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それは砕けし無貌の太陽のようです

63 ◆HQdQA3Ajro:2021/10/16(土) 00:32:17 ID:jePDeZ3M0
必要なんだ。

「私がいなくなっても、書いてくれませんか」

俺にはお前が必要なんだ。

「私、最初は意地になってたんです。
 先生にも、ううん、先生にこそ、先生の書いたものを否定して欲しくなくて」

一人じゃ書けないんだ。

「だって先生がそれを――『太陽を見上げた狼』を否定しちゃったら、
 それに救われた私、 なんだったのってなっちゃうじゃないですか。
 私の信じたもの、うそだったんじゃないかって、思っちゃうじゃないですか。
 だから私、意地になってたんです。私が愛したもの、先生もほんとは愛して書いたはずだって、
 その気持ちを証明してやろうって、そう、意気込んでたんです。だけど――」

自分と向き合いたくないんだ。

「だけどそんな気持ち、この半年できれいさっぱりなくなりました。
 だって私、見てましたから。短い間だけど私、見てましたから。先生の書いてる姿、見てましたから」

自分が本当は何を望んでいるかなんて、知りたくないんだ。

「書き続ける“必要”なんて、ほんとはなかったはずですよね。
 もういやだって投げ出しても、構わなかったはず。それなのにおクスリにまで頼って、
 あんなに苦しみながらも書き続けていたのはどうして? 筆を折ろうとしなかったのはなぜ?」

だから頼む照出、だからどうか――。

「ねえ先生、私知ってます。 ほんとは私なんかいなくても、何に頼ったりなんかしなくても、先生は書ける人だって。
 先生の心を縛るわだかまりさえ解ければ、先生は誰に頼まれなくったって 自由に書いてしまえる人だって。
 だって先生は、あなたは――」

俺の気持ちを、俺の信仰を――。


「“あなた”は“あなたの小説”を書きたくて書きたくて仕方のない人なんだって、私、知っていますから」


「お前は」

どうかお前だけは、どうか、どうか――。

「お前は俺が、あんなくだらない紛い物を好き好んで書いてるって、そう、言いたいのか」

「先生」

否定、しないで――――。


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