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それは砕けし無貌の太陽のようです
76
:
◆HQdQA3Ajro
:2021/10/16(土) 00:38:14 ID:jePDeZ3M0
「兄貴、逃げ――」
慌てた声で俺を呼ぶトラの巨体が玄関からこっち、家屋の内側に向かって前のめりに倒れた。
右のこめかみからその反対側まで一直線に、小さな穴っぽこが貫通している。もはや生命ではない。
身体の反射運動によってトラの身体は倒れたままびくびくと跳ね、血をこぼし、それで、やがて止まった。
「……どうやら迎えが来たみたいですわ」
そういって俺は立ち上がる。ここまで話を聞いてくれた相手に、軽い会釈の礼をして。
「先生はそこで楽にしててください。なに、すぐに済みますから。それでは――」
半開きの目で虚空を見つめる、その顔に。
「せめて夢の中で、お幸せに」
別れを告げる。本心から、愛を込めて。
トラへと近寄る。もうそれなりに長いこと、俺の舎弟として側に居続けてくれた男。
見開かれたそのまぶたを閉じてやりながら、心の中で俺は、問いかけた。
なあトラよ、お前は俺に、何をみていたんだい。俺はそいつに、応えてやれてたかい。
返事はない。喉の奥から、笑いの息がこみ上げた。
「意地なんて張ったってまったくまったく、損するばかりでアホらしいもんだ。
なあトラよ、お前もそう思わないかい? ……くっくっ、意固地だね、お前は」
笑いが止まらなかった。トラの前で。座って。足音が近づいてくる。
複数の、規則正しい足音。冷める。つまらねぇな、おめぇら、そんなとこまで。
本当にそれで、生きてんのかよ。そう感じる。そう感じることが即ち、時代遅れってことなのだろう。
団体さんが、ずらっと並んで現れた。俺はそれを、精一杯に手を広げて歓迎する。
ごきげんよう、新時代。そんでもって――――
あばヨ、せーしゅん
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