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それは砕けし無貌の太陽のようです

67 ◆HQdQA3Ajro:2021/10/16(土) 00:34:02 ID:jePDeZ3M0
「……判ってるんだよ、ぼく。言うほどみんな、愚かなんかじゃないってことくらい」

判っている。この先生が、ぼくの生み出したただの幻覚だってことくらい。

「それでもぼくには、愚かで凶悪な敵が必要だった。
 実像以上の怪物に仕立て上げてでも、みんなを憎む必要があった」

それくらい判っていて、それでもぼくは意識せざるを得ない。
だってそれは、確かにそこにいるのだから。そういう実感があるのだから。

「凶悪で太刀打ちできない怪物たちに、書きたくもないものを書かされている。
 そういう体にしておかないと、だめだったんだ。そういう“ストーリー”が必要だったんだ。だって――」

だからぼくは問いかけてしまう。どうして、どうして。そのように、問いかけてしまう。

「ぼくまでもがぼくの小説を選んでしまったら、誰が先生を証明するの?」

先生はどうして、ぼくを責めてくれなかったの?

「そんなことしたら今度こそ、今度こそ本当に、太陽<あなた>に止めを差してしまう。
 ぼくを救ってくれた光を、“物知らぬ子どもの幼き憧れ<錯覚>”に貶めてしまう。
 それこそぼくには、耐えられない……」

そんなになってどうして、それでもぼくに微笑むの?

「ねえ先生、疲れたんだ。ぼく、とても、疲れちゃったよ」

もう、限界だった。幻覚も、人も、書くことも、生きることも。
全部投げ捨てて、逃げ出したかった。

「もう、眠りたい……」

眠って、ずっと眠って、このままずっと、一生、心地良い、夢の中で――。
沈まぬ太陽を拝む、あの懐かしき夢を――――。


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