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(^ω^ )月下、バス停、夕を待つようですξ゚⊿゚)ξ
1
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:48:19 ID:XvaieQAg0
幽霊に会う方法を探している。
まだ、成果はない。
2
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:49:56 ID:XvaieQAg0
この10年、思いつく手段は片っ端から試した。
深夜に墓に行ったり、神社のお札を勝手に剝がしたり、有名な霊能力者とやらに会ったり、全国の心霊スポットを巡ったり。
けれど残念ながら、どれも全く効果はなかった。
深夜に墓に行ったところで虫刺されが増えただけだし、霊能力者はよくわからない壺を高値で売りつけてきたりと散々だ。
ぶっちぎりで一番やばかったのは、マイナーな心霊スポットと呼ばれる田舎の学校に忍び込んだ時だろうか。
まさか、あんな廃墟寸前の所に警備員がいるなんて思わなかった。男性警察官5人に囲まれて犯罪者扱いされるなんて、年頃の乙女にはきつすぎた。
後から判明した話だが、あの学校は別に廃墟でもなんでもなく、生徒数が極端に少ないだけでまだまだ現役だったらしい。
あそこが心霊スポットだなんて噂を流したのは何処の誰なのだろう。あやうく警察沙汰である。
私が幽霊になったら絶対呪いに行く。もうちょっとで前科持ちになるところだった。
心の中で悪態をつきながら、ドスンとバス停のベンチに腰掛けた。
まだここに住んでいた頃、高校を卒業するまで10年以上も使ったバス停だ。
毎年こっちに帰る度にどこかが変わっているものだが、このバス停だけは全く変わらない。
錆びだらけの標識に、運営する気があるとは思えない程に空白が目立つ時刻表。そして、利用者の少なさの割にはやや広いベンチ。
まるで、ここだけ時間が止まっているみたいだった。
3
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:50:59 ID:XvaieQAg0
ξ゚⊿゚)ξ「……うわ、溶けてる。最悪……」
月と、バス停の微かな灯りだけが灯る暗闇の中。
ビニール袋から取り出したカップアイスの蓋を開け、溜息と共に肩を落とした。
地元駅のすぐ前にいつの間にか出来ていたコンビニで買った、ちょっとお高いブランドのストロベリー。
いつもならスーパーでも絶対に買わない高級品だ。安月給の社畜OLのおやつにしては少々値段が張りすぎる。
だが、いつの間にか地元にコンビニが出来ていたという感動と、ちょうどアプリのクーポンがあったからという理由で思わず衝動買いしてしまったのだ。
ドロドロした液体の中、辛うじて残っている固形の部分をプラスチックのスプーンで掬う。本来なら昼前には到着する予定だったのに、仕事のせいでこんな遅い時間になってしまった。
疾うに、夕焼けは終わっている。
まだ残暑が少し残る9月の夜空の下でも、外で食べるアイスというのはやはり格別だ。こんなになっていてもちゃんと美味しい。
なら冷えた部屋で溶けてないアイスを食べればより美味しかったのでは、という考えは思いつかなかったことにする。勿体ないなんて私が一番よく分かっているのだ。
4
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:51:24 ID:XvaieQAg0
ξ゚⊿゚)ξ「田舎のコンビニって保冷剤とかくれないのね。時代遅れだと思わない?」
肌に纏わりつく暑さと諸々のやるせなさに対し、怒鳴る若さは既にない。だが、この蟠りを胸に秘めておけるほど大人でもない。
最初から返事は期待していない。膨れっ面のまま、再びアイスを口に含んだ。
ふと、秋になりきれていない夜風が髪を撫でた。
わざとらしく空けている隣のスペースには、誰もいないし物もない。
それを見て、私は慌ててビニール袋を漁り始めた。
5
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:51:45 ID:XvaieQAg0
ξ;゚⊿゚)ξ「……忘れてないわよ。ちょっと、出すのが遅れただけなんだから」
袋の中から私が取り出したのは、いま私が食べているものと同じブランドのアイスだった。
手に取った瞬間、たぷんと中で液体が揺れる感覚がした。
まずい、ほとんど溶けてしまっている。おまけにスプーンもない。
数秒だけ思考を巡らせた後、何食わぬ顔で私は隣にアイスを置いた。
だってよく考えた結果、この件に関しては、私は何も悪くないと思ったのだ。
アイスが溶けたのは、9月になっても主張が激しいままのバカ気温のせい。
こんな時間に到着する羽目になったのは労働のせい。
スプーンがもう1本なかったのは、コンビニの店員が入れ忘れたせい。
アイス2つ買ったら普通スプーンも2本つけるだろ。田舎コンビニのアルバイトには私が1人でアイスを2つ食べる欲張り人間に見えたのだろうか。おっと、またイライラしてきたな。
6
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:52:21 ID:XvaieQAg0
カップに直接口をつけ、完全な液体となってしまったストロベリーを一気に飲み干す。
唇に残ったアイスを舐めとり、隣にちらりと視線をやる。
人一人がまだ余裕を持って座れそうなスペースに、カップアイスだけが寂しそうにポツンと置かれている。
蓋は閉まったままで、誰も手を付けた様子はない。
ξ゚⊿゚)ξ「いつもと違うって文句言わないでよね。
おばちゃんの駄菓子屋、もうなくなっちゃってたのよ」
空になったカップに蓋をして、ビニール袋の中に片付けながら独り言を続ける。
幼稚園児の頃から通っていた、残念ながら今年の春前に閉店したらしい、大好きだった駄菓子屋。
毎年夏から秋にかけて、10円玉を5枚握りしめて買いに行った安っぽいカップアイス。
私はイチゴ味で、彼はバニラ味。
中学生や高校生になってからも、夏はここでバスを待ちながら2人並んでアイスを食べるのが日課だった。
7
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:52:55 ID:XvaieQAg0
ξ゚⊿゚)ξ「それで」
頬杖をつき、横を見ながら口を開く。
視線の先には、微動だにしないカップアイスだけ。
やはり、私以外には、誰もいない。
ξ゚⊿゚)ξ「今年も食べに来ないつもりなのね。もう今年で10年目なんですけど」
ξ゚⊿゚)ξ「なによ、幽霊になってからようやくダイエットにでも目覚めたの?」
露骨に長い溜息を吐きながら虚無を睨む。
幼い頃から食い意地の張ったアイツのことだ。甘いものを持ってくればいつか我慢できずに姿を現すだろうと思ったのだが、今回でついに二桁目の敗北になってしまった。
かけっこ以外では私がアイツに負けたことなどなかったのに。心の底から気に食わない。
8
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:53:19 ID:XvaieQAg0
ξ゚⊿゚)ξ「……いつまで意地張ってんのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そもそもさ、いきなりいなくなったアンタが悪いんだからね」
視線を外して、正面を見る。
眼前には緑豊かな叢が広がっていて、所々に、色とりどりの花々が咲いていた。
黄色い向日葵や、赤い百日紅。その周りには薄紫色の菖蒲など、色んな花が月光に照らされてちらほらと見える。
その中心に、一際強い存在感を放つ、一輪の白い花があった。
生憎、私は花には詳しくない。地球上に存在する全女子が花に詳しいと思ったら大間違いである。
仮にそう思っている人がいるのなら、それは漫画やドラマの見過ぎか、女子という生き物に夢を見過ぎだ。直ちに改めることをお勧めする。
女子だから花に詳しいという論理はおかしい。だから私は花には詳しくなくとも別におかしな話じゃない。
けれど、この辺りに咲いている花についてなら、ある程度は分かる。
昔、男のクセに花が好きだった幼馴染の影響のせいだ。
9
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:53:53 ID:XvaieQAg0
その白い花は、あまりこちらで見かけた覚えのない花だった。金木犀ほどではないが、柔らかくて、甘い香りがする。
ビニール袋とは別で持っていた愛用の鞄からスマホを取り出し、カメラを向ける。
最新のアプリが示してくれた液晶画面には、『月下美人』という名称が映し出されていた。
ξ゚⊿゚)ξ「『月下美人』……随分とお洒落な名前ね」
「花の分際で生意気よ」と小さく呟くとまた、優しい風が髪を揺らした。
無論、隣には誰もいないままだ。
「もうちょっと優しい言葉遣いの方がいいと思うお」なんて、注意してくれる幼馴染はいない。
再びスマホに目をやり、画面をスクロールする。
別に聞いた訳でもないのに、一括で買ったスマホは『月下美人』に関する情報を簡潔に羅列してくれていた。
初夏から秋にかけて、夜に開花すること。
夕方に咲き、朝を迎える頃には萎んでしまうから、一晩だけしか見られない珍しい花であること。
花言葉は『儚い美』、『儚い恋』、『艶やかな美人』。そして――
10
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:54:39 ID:XvaieQAg0
ξ゚⊿゚)ξ「――『ただ一度だけ会いたくて』……か」
発声した花言葉を、ゆっくりと口の中で咀嚼する。
なんというかまぁ、随分と私に都合の良い花が咲いていたものだ。
スマホから白花へと目を移す。
花言葉や性質通り、確かにどこか儚げな雰囲気だ。だが、仲間も率いず、たった一輪だけで月光の下に堂々と咲くその様は、まるで一国の女王様のような威厳さすらもある。
可憐だが荘厳。儚いが立派。矛盾する筈の概念を見事に純白の花弁で覆ったそれは、花に格別の興味がない私でも、目が離せなくなるほどに美しく感じられた。
11
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:55:08 ID:XvaieQAg0
……アイツの仕業なのだろうか。
昔から、事あるごとに花をプレゼントしてきたヤツだったから。
月下美人という白花を私に見せたかったアイツが、咲かせたものなんじゃないだろうか。
ξ゚―゚)ξ「……なんてね」
我ながら馬鹿馬鹿しい考えだ。思考をリセットしようとして、目を瞑る。
バス停の下、月下美人の花弁に反射した月光が瞼を焼く。
閉じた瞳の中に映るのは、いつもと同じ昔日の光景だ。
12
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:55:42 ID:XvaieQAg0
下らない話をしながら、よく2人でバスを待った。
季節によって変わる花について、笑顔で語る貴方に頷いたり。
アイスを食べながら、その日あった出来事について互いに話したり。
わざとらしく空けた私の手に触れない貴方に、時々苛々したり。
想いを過去に巡らせてようやく、あの白花の名前が分からなかった理由に気が付いた。
私とアイツがここにいたのは基本的に、昼過ぎか、夕暮れ時だった。
日が落ちた夜でもここにいたのは、受験前の冬の時期くらいのもの。そりゃあ夜に咲く花なんて見覚えがなくて当然だ。
花火みたいに咲き誇る彼岸花と、茜色に照らされる彼の横顔を、今でも鮮明に覚えている。
ξ-⊿-)ξ「……悪いけど、今年も面白い話は別にないわよ」
目を瞑ったまま独り言を続ける。
毎年欠かさず続けている、私が1年間どうやって生きていたかについての報告。
瞼の裏で、10年前から変わらない柔和な笑みが浮かんだ。
13
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:56:46 ID:XvaieQAg0
ξ-⊿-)ξ「……あ、いや」
ξ-⊿-)ξ「一つあるわね。面白いかは分かんないけど、今までと変わったこと」
両手を絡ませ、自分の指をもう片方の手でなぞる。
土日も祝日も関係なく働く社畜の日々に、面白いことなどそうそう起きない。ただでさえ私は詰まらない人間だ。人に誇れるような特技も、長所も、貴方と違って何もない。
けれど、去年と違ってそういえば一つ、新しく始めたことがあった。
ξ-⊿-)ξ「――小説をね、書き始めたの。
アンタが昔描いてた絵みたいに、決して上手くはないけれど」
昔、花を絵にしていた幼馴染の横顔が脳裏をよぎった。
彼と違って私に絵を描く才能はなかったようで、どれだけ努力しても棒人間を出現させるのが関の山。だからずっと、私は創作についての才能がないのだと諦めていた。
だが去年、数少ない会社の友人から影響を受けて新しく始めた趣味。それが小説の執筆だった。
14
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:57:10 ID:XvaieQAg0
別に文学部の出身でもなんでもないし、そもそも私は普段から碌に小説の類を読む習慣もない。
仮に、職場に積まれている大量の書類に目を通すことが『読書』と言えるなら話は変わるが、とにかく、私は今まで本や小説には触れてこなかった人間だった。
そんな私が去年から、小説を書いている。
別に大したものじゃない。数少ない友人からのアドバイスを無碍にするのも嫌だったから、本当になんとなく始めただけ。出来上がった文章だって我ながらひどい出来だし、1円の価値だって生み出せたことはない。本当に、只の趣味だ。
だがそれでも、1年以上経った今でも、私は文字を綴っていた。
15
:
名無しさん
:2024/09/27(金) 23:57:54 ID:XvaieQAg0
ξ-⊿-)ξ「創作って思ってたよりずっと楽しいわね。
そりゃあしんどい時もあるし、無駄だなって思うこともあるけど…」
ξ-⊿-)ξ「文字の中なら、不器用な私でもプロ顔負けのお菓子が焼けるし、泥棒だって許されるし、心臓だってあげられる。それがね、凄く、楽しいの」
ξ-⊿-)ξ「世間に『馬鹿らしい』って嗤われるようなことでも、創作にすれば、肯定されたような気になれる。上手く例えられないけれど、魔法みたいだなって思ってる」
ξ-⊿-)ξ「……今になってやっと、アンタが見てた景色がちょっと、分かったような気がするわ」
文字を書けば書くほど、貴方に近付けたような気がした。
例えどんなに陳腐なものが出来上がっても、自作品が増える度に、貴方が笑ってくれるような気がした。
小説を書いている理由なんてその程度。だけど、私にとっては充分すぎる理由。
16
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:00:26 ID:UZIhG2J.0
ξ-⊿-)ξ「今度さ、本にするんだ。私の小説」
ξ-⊿-)ξ「自費出版とかそういう訳じゃないけど…印刷所に頼んで、私が書いた話を物理的な本にしてもらうの。本屋さんで売ってる本みたいに」
2か月ほど前のことを思い出す。確か、ようやく蝉が鳴き始めた7月の時期。
自分で書いたオリジナルの小説を本にして売ったり、人の書いた本を買ったりするイベントについて、友人から教えてもらった日のこと。
「どうせなら今度一緒に出よう」と熱の籠った目で語る友人の勢いに負け、つい首を縦に振ってしまったのだ。
ひどく無計画なまま結んだ約束だったが、友人の熱量もあってどうにか着々と準備は進んでいる。
イベントの日は冬で、その日に合わせて本を印刷してもらうから、どうしても今日ここに物理本を持ってくることは叶わなかったが。
まぁ、それは来年の楽しみにしよう。
17
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:00:50 ID:UZIhG2J.0
ξ-⊿-)ξ「……………あ」
ξ-⊿-)ξ「そっか」
来年に自分が作った本をここに持ってくる想像をして、堪えるような笑みが漏れた。
また、昔のことを思い出したのだ。
家に帰る訳でもなくただ駄弁っていたこのバス停で、楽しそうに自身が描いた絵を見せてきた幼馴染。
記憶を振り返ってみると、絵や花を見せにくる時の彼は、いつだって笑顔だった。
ξ-⊿-)ξ「こんな気持ちだったのね、アンタ」
ずっと分からなかった。
私から見ればひどく詰まらないものを、愛おしそうに眺める貴方の感性が。
鬱陶しそうにする私にいつも、花や絵の話をしながらアイスを食べていた貴方の笑顔が。
でも。
今更だけれど、もう遅いけれど。
ほんのちょっと、分かったような気がしたんだ。
18
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:02:16 ID:UZIhG2J.0
ξ-⊿-)ξ「…ね、私、変わったんだよ」
ξ-⊿-)ξ「今ならきっと、アンタの話にもうちょい、良い反応出来ると思うんだ」
ξ-⊿゚)ξ「……だから、さ」
横を見る。期待と共に目を開ける。
再び目に飛び込んできた景色は、さっきと変わらない、ポツンと置かれたカップアイスが寂しそうに佇んでいるだけの殺風景。
やっぱり、そこに貴方はいない。
19
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:03:46 ID:UZIhG2J.0
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ξ ⊿ )ξ「………」
ξ ー )ξ「………だよね」
分かっていた。分かっていたことだった。
そもそもこの10年、何をしたって変わらなかったのだ。
心霊スポットに行っても、高価な壺を買っても、幽霊なんて見えるようにならなかった。
それが今更、ちょっと新しいことを始めたからって、なにか変わる訳がない。
別に最初から期待なんてしていなかった。
こうやって毎年地元に帰ってきてこのバス停で君を待つのだって、実家に顔を出すための口実の一つに過ぎない。
私だってもうとっくにアラサーだ。幽霊なんてそんな非現実的なもの、信じちゃいない。
こんなの、只の自己満足だ。創作と同じ、ただ私が満たされたいからやってるだけだ。
20
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:04:09 ID:UZIhG2J.0
そもそも、夏が終わりかける度に地元に戻ってくるのだって一苦労なのだ。
うざったい上司はいちいち理由を聞いてくるし、ここまで帰ってくる為の交通費だって馬鹿にならない。休めても仕事は減ってくれないから、東京に戻ったらいつも以上に働かなくてはいけない。
それだけやって結局、会いたい人には会えた試しがない。
骨折り損のくたびれ儲けの儲け無しを10年も無為に積み重ねたのだ。
正直もうそろそろ、辞めてもいいかと心の何処かで思っていた。
1人の友人としても、幼馴染としても、義理は充分果たしただろう。
21
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:04:38 ID:UZIhG2J.0
こんなに下らないことはない。もう10年、諦めるにはいい節目だ。
もういい年なのだから、そろそろ私も新しい恋を見つけようか。
そうだ、それがいい。そうすべきだ。
東京に戻ったら、友人から勧められたマッチングアプリでもやってみようか。私は結構美人な部類だし、割といい条件の男性だってすぐ見つかるに違いない。
少なくとも、間抜け面晒しながらアイスを頬張る阿呆よりはマシな男がいるだろう。
そうと決まれば、明日、東京に戻ったらすぐにでも――
22
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:05:43 ID:UZIhG2J.0
思考の途中で、雨が降ってきた。
23
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:07:03 ID:UZIhG2J.0
ξ;⊿;)ξ
なんて、 全部 嘘だ。
24
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:07:53 ID:UZIhG2J.0
ξ;⊿;)ξ「……ふっ あ、 あぁ…」
ξ∩⊿;)ξ「あ……ひっ…うぐっ……あぁ……!」
必死に手で口と目を覆う。
それでも、指の隙間からぽたぽたと、雫と嗚咽は落ちてくる。
お気に入りの服に涙の痕が増える度、情けなさがこみ上げてくる。
嘘で塗り固まった頭が、涙と共に白く染まっていく。
同時に、心臓の奥に仕舞いこんでいた本音が、マグマみたいに溢れ出した。
25
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:09:55 ID:UZIhG2J.0
会いたかった。
幽霊でもいいから会いたかった。
一回でいいから、一目でいいから、どうしてもまた貴方に会いたかった。
それだけを胸に抱いて、貴方がいない10年を生きてきた。
ずっと貴方のことを思っていれば、いつかまた会えるんじゃないかって本気で信じてたんだ。
ずっと、この町で暮らしていくと思っていた。
大人になっても、老婆になっても、ここで貴方と一緒にバスを待ち続ける人生だと思っていた。
それだけでよかった。本当に、それだけで私は満足だった。
貴方がいれば、それでよかった。
(* ^ω^)
本当にそれだけだったんだよ、ブーン。
26
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:11:02 ID:UZIhG2J.0
目を両手で抑え、溢れる涙を手で隠す。
夜中にバス停で幼馴染が泣いているのに、慰めてくれるあの頃の声は一切聞こえてきてはくれない。
アイツならこんな場面で、何もしない訳がないのに。
あぁ。やっぱりそうなのだ。これが、この状況が、何よりの証左だ。
アイスが好きだった貴方が、一度も姿を現さないのは。
貴方が好きそうな花が咲いても、貴方がここに来ないのは。
私がボロボロと泣いているのに、貴方が慰めに来ないのは。
やっぱり、こんな所に、貴方はきっといないからだ。
もう何処にも、貴方はきっといないからだ。
あぁ、なんて意味がないんだろう。なんて価値がないんだろう。
とっくにいなくなった人のことだけ考えて、やりたくもない仕事をして。
アイスが溶けるみたいに、この気持ちもいつか溶けていくと思い込んで。
僅かに残った時間すら、創作なんて無駄なことに費やして。
10年間ただずっと、誰もいないバス停にまでアイス片手にやってきて。
こんな無意味なことをやり続けている私こそ、幽霊なんじゃないだろうか。
27
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:11:42 ID:UZIhG2J.0
これ以上、涙を零すまいと空を見上げる。
夜のキャンバスに散らばった雲が、二乗になって高く見える。
一人ぼっちの私を照らす月光が、波のように淡く揺らいでいる。
月明かりを見て、ふと、自分がやっている創作のことを思い出した。
貴方を主人公にした話を書いた。貴方が救われる話を書いた。貴方が報われる話を書いた。
貴方が読んだらきっと「面白い」って言ってくれるような、そんな話だけを書き続けてきた。
世に出して評価を受ければ、もっと良い話が、もっと君好みの話が書けるようになるんじゃないかと思った。
幸いなことに良い反応の方が今のところは多いけれど、それでもやっぱり批難を受けることだってある。
知らない人に酷評された時もあった。陰で嗤われたこともあった。明らかに読んですらいないであろう人に、私の人格まで纏めて貶されたことだってあった。
それでも、まだ書いている。飽き性の私が未だに、誰に何を言われても書いている。
貴方に書けなかったラブレターを、創作という隠れ蓑に包んで、書いている。
28
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:12:15 ID:UZIhG2J.0
気付いている。私の手から生み出される物語は、全て貴方の焼き直しに過ぎない。
だって、全部『同じ話』だ。
どれも結局、貴方のことしか書いてないのだから。
創作としての芸術性も、面白さも、美しさもない。ただただ、同じ話をいくつも無為に積み重ねているだけ。幼児の積み木遊びにすら劣る、惰性で続いているだけの愚行。
認めて欲しかった。許して欲しかった。肯定して欲しかった。
貴方という人間がこの世にいたことを知らしめたかった。
貴方がどれほど素晴らしくて価値のある人間だったか、世界に見せつけてやりたかった。
月下美人を見て、私みたいな花を見てようやく気が付いた。
それはまるで、鏡を見て初めて、自分の姿を認識するみたいに。
29
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:13:21 ID:UZIhG2J.0
はっきりと言える。私は他の誰でもない、私のために小説を書いている。
決して、貴方のためなんかじゃない。高尚で立派な理由なんて何処にもない。
貴方が絵を描いていた時の気持ちを知りたかった。
貴方が花を見つめていた時の感情を知りたかった。
貴方が自分の作品を私に見せてきた理由を知りたかった。
貴方がしていた『創作』という行為を、私もしてみたくなったのだ。
子どもが大人の真似をして、大人になっていくみたいに。
貴方の真似をすれば、貴方みたいになれるんじゃないかって思ったんだ。
貴方の気持ちを知れるんじゃないかって思ったんだ。
貴方が見ていた景色を私も見られるんじゃないかって思ったんだ。
子どもが大人の真似をして、大人と笑い合うみたいに。
貴方の真似をすれば、また、貴方と笑えると思ったんだ。
30
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:14:23 ID:UZIhG2J.0
幽霊に、貴方に会いたいと願うのは、そんなに傲慢なことだろうか。
もう一度、貴方の声が聴きたいというのは、そんなに我儘なことだろうか。
貴方に向けた物語を綴るのは、そんなに馬鹿なことだろうか。
まだ貴方のことが好きなのは、そんなに駄目なことだろうか。
そんな憤りを、誰かに話せば嗤われるに違いない開き直りを、今もしつこく書いている。
ずっと隣に置いていたカップアイスを手に取る。
まるで中身の減っていないそれを、震える手でビニール袋に戻す。
眼前では、優しい光を携えた月下美人が、ふわふわと揺れている。
31
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:14:49 ID:UZIhG2J.0
ξ;⊿;)ξ
あぁ。
やっぱり、今年もダメだった。
32
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:15:21 ID:UZIhG2J.0
*
あぁ。
やっぱり、今年もダメだった。
今年もまた、持っていかれてしまった。
33
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:18:01 ID:UZIhG2J.0
( ^ω^)「……美味しそうだったおね。溶けてたらしいけど」
ついさっきまで、僕の足の傍に置かれていたバニラアイス。
毎年アイスを持ってきてくれるのは嬉しいのだが、この10年、一度も食べられたことはない。
いつもいつも、液体と化してしまったアイスを持って帰る彼女を見送って終わってしまう。
今年こそはと思ったのだけれど、やはり残念な結果に終わってしまった。
昔よく彼女と食べたアイスと違うのは残念だったけれど、それはそれとして、僕も高いアイスとやらを食べてみたかった。
こんな身分になってしまって『食べたい』だなんて、ちゃんちゃらおかしい気もするが。
34
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:18:51 ID:UZIhG2J.0
……いや、そもそも、”足の傍”という表現もおかしいのだろう。
視線を下に向ける。膝から先が、陽炎みたいに揺れている。
そこに、かつてあった両脚はない。
『幽霊には足がない』。そんなよく聞くイメージは、本当だ。
僕は僕以外の幽霊に会ったことがないので他は知らないが、少なくとも、僕は足がないタイプの幽霊だ。
35
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:19:31 ID:UZIhG2J.0
10年前、僕は幽霊になった。
それからというもの、僕はどこに行く訳でもなく、ただずっとこのバス停にいる。
時々はここを離れて遠い街を見に行ったりもするが、それでも基本は、ここにいる。
別に、何かしらの要因で縛られている訳でもない。僕はきっと、いわゆる『地縛霊』というものではないのだろう。離れようと思えば、プカプカ浮いて離れることが出来るのだから。
僕がここにいるのはひどく単純な理由。良く言えば『純愛』で、悪く言えば『下心』。
僕はずっと、今さっき泣きながら去って行った、一人の女性を待っているのだ。
36
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:20:45 ID:UZIhG2J.0
幼馴染だった。
幼稚園が一緒で、小学校も中学校も、高校もずっと同じだった。
異性ではあったけれど、不思議と距離が離れたりはしなかった。
……いや、別に振り返ってみれば不思議でも何でもない。
僕がただ、彼女と疎遠になりたくなくて、いつもしつこく話しかけていただけだ。
中学に上がってからバス通学になったのは、僕にとって好都合だった。
こんな田舎の古びたバス停を使うのは、僕と彼女の2人だけ。
幼少の頃みたいに2人きりで話していても、囃し立ててくるクラスメイトや大人はいない。
きっとこの場所がなければ、性別とか思春期だとかの下らない理由で、僕らは疎遠になっていたに違いない。
だから、僕はここにいる。ここが一番、彼女との思い出が多いから。
彼女と待ち合わせをするのなら、ここより分かりやすくて相応しい場所はこの田舎にはない。
37
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:21:10 ID:UZIhG2J.0
( ^ω^)「……また、ダメだったなぁ」
( ^ω^)「毎年いつも、ここに居るのに」
つい数分前まで彼女が座っていた場所に目をやる。
毎年この時期になるといつも、彼女はカップアイスを持ってここに来てくれる。
今年の春、よく2人で行っていた駄菓子屋がなくなったからどうなるだろうかと不安だったが、どうやら杞憂だったみたいだ。
せっかく高そうなアイスを持ってきてくれたのに、毎年のことながら、本当に申し訳ない。
しかし、今年はいつもより焦ってしまった。
例年通りなら昼過ぎには来るのに、今回は日が暮れても現れないから、とうとう来なくなってしまったかと思ったのだ。
変わらず彼女は綺麗なままだったが、その横顔には少し疲れが滲んで見えた。
社会人というのはそれほど辛い生き方なのだろうか。僕は残念ながら成れなかったので、うまく想像できないが。
38
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:22:34 ID:UZIhG2J.0
ベンチから立ち上がり、歩き始める。足がないのに歩くというのも変だが。
バス停の前に広がる叢の中心に咲く、一輪の白花に目を凝らす。
『月下美人』。
どうしても一度、彼女に見せたかった花だった。
こんな場所に月下美人が咲くなんて、幽霊になるまで知らなかったことだ。
10年前、ここにいたのはいつも昼か遅くとも夕暮れ時で、月下美人は基本的に夜中に咲く花だから。
花言葉と見た目のイメージ通り、とても儚い花だ。
花火が打ち上げられた瞬間のように絢爛で堂々とした姿だが、その繊細な花弁と色合いから察せられるように、凄く繊細な花。
今日のように月明かりが通った晩は、白い花弁に月光が反射して、より神秘的に見える。
彼女に見せられてよかった。
39
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:23:17 ID:UZIhG2J.0
ぼんやりとバス停に留まっていたある日の夜、偶然この花を見つけた。
もう随分と長い間ここにいるが、月下美人が咲くなんて知らなかった。
その事実に驚くと同時に、月下美人を見た時、強烈な既視感を覚えた。
彼女に似ていると思ったのだ。
美しいその容貌も、実はひどく繊細な内面も、花言葉も、どれもが君に凄く似合うと思った。
君のためにこの地球に咲いたんじゃないかと、そんな馬鹿らしいことを本気で思うくらいに。
40
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:24:24 ID:UZIhG2J.0
どうにかこの花を君に見せたい。
ここで月下美人を見つけてから数年、ずっと悩み続けていた。
僕は幽霊だ。魔法使いじゃない。
雨を避けることは出来るが、雨を呼ぶことは出来ない。物を通り抜けることはできるが、物に触れることは出来ない。
そもそも生きている間ですら、君の空いた手を握ることすら出来なかったのだ。
それが今更、花に水をやりたいだなんて願ったところで後の祭りが過ぎるというもの。
それでも、じっと考えた。考えが願いになって、願いが祈りになった。
1年ずっと花のことを考えていたある日、ふと、気が付いた。
花が咲く時期が、ほんの少し、僕の予想とずれ始めていたことに。
41
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:26:03 ID:UZIhG2J.0
もしかしたら、という淡い希望が芽生えた。
1日でいい。たった1日でいいから、ここにある月下美人が満開になる日を遅らせてほしい。
僕の命日の前日に咲く筈だった月下美人に、強く、強くそう祈った。
本気で期待していた訳じゃない。
そもそも、10年間毎日欠かさず祈ってきた願いだって未だ叶う兆しがないのだ。
たかだか数年ぽっち花を見つめたところで、何かが起きる訳がない。そう思っていた。
するとどうだろう。
期待通り、祈り通り。いや、ある意味予想に反して。
僕が死んでから、ちょうど10年が経った今日。
僕は、君に花を見せることが出来てしまった。
42
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:26:40 ID:UZIhG2J.0
( ^ω^)「喜んでくれたっぽいし、それはよかったおね」
喜びを嚙み締めながら、夏風に揺られる月下美人を撫でる。
『いや、撫でるというのもまた違うな』と、花を透過した自分の手を見て思った。
( ^ω^)「……あ」
これなら花を潰してしまう危険もない。
そんな呑気な考えは瞬く間に霧散し、同時に、一つの不安が心に芽吹いた。
さっきまで居てくれた幼馴染の話。
去年の夏から今日にかけての1年で、新たに出来た彼女の趣味のこと。
43
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:27:40 ID:UZIhG2J.0
( ^ω^)「……本、かぁ」
『小説を書いている』。
とても意外で、だからこそ強く惹かれた、彼女の言葉。
44
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:29:56 ID:UZIhG2J.0
僕の記憶の限り、彼女が読書などという高尚な趣味に勤しんでいた風景なんて見た覚えがない。
現代文や古文の試験ではいつも頭を悩ませていたし、休み時間はいつも退屈そうにスマホを弄っていた。
そんなあの子が、読むどころか書く側になったなんて、俄かには信じがたい出来事だ。
いや、思い返せば僕はあの子のことをあんまり知らなかったんじゃないか。
そもそも彼女が毎年律儀に、僕の命日に来てくれることさえ予想してなかったのだ。
僕は彼女のほんの一面だけを見て、何でも知っている気になっていたのかもしれない。
幼馴染という立場に胡坐を搔いていた分際には、相応の事実だろう。
45
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:30:38 ID:UZIhG2J.0
一体どんな話を書いているんだろう。
触れられない花を視界の中心に捉えながら、空想に耽る。
そういえば少女漫画の類は偶に読んでいるところを見かけたことがあるから、恋愛小説とかだろうか。
そうだったら嬉しいな、僕の好きな話のジャンルだから。
あの子は美人だ。幼馴染という贔屓を引いても十分に。
中学や高校の頃ならいざ知らず、小学生の頃から彼女にちょっかいをかけようとする男子の多いこと。
その筆頭であった僕が不満を言う権利などないことは百も承知だが、それでも、彼女に視線を向ける人は年齢や性別を問わず多かった。
僕みたいな何の取り柄もない人間が彼女の傍に居られたのは、偏に『幼馴染だから』としか説明が出来ない。
それを自覚しておきながらずっと彼女の傍に居続けてたのだから、僕も随分と面の皮が厚い人間だった。
1年に1度、この場所でしかもう彼女の姿を見られないが、それでも異性たちから相当なアプローチをかけられていることくらいは察している。
『恋人が出来たことなんてない』と以前話していたけれど、それでも何かエピソードの1つや2つくらいあるだろう。
彼女が書いた恋愛小説か。なるほど、全く中身が予想出来ない。
46
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:31:20 ID:UZIhG2J.0
( ^ω^)「読みたいなぁ」
想像は想像だ。実際、彼女がどんな話を書いているかなんて分からない。
どの道、幽霊の自分では本のページを捲ることだって出来やしない。
考えるだけ無駄だ。彼女が書いた物語を読む手段は、僕にはない。
( ^ω^)「来年は持ってきてほしいおね。
そもそも、来年も来てくれるかは分からないけれど」
『せめて表紙くらいは見たい』。身分不相応な期待が胸に沸く。
10年もこんな田舎まで来てくれたこと自体が一つの奇跡だ。大人になった彼女の姿を見られただけで、本当は満足するべきなのに。
我ながら欲張りが過ぎる願望に嫌気が差して、自然と長い溜息が漏れた。
『自分は地縛霊ではない』と評したが、『悪霊』ではあるかもしれない。
花が咲く日をほんの少しずらせるくらいの力があると知った日から、ぼんやりとそう考えていた。
47
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:32:53 ID:UZIhG2J.0
もしかして、僕が彼女に会いたいと思っているから、彼女は未だにここに来てしまうのではないだろうか。
『願い』なんて綺麗な言葉で繕ったところで、その中身は結局のところ『欲望』や『未練』と言った方が相応しい代物だ。
僕の怨念があの子の思考に影響しているんじゃないか。僕は10年経った今も、あの子を縛り付けているんじゃないだろうか。
そんな訳がない、とは言い切れない。現に僕は、今もまだ彼女が会いに来てくれることに、狂おしいほどの喜びを感じてしまっている。
幸せになって欲しい。死ぬ間際になんとか遺せた想いは、紛れもない本音だ。
いや、今もそう思っている。僕なんかよりずっと素敵な人と結ばれて、暖かい家庭を築いて、どうか幸せな人生を辿ってほしい。どうか、笑顔で安らかに人生を終えて欲しい。
あの子が笑っているのなら、僕はそれでいい。本当だ。
( ^ω^)「………矛盾してるおね」
風に揺られる月下美人が、花弁の付いた頭を一礼させた。
それがまるで肯定の意思表示に見えて、なんだか面白く感じてしまう。
誰とも話せずに10年も漂っていれば、そりゃあ花にも話しかけたくなる。
けれど、こんな風に返事をされたみたいに見えたのは初めてだった。
48
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:33:28 ID:UZIhG2J.0
結局、僕は君に何を望んでいるのだろう。
生きていた頃も、死んで幽霊になった後も、未だに答えが出ないのだ。
毎年、夏の終わり頃に来る君を見る度に嬉しくなる。
君の愚痴や恨み言を聞くたびに、胸が詰まる。
君の左手の薬指に何もないことを確認する度に、顔が綻びそうになる。
君が背中を向けて帰る姿を見る度に、「もう来なくていいよ」と伝えたくなる。
人間だった頃もそうだった。
僕はずっと、あの子のことだけを絵に描いていた。
彼女に見せることだけを考えて筆を動かしていた。
例え部活程度のものだったとしても、絵描きが芸術と向き合う時の心情としては、きっと下の下もいい所だ。
49
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:35:57 ID:UZIhG2J.0
僕のこの感情はまだ、『恋』と呼んでいいものなのか。
これはもう、只の執着や呪いなんじゃないか。
僕はもうあの子に、友情も恋慕も親愛も、何も持ってないんじゃないんだろうか。
答えはまだ分からない。けれど、はっきりと言えることは一つだけある。
結局のところ僕は、『君が幸せならそれでいい』なんて、格好いいことを言えるような人間じゃなかったのだ。
普通の感性を持った人間なら、こんな所で10年も人を待ったりしない。
大切だった異性が未だ独り身であることに喜びを覚えたりしない。
割と自分は善人寄りの人間だと思って生きていたが、どうやら大間違いだったらしい。
50
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:36:48 ID:UZIhG2J.0
10年間。僕が幽霊になってから、3653日。
ずっと、君とまた話せるようになる方法を考えていた。
霊感がある人を探そうと思った。けれど、国中の何処に飛んで行っても僕が見える人には出会えなかった。
誰かに憑りつこうとも考えた。でも憑依なんて全く出来なかったし、ずっとつき纏った人は体調不良すら訴えることなく普通に過ごしていて、失敗した。
物に触れて伝えようとした。でも、花にすら触れられずに手は空を切るばかり。足がなくともベンチに座ることは出来るのに、不思議なものだ。
振り返る。視線の先に、よく彼女と2人で座っていたバス停のベンチが見える。
好きだった駄菓子屋はなくなったし、懇意にしていたスーパーも潰れたし、駅前にはコンビニが出来た。10年前と比べれば随分と色んな所が変わった。
けれど、このバス停だけは、何一つ変わらない。
まるで、ここだけ時間が止まっているみたいだった。
51
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:39:07 ID:UZIhG2J.0
叢を抜け出して、またベンチに腰掛けた。
色んなことを君と話した。
下らないこと。大事な相談事。描いた絵の話。休日に出かける約束。定期テストの点数比べ。
小学生の時は隣街に遊びに出るのに使って、中学からは通学に使った。
大人が3人座れば満員になってしまう程度のベンチに、語りきれないくらいの思い出が詰まっている。
今でも少し気を抜けば、制服姿の君が呆れたように笑っている姿が思い浮かぶ。
僕が死んでしまって1年経った日、彼女がこのバス停に来てくれた時は、飛び上がるくらいに嬉しかった。
墓も、通っていた学校も、よく行った駄菓子屋も、待ち合わせの場所にはちょっと違う。
やっぱり僕らが会うなら、このバス停だと思った。
同じ事を考えていたんだって、凄く嬉しかった。
52
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:39:55 ID:UZIhG2J.0
『ずっとここに居よう』。彼女が命日に来てくれた日から、そう決めた。
幽霊になった今、僕には国境も海も障害にならない。行こうと思えば、海外にだって行ける。
けれど、そうはしなかった。
いつ君がここに来るか分からない。もしかしたら、命日以外の日に来るかもしれない。
そう考えてからは、基本的にここに居ることにした。
別に苦にはならなかった。
昔から、待ち合わせをすると僕の方が早かった。君を待つのには慣れている。
大人になっていく君を見られるのなら、別に10年間待ち続けることなんて大したことじゃない。
やろうと思えば僕はきっと、100年だって待ち続けられる。
53
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:44:01 ID:UZIhG2J.0
( -ω-)「また、今日から1年待たなきゃだおね」
彼女に会いにいくことはしない。
彼女には彼女のプライバシーがある。何より、あの子は自分の弱っている所を見られたくない人だ。
目に見えないことを利用して彼女の尊厳をこっそり傷つけてまで、あの子が知ったら嫌がるようなことはしたくない。
彼女が右手を置いていた位置に、そっと自分の左手を置く。
君の顔が次に見られるまで、また364日。
今回は閏年だけじゃない分、前回より1日分だけ気が楽だ。
54
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:44:41 ID:UZIhG2J.0
ゆっくりと目を瞑る。
閉じた瞼の上に、淡く優しい月明かりがゆっくりと差し込む。
月光で形作られた影が、あの頃の君を映し出す。
しかめっ面をしながらも、僕の絵を見てくれた君。
季節の変わり目に、僕が好きだと言った花を見つけて笑う君。
暑い中、イチゴ味のアイスを一気に食べて頭を押さえる君。
カメラのシャッターで切り取ったみたいに、写真の形をした思い出が駆け巡る。
その全部に、君がいた。
僕が見る走馬灯には、君だけしか映っていなかった。
55
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:45:19 ID:UZIhG2J.0
( -ω-)「……………あ」
( -ω-)「そうか」
海の中をもがくみたいに、ずっと自問自答を繰り返してきた。
昔の景色と、大人になった君の表情が重なる。
バス停で君を待ちながら、風に揺れる花を見ながら、ずっと考えていたことがあった。
( -ω-)「君はまだ、こんな気持ちでいてくれてるのかな」
ずっと知りたかった。
長い年月が経ってもまだ、足繫くここに来てくれる君の想いが。
なんだかんだ言いながら、いつも僕の話に付き合ってくれていた時の君の笑顔が。
傲慢かもしれないけど。思い上がりかもしれないけど。
それが、突然、10年経ってやっと。
今になってようやく、答えが出たような気がしたんだ。
56
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:45:53 ID:UZIhG2J.0
( -ω-)「もしかして君は」
( -ω-)「ほんのちょっとでも、僕のこと、好きでいてくれてたのかな」
僕らは幼馴染だった。決して、恋仲なんかじゃない。
最後の最期まで結局、君が僕のことをどう思ってくれていたのかは分からなかった。
分かっている。分かっているつもりだ。
生きていた頃、そんな風に考えたことなんてなかった。
滅多なことを考えては駄目だと、自分に言い聞かせながら君を描いていた。
けど、今もまだこうして、僕に会いに来てくれるってことは。
とっくに灰になった僕のために、強がりな君が、泣いてくれるってことは。
今更だけど、少しくらい、思い上がってもいいだろうか。
57
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:47:39 ID:UZIhG2J.0
ひどく自分に都合の良い空想を広げて、ふと、腹に何かがストンと落ちる感覚がした。
幽霊になってやっと分かった。
僕には絵も、花も、アイスも、月明かりすらも要らなかった。
僕が求めていたのは、昔も今も同じだったのだ。
ずっと、君と一緒にいられると思っていた。
大人になっても、老人になっても、ここで君と一緒にバスを待ち続ける人生だと思っていた。
君が健康に笑ってくれているなら、それで満足だった。
君以外、僕には何も要らなかった。
ξ*゚⊿゚)ξ
本気でそう思ってたんだ、ツン。
58
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:49:02 ID:UZIhG2J.0
どうすれば、君が持ってきてくれるアイスを食べられるだろうか。
どうすれば、君がしてくれる話に言葉を返せるだろうか。
どうすれば、君が空けてくれている右手に、僕の左手を重ねられるだろうか。
色々と思いつく限りの手段は試してみたけれど、結局どれも上手くいかないまま10年も経ってしまった。
泣かせたい訳じゃなかった。
死んでからも君の泣き顔を見るなんて、思ってもなかった。
「拭えなくてごめん」って、「泣かないで」って言いたかった。
僕はここにいたんだ。ずっとここにいるんだ。見えないだろうけれど、それでも。
昔と変わらず今も、ここで君を待ってるのに。
意味なんてない、見えないのだから。価値なんてない、触れられないのだから。
とっくにいなくなった分際で、墓にも入らずに漫然と浮かんで。
アイスが溶けるみたいに、いつか僕も成仏すると思い込んで。
与えられた時間で家族に会うこともせず、約束すらしていない待ち合わせに費やして。
10年間ただずっと、地縛霊みたいに未練がましくベンチに1人座り続けて。
こんな無意味なことをやり続けている僕は、やっぱり悪霊に違いない。
59
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:50:26 ID:UZIhG2J.0
目を開けて空を見上げた。
夜の雲は不思議と高く見えると言ったのは、確か君の方だっただろうか。
雲の隙間から、風鈴みたいに月光が優しく揺れている。
その下には、月の光を浴びて煌々と輝く、月下美人が咲いている。
ふと、君が書いたといった、物語のことが頭に浮かんだ。
どんな話なんだろう。どんな人を書いたのだろう。
君は一体、何を考えて物語を綴ったのだろう。
彼女の話しぶりからして、もう何度も誰かに見せたりしたのだろうか。
今はインターネットが発達したらしいから、そこにアップしたりしてるのだろうか。
話を読んだ人たちが羨ましくて仕方がない。あの子が書いたのならきっと、優しい話に違いないから。
60
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:54:28 ID:UZIhG2J.0
また一つ、君に会いたい理由が増えた。
来年の君は、ちゃんと形になった本を持ってここに来てくれるのかな。
それならば来年までに、今度こそ、君と会えるようになる方法を探しておかないと。
何年経ったって諦めない。
来年も、10年後も、100年後も。
これからも僕は変わらず、君にまた会える方法を探しながら宙を歩くのだろう。
もし良い方法が見つかったら、それはそれでどうしようか。
次はたった一輪咲かせるだけじゃなくて、両腕一杯でも抱えられないくらいの花束でも用意しようか。
流石に今回みたいに月下美人という訳にはいかないから、向日葵とかはどうだろう。
999本くらい集めてみようか。でも意味がバレたら「馬鹿じゃないの」って君は怒るかもなぁ。
どんな顔をして君に会うのがいいだろうか。やっぱり笑顔かな。
君は昔みたいに「ヘラヘラすんな」って怒るかもしれないけれど。
いや、それでもいいか。君とまた話せるのなら、なんだって。
61
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:57:06 ID:UZIhG2J.0
あぁ、今回もまた上手くいかなかった。
この10年、色々と試してはみたものの、何の進歩も成果もない。
出来たことは精々、花が咲く時期をほんの数日ずらせたくらいのものだ。
君に声を届けたい。姿を見せたい。君の書いた話を読んでみたい。
なにか、幽霊に合った適切な方法はないだろうか。
生まれ変わるとか、実体化とか、蘇りとか、憑依とか、何かいい方法はないものだろうか。
なんでもいいから、僕に合った方法は本当にないのだろうか。
ここに留まりながら、凛と咲く月下美人を見ながら、そんなことばかり考えている。
今までも、これからも、幽霊になっても、ずっと。
ただ、君のことだけを待っている。
62
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:58:11 ID:UZIhG2J.0
幽霊に合う方法を探している。
まだ、成果はない。
63
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 00:59:38 ID:UZIhG2J.0
(^ω^ )月下、バス停、夕を待つようですξ゚⊿゚)ξ
〜おしまい〜
64
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 01:00:13 ID:UZIhG2J.0
終わりです。
読んでいただき、ありがとうございました。
65
:
名無しさん
:2024/09/28(土) 06:19:53 ID:8sgChnEA0
ヴィオラの人?
66
:
名無しさん
:2024/09/30(月) 14:54:45 ID:ztyRfAP60
おつおつ
スレタイAAミスってるとおもったんだけど、これお互い会えてないってことなんかな
67
:
名無しさん
:2024/09/30(月) 14:57:04 ID:ztyRfAP60
あとプラ心の人?ちがったらすまん
68
:
名無しさん
:2024/10/01(火) 19:32:42 ID:sqabtGaA0
冒頭のツンの行為がDQNじみていたり、何かとイライラしていたり、他人のせいにする描写がちらほら見られたりしたせいで、
主人公が想い人に会える展開を願えなかったし、ブーンの「君の書いた物語は優しいものだろう」という予測はあまり信用できませんでした。
ツンは自分の「幽霊に会うための見境ない行動」をどう思っているのでしょう。結果的に子供を怖がらせたり、警察や警備員に迷惑を掛けたり、神職者を悲しませたりしているのだけれど。
申し訳ないと伝えたのか、会いたいんだから察してよと黙すタイプなのかすら分からない。
警察沙汰の件は下調べを怠ったツンに非があります。お札を剥がすのは言わずもがな。スプーンや保冷材は必要なら自分で用意するもの。日程管理はうまくいかなくて残念だったろうけれど、ここまでの数レスで素直に同情できないでいます。
もしも、ツンはついなりふり構わず行動してしまう女性で、後から他人に迷惑をかけたことに気づいて自責の念に駆られることを繰り返しているというなら、
こんな駄目な私でも、かつて受け止めてくれたあなたにもう一度会いたい、と後の展開にプラスに作用したと思います。
うまく私に読み取れなかっただけで、そういうことが書かれていたんだったらいいなと思います。
物語全体に仕組まれたツンとブーンの関係性は綺麗だし、恋愛で重要な互いの気持ちのことはちゃんと伝わってきました。
読者としては、これくらいの文量なら、ツンとブーンはどういう人なのかとか、花を見せたいという願いにどういう意味(あるいは過去のエピソード)があるのかとかを中盤に知りたいです。
そのうえでラストシーンを迎えられると、読みやすく共感しやすい読書の時間になりました。
69
:
名無しさん
:2024/10/01(火) 23:56:59 ID:b87XUt2k0
変な批評家湧いとんな、、
面白かったよ乙、月下美人てほんとにある花なんだな 描写とか地の文細やかなのに読みやすかった
70
:
名無しさん
:2024/10/02(水) 00:32:26 ID:c51HM5L60
この程度の感想で変な批評家扱いされるとかマジ?ここは肯定的な感想しか許されない怖いインターネッツですね
・まとまった文章の焦点
最初の文で、幽霊に会う方法を探していてまだ成果がない、と書いてある。
だから読者は、これまでの試みは無駄に終わったんだなと考える。
そうして次に、「思いつく手段は片っ端から試した。」と失敗例が提示される。
それを逆説の「けれど」で繋いで「けれど残念ながら、どれも全く効果がなかった」と続ける。
これはやや冗長に感じる。無駄に終わったことは最初の文で読者はもう分かっている。
ここで一番アピールするべきなのは"効果がなかった"という既知の情報ではなく
"どのようなことが無駄に終わったのか"という具体例のほうだろう。
だから逆説の接続詞や、副詞で分かっていることを強調するのは焦点がずれているように感じる。
「けれど、残念ながら、全く」などの逆説・強調を削るか、
読者の情報を制限するために、冒頭の「まだ、成果はない」を削る方が良いと思う。
A
幽霊に会う方法を探している。
まだ、成果はない。
この10年、思いつく手段は片っ端から試した。
深夜に墓に行ったり、神社のお札を勝手に剝がしたり、有名な霊能力者とやらに会ったり、全国の心霊スポットを巡ったり。どれも効果はなかった。
深夜に墓に行ったところで虫刺されが増えただけだし、霊能力者はよくわからない壺を高値で売りつけてきたりと散々だ。
B
幽霊に会う方法を探している。
この10年、思いつく手段は片っ端から試した。
深夜に墓に行ったり、神社のお札を勝手に剝がしたり、有名な霊能力者とやらに会ったり、全国の心霊スポットを巡ったり。
けれど残念ながら、どれも全く効果はなかった。
深夜に墓に行ったところで虫刺されが増えただけだし、霊能力者はよくわからない壺を高値で売りつけてきたりと散々だ。
・描写の時制
>まるで、ここだけ時間が止まっているみたいだった。
という一文は、
>まるで、ここだけ時間が止まっているみたいだ。
の方が臨場感を演出できて良いと思う。
これまで過去の失敗例を過去形で語ってきたところで、
「ドスンとバス停のベンチに腰掛けた」 と、描写が語り手(主人公)の現在の時間に移動している。
今、描写の対象は過去の失敗例と異なり、語り手の非常に近くにある。時間的にも空間的にも。
なら、その後につづく描写を総括するこの感想は、
まるで、ここだけ時間が止まっているみたいだ。
という現在形の方が良いと思う。
71
:
名無しさん
:2024/10/02(水) 00:35:59 ID:c51HM5L60
・読者が主人公を気にかける要素が早い段階で欲しい
この物語の冒頭のフック(読者の興味を惹くポイント)は「この主人公はなぜ幽霊に会おうとしているのか?」になると思う。でも、そういうプロットのフックだけでは読者の関心を得るには不十分であることが多い。
読者は主人公と共に物語を歩むことになるので、主人公の人となりに対して興味を持ち、物語の同伴者としてふさわしい人物か知ろうとする。主人公=語り手の場合は特に。
だから読者がそうやって主人公に注目している間にアピールして、読者の心を開かせ、主人公との間に心理的な繋がりを持たせる必要がある。
この主人公はなぜ? というプロットのフックがあっても
主人公自身に興味を惹かれなければ、主人公が何故それをしようとしているのか読者はそれほど気にならない。モブキャラが死んでも大して心を動かされないのと同じ。
これについては、いくつかテクがある。
1 犠牲者、かわいそうな境遇の主人公
2 善人、人間的な美徳を持った主人公
3 憧れの対象となる主人公
4 読者と同じ状況・立場にいる主人公
大体この4タイプのどれかを描写することによって、読者は主人公に心理的つながりを感じる。
それぞれ1つ例を上げれば
1 怪我や病気で苦しんでいる
2 困ってる人を助ける
3 知的である
4 ターゲットとして想定する読者に合わせる(学生、主婦、サラリーマンなどを設定し解像度を上げていく)
ここ最近のブーン系で良かった例の一つは「ファイナルのようです」だろう
今のブーン系読者は大半が兼作者だと思う。その意味で、あの主人公ドクオはかなりの精度で読者と同じ立場にいる。(さらに両親が事故死しているという背景で、1の犠牲者というテクも併用している)
これらのテクとは別に、この物語の主人公ツンを見ても、最初のセリフは悪態、次のセリフも悪態。
読者は彼女と一緒にこの物語を歩もうという気になるだろうか。少なくとも俺はならなかった。
なんか長文の感想が書いてあるから俺もノリで書いてみた。
まあこれは感想というより気になった点だが。
72
:
名無しさん
:2024/10/02(水) 08:45:49 ID:BBHdxppU0
おまえは誰やねん
73
:
名無しさん
:2024/10/02(水) 09:30:47 ID:oZPIn4cc0
ついにファイナルでも変なのに絡まれるようになったか
本当にヴィオラの作品かどうかもまだわからんのに
74
:
名無しさん
:2024/10/02(水) 13:51:43 ID:c51HM5L60
君ら誰が作者かどうか気にしながら感想書いてるわけ?おめでたいな、それに感想書くのに自己紹介が必要だなんて知らなかったな
75
:
名無しさん
:2024/10/02(水) 14:44:38 ID:mzsWOEAc0
純粋に作品スレでそういう諍いされるのも困ると思う
感想でageようよ
作者さん、乙
76
:
名無しさん
:2024/10/02(水) 15:14:32 ID:jFwuZH560
いい感想じゃん
ここまで熱心に読んでもらえたら普通に嬉しいと思うが
77
:
名無しさん
:2024/10/02(水) 20:28:36 ID:1hQOx5LQ0
乙乙。月下美人一度は見てみたい
ほんとに某レンズの登場で、花の名前調べるの異次元レベルで楽になった
四季を感じながら好きな人と二人きりで過ごした分、特別な場所だと囚われてしまう心情分かるわ
ツンパートとブーンパートで構成リンクするとこもハッとする感じで良かった
仮にツンが愛せるまだ見ぬ相手が同時代に存在したとして、寿命も健康も一緒に居られる時間も減っていってる訳だけど、無理に相手を探すのは相手にも自分にも不誠実な気がするし、辛くなるなら先の事は思い詰めなくてイインダヨグリーンダヨ!と思った
ブーンがいつか完成した本をツンに音読してもらえますように
だけど憑依なんて穏やかじゃない言葉がナチュラルに所々入ってやっぱり幽霊なんだなと、笑いながらヒュッてなった
78
:
名無しさん
:2024/10/02(水) 21:55:16 ID:xvBFfwEo0
他のスレでもやれば良いのに。みんな負けじと読んで長文感想書くようになる。
79
:
名無しさん
:2024/10/02(水) 22:57:34 ID:1hQOx5LQ0
ごめん、普段から感想長いだけなんで…
80
:
名無しさん
:2024/10/02(水) 23:59:19 ID:eVrs4xa20
良い所についても言及してんならまだしも70のだと批評ですらないただの批判に見えるんよな
まぁホントにヴィオラの人なら怒らんやろうけど、ノリで書いていい言葉ではないだろ
81
:
名無しさん
:2024/10/03(木) 02:22:06 ID:KTMK3MGY0
書いていい言葉とかいけないとか勘違いもここまで来ると笑えるな
まさか本当に肯定的な感想しか許されないと主張する気なのか?
そもそも批評は良し悪しや価値の判断を含むから当然批判が内在する
俺は批評なんて高級なものを気取る気はないが、
良いところを褒めるのも悪いところを指摘するのも感想を書く者の自由だろ
82
:
名無しさん
:2024/10/03(木) 10:59:24 ID:3kUicAmw0
書いてもいいと思うけど批評家と指摘されたぐらいですぐ喧嘩腰になるから鼻につくんやと思うで
人の作品スレで暴れてる時点で荒らしやで
83
:
名無しさん
:2024/10/03(木) 11:17:19 ID:KTMK3MGY0
>批評家と言われたくらいで喧嘩腰
まずこれが間違ってるわけ
>変な批評家湧いとんな
実際の言葉はこれで都合よく矮小化するなよ
さらに間違ってるのは、言われたのは俺じゃなくて俺の前に感想を書いた人
俺が言われたのは
>おまえは誰やねん
>ついにファイナルでも変なのに絡まれるようになったか
>本当にヴィオラの作品かどうかもまだわからんのに
喧嘩売ってるのは向こうだと思うけどな俺は
他人の作品スレで暴れるなという指摘は一理あるが
84
:
名無しさん
:2024/10/03(木) 11:38:57 ID:30NeEo1c0
ヴィオラかどうか分からんのは関係なくないかとは思ったな
85
:
名無しさん
:2024/10/03(木) 11:46:54 ID:s9Xvw5Xg0
続きはオムライススレとかでどう?
86
:
名無しさん
:2024/10/03(木) 17:42:57 ID:umz/iYIA0
作者が一番かわいそうやな
俺はいいなって思ったよ、特にタイトルのセンスと、あと始まり方と終わり方のリンクとか。乙乙
87
:
名無しさん
:2024/10/04(金) 01:46:41 ID:UuAFOOB20
え、これって荒れてる?
88
:
名無しさん
:2024/10/04(金) 01:52:20 ID:UuAFOOB20
な、なんだなんだ!?荒れてる!?なんで!?この令和の時代に!?
でも、つまりまだブーン系には人がいるってこと…!?ならいい、のか…?
89
:
名無しさん
:2024/10/04(金) 01:58:06 ID:UuAFOOB20
あの、作者です。プラ心です。ヴィオラでもあります。
仕事の休憩ついでに現行作品確認しに来たらちょっと荒れてて吃驚した。
てか何書いてもいっつも作者バレするの怖いんですけど。
こういう時に作者が何かしらの意見表明をするのって、却って悪手だったりするのかな。
でもとりあえず、自分は傷ついたりしてないし、怒り等の悪感情は何一つ抱いてないってことは言いたくて…。
一切反応しないのがベストなのかもしれないんだけど、ちょっと意見表明させてほしい。実はインターネットにあんまり慣れてない人間なんだ。余計なことだったら本当にごめんね。
90
:
名無しさん
:2024/10/04(金) 02:08:08 ID:UuAFOOB20
自分は何かしら作品を書いて世に出せれば満足だし、読んでくれた人がいれば更にもう大満足になります。
なので、どんな長文書き込みでも批評でも非難でも、基本的に全部ありがたいし嬉しいです。
というか実際、「うおお!感想とか細かい批評まであってありがたいぜ感謝!次はもっと良い作品書いてみせるぞ〜!」くらいの感情しかないや。
非難の類では全然ないし、皆かなり細かく読んでくれたことは伝わってきたし。
少なくとも自分は本当に気にしてないし、間違っても長文感想くれた人たちが悪意のある荒らしだとかも思ってない。
本当に読んでくれてありがとう!ラブだぜ〜!!
それと多分、
>>77
の人は空気を変えようと思ってくれたのかな。申し訳ない。
でも本当にありがとうございます。月下美人、是非一度見て欲しい。構成リンクしてるの気付いてくれたのも嬉しいです。
91
:
名無しさん
:2024/10/04(金) 02:16:43 ID:UuAFOOB20
まぁでもやっぱり喧嘩というか、言い合いはしないで欲しいかな。やる絶対的な必要性って多分ないと思うし。
同じブーン系民やん?同志やん?希少やん?そもそもやっぱ仲良くした方が楽しいやん?
言い合いする前にさ、とりあえず1回深呼吸して、他の作品に乙って言いに行こうぜ。一緒にSecret Garden待とうぜ!
でも曲当ては負けねぇからな!そこは譲らねぇ!
好きな花と好きなキャラでSecret Gardenの作者さんに短編書いてもらう権利を勝ち取るのは、僕だ…!!
92
:
名無しさん
:2024/10/04(金) 02:22:20 ID:UuAFOOB20
それじゃ、言いたいこと言ったし、自分これからアモーレ読む作業で忙しいから去ります。
いやホント忙しいから…あと昇竜マリオと地縛霊神殿の続き祈願の舞も踊らないといけなくてホント忙しいから…。
現行、今面白い作品沢山あるけど、その中でもあの2作品はSecret Gardenに並んで特に楽しみなんですよね。ワクワクしながら待ってる。
まだかな〜〜〜!!!(大声)
93
:
名無しさん
:2024/10/04(金) 06:56:26 ID:h25Kl3..0
乙です
面白かった
94
:
名無しさん
:2024/10/05(土) 19:25:08 ID:wO7ovKTY0
小劇場でバス停と月下美人だけの定点セットで劇やったら凄く映えそうだ
95
:
名無しさん
:2024/10/05(土) 20:36:48 ID:4gyTIzUY0
おつおつ
夕を待つってYou(あなた)を待つとかかってるのかな、夕は融(とける)もありそう
劇で映えそうなのわかる、朗読劇とかも似合いそうな話
96
:
名無しさん
:2024/10/07(月) 17:36:38 ID:v.4lTCQg0
乙
97
:
名無しさん
:2024/11/09(土) 17:38:41 ID:2QOwySuM0
おつ!
間違ってたらごめんだけれど言って。と雲と幽霊をモチーフにした感じ?
どちらも良い曲だよね
98
:
名無しさん
:2024/11/09(土) 21:40:29 ID:9AIIxNRs0
おれは花に亡霊かと思ってたけどたしかにそのふたつも合ってそう
影響うけてハマったわヨルシカ、再来週ライブいってくる
99
:
名無しさん
:2024/11/09(土) 23:09:28 ID:NX4GMmts0
モチーフってなんの話?
100
:
名無しさん
:2024/11/09(土) 23:17:26 ID:0W8CpDpY0
作者がイメージソングとして想定してそうって話じゃない?
実際のところはどうかもうわからんが作品に合うイメソンとか考えんの楽しいよな、俺はよくやってる
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