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それは砕けし無貌の太陽のようです
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◆HQdQA3Ajro
:2021/10/16(土) 00:15:45 ID:jePDeZ3M0
異変にはすぐに気がついた。車を降り、雨降る空を見上げ、四階に位置する自宅のバルコニーを見上げる。
見慣れぬ光景が、そこには存在した。エレベーターを待つことも煩わしく、階段を駆け上がる。
取り落としそうになる鍵をなんとか玄関口へと突き刺し、部屋へと入る。明かりをつける。
部屋の明かりに照らされ、バルコニーの状況が顕となる。
照出が、そこにいた。
……なんで?
鍵を解き、窓を開く。
雨粒と共にばたばたと、風に煽られる分厚いビニールの翻る音が部屋の中へと侵入した。
両手を上げて照出が、ビニールの覆いをそこに形成していた。
「おかえりなさい、先生!」
ビニールの覆いの内側、風雨から守られたその空間には『俺の木』が、
今朝見た時と同じようにやや左曲がりの姿勢でそこに鎮座していた。
目に見える水滴もなく、風に枝を折られた形跡もない。
「先生、よじ登っただなんて思ってますか? まさか、そんなことしませんよ!
お隣さんに頼んで、隣のバルコニーからこっちに入らせてもらったんです」
いつも通りの脳天気な声で、ずいぶんとおかしなことを照出は言い放った。
隣家のバルコニーを見る。このマンションのバルコニーは地続き型ではなく、
ひとつひとつが各部屋から出っ張った形で築かれている。つまり、隙間が存在する。
広い隙間ではないとはいえ、成人女性が滑り落ちる程度の幅は確かにある。ここは、四階だ。
落ちればひとたまりもない。だというのに照出は、それを実行した。
いつか取り返しのつかない目に遭うぞ。喉元まで迫り上がった言葉を、声に乗せる直前で嚥下する。
それは余計なお世話というものだろう。一他人に優ない俺が不用意に干渉するようなことでは、ない。
だから俺はその代わり、俺の都合を、口にした。
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