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それは砕けし無貌の太陽のようです
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◆HQdQA3Ajro
:2021/10/16(土) 00:11:52 ID:jePDeZ3M0
「……お久しぶりです! はい、麗奈です! どうしました今日は、何かありましたか?」
電話に出る直前の躊躇いからは想像もつかないほどの明朗快活な声。
即ちそれは、普段の照出とミリも違わず。相手の声は聞き取れないがずいぶんと愉快な話に興じているようで、
話して笑ってうんうん相槌を打っている。
そうして俺は、この甘ったるい匂いが充満する空間で一人、ただ待つだけの時間へと陥れられた。
……それで、なんだったか。待つ時間は、わくわくでいっぱいにする時間? はっ、どこが。冗談ではない。
待つ時間は待つ時間。ただただ退屈で、無為な時間に過ぎないことがこれで証明された。
これだから適当な人間の適当な言葉は、信用に足らないのだ。
「あ、私これ知ってる!」
列に並んだ女の一人が、ひとつ方向を指差し叫んだ。つられて俺も、そちらを見る。
女が指差したその先には、天井から吊り下げられたディスプレイが設置されていた。
ディスプレイには昼のニュース番組が映し出され、聞き覚えのある名の俳優が
明日上映される出演作の宣伝を行っている。そいつはべらべらと作品の見所を語り、謳い、
それがまるで決め台詞であるかのように作品のタイトルを連呼した。
俺の書いた、小説の。
『おまえはわるくないよ』
ここにはもう、いたくなかった。
真下の地面へ視線を落とし、出口に向かって歩きだす。
「あ! あのごめんなさい、いま仕事中だから! また折り返します!」
後方から、照出の慌てた声が聞こえてきた。俺を呼ぶ声。
しかし俺は歩みを止めず、そのままここから出ていった。
外では子午上の太陽が、真新しいアスファルトを焦がしていた。
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