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指輪は婚姻を依り代にするようです
169
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/22(月) 22:43:39 ID:GMlVQDW.0
八話の投下が終わりました
続きは明日投下する予定です
170
:
名無しさん
:2024/04/23(火) 00:03:58 ID:xMdl/ObY0
乙
171
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:19:28 ID:v3mvNRkA0
乙ありがとうございます
九話投下します
172
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:21:55 ID:v3mvNRkA0
男はハンドルに手を置き、緊張を保ったままの口調で言った。
(`・ω・´) ……荒巻さん
/ ,' 3 なんだ
(`・ω・´) 高速で助手席に乗るなら シートベルトを締めてください
/ ,' 3 ストレッチが終わったら すぐ直す
老人は座席から半分立ちながら、体を伸ばし続ける。
(`・ω・´) ……
後部座席では、女が窓の外に延々と続く壁を眺めていた。
(*゚ー゚) ……
173
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:22:56 ID:v3mvNRkA0
9.消えゆく黒
174
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:27:37 ID:v3mvNRkA0
マトマトはでぃの方に近づいていった。
マト#>Д<)メ お疲れ様です
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) なに どうしたの
マト#>Д<)メ 探してたんですよ
(#゚;;-゚) ……
でぃは携帯を取り出して画面を点けた。
(#゚;;-゚) ごめん 仕事中で
マトマトは言うも言わぬも関係なしに、
言葉を被せるようにまくしたてた。
マト#>Д<)メ シャキンさんがこっちに来てます
マト#>Д<)メ 詳しい事情は知りませんが
マト#>Д<)メ お嬢様を探してるみたい
(#゚;;-゚) ……それは昨日も聞いたけど
(#゚;;-゚) 心当たりないよ
マト#>Д<)メ ……それは私だって そうです
175
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:29:45 ID:v3mvNRkA0
男は情報屋の扉を開けて、づかづかと中に入り込んでくる。
( ^ω^) いくらだお?
∪゚ェ゚∪ 2850
( ^ω^) 刻むおね
男は勢いよく袋を机の上に置く。
∪゚ェ゚∪
情報屋は中の硬貨を一つ残らず出し、丹念に数を確かめてから言った。
∪゚ェ゚∪ お釣り 2378
情報屋は釣銭を袋に入れて返した。
( ^ω^) 領収書はうちの部署で
∪゚ェ゚∪
∪゚ェ゚∪ はいはい……
176
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:31:03 ID:v3mvNRkA0
老人はタカラの肩を叩いた。
タカラは歩くのを止めて振り向いた。
(;,,^Д^) !
/ ,' 3
老人は槍の切っ先をタカラの首筋に当てている。
(*゚ー゚) おじいちゃん
老人は槍を軽快な駆動音と共に縮め、刃を鞘に収めた。
/ ,' 3 本当にコイツか
(*゚ー゚) 今ので何が分かったの
/ ,' 3 てんで素人じゃないか
(*゚ー゚) 当たり前でしょ
女はタカラの前に進み出た。
そして頭の辺りに手を伸ばすが、タカラは後ずさって避ける。
(;,,^Д^)
(*゚ー゚) ……これは 治療だよ
唖然としたタカラの隙を突いて、女は頭を引き寄せて唇に口づけた。
/ ,' 3
(;,,^Д^) ……
(;,,^Д^) しぃ……さん
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) 久しぶり
177
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:32:53 ID:v3mvNRkA0
男はでぃ達の視線を感じながら、距離を詰めていく。
マト#>Д<)メ 何でここが?
(`・ω・´) 君と同じだ
(`・ω・´) 情報屋に金を積んだ
マト#>Д<)メ ……積んだって程の金額ではなかったですけど
(`・ω・´) 下着も回収したんでな
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) ……なに?
マトマトは少し躊躇ってから、でぃに耳打ちした。
マト#>Д<)メ お嬢様 情報屋に下着を渡しましたよね
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) あ〜……
(`・ω・´) はしたないにも 程がある
(`・ω・´) ……次期当主となる御方が
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) そういう用件か……
でぃは表情を変えなかった。
浮かせた手に、紅色の槍が形作られていく。
(#゚;;-゚) いくらなんでも それは筋が通らないでしょ
(`・ω・´)
男は武器もなく、腕を前方に構えた。
178
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:36:55 ID:v3mvNRkA0
情報屋は猫の写真の入った資料を、男の方へ向けた。
( ^ω^)
( ^ω^) 何だおこれは
∪゚ェ゚∪ 伊藤でぃは こいつの調査に行った
( ^ω^) ……お?
∪゚ェ゚∪ そういう情報を買っていった奴が二人いる
∪゚ェ゚∪ 一時間前に間藤マトマト 30分前に光井シャキンだ
( ^ω^)
( ^ω^) いくらだお?
∪゚ェ゚∪ タダで良い
( ^ω^) 恩に着るお
179
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:39:17 ID:v3mvNRkA0
でぃは槍を投げた。
男は両手で受け止め、ばらけた血の筋が閑静な住宅街の道に散らばる。
(#゚;;-゚) ……
(`・ω・´) しぃ様は予言が出来なくなりました
(`・ω・´) 帰ってもらいます
(#゚;;-゚) なにそれ
(`・ω・´)
男はマトマトに向かって視線を向けた。
マト#>Д<)メ 何です?
(`・ω・´) 話していいのかな……
(#゚;;-゚) 話して
(`・ω・´)
180
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:41:09 ID:v3mvNRkA0
(`・ω・´) 一週間ほど前です
(`・ω・´) ペニサス様と しぃ様が ある時期以降の予知が見えなくなりました
(#゚;;-゚) ……
(`・ω・´) しかし一度だけ しぃ様の予言がありました
(`・ω・´) でぃ様を連れ戻して当主に据えれば 未来はある と
マト#>Д<)メ ……
(#゚;;-゚) 根性なし……
マトマトは複雑な表情を作って、でぃの方を見た。
男は少し構えを緩ませて様子を伺った。
(`・ω・´)
(#゚;;-゚) どうせ予言に頼るなら
(#゚;;-゚) 何でそのまま滅びますって言えないの
(`・ω・´) ……
(`・ω・´) 多少傷つけてもいいと 仰せつかっています
(#゚;;-゚) ふぅ……
181
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:42:15 ID:v3mvNRkA0
男は走っていた。
土地勘もない場所で、小太りの男は汗をかきながらあたりを走り回っている。
(;^ω^)
/ ,' 3
男は見られていることに気が付いた。
老人は男を見据えながら、悠然と近づいてくる。
(;^ω^) 荒巻……か
/ ,' 3 誰だ?
(;^ω^) K県警 特殊魔術対策課 特別派遣員 内藤ホライズン ですお
/ ,' 3
/ ,' 3 一人か?
(;^ω^) ……
/ ,' 3 孫を迎えに来ただけだ 手は煩わせん
(;^ω^)
(;^ω^) 高速の料金所にも 主要駅にも 多大な魔力を検知する仕組みがあるお
/ ,' 3 それが?
(;^ω^) 魔力偽装車で ここまで来たおね?
/ ,' 3
老人は懐から取り出したものから鞘を抜き去り、筒を伸ばした。
男はその駆動音に合わせるように警棒を取り出し、同じような音を鳴らしながら伸ばした。
(;^ω^) 犯罪だお
/ ,' 3 ああ
182
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:43:48 ID:v3mvNRkA0
でぃは槍を生成した。
男は深く構え、大地を蹴りだした。
(#゚;;-゚)
でぃは小さな針を飛ばすが、男は意に介さず突っ込んでくる。
交差させた腕に刺さった針からは、流血は見られない。
(`・ω・´)
でぃは男に向かって槍を突き出した。
男は片手でいなし、もう片方の手ででぃの腹に拳を叩き込んだ。
(`・ω・´) ……!
ふわりと後ろに浮き上がったでぃの腹に、ナイフのような赤い突起物が生成されている。
男は手を振り払い、追撃で飛んできた血の刃物を叩き落とした。
マト#>Д<)メ
まとまとは段々と二人から距離を取っている。
(`・ω・´) ふっ!
男は体全体から閃光を発した。
(#‵;;-゚)
マト#>Д<)メ うわ
男がでぃに再度突進する。
(`・ω・´) !
男の腕に湿った感触が波及する。
血で出来た人影に突っ込んだ男は、次の瞬間に脚を横薙ぎに切られた。
(;`・ω・´) ぐっ……!
183
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:45:48 ID:v3mvNRkA0
(#゚;;-゚) これで退いてくれない?
(;`・ω・´) ……まだ 戦える
(#゚;;-゚) そう 私は貧血気味だから 帰る
(;`・ω・´) ま 待て……
マトマトはでぃに駆け寄り、ペットボトルを手渡した。
(#゚;;-゚) ありがと
ペットボトルの飲料を飲み干したでぃは、マトマトの震え声を聞いて、顔を向けた。
マト;>Д<)メ お嬢様
(#゚;;-゚) ……
/ ,' 3
老人は男のそばまで近づいて見下ろした。
/ ,' 3 しくじったかぁ シャキン
(;`・ω・´) すみません
(#゚;;-゚) ……師匠
/ ,' 3 男は落ちたぞ
184
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:46:57 ID:v3mvNRkA0
(#゚;;-゚)
でぃの表情は何も変わらなかった。
しかしマトマトは瞬時に飛び退き、男は歯を食いしばった。
老人はゆったりとした動きで振り返った。
/ ,' 3 おいおい やり合うつもりは無かったんじゃないのか?
(#゚;;-゚) ……何したの?
/ ,' 3 勘違いするなよ これは別の奴の返り血だ
/ ,' 3 あの男は しぃの獲物だ
(#゚;;-゚)
でぃは踵を返して走り出した。
マトマトは老人たちを見てから、でぃを追いかけ始めた。
/ ,' 3 マトマトぉ!
マトマトは体を強張らせて足を止めた。
/ ,' 3 でぃを連れてこい それでチャラだ
マトマトは背中を向けたまま、口を開いた。
マト#>Д<)メ それは……
/ ,' 3 お前の手柄にしてやるって言ったんだ
/ ,' 3 どうせ でぃは戻ってくる
マト#>Д<)メ
マトマトは焦った表情を作って、再度でぃを追いかけた。
185
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:48:34 ID:v3mvNRkA0
でぃはタカラの家のドアを開けた。
部屋の奥から、怯えた様子のタカラが出てくる。
(;,,^Д^) どなた……でしょうか?
_,
(#゚;;-゚) ……
タカラの後ろから、しぃが玄関を覗き込んでいる。
(*゚ー゚) 私の お姉ちゃんだよ
( ,,^Д^) あ しぃさんの
(#゚;;-゚) ……しぃ
(*゚ー゚) お姉ちゃん
姉妹は長い間、互いを見つめっていた。
タカラは二人を交互に見回している。
(*゚ー゚) しょうが ないよ
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) ……だろうと 思ってたよ
でぃが義指を付けていない左手の薬指から指輪を抜き取り、タカラに向かって差し出した。
怪訝な顔をしたタカラの横から、しぃが指輪をかすめ取った。
でぃはそれを見てから、タカラの顔を見つめ、手を数センチほど上に動かして、すぐに下に降ろした。
(#゚;;ー゚) それじゃ
( ,,^Д^) ?
でぃはタカラの家を出て行った。
186
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:49:56 ID:v3mvNRkA0
家の前にはマトマトが立っている。
マト#>Д<)メ お嬢様
(#゚;;-゚) ごめん
(#゚;;-゚) 巻き込んだ挙句に……
マト#>Д<)メ 荒巻様は 待たせましょう
(#゚;;-゚)
マト#>Д<)メ 一度 落ち着いた方が良いです
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) ……ありがと
187
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:52:23 ID:v3mvNRkA0
九話の投下終わりました
続けて十話の投下を開始します
188
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:53:32 ID:v3mvNRkA0
二十年ほど前、タカラは炉度教会館の前に立っていた。
女はタカラに向かって屈み、顔を揉んだ。
( ,,∧Д∧) ムニムニ
lw´‐ _‐ノv うむ まあ いいでしょ
lw´‐ _‐ノv 今日も愛想よくね
( ,,∧Д∧) はい!
タカラは会館に入っていった。
女は駐車場に戻り、車に乗り込んで去っていく。
189
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:54:55 ID:v3mvNRkA0
10.抱きしめそして
190
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:56:01 ID:v3mvNRkA0
教主はしぃに向かって恭しく頭を下げた。
しぃもまた椅子から立ち上がって頭を下げた。
少年は教主から眼を離さずに立っている。
(::゚:゚:) 何度もお越しいただき ありがとうございます
(*゚ー゚) お気になさらないでください
(*゚ー゚) 念押しするつもりはありませんが あなた方の教義には当主も非常に肯定的ですので
(::゚:゚:) それはそれは いつ聞いても有難い話です
(::゚:゚:) ではまた 後ほど
教主は部屋を出て行った。
しぃは自身の首元の髪の毛を、指で弄んだ。
(*゚ー゚) 搦め手が苦手なタイプに見えるよ
(*゚ー゚) ただの直観だけど
(`・ω・´) ……予断は許されませんよ
(*゚ー゚) 変な言い方
(*゚ー゚) 別に暗殺者がどこの誰だろうと 家には関係ないでしょ
(`・ω・´) でぃ様がまだ 行方不明のままです
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) へぇ
191
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:58:23 ID:v3mvNRkA0
(`・ω・´) あの方は 一度予知を覆したと聞きます
(*゚ー゚) 誤差だと思うよ アレは
(`・ω・´) ……そうなんですか?
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) えっとねー ウチが有名になったきっかけの……
(`・ω・´) 脱獄した 術師の件ですか?
(*゚ー゚) うん
(*゚ー゚) いくつかの予知ではね 彼に止めを刺すのは あなたか おじいちゃんだった
(*゚ー゚) お姉ちゃんが殺したパターンは 無かったの
(`・ω・´)
(`・ω・´) はぁ なるほど
(`・ω・´) それは確かに 誤差ですかね
192
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 20:59:46 ID:v3mvNRkA0
でぃは会館大会場の梁の上で身を潜めていた。
硬い梁の上で身を屈めながら、下の様子を伺っている。
(#゚;;-゚) ……
その中にはタカラの姿もあったが、でぃは特に注目しなかった。
そのうち会場にはしぃが現れ、タカラ達の歓声が上がった。
(*゚ー゚) やーやー 皆さん久しぶりぃ
明るい笑顔を作り、並んだ男の子たちに向かって順番に額にキスをした。
(*゚ー゚) じゃ 今日は何して遊ぶ?
( ><) かくれ鬼!
( ,,∧Д∧) 缶蹴り!
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) かくれ鬼! 決定!
(#゚;;-゚) ……
でぃは少し顔をしかめたが、上を見上げる視線が無いことを確認すると表情は元に戻った。
しぃは一から数を数え、周りの子供たちは大会場の出口や、会場内の物置へと散り散りになった。
(*゚ー゚) さーて もういいかな
しぃは少年に目配せして会場を出て行った。
少年は微動だにせず、しぃを見送った。
(`・ω・´) ……
193
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:01:16 ID:v3mvNRkA0
女は教主の元に飲み物を運んできた。
li イ ゚ -゚ノl| お茶です
(::゚:゚:) ああ ありがとう
教主は手に持ったチラシの文言に一通り注釈を入れた後、
女の持ってきた飲み物を数口飲み、机に置いた。
(::゚:゚:)
(:: : :) ……
そのうち教主は机に突っ伏し、いびきをかき始めた。
li イ ゚ -゚ノl|
li イ ゚ -゚ノl| ……
194
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:02:35 ID:v3mvNRkA0
しぃは廊下の半ばでやっとこさ追いついて、タカラの背中に触った。
(*゚Д゚) ダァーっ!
( ,,∧Д∧) うわ
(*゚ー゚) は ふう ふー……
( ,,⊃Д⊂) いーち にーい
(*゚ー゚) ……ふー ふ
しぃは息を整えながら振り返り、近づいてきた女に目を向けた。
( ,,⊃Д⊂) さーん よーん
(*゚ー゚) あの……いま この子たちと遊んでて
li イ ゚ -゚ノl|
女は懐から大振りのナイフを取り出した。
(;゚ー゚)
( ,,⊃Д⊂) ごー ろぉーく
195
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:03:41 ID:v3mvNRkA0
しぃは女が突き出してきたナイフを手で受け止めた。
女は腹に捻じ込もうと、力任せにナイフを押し出す。
(;゚ー゚) ……ッ
li イ ゚ -゚ノl|
( ,,⊃Д⊂) しーち はーち
指から床に血液が垂れ、顔に苦痛が滲む。
しぃが力に負けて後ずさり、タカラにぶつかった。
( ,,⊃Д⊂) きゅ……?
( ,,∧Д∧) じゅう
タカラが目を開けて振り向くと、しぃに今まさに凶刃を突き立てようとする女が、ちらりと見下ろした。
( ,,∧Д∧)
( ,,∧Д∧) ……何してるんですか?
(;゚ー゚) ……逃げなさい
( ,,∧Д∧) え でも 僕は鬼になったばかり
(;゚Д゚) 集合場所に戻って! 早くッ!
タカラはゆっくりと後ずさりし、しぃ達に背を向けて走り出した。
196
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:04:49 ID:v3mvNRkA0
少年はタカラが走り寄って来るのを見て、目を細めた。
(`・ω・´) ……
( ,,∧Д∧) あ あの 刃物を持った人が そっちの廊下で
(`・ω・´) ……そうか 君はここで待っていなさい 見てくるから
( ,,∧Д∧) あ お お願いします
そう言うと少年は事態とはまるで関係ないような緩慢な動作で、タカラが入ってきた扉の方に向かった。
( ,,∧Д∧) あ あの! しぃさんが 襲われてるんですよ!
(`・ω・´) ……
少年は何事かを呟いたが、タカラには何も聞こえなかった。
(#゚;;-゚) ……
でぃは音のしないように飛び降りて、少年が出て行ったのと反対側の扉に素早く入り込んだ。
タカラは落ち着きなく時折まわりを見渡していた。
197
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:06:20 ID:v3mvNRkA0
しぃは壁際に追い詰められていた。
li イ ゚ -゚ノl| ……
(;゚ー゚) はぁ はー……
血の滴る刃先がずりずりと、腹部の方へ近づいていく。
服と肌着が難なく切り開かれ、次の呼吸で腹に血液が這う。
(;゚ー゚) うぅ……なんで……
li イ ゚ -゚ノl| ……ん!
女は後ろに飛び退いた。
先ほどまで居た位置に血の槍が飛び込んできて、廊下の反対側で弾けた。
(#゚;;-゚)
(;゚ー゚) はぁ……はっ
しぃはナイフを取り落とし、でぃとは反対側に逃げ出した。
女はでぃから目線を外さないようにしながらナイフを拾った。
(#゚;;-゚)
でぃは血の槍を生成しかけたところで、後ろから頭を殴られた。
(#‵;;-゚) ……ッ!
(`・ω・´)
198
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:07:27 ID:v3mvNRkA0
でぃは振り向きざまに血の槍を振り回し、少年はそれを後退して避ける。
li イ ゚ -゚ノl|
女は判然としない表情を浮かべながら、慎重にしぃを追いかけ始めた。
(#゚;;-゚) ……何で邪魔するの
(`・ω・´) 一番良い予知に従う それが掟だからです
(#゚;;-゚) じゃあ何で しぃは逃げたの
(`・ω・´)
(`・ω・´) 逃げることも 予知に含まれてるんでしょう
(#゚;;-゚) ……ふざけんな
少年は腰を落とした。
でぃは槍を下に構えた。
199
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:08:33 ID:v3mvNRkA0
タカラは開いた扉の方を見た。
( ,,∧Д∧) しぃさ……
(*゚ー゚) ……タカラくん
しぃは脂汗を浮かべながら、しまったという顔で後ろを振り返った。
迫る白刃を飛び退いて避けようとして、太ももに突き刺さる。
(;゚ー゚) ぎ……っ
li イ ゚ -゚ノl|
(;,,∧Д∧) ……
刺さったナイフへと伸ばした女の手に、子供用の携帯がぶつかった。
女がタカラの方を見ると、ポケットから小さな財布を取り出し、投げつけてくる。
li イ ゚ -゚ノl|
(;,,∧Д∧) ……ひっ
女がタカラの方に近づくと、タカラは脚を震わせた。
(;゚ー゚) だめ……だって
200
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:09:41 ID:v3mvNRkA0
しぃは自らの脚に刺さったナイフを数秒かけて引き抜き、
噴出を始めた脚の止血もせずに、ナイフの柄で周期的に床を叩く。
li イ ゚ -゚ノl| ……?
女がしぃの方を振りむいた。
(*゚ー゚) ――こっちに 来て
女は目を見開き、ぱちぱちと瞬きをした後でうつろな表情を作ってしぃに近づき始めた。
しぃは歯を食いしばって立ち上がり、女の胸にナイフを突き立ててそのまま押し倒した。
(*゚ー゚) はっ……ふぅ……
しぃは呆然と見ているタカラの前で、何度か女の肢体に刃を滑り込ませた。
そして自らの血と女の血が混ざった床の上に倒れ込む。
(;,,∧Д∧) しぃさん……?
(*゚ー゚) ……は ははは
(*゚ー゚) タカラくん ちょっと来て
しぃは自らの脚を押さえながら、体を起こし、
タカラの頭を引き寄せて額をくっつけた。
(*゚ー゚) いい? きょう起こった事は 全部忘れる事
(;,,∧Д∧) でも
しぃは指でタカラの頭を何度もつつき、
タカラは段々と目を閉じていく。
(*゚ー゚) 次に こうするまでは
しぃはそう言ってタカラの唇を奪った。
そして二人とも床に崩れ落ちた。
201
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:11:15 ID:v3mvNRkA0
しぃはしばらくしてから、目を開けた。
目の前には、あまり衛生的でない印象の天井があった。
横を向くと、点滴を打たれながら本を読んでいる自らの姉の姿があった。
(*゚ー゚) ……
(*゚ー゚) ……おねえちゃん
(#゚;;-゚) なに
しぃは体を揺らしながら笑いをこぼし、すぐに痛みに顔を歪めた。
(*゚ー゚) あはは……ったぁ……
(#゚;;-゚) ……
(*゚ー゚) 生きてる……生き残っちゃったなぁ
(#゚;;-゚) まだ死ぬ気なの
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) おねえちゃん さあ
(*゚ー゚) 始めて人を殺した時 どんな気分だった?
(#゚;;-゚)
(*゚ー゚) 私は……
彼女はいつも通りのにこやかな顔で天井を見ていたが、唐突に目を泳がせた。
(*゚ー゚) あの男の子 無事だった?
(#゚;;-゚) だれのこと?
(*゚ー゚) 私と一緒じゃなかった?
(#゚;;-゚) あぁ……
(#゚;;-゚) 大丈夫だと思うよ
(*゚ー゚) そう
202
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:12:24 ID:v3mvNRkA0
でぃは本を閉じて脇の椅子に置いた。
(#゚;;-゚) それより これからどうするつもり?
しぃは横目ででぃを見やりながら、わざとらしく口を尖らせた。
(*゚ー゚) お姉ちゃんはさ
(*゚ー゚) 私を助けたことがばれたら 実家に居られなくなるんじゃないの?
(#゚;;-゚) かもね
(*゚ー゚) じゃあ 私は死んだことにしようよ
でぃもまた、わざとらしく腕を組んだ。
(#゚;;-゚) 死にたいならもう 一人でやってよ
(*゚ー゚) 待った そうじゃなくて そうじゃなくてね
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) バレるまで 二人で次期当主の真似事しようよ
203
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:13:43 ID:v3mvNRkA0
でぃはしぃの顔を見ながら腕をほどき、椅子に座り直した。
(#゚;;-゚) どういう事?
(*゚ー゚) つまり おねえちゃんが予知を覆さなかった という風にしといて
(*゚ー゚) おねえちゃん兼わたしが 当主の地位を盤石にしておく
(*゚ー゚) 私は口八丁 お姉ちゃんが手八丁で
(#゚;;-゚) ……
(*゚ー゚) そうすればそのうち おじいちゃんおばあちゃんが 退いて
(*゚ー゚) バラしてもシャキンさんは 何も言えない状態になる
(#゚;;-゚) ……別にいいよ 私が出てけば
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) マトマトちゃん 泣くよ
_,
(#゚;;-゚)
(*゚ー゚) それに私は死ぬ予定だったんだ
(*゚ー゚) 今出て行ったら 今度こそ殺されるかも
(#゚;;-゚) ……そうだね
(#゚;;-゚) 分かった
204
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:14:49 ID:v3mvNRkA0
その二十年ほど後、でぃは荷物を抱えて伊藤家の門を出た。
しぃはそれに付き添い、伊藤家の門から出ることなく、でぃに声をかけた。
(*゚ー゚) ごめん
(#゚;;-゚) いや いい機会だよ
(#゚;;-゚) この家には一人しか要らないってのは 最初から分かってた事だから
(*゚ー゚)
(#゚;;-゚) じゃ 頑張って
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) お姉ちゃん
(#゚;;-゚)
(*゚ー゚) 元気で
(#゚;;-゚) ん
205
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/23(火) 21:17:47 ID:v3mvNRkA0
十話の投下は終わりました
続きは明日投下する予定です
明日投下分で完結する予定です
206
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 19:56:40 ID:ym2LAeeE0
11話の投下開始します
207
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 19:57:47 ID:ym2LAeeE0
でぃはずっと黙っていた。
泣きはらした瞼を隠そうともせず、来た際のしぃと同様に窓の外に伸びる高速道路の防音壁を眺めている。
(#゚;;-゚)
マト#>Д<)メ
マトマトは居心地が悪そうに、でぃの方を見やったり、俯いて自分の膝を見つめたりしていた。
老人は前方をぼんやりと眺め、男はペダル操作の度に痛みに顔を歪ませた。
マト#>Д<)メ 次のサービスエリアで 運転を代わりましょうか?
(`・ω・´) ……いや 問題ない
マト#>Д<)メ 事故られたら 私が困るんですけど
(`・ω・´) ……
男は特に答えをせずにスピードを落とし、左車線に寄った。
サービスエリアに着くと、マトマトは座席から降りた。
(#゚;;-゚) トイレに行っていい?
老人は無言で席を立ち、真っ先にトイレに向かった。
マト#>Д<)メ 行きましょうか
マトマトとでぃも連れ添ってトイレに向かった。
男は車を出て、後部座席に乗り込んだ。
でぃとマトマトがトイレから出てくると、先に済ませた老人が傍で待っていた。
マト#>Д<)メ お待たせしました
/ ,' 3 おう
マトマトは自動販売機の方に行って、
でぃと老人に聞きながら四つ飲み物を買い込んで、
車に戻って運転席に着いた。
208
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 19:58:52 ID:ym2LAeeE0
(#゚;;-゚) 私はどうなるの?
でぃは高速に復帰した数分後に口を開いた。
(`・ω・´) ……巫女の役目を引き継いでもらいます
(#゚;;-゚) おばあ様が許さないと 思うけど
/ ,' 3 ペニサスはもう 未来視は出来ん
(#゚;;-゚) ……私はもともと あの機械とは相性が悪いよ
(#゚;;-゚) 予言は覆す 未来視の精度は低い
/ ,' 3 構わん
でぃは何かに気づいたように助手席の老人を見た。
彼女からは伸びた髭が車の揺れと同期していることしか見えなかったが、
老人は表情を変えず前方の景色をぼんやり眺めているだけだった。
(`・ω・´) ……
209
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 19:59:57 ID:ym2LAeeE0
11.夢で逢えたら
210
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:01:01 ID:ym2LAeeE0
タカラは目を覚ました。
( ,,^Д^) ……
目の前のしぃの瞳が、ゆっくりと離れていく。
(*゚ー゚) えへ 目覚めのキス
(*,,^Д^) おはようございます
(*゚ー゚) おはよ
しぃはベッドから離れて、布団を剥がした。
(*゚ー゚) ささ 起きて起きて 朝ごはん出来てるから
(*,,^Д^) はい
タカラはトイレと洗顔をすましてから、折り畳みテーブルを広げた。
しぃはそこにお盆を二つ持ってきて置いた。
( ,,^Д^) いただきます
(*゚ー゚) はーい
211
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:02:05 ID:ym2LAeeE0
老婆は床に座り込んだまま、視線を壁の模様に彷徨わせていた。
視界の端の戸からノックの音が聞こえると、そちらに顔を向けた。
('、`*川 ……どうぞ
でぃは引き戸を開けた。
(#゚;;-゚) ひさ……お久しぶりです
('、`*川 ……ケホ
でぃは部屋に入って戸を閉め、所在なさげに老婆から眼を逸らした。
('、`*川 明日の朝
(#゚;;-゚)
('、`*川 さっそく やってもらう
(#゚;;-゚) ……はい
老婆は視線をでぃから逸らして、床に踊らせ始めた。
でぃは静かに部屋を出て行った。
212
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:03:10 ID:ym2LAeeE0
フィレンクトは病室で呆けていた。
(//L’) ……
彼の視界の端に見慣れた人影が映った。
(*゚ー゚)
(//L’) ご依頼のものは出来てますよ
フィレンクトはベッドの脇の机の引き出しを開き、義指を取り出した。
(//L’) 三年は取り外す事は出来ないでしょう
(*゚ー゚) お代は?
(//L’) 必要ありませんよ
(*゚ー゚)
(//L’) 彼は私の 命の恩人ですから
(//L’) 呪いを解くためなら一肌脱ぎますよ
(*゚ー゚) ありがとうございます
213
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:04:16 ID:ym2LAeeE0
ぼるじょあは灰皿に挟んだままのタバコの煙を眺めていた。
リi、゚ー ゚イ`! あ お疲れ様です
( ・3・) お疲れ
大上はタバコを吸い始めた。
数回一服を繰り返した後、ぼるじょあの様子を伺いながら切り出した。
リi、゚ー ゚イ`! さっきタカラさんが電話取ってましたよ ぼるじょあさん宛の
( ・3・)
( ・3・) なあ タカラって一月前ぐらいから 恋人できたんだよな
リi、゚ー ゚イ`!
大上はおもむろにタバコを深く吸った。
214
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:05:20 ID:ym2LAeeE0
リi、゚ー ゚イ`! 私も聞きましたよ
( ・3・) やっぱりそうなのか
リi、゚ー ゚イ`! やっぱり……?
( ・3・) 何か 指の扱いがおかしくなってたんだよな
リi、゚ー ゚イ`!
大上は持っていたタバコを灰皿に擦り付け、二本目を取り出し火を点けた。
リi、゚ー ゚イ`! ……ぼるじょあさんって 部下の事よく見てるんですね
( ・3・) ははは
リi、゚ー ゚イ`!
大上は少し遠い目をした。
( ・3・) 三日前から 相手が変わったよな
リi、゚ー ゚イ`!
リi、゚ー ゚イ`! いや そこまではちょっと 分からないですけど
( ・3・) ……違ったかな
215
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:06:23 ID:ym2LAeeE0
しぃは寝こけているタカラの左手の義指を取り換えた。
(*゚ー゚) ……
( ,, Д )
( ,, Д ) でぃ……さん
(*゚ー゚)
しぃは真顔のままで再び布団に潜りこみ、タカラの唇に指を押し付けた。
(*゚ー゚) ……
216
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:07:51 ID:ym2LAeeE0
朝焼けに照らされた機械には、夥しい数の管がつながれていた。
中心に置かれた仰々しい金属の椅子、その背もたれに人の頭ほどある半球形の塊が引っ掛けてある。
(#゚;;-゚) ……
('、`*川 始めて
でぃはその椅子に座り、半球を自らの頭に被せ、手足を固定した。
周りの管が脈動を始め、どんどんと音が大きくなる。
(# ;;- ) ……っ
数分ほどたつと、でぃの口からくぐもった唸り声が漏れ始めた。
老婆の後ろで見守っていたマトマトの顔が心配に染まる。
(# ;;ー ) ……き ふふ……
マト;>Д<)メ
('、`*川
(# ;;∀ ) ……はは
マト;>Д<)メ 止めますよ!
('、`*川 いいよ
217
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:08:54 ID:ym2LAeeE0
マトマトは機械のそばの端末に何かしら操作を加え、機械は振動を収めつつ止まった。
四肢の固定は自動で外れ、マトマトは半球の塊をでぃの頭から引っぺがした。
(#‵;;ー゚) ……
マト#>Д<)メ 大丈夫ですか?
(#゚;;-゚) まあ 多分
('、`*川 どうだったの?
でぃは警戒を伴った声に、緊張を失した顔を向けた。
(#゚;;-゚) 未来は見えたよ いくつか
('、`*川
('、`*川 そう じゃ早めに書いておいて
(#゚;;-゚) ……はぁい
老婆は一人で部屋から出て行った。
マト#>Д<)メ 本当に大丈夫ですか?
(#゚;;-゚)
(#゚;;ー゚) はは……
マト#>Д<)メ お嬢様
(#゚;;-゚) いや うん 大丈夫だよ
218
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:09:57 ID:ym2LAeeE0
タカラは玄関で靴を履き、立ち上がった。
( ,,^Д^) では 行ってきます
(*゚ー゚) あ ちょっと待って
しぃはタカラに口づけした。
(*゚ー゚) 今日はまだしてなかったから
( ,,^Д^) はは ありがとうございます
( ,,^Д^) じゃ
(*゚ー゚) うん 行ってらっしゃい
タカラは家を出て行った。
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) 現実的じゃないな……
219
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:11:02 ID:ym2LAeeE0
タカラはオフィスに入った。
( ,,^Д^) おはようございます
( ・3・) おはよう
ぼるじょあは少しタカラの様子を伺っているが、タカラはそれに気づいた様子を見せずに自分の席についた。
PCを立ち上げ、パスワードを入力し始めると、彼の左手の薬指が取れた。
( ,,^Д^) ……
( ,,^Д^) えっ
220
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:12:05 ID:ym2LAeeE0
女が病室に入ってきた。
/ ゚、。 / 仕事は終わった?
(//L’) ああ ありがとうございます
/ ゚、。 / いや 道具を貸すぐらいなら いつでもするよ
(//L’) 師匠
/ ゚、。 /
/ ゚、。 / なに?
(//L’) しばらく 師匠の下で働かせてくれませんか?
/ ゚、。 / ……願ったり叶ったりだ こっちから提案する気だったよ
/ ゚、。 / 何か心境の変化でもあったの?
(//L’) いや
(//L’) ひっさびさに 良ぃ仕事 したなぁ〜って
/ ゚、。 /
/ ゚、。 / 悪事じゃないだろうね
(//L’) 愛のキューピットを務めてやろうってんだ
(//L’) 括るなら善の方ですよ
221
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:13:08 ID:ym2LAeeE0
ぼるじょあの椅子はちょうど寿命だったらしく、
思わず仰け反った拍子に背もたれの支えが折れ、
床か壁にぶつかるべきところを慌てて上半身を傾け、腰を痛めた。
(;・3・) う……
(;,,^Д^) わ 大丈夫ですか?
(;・3・) いや お前が……
(;・3・) 指が 取れてるじゃねえかよ!
(;,,^Д^) ……
タカラは左手をとっさに隠した。
しかしすぐに元の位置に戻して、まじまじと見つめた。
(;,,^Д^) ……取れたのは 一月前ですよ
(;・3・)
(;・3・) ……そう いう感じか
リi、゚ー ゚イ`! おはようございまーす
(;・3・)
リi、゚ー ゚イ`! ……
大上はタカラ達の様子をちらとうかがってから、自分の席について準備を始めた。
222
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:14:22 ID:ym2LAeeE0
(;,,^Д^) ……
タカラは単純な装飾の指輪を穴が開くほど見つめた後で、左手をぐっと握りしめた。
( ,,^Д^) ぼるじょあさん
(;・3・) うん?
( ,,^Д^) すみませんが ちょっと休暇を頂きます
(;・3・)
(;・3・) 申請は帰ってきてからでいいよ
( ,,^Д^) ご配慮 感謝します
タカラは荷物をまとめて大上の後ろを通り抜けた。
リi、゚ー ゚イ`! タカラさん
( ,,^Д^)
リi、゚ー ゚イ`! 結婚 おめでとうございます
( ,,^Д^) ありがとうございます
タカラはオフィスを出て行った。
223
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:15:25 ID:ym2LAeeE0
タカラは家のドアを開けた。
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) 思ったより ずっと早かったね
( ,,^Д^) しぃさん
(*゚ー゚)
( ,,^Д^) でぃさんは今 どこに居るんですか?
(*゚ー゚) 会ってどうするの?
( ,,^Д^) まだ 決めていません
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) ……私じゃ ダメなのかな?
( ,,^Д^)
(*゚ー゚) 運命の再会を果たしたんだよ? 私達
(*゚ー゚) 命を救い合った仲だって言うなら 私達だって そうじゃない
( ,,^Д^)
(*゚ー゚) 私 ずっとタカラくんの事 忘れなかった
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) 確かに僕も しぃさんの事 好きでした
(*゚ー゚)
( ,,^Д^) でも……成り行きで 契約しました
( ,,^Д^) 僕の中で この契約はまだ 生きている
224
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:16:28 ID:ym2LAeeE0
(*゚ー゚)
(*゚ー゚) ふふ……
(*゚∀゚) あはははっ!
( ,,^Д^)
(*゚ー゚) はーぁ
(*゚ー゚) 頼りない言い方
しぃは懐から取り出した指輪を投げつけ、タカラはそれを受け取った。
( ,,^Д^)
(*゚ー゚) 私の実家は割と有名だから 情報屋でも安く手に入るよ
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) ありがとうございます
タカラはドアをあけ放ったまま、外に飛び出した。
しぃは気だるげに手をひらひらと振った。
(*゚ー゚) お礼を言うところじゃないってーの
225
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:17:34 ID:ym2LAeeE0
マトマトは水の入ったコップをでぃに手渡した。
(#゚;;-゚) ……ありがと
でぃはそれを飲み干して、苦笑を浮かべた。
(#゚;;-゚) 変な予知だったよ
(#゚;;-゚) タカラが迎えに来て
マト#>Д<)メ
(#゚;;ー゚) 馬鹿みたい
マト#>Д<)メ 何がですか?
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) なんで怒ってるの?
マト#>Д<)メ 嬉しいでしょう そうなったら
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) 本当に……そうなったらね
マト#>―<)メ
マト#>Д<)メ すみません
(#゚;;-゚) ……謝らないでよ
226
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:18:37 ID:ym2LAeeE0
情報屋はタカラが店に入った瞬間に、端末に何かを打ち込んだ。
∪゚ェ゚∪ 来たか
( ,,^Д^) でぃさんの実家はどこです?
∪゚ェ゚∪ まあ逸るなよ 俺含めて三人も用があるんだ
( ,,^Д^) ?
∪゚ェ゚∪ 俺の用は単純だ
情報屋はタカラに近づいて、着ぐるみの顔を押し付ける直前で止めた。
∪゚ェ゚∪ 仕事を勝手に放り出すな そう伝えろ
( ,,^Д^) ……はい
情報屋は元の位置に戻り、また端末を操作した。
∪゚ェ゚∪ そろそろ来るな
店の入り口から、何者かが勢いよく店の中に飛び込んできた。
( //ω^)
( //ω^) 砂尾タカラだおね?
( ,,^Д^) そうです あなたは?
( //ω^) 伊藤家に縁のあるものだお
( //ω^)
( //ω^) 伊藤でぃを どうするつもりだお?
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) 今はただ 会うつもりです
( //ω^)
( //ω^) 来いお
227
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:19:42 ID:ym2LAeeE0
表から車の駆動音が聞こえる。
情報屋から出ると、近くに停まった車から女が出てくる。
从リ ゚д゚ノリ おお 話はまとまったか
( ,,^Д^) あなたは
从リ ゚д゚ノリ ギコ子という
从リ ゚д゚ノリ こいつは魔力偽装車だ 奇襲にはもってこい
( //ω^) 助かるお
从リ ゚д゚ノリ ちょっと待て
( //ω^) 何だお
从リ ゚д゚ノリ 値段を聞けっ
( //ω^) ……砂尾タカラ
( ,,^Д^) えっ?
( ,,^Д^) 現金ですか?
从リ ゚д゚ノリ
从リ ゚д゚ノリ タダで良いんやで
( //ω^) 行くお
( ,,^Д^) あ ありがとうございました ギコ子さん
从リ ゚д゚ノリ 今後とも ごひいきに
228
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:20:46 ID:ym2LAeeE0
十一話の投下おわりました
続けて十二話の投下を開始します
229
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:21:58 ID:ym2LAeeE0
車が大通りに出ると、タカラが男に尋ねた。
( ,,^Д^) でぃさんの実家に向かってるんですか?
( //ω^) そうだお
( ,,^Д^) ……あなたは 伊藤家に仕えてる方ですか?
( //ω^)
( //ω^) 僕は内藤ホライズン 魔術関連の警察だお
内藤はハンドルを切った。
頭上を通り過ぎる看板にはインターチェンジの表示がある。
( ,,^Д^) でぃさんを捕まえに行くんですか?
( //ω^) 流れによるお
( //ω^) 伊藤家に与するようなら 戦う事になると思うお
( ,,^Д^) ……では 何で僕を連れて行くんですか?
( //ω^) 敵を減らすためだお
( ,,^Д^)
( //ω^) 伊藤でぃを絆すために 連れて行くんだお
( ,,^Д^) 分かりました
230
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:23:01 ID:ym2LAeeE0
12.愛すべきもの
231
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:24:04 ID:ym2LAeeE0
車は高速道路を走り出した。
タカラは手を組んで深呼吸した。
( ,,^Д^) 伊藤家って どういうところなんです?
( //ω^) 僕も詳しい所は知らないお
( //ω^) 予知を得意としてきた歴史ある術師の家系で 近代以後の他の術師と同じく 没落寸前
( //ω^) しかし20年ほど前 脱獄逃亡中の術師犯罪者を殺害
( //ω^) 別の地方の宗教団体からの援助を受け 一時盛り返した
( ,,^Д^)
( //ω^) しかし次期当主と見込まれた少女が死亡したことで
( //ω^) 利用していた宗教団体は崩壊 伊藤家の資金繰りも危うくなり
( //ω^) 今では完全に没落した と
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) しかし 召し使いっぽい人に会いましたよ
( //ω^) 別に雇ってるとは限らないお?
( ,,^Д^) まあ そうですね
232
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:25:08 ID:ym2LAeeE0
タカラが矢継ぎ早の質問を終えると、車の中にはタイヤが転がる駆動音だけが響いた。
サービスエリアを一つ通り過ぎた後で内藤が口を開いた。
( //ω^) 今度はこっちが聞くお
( ,,^Д^) どうぞ
( //ω^) 得意術法は何だお?
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) それが 分かりません
( //ω^)
( //ω^) トーシロかお?
( ,,^Д^) そうです
内藤は片手をハンドルから離して、包帯の上を掻いた。
( //ω^) ……伊藤でぃと 間藤マトマトを含めなければ
( //ω^) 向こうは三人 こっちは二人
( ,,^Д^)
(;,,^Д^) 実質 一対三と?
( //ω^) ……僕は手負いだお
(;,,^Д^) じゃあ……0.5対三
( //ω^) ……
233
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:26:11 ID:ym2LAeeE0
内藤は次のサービスエリアに入るよう、車体を寄せた。
タカラは咎めもせずに、車が駐車場に止まるのを待った。
( //ω ) ……
内藤はハンドルに体を預け、俯いた。
( ,,^Д^) ……まずい状況ですか?
( //ω ) 勝つ見込みは薄いお
( ,,^Д^) 何か ありませんか? 超絶パワーアップアイテムとか
( //ω ) あれば僕が使うお
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) 警察の応援とか……
( //ω ) さっきも言ったように 近代以後の術師は弱体化して
( //ω ) 術師関連の部署 経費はガンガン削られているお
( //ω ) 僕も実は 上の都合によっては すぐにでもクビを斬られる 特殊な派遣員なんだお
( //ω ) 今回はそれを逆手に取った 独断行動だお
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) ……なるほど
234
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:27:16 ID:ym2LAeeE0
老婆は多数の管が繋がれた椅子に、深く腰掛けていた。
やや経ってでぃがノックをして入ってくる。
(#゚;;-゚) 何でしょうか
('、`*川 ……記録を見たよ
('、`*川 砂尾タカラの事が書かれていない
老婆は愛おしそうに椅子の縁を撫でた。
でぃは腰に手を当て、そっぽを向いた。
('、`*川 なぜ?
(#゚;;-゚) 確率の低い予知は 書きません
('、`*川 ……くく コホっ
老婆はしゃがれた笑い声を漏らした。
でぃは怪訝な表情を見せながら、老婆を見据えた。
('、`*川 私も しぃも 彼がコレを壊すのを見たよ
_,
(#゚;;-゚) ……は?
('、`*川 予言が途切れたのは それが理由だ
('、`*川 とんでもない奴を婿にしたもんだね
235
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:28:20 ID:ym2LAeeE0
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) じゃあ三人とも 同じ結果……?
('、`*川 しかし……しぃも あんたも 別の未来を見た
('、`*川 そうなるには あの男をおびき出して 殺せばいい
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) タカラは今 しぃと一緒に居るはず
('、`*川 ……
(#゚;;-゚) この機械を壊す必要なんて ない
('、`*川 そう願ってるよ
('Д`*川 ぇホッ…… ゴホ……
236
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:29:22 ID:ym2LAeeE0
内藤は顔を上げた。
( //ω^) ドーピングなら あるかもしれないお
( ,,^Д^) 聞かせてください
内藤は後部座席からリュックを引っ張り出して、ひとしきりゴソゴソとやった後で小袋を取り出した。
中には米粒ほどの赤く光る石がいくつか入っていた。
( //ω^) これを口から摂取するんだお
( ,,^Д^) ……喉やりませんか?
( //ω^) 多少は痛めるお
内藤は小袋の中から一つ取り出し、タカラに手渡した。
( //ω^) でも ほとんどの場合はうまく 体に取り込まれる
( //ω^) 理由はともかく 人間と相性がいいお
( ,,^Д^)
タカラは数秒ためらってから、飲み下した。
内藤は静かに見守っている。
( ,,^Д^) 変な味しますね えホッ
( //ω^) これで多少は気休めになるお
内藤はリュックを後部座席に放り込み直してから、車を発進させた。
237
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:30:37 ID:ym2LAeeE0
部屋にノックの音が鳴った。
マト#>Д<)メ お嬢様?
でぃは布団から起き上がって扉の前まで歩いて行った。
そのままゆっくりと扉を開き、隙間から顔を覗かせた。
(#゚;;-゚) どうしたの?
マト#>Д<)メ 写真が出来ましたよ
でぃはマトマトが差し出した写真を受け取った。
写真にはでぃとタカラが二人で写っている。
(#゚;;-゚) ……携帯も タカラの家に送らないと
マト#>Д<)メ 落ち着いてからで良いですよ
(#゚;;-゚) ……?
でぃは突然目頭を押さえて後ずさりした。
マト#>Д<)メ どうしました?
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) ……いま
(#゚;;-゚) 繋がった
238
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:31:39 ID:ym2LAeeE0
タカラ達の車は既に高速を降り、信号で停まっていた。
( ,,^Д^) !
( ,,^Д^) 内藤さん!
( //ω^) 何だお
( ,,^Д^) 今 ボクとでぃさんの写真が見えました
( //ω^)
( //ω^) へえ?
タカラは携帯を取り出して、写真を見せた。
( //ω^) ……これが?
( ,,^Д^) だから これをプリントした状態で
( ,,^Д^) 多分でぃさんが見ているのを 僕も見たんです
( //ω^)
( //ω^) 向こうは指輪もつけてないのに?
( ,,^Д^) そうです
( //ω^) ……
( ,,^Д^) 何か 変な事なんですか?
( //ω^) いや……
( //ω^) 妻の待ち受けは いつから息子に変わったんだっけと 思って
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) 愛まで無くなったとは限りませんよ
( //ω^) 誰が慰めろと言ったお
239
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:32:55 ID:ym2LAeeE0
(#゚;;-゚) ……ここに向かってる
マト#>Д<)メ 車ですか?
(#゚;;-゚) インターを降りたあたり
マト#>Д<)メ
マト#>Д<)メ 迎えに行きましょう
(#゚;;-゚) ちょっと
でぃはマトマトの脇をすり抜けて、廊下に進み出た。
でぃの正面の廊下の先に、男が立っている。
(`・ω・´) ……
マト#>Д<)メ お嬢様
逆にマトマトがでぃを押しのけて、男の前に立ちふさがる。
マト#>Д<)メ 行ってください
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) 任せる
240
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:33:59 ID:ym2LAeeE0
でぃは廊下の窓を開けて出て行った。
男はそれを追う素振りも見せず、マトマトを見据えている。
マト#>Д<)メ ……
(`・ω・´) 君は攻撃を得意としていない
マト#>Д<)メ ……そうですね
(`・ω・´) 封印術だけでは どうしようもないだろう
(`・ω・´) ケガをするのは君だけだ
マト#>Д<)メ
マト#>Д<)メ こんなものはありますが
マトマトは懐からホイッスルのような小型の筒を取り出し、下手で男に投げた。
男の体に光が瞬いたかと思うと、筒は両者の中間で弾け、マトマトは薄い光の壁で爆風を防いだ。
マト#>Д<)メ ……
(`・ω・´)
男は寸分違わぬ姿でそこに立っていた。
(`・ω・´) もう一度言う 僕が勝つ
マト#>Д<)メ その意見は 初耳ですね
241
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:35:02 ID:ym2LAeeE0
内藤は車を止めた。
( //ω^) ん〜?
( //ω^) こっちで合ってるのかお?
( ,,^Д^) 迷ったんですか?
( //ω^) まあ……山道だから
( //ω^) ……
内藤は押し黙って道の先を凝視している。
タカラが目線の先を追うと、槍を構えた老人が立っている。
( //ω^) 合ってたみたいだお
( ,,^Д^) あの人は?
( //ω^) 荒巻 伊藤家の用心棒
( //ω^) 僕が相手をするお
( ,,^Д^)
( //ω^) 恋人に会いに行けお
( ,,^Д^) ……ありがとうございます
内藤とタカラは車から出た。
内藤は道を進み、タカラは横道に逸れて坂を上っていく。
( //ω^) ……
/ ,' 3
( //ω^) 借りを返すお
/ ,' 3 律儀な奴だ
/ ,' 3 ジジイに借りた物など ネコババすればいいものを
( //ω^) 冥土の土産は 多い方が良いお?
242
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:36:06 ID:ym2LAeeE0
老婆は椅子に座っていた。
('、`*川
('、`*川 ふぅ〜…… カホッ……
わざとらしい深いため息の後に、半球状の塊を頭に装着した。
( 、 *川 年々キツくなるね
老婆は手探りで右手を左手に重ね、自身の左手の薬指から義指を外した。
243
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:37:09 ID:ym2LAeeE0
でぃは走っていた。
時折見えるタカラの視界が、自らに近づいていることを感じていた。
(#゚;;-゚) そっちじゃない……
タカラが自分と鉢合わせるはずだった道を逸れた。
でぃは分かれ道に立って、リンクする彼の背中と視界を確かめながら叫んだ。
(# ;;Д ) タカラ―――ッ!
タカラは息を切らしながら、でぃの方を向いた。
それから走ってきたでぃを抱き止めた。
( ,,^Д^) すみません
(# ;;- ) 何で謝るの
( ,,^Д^) 浮気 しましたから
( ,,^Д^) それに 一人にしました
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) 指輪 はめて……お願い
タカラは指輪を取り出して、でぃの指にはめた。
( ,,^Д^)
(#゚;;-゚)
でぃは指輪を反対の手指でなぞった。
244
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:40:13 ID:ym2LAeeE0
十二話の投下を完了しました
続いて十三話の投下を開始します
245
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:42:20 ID:ym2LAeeE0
でぃは指輪から手を離し、タカラの顔に向き直った。
(#゚;;-゚) マトマトが足止めをしてくれてる
(#゚;;-゚) 助けに行かないと
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) それで言うと こっちも同行者が 荒巻という方と戦っています
でぃはタカラが登って来た方を見た。
( ,,^Д^) どっちを優先すべきですか?
(#゚;;-゚) ……マトマトかな
(#゚;;-゚) マトマトを助けたついでに 屋敷に居るおばあ様を人質にすれば
(#゚;;-゚) 師匠……荒巻は無力化できるかもしれない
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) なるほど
(#゚;;-゚) 行こう
246
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:43:25 ID:ym2LAeeE0
内藤は警棒で槍先を逸らした。
勢いで荒巻の方へ飛び込んだが、荒巻が後ろに飛びながら回転し、
内藤は屈み頭の上を刃が通り過ぎる。
( //ω^) ……
/ ,' 3
荒巻は回転を止め、じっと槍を構えたまま内藤の方へ顔を向けた。
内藤もまた、腰を落としたまま警棒の先を少しずらした。
/ ,' 3
( //ω^)
内藤は十数秒の後、荒巻に向かって大地を踏みしめた。
荒巻は瞬時に槍を突き出した。
( //ω^) ほっ!
内藤は猫背になった体を逸らして、警棒を振り上げた。
警棒は鞭のように伸び、しなり、槍にまとわりついた。
247
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:44:30 ID:ym2LAeeE0
/ ,' 3
しかし、荒巻はそれを分かっていたかのように、
投げつけるように槍を放して同時に内藤に迫った。
( //ω^) !
荒巻は内藤の腹に蹴りを叩き込み、槍を自らの手に引き戻した。
( //ω ) ……
/ ,' 3
荒巻は内藤の利き腕と片脚を突き払い、距離を取った。
内藤は唸り声をあげて荒巻を睨みつけた。
/ ,' 3
荒巻は内藤の様子を見ながら、横道を上がっていった。
( //ω ) ……ぐ……
内藤は何とか立ち上がりながらも、また倒れ込んだ。
( //ω ) ……繋がってやがるのかお まさか
248
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:45:33 ID:ym2LAeeE0
男はマトマトに殴りかかった。
(`・ω・´)
マト#>Д<)メ
マトマトは後ろに飛んだ。
男はアッパーが空振りした拳をチョップの形にして、大きく踏み込んで振り下ろした。
マト#>Д<)メ ……!
マトマトは腕で攻撃を受け、男の横をすり抜けた。
片腕のおざなりな追撃を何とか避けながら、マトマトは廊下を走った。
(`・ω・´) ……
男はでぃの出て行った窓を見てから、振り返ってマトマトを追いかけ始めた。
249
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:46:53 ID:ym2LAeeE0
マト#>Д<)メ はあ……はぁっ……
マトマトは屋敷の庭に走り出てきた。
そして入口の方を振り返って、肩で息をしながら座り込み、地面に手を置いた。
(`・ω・´) ……
男は屋敷から出てきて、一直線にマトマトに突っ込んできた。
マトマトはそれに向かって、逃げもせず隠れもせず腰を下ろした。
(`・ω・´) ?
男は減速したが間に合わず、
マトマトが叩く地面に発生した魔方陣から巨大な銀色の椀が現れ、
二人纏めて投げ込まれたかと思うと、上からも椀が現れてぴったりと縁を重ねて光明を塞いだ。
(` ω ´) 何だ……?
男は暗闇で座り込んだまま動かない。
マトマトは呻きながら寝転んでいる。
マト# Д )メ ……もう 光術しか 使えないでしょう
(` ω ´) ……なに
250
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:47:59 ID:ym2LAeeE0
マト# Д )メ 体の 自由は 効かない ように 組みました
マト# Д )メ 更に ここは 鏡張りです
(` ω ´)
(` ω ´) しかし こんな大規模で複雑なやり方が 長く持つ筈がない
マト# Д )メ あの二人が 会うまで で
マト# Д )メ 私の命を 賭けてでも ですか?
(` ω ´)
(` ω ´) 僕が自爆覚悟で 魔法を使わないと思うのか?
マト# Д )メ
マト# Д )メ だとしたら
男は体に力を込めた。
マトマトは閃光に変わる暗闇の中で、わが意を得たりと微笑んだ。
マト#>Д<)メ あなたも相当 忠義者 です ね
伊藤家の庭に、非連続と連続を散りばめたような音響が響き渡った。
251
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:49:03 ID:ym2LAeeE0
( 、 *川 ……
( 、 *川 連戦か
( 、 *川 ゴホっ
252
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:50:47 ID:ym2LAeeE0
でぃは後ろを振り返った。
(#゚;;-゚)
( ,,^Д^)
/ ,' 3
荒巻はぐんぐんとこちらに迫って来る。
でぃは構え、タカラはでぃと目を合わせてから道の脇に寄った。
/ ,' 3
荒巻は槍をでぃに向かって突き出す。
でぃもそれに併せて血の槍を突き出す。
刃先がぶつかる衝撃の音がタカラに届き、
二つの槍は双方の肩の布地を削り取った。
(#゚;;-゚)
/ ,' 3 腕は鈍っていないらしい
(#゚;;-゚) おかげさまで
二人は槍の先を地面に下げて、
じりじりと距離を取った。
253
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:51:49 ID:ym2LAeeE0
( //ω ) ふーふー……
タカラは重い足取りで坂を上ってくる内藤に気が付いた。
にらみ合いを続ける二人に時折目を向けながら、内藤に駆け寄る。
(;,,^Д^) 大丈夫ですか?
( //ω^) だ 大丈夫だお
( //ω^) それより多分 荒巻はペニサス……当主と繋がってるんだお
( //ω^) ペニサスの予知を見ながら 相手の手を知ったうえで
( //ω^) カウンターのし放題だお
(;,,^Д^)
(;,,^Д^) その人を 止めればいいんですよね
( //ω^) このまま まっすぐ行けば屋敷につくお
( //ω^) 予知をしている間は 無防備なはず
タカラは立ち上がり、振り返って道を逸れて林の中を走り始めた。
254
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:53:17 ID:ym2LAeeE0
でぃも荒巻も相手から眼を逸らさなかったが、
タカラが林から出てきた際に、荒巻は槍を肩の上に構えた。
タカラはハッとして腕を頭の前に構える。
( ,,^Д^) !
(#゚;;-゚) !
でぃは荒巻に突進した。
荒巻は投げかけた槍を地面に突き立て、支えにして跳び上がりでぃの攻撃を避けた。
/ ,' 3
(#゚;;-゚)
荒巻はでぃの頭の上を通り過ぎて着地し、タカラに向かって走り出した。
でぃは荒巻と同様の所作を取り、荒巻の背中に向かって槍を投げつけた。
/ ,' 3
荒巻は後ろから飛んでくる槍を見もせずに屈んで避けた。
槍は何故か坂道に刺さらずに浮き上がり、腕を構えたままのタカラに吸い込まれていく。
(#゚;;ㇿ゚) ッ!? タカラ!
(;,,^Д^)
槍が球体に崩れタカラの左手の近くに漂い始めた。
荒巻は槍を構えたまま立ち止まった。
/ ,' 3
/ ,' 3 ……
( //ω^)
( //ω^) 引力……
255
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:54:42 ID:ym2LAeeE0
( 、 *川 ……
( 、 *川 はは……
( 、 *川
( 、 *川 勝った
( 、 *川
( 、 *川 ゲホっ ごッ……ほ……
256
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:55:46 ID:ym2LAeeE0
荒巻はタカラの方へ駆け出した。
/ ,' 3
(#゚;;-゚)
でぃは新しい血の槍を生成し、
タカラの近くの血球もまた槍の形に生成され直し、タカラはそれを掴んだ。
/ ,' 3
荒巻はタカラに向かって槍を上段に構え、タカラが頭上かつ水平に構えた血の槍にたたきつけた。
でぃは後ろから槍を突き刺そうと近づき、荒巻はまたも見もせずに体を逸らして避け、
振り返り槍をでぃに向かって振りぬいた。
(;,,^Д^) ……! うおぉっ!
タカラはでぃが血を迸らせ坂道に倒れ込むのを見て、慣れない怒号を上げ槍を短く持って、荒巻に突っ込んだ。
/ ,' 3
しかし荒巻は回転の勢いを残したまま再び振り返ろうとして、
257
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:56:48 ID:ym2LAeeE0
( Д *川 げぇッほ……
( Д *川 ……
( Д *川 あ……
( 、 *川
( 、 *川
258
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:57:52 ID:ym2LAeeE0
何故かそのまま動きを止めた。
タカラは荒巻の腹に刃を突き立てた。
/ 。゚ 3 うおおぉぉっ!
我に返った荒巻に槍の柄で殴られ、タカラは尚も腹の中の刃を掻きまわした。
荒巻は薬指のない左手で槍を短く持ち替えて、でぃにその手を切り飛ばされた。
(#゚;;-゚)
/ 。゚ 3
荒巻はでぃに残った腕を伸ばし、崩れる自らの足腰に引っ張られる形で届かなかった。
でぃは歯を食いしばって荒巻の首をはねた。
(#゚;;-゚) ……
(;,,^Д^) はー……は……
(#゚;;-゚) ……師匠
(#゚;;-゚) どうして 止まったんだろう
(;,,^Д^) ……繋がっている当主に 何かあったのでは
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) 急ごう
(;,,^Д^) ちょっと待ってください 内藤さんを連れてきます
タカラは内藤に駆け寄って肩を貸した。
( //ω^) すまないお
259
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:58:55 ID:ym2LAeeE0
でぃ達は屋敷までの坂を上っていた。
所々に破砕した鏡が落ちている。
(#゚;;-゚) 門が壊れてる
( ,,^Д^) ほんとですね
( //ω^) 気をつけろお
でぃ達が警戒しながら門をくぐると、半裸になった男女がデコボコになった庭に寝かされていた。
(#゚;;-゚) マトマト……
マト# Д )メ
(` ω ´)
マトマトと男は大きな傷もなく、地べたに横たわっている。
でぃがマトマトに近づいて上着を被せると、そのまま屋敷の中に入っていく。
(;,,^Д^) でぃさん?
(#゚;;-゚) ちょっと待ってて
内藤は座り込んで、男の体を眺めている。
( //ω^) 治療を受けた形跡があるお……
260
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 20:59:58 ID:ym2LAeeE0
ペニサスは椅子の上で事切れていた。
( 、 *川
しぃはその前で手を合わせていた。
でぃが開け放たれた扉から入ってくると、しぃは立ち上がってでぃの方を向いた。
(#゚;;-゚) ……なんで ここに居るの
(*゚ー゚) こうなるんだろうな って思って
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) 全部 分かってたの?
しぃはペニサスの方に歩み寄り、椅子の向こうの管を掴んだ。
(*゚ー゚) おばあちゃん 未来が見えなくなったのって
(*゚ー゚) たぶん機械が壊されるからじゃ なかったんだ
(#゚;;-゚)
しぃは力任せに管を引きちぎった。
(*゚ー゚) おばあちゃんも おじいちゃんもさ
(*゚ー゚) こうなるんだろうなって 少しは思ってたんじゃないかな
(#゚;;-゚)
(*゚ー゚) 逃げられなかったんだよ 運命とかいう奴から
でぃは立ったままペニサスに手を合わせ、部屋を出て行こうとした。
(*゚ー゚) おねえちゃん
(#゚;;-゚) なに?
(*゚ー゚) 子供が生まれたら 見せに来てね
(*゚ー゚) 私は多分ここに居るから
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚) 考えとく
でぃは部屋を出て行った。
261
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 21:01:03 ID:ym2LAeeE0
でぃは屋敷から拝借した服を着せたマトマトを背負った。
内藤はゆっくりと立ち上がった。
(#゚;;-゚) 帰ろう
( ,,^Д^) え? マトマトさんは大丈夫なんですか?
(#゚;;-゚) ケガは殆ど治ってる
( //ω^) 早く帰った方が良いお この辺の担当が来るお
( ,,^Д^) 内藤さんも もう大丈夫そうですか?
( //ω^) 一人で歩けるぐらいにはなったお
(#゚;;-゚) じゃ行こう
でぃ達は坂道を降りて行った。
262
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 21:02:33 ID:ym2LAeeE0
内藤は車に乗り込もうと鍵を取り出したが、何か躊躇っている。
( //ω^) きみたち 運転できるかお?
( ,,^Д^) え? 免許は持ってますけど 三年くらい運転してませんね
(#゚;;-゚) 私 免許持ってない
( //ω^)
( //ω^) ふー……
内藤は運転席に乗り込んで、エンジンをかけた。
でぃはマトマトと一緒に後部座席に乗り込み、タカラは助手席に乗った。
( //ω^)
( //ω^) 行くお
内藤はサイドブレーキを下ろし、アクセルを踏み、ガードレールに車をぶつけた。
( ,,^Д^) ……
(#゚;;-゚) ……
マト#>Д<)メ ……?
263
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 21:03:36 ID:ym2LAeeE0
車はタカラの家の前の道で止まった。
( //ω^) ……
( ,,^Д^) あ ありがとうございました
(#゚;;-゚) ありがと
マト#>Д<)メ いえいえ
( //ω^) じゃ 僕もここで降りるお
マト#>Д<)メ いや 送ってきますよ
( //ω^) いや……
マト#>Д<)メ 流石にちょっと 心配なんで
( //ω^) ……
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) じゃあ また
(#゚;;-゚) またね
マト#>Д<)メ はい また
車は去っていった。
264
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 21:04:41 ID:ym2LAeeE0
(#゚;;-゚)
( ,,^Д^)
(#゚;;-゚) ……変かな
( ,,^Д^) はい?
でぃは手を絡め、タカラの頬にキスをした。
(#゚;;-゚) ただいま
( ,,^Д^)
( ,,^Д^) おかえりなさい
265
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 21:06:01 ID:ym2LAeeE0
13.タダイマと
266
:
◆O7/3vokCH2
:2024/04/24(水) 21:12:35 ID:ym2LAeeE0
十三話の投下が終わりました。
これで完結です。
読んでいただいてありがとうございました。
267
:
名無しさん
:2024/04/24(水) 22:04:11 ID:nUfBKvgE0
乙!
268
:
名無しさん
:2024/04/25(木) 12:25:13 ID:a8.JnyoM0
乙。。。。。。
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