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それは砕けし無貌の太陽のようです
9
:
◆HQdQA3Ajro
:2021/10/16(土) 00:05:20 ID:jePDeZ3M0
※
「例えるならそう……阿片。阿片でしょうな」
指の間に挟んだ煙草を突きつけるようにしてキツネは、自論を展開する。
「大衆の頭を蕩けさせ、蕩けて判断力を失った頭に強烈な快楽という餌を次々ぶら下げ依存に導く、
実に功名で犯罪的なやり口。昨今では、どこもかしこもこのような方法に溢れかえって……
くっくっ、いまや私らの方こそ見習わねばならん時代ですわ」
笑う度に紫煙がくゆり、火の粉がぱちぱち爆ぜ飛び燃ゆる。
その前時代的な情景は、この小汚い中華飯店の裡において驚異的な統制感を生み出していた。
外の今を、疑いたくなる程に。
「ところで先生、新作、拝読させて頂きましたよ」
溜まった灰が、とんっと皿へと落とされる。
「そうですな、率直に言って――どうやら先生は、今の作家さんになってしまわれたようだ」
燻った焔を抱えた灰が、生命の終わりかの如くにその輝きを失っていく。
……ああそうかい。ズケズケと、いう。ふんっ、言われなくても判っている。お前なんかに言われなくても。
壁の方へと、顔を向けた。視界の端で、紫煙が揺れる。キツネが笑い出した。
押し潰したのどから空気だけを漏らすような、独特な笑い方。
「なぁに、責めやしませんとも。顧客第一、結構なことじゃありませんか。私らも同じです。
売れねば食っていけません。食えねば生き残れません。生き残らねば、どうにも次へはつながらず。
とくれば明るい未来もそっくりパァ!……なぁんてものでね」
大仰に両手を広げたキツネは、何が楽しいのかやはり再び笑い出す。
腹の底の読めないキツネ。高良とはまた異なる意味で、信用できない。
……だが。
おまちどぅ……と、気力の感じられない声と共に従業員が、叩きつけるように膳を配した。
美意識など感じられない、無造作な盛り付け。見た目はともかく量だけは揃えたといった風情のもの。
はっきりいって、食欲をそそられる代物ではない。
……が、だからこそ、気取らぬそれらからは理性に反した安堵を抱く。
「ま、食いましょうや。売れなくても死にますが食わなくとも死ぬ。それが世の理ってもんです」
指の間の煙草をもみ消しいただきますと、キツネが一番に手を付けだした。
背広の上からでも瞭然な針金のように細く長く不健康な肉体に、
でらでらと油に光る料理の群れが吸い込まれていく。
見ているだけで胸焼けを起こしそうな情景。
しかし当の本人はまるで意に介する様子なく、皿の上の塊を平らげていく。
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