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それは砕けし無貌の太陽のようです
61
:
◆HQdQA3Ajro
:2021/10/16(土) 00:31:19 ID:jePDeZ3M0
「……おめでとう」
祝うんだった、そうだった。
「おめでとう、おめでとう、照出麗奈さん、ご結婚おめでとう、おめでとう」
結婚おめでとう、おめでとう。目出度いことだ。だから祝うのだ。
そうだったはず。そうするつもりだったはず。……そうだったろうか?
「先生、私……」
「おめでとう、おめでとう」
「先生」
ぎゅうと身体を密着させて照井でが、耳元で俺を呼んだ。
脳が揺れた。ぼやけた視界に輪郭が、急速に伴っていく。
「私これから、言い訳いいます。みっともないけど、
でも、誤解されたままなのはいやだから、言い訳、いいます」
こいつ、こんなに小さかったんだな。
そんなことを思いながら俺は、照出の話を聞く。
「お父さん、借金、残してたんです。
すっごい、たくさん。私じゃどうしようもないくらいの借金、たくさん」
照出と出会ってからこれまでのことを、思い出しながら。
「叔父が――おじさんが、肩代わりしてくれたんです。
おじさん、工場の社長さんで、私のためならそれくらいなんてことないって、
当たり前みたいにお金、返してくれて」
あだ名で呼んでくださいなどと、ずいぶん軽薄なやつだと苛立った。
「それからも、面倒見てくれて。私が大学を卒業できたのも、
いまの生活を送れているのも、おじさんのおかげなんです。でも……」
キツネとの取引を邪魔された時は腹が立つ以上に呆気に取られて、
「書かせてみせる」なんて宣言もずいぶんと傲慢で。
「おじさんの工場、潰れそうなんです。大きな会社に仕事取られちゃって、
銀行からもお金、借りられなくなって。手を出しちゃいけないとこにも、手を出して。
ふくよかだったお腹もどんどん、どんどんへこんでいっちゃって。ぜんぜん、笑わなく、なっちゃって……」
けれど、あんなふうにぶつかってきたやつは、初めてで。
「だけどね先生、助け舟が現れたんです。おじさんの大得意の取引先の社長さんが、縁談を持ってきて。
なんでも社長さんの息子さんが、私のことを気に入ってくれたみたいで。
私がその……婚約を受けるなら、なんとかするって」
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