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切り落とされた首の話

21名無しさん:2021/10/23(土) 22:39:31 ID:S/RA0zHE0
恐る恐るという様子で、液体を口に含む。
瞬間、口の中に広がる甘み。草木の死にゆく村では久しく感じることが出来なかった味覚。

ζ(゚、゚*ζ 「うわあ……これ、美味しいです!」

( ・∀・) 「お気に召したなら良かった」

( ・∀・) 「漬け込んでいる薬草には疲れを取り、心を落ち着かせる効能もあります」

( ・∀・) 「どうです、もう一杯?」

ζ(゚ー゚*ζ 「ありがとうございます。でも、貴重な飲み物では?」

( ・∀・) 「確かに安物ではないですが、村のために頑張っているお嬢さんにご褒美というやつです」

ζ(゚ー゚*ζ 「あ……」

( ・∀・) 「私も事情は知っていますからね。女性一人で村を出るのは心細かったことでしょう」

( ・∀・) 「目の下に大きな隈が出来ていますし、村を出てからまともに眠れていなかったのでは?」

今回の取引のため、村の人々は残り僅かな財産を出し合った。
取引相手に渡す金を除けば、後はせいぜい一人分の旅費。
誰かが一人で村を出なければとなった時、手を上げたのがデレだった。

ζ( ー *ζ 「えっと、その……」

( ・∀・) 「大丈夫、ここは大丈夫ですよ」

もしも駅馬車が山賊に襲われたら、男や老人はそのまま殺されてしまうだろう。
しかし若い女であれば生き延びることは出来るかもしれない。デレはそう主張した。
生き延びた後に何が待っているかを知らないわけではなかった。
それでも、他の誰かが犠牲になるのは耐えられなかった。

これから死体を買いに行こうという人間が他者の身を案じるなど矛盾しているかもしれない。
しかし、デレの心の中の正義がそれを肯定した。

ζ(;、;*ζ 「ありがとうございます……私、ずっと怖くて……」

ζ(;、;*ζ 「本当に襲われたら、死んでやろうって……隠し持ってるナイフが手放せなくて……」

緊張の糸が切れるとはこういうことか。
頬を伝う熱を感じながら、デレは思った。


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