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それは砕けし無貌の太陽のようです

24 ◆HQdQA3Ajro:2021/10/16(土) 00:12:17 ID:jePDeZ3M0
               ※

「ごめんなさい先生。今日だけはその、どうしても外せない用事があって」



「ですので私は小説を書く時に必ず――」

俺は、何を話しているのか。

「本日この賞を頂けたことは、偏にそれらの努力が結実したものと――」

こいつらは、何を聞いているのか。

「大変ありがたく光栄なことで――」

中身のない、無味乾燥な言葉の羅列。

「支えてくださっているみなさま、何よりも読者の方々に――」

それでよいと、顔なき者の仮面の羅列。

「感謝を――――」

壊れてしまえ、何もかも。

授賞式。書いた本が、何かの賞に引っかかった。
それを祝うとの名目で、作家は壇上のパンダにされる。
カメラを向けられ、称賛を浴びせられ、儀式の一部に貶められる。
そこに歓びなど欠片もない。あるのは諦観と、憎悪と、強烈な侮蔑。
愚鈍な大衆。価値の判らぬ畜生どもへの。

こいつらの基準は真贋にない。流行りを作す詐欺師の手口に、脳を溶かして呑まれる畜群。
どいつもこいつも畜生だ。人以下の、人間未満の、人が人足る尊厳を放棄したケモノどもだ。
例えばいま、俺がこいつらを罵ったとして。それでもおそらくこいつらは、喝采上げて称えるだろう。
左右の隣に呼応して、違和の不信に目をつむる。乱れず、溢れず、統に制ずる。
示し合わせた訳でもないのに均一に、場へと従う家畜の群れ。唾棄すべき、顔のない人間ども。

嫌いだ。俺は、お前らが、大嫌いだ。

……苛立ちが収まらなかった。会場へ着く前から、家を出る以前から今日は、神経が昂ぶっていた。
要因は、多岐に渡る。この世はとかく無遠慮で品なく、癇に障るもので溢れているから。
世界は複雑系なのだ。故にただ一つの要因を特定することなどできはせず、
それをさも悟り覚したかのように断定し喧伝するのは、それは自らの足りなさを言いふらす愚行と変わりない。
愚か者の所業だ。俺はそんな愚は犯さない。だが、だが――だが、それでもこれだけは、いえる。


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