したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

それは砕けし無貌の太陽のようです

62 ◆HQdQA3Ajro:2021/10/16(土) 00:31:50 ID:jePDeZ3M0
学生の遊びみたいな行楽は、正直きつかった。
自然との触れ合いだのレジャーだのは、肌に合わなかった。

「私、それでも悪くないって思いました。
 相手の人のことはよく判らないけど、でもそれでおじさんに受けた恩を返せるなら、それでもいいって。
 でも、でも……私その人に、言われたんです」

だが、一生懸命だった。

「仕事を辞めて、家庭に入ることが条件だって」

一生懸命なのは、感じていた。

「……私、辞めたくなんかありません。まだまだ先生と一緒に、仕事してたいです。
 私が先生の本を読んで救われたみたいに苦しんで、自分だけじゃどうしようもなくなっちゃった人が
 立ち上がるそのお手伝いを、私だって、したい」

だから、期待していた。今だから素直に思えるが、俺はこいつに、期待していた。

「がんばって、理解してもらおうとしたんです。話し合って、長い時間、説得してみて。
 でも、認めてもらえなくて。時間はどんどん過ぎていって……」

こいつならもしかしたら、俺を理解してくれるのではないかと。

「これ以上引き伸ばしたら叔父は……ほんとに、もう……」

助けて、くれるんじゃないかと。

「何度も電話、掛けようとしたんです。でも、いざとなると怖くて、震えて……」

そしてこいつは、俺の期待に応えてくれた。

「掛けてしまったらもう、後戻りできなくなってしまう気がして……」

その姿を。

「先生は、私の心を救ってくれた。だけど、おじさんは私の生活を守ってくれた」

顔を。

「ふたりとも、大切なんです。ふたりとも大事で、ふたりとも恩人で、ふたりともに幸せになってほしくて……」

見せて、くれた。

「見捨てることなんて、私にはできなくて……だから――」

だから――。

「先生、書いてくれませんか」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板