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それは砕けし無貌の太陽のようです

21 ◆HQdQA3Ajro:2021/10/16(土) 00:11:20 ID:jePDeZ3M0
「でもね先生、その認識は甘い、甘すぎます!
 お菓子はね、名前が同じでも職人ごとに全く別の食べ物へと化けるのです!
 シュークリームは全部同じだなんて、小説はみんな同じだぁっていうのと同じくらい的外れなことなんですよ!」

わかりますか! 念を押すように照出が、強い声で付け加える。
そうかいそうかい、そうですか。一人勝手に熱を増して、ずいぶんと得意げに語ってくれるじゃないか。
同じだなんだとそもそも俺は、一言だって口走っちゃいないんだがな。

「それにね先生、待ってる時間って、そんなに悪いものじゃないんですよ。
 待ってる時間は、わくわくでいっぱいにする時間なんですから」

……わくわく?

「これからに、わくわくしちゃう時間です」

だから、ね、並びましょう!
そういって俺の裾をつかんだ照出の、その懐から無機質な電子の音階が鳴り響いた。
携帯だ。照出は俺から手を離すとやはり器用に指先をすぼめ、
いつか警察につないだのと同じあの携帯をするりとてのひらへと抜き出した。

が、スムーズなのはそこまでだった。携帯の表に表示されている画面を見て、照出は固まる。
その停止は、凡そ生命力の塊である照出らしからぬ動作と感じられた。

どうした、でないのか。言葉にはせず、心の中で問いかける。
その間もてのひらの裡の携帯は無機質な呼び出しを続け、それは四回、五回、六回と、
寸分違わぬ機械的な律動を繰り返す。そしてその反復がついに八回目に達しようとした頃、
照出がようやく、動いた。


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