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指輪は婚姻を依り代にするようです

1 ◆O7/3vokCH2:2024/04/20(土) 01:11:29 ID:n.wZ/vww0
オレンジデー祭り参加作品です

220 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:12:05 ID:ym2LAeeE0

女が病室に入ってきた。

/ ゚、。 / 仕事は終わった?

(//L’) ああ ありがとうございます

/ ゚、。 / いや 道具を貸すぐらいなら いつでもするよ

(//L’) 師匠

/ ゚、。 /

/ ゚、。 / なに?

(//L’) しばらく 師匠の下で働かせてくれませんか?

/ ゚、。 / ……願ったり叶ったりだ こっちから提案する気だったよ

/ ゚、。 / 何か心境の変化でもあったの?

(//L’) いや

(//L’) ひっさびさに 良ぃ仕事 したなぁ〜って

/ ゚、。 /

/ ゚、。 / 悪事じゃないだろうね

(//L’) 愛のキューピットを務めてやろうってんだ

(//L’) 括るなら善の方ですよ

221 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:13:08 ID:ym2LAeeE0

ぼるじょあの椅子はちょうど寿命だったらしく、
思わず仰け反った拍子に背もたれの支えが折れ、
床か壁にぶつかるべきところを慌てて上半身を傾け、腰を痛めた。

(;・3・) う……

(;,,^Д^) わ 大丈夫ですか?

(;・3・) いや お前が……

(;・3・) 指が 取れてるじゃねえかよ!

(;,,^Д^) ……

タカラは左手をとっさに隠した。
しかしすぐに元の位置に戻して、まじまじと見つめた。

(;,,^Д^) ……取れたのは 一月前ですよ

(;・3・)

(;・3・) ……そう いう感じか

リi、゚ー ゚イ`! おはようございまーす

(;・3・)

リi、゚ー ゚イ`! ……

大上はタカラ達の様子をちらとうかがってから、自分の席について準備を始めた。

222 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:14:22 ID:ym2LAeeE0

(;,,^Д^) ……

タカラは単純な装飾の指輪を穴が開くほど見つめた後で、左手をぐっと握りしめた。

( ,,^Д^) ぼるじょあさん

(;・3・) うん?

( ,,^Д^) すみませんが ちょっと休暇を頂きます

(;・3・)

(;・3・) 申請は帰ってきてからでいいよ

( ,,^Д^) ご配慮 感謝します

タカラは荷物をまとめて大上の後ろを通り抜けた。

リi、゚ー ゚イ`! タカラさん

( ,,^Д^)

リi、゚ー ゚イ`! 結婚 おめでとうございます

( ,,^Д^) ありがとうございます

タカラはオフィスを出て行った。

223 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:15:25 ID:ym2LAeeE0

タカラは家のドアを開けた。

(*゚ー゚)

(*゚ー゚) 思ったより ずっと早かったね

( ,,^Д^) しぃさん

(*゚ー゚)

( ,,^Д^) でぃさんは今 どこに居るんですか?

(*゚ー゚) 会ってどうするの?

( ,,^Д^) まだ 決めていません

(*゚ー゚)

(*゚ー゚) ……私じゃ ダメなのかな?

( ,,^Д^)

(*゚ー゚) 運命の再会を果たしたんだよ? 私達

(*゚ー゚) 命を救い合った仲だって言うなら 私達だって そうじゃない

( ,,^Д^)

(*゚ー゚) 私 ずっとタカラくんの事 忘れなかった

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 確かに僕も しぃさんの事 好きでした

(*゚ー゚)

( ,,^Д^) でも……成り行きで 契約しました

( ,,^Д^) 僕の中で この契約はまだ 生きている

224 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:16:28 ID:ym2LAeeE0

(*゚ー゚)

(*゚ー゚) ふふ……

(*゚∀゚) あはははっ!

( ,,^Д^)

(*゚ー゚) はーぁ

(*゚ー゚) 頼りない言い方

しぃは懐から取り出した指輪を投げつけ、タカラはそれを受け取った。

( ,,^Д^)

(*゚ー゚) 私の実家は割と有名だから 情報屋でも安く手に入るよ

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) ありがとうございます

タカラはドアをあけ放ったまま、外に飛び出した。
しぃは気だるげに手をひらひらと振った。

(*゚ー゚) お礼を言うところじゃないってーの

225 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:17:34 ID:ym2LAeeE0

マトマトは水の入ったコップをでぃに手渡した。

(#゚;;-゚) ……ありがと

でぃはそれを飲み干して、苦笑を浮かべた。

(#゚;;-゚) 変な予知だったよ

(#゚;;-゚) タカラが迎えに来て

マト#>Д<)メ

(#゚;;ー゚) 馬鹿みたい

マト#>Д<)メ 何がですか?

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) なんで怒ってるの?

マト#>Д<)メ 嬉しいでしょう そうなったら

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 本当に……そうなったらね

マト#>―<)メ

マト#>Д<)メ すみません

(#゚;;-゚) ……謝らないでよ

226 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:18:37 ID:ym2LAeeE0

情報屋はタカラが店に入った瞬間に、端末に何かを打ち込んだ。

∪゚ェ゚∪ 来たか

( ,,^Д^) でぃさんの実家はどこです?

∪゚ェ゚∪ まあ逸るなよ 俺含めて三人も用があるんだ

( ,,^Д^) ?

∪゚ェ゚∪ 俺の用は単純だ

情報屋はタカラに近づいて、着ぐるみの顔を押し付ける直前で止めた。

∪゚ェ゚∪ 仕事を勝手に放り出すな そう伝えろ

( ,,^Д^) ……はい

情報屋は元の位置に戻り、また端末を操作した。

∪゚ェ゚∪ そろそろ来るな

店の入り口から、何者かが勢いよく店の中に飛び込んできた。

( //ω^)

( //ω^) 砂尾タカラだおね?

( ,,^Д^) そうです あなたは?

( //ω^) 伊藤家に縁のあるものだお

( //ω^)

( //ω^) 伊藤でぃを どうするつもりだお?

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 今はただ 会うつもりです

( //ω^)

( //ω^) 来いお

227 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:19:42 ID:ym2LAeeE0

表から車の駆動音が聞こえる。
情報屋から出ると、近くに停まった車から女が出てくる。

从リ ゚д゚ノリ おお 話はまとまったか

( ,,^Д^) あなたは

从リ ゚д゚ノリ ギコ子という

从リ ゚д゚ノリ こいつは魔力偽装車だ 奇襲にはもってこい

( //ω^) 助かるお

从リ ゚д゚ノリ ちょっと待て

( //ω^) 何だお

从リ ゚д゚ノリ 値段を聞けっ

( //ω^) ……砂尾タカラ

( ,,^Д^) えっ?

( ,,^Д^) 現金ですか?

从リ ゚д゚ノリ

从リ ゚д゚ノリ タダで良いんやで

( //ω^) 行くお

( ,,^Д^) あ ありがとうございました ギコ子さん

从リ ゚д゚ノリ 今後とも ごひいきに

228 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:20:46 ID:ym2LAeeE0
十一話の投下おわりました
続けて十二話の投下を開始します

229 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:21:58 ID:ym2LAeeE0

車が大通りに出ると、タカラが男に尋ねた。

( ,,^Д^) でぃさんの実家に向かってるんですか?

( //ω^) そうだお

( ,,^Д^) ……あなたは 伊藤家に仕えてる方ですか?

( //ω^)

( //ω^) 僕は内藤ホライズン 魔術関連の警察だお

内藤はハンドルを切った。
頭上を通り過ぎる看板にはインターチェンジの表示がある。

( ,,^Д^) でぃさんを捕まえに行くんですか?

( //ω^) 流れによるお

( //ω^) 伊藤家に与するようなら 戦う事になると思うお

( ,,^Д^) ……では 何で僕を連れて行くんですか?

( //ω^) 敵を減らすためだお

( ,,^Д^)

( //ω^) 伊藤でぃを絆すために 連れて行くんだお

( ,,^Д^) 分かりました

230 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:23:01 ID:ym2LAeeE0

12.愛すべきもの

231 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:24:04 ID:ym2LAeeE0

車は高速道路を走り出した。
タカラは手を組んで深呼吸した。

( ,,^Д^) 伊藤家って どういうところなんです?

( //ω^) 僕も詳しい所は知らないお

( //ω^) 予知を得意としてきた歴史ある術師の家系で 近代以後の他の術師と同じく 没落寸前

( //ω^) しかし20年ほど前 脱獄逃亡中の術師犯罪者を殺害

( //ω^) 別の地方の宗教団体からの援助を受け 一時盛り返した

( ,,^Д^)

( //ω^) しかし次期当主と見込まれた少女が死亡したことで

( //ω^) 利用していた宗教団体は崩壊 伊藤家の資金繰りも危うくなり

( //ω^) 今では完全に没落した と

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) しかし 召し使いっぽい人に会いましたよ

( //ω^) 別に雇ってるとは限らないお?

( ,,^Д^) まあ そうですね

232 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:25:08 ID:ym2LAeeE0

タカラが矢継ぎ早の質問を終えると、車の中にはタイヤが転がる駆動音だけが響いた。
サービスエリアを一つ通り過ぎた後で内藤が口を開いた。

( //ω^) 今度はこっちが聞くお

( ,,^Д^) どうぞ

( //ω^) 得意術法は何だお?

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) それが 分かりません

( //ω^)

( //ω^) トーシロかお?

( ,,^Д^) そうです

内藤は片手をハンドルから離して、包帯の上を掻いた。

( //ω^) ……伊藤でぃと 間藤マトマトを含めなければ

( //ω^) 向こうは三人 こっちは二人

( ,,^Д^)

(;,,^Д^) 実質 一対三と?

( //ω^) ……僕は手負いだお

(;,,^Д^) じゃあ……0.5対三

( //ω^) ……

233 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:26:11 ID:ym2LAeeE0

内藤は次のサービスエリアに入るよう、車体を寄せた。
タカラは咎めもせずに、車が駐車場に止まるのを待った。

( //ω ) ……

内藤はハンドルに体を預け、俯いた。

( ,,^Д^) ……まずい状況ですか?

( //ω ) 勝つ見込みは薄いお

( ,,^Д^) 何か ありませんか? 超絶パワーアップアイテムとか

( //ω ) あれば僕が使うお

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 警察の応援とか……

( //ω ) さっきも言ったように 近代以後の術師は弱体化して

( //ω ) 術師関連の部署 経費はガンガン削られているお

( //ω ) 僕も実は 上の都合によっては すぐにでもクビを斬られる 特殊な派遣員なんだお

( //ω ) 今回はそれを逆手に取った 独断行動だお

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) ……なるほど

234 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:27:16 ID:ym2LAeeE0

老婆は多数の管が繋がれた椅子に、深く腰掛けていた。
やや経ってでぃがノックをして入ってくる。

(#゚;;-゚) 何でしょうか

('、`*川 ……記録を見たよ

('、`*川 砂尾タカラの事が書かれていない

老婆は愛おしそうに椅子の縁を撫でた。
でぃは腰に手を当て、そっぽを向いた。

('、`*川 なぜ?

(#゚;;-゚) 確率の低い予知は 書きません

('、`*川 ……くく コホっ

老婆はしゃがれた笑い声を漏らした。
でぃは怪訝な表情を見せながら、老婆を見据えた。

('、`*川 私も しぃも 彼がコレを壊すのを見たよ
 _,
(#゚;;-゚) ……は?

('、`*川 予言が途切れたのは それが理由だ

('、`*川 とんでもない奴を婿にしたもんだね

235 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:28:20 ID:ym2LAeeE0

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) じゃあ三人とも 同じ結果……?

('、`*川 しかし……しぃも あんたも 別の未来を見た

('、`*川 そうなるには あの男をおびき出して 殺せばいい

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) タカラは今 しぃと一緒に居るはず

('、`*川 ……

(#゚;;-゚) この機械を壊す必要なんて ない

('、`*川 そう願ってるよ

('Д`*川 ぇホッ…… ゴホ……

236 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:29:22 ID:ym2LAeeE0

内藤は顔を上げた。

( //ω^) ドーピングなら あるかもしれないお


( ,,^Д^) 聞かせてください

内藤は後部座席からリュックを引っ張り出して、ひとしきりゴソゴソとやった後で小袋を取り出した。
中には米粒ほどの赤く光る石がいくつか入っていた。

( //ω^) これを口から摂取するんだお

( ,,^Д^) ……喉やりませんか?

( //ω^) 多少は痛めるお

内藤は小袋の中から一つ取り出し、タカラに手渡した。

( //ω^) でも ほとんどの場合はうまく 体に取り込まれる

( //ω^) 理由はともかく 人間と相性がいいお

( ,,^Д^)

タカラは数秒ためらってから、飲み下した。
内藤は静かに見守っている。

( ,,^Д^) 変な味しますね えホッ

( //ω^) これで多少は気休めになるお

内藤はリュックを後部座席に放り込み直してから、車を発進させた。

237 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:30:37 ID:ym2LAeeE0

部屋にノックの音が鳴った。

マト#>Д<)メ お嬢様?

でぃは布団から起き上がって扉の前まで歩いて行った。
そのままゆっくりと扉を開き、隙間から顔を覗かせた。

(#゚;;-゚) どうしたの?

マト#>Д<)メ 写真が出来ましたよ

でぃはマトマトが差し出した写真を受け取った。
写真にはでぃとタカラが二人で写っている。

(#゚;;-゚) ……携帯も タカラの家に送らないと

マト#>Д<)メ 落ち着いてからで良いですよ

(#゚;;-゚) ……?

でぃは突然目頭を押さえて後ずさりした。

マト#>Д<)メ どうしました?

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) ……いま

(#゚;;-゚) 繋がった

238 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:31:39 ID:ym2LAeeE0

タカラ達の車は既に高速を降り、信号で停まっていた。

( ,,^Д^) !

( ,,^Д^) 内藤さん!

( //ω^) 何だお

( ,,^Д^) 今 ボクとでぃさんの写真が見えました

( //ω^)

( //ω^) へえ?

タカラは携帯を取り出して、写真を見せた。

( //ω^) ……これが?

( ,,^Д^) だから これをプリントした状態で

( ,,^Д^) 多分でぃさんが見ているのを 僕も見たんです

( //ω^)

( //ω^) 向こうは指輪もつけてないのに?

( ,,^Д^) そうです

( //ω^) ……

( ,,^Д^) 何か 変な事なんですか?

( //ω^) いや……

( //ω^) 妻の待ち受けは いつから息子に変わったんだっけと 思って

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 愛まで無くなったとは限りませんよ

( //ω^) 誰が慰めろと言ったお

239 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:32:55 ID:ym2LAeeE0

(#゚;;-゚) ……ここに向かってる

マト#>Д<)メ 車ですか?

(#゚;;-゚) インターを降りたあたり

マト#>Д<)メ

マト#>Д<)メ 迎えに行きましょう

(#゚;;-゚) ちょっと

でぃはマトマトの脇をすり抜けて、廊下に進み出た。
でぃの正面の廊下の先に、男が立っている。

(`・ω・´) ……

マト#>Д<)メ お嬢様

逆にマトマトがでぃを押しのけて、男の前に立ちふさがる。

マト#>Д<)メ 行ってください

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 任せる

240 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:33:59 ID:ym2LAeeE0

でぃは廊下の窓を開けて出て行った。
男はそれを追う素振りも見せず、マトマトを見据えている。

マト#>Д<)メ ……

(`・ω・´) 君は攻撃を得意としていない

マト#>Д<)メ ……そうですね

(`・ω・´) 封印術だけでは どうしようもないだろう

(`・ω・´) ケガをするのは君だけだ

マト#>Д<)メ

マト#>Д<)メ こんなものはありますが

マトマトは懐からホイッスルのような小型の筒を取り出し、下手で男に投げた。
男の体に光が瞬いたかと思うと、筒は両者の中間で弾け、マトマトは薄い光の壁で爆風を防いだ。

マト#>Д<)メ ……

(`・ω・´)

男は寸分違わぬ姿でそこに立っていた。

(`・ω・´) もう一度言う 僕が勝つ

マト#>Д<)メ その意見は 初耳ですね

241 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:35:02 ID:ym2LAeeE0

内藤は車を止めた。

( //ω^) ん〜?

( //ω^) こっちで合ってるのかお?

( ,,^Д^) 迷ったんですか?

( //ω^) まあ……山道だから

( //ω^) ……

内藤は押し黙って道の先を凝視している。
タカラが目線の先を追うと、槍を構えた老人が立っている。

( //ω^) 合ってたみたいだお

( ,,^Д^) あの人は?

( //ω^) 荒巻 伊藤家の用心棒

( //ω^) 僕が相手をするお

( ,,^Д^)

( //ω^) 恋人に会いに行けお

( ,,^Д^) ……ありがとうございます

内藤とタカラは車から出た。
内藤は道を進み、タカラは横道に逸れて坂を上っていく。

( //ω^) ……

/ ,' 3

( //ω^) 借りを返すお

/ ,' 3 律儀な奴だ

/ ,' 3 ジジイに借りた物など ネコババすればいいものを

( //ω^) 冥土の土産は 多い方が良いお?

242 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:36:06 ID:ym2LAeeE0

老婆は椅子に座っていた。

('、`*川

('、`*川 ふぅ〜…… カホッ……

わざとらしい深いため息の後に、半球状の塊を頭に装着した。

( 、 *川 年々キツくなるね

老婆は手探りで右手を左手に重ね、自身の左手の薬指から義指を外した。

243 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:37:09 ID:ym2LAeeE0

でぃは走っていた。
時折見えるタカラの視界が、自らに近づいていることを感じていた。

(#゚;;-゚) そっちじゃない……

タカラが自分と鉢合わせるはずだった道を逸れた。
でぃは分かれ道に立って、リンクする彼の背中と視界を確かめながら叫んだ。

(# ;;Д ) タカラ―――ッ!

タカラは息を切らしながら、でぃの方を向いた。
それから走ってきたでぃを抱き止めた。

( ,,^Д^) すみません

(# ;;- ) 何で謝るの

( ,,^Д^) 浮気 しましたから

( ,,^Д^) それに 一人にしました

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 指輪 はめて……お願い

タカラは指輪を取り出して、でぃの指にはめた。

( ,,^Д^)

(#゚;;-゚)

でぃは指輪を反対の手指でなぞった。

244 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:40:13 ID:ym2LAeeE0
十二話の投下を完了しました
続いて十三話の投下を開始します

245 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:42:20 ID:ym2LAeeE0

でぃは指輪から手を離し、タカラの顔に向き直った。

(#゚;;-゚) マトマトが足止めをしてくれてる

(#゚;;-゚) 助けに行かないと

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) それで言うと こっちも同行者が 荒巻という方と戦っています

でぃはタカラが登って来た方を見た。

( ,,^Д^) どっちを優先すべきですか?

(#゚;;-゚) ……マトマトかな

(#゚;;-゚) マトマトを助けたついでに 屋敷に居るおばあ様を人質にすれば

(#゚;;-゚) 師匠……荒巻は無力化できるかもしれない

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) なるほど

(#゚;;-゚) 行こう

246 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:43:25 ID:ym2LAeeE0

内藤は警棒で槍先を逸らした。
勢いで荒巻の方へ飛び込んだが、荒巻が後ろに飛びながら回転し、
内藤は屈み頭の上を刃が通り過ぎる。

( //ω^) ……

/ ,' 3

荒巻は回転を止め、じっと槍を構えたまま内藤の方へ顔を向けた。
内藤もまた、腰を落としたまま警棒の先を少しずらした。

/ ,' 3

( //ω^)

内藤は十数秒の後、荒巻に向かって大地を踏みしめた。
荒巻は瞬時に槍を突き出した。

( //ω^) ほっ!

内藤は猫背になった体を逸らして、警棒を振り上げた。
警棒は鞭のように伸び、しなり、槍にまとわりついた。

247 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:44:30 ID:ym2LAeeE0

/ ,' 3

しかし、荒巻はそれを分かっていたかのように、
投げつけるように槍を放して同時に内藤に迫った。

( //ω^) !

荒巻は内藤の腹に蹴りを叩き込み、槍を自らの手に引き戻した。

( //ω ) ……

/ ,' 3

荒巻は内藤の利き腕と片脚を突き払い、距離を取った。
内藤は唸り声をあげて荒巻を睨みつけた。

/ ,' 3

荒巻は内藤の様子を見ながら、横道を上がっていった。

( //ω ) ……ぐ……

内藤は何とか立ち上がりながらも、また倒れ込んだ。

( //ω ) ……繋がってやがるのかお まさか

248 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:45:33 ID:ym2LAeeE0

男はマトマトに殴りかかった。

(`・ω・´)

マト#>Д<)メ

マトマトは後ろに飛んだ。
男はアッパーが空振りした拳をチョップの形にして、大きく踏み込んで振り下ろした。

マト#>Д<)メ ……!

マトマトは腕で攻撃を受け、男の横をすり抜けた。
片腕のおざなりな追撃を何とか避けながら、マトマトは廊下を走った。

(`・ω・´) ……

男はでぃの出て行った窓を見てから、振り返ってマトマトを追いかけ始めた。

249 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:46:53 ID:ym2LAeeE0

マト#>Д<)メ はあ……はぁっ……

マトマトは屋敷の庭に走り出てきた。
そして入口の方を振り返って、肩で息をしながら座り込み、地面に手を置いた。

(`・ω・´) ……

男は屋敷から出てきて、一直線にマトマトに突っ込んできた。
マトマトはそれに向かって、逃げもせず隠れもせず腰を下ろした。

(`・ω・´) ?

男は減速したが間に合わず、
マトマトが叩く地面に発生した魔方陣から巨大な銀色の椀が現れ、
二人纏めて投げ込まれたかと思うと、上からも椀が現れてぴったりと縁を重ねて光明を塞いだ。

(` ω ´) 何だ……?

男は暗闇で座り込んだまま動かない。
マトマトは呻きながら寝転んでいる。

マト# Д )メ ……もう 光術しか 使えないでしょう

(` ω ´) ……なに

250 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:47:59 ID:ym2LAeeE0

マト# Д )メ 体の 自由は 効かない ように 組みました

マト# Д )メ 更に ここは 鏡張りです

(` ω ´)

(` ω ´) しかし こんな大規模で複雑なやり方が 長く持つ筈がない

マト# Д )メ あの二人が 会うまで で

マト# Д )メ 私の命を 賭けてでも ですか?

(` ω ´)

(` ω ´) 僕が自爆覚悟で 魔法を使わないと思うのか?

マト# Д )メ

マト# Д )メ だとしたら

男は体に力を込めた。
マトマトは閃光に変わる暗闇の中で、わが意を得たりと微笑んだ。

マト#>Д<)メ あなたも相当 忠義者 です ね

伊藤家の庭に、非連続と連続を散りばめたような音響が響き渡った。

251 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:49:03 ID:ym2LAeeE0

( 、 *川 ……

( 、 *川 連戦か

( 、 *川 ゴホっ

252 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:50:47 ID:ym2LAeeE0

でぃは後ろを振り返った。

(#゚;;-゚)

( ,,^Д^)

/ ,' 3

荒巻はぐんぐんとこちらに迫って来る。
でぃは構え、タカラはでぃと目を合わせてから道の脇に寄った。

/ ,' 3

荒巻は槍をでぃに向かって突き出す。
でぃもそれに併せて血の槍を突き出す。

刃先がぶつかる衝撃の音がタカラに届き、
二つの槍は双方の肩の布地を削り取った。

(#゚;;-゚)

/ ,' 3 腕は鈍っていないらしい

(#゚;;-゚) おかげさまで

二人は槍の先を地面に下げて、
じりじりと距離を取った。

253 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:51:49 ID:ym2LAeeE0

( //ω ) ふーふー……

タカラは重い足取りで坂を上ってくる内藤に気が付いた。
にらみ合いを続ける二人に時折目を向けながら、内藤に駆け寄る。

(;,,^Д^) 大丈夫ですか?

( //ω^) だ 大丈夫だお

( //ω^) それより多分 荒巻はペニサス……当主と繋がってるんだお

( //ω^) ペニサスの予知を見ながら 相手の手を知ったうえで

( //ω^) カウンターのし放題だお

(;,,^Д^)

(;,,^Д^) その人を 止めればいいんですよね

( //ω^) このまま まっすぐ行けば屋敷につくお

( //ω^) 予知をしている間は 無防備なはず

タカラは立ち上がり、振り返って道を逸れて林の中を走り始めた。

254 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:53:17 ID:ym2LAeeE0

でぃも荒巻も相手から眼を逸らさなかったが、
タカラが林から出てきた際に、荒巻は槍を肩の上に構えた。
タカラはハッとして腕を頭の前に構える。

( ,,^Д^) !

(#゚;;-゚) !

でぃは荒巻に突進した。
荒巻は投げかけた槍を地面に突き立て、支えにして跳び上がりでぃの攻撃を避けた。

/ ,' 3

(#゚;;-゚)

荒巻はでぃの頭の上を通り過ぎて着地し、タカラに向かって走り出した。
でぃは荒巻と同様の所作を取り、荒巻の背中に向かって槍を投げつけた。

/ ,' 3

荒巻は後ろから飛んでくる槍を見もせずに屈んで避けた。
槍は何故か坂道に刺さらずに浮き上がり、腕を構えたままのタカラに吸い込まれていく。

(#゚;;ㇿ゚) ッ!? タカラ!

(;,,^Д^)

槍が球体に崩れタカラの左手の近くに漂い始めた。
荒巻は槍を構えたまま立ち止まった。

/ ,' 3

/ ,' 3 ……

( //ω^)

( //ω^) 引力……

255 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:54:42 ID:ym2LAeeE0

( 、 *川 ……

( 、 *川 はは……

( 、 *川

( 、 *川 勝った

( 、 *川

( 、 *川 ゲホっ ごッ……ほ……

256 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:55:46 ID:ym2LAeeE0

荒巻はタカラの方へ駆け出した。

/ ,' 3

(#゚;;-゚)

でぃは新しい血の槍を生成し、
タカラの近くの血球もまた槍の形に生成され直し、タカラはそれを掴んだ。

/ ,' 3

荒巻はタカラに向かって槍を上段に構え、タカラが頭上かつ水平に構えた血の槍にたたきつけた。
でぃは後ろから槍を突き刺そうと近づき、荒巻はまたも見もせずに体を逸らして避け、
振り返り槍をでぃに向かって振りぬいた。

(;,,^Д^) ……! うおぉっ!

タカラはでぃが血を迸らせ坂道に倒れ込むのを見て、慣れない怒号を上げ槍を短く持って、荒巻に突っ込んだ。

/ ,' 3

しかし荒巻は回転の勢いを残したまま再び振り返ろうとして、

257 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:56:48 ID:ym2LAeeE0

( Д *川 げぇッほ……

( Д *川 ……

( Д *川 あ……

( 、 *川

( 、 *川

258 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:57:52 ID:ym2LAeeE0

何故かそのまま動きを止めた。
タカラは荒巻の腹に刃を突き立てた。

/ 。゚ 3 うおおぉぉっ!

我に返った荒巻に槍の柄で殴られ、タカラは尚も腹の中の刃を掻きまわした。
荒巻は薬指のない左手で槍を短く持ち替えて、でぃにその手を切り飛ばされた。

(#゚;;-゚)

/ 。゚ 3

荒巻はでぃに残った腕を伸ばし、崩れる自らの足腰に引っ張られる形で届かなかった。
でぃは歯を食いしばって荒巻の首をはねた。

(#゚;;-゚) ……

(;,,^Д^) はー……は……

(#゚;;-゚) ……師匠

(#゚;;-゚) どうして 止まったんだろう

(;,,^Д^) ……繋がっている当主に 何かあったのでは

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 急ごう

(;,,^Д^) ちょっと待ってください 内藤さんを連れてきます

タカラは内藤に駆け寄って肩を貸した。

( //ω^) すまないお

259 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:58:55 ID:ym2LAeeE0

でぃ達は屋敷までの坂を上っていた。
所々に破砕した鏡が落ちている。

(#゚;;-゚) 門が壊れてる

( ,,^Д^) ほんとですね

( //ω^) 気をつけろお

でぃ達が警戒しながら門をくぐると、半裸になった男女がデコボコになった庭に寝かされていた。

(#゚;;-゚) マトマト……

マト# Д )メ

(` ω ´)

マトマトと男は大きな傷もなく、地べたに横たわっている。
でぃがマトマトに近づいて上着を被せると、そのまま屋敷の中に入っていく。

(;,,^Д^) でぃさん?

(#゚;;-゚) ちょっと待ってて

内藤は座り込んで、男の体を眺めている。

( //ω^) 治療を受けた形跡があるお……

260 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 20:59:58 ID:ym2LAeeE0

ペニサスは椅子の上で事切れていた。

( 、 *川

しぃはその前で手を合わせていた。
でぃが開け放たれた扉から入ってくると、しぃは立ち上がってでぃの方を向いた。

(#゚;;-゚) ……なんで ここに居るの

(*゚ー゚) こうなるんだろうな って思って

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 全部 分かってたの?

しぃはペニサスの方に歩み寄り、椅子の向こうの管を掴んだ。

(*゚ー゚) おばあちゃん 未来が見えなくなったのって

(*゚ー゚) たぶん機械が壊されるからじゃ なかったんだ

(#゚;;-゚)

しぃは力任せに管を引きちぎった。

(*゚ー゚) おばあちゃんも おじいちゃんもさ

(*゚ー゚) こうなるんだろうなって 少しは思ってたんじゃないかな

(#゚;;-゚)

(*゚ー゚) 逃げられなかったんだよ 運命とかいう奴から

でぃは立ったままペニサスに手を合わせ、部屋を出て行こうとした。

(*゚ー゚) おねえちゃん

(#゚;;-゚) なに?

(*゚ー゚) 子供が生まれたら 見せに来てね

(*゚ー゚) 私は多分ここに居るから

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 考えとく

でぃは部屋を出て行った。

261 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 21:01:03 ID:ym2LAeeE0

でぃは屋敷から拝借した服を着せたマトマトを背負った。
内藤はゆっくりと立ち上がった。

(#゚;;-゚) 帰ろう

( ,,^Д^) え? マトマトさんは大丈夫なんですか?

(#゚;;-゚) ケガは殆ど治ってる

( //ω^) 早く帰った方が良いお この辺の担当が来るお

( ,,^Д^) 内藤さんも もう大丈夫そうですか?

( //ω^) 一人で歩けるぐらいにはなったお

(#゚;;-゚) じゃ行こう

でぃ達は坂道を降りて行った。

262 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 21:02:33 ID:ym2LAeeE0

内藤は車に乗り込もうと鍵を取り出したが、何か躊躇っている。

( //ω^) きみたち 運転できるかお?

( ,,^Д^) え? 免許は持ってますけど 三年くらい運転してませんね

(#゚;;-゚) 私 免許持ってない

( //ω^)

( //ω^) ふー……

内藤は運転席に乗り込んで、エンジンをかけた。
でぃはマトマトと一緒に後部座席に乗り込み、タカラは助手席に乗った。

( //ω^)

( //ω^) 行くお

内藤はサイドブレーキを下ろし、アクセルを踏み、ガードレールに車をぶつけた。

( ,,^Д^) ……

(#゚;;-゚) ……

マト#>Д<)メ ……?

263 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 21:03:36 ID:ym2LAeeE0

車はタカラの家の前の道で止まった。

( //ω^) ……

( ,,^Д^) あ ありがとうございました

(#゚;;-゚) ありがと

マト#>Д<)メ いえいえ

( //ω^) じゃ 僕もここで降りるお

マト#>Д<)メ いや 送ってきますよ

( //ω^) いや……

マト#>Д<)メ 流石にちょっと 心配なんで

( //ω^) ……

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) じゃあ また

(#゚;;-゚) またね

マト#>Д<)メ はい また

車は去っていった。

264 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 21:04:41 ID:ym2LAeeE0

(#゚;;-゚)

( ,,^Д^)

(#゚;;-゚) ……変かな

( ,,^Д^) はい?

でぃは手を絡め、タカラの頬にキスをした。

(#゚;;-゚) ただいま

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) おかえりなさい

265 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 21:06:01 ID:ym2LAeeE0

13.タダイマと

266 ◆O7/3vokCH2:2024/04/24(水) 21:12:35 ID:ym2LAeeE0
十三話の投下が終わりました。
これで完結です。
読んでいただいてありがとうございました。

267名無しさん:2024/04/24(水) 22:04:11 ID:nUfBKvgE0
乙!

268名無しさん:2024/04/25(木) 12:25:13 ID:a8.JnyoM0
乙。。。。。。

269名無しさん:2024/04/28(日) 18:25:30 ID:/bj41Z3w0
乙乙
映画を見たようなボリュームで満足感ありました
でぃ可愛い


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