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それは砕けし無貌の太陽のようです
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◆HQdQA3Ajro
:2021/10/16(土) 00:31:50 ID:jePDeZ3M0
学生の遊びみたいな行楽は、正直きつかった。
自然との触れ合いだのレジャーだのは、肌に合わなかった。
「私、それでも悪くないって思いました。
相手の人のことはよく判らないけど、でもそれでおじさんに受けた恩を返せるなら、それでもいいって。
でも、でも……私その人に、言われたんです」
だが、一生懸命だった。
「仕事を辞めて、家庭に入ることが条件だって」
一生懸命なのは、感じていた。
「……私、辞めたくなんかありません。まだまだ先生と一緒に、仕事してたいです。
私が先生の本を読んで救われたみたいに苦しんで、自分だけじゃどうしようもなくなっちゃった人が
立ち上がるそのお手伝いを、私だって、したい」
だから、期待していた。今だから素直に思えるが、俺はこいつに、期待していた。
「がんばって、理解してもらおうとしたんです。話し合って、長い時間、説得してみて。
でも、認めてもらえなくて。時間はどんどん過ぎていって……」
こいつならもしかしたら、俺を理解してくれるのではないかと。
「これ以上引き伸ばしたら叔父は……ほんとに、もう……」
助けて、くれるんじゃないかと。
「何度も電話、掛けようとしたんです。でも、いざとなると怖くて、震えて……」
そしてこいつは、俺の期待に応えてくれた。
「掛けてしまったらもう、後戻りできなくなってしまう気がして……」
その姿を。
「先生は、私の心を救ってくれた。だけど、おじさんは私の生活を守ってくれた」
顔を。
「ふたりとも、大切なんです。ふたりとも大事で、ふたりとも恩人で、ふたりともに幸せになってほしくて……」
見せて、くれた。
「見捨てることなんて、私にはできなくて……だから――」
だから――。
「先生、書いてくれませんか」
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