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それは砕けし無貌の太陽のようです
27
:
◆HQdQA3Ajro
:2021/10/16(土) 00:13:30 ID:jePDeZ3M0
「……酔っ払いは、嫌いです」
「酔ってちゃわりぃかよ、こんなクソみてぇな世界で」
壁を背にしたジョルジュがずりずりと、更に身体をすべらせる。
厠の床の上で、しかしそうした場所の忌避感をまるで気にしない様子で、
ジョルジュは自らを横たわらせていく。
「ああそうさ、俺はお前らが嫌いだよ。
公明正大を装ってその実、痛みに鈍感なだけの無自覚で無責任な消費者共が」
「……書かないくせに」
「てめぇだって“てめぇの小説”捨てたじゃねぇか」
俺は、返事をしなかった。ジョルジュが笑い出した。高らかに、勝ち誇るように。
笑われたまま、俺は踵を返す。一言も、返すことなく。
「せいぜい大衆に媚び売って、必死に時代に追いすがってな。
でなけりゃすぐに、“昔はすごかった人”にされちまうんだからな!」
ジョルジュの言葉を背中に受けて、そうして俺は外へ出た。
一枚の扉板で隔てられた厠の外は虚栄に彩られた異世界で、
そこもまた俺にとって呼吸のしづらい、俺以外の誰かの居場所なのだと感じられた。
「ああ先生、そんな所におられたんですか!」
行く宛がなく壁に持たれて呼吸を整えていた俺の下に、オカマ野郎の高良が小走りで駆け寄ってきた。
反射的に舌打ちが出る。しかしそれが聞こえていないのか、それともその程度気にもとめていないのか、
高良は例の猫なで声で許しもしていないのに話しかけてくる。
「よかった先生、見つかって。紹介したい方がおりましてね。付き合って頂けますね?」
すでに付き合うことが決定している物言いだった。
こうした一方的な都合の良さが、この男への悪感情を増幅する。
わざとらしくひとつ、ため息を吐いた。やはり気にする様子などなかった。もたれた壁から、背を離す。
「ニュッ先生、もしかしてジョルジュと一緒にいたのですか」
紹介相手とやらの下へ向かう途中、出し抜けに高良が問いかけてきた。俺は肯定も、否定もしない。
「先生、付き合う相手は選びなさい。彼はいけません。
一時はもてはやされもしましたが、今はもうどこの出版社でも門前払いされるばかりで。それに――」
高良は一人で話を続ける。そしてその話がなにやら佳境に入ったのか、
俺の耳元に口を近づけ、こそっと辺りを伺いながら小さな声で話を続けた。
「噂ではよからぬ連中と付き合いがあるとかって。
なんにせよおしまいですね、ああなってしまっては。惨めなもんです」
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