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それは砕けし無貌の太陽のようです

11 ◆HQdQA3Ajro:2021/10/16(土) 00:06:11 ID:jePDeZ3M0
「私からのおすすめでね」

トラが取っ手を両に開き、中身を顕す。
中に入っているのは色あせた文庫本が二冊と、古ぼけたCDケースが、三つ。

「検めますかね?」

紫煙の向こうでキツネが揺れる。俺は答えない。ただ無言で、手を伸ばす。

「くっくっ、ご信用の程、感謝致しますよ」

キツネが笑う。向こう側から。辿り着く先を、見据えるように。判っている。
こんなこと、いつまでも続けられるものではないと。この行いが公になれば破滅はまず免れ得ず、
よしんば隠しおおせたとしても肉体的な破滅が待ち受ける。“こんなやつら“に頼ってはいけない。

そんなことは、常識として理解している。だが――だが、書くためだ。
書くためであれば、なんでもする。書くためであれば、何もかもを捧げる。
俺は、書かなければならないんだ。そうだ、だから。

だから――。


「ダメです!!」


……は?

「おやおや、こいつはかわいらしいお嬢さんだ」

なんだ、どういうことだ?

「お客さんちょっと困るよ、この人たちはね――」

「ああいいんだ、いいんだ親父。どうやらこのくりくりなお嬢さん、私らの“身内”だ」

慌てた様子の店主を、キツネが追い返す。
突然の闖入者は当たり前のようにして、そこに立っている。
聞き覚えのある声。それもつい最近。それこそ、そう、つい数時間前まで耳にしていた。

照出麗奈、なぜここに?

「それでお嬢さん、何がダメだというんだい。
 私らはほれこの通り、先生に頼まれて本やらなにやらを調達してきただけでさ」

「いますぐ」

らしくない、有無を言わせぬ語調。

「いますぐこのお店から、出ていってください。でなければ私、通報します」


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