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それは砕けし無貌の太陽のようです
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◆HQdQA3Ajro
:2021/10/16(土) 00:29:16 ID:jePDeZ3M0
『そうだね、お前の書くものは――』
先生は、高校生だった。高校生だったけれど、けれどぼくの知るどんな大人よりも大人で、
頭が良くて、やさしくて、輝いていた。先生は様々なことを教えてくれた。
学ぶこと、遊ぶこと、生きること、愛すること。どれもむつかしくて、けれどどれも大切で。
その大切なことを、先生は自分自身で体現していて。
片時も離れたくなかった。いつでも側に居たかった。
目の眩む眩き光を浴びて、その光の一部になりたかった。光に溶けてしまいたかった。
先生のようになりたかった。先生のような人になりたいと、強く願った。先生の真似をした。
海外のむつかしい映画を観た。小学校では教えてもらえない学問の本を読んだ。
思索の論理と、自分自身で答えを探りだす哲学を覚えた。
先生に倣って自分の木を見つけた。病気に罹り、廃棄される寸前だったその木の赤児。
そいつのささやきが、ぼくには聞こえた気がした。それが誇らしくもあった。
先生に近づけた気がしたから。先生は言ってくれた。『お前はその子を、愛してあげなくっちゃいけないよ』。
その時の感情を、文章に書き表した。書くという行為を知った。
小説を、書き始めた。
すべては先生の模倣から始めたことだった。先生がぼくの道標だった。
先生はぼくの父だった。父であり、母ですらあった。先生はぼくのすべてだった。太陽だった。
ぼくという穴蔵に潜む虫けらを羽化へと導いてくれる、天上にて燦然と輝く太陽そのものだった。
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