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それは砕けし無貌の太陽のようです
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◆HQdQA3Ajro
:2021/10/16(土) 00:23:19 ID:jePDeZ3M0
三
悩んでいた。深刻に悩んでいた。
『星の水母は月へと唄う』を出してから半年。
あれから更に一作書き上げ、今また新たな作品に取り掛かっている現在。
俺は今、すこぶる悩んでいた。それは新作の構想について――ではなく、
もっと卑小で、身近で、個人的な私事。しかし俺にとっては、大きな意味を持つそのこと。
照出の誕生日が、近づいていた。
プレゼントとは、何を贈ればよいものか。
思い返してみても、人に何か贈り物をしたという記憶がない。
そのように親密な交歓を図ってこれた知人などただの一人もおらず、
また打算やへつらいの絡まぬ私的な贈り物を寄越してもらえた覚えも、一度もなかった。
ましてや、女になどと。絶対的に、経験が不足していた。困っていた。
だがしかし、ならば何が良いかと第三者に相談するなど、かように恥さらしな真似ができる訳もなく。
照出は、あのローマ人のサンダルをくれた。
それは、適当な相槌だったとはいえ俺自身が下した評価を基準に判断した結果だ。
然るに照出の日頃の言動を想起することによって候補となる物品を絞るのが
王道の上策であると考えられる。られるのだが……事はそう、単純でもなかった。
照出麗奈という女は実に喜怒哀楽のはっきりとした、自分の感情を表に出すことを躊躇わない女だ。
好きなものには好きと、はっきり口にする。それは俺も知っている。それらの幾つかを覚えてもいる。
だが――好き好き好きかわいいかわいい好き好きかわいい好きかわいいかわいいかわいいかわいい……
俺は知る。何でもかんでも好き好きかわいいという輩にとって結局何が一番好きなのか、
外部から判断するのは至難の業であるということを。候補が、まるで絞れん。
適当に何か見繕い、居丈高にそいつをくれてやればよい。そういう意見もあるだろう。
が、この誕生を祝う行為については俺が手ずから企図したことなのだ。中途半端は、願い下げである。
やるからには最高の準備を施し、最高の結果をもたらしたい。
……あいつは、まあ、何をくれてやっても喜ぶだろうがそれはそれ、これは俺の尊厳の問題なのである。
なにせこいつは、俺から照出を祝う初めての催事となるのだから。
であるからして俺は、会話の中から聞き出すという古典的な策を用いて戦いに打って出ると決めた。
抜けた所の多い照出からならば、俺の話術でもなんなく探り出すことができるはずだ。
勝算は高い……はず。いや、仮に低くとも戦い、そして成し遂げる。そして、そう。成功した、その暁には――。
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