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( ^ν^)ふわふわぬいぐるみわんだーらんどのようです
1
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:40:15 ID:EEhMu.9.0
( ^ν⊂)”「んあ」
頭の中がふわふわする。頭の外、手足、指先、顔のあたりがふわふわする。それは眠気を誘う安堵の香り。暖かな眠りの香り。
( ^ω^)「おはようお、ニュッくん」
( ^ν^)「おあよ」
目やにを払ってこじ開けた視界に現れる少しくたびれた白。鼻先をくすぐる慣れ親しんだ匂いと肌ざわり。柔らかな体を抱きしめて毛布の中に潜り込むと中から聞こえる話し声。
( ^ω^)「あったかいお、ツンもおはようお」
ξ゜⊿゜)ξ「なまたかーい」
( ^ω^)「ブーンもニュッくんにだっこしてもらいたいお!」
( ^ν^)「ブーンはちいせえから枕」
( ´ω`)「おーん……」
――ここは、ぬいぐるみと言葉を交わす少年の部屋。
( ^ν^)ふわふわぬいぐるみわんだーらんどのようです
2
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:40:45 ID:EEhMu.9.0
ξ゜⊿゜)ξ「ブーン、みんなはもう起きた?」
( ^ω^)「おっ、相変わらずニュッくんが一番のねぼすけさんだお」
( ^ν^)「おまえらが張り切りすぎなんだよ……ビロ、飯ある?」
大きなサメのぬいぐるみを抱えた少年がごろりと寝返りを打ち、毛布の海を波打たせる。その向かい、フローリングの浜辺には小さな手足と端正な顔立ちのドールが笑みを浮かべておじぎをしました。
( ><)「ニュッくん、おはようなんです! さっきお母さんが朝ごはんを持ってきた音がしたんです!」
色白なフェイスパーツに植えられたシルバーの塩ビの髪、くり抜かれることのなかった瞼に丁寧に施された細やかな睫毛のペイント。40センチ程の身体に纏う精巧な衣装は潮風の似合うセーラー服。ふりふりと動く小さなシリコン製の指先が示す扉の向こうからは、かすかにパンの香ばしい香りが漂ってきました。
3
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:41:09 ID:EEhMu.9.0
( ^ν^)「……もうちょっとしたら食うかな」
少年は鮫のぬいぐるみを抱いたままずるずると毛布の中に飲み込まれていきます。それを食い止めようと毛布に巻き付きそのままころころと転がるのは、くたびれた記事に綿の偏った手足をくたくたと揺らすちいさなきつね。
爪'ー`)y-「こーら、折角ママが持ってきてくれた焼きたてだぞ? 見るだけ見たっていいじゃないか」
きつねは少年の丸まった背中をのたのたよじ登り、やがててっぺんにある少年の頭を滑り降りて肩に座ります。少年の頬をぽんぽんとつつくペレットの詰まったまあるい手は、しゃりしゃり鳴ってはご飯を促しているようです。
( ^ν^)「……わかった。ドク、ビロ、ドアあけて」
( ><)「はいなんです!」
('A`)「よーしきたー」
4
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:41:33 ID:EEhMu.9.0
セーラー服を纏った小さなこどもがぴい、と赤色の笛を鳴らすと、毛布の底から紫色のたこがするすると足をのばしてやってきました。たこはたちまちこどもを頭に乗せ、ドアのそばまで泳いでいきます。
('A`)「ビロード、届くか?」
( ><)「ん、も、ちょっと……ですっ!」
ちいさな革靴が背伸びをして、たこの手足がうんと伸び、やっとのことで二人はドアノブにかかったロープを掴む事が出来ました。たこは片手で精一杯ロープを引くこどもの背中を支えます。
('A`)「ツン! 俺の足思いっきり引っ張ってくれ!」
ξ゜⊿゜)ξ「任せなさい!」
毛布の海から飛び出したサメの女の子がたこの足を自慢の歯でがぶり、噛みつきながら引っぱります。大きな体を使って踏ん張るサメのおかげで少しずつドアノブが傾き始めます。
(;゜A゜)「いてぇええええ!! 今だビロード! 思いっきり引っ張れ!」
( ><)「はい、ですっ!」
少し苦しそうなたこの呼び声にロープを思い切り引くこども。しかし、あんまりたこが痛そうに震えるので肝心のふんばりがきかず、ロープをつかんだままつるりと落っこちてしまいました。
5
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:41:58 ID:EEhMu.9.0
(;'A`)「ビロード!」
かちゃり。
小さな音を立ててドアが開きます。向かいの窓から差し込む光を浴びながらロープから手を伸ばしたこどもはまっさかさまに――
Σ( ゜ω゜)「おうふ!」
(;><)「あわ、ブーンくんごめんなさいなんです」
……ドアの向こうのトレイを取るために立っていた、小さなマスコットの上におっこちてしまいました。
( ^ν^)「ぐっじょぶ」
6
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:42:31 ID:EEhMu.9.0
ξ゜⊿゜)ξ「あら、ビロード大丈夫?」
( ><)「しりもちついちゃったんです!」
(#)^ω^)「ちょっとはぼくの心配もしてほしいお」
('A`)「ドンマイ」
噛まれた足をすこし痛そうに引きずりながら紫のたこがドアの向こうに置かれたトレイを足で引っぱり、そのままの足で閉めます。開けるのにはこんなに苦労したのに、閉めてしまうのはあっという間。
( ^ω^)「……お?」
こどものおしりを受け止めた背中をさする小さな白いぬいぐるみは、トレイの隙間に挟まった小さな紙を見つけました。
花柄が印刷された小さなメモにはかわいらしい文字がひとつづり。
『お昼に少しお話しできる? ママ』
プロローグ:ものごとのはじまり。
7
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:42:58 ID:EEhMu.9.0
第一話:はじまりのおさそい。
8
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:43:21 ID:EEhMu.9.0
大好きなぬいぐるみたちと迎える朝、あったかい毛布。暖房も冷房もいらないくらいの一番心地いい温度。昨日は何も食べずに寝たからお腹は減っていたけど、焼きたてのパンの香りのせいでまだ食べるには早いような気がした。
でもフォックスが食べろって言うから、しぶしぶみんなにドアを開けてもらった。ビロードがドクオの上に乗っかって、みんながドアを開ける用の紐をつかんだらツンが引っ張る。落っこちたビロードが怪我しないように下に構えていたブーンにサムズアップを送ると、ドクオがトレイを持ってくる。そこで覗いた廊下が明るくて、俺は反射的に毛布の中に潜った。
ずるずる。トレイを引きずる音が近づいてくる。そっと毛布の隙間から顔を出すとドアはもう閉まっていて、かわりにこっちを覗いてくるブーンの顔があった。
( ^ω^)「ニュッくん、ママからお手紙だお!」
9
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:43:51 ID:EEhMu.9.0
( ^ν^)「……ママから?」
ブーンが手渡してきたのは小さなメモ用紙。確かにそこにはママを名乗る、ママの字があった。
ξ゜⊿゜)ξ「あれ? でも誕生日ってこの間だったわよね」
('A`)「確かカレンダーが……二枚前の頃」
( ^ν^)「……なんだろ。わかんない」
無意識に握りつぶしてしまったメモをトレイの中に置き、ちょっとだけ食べようとしたパンを向こうに押し返す。それからいつもみたいに毛布に潜り込むと、フォックスが頭の方からもぐりこんできた。
10
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:44:11 ID:EEhMu.9.0
爪'ー`)y-「ママさん、ニュッくんと話したいんだとさ」
( ^ν^)「うん」
爪'ー`)y-「寝るのか?」
( ^ν^)「……ううん」
爪'ー`)y-「ママさんはお昼に来るって。今は、11時16分」
毛布の中に頭をうずめ、自分の体を抱きかかえる。
「ママと話す」――それを、どうすればいいかわからなかった。小さいころから俺に小さな友達をくれて、いつもドアの前にご飯を置いて、俺の誕生日にだけ『おめでとう』のメモとケーキをくれる。それ以外俺に何にも言わないママが、俺と話したい事って何?
11
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:44:36 ID:EEhMu.9.0
( ^ν^)「……フォックスは、わかる?」
爪'ー`)y-「分かんないな。ニュッくんも分からないんだろ」
( ^ω^)「でもママさんはニュッくんのママさんだお、きっと怖いことなんかないお」
( ^ν^)「ん……」
真っ暗な毛布の中で頭にしがみついてくるブーンの体の柔らかさを感じながらフォックスのおなかに顔をうずめる。わかんない。わかんない。わかんないことが、今は全部怖い。
ノックの音も、廊下から聞こえる足音も、一階のドアが開く音も耳をすませば全部聞こえる、だから俺は毛布の中にうずくまって耳をふさぐことしかできない。
爪'ー`)y-「大丈夫だよ、俺たちもいるから」
( ^ω^)「おっ、怖くなったらブーンたちと手つなぐお!」
( ^ν^)「うん……うん、そう、だ」
12
:
名無しさん
:2023/05/08(月) 21:45:02 ID:EEhMu.9.0
深く息を吸って二人をぎゅっと抱きしめる。毛布から頭だけを出すと、ツンやドクオ、ビロードが心配そうにこっちを見ていた。
( ><)「ニュッくん、だいじょうぶですか?」
身をかがめて毛布の中を覗き込むビロードの手を取る。小さな手、俺の、一番の親友。その手に引っ張られて何とか覚悟を決めて毛布を這い出ると、掛け時計の長針は徐々に正午へと差し迫っていた。
( ^ν^)「いざとなったらフォックスに話してもらうから大丈夫になった」
爪;'ー`)y-「お前なあ……ママさんはニュッ君と話すって言ってんだから」
( ^ν^)「いやあ頼りになるなあフォックスは」
爪#'ー`)y-「にゃろー」
ぽこぽこと膝を叩いてくるフォックスの手を右手で抑えながらツンに頭を預ける。
かち、かち、かち。秒針の音。ぬいぐるみたちのざわざわする話し声。冷めたトーストと階段を上がる足音。俺は床に広がった毛布を跳ねのけて立ち上がり、ドアの前にみんなと一緒に並んだ。
こん、こん。
控えめなノックの音は、ママのものだった。
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