これ」
ξ゚⊿゚)ξ「え」
画面上、ギコの口元を指差す。
( ^ω^)「先生は『い』と『ふ』の間に、何も発音しようとしてない」
ξ゚⊿゚)ξ「……といいますと」
62
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:38:11 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「掠れたとか、上手く発音できなかったとかじゃなく、初めからそこに文字を入れる気がないんだお。
『い』から『ふ』にそのまま繋げようとする声の出し方だった」
( ^ω^)「『たか』と『なす』の方は小さすぎてまだよく分からないけど。
少なくとも最初は『いちふじ』じゃないはずだお」
ξ゚⊿゚)ξ「てことは──そのままだとしたら『いふじ』?」
いふじたかなす。
文章にはなっていないように思う。
これだけでは、次の段階へ推理を進められない。
二人並んで腕を組み、うんうんと唸る。
63
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:39:30 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「何すかね、イフジって」
( ^ω^)「うーん。人の名前とか? たとえば僕の通う大学に井藤って苗字の人が……苗字の……」
( ^ω^)「苗字の」
──瞬間、一気に思考の噴火が起きた。
その中の一つ、職員室での会話の記憶を引っ掴み、脳内で再生する。
('、`*川『あっ。それは全然大丈夫だから』
ξ゚⊿゚)ξ『や、こういうのは慎重にいかないと。ね、ブーンさん』
( ^ω^)『おー……』
('、`*川『別にいいのに……』
.
64
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:40:01 ID:xsJy4/yE0
伊藤ペニサス。
あのときの彼女の声は、本当に、心からどうでもよさそうだった。
実際どうでもよかっただろう。
だって「ないとうさん」の響きには「いふじさん」など含まれない。
内藤とツンは顔を見合わせると、ほぼ同時に立ち上がって多目的室を飛び出した。
◆
65
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:41:01 ID:xsJy4/yE0
( ´∀`)「はあ、たしかに彼女は伊藤(いふじ)ペニサスという名前ですモナ。
珍しい読み方なので、生徒や保護者にもよく間違われるようで」
富士山の写真をさすりながら、モナーは言った。
伊藤。いふじ。それが正しい読み方。
内藤たちの推理は当たった。
ただ、予想(というか期待)は外れた。
肝心のペニサスが職員室にいないのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「ペニサス先生、どちらに?」
( ´∀`)「さあ……少し前に出ていきましたモナ。
そのうち戻ってくると思いますが」
礼を言い、職員室の奥にある応接セットで待たせてもらうことにした。
しばらく待っても来なかったら、放送でもかけてもらおうか。
66
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:44:01 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「ギコ先生はペニサス先生の願望の夢を見てるってことかお」
ξ゚⊿゚)ξ「どうなんでしょ。
誰かの願い事にペニサス先生の存在が不可欠なだけかもしんねえですし」
ツンが腕を組んで宙を見上げる。
数秒後、スカジャンのポケットから電子音が鳴った。
先ほどの着信音とは違う。
ξ;゚⊿゚)ξ「あー、定期報告の時間……めんどくせ〜」
スマホを見たツンは、心底面倒くさそうに言いながら画面に触れた。
調査状況について、定期的に文書なり音声なりで報告しなければならないのだそうだ。
デミタスの報告ともすり合わせる必要があるのだろう。
67
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:44:45 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「ひがいしゃ、はにゅう、ぎこ……」
( ^ω^)「ツンさん、重要な書類作るのに声出すのやめた方がいいお」
ξ゚⊿゚)ξ「いやめっちゃ小声っすよ、ブーンさんしか聞き取れませんて。
……えーと、しょうがっこうの、もと、たんにん……」
──手が止まった。
何事かと覗き込めば、口に出していたとおり「元担任」で文章が止まっている。
( ^ω^)「どうしたんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンさん」
声色で察する。
今度はツンが何かに気付いたらしい。
68
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:45:32 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「一組の夫婦がいるとして、その夫の方を指したいときに何て呼びます?
ただし名前を知らない相手っす」
( ^ω^)「まあ、旦那さん、じゃないかお」
ξ゚⊿゚)ξ「その夫婦が離婚した場合は?」
( ^ω^)「えー……元旦那さん」
口にして、頭の中で文字に起こして。
──先のように、顔を見合わせた。
69
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:46:07 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「あの『元旦』って……」
ξ;゚⊿゚)ξ「『がんたん』じゃないんすよ! たぶん書ききる前に眠気が限界に来て……!」
( ^ω^)「……。……、……そんな馬鹿な」
ξ;゚⊿゚)ξ「馬鹿馬鹿しくても繋がりはするでしょ、イフジさんの元旦那」
从;'ー'从「あ、あの〜、盛り上がってるところすみません……」
二人が一斉に顔を向けたので、声の主、渡辺が「わ」と肩を竦めた。
その手にはお盆があり、二人分のカップが乗っている。
70
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:47:23 ID:xsJy4/yE0
从;'ー'从「お茶淹れましたので、どうぞ〜……。
どなたかお待ちです?」
( ^ω^)「ペニサス先生を待ってますお」
ξ゚⊿゚)ξ「どこに行ったか知りません?」
从'ー'从「あ、はい。ペニサス先生が職員室を出るときに声をかけたんです。
そしたら中庭に行くって……」
ξ゚⊿゚)ξ「中庭! あざす!」
ツンが腰を上げたので、内藤も続いた。
職員室の入口へと向かいながら、ツンが振り返る。
ξ゚⊿゚)ξ「お茶すんません、教頭先生に飲んでもらってください!」
从;'ー'从「え、え〜」
.
71
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:49:15 ID:xsJy4/yE0
廊下に出てすぐ、ツンが窓を指差した。
ξ;゚⊿゚)ξ「いたいた、ペニサス先生! あそこ!」
指したとおり、中庭の渡り廊下の途中にペニサスが立っているのが見える。
誰かと一緒にいるようだが、この位置からは相手の姿がよく分からない。
非常に行儀が悪いのは承知しているが、走って中庭へと向かう。
渡り廊下へ繋がる出入口は職員室からそう遠くなく、すぐに辿りつけた。
ξ゚⊿゚)ξ「ペニサス先生!」
駆け寄りながらツンが名を呼ぶと、驚いたようにペニサスが振り返った。
('、`*川「あれ、けーさつの人たち」
ξ゚⊿゚)ξ「すんません、ペニサス先生の元旦那さんについて話を聞きたいんすけども!」
72
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:50:26 ID:xsJy4/yE0
('、`*川「また唐突な……。聞きたいって何を?」
ξ゚⊿゚)ξ「例の嫌味でねちっこい、モラハラの素質がありそうな元旦那さんについて、一通りのことを。
先生は嫌かもですが、できれば本人とも話せたら──」
('、`*川σ「あ、うん。じゃあ話したら? ここにいるし」
ξ゚⊿゚)ξ「はへ?」
ペニサスが自身の隣を指差す。
内藤は近付いていく途中ですぐに気付いたのだが、ペニサスへ一直線だったツンの眼中には、彼の姿はなかったらしい。
('、`*川σ (´・_ゝ・`)
ただちにツンはその場に手と膝をつき、迅速に土下座をきめた。
73
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:51:54 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「すんませんしたマジ」
(´・_ゝ・`)「やめてください。
まるで、嫌味でねちっこいモラハラ気質の男が土下座を強要してるみたいじゃないですか」
( ^ω^)(めちゃくちゃ嫌味でねちっこいな……)
デミタスは眉間に薄く皺を作り、内藤とペニサスを順に見た。
最後に、立ち上がったツンへ瞳を向ける。
(´・_ゝ・`)「それで、何か進展が?
『イフジさん』と俺が夢に関係あるんですか?」
( ^ω^)「あっ、本当にわざとらしい呼び方と声。わーっ」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンさん、しっ!」
('、`*川「夢って何の話?」
とっ散らかりかけた空気が、ペニサスの一言で急に締まった。
いけない。内藤たちはただの警察としてここに来ているのだ。
口を滑らせたのは、動揺を声に乗せないよう必死に抑えて──そして失敗して──いたデミタスなのだけども。
74
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:53:12 ID:xsJy4/yE0
言い訳を探し始める内藤たちだったが、その様子にペニサスが顔をしかめる。
はあ、とため息。
('、`*川「一応言っとくと、あなたたちが本物の警察だとは最初から思ってないから。
結婚前も結婚中も、デミタスが何の仕事してんのか教えてもらえなかったけどさあ。
さすがに、警察官じゃないことくらいは分かってるよ」
ツンと内藤はデミタスを見やる。なんなら睨む。
デミタスの目は中庭へとそらされた。
そうして。
真っ先に観念したのは、ツンだ。
ξ゚⊿゚)ξ「……ま、そもそも、夢に関係あるかもと分かった時点で、必死こいて隠す必要はなくなってんすよね。
全部話します」
◆
75
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:54:15 ID:xsJy4/yE0
聞き終えて、まずはデミタスが口を開いた。
(´・_ゝ・`)「夫人は、羽生氏の寝言について『一富士二鷹三茄子』だったと証言したはずでは」
ξ゚⊿゚)ξ「それに関してはちゃんと初めから断ってましたよ。
不明瞭だからたぶんそうだろう、くらいのもんだって」
デミタスが腕を組み、また眉間に皺を寄せる。
そちらは納得してもらえたようだ。
さてペニサスはというと、顔色は話を聞く前とあまり変わっていない。
へー、と漏れた吐息は半信半疑、よりはもう少し「信」の方に寄ってくれている。
('、`*川「ずいぶんオカルトな話ねえ……」
(´・_ゝ・`)「……こういうものばかり扱ってるんだ。
だから『伊藤さん』に仕事のことを正直に話せなかった」
('、`*川「ふうーん。そう。そのおかげで離婚にまで至ったわけだけど」
離婚の原因はそれか。
たしかに「何をやっているのか分からないがとりあえず稼いでくる男」との生活など、不安が溜まる一方だろう。
76
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:55:11 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「ともかくっすよ。
二人のどちらか、または両方の『願望』が羽生先生を眠らせてる可能性があるわけなんすけど──」
またツンと内藤がデミタスを見やる。なんなら睨む。
デミタスの目は、今回はそらされなかった。
(´・_ゝ・`)「……なぜ俺を見るんです」
ξ゚⊿゚)ξ「なんか、めっちゃ未練ありそうなんで……」
('、`*川「まあわざわざこんな寒いとこに呼び出されて、だらだら昔話をさせられてはいたよ」
ξ゚⊿゚)ξ「めっちゃ未練あるじゃないすか」
77
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:57:20 ID:xsJy4/yE0
( ^ω^)「盛岡さんってギコ先生に会ったことはあるんですかお?
『絵を持っているときに接触した人』の願望を夢に見ちゃうって話でしたが」
('、`*川「羽生先生がお休みする直前くらい、仕事終わりに学校の前でデミタスに待ち伏せされてさ。
絡まれてると思った羽生先生が割って入ってくれたことはあるよ。
そのときに軽くだけど関係の説明もしたから、私の元夫なのは先生も知ってる」
ξ゚⊿゚)ξ「めっっっちゃ未練あるじゃないすか。
てか羽生先生と面識あったなら先に言ってくれませんかねマジで」
(´・_ゝ・`)「……あのときは暗かったし、互いに名乗りもしませんでしたし」
ξ゚⊿゚)ξ「暗い時間に待ち伏せてんの怖。冬だから早めに日が落ちるのを差し引いても怖」
( ^ω^)「盛岡さん、本当にすごく良くない引きずり方ですお。
本物の警察のお世話になってもおかしくない」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなんなっちゃうのによく一回は離婚に応じましたね」
(´・_ゝ・`)「……」
ちゃんとダメな自覚はあるのか、デミタスはひたすら眉をひそめて沈黙を決め込み始めた。
事件の顛末を上とやらに報告するとなれば、この男の方こそ都合が悪いことになるのではなかろうか。
うっすら、ツンと彼の立場が逆転していくのを感じる。
78
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:58:12 ID:xsJy4/yE0
ξ゚⊿゚)ξ「ペニサス先生とヨリ戻したいって夢でしょ、絶対」
('、`*川「えー、それ叶えてやらないといけないの? やだなあ……」
(´・_ゝ・`)「……」
( ^ω^)「気持ちは分かりますけど、やってもらわないと困るんですお。
でなきゃギコ先生が起きられない」
('、`*川「それはそうなんだけどさ……。
ていうか、そんな『仕方なし』でヨリ戻しても、叶ったことになるの?」
(´・_ゝ・`)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「そこは盛岡さんの気持ち次第かと。
こんな人間性を露呈した後でもう一度愛しなおせと要求してるんならマジ身の程を弁えろ案件ではありますけども」
( ^ω^)「ツンさん、開き直ってきてないかお?」
('、`*川「でもなー」
(´・_ゝ・`)「……そんなに俺が嫌いか」
喋った。
気付けば、目をそらすどころか俯いてしまっている。
言いすぎたかもしれない。ツンが。
79
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 21:59:23 ID:xsJy4/yE0
(´・_ゝ・`)「人の命がかかってる場面で、それでも頷けないほど俺が嫌いか」
('、`*川「いや好きだけど……え? 嫌いって言ったことあった?」
は?
と、3人分の声が重なった。
.
80
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:00:29 ID:xsJy4/yE0
デミタスがとてつもない勢いで顔を上げる。
言葉を聞かなくても、混乱しきっているのは表情で分かった。
(´・_ゝ・`)「な……は? 好き、は?」
('、`*川「愛してるよ。人前だからやんないけど、ハグもキスも全然出来るししたいよ」
(´・_ゝ・`)「君、だって、俺とまた結婚する気はないって散々」
('、`*川「だから、仕事がさ。てか隠し事が、かな? 問題はそこだけなんだけど、それがデカすぎんの。
ずーっとこそこそこそこそして、愚痴だってちょっとも零さない。
訊いてもはぐらかしてばっか」
('、`*川「隠し事するなとは言わないよ。でも、気になるものは気になるじゃない。
んで、一緒に暮らしてると気になる機会も多いでしょ。
そしたら私も疲れるし、隠してるデミタスだって疲れるじゃん」
はぐらかしてるときの顔見てると、なんか可哀想になってくんの。
ペニサスはそう言う。
81
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:01:51 ID:xsJy4/yE0
('、`*川「だったら、離婚してあげた方がお互い楽になるかなって」
内藤とツンはもはや口を挟めない。
黙って、デミタスとペニサスの大事な対話を見守る。
(´・_ゝ・`)「じゃあ。……じゃあ、仕事の内容を知った今なら、結婚」
('、`*川「したくないかも」
(´・_ゝ・`)「なんでだよ!!!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「声でっか」
( ^ω^)「うるさ」
これはちょっと面白くて黙っていられなかった。
あらためて口を噤む。
82
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:03:43 ID:xsJy4/yE0
('、`*川「規模の大きそうな仕事だし、結局、家族にも言っちゃいけないような業務は多いんじゃないの?
それじゃ前と同じじゃんか」
(´・_ゝ・`)「お、おな、おなじ、同じなわけあるか。
全部隠すのと一部だけ隠すのじゃ全然負担が違うし。まず何より、
その……君に怖がられるのが嫌で黙ってたんだぞ」
('、`*川「あー……そっか、内容的に怖くなる人もいるっちゃいるか。
私はまあ平気かな。なーんにも知らされない方が怖くない?」
(´・_ゝ・`)「なら──その、実際、家族であろうと漏らすべきでない情報を扱うことはあるけど。
そういうもの以外は出来る限り話すようにする。
……これくらいならお互い様だろ! 君の仕事だって、俺にべらべら話せないことは多いはずだ!」
('、`*川「む。──たしかに」
83
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:04:20 ID:xsJy4/yE0
デミタスがペニサスの顔を凝視する。
縋るように、と言ってしまえば、少々情けなさすぎるか。
数秒おいて、彼女も彼の顔を見返した。
('、`*川「じゃ、一旦、同棲からやり直してみようか。それじゃだめ?」
デミタスが首を振る。
一瞬だけ迷ったのを内藤は見逃さなかった。
84
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:05:51 ID:xsJy4/yE0
(´・_ゝ・`)「だめじゃない。いい。けど。
……本当に、まだ俺のこと好きなのか。仕方なしじゃないだろうな」
('、`*川「すきすき。でなきゃ呼び出されても無視するって、こんな真冬に中庭なんて」
「本当」の声だ。
そんなこと、わざわざ教えてやるのも不粋だろうが。
中庭を一瞥したペニサスが、思い出したように「あ」と呟いた。
('、`*川「でも嫌味たらしい『伊藤さん』で、ちょっと嫌いなとこは増えたかも」
(´・_ゝ・`)「ペニサス」
早い。
ペニサスは吹き出して、その、現金な元旦那に向き直った。
('ー`*川「なあに」
.
85
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:07:11 ID:xsJy4/yE0
──と、いった感じで。
なんとか話はまとまったようだが。
( ^ω^)「すぐに結婚とまでは行かなかったけど、盛岡さんの夢は叶ったって判定でいいんだろうかお」
ξ゚⊿゚)ξ「過去の事例で、夢そのものは叶えられなくても、代替品で満足させたら解決したってのがあったんですって。
だからこれでも充分なはず……」
では、もしも予想どおりにデミタスの「夢」が原因だったのならば。
ξ゚⊿゚)ξ「……羽生先生、起きるかも。ブーンさん、行きましょ」
( ^ω^)「うん。行こう、ツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「盛岡さんも! 一応お目付け役なんすから」
(´・_ゝ・`)「あ。ペニサス、あの、あとで」
('、`*川「はいはい、行ってらっしゃい」
.
86
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:08:58 ID:xsJy4/yE0
多目的室から荷物を回収し、モナーへ声をかけてから、シタラバ小学校を後にした。
しぃへの連絡をツンに任せ、内藤はタクシーアプリを起動する。
そうする間も、やって来たタクシーに乗り込んで病院に向かう間も。
ずっと、焦りと共に、なんだかすっきりしないものを感じていた。
「いふじ」の意味はおそらく分かった。ペニサスの名前。
では、「たか」と「なす」には、どんな意味があったのだろう?
◆
87
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:09:44 ID:xsJy4/yE0
病院。
ギコの病室がある階でエレベーターを降りるなり、小走りで寄ってくるしぃが見えた。
(;*゚ー゚)「照本さん、内藤君! 今、あの人が起きたの」
ξ*゚⊿゚)ξ「マジすか!」
( ^ω^)「病室はどこですかお」
(;*゚ー゚)「一番奥に」
88
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:11:08 ID:xsJy4/yE0
逸る気持ちのまま病室へと飛び込んだ。
ベッドの上、横たわるギコの目は開いている。
ただし、ひどく重たげに。
(,,゚Д-)「──ああ……?」
ξ゚⊿゚)ξ「羽生先生、おはようございます」
( ^ω^)「ギコ先生……!」
ベッドを囲む二人をゆっくり眺め、彼は口を動かした。
(,,゚Д-)「ツンに……ブーンか……どうしたんだ、ふたりして……」
喋る舌は、もたついている。
喜色を浮かべていた二人だったが、その様子に、徐々に空気を沈めていった。
一度視線を交わし、すぐにギコへと戻す。
そのわずかな間に、ギコの瞼は再び閉じていた。
(,,-Д-)
ξ;゚⊿゚)ξ「……羽生先生?」
(;^ω^)「ギコ先生!」
89
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:11:49 ID:z087wYx60
しえ
90
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:13:06 ID:xsJy4/yE0
ξ;゚⊿゚)ξ「先生、夢……夢、まだ終わってないんすか? ペニサス先生は関係なかったんすか!?」
その呼びかけにギコの瞼が震えるも、持ち上がりはしなかった。
(,,-Д-)「伊藤先生……ペニサスせんせ……よかった……な……だんなさん……」
──嬉しそうな声。新鮮な感情に包まれている。
まるで、つい先ほどまでそれを前にしていたかのように。
やはり彼はペニサスの夢、もといデミタスの「願い事」を見せられていたのだろう。
そしてそれはついさっき内藤たちの目の前で叶った。間違いない。
なら、どうしてまだこんなに眠そうなのだ。
91
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:14:15 ID:xsJy4/yE0
(;^ω^)「──ギコ先生! 他に、他に何か見てませんかお!」
(,,-Д-)「……ほか……」
永遠にも似た数秒を経て。
(,,-Д-)「──……たか……」
(,,-Д-)「……なす……」
(,,-Д-)「……──」
それを最後に、彼は再び眠りへと落ちていった。
.
92
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:15:20 ID:xsJy4/yE0
穏やかな寝顔を見つめたまま、ツンと内藤はその場を動けずにいる。
ξ;゚⊿゚)ξ「……まさか、盛岡さんのだけじゃなくて」
(;^ω^)「他の誰かの夢も、見てるのかお」
へなへなと力が抜けて、二人そろって床に座り込んでしまった。
93
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:15:58 ID:xsJy4/yE0
「たか」、「なす」。
それが何を意味するか、そもそも二つで一つのものを指しているのか、別々のものなのかも分からないが──
それらも取り除かなければ、きっとギコは、まだ目覚めない。
【続く】
94
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:17:53 ID:xsJy4/yE0
一旦ここまで
続きはなるべく1月中に
総合でもらったお題で書き始めましたが、
30レス超える&途中でも今年の内に投下したかったのでスレを立てた次第
お題は
・富士
・鷹
・茄子
でした。ありがとうございます
そしてブーン系小説誕生20周年(おそらく)、おめでとうございました
来年もよろしくお願いいたします
95
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:43:36 ID:3p0Cki.Y0
さっそく来年の楽しみができた。
めちゃくちゃ先が気になる題材!乙!
96
:
名無しさん
:2025/12/31(水) 22:45:04 ID:pz.x/DNE0
おつおつ
97
:
名無しさん
:2026/01/01(木) 06:54:44 ID:17IfZNS60
あけおめ乙
新年からいいもん読んだ〜!期待
98
:
名無しさん
:2026/01/01(木) 09:57:33 ID:aZGniNgI0
おもしろかった〜!
乙でした
続き楽しみにしてる!
99
:
名無しさん
:2026/01/02(金) 22:10:30 ID:9ewlHAkA0
乙!
続き楽しみにしてる
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