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それは砕けし無貌の太陽のようです

5 ◆HQdQA3Ajro:2021/10/16(土) 00:02:49 ID:jePDeZ3M0
               ※

書けない、書けない、書きたくない。
当然だろう。何故ならこれは、俺の書くべきモノでないのだから。
こんな愚かしくくだらない、芸術未満の紛い物。書けば書くほど恥の上塗りだ。
こんなもの、書きたくはない。そうだ、違うのだ。俺が書くべきは、俺が本当に書きたいのは――。


『そうだね、お前の書くものは――』


「私、先生のお役に立ちたくてこの仕事を選んだんです!」

所作振る舞いに同様、頭の軽さを感じさせる新担当の言葉は
やはり調子の良い媚びへつらいに塗れており、その一挙手一投足が癇に障り、
早くも苛立ちはピークを迎えつつあった。

しかも聞くところによればこの女、今年入社したばかりのド新人だというではないか。
当然他の作家を担当した経験もなく、常識もなければ能力も足りていない。
高良の野郎、何が優秀だ。厄介払いでもするつもりか。だったら他でやれ。押し付けるな、俺に。

「先生、なにか手伝えることはありませんか?」

聞くな、触れるな、自分で考えて自分でどうにかしろ。
お前なんかに構っていられるほど俺は暇じゃないんだ。
そうだ、俺は書かなければならない。書きたくもないものを書かなければならない。
書きたくもないものをどうやって書くか考えなければならない。

暇などないのだ。無限に時間を使用したとて、進捗など毫に等しく皆無なのだから。
ただの一文字とて、思い浮かびはしないのだから。故に俺に、暇などない。無駄な時間はない。
ただしそれは、無為といって相違はあるまい。愚人の無為に。

それでも、書かなければならない。俺は、書かねばならない。


『悲しむことじゃないさ。それはお前の――』

.


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