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彡(゜)(゜)「ワイはアドルフ・ヒトラー。将来の大物芸術家や」
472
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 18:56:35 ID:g7K//bD20
リンツ
(´・ω・`) ( ¯灬¯ ) (∗ 'ω' ∗)
両親は、ボクを快く迎えてくれた
久々の故郷はちっとも変わっていなかった
ドナウ川も、それに跨がる橋も、田舎の風景も
アドルフと歩いて回ったあの頃のままだ
(´・ω・`)「父さん、仕事を手伝うよ」
( ¯灬¯ )「すまないな」
(`・ω・´)「父さんは凄いよ たった一代でここまでの事業を築くなんて」
v( ¯灬¯ )「都会に染まらずにいい男に育ったな アドルフ君には感謝だ」
(´・ω・`) .。oO(アドルフはああ言ったけど)
どうせ後になって騒ぐんだからステファニーのことを調べておこう
(;´・ω・` ) .。oO(いないな…J(„❛⌄❛„))
一家全員ということは避暑にでも出掛けたのかな?
473
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 18:57:11 ID:g7K//bD20
それからもアドルフとは何回か手紙のやり取りをした
兵役検査でボクは結膜炎にかかっているとわかったので
これから眼鏡(⁻◎ω◎⁻)をかけることになるかもしれないと書いた
アドルフから返信が届いた
『親切な手紙をありがとう。
君が失明するかもしれないと聞いて、僕は悲しみでいっぱいだ。
君は今よりもますます楽譜を読み間違えることになるのだからね(笑)。
君が盲目になったら、僕もだんだんと消えてなくなっていくのだろうか。
おぉ、なんて悲しいことだ!
それはともかく親愛なるご両親によろしく。
アドルフ・ヒトラー彡(゚)(゚)』
474
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 18:57:34 ID:g7K//bD20
(´・ω・`)「もう、手紙でもボクのことをからかって……」
(´・ω・`)「あれ?この手紙の受付印の日付……四月二十日になってる」
(´・ω・`) .。oO(しまった!)
この日はアドルフの誕生日だ
すっかり忘れてた
(´ᴖωᴖ`;) .。oO(まあ、いいよね)
アドルフも誕生日のことにはなにも触れてないし
もしかしたら本人も忘れてるんじゃないのかな
それに、ウィーンに戻ってからお祝いすればいいんだ
とりあえず、帰る日が決まったよとだけ返信しておこう
475
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 18:58:13 ID:g7K//bD20
十一月二十日
ウィーン駅
(´・ω・`) ざわ…ー(⚭-⚭(⚭-⚭( ⚭-⚭ )⚭-⚭)⚭-⚭) ---ざわ… ┃柱┃
あの柱の下が、待ち合わせの場所なんだ
人混みは相変わらずだけど もう慣れたよ
テクテク┏(´・ω・`)┛
(´^ω^`)「あ、いた!」
(´・ω・`)「お待たせ アドルフ!」
(# ゚Д゚)「は?誰だよお前!」
(。゚ω゚)!!
( ;´-ω-` )「ご、ごめんなさい 人違いです…」
(# ゚Д゚)「ったく………気安く声をかけんな!」
アドルフによく似た青年
と言っても服装と背丈だけだけど、は悪態をついて去っていった
476
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 18:58:41 ID:g7K//bD20
(;´・ω・` ) .。oO(はぁ、ビックリした)
あれ…でも、アドルフはいない?
さてはまた遅くまで起きてて寝坊したんだな…
( ;´-ω-` )「全く 手紙には今日のこの時間だって書いたのに…」
仕方ない、柱にもたれながら待つか
五分後
┃柱┃
(´・ω・`)
二十分後
┃柱┃
(´・ω・`) .。oO(……待合室にいるのかな?)
テクテク┏(´・ω・`)┛
(・ω・`;≡;´・ω・)
(´・ω・`)……
(´・ω・`) .。oO(戻ろう……)
┗(`・ω・´)┓テクテク
477
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 18:59:27 ID:g7K//bD20
一時間後
┃柱┃
(;´・ω・` ) .。oO(おかしい…)
っていうかアドルフが時間を破るなんてありえない
(。゚ω゚)「まさか……病気!?」
そうだ、そうに違いない!
そういえば手紙にまた気管支カタルがぶり返してるって書いてた!
いそいで借家に行こう!
ε三三┏(;´・ω・` )┛
借家
ガチャガチャ
(;´・ω・` )「あれ?鍵が閉まってる」
(;´・ω・` )っ「おーいアドルフ ボクだよ 開けてよ」ドンドン
(・∞・)「なんだい騒がしいね!」
Σ(・∞・)「あれ?クビチェク君じゃない」
(´ᴖωᴖ`;)「お久しぶりです すみませんちょっと鍵がかかってて…」
大家のツァクライス婦人は不思議そうな顔をしてる
478
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 18:59:52 ID:g7K//bD20
(・∞・)「鍵がかかってるって当たり前じゃない…」
(・∞・)「だってその部屋は空き部屋ですもの」
(;´・ω・` )「え?何を言ってるんですか…」
(;`・ω・´)「ここはボクとアドルフの部屋ですよ!」
(;・∞・)「……もしかして何も知らないのかい?」
(;´・ω・` )「え?」
(;・∞・)(´・ω・`; )
ツァクライス婦人から次の三つのことを告げられた
アドルフは家賃を払うと姿を消したこと
別れの挨拶も何もなかったこと
手紙やメモも何も残さなかったこと
479
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 19:00:27 ID:g7K//bD20
( ;´-ω-` ) .。oO(アドルフ…)
一体何があったんだ……
……
(`・ω・´) .。oO(そうだ!)
そもそもあの部屋はボクがピアノを弾くために借りたんだ
きっとアドルフは一人であの広い部屋を持て余したんだ
だから引っ越したんだ!
アドルフはせっかちで抜けている所があるから
いろいろ無作法なことをして……
……
(´・ω・`) .。oO(……アドルフがそんなことをする?)
急いで部屋を借り
知りうる限りの知人、考えられる限りの関係者のもとに走った
そしてボクの住所を教えた
アドルフを見かけたら知らせて欲しい、伝えて欲しいと言伝をして
しかし、一週間たっても、二週間たっても
なんの音沙汰もなかった……
480
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 19:00:54 ID:g7K//bD20
(´-ω-`) .。oO(そして一年がたった)
アドルフを貧民街で見たと目撃証言はあったけど、いなかった
もしかしたら兵役を逃れるためにドイツに行ったのかもしれないけど
確かめようがない……
(´・ω・`)……
481
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 19:01:17 ID:g7K//bD20
(´・ω・`) .。oO(確かにアドルフは……)
口は悪いし、急に怒るし、仕事はしないし、外面だけはいいし、束縛するし
どこでもうろうろするし、突然演説を始めるし、色々と連れ回されるし
自分勝手だし、犯罪の片棒を担がせようとするし、誰にでも喧嘩は売るし
民族主義者だし、妄想癖がすごいし、唯我独尊だし、嫉妬深いし
気狂いだし、夢想家だし、すぐ反論してくるし、甲斐性なしだし
訳の分かんないことばかり言うし、頑固だし、我がままだし
読みたくもない本を読まされるし、自分だけモテてムカつくし
そのくせガードは堅いし、何も言わずどこかに行ってしまう
482
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 19:01:46 ID:g7K//bD20
( ;´-ω-` ) .。oO(自分で言っててなんだけど……)
本当にひどい同居人だ……
こんな同居人なら、いない方がいいのかもしれない……
(;´・ω・` ) .。oO(でも、それじゃ駄目なんだ……)
アドルフがいなければボクの人生は平凡で退屈そのもの……
どんなにステキで優雅な芸術に触れても
一人だけじゃ感想を語り合うこともできない…
(´・ω・`) .。oO(楽しさも半減だ……)
483
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 19:02:12 ID:g7K//bD20
今回はここまで
484
:
名無しさん
:2024/06/29(土) 21:55:44 ID:mrXUkoZM0
おつです
485
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 00:28:45 ID:xFejEhSQ0
おつおつ
486
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:37:47 ID:jwXtMIO.0
一九一四年 第一次世界大戦勃発
戦争がすべてをぶち壊した
僕がレールから外れたのではない、レールそのものが吹き飛んだのだ
音楽家の道は途絶え、兵隊としての道が始まった
僕に兵士という役はふさわしくなかったと思う
けど、戦友たちと同様に自分の義務は果たそうと努力した
一九一八年 クビチェク父永眠
( ¯灬¯ )
┏┛墓┗┓
父は家具職人を辞め、郊外に畑を買い、ひっそりと過ごしていた
そして絶望と悲痛の中で亡くなったと戦場で伝えられた
父さんにはもっとよい晩年を送って欲しかった
487
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:38:16 ID:jwXtMIO.0
一九一九年 第一次世界大戦終結
運よく生き残った
でも、どうやって生きていけばいいのか分からなかった
音楽を楽しむ余裕など誰も持っていない
僕があれほど努力して身につけた音楽は……
誰にも必要とされない無用の長物となっていた
もはや僕一人ではどうしようもなかった
そんな時だった母から手紙が届いたのは
488
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:38:42 ID:jwXtMIO.0
『エフェーディングの役場で事務員を募集しています。
市長さんが言うには
これから採用する職員には戦争中に解散されたオーケストラを新しく設立し
指導する役割が期待されると。
クビチェク、あなたにピッタリの仕事だと思います。
よかったら考えてみてください。
母より。愛する息子へ』
母が気をつかっているのは明らかだ
仕事内容を見ても、給料は少なく、芸術的な業務なんてほとんどなかった
でも他に選択肢はなかった
なによりこれ以上、母を心配させたくなかった
そして僕は役人となった
489
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:39:44 ID:jwXtMIO.0
一九二〇年 アドルフ・ヒトラー ナチス党結成
一九二三年 ミュンヘン一揆 アドルフ・ヒトラー逮捕
一九二五年 アドルフ・ヒトラー ナチス党を再結成
時が過ぎるのは早いものだ
役人になってからもう十年は経とうとしていた
生活は楽ではなかったが、子供もできた
趣味…音楽に捧げる時間も少しずつだが持てるようになっていた
そしてアドルフの生存も知ることができた…
490
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:40:15 ID:jwXtMIO.0
一九二八年 ナチス党 十二の国会議席を獲得
新聞を見て一目ですぐに彼だと分かった
青白くひっそりとした彼は何も変わらない大きな目を輝かせて演説していた
とても残念だった
彼も僕と同じく芸術の道を歩めなかったのだと
芸術活動を断念することが彼にとって何を意味するかを考えると
胸が苦しくなった
この間、僕は不思議とアドルフに連絡を取る気にはなれなかった
なぜだろうか…
仕事や生活が多忙であったからだろうか
それも理由になるだろう
……でもやはり、僕と彼を繋いでいたのは芸術だったのだ
このとき、僕と彼は芸術とはあまりに疎遠だった
491
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:40:58 ID:jwXtMIO.0
一九三二年 ナチス党 選挙で大勝
一九三三年 アドルフ・ヒトラー 首相に就任
「お前たち あまり遠くに行ってはダメだぞ!」
『は〜い』
我が子ながら素直なものだ
それにしても子供がこれほど愛おしい存在だとは……
お父さん、お母さん…
そして…クララおばさんもこんな気持ちだったのかもしれない
おっと、感傷に浸ってばかりもいられない
握りしめていた新聞の一面には次の記事が大々的に書かれていた
『アドルフ・ヒトラー 帝国宰相に就任』
492
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:41:29 ID:jwXtMIO.0
今や彼の聴衆は僕だけでなく、何万、何十万……何百万人となろうとしている
まさか彼がここまで上り詰めるなんて誰が予想しただろう
僕も大人も教授も誰もできなかった
…いや、リンツの少年時代からもしかしたらアドルフだけは
こうなることを予感していたのかもしれない
そう考えると不思議と納得がいった
また、感傷的になっている
やることがあるのに…
493
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:41:51 ID:jwXtMIO.0
納屋をあさってようやく
鍵がかかっている古びれたトランクを見つけた
確か、鍵はコレで開くはずだ
ガチャ
トランクの中には大きな青い封筒があった
そして僕の筆跡で
アドルフ・ヒトラーと書かれていた
494
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:42:29 ID:jwXtMIO.0
封筒の中には手紙、絵はがき、スケッチが入っていた
どれもアドルフから貰ったものだ
大人びた文字で所々綴りを間違えている手紙が数点
出来の悪い水彩画が数枚
押し付けられた邸宅の設計図も入っている
そして、一番底にあったスケッチには
若かりし僕が羽飾りの着いた軍帽をかぶっていた
495
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:42:59 ID:jwXtMIO.0
彡(゚)(゚)(おいクビチェク 見てみいや!)
彡(゚)(゚)(まるで古参兵のようや)
彡(^)(^)(お前はまだ新兵ですらないのに!)
(´・ω・` )(また そうやってボクをからかって…)
フフッ…
(´-ω-`) .。oO(あの頃の記憶が湧き出てきた)
…どうして忘れていたんだろう
恐ろしい戦争の出来事や戦後の悲惨な状況が蓋をしていたのかな?
(´・ω・`) .。oO(まあ、いいや)
さて、掘り出したはいいが
どうしたものか?
今ならきっと高値で売れるだろうけど
思い出を売り払うようなことはしたくない
496
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:43:21 ID:jwXtMIO.0
(´・ω・` ) .。oO(…でも、持っていてもしょうがないしな)
なんだったら本人に送るか?
いまさら?
帝国宰相の彼に…?
僕のことを覚えているかも分からないのに…?
(´・ω・`) .。oO(……よし!)
とりあえず、一筆書いて聞いてみよう
返事がくるとは思えないけど…
497
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 20:43:46 ID:jwXtMIO.0
今回はここまで
498
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 22:41:30 ID:7vzgEzWA0
乙
499
:
名無しさん
:2024/06/30(日) 23:45:35 ID:9u8hkXqw0
乙!なんと最早、言葉もないよ……。
500
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 00:00:09 ID:TKr/aPnk0
乙……
501
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 19:29:14 ID:IjxNavq.0
(;;;゚Д゚;)「ク、クビツェクさんお、お、お便りです…」
(´・ω・`)「はーい」
(;;;゚Д゚;)「こ、これを ででは失礼します」
(´・ω・`)?
なにをそんなに怯えているんだろう
それで、差出人は?
『アドルフ・ヒトラー』
(。゚ω゚)!!!
502
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 19:29:56 ID:IjxNavq.0
『親愛なるクビツェク!
今日やっと君の手紙を見た。
就任以来、膨大な量の手紙を見るので、こういうことは珍しくないないのだ。
それだけに、長い年月の末に初めて君の消息と居場所がわかって、とても嬉しい。
困難な闘争の日々が終われば
僕は喜んで我が人生最良の日々の思い出にまた浸りたい。
君が僕のところに来ることは可能だろうか?
旧友を想いながら、君と君の母上にご多幸をお祈りします
アドルフ・ヒトラー彡(゚)(゚)』
503
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 19:30:59 ID:IjxNavq.0
(。゚ω゚) .。oO(アドルフは僕のことを覚えていた……!!)
(;´・ω・` ) .。oO(…でも)
『我が人生最良の日々』は言い過ぎだと思う
あの貧しくて困窮していた日々を……
ブンブン
(-ω-`;≡;´-ω-)
アドルフの想いを僕が否定していいはずがない
(´・ω・`) .。oO(それにしても…)
『君が僕のところに来ることは可能だろうか?』だって?
504
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 19:31:27 ID:IjxNavq.0
( ;´-ω-` ) .。oO(無理に決まってるじゃないか……)
僕はただの小役人、アドルフは帝国宰相
どの面下げて会いにいけばいいのさ…
それに僕にはもう家庭がある
仕事をほっぽり出すこともできない……
(;`・ω・´) .。oO(って何を真に受けてるのさ!)
こんなのただの社交辞令じゃないか
僕はもう子供じゃない大人だ
社交辞令を真に受けるなんてどうかしてる
(´・ω・`) .。oO(そうだよ………)
ほんとうにどうかしてる
505
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 19:31:53 ID:IjxNavq.0
役所
ザワザワ…ザワザワ ザワザワ…ザワザワ
(´0`)´0`)´0`) (´0`(´0`(´0`*)(´・ω・`)
職場ではある話題でもちきりだった
(*´0`)´0`)´0`)『帝国宰相がリンツを訪問するんだって』
506
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 19:32:14 ID:IjxNavq.0
(´・ω・`)……
彼がわざわざボクに会いに来たのではない
その証拠にアドルフが故郷リンツを訪れるなんてボクも初耳だった
何のめぐり合わせか分からないが
たまたまアドルフから手紙が来た後に
たまたまアドルフがリンツを訪れ
たまたまボクも足を運んだ
ただそれだけのことだ
507
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 19:32:47 ID:IjxNavq.0
リンツのホテル前
ザワザワ ハイル! ザワザワ ハイル! ザワザワ
…ー╲(⚭-⚭╲(⚭-⚭( ⚭-⚭ )⚭-⚭)/⚭-⚭)/ ---
(。゚ω゚) .。oO(うわっ、すごい人だ)
ウィーンの駅を思いだすよ
こんな中をかき分けて行くなんて至難の業だ
…でも
(`・ω・´) .。oO(これでもあの大都会で揉まれてきたんだ)
負けないぞ!
┗(`・ω・´)┓三三3
508
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 19:33:22 ID:IjxNavq.0
( ;´-ω-` ) .。oO(ふぅ、やっと前までこれた……)
(⌐■_■)⌐■_■)⌐■_■)『なんだお前は!!』
:(´ºωº`): .。oO(ひぃ、怖い顔!)
きっとアドルフの親衛隊だ
屈強な彼らに不審者だと思われたら
僕なんて成す術もなく取り押さえられるに違いない
……でも
(`・ω・´) .。oO(僕だって戦場を生き抜いて来たんだ)
負けない!
509
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 19:33:58 ID:IjxNavq.0
(´・ω・`)「ア、いや違う」
(;`・ω・´)「ヒトラー総統閣下に会わせてください」
(;⌐■_■) ;⌐■_■) ;⌐■_■)『なに言ってんだ お前??正気か?』
( ;´-ω-` ) .。oO(まあ、そうなるよね)
後ろからの視線も痛いし……
ソウトウニアワセテダッテヨ プーナニアノオヤジ ヤマダタロウオツ
(´-ω-`) .。oO(…聞こえない聞こえない)
510
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 19:34:32 ID:IjxNavq.0
(;´・ω・` )つ「えっと…これを見てください」
(⌐■_■)⌐■_■)⌐■_■)「なんだ……ん!!!」
親衛隊の男は手紙と僕を交互に何度も見比べた
そばにいた同僚と何度も顔を合わせ不振がった
そして、上官を呼んだ
(*■_■)「なんだいったい?」
(;⌐■_■) ;⌐■_■) ;⌐■_■)つ「これを……」
Σ(*■_■)「……!!」
(*■_■)「部下が失礼しました。どうぞこちらへ」
ウオオ!トオサレタゾ イッタイナニモノナンダ!
…ー╲(⚭-⚭╲(⚭-⚭( ⚭-⚭ )⚭-⚭)/⚭-⚭)/ ---
511
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 19:34:55 ID:IjxNavq.0
今回はここまで
512
:
名無しさん
:2024/07/01(月) 22:45:45 ID:PIIIYiOM0
乙
手紙では代わり映えなく見えて、ほっとしてしまった
どんな再会になるのか……
513
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 17:15:18 ID:Dr0TdrcI0
乙乙
溺愛系おハイソ漫画でよく見かける展開や!
514
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:47:00 ID:vej3OpOc0
ホテルの中
(。゚ω゚) .。oO(うわぁ!)
新聞で見るような有名人ばっかりだ
大臣、高官、将軍……
この人たちが今のアドルフの……
それにしてもすごい慌ただしさだ!
( ;´-ω-` ) .。oO(頭がクラクラしてきた)
人が多いのもそうだけど
僕はこれから彼らを率いる帝国宰相に会うんだ…
今さらだけどとんでもないことをしようとしてるんじゃないかな?
アドルフと別れてからもう三十年と経とうとしてるんだよ!
……それなのに今さら会おうなんて
………
515
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:47:33 ID:vej3OpOc0
(;´・ω・` ) .。oO(やっちゃったかな……)
どうしよう…もう帰りたい……
( ´_ゝ`)「クビチェクさんですね?どうぞこちらへ」
(;´・ω・` )「は、はい…」
(;´・ω・` ) .。oO(どうしよう…)
胸がドキドキだ
偉くもないし、立派でもない
そんな僕が……
帝国宰相に会うなんて……
アドルフなんて呼んだら…駄目だよね
礼儀正しくしないと
彼もそういう無礼なのが嫌いだったし…
516
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:48:28 ID:vej3OpOc0
案内され少し歩いた
すると突然ガチャっと、とある一室のドアが開き
質素なフィールドグリーンの上着を着た見知った男が出てきた
彡(゚)(゚)「ん?」
彡(^)(^)「お、クビツェクやんけ!」
(。゚ω゚) .。oO(ええええええええええ)
アドルフが出てくるの!!??
てっきり僕が部屋に入っていくものとばかり!??!?
彡(^)(^)「いや〜ホンマ 久しぶりやな〜!」
ガシッ!
(。゚ω゚)つ⊂(^)(^)ミ
と彼は僕の右手を両手でしっかりと握りしめ
昔と同じ明るく大きな目で見つめてきた
517
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:49:22 ID:vej3OpOc0
(。゚ω゚) .。oO(あっわわわわわわわ)
(。゚ω゚)「お、お久しぶりです総統閣下…」
(。゚ω゚)「この度は急に押し掛けてしまい申し分ありません」
(;´・ω・` )「今日のお日柄もよく…えと…」
彡(゚)(゚)……
彡(^)(^)「上出来や、クビツェク! 」
彡(゚)(゚)「ついにお前も他の連中と同じことを言うようになったな」
(´ᴖωᴖ`;)「あ、あはは…は…」
彡(゚)(゚)「まあええ、ついて来いや!」
(゚)(゚)ミ(‘・ω・`; )三三3 (´<_`)三3
とアドルフは前を歩いていった
518
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:49:57 ID:vej3OpOc0
チーン 上に参ります
(´・ω・`) .。oO(え?)
エレベーターに乗るの?
ボクとアドルフと偉そうな人……の三人
シーン
(;´・ω・` ) .。oO(き、気まずい……)
なにか話した方が……
いや、ダメだ。ちゃんとしないと
チーン 三階です
テクテク…ガチャ
( ´_ゝ`)「どうぞお入りください」
物腰の柔らかい彼に促され、とある一室に通された
519
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:50:25 ID:vej3OpOc0
( ´_ゝ`)「ではごゆるりと」
ガチャ
(。゚ω゚) .。oO(え、アドルフと二人っきり!!!)
(´・ω・`)いや、まあ別にいいんだけど……
520
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:51:07 ID:vej3OpOc0
通された場所は、バルコニーからリンツが一望できる部屋だった
彡(゚)(゚)「クビツェク、お前は本当にあの頃のままや」
彡(゚)(゚)「お前がどこにいても、ワイならすぐに見分けられたで」
彡(-)(-)「お前は何も変わっとらん」
彡(゚)(゚)「ただ年をとっただけや!」
彡(^)(^)「こうして再会できてホンマ嬉しいで!」
(;´・ω・` )「あ、ありがとうございます」
彡(゚)(゚)……
彡(゚)(゚)「スマンな 本当は会いに行きたかったんやが…」
彡(-)(-)「今のワイにプライベートはないんや……」
彡(-)(-)「普通の人みたいに振る舞うこともできないんや……」
521
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:51:55 ID:vej3OpOc0
(´・ω・`) .。oO(なに言ってんだい)
もとから普通ではないし
アドルフこそ昔とまったく変わらないじゃないか
( ;´-ω-` ) .。oO(……なんて言えないや)
(;´・ω・` )「はい、理解できています」
彡(゚)(゚)「……見ろや、ドナウ川に架かるあの橋を」
彡(゚)(゚)「まだ架かっとるで 昔と変わらんボロいままやな!」
(;´・ω・` )「そうですね」
522
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:52:30 ID:vej3OpOc0
彡(゚)(゚)「ワイは断言するで! あの橋をあのままにはせん」
彡(゚)(゚)「橋だけやない、リンツの街そのものを根底から変えたる!!」
彡(-)(-)「でもな……街を作り変える前に……」
彡(゚)(゚)「ワイはまたお前とあのボロ橋を渡ってブラブラ歩きたいんや」
彡(-)(-)「だがそれは無理や…… ワイが現れれば、皆がついてまわる」
彡(゚)(゚)「しかしなクビツェク、信じてくれや 」
彡(゚)(゚)「ワイは故郷にたくさんのことをしてやるつもりや」
(´・ω・` )「あ、あの頃の計画ですね」
彡(^)(^)「せや! 覚えとったか!!」
523
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:52:56 ID:vej3OpOc0
彡(•)(•)「お前はワイの計画を実現不可能やと疑っとったが……」
彡(^)(^)「今こそあれを実現するで!」
彡(^)(^)「まずはどでかいオーケストラからや!」
アドルフは青春時代に企てたすべての計画を再び披露した
まるであの頃から三十年ではなく
せいぜい三年しか経っていないかのようだった
524
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:53:46 ID:vej3OpOc0
彡(゚)(゚)「ところで、お前は何になったんや?」
(´・ω・`)「私は地方官司になり、助役になりました」
彡(゚)(゚)「助役とはどういうもんや?」
(;´・ω・` )「え、ええと…つまり、役人です」
(;´・ω・` ) .。oO(し、しまった!)
役人は禁句だ!!
これだけは口にしちゃいけないと決めていたのに!
つい口が滑った
( ; ›ω‹ ) .。oO(くるか来るか!?)
525
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:54:11 ID:vej3OpOc0
彡(゚)(゚)「そか、役人か……そか」
(´・ω・`) .。oO(あれ……?)
彡(゚)(゚)「せやけど、お前には合わんやろ」
彡(゚)(゚)「お前の音楽的才能はどこにいったんや?」
(;´・ω・` )「えーと…」
僕はありのままを話した
戦争によって僕の音楽家の道は途絶えたこと
飢え死にしたくなかったこと
母の勧めから役人になったこと
彡(゚)(゚)「……」
彡(゚)(゚)「せや、戦争のせいや」
526
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:54:52 ID:vej3OpOc0
それからもアドルフは僕のプライベートを聞きたがった
正直に話した
今は家庭を持って大変ながらも落ち着いていること
そして規模は小さいがオーケストラを作ったことを
彡(-)(-)「……町で小さなオーケストラを…」
彡(゚)(゚)「素晴らしいことや」
彡(^)(^)「さすがやクビチェク」
彡(゚)(゚)「で?どんな交響曲を演奏しとるんや?」
(´・ω・`)「シューベルトの『未完成』」
(´・ω・`)「ベートーヴェンの『英雄』『運命』」
(´・ω・`)「モーツァルトの『ジュピター』などです」
527
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:55:17 ID:vej3OpOc0
彡(-)(-)「そかそか……ワイも直接 聞きに行きたいで…」
(。゚ω゚)「本気ですか?」
彡(•)(•)「もちろん本気や!」
彡(^)(^)「あれからどんだけ上手くなったか楽しみやわ!」
彡(-)(-)「……まあ、さっきも言ったが無理なんやけどな……」
(;´・ω・` )「そうですよね…」
528
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:55:42 ID:vej3OpOc0
彡(゚)(゚)「よっしゃ決めたで! ワイが援助したる!」
彡(゚)(゚)「報告書を作って送ってくれや」
彡(゚)(゚)「それと、何か悩んだでることはないか?」
彡(^)(^)「ワイがパパーッと解決したるで!」
(;´・ω・` )「い、いえ…つつましながらも十分生活は出来てるので……」
(´・ω・`)「特に希望はありません」
彡;(゚)(゚)「ファ!?大抵の奴は喜んで頷くんやで!」
(´・ω・`)「そうですか…」
529
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:56:15 ID:vej3OpOc0
彡;(゚)(゚)「だったら…」
彡(゚)(゚)「せや!クビツェク、子供がおる言うとったやろ?」
(´・ω・`)「ええ、3人います」
彡(•)(•)「3人もか!」
彡(-)(-)「ええな……ワイには家族がおらん…」
彡(゚)(゚)「一人ぼっちや……」
530
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:56:35 ID:vej3OpOc0
(´・ω・`) .。oO(あれ?)
アドルフには長年付き合っている恋人がいるって週刊誌で……
でも、それはステファニーではない
彼女は別の人と結婚したはずだ
もしかしてまだステファニーを引きづっているなんてことはないよね?
それだと、あまりに交際相手が可哀そうだよ……
531
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:56:57 ID:vej3OpOc0
彡(-)(-)「未来ある子供にはワイらみたいに貧困で苦しんでほしくないんや」
彡(゚)(゚)「お前と別れてから、ワイは最悪の日々を送った」
彡(゚)(゚)「若い才能が困窮のために破壊されるようなことがあってはならんのや」
彡(•)(•)「だからクビチェクの子に援助させてくれや!」
彡(^)(^)「リンツのブルックナー学院に入れさせたるで」
僕は断った
でも、彼はそれでも食い下がった
532
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:57:24 ID:vej3OpOc0
彡;(゚)(゚)「頼むわ、それくらいはさせてくれや!」
彡;(゚)(゚)「他ならぬ、クビツェクの子や 遠慮するなや…」
彡(-)(-)「このとおりや」
(;´・ω・` )「えと…やはりそういう訳には…」
彡(•)(•)「頑固やな……まあ、ええ ちょっと待っとれ」
アドルフは立ち上がるとドアに向かって歩いて行った
そして偉そうな人( ´_ゝ`)を呼び寄せ何か話していた
きっと子供の援助についてだろう
(´・ω・`) .。oO(どっちが頑固なんだか……)
533
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:57:59 ID:vej3OpOc0
僕とアドルフは気づけば一時間以上も話し込んでいた
( ´_ゝ`)「総統、そろそろ時間が……」
彡;(゚)(゚)「ファ!? もうこんな時間か!」
(´・ω・`) .。oO(あ、忘れてた!)
アドルフに手紙やスケッチを返さなくちゃ!
(´・ω・`)「そうでした! これを!」
彡(゚)(゚)「これは…ワイが贈った画材や絵葉書…」
彡(゚)(゚)「そして、ワイが設計した邸宅か………」
彡(゚)(゚)………
534
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:58:43 ID:vej3OpOc0
彡(゚)(゚)「クビツェク、これらはお前だけの物や…」
彡(゚)(゚)「これをどうしようとワイは一切関与する気はあらへん」
彡(゚)(゚)「最近になってワイの作品は脚光を浴びるようになった」
彡(•)(•)「ワイが書いた絵だと言って高値で贋作を売るアホまで出る始末」
(´・ω・`)……
彡(•)(•)「覚えとるか!?ワイが学生時代に肖像画のペアを組まされたやつを!」
彡(•)(•)「あのドアホ、ワイとほとんど喋ったこともない癖に…」
彡(•)(•)「ワイの伝記を書きよったんやで!!」
535
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:59:21 ID:vej3OpOc0
彡(゚)(゚)「そういうものはワイのことを本当に知っとる人物が書くべきや」
彡(-)(-)「もし…そういう人物がいるとすれば……」
彡(゚)(゚)「それはお前や、クビツェク」
彡(゚)(゚)「ヘス副総統、このことを直ちに記録しておくように」
( ´_ゝ`)「はい総統」
(´・ω・`) .。oO(僕に伝記を…?)
嫌だよ面倒くさい
536
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 18:59:52 ID:vej3OpOc0
彼はヘスって言うんだ…落ち着いてていい人そうだな
……え、副総統って言わなかった?
もしかして僕はこの国のトップ二人と一緒にいるの?
(。゚ω゚) .。oO(はえー)
彡(゚)(゚)「ほなまた会おうな、クビツェク」
こうして会見は終了した
どうやって帰ったかまったく覚えていない
537
:
名無しさん
:2024/07/02(火) 19:00:16 ID:vej3OpOc0
今回はここまで
538
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 12:40:16 ID:mQlLlEgU0
乙
うまく言えないけど、本当に楽しんで読んでます
539
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:30:30 ID:ES5HwQfQ0
あれから、僕の静かで目立たない生活は急に騒がしくなった
アドルフの作品を狙う不良隊員や欲深な連中がよく家にきた
こういった輩にはこう言って追い返した
(´・ω・`)「それについてはヒトラー閣下と個人的に話したいと思います」
(´・ω・`)「ところであなたのお名前は?」
効果はてきめんだった、誰もがこの一言で黙って帰った
540
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:31:01 ID:ES5HwQfQ0
役所
(;;;゚Д゚;)「あの、この書類についてなんですが」
(´・ω・`)「はい…なんでしょうか…」
明らかに怖がられてる…たまにそうでない人がいてもコネ狙い…
でも新たな知り合いもできた
副総統のヘス( ´_ゝ`)だ
彼は他の隊員や高官と違い
興味深そうにアドルフのことについて聞きたがった
(´ᴖωᴖ`)「そこで彼は言ったんですよ『彼女と一緒にドナウ川に飛び込む』って」
( ´_ゝ`)「ははは、女性に対しては昔からそうだったんですねぇ…実は…」
(´ᴖωᴖ`;)「あはは、付き合った女性3人が自殺未遂……!ははは……は…」
541
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:31:45 ID:ES5HwQfQ0
ある日、アドルフから招待状が送られてきた
リヒャルト・ワーグナーの祝賀劇の招待状だ!
その公演は見たい!見たい!!どうしても見たいと
夢に見ていた公演だった!
でも経済的な理由で…ってこんなことを言うのは無粋だよね
数日後 ヴァンフリート館
(´-ω-`) .。oO(とても素晴らしい演劇だった)
まるで魔法にかけられたようだった
美しい名曲、夢にまで見たワーグナーの息吹!
まさか夢が現実になるなんて…!
ありがとう!神様、仏様……アドルフ様!!
なんてね!
542
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:32:11 ID:ES5HwQfQ0
(´・ω・`) .。oO(でも……)
アドルフはいなかった……
彼は多忙だった
噂では、大きな戦争がまた始まるのではないかとさえ言われている……
( ;´-ω-` ) .。oO(……昔のように起きっこないなんてもう言えない)
(´・ω・`)……
あーあ、夢は叶ったけど…なんだかな……
どんなに素晴らしい芸術もアドルフがいない溝を埋めることはできなかった
このまま残っていても不完全燃焼なもどかしい気持ちが積もるだけだ
家族のもとに帰ろう
543
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:32:32 ID:ES5HwQfQ0
(´・ω・`) .。oO(でも、どうなんだろう?)
アドルフがそばにいてもあの頃のように語れたのかな……
( ;´-ω-` ) .。oO(うーん…無理だろうなぁ)
(´・ω・`)「今日はありがとうございます。とても素晴らしい演奏でした!」
( ´_ゝ`)「もう帰られるのですか?」
( ´_ゝ`)「あと一日いると、よいことがあるかもしれませんよ」
(´・ω・`)「へ?」
544
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:32:55 ID:ES5HwQfQ0
翌日
⊂(゚)(゚)ミ⊃三三3ブーンキキッー
彡(゚)(゚)/「待たせたなクビチェク!!」
アドルフは遠方からわざわざ飛行機に乗ってやってきた
彡;(゚)(゚)「すまん、時間がないんや!」
アドルフはボクの腕をつかむと歩き出した
彡(゚)(゚)っ(´・ω・`)「え…え?」 三三3
彡(●)(●)「お前らはええ 付いてくんなや!」
(;*■_■) (;⌐■_■) ;⌐■_■) ;⌐■_■)ザワザワザワ
ああ、皆、動揺しちゃって…なんというか…御愁傷様…
545
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:33:33 ID:ES5HwQfQ0
アドルフは庭に通じるドアを開け、石段を下った
手入れの行き届いた小路を抜け、鉄柵のドアが開かれた
するとそこにはリヒャルト・ワーグナーの墓があった
(´・ω・`)人(゚)(゚)ミ
アドルフは僕の手を握った
彼の感動がひしひしと伝わってくる
彡(-)(-)「ワイらにとってここは最も神聖な場所や……」
彡(゚)(゚)「あの頃に語り合った夢がこうして叶って……」
彡(^)(^)「ワイは満足や!!」
ボクの隣には頬のこけた青白い大きく特徴的な目をした
あの頃のアドルフがいた
546
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:34:15 ID:ES5HwQfQ0
その後、僕たちは劇場に向け歩き出した
だが、階段の所までくるとアドルフは止まった
(´・ω・`)??
彡(-)(-)「すまんな」
彡(゚)(゚)「ワイは他にやることがあるから一緒に見れへんのや…」
(´・ω・`; )「え…」
彡;(゚)(゚)「そんな顔すんなや……でもな…」
彡(゚)(゚)「若いワイらがあれだけ熱狂したワーグナーの劇や!」
彡(^)(^)「ちゃんと楽しむんやでクビチェク」
ガシッ!
(´・ω・`)つ⊂(゚)(゚)ミ
アドルフは両手でボクの手をしっかり握りしめた
\( )ミ
そして回れ右して、振り向かずに、少し早足で出口に向かおうとした
547
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:34:50 ID:ES5HwQfQ0
(´・ω・`)「ア……」
彡(゚)(゚)「ん、なんや?」
(;´・ω・` )「あ、え、えーと…」
彡(゚)(゚)「……」
(´・ω・`)「もしかして戦争の……こと?」
彡(゚)(゚)「お!」
彡(^)(^)「せや お前も少しは政治に関心を持つようになったんやな!」
彡(゚)(゚)「クビツェク、お前も知っとるやろ」
彡(゚)(゚)「どれ程ワイに建設したいものがあるかを」
548
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:35:42 ID:ES5HwQfQ0
彡(●)(●)「戦争なんて糞や!」
彡(●)(●)「ワイの建築計画を邪魔しおってからに……」
彡(-)(-)「この戦争のせいで……」
彡(゚)(゚)「ワイの建設事業は何年も後戻りしてしまったんや」
彡(-)(-)「残念や」
彡(-)(-)「ワイは戦争をするために帝国宰相になったんやない…」
(´・ω・`)……
彡(゚)(゚)「闘争の日々が終わったら、ワイはお前を呼ぶ」
彡(゚)(゚)「そしたらまた……」
彡(^)(^)「芸術について語ろうや」
彡(^)(^)「お前はずっとワイのそばにおらなアカンのやからな!」
549
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:36:20 ID:ES5HwQfQ0
ヴー
解放者リエンツィは高らかに宣言した
トランペットの響きが
長く鳴り響くのを聞いたら
起き上がって駆けつけるのだ
そのとき私は諸君に自由を宣言する
貴族マドリアーノが問う
リエンツィ、君は何をする気だ?
君は強大だ。言ってくれ、
権力をどこに向けて使う気なのだ?
リエンツィは答える
私はこの国を偉大で自由にする
……
私はそのために法を作りたいだけだ
その法に民衆も貴族も従うのだ!
550
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:36:57 ID:ES5HwQfQ0
民衆は狂喜する
彼こそ、我ら民衆のためにいるのだ
それゆえ、我らの言うこと聞いて、賛成してくれ
我らは彼の民衆、彼は我らの王だ!
リエンツィは叫んだ
私は王ではない!
だが、諸君らは私を守護者に選んだ
民衆に法を知らしめる守護者
諸君らの先祖に倣って
護民官と私は名乗ろう!
民衆は歓喜して答える
ハイル リエンツィ、我らの護民官!
551
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:37:25 ID:ES5HwQfQ0
貴族ステファノは吐き捨てる
奴は民衆の偶像だ
民衆を欺瞞している
・・・
貴族に扇動された民衆がわめく
裏切り者!俺たちは奴に尽くした
奴の功名心のために、俺たちの血が犠牲になった
奴は俺たちを破滅に追い込んだ
復讐だ!
リエンツィは嘆く
……私が引き上げてやった民衆たちも
私を見捨てた
私の幸運に集まってきた友たちも
私を見捨てた……
552
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:37:48 ID:ES5HwQfQ0
貴族は嘲笑する
しょせん、愚かな暴徒どもだ!
リエンツィが奴らを騎士にしたのだ
リエンツィを奴らから奪えば、奴らは本来の群衆に戻る!
民衆は怒り狂う
集まれ!集まれ!急いでこっちに来い!
石を持って来い!たいまつを持って来い!
リエンツィは呪われた。奴は破門された!
奴は俺たちを裏切った!!
リエンツィは問いかける
言ってくれ、誰が諸君らを偉大で自由にしたか?
私が自由と平和を与えたとき
諸君らは私に歓喜して挨拶してくれたではないか
あの歓喜のことをもう思い出してくれないのか?
もう私の名を呼んではくれないのか?
553
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:38:16 ID:ES5HwQfQ0
誰もリエンツィに耳を傾けようとしない
……何ということだ!これが人間なのか?
人間とは、これほど惨めで無価値なのか?
私はお前たちを呪うぞ!
こんな世界は呪われ、破滅するがよい!
腐敗し、干からびた世界!
お前たちがそれを望んだのだ!
パチパチパチパチパチパチパチパチ
554
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:38:42 ID:ES5HwQfQ0
彡(゚)(゚)/「ワイのすべてはここから始まったんや!」
(´・ω・`)「…うん、初めてリンツでこの劇を見た時も……」
(´・ω・`)「君はそう叫んだよね」
(。゚ω゚)「え!?アドルフ?」
慌てて横を振り向くと怪訝そうな顔をした老年の紳士が
(◦灬⦿)ジトォーと僕のことを凝視していた
(;´・ω・` ) .。oO(あれ?この人…)
どこかで見たことがあるような気が……
(◦灬¯)「ゴホン!」
(;´・ω・` )「す、すみません!」
(;´・ω・` )「あまりに感銘を受けてしまってその一人ごとを……」
(;´・ω・` )「……本当にすみません」
なんだ空耳か…
555
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:39:20 ID:ES5HwQfQ0
演目がすべて終わり僕は見送りの最前列に立っていた
眼の前には黒光りのベンツがゆっくり通りすぎようとしている
こんな車に乗れるのは要人に決まっている
そしてそれがアドルフ・ヒトラーだと誰でも知っている
誰もが歓声を上げて彼を送り出そうとしていた
僕も皆と同じように手を振った
すると、アドルフがきづいたようだ
運転手に何か合図をだしている
キキッ
車が止まった
ウィーン
窓が開いた
556
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:39:46 ID:ES5HwQfQ0
彡(^)(^)つスッ
微笑んだアドルフが握手を求めてきた
つ⊂
彡(^)(^)「ほななクビチェク、また!」
(´・ω・`) .。oO(うん、またね アドルフ)
つ ⊂
ウィーン
窓が閉まった
557
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:40:24 ID:ES5HwQfQ0
一九三九年 第二次世界大戦勃発
一九四〇年 ドイツ・イタリア・日本三国同盟締結
一九四一年 ドイツ ソ連に宣戦布告
一九四三年 スターリングラードの戦い ドイツ敗北
一九四四年 連合国軍 ドイツに侵攻
一九四五年 アドルフ・ヒトラー自殺
彡(゚)(゚)
┏┛墓┗┓
第二次世界大戦終結
558
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:40:57 ID:ES5HwQfQ0
終戦後、僕はアドルフ・ヒトラーの関係者として逮捕された
「あなたはヒトラーから何かもらいましたか?」
(´・ω・`)「いいえ」
「何も?」
(´・ω・`)「はい」
「お金も?」
(´・ω・`)「はい」
「食糧などは?」
(´・ω・`)「もらってません」
「車は?家は?」
(´・ω・`)「もらってません」
559
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:41:27 ID:ES5HwQfQ0
「美女を紹介されたりは?」
(`・ω・´)「ありえません」
「何かに招待されたことは?」
(´・ω・`)「ワーグナーの祝賀劇に招待されました」
「ヒトラーはあなたを歓迎しましたか?」
(´・ω・`)「はい」
「よく会いましたか?」
(´・ω・`)「ほんの数回です」
「どうやって彼に会ったのですか?」
(´・ω・`)「僕から会いに行きました」
「その時、ヒトラーはあなたのそばにいましたか?」
(´・ω・`)「はい、すぐそばにいました」
「二人だけで?」
(´・ω・`)「二人だけです」
「警護もなしで?」
(´・ω・`)「警護もなしです」
「それならあなたはヒトラーを殺すこともできたでしょう?」
(;´・ω・` )「…はい、できたと思います」
560
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:42:12 ID:ES5HwQfQ0
「最後にひとつ聞きます」
ではなぜ、あなたはヒトラーを殺さなかったのですか?
彼を殺していれば…あなたは英雄になれたのに
それは…
僕とアドルフは友人だから
でも…こんなこと言えるわけがない……
彼は戦勝国の人々から
そして……
あんなに熱狂していた国民からも
史上最悪の独裁者と称される極悪人となっていた
そんな男を友だなどと口が裂けても言えるはずがない
………
………
……でも
561
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:42:49 ID:ES5HwQfQ0
あの時、いやあの時、それともあの時
それとも……あの時
アドルフにちゃんと向き合っていたら
アドルフに君は間違っているって言えたなら
激怒するアドルフに言い返してたら
そしてとことんアドルフと言い争ってたら
どうなってたんだろう…
二人がおじいちゃんになっても一緒に劇場に足を運んでいたのかな?
そして芸術について語り合うんだ!
ボクが聞き役でアドルフが話す役なのはきっと変わらないんだろうけど
……
562
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:43:34 ID:ES5HwQfQ0
まあでも、そんなことできるわけないんだけどね
言えるわけないじゃん!
だって、あのアドルフ・ヒトラーにだよ!!
だから何を思ったって
過去は変わらないし、未来も変えられない
彼が許されない罪を犯したことも変わらないし、変えられない
……
でも……
ボクとアドルフが友達だってことも変わらないし、変えられない
だからアドルフには言えなかったけど
今ならはっきりと言える
563
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:44:01 ID:ES5HwQfQ0
(´・ω・`)「そんなの決まってるだろ」
(´・ω・`)「ヒトラーはボクの友達だからさ」
564
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:44:38 ID:ES5HwQfQ0
おしまい
565
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 21:45:06 ID:ES5HwQfQ0
長い間、読んで頂きありがとうございました
566
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 22:41:17 ID:I3O.V2ac0
最高でした!
567
:
名無しさん
:2024/07/03(水) 23:28:22 ID:mQlLlEgU0
乙乙乙乙乙乙乙乙
568
:
名無しさん
:2024/07/04(木) 22:17:49 ID:2UK1gPpY0
ひとまず乙じゃ!
あとでよむ
569
:
名無しさん
:2024/07/04(木) 22:44:09 ID:7ocQAWpM0
乙乙乙
クビツェクからしたらめっちゃ切ない思い出だよね
いやぁ文体がずっとエモーショナルで良かった。良かった。
570
:
名無しさん
:2024/07/04(木) 22:55:26 ID:EGLUWAq60
乙です
571
:
名無しさん
:2024/07/05(金) 12:37:48 ID:GPR/6pDc0
すごい良かった
ヒトラーへの認識が180度変わったわ
乙
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