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夜は眠って朝が来るようです
13
:
名無しさん
:2022/01/07(金) 04:53:29 ID:zdRs6y220
乙!めっちゃ素敵だ
ギコの早起きしたいって望みに完璧な形で応えるお仕事、これ凄いよ
14
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 00:20:29 ID:BwuksWPg0
5:30①
.
15
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 00:21:13 ID:BwuksWPg0
着信音が聞こえて、電話に出る。
その瞬間から私の戦いは始まっている。
('、`*川「おはよ、おはよう屋さん」
『おはようございます』
('、`*川「いつもながらハンズフリーだから、聞こえにくかったらごめんね」
『全然、大丈夫ですよ』
ベッドから移動してキッチンへ向かう。
タオルを濡らしてレンジに入れる。
その間に歯磨きとうがいをして、ウォーターサーバーの水をコップに入れて飲む。
程よい温かさになった蒸しタオルを顔に当てて、一息ついた。
.
16
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 00:21:50 ID:BwuksWPg0
('、`*川「はー…気持ち良い」
『今は何をされてるんです?』
('、`*川「蒸しタオルを顔に当ててるわ」
『それは気持ち良さそうですね』
電話の相手は、おはよう屋さんというモーニングコール業の人。
会ったこともなければ、顔も知らない。
そんな人間に(──流石に人間だと思う、多分)起こしてもらうってどうなんだろう、と人に言われるかもしれない。
だけど私はどうしても早起きしなきゃいけない理由があるから、おはよう屋さんに依頼している。
おはよう屋さんのことは何も知らないけど、悪い人ではないみたいだから。
.
17
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 00:23:11 ID:BwuksWPg0
『ペニサスさんは起きた瞬間から動けてすごいですね』
('、`*川「早寝してるから寝起きは良いのよね」
('、`*川「でもなんていうか、アラーム機能じゃダメなのよねぇ。ドラマとか漫画でよくあるじゃない、朝バタバタして騒がしい描写。私あれが好きでね」
('、`*川「……要は、1人だと寂しいし、おはよう屋さんと話したくてお願いしてるのよね」
『話したいって言ってもらえるのは、嬉しいですね』
お世辞などでは無さそうな声だ。本当に嬉しい、という純粋さが電話越しに伝わってくる。
ストレッチをして身体を温めながら、じんわりこちらも嬉しい気持ちになった。
('、`*川「ふふ」
『どうかしましたか?』
('、`*川「なんか今更だけど面白いなぁって思っちゃった。朝一起こしてもらってこうやって楽しくぺちゃくちゃ話してるの」
('、`*川「ねぇ、他のお客さんも、私みたいな理由でお願いしてるの?」
.
18
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 00:23:50 ID:BwuksWPg0
『色んな理由のお客様がいらっしゃいますが、ペニサスさんと同じ理由の方はいらっしゃらないですね』
('、`*川「まぁ、そうよね…あんまりいないわよね」
('ー`*川「…メイクに3時間かけるために早起きするなんて人」
化粧は、顔に色々塗りたくるだけではない。
前日から、何ならひと月前から、コンディションを良くする必要がある。
本当は3時間なんてもんじゃ足りないくらいの時間をかけている。
その仕上げとして、朝、こうやって戦ってるの。
『キチンとお化粧するの、凄いですよ。とても偉いですよ…』
('ー`*川「…ありがと」
こういう所が好き。
優しい人なのか、柔らかく褒めてくれる。
ちょろい私は気分が良くなった。
.
19
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 00:24:17 ID:BwuksWPg0
('ー`*川「ねぇ、おはよう屋さんは何色が好き?」
『え?色、ですか?』
('ー`*川「そう。私はオレンジ色が好き。コスメも似たようなオレンジ色のもの買っちゃうのよ」
『そう……ですね…えっと…空色、ですかね』
随分返事に時間がかかった。そんなに悩む内容だっただろうか。
('、`*川「空色…いいわね、綺麗な色」
('ー`*川「ありがとう、おはよう屋さん」
『いえ…?』
('ー`*川「じゃあ、また明日ね」
『はい、また明日』
.
20
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 00:25:03 ID:BwuksWPg0
電話を切って、顔のマッサージを始める。メイクをする前にまだまだやることはいっぱいある。
('、`*川「空色かぁ…」
自分の爪に目を向ける。薄いオレンジに、ストーンがちょこんと乗っている。
('ー`*川「今日仕事終わりに、空色のネイルポリッシュ買おうっと」
('、`*川「フンフン…君の顔が好きだ〜……って言われてみたいわぁ」
楽しみができた。鼻唄を歌いながらヘアバンドを付けて鏡の前に行く。
朝は始まったばかり、戦わなきゃ。
.
21
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 00:26:05 ID:BwuksWPg0
本日投下は以上です。
おやすみなさい。
22
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 00:49:07 ID:t8sLsy0U0
おつです
23
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 01:30:05 ID:Hl2YQ9NY0
おつおつお
24
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 01:47:23 ID:OGm5uEdg0
乙乙
25
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 22:09:55 ID:BwuksWPg0
6:00①
.
26
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 22:10:28 ID:BwuksWPg0
電話を取る。話をしている。
笑う。しばらく話して、電話を切る。
ああ、また今日も違ったのか。今日ではないのか。
これは夢だ。夢のようなもの、少し先の未来。
実際はまだ眠っている。
本当に起きるまであと3、2、1…
ピピピピピピ…
.
27
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 22:11:15 ID:BwuksWPg0
( ´∀`)「……」
ピッ
( ´∀`)「…おはよう、おはよう屋さん」
鳴っている電話を取って、声を出す。
枕元に置いた眼鏡に手を伸ばして体を起こした。
『おはようございます、モナーさん』
電話の向こうの人間は、静かな声で挨拶を返してくれる。
おはようと言って、おはようが返ってくるのは嬉しいことだ。
家内が亡くなってから、そのことに気付いた。
数年くらいは挨拶が返ってこない日々が続いた。今思えば、あの日々は寂しいものだったんだな。
.
28
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 22:12:22 ID:BwuksWPg0
( ´∀`)「あー…今日は雨が降るモナ。傘を持って出かけないと」
『そうなんですね』
テレビで天気予報を見たわけではなかった。外の様子が見えたわけでもない。
──少し先の未来が、見えるのだ。
( ´∀`)「おはよう屋さんは出かけるモナ?」
『……いえ、今日は』
( ´∀`)「それが良いかもモナ。おはよう屋さんが住んでる地域もそうかはわからないけど、今日は寒いみたいだから」
.
29
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 22:13:25 ID:BwuksWPg0
少し先の未来が見えるとしたら、他の人はどういう人生を送るのだろう。
自分は至って平凡な人生だ。
使いようによっては実りのある人生になるのかもしれないが、見えるものは『自分の』『少し先の未来』で、しかも常に見えるわけではない。
制御は不可能。
ただ少しだけわかる、というのはあまりに中途半端で全く便利ではない。
( ´∀`)「…思えば、おはよう屋さんはすぐに信じてくれたモナね」
『何がです?』
( ´∀`)「私が、未来を見えること」
『そうですね…嘘を言っているような声には、聞こえませんでしたので…』
お互い顔も知らない。そんな人間に朝起こしてもらうだなんて、最近の世の中は随分面白いことをするようになった。
.
30
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 22:14:00 ID:BwuksWPg0
今までは家内に起こしてもらっていた。
家内が亡くなってからは、1人で起きて1人で一日を過ごす。
──いつ、終わるんだろう。
少しだけ先が見える。
ということは今日ではない。
明日か、明後日か。いつ、家内のところにいけるのか。
そんなことを待ちながら過ごすために朝を起きるのは、拷問だった。
孫娘が遊びに来て、「じいじ、まだねんねしてる!起きて!あそぼ!」と起こしてくれた。
嬉しかった。
誰かに起こしてもらうのは嬉しい。
息子が置いていってくれたパソコンで調べてみると、朝に起こしてくれる仕事は結構あるようだ。
そこで頼んだのがおはよう屋さんだった。
.
31
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 22:14:40 ID:BwuksWPg0
『あの…モナーさんは、他の人の未来も見れるんですか?』
( ´∀`)(おや)
おはよう屋さん…彼女──声の様子から恐らく女性だろう──、にしては珍しい質問だった。
話を聞いてくれるが、踏み込んだことは決して聞かない人だった。
けれど、悪い気がするわけでもない。半信半疑で馬鹿にしているというわけでもないようだ。純粋に知りたい声に、聞こえた。
( ´∀`)「いや、私は私の未来しか見れないんだモナ」
『そう、なんですね……いや、すみません。変なこと聞いてしまって』
( ´∀`)「いや…。……おはよう屋さんは、」
( ´∀`)「あ…」
『どうかしましたか?』
.
32
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 22:15:14 ID:BwuksWPg0
少し先が見えた。
スマートフォンをいじっている。
日付は明日。どうやら明日もまだ、らしい。
( ´∀`)「…明日もお願いするモナ、おはよう屋さん」
『はい、もちろん。また明日』
.
33
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 22:15:55 ID:BwuksWPg0
電話を切る。静かな家に1人。
寂しいだとかそういったものにはもう、慣れてきた。
( ´∀`)(…おはよう屋さんにも、見たい未来があるんだろうか)
.
34
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 22:16:26 ID:BwuksWPg0
投下は以上です。
良い夢を。
35
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 23:27:51 ID:MBU12eWE0
乙
36
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 00:18:12 ID:7hhpCv9s0
otsu
37
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 00:32:35 ID:qyZcpmIs0
モナー…
乙
38
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 12:11:05 ID:3SK945zE0
おはよう屋さんは自分が不眠なのに人におはようって言ってくれるんだな
39
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 22:16:59 ID:MCpxePfo0
6:30①
.
40
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 22:17:29 ID:MCpxePfo0
早起きは苦手。
だけど、好きな人のために頑張る。
っていう子が好きなんだって。
〜〜〜♪
o川*-〜-)o「んん…うるさ」
流行りのアイドルグループの音楽が鳴ってる。
アタシこの曲好きじゃないのよね。
スマホを掴んでぶん投げる。
音楽は鳴り止まない。
.
41
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 22:18:20 ID:MCpxePfo0
o川*-へ-)o「うるさ…他の曲にしてよ…」
o川*゚ー゚)o「…そうだ、着信音だから…出なきゃ止まらない…」
ベッドから這い出て投げつけたスマホを探す。
あった。
ブっと通話マークを押す。
好きじゃない音楽が止まる。
なんであの曲にしてるんだっけ。あ、彼が好きだって言ってたからか。
o川*゚ー゚)o「おっはよー!おはよう屋さん!!」
『おはようございます、キュートさん』
o川*゚ー゚)o「ごめんね、出るまで結構時間かかっちゃったよね」
『大丈夫ですよ』
.
42
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 22:19:14 ID:MCpxePfo0
ベッドに座ってあくびを一つして。
まだ少しだけ眠たいけど、おはよう屋さんの優しい声を聞いてるとだんだんカクセイ?してくる。
o川*゚ー゚)o「今日はねー、面白い話あるよ!」
起きてすぐ、面白い話をする。これが私のモーニングルー…ルーティン?
前ネットで見たんだ、朝たくさん笑うと良いことがあるって。
そう言ったらおはよう屋さんが知りませんでした、笑ってみたいですねって言うから、おはよう屋さんを爆笑させてみたいって思った。
なんとなくだけどね。
.
43
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 22:20:37 ID:MCpxePfo0
o川*゚ー゚)o「昨日ね、道で喧嘩してる人たちがいたの」
o川*゚ー゚)o「中々決着つかなそうだったから喧嘩の必勝法教えてあげたんだけどさ、『大きなお世話!』ってその人達ハモリながら怒鳴ったんだよ!仲良いじゃんね!」
『ふふふ』
o川*゚ー゚)o「あ、笑った!やったー!でも今日も爆笑じゃなかったね。またなんか良いネタ見つけておくね!」
『ありがとうございます。…ちなみに喧嘩の必勝法って何ですか?』
o川*゚ー゚)o「あのね、男殴る時はグー!女殴る時はパー!」
o川*゚ー゚)o「ムカつく奴には『うるせえヒポポタマス!』って言うんだよ!言葉の暴力が1番痛いの」
o川*゚ー゚)o「でもアタシ馬鹿だから、良いバトー?あんまりわかんないんだよねー」
『なるほど、覚えておきます』
o川*゚ー゚)o「おはよう屋さんが喧嘩する時は呼んでね!アタシ助けに行くから!」
『それは……頼もしいですね』
.
44
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 22:21:45 ID:MCpxePfo0
アタシが早起きをする理由は、彼氏にモーニングコールを頼まれてるから。
だけどアタシも早起きは苦手で、どうしようかなーって思ってググったらおはよう屋さんを見つけた。
朝から話してくれるって、だいぶ優しーよね?
彼氏なんか、何も話さず切っちゃうもん。
o川*゚ー゚)o「アタシ、朝からうるさいよね?ごめんね」
『朝から元気があるのは良いことですよ…私はキュートさんから元気をもらってます』
o川*゚ー゚)o「…フフッ、良かったあ」
こう、自然と顔がにやけちゃうことってあるよね。嘘の笑顔とかじゃなくて。
おはよう屋さんはそういう笑顔をくれる人。
o川*゚ー゚)o「じゃあ明日もまた爆笑ネタ探してくるね!」
『楽しみです。また、明日』
.
45
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 22:23:19 ID:MCpxePfo0
もう少し話してても良かったんだけど、熱が入っちゃうと止まんなくなっちゃうからそうなる前に止めるようにしてる。
彼氏に電話しなきゃ意味がないからね。
電話を切って、モーニングコールをするまで時間があるから、少しだけ考える。
o川*゚ー゚)o「んー面白い話…何かあるかなぁ?」
電話…彼氏……あ、そうだ!
o川*゚ー゚)o「彼氏に7股かけられてるって、結構ウケる話じゃない?」
.
46
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 22:24:30 ID:MCpxePfo0
アタシの彼氏はアタシの他に彼女が6人いる。
よく「2番目で良い!」とか言うけど、アタシは7番目。
アタシばかでこんなんだから、好きな人出来てもずっと振られまくってた。
だけど今の彼氏はアタシでもイイヨって言ってくれる。嬉しかった。
早起きは苦手だけど、好きな人の為に頑張る子ってイイよね。そんな子だったら1番目にしちゃうかもって彼が言う。
だからアタシ今、頑張ってるんだ。1番目になるために。
.
47
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 22:25:25 ID:MCpxePfo0
o川*゚ー゚)o「7人目の女って何だよー!って、おはよう屋さん笑ってくれるかなぁ?」
明日、話してみよーっと!
あ、彼氏に電話しなきゃ。……着信音、変えようかなぁ?
.
48
:
名無しさん
:2022/01/09(日) 22:27:44 ID:MCpxePfo0
本日の投下は以上です。
おやすみなさい。
49
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 00:09:45 ID:qsmiu2SU0
乙です
明日のおはよう屋さんの返答が気になる……
50
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 04:31:42 ID:Cy4/JJBg0
おつです
51
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 22:09:34 ID:nSv2fGz20
7:00①
.
52
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 22:10:02 ID:nSv2fGz20
昨日は散々だった。
占いも10位だったし。
怒鳴られて詰られて人格否定された。
会社に行きたくない。行きたくない。
またトイレで声を殺して泣きたくない。
怒鳴られたくない。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
あ、今日の占いが始まる。
53
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 22:10:29 ID:nSv2fGz20
(=゚ω゚)ノ「 マイクロフォンの なーかから 」
(=゚ω゚)ノ「 がんばーれ って 言っているー 」
(=゚ω゚)ノ「 きーこーえーて ほーしい 」
(=゚ω゚)ノ「 あーなーたーにーも 」
(=゚ω゚)ノ「……がんばれ」
(=゚ω゚)ノ「……」
(=゚ω゚)ノ「…がんばらなきゃ」
54
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 22:11:17 ID:nSv2fGz20
──(気 が 狂 い そ う)──♪
(=゚ω゚)ノ「…本当だよぅ」
音楽が流れる。先程歌っていた曲。モーニングコールだ。
プッ、画面の応答ボタンをタップして電話に出る。
(=゚ω゚)ノ「おはよう、おはよう屋さん」
『おはようございます、いようさん』
(=゚ω゚)ノ「今日はね、2位だったよぅ!良かった、今日はきっと嫌なこと無いよぅ。ラッキーポイントがポストだったから、ポスト撫でて行こうと思うんだ」
『2位は嬉しいですね』
55
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 22:11:57 ID:nSv2fGz20
朝、テレビをつけて、流れる情報は垂れ流しにして、たった数分のコーナーに縋っている。
星座占い。
スピリチュアルに興味があるわけでは無い。
でも、毎日見るのを欠かせなかった。この番組は月曜日から土曜日まで占いを流す。会社に行く前に見ることができる。
最初はそれこそ流し見だった。いつからか、その結果が悪い日は本当に悪いことが起きるような気がした。
確認のために見ることを欠かせなかった。
(=゚ω゚)ノ「5位以上だと安心するよぅ」
『なんとなく、わかりますよ』
56
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 22:13:22 ID:nSv2fGz20
モーニングコールを頼んでいる。おはよう屋さんという人に。
どんな人かはわからない。だけど話を聞いてくれる。
先程見たばかりの占いの結果を、彼女に伝えるのが日課になっていた。
モーニングコールが鳴る前に目は覚めていた。
正確には、うまく眠れなかった。
今日あった嫌なことが目を瞑ると頭の中いっぱいになって、きっと明日起きても嫌なことしか無いんだって考えると何回も目が覚めてしまう。
だけど、おはよう屋さんに電話をしてもらっている。必要が、ある。
息を吸って、ゆっくり吐く。
(=゚ω゚)ノ「…おはよう屋さん、お願いだよぅ」
『……はい』
『"頑張ってください"』
(=゚ω゚)ノ「……うん、ありがとう。頑張るよぅ」
57
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 22:14:08 ID:nSv2fGz20
頑張らなきゃ。
本当はもう会社になんか行きたくなかった。
家をまだ出てないのに既に帰りたい気持ちでいっぱいだった。
胸が痛くて体が痛くて頭が重かった。全身全力で行きたくない。
だけど行かなきゃいけない。
僕みたいな出来損ないの頭の悪い何をやらせてもダメな人間はどこに行ってもやっていけない。今の会社を辞めてしまったら行くところがない。よく上司にもそう言われていた。だからきっとそうなんだ。
頑張らなきゃいけない。
頑張らなきゃ。
だからおはよう屋さんに背中を押してもらう。
そうしてなんとか、線路に体を落とすような、赤の横断歩道を歩き出すような、そんな気持ちで家を出れる。
明日もそう。
58
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 22:14:32 ID:nSv2fGz20
(=゚ω゚)ノ「明日も、よろしくだよぅ、おはよう屋さん」
『………ぃで』
(=゚ω゚)ノ「え?」
『………いえ、また明日』
おはよう屋さんが何か小さな声で言った気がした。
でも特に言い直したりはしなかったので、なんでもなかったのかもしれない。
59
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 22:15:21 ID:nSv2fGz20
電話を切って、靴を履く。
玄関のドアが開かなかったら、会社に行かなくて良いのになぁ。
(=゚ω゚)ノ「……窓からでも出てこいって言われるだけかぁ」
気が 狂そう──。
着信音にしている曲の一節が頭でずっと流れている。
まだ大丈夫、何が大丈夫?
……頑張ろう。
60
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 22:16:52 ID:nSv2fGz20
本日の投下は以上です。
もうすぐ書溜め分が終わってしまいます。
頑張ります。
61
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 22:24:10 ID:lPv313iU0
なんだか寂しい人が多いな…
おつおつ
62
:
名無しさん
:2022/01/10(月) 23:18:06 ID:5uj/68xM0
乙です
63
:
名無しさん
:2022/01/11(火) 00:13:24 ID:KVtk58Vw0
乙
64
:
名無しさん
:2022/01/11(火) 22:32:32 ID:VtwPbxsQ0
今日も眠れなかった
カーテンの隙間から外を見ると日が登りつつある
それでもまだ辺りは暗くて夜のようだった
まだ夜なら良いのに
夜なら誰が何をしていてもおかしなことはない
けど 朝は違う
誰しもが1日を始めようとする 朝とはそういうものだ
私は 私には 今日も朝なんて来ないのに
みんなが動き始める朝が この時間が辛かった
静かに明るくなっていく空を見て深呼吸をする
仕事の時間だ
私みたいなのでも唯一 できる仕事
スマホの電源を入れる
液晶画面に4時29分と映し出されていた
ちょうどいい時間
通話ボタンに指を滑らせる
最初のお客様は───
.
65
:
名無しさん
:2022/01/11(火) 22:33:08 ID:VtwPbxsQ0
4:30①
.
66
:
名無しさん
:2022/01/11(火) 22:33:45 ID:VtwPbxsQ0
トゥルルル トゥルルル
コール音が鳴る。
4回目でプッという音がしたので挨拶をする。
川 ゚ -゚)「おはようございます、兄者さん」
『おはよー!おはよう屋さん!』
おはよう屋さんというのは、私の事だ。
最初のうちは自称するのも人に呼ばれるのも恥ずかしさがあったけれど、数ヶ月の間数人から呼ばれてきたので、今は違和感もなかった。
モーニングコール業、つまり人を起こす仕事を仮でさせてもらっている。
最初のお客様は流石兄者さんという人で、朝の4時半に起こす契約だ。
『今日は良い天気になりそうだね!!』
川 ゚ -゚)「そうですね」
.
67
:
名無しさん
:2022/01/11(火) 22:34:11 ID:VtwPbxsQ0
兄者さんは早朝だというのにテンションが高かった。
お客さんには会ったこともなければお互い顔も知らない。
けれど兄者さんの身内は知っているので、もしかしたら彼に似ているのかもしれない。
声も心なしかそっくりだ。性格は、似てないけれど。
川 ゚ -゚)「兄者さんは起きた時から元気いっぱいですね」
『おはよう屋さんが起こしてくれるのが嬉しいからね!』
川 ゚ -゚)、「それは…私も嬉しいですね」
.
68
:
名無しさん
:2022/01/11(火) 22:34:39 ID:VtwPbxsQ0
兄者さんは時間いっぱいにお話をしてくれる。
内容は(他のお客様もそうだけど、特に)たわいも無いもので、「今日は朝から雨でなんだかワクワクするね」とか「蝉がもう鳴いてる。早起き友達だ」とかそういったこと。
仕事場まで遠いから早起きをしているそうだけど、ゆっくり話をしていて大丈夫なのだろうかとたまに思う。
彼なりのペースがあるのかもしれないので、何か言ったことはなかった。
.
69
:
名無しさん
:2022/01/11(火) 22:35:11 ID:VtwPbxsQ0
『…あっそうそう、弟者がそろそろあれ貰いにくるか?って』
川 ゚ -゚)「あ……」
ふいに兄者さんがそう言う。
急に夢から覚めたような感覚になった。……夢なんてもうしばらく見ていないのに。
弟者さんというのは、私がとてもお世話になっている人。
川 ゚ -゚)「はい、そろそろ無くなりそうだったので今日、行きます」
『…わかった、伝えておくね』
川 ゚ -゚)「ありがとうございます」
.
70
:
名無しさん
:2022/01/11(火) 22:35:39 ID:VtwPbxsQ0
直接私から弟者さんに連絡すれば良いとは思うのだけど、連絡しないといけないなというタイミングで兄者さんが聞いてくれるのでそれに甘えてしまっている。
私は本当に、そういうところが良くないのだ。
『今日は昨日より寒いみたいだから、気をつけてね』
川 ゚ -゚)「…ありがとうございます、兄者さん」
『じゃ、また明日もよろしくね!』
川 ゚ -゚)「はい、また明日」
.
71
:
名無しさん
:2022/01/11(火) 22:36:16 ID:VtwPbxsQ0
明るい兄者さんの声が遠くに聞こえ、プツリと電話が切れたことを確認する。
こちらも通話ボタンを切る。
カーテンから漏れる朝日を見て、ため息が漏れた。
川 ゚ -゚)「……そうか。今日は外、出なきゃか…」
ほんの少しだけ、体が重くなった気がした。
.
72
:
名無しさん
:2022/01/11(火) 22:37:48 ID:VtwPbxsQ0
本日の投下は以上です。
書溜め分が尽きました。
頑張りますが更新速度遅くなります。
よろしくお願いします。
73
:
名無しさん
:2022/01/12(水) 00:14:16 ID:pRaRrrhQ0
おはよう屋さんサイドか
楽しみ
74
:
名無しさん
:2022/01/12(水) 00:37:36 ID:oiKug45I0
乙です
面白い。好き。のんびり続きを待ってます
75
:
名無しさん
:2022/01/12(水) 03:14:14 ID:QaqeXQNE0
おつ
76
:
名無しさん
:2022/01/12(水) 18:46:38 ID:CpPxNuEk0
優しい話なのかなと思って読み進めたらじわじわ闇が見えてきてたまらない
乙
77
:
名無しさん
:2022/01/19(水) 21:14:42 ID:wp/1I3T20
5:00②
.
78
:
名無しさん
:2022/01/19(水) 21:15:37 ID:wp/1I3T20
5時のお客様は、ギコさんという男性だ。声の感じからして、おそらく若い人だと思う。
彼は寝起きが良い方では無い。コール音が何回目かで、ようやく声が聞こえてくる。
『おはよーおはよう屋さん』
川 ゚ -゚)「おはようございます、ギコさん」
ゴソゴソという音と、まだ眠たそうな声。
今しがた起きました、と声が物語っているようだった。
ギコさんはいつも面白い夢を見ているようで、たまに内容を教えてくれる。
.
79
:
名無しさん
:2022/01/19(水) 21:16:18 ID:wp/1I3T20
『今日はね、目玉焼きのお布団にくるまってたんだ。半熟だったから、寝返り打ったら大変なことになっちゃった』
川 ゚ -゚)「ベタベタになっちゃいそうですね」
『そのままパンにつけて食べたよ!いつも全熟…全熟?固焼きか!固焼きで食べてるから新鮮だったなぁ』
川 ゚ -゚)「そうなんですね」
食べることが好きなのだろうか。
モーニングコールを頼む理由も、早く起きて朝ごはんを作りたいからだそうだ。
夢の内容も感想も嬉しそうに話すので、聞いていて楽しかった。
.
80
:
名無しさん
:2022/01/19(水) 21:17:12 ID:wp/1I3T20
『あ、そうだ!おはよう屋さんて、朝はパン派?ご飯派?』
川; ゚ -゚)「えっ?」
何かを聞かれること。これが今の私はとても苦手だった。
前はスッと答えられていた、と思う。
今は、何と答えるのが正解なのかだとか、そもそも私の答えは何だとか、色々考えてしまって時間がかかってしまう。
今回のこの質問だって、至って難しいことは何も無い。
だけど。
川; ゚ -゚)「……ど、どちらも…好きです」
『あー!わかる!日によるよねぇ〜』
どちらも好き、というのは嘘だった。咄嗟に出てきた答えが嘘だなんて嘆かわしい。
どちらが好きだったんだっけ。
私は朝、何を食べていたんだっけ。
.
81
:
名無しさん
:2022/01/19(水) 21:17:48 ID:wp/1I3T20
『ちなみに、おはよう屋さんの昨日の朝ごはんなんだった?』
川; ゚ -゚)「朝ご飯ですか…」
『今日の俺の朝ごはん、メニュー決まってないから参考にしたいんだ〜』
川; ゚ -゚)「昨日は……麦茶飲んだだけ、でした。ごめんなさい」
嘘もつけなかった。何のメニューも思い浮かばなかった。もうしばらくちゃんとしたものを、口にしていないから。
.
82
:
名無しさん
:2022/01/19(水) 21:18:36 ID:wp/1I3T20
『えっ、何にも謝ることないよー!でも麦茶だけってお腹空かない?女の人って少食の人多いし朝から食べれないのかな?』
何の参考にも出来なかっただろうに、謝らなくていいと言ってくれるギコさんは優しい人だと思う。
だからこそ、もうあまり嘘をつきたくなかった。
言うか言わないか少し悩んで、口を開く。
川; ゚ -゚)「……」
川; ゚ -゚)「私…お腹空かないんです…食べたいとかもその…思わなくて……あの、変だから…」
言ってしまった。
引かれただろうか。
もうずっとお腹が鳴る感覚がない。ちゃんとしたものを食べてないくせに、食欲がないのだ。
相手の顔が見えないというのは、こういった時に辛かった。どんな顔をしてるだろう。呆れただろうか、軽蔑するだろうか。
言わなければ良かったな──
.
83
:
名無しさん
:2022/01/19(水) 21:19:12 ID:wp/1I3T20
『変!?そんなことないよ!そういう時ってあるよ、元気がなかったりするとそうなるよね。俺もそうだった』
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「ギコさんも?」
思わず声が裏返ってしまった。想像していたどの返しとも違ったからだ。
『そう。元気がね、なかった頃。今みたいなことを始める前にね』
川 ゚ -゚)「……」
少しだけ、ギコさんの声が低くなった気がした。
今みたいなことというのは、モーニングコールを頼む前の話だろうか。
.
84
:
名無しさん
:2022/01/19(水) 21:19:57 ID:wp/1I3T20
『お腹が空くようになると良いね…っていうのもなんか変だけどさ…お腹すいたーってなってさ、あれが食べたいなって思ったやつを食べて、満腹になると、すっごく幸せな気持ちになれるじゃん?』
『俺、あの瞬間が大好きだから、おはよう屋さんもその幸せ味わって欲しいなって思うよ』
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)「ありがとうございます…」
『や!ごめん、なんか恥ずかしいね!あはは!また明日もお願いね!』
川 ゚ -゚)「あ、はい、こちらこそ。また明日」
『また明日!』
.
85
:
名無しさん
:2022/01/19(水) 21:20:38 ID:wp/1I3T20
電話を切る。
最後の方は早口になっていたギコさん。
恥ずかしいと言っていたが、自分には勿体ない言葉をもらった気がする。
お腹に手を当てる。
───お腹が空くようになると良いね。
川 ゚ -゚)(…なると、良いな)
.
86
:
名無しさん
:2022/01/19(水) 21:21:26 ID:wp/1I3T20
本日の投下は以上です。
ゆっくりいきます。おやすみなさい。
87
:
名無しさん
:2022/01/19(水) 21:40:06 ID:RJXgGc8s0
乙です
思いやり合いのある会話って感じがいいなあ
88
:
名無しさん
:2022/01/20(木) 01:00:25 ID:qPDm8SM20
ギコ優しい…
89
:
名無しさん
:2022/01/20(木) 03:47:34 ID:c61bTKvY0
おつ
90
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 22:17:18 ID:u/3RcYEI0
5:30②
.
91
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 22:17:48 ID:u/3RcYEI0
5時半のお客様はペニサスさんという女性だ。
彼女は寝起きがとても良い。いつもワンコールで出る。
『おはよ、おはよう屋さん』
川 ゚ -゚)「おはようございます、ペニサスさん」
『今日も聞こえにくかったら言ってね』
川 ゚ -゚)「今のところ聞きやすいです」
『良かったわ』
ペニサスさんは起きたばかりとは思えない凛とした声で、毎日電話が聞き取り辛くなるかもしれないことを詫びる。
しっかりした女性なのだと思う。
早起きの理由が、お化粧に3時間かけるためだと聞いた時は驚いた。
自分なんていつからお化粧をしていないんだろう。
.
92
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 22:18:21 ID:u/3RcYEI0
『あ、そうそう。昨日ね、会社帰りに空色のポリッシュ買ったのよ。朝の綺麗な空みたいな色』
川 ゚ -゚)、「ぽり…っしゅ?」
『えっとね、ネイル…マニュキュア。だから今爪が空色できれいなの。いつもオレンジ系だから新鮮だわ』
昨日ペニサスさんに好きな色を聞かれて、空色と答えた。
ギコさんの朝ごはんと同じで、私の答えを参考にしたいが為の質問だったらしい。
.
93
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 22:18:46 ID:u/3RcYEI0
『手って結構目に映るのよ。だから好きな色とかを塗ってるとね、元気になれるの』
川 ゚ -゚)「そうなんですね…」
『この色見ると、おはよう屋さんを思い出して何だか優しい気持ちになるわ』
川;* ゚ -゚)「それは照れますね…」
ペニサスさんはよくこういったことを言ってくれる。
その度に私は嬉しい気持ちになって、そのあと少しだけ「私なんかにそんなこと言わせてしまって申し訳ない」という気持ちになる。
.
94
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 22:19:13 ID:u/3RcYEI0
自分の手を見てみる。爪はぼろぼろだ。みっともない。
爪だけではない、髪も顔も、全てみっともない。
人に会わないのを良いことにほったらかしにし過ぎている。
今日は外に出るから、髪くらいは梳かさないといけない。
『ねぇ、おはよう屋さん前にメイクはあんまりしないって言ってたけど、爪ならどう?空色のネイル、お揃いにしてみない?』
川 ゚ -゚)「…え?」
自分の汚い姿を見てぼうっとしていた気持ちが一気に引き戻された。
爪。爪を塗る。
以前、爪をピカピカにしていったことがあった。色を塗ったわけでもないのに──
.
95
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 22:19:46 ID:u/3RcYEI0
川; ゚ -゚)「だ、駄目です私なんかがそんな……き、規則だって…!」
『え?』
ハッとする。
今の私は「おはよう屋さん」だ。
川; ゚ -゚)「あ、ご、ごめんなさい、大きな声を出してしまって、違くて……せっかく言って頂いたのに…」
『ううん、大丈夫よ。こちらこそごめんなさいね、年甲斐もなくはしゃいじゃったわ。おはよう屋さんの仕事にも規則があるのね』
川; ゚ -゚)「えっと…。……はい…」
.
96
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 22:20:13 ID:u/3RcYEI0
うまく言葉を出すことが出来なかった。しばらく見てもいない夢の中にいるかのように、体が動かしづらい。
「おはよう屋さん」に規則のようなものは、無いに等しかった。
だけど、何が違うのか、どう伝えればいいのかが、わからない。
ペニサスさんに失礼なことをしてしまった、それが苦しくて仕方ない。
『ごめんね、おはよう屋さん。気にしないでね。また明日お願い』
川; ゚ -゚)「はい、また、明日…」
川; ゚ -゚)「……」
.
97
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 22:20:57 ID:u/3RcYEI0
静かに電話を切る。
思い出して、手のひらの熱が消えて震える。
思い出したくもない記憶がブワッと脳内で再生される。
冷たい声、冷たい目、嘲笑──。
川; ゚ -゚)「……大丈夫。大丈夫…」
川; ゚ -゚)(あれが切れそうだから…だから不安定になってるだけ。大丈夫、大丈夫)
川; ゚ -゚)(……)
.
98
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 22:21:36 ID:u/3RcYEI0
もう一度爪を見る。不健康な色の爪。
昨日ペニサスさんに聞かれて答えた好きな色。
空色。
あれは嘘じゃなかった、思い出すまでに時間がかかってしまったけど。
川 ゚ -゚)(…きれいな空なんて、もうしばらく見てない…)
震えを止めるために、自分の手をぎゅっと握った。
.
99
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 22:22:14 ID:u/3RcYEI0
本日の投下は以上です。
眠くて仕方ないです。おやすみなさい。
100
:
名無しさん
:2022/01/22(土) 23:49:31 ID:0BAVr.h60
乙
101
:
名無しさん
:2022/01/23(日) 00:25:10 ID:FcCIBQco0
乙乙
102
:
名無しさん
:2022/01/23(日) 02:24:07 ID:qN3XzOSM0
乙おつ〜
うまく言えないけど好き
103
:
名無しさん
:2022/01/24(月) 09:04:27 ID:3DIrT/Ac0
閉塞感があって好き
乙
104
:
名無しさん
:2022/01/24(月) 12:57:02 ID:3efPys3A0
かなり好き
105
:
名無しさん
:2022/01/25(火) 22:13:52 ID:Y433IWt20
6:00②
.
106
:
名無しさん
:2022/01/25(火) 22:14:24 ID:Y433IWt20
深呼吸をする。
吸って、吐いて、吸って、吐いて。
──少しだけ落ち着いた。
電話をかける。仕事だ。
川 ゚ -゚)(…これくらいしかできない、私の、大事な…)
6時のお客様はモナーさんという男性。
何回かコール音が鳴り、しばらくして声が聞こえてくる。
『おはようモナ、おはよう屋さん』
川 ゚ -゚)「おはようございます、モナーさん」
.
107
:
名無しさん
:2022/01/25(火) 22:14:58 ID:Y433IWt20
『今日も肌寒そうモナね、それに少し乾燥している』
川 ゚ -゚)「そう…ですね」
昨日も一昨日も家を出ていないので、気温も天気もどうだったかがわからない。
モナーさんは昨日も「寒くなる」と言っていた。
夏の季節がいつの間にか終わっていたようだ。
朝も昼も夜も関係ない日々を送っていると、季節すらもわからなくなる。
.
108
:
名無しさん
:2022/01/25(火) 22:15:27 ID:Y433IWt20
『そういえば…』
モナーさんの声の後ろで、ボーンボーンという音が聞こえた。
初めて聞く音だ。
6時を数分過ぎている。時を伝えるにしては、だいぶ半端な時間。
川 ゚ -゚)「…時計、ですか?」
『聞こえたモナ?大きな掛け時計があるんだ。私と一緒でもう歳だから、たまに時間がずれてしまうんだモナ』
落ち着く音だと思う。何かに似ている気がする。
.
109
:
名無しさん
:2022/01/25(火) 22:15:54 ID:Y433IWt20
『孫娘が、童謡を歌ってくれるんだモナ。でも最後の一文が悲しくて嫌だ!って言って、まだ動いている おじいちゃんと時計 なんて替え歌にしてくれるんだモナ』
川 ゚ -゚)「可愛いですね」
『可愛いモナ。明後日遊びに来るから、今日はあの子のおやつを買いに行くモナ』
モナーさんは誰か人に起こしてもらいたいという理由で契約をしてくれている。
奥様は数年前に亡くなられていて、息子さんはあまり仲が良くないけれど、たまにお孫さんを連れてきてくれるのだそうだ。
そういったことを、ポツリポツリと、このモーニングコールの時間に話してくれる人。
.
110
:
名無しさん
:2022/01/25(火) 22:16:24 ID:Y433IWt20
『そういえば、おはよう屋さんは何か見たい未来があるモナ?』
川 ゚ -゚)「あ…」
モナーさんは、少し先の未来が見える、らしい。
未来が見えるというのは、どういうものなのか私には想像もつかない。
自分には嫌な未来しかない気がするからか、もし私が未来を見えることが出来たら怖くて仕方ないと思う。
川; ゚ -゚)「昨日のですよね。すみません、恥ずかしいことを聞いてしまって」
『いいや、家内や孫もね、よく聞いてくれたんだモナ。久しぶりに聞かれたから、何となく嬉しかったよ』
ゆっくり話すトーンが、先程聞いた時計の音に似ている。
そうか、あの時計の優しい音はモナーさんに似ていたんだ。
.
111
:
名無しさん
:2022/01/25(火) 22:17:13 ID:Y433IWt20
川 ゚ -゚)「……」
川 ゚ -゚)「……私に朝が来るのか、知りたかったんです」
声が少し震えてしまったけれど、モナーさんは揶揄ったりせずに話を聞いてくれた。
『朝、モナ?』
川 ゚ -゚)「私…」
川; ゚ -゚)「私、ずっと朝が…来なくて……待っても待っても…」
私には朝が来なかった。みんなには来る、朝が。
いくら待っても待っても、眠れなかった。
お客様に言うのは初めてだった。
もしかしたら兄者さんは知っているのかもしれないけど、私はもうずっと眠ることが出来なかった。
眠れない人間に、朝は来ない。
ずっと夜のような、重くて暗い気持ちが続いている。
.
112
:
名無しさん
:2022/01/25(火) 22:18:35 ID:Y433IWt20
『苦しいかい?』
川 ゚ -゚)「…苦しい、です」
『私も、待ってるものがあるモナ。待っても待っても来ないのは、苦しいモナね。おはよう屋さん、──ケホッ、ゴホ、ケホッ!』
川; ゚ -゚)「だ、大丈夫ですかモナーさん」
モナーさんの優しい声が途切れ、苦しそうな音と声がした。
思わずスマホを落としそうになり、握り締めた。
『ケホッ、ケホッ、大丈、夫…すまないモナ…乾燥してるからかな、ケホッ、』
川; ゚ -゚)「無理しないでください」
『すまないモナね、おはよう屋さん…水を飲んでくるモナ、また明日頼むモナ…』
川; ゚ -゚)「はい、また明日…」
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