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Ammo→Re!!のようです

255名無しさん:2022/05/17(火) 20:05:26 ID:EzOowemM0
(’e’)「そっか、ありがとう」

オリノシが瓦礫の町と化すのに必要だった砲弾は、僅かに二発だけだった。
着弾地点は観測手のおかげでずれはなかった。
ジュスティア陸軍内部に潜んでいた細胞は砲兵として所属しており、戦闘を通じて詳細な情報を手に入れ、蓄積していたのである。
皮肉にも、陸軍大将は自らの正確な位置を信号弾で教えており、その地点に対しての一斉砲撃で更に詳細な情報が手に入っていた。

砲兵部隊と戦車隊による集中攻撃によってオリノシにいた人間はほとんどが死んだが、ティンバーランドの人間の被害は予定よりも少なく済んだ。
こちらの想定した通り、こちらが手に入れていた情報通りに陸軍は動き、そして壊滅した。
使用した砲弾はDAT内に保存されていた資料を基に、長年研究と実験を繰り返し、現代に復元した気化爆弾を詰め込んだものだった。
通常の砲弾や爆弾とは違い、爆発の継続力が桁違いであり、街中で使用すればかなりの威力を発揮できる。

一発を復元するだけでも数億ドルの費用が必要であるため、まだ100発程度しか量産に成功していない。
小規模な町であれば二発で壊滅させられることが分かったのは、あまり実りのある情報とは言えない。
それはジョーンズの予想と同じであり、何一つ面白くない。
何より、味方であったとしてもその砲撃を生き延びた人間がいる以上、この砲弾は完璧ではないのだ。

〔 【≡|≡】〕『危うく死ぬところだったんだ、何かないのか?』

それは、ミルナ・G・ホーキンスからの通信だった。
彼の持つ“マン・オブ・スティール”があれば、気化爆弾の衝撃からも身を護ることが出来る。
装甲を展開すれば味方を守ることも出来る。
ただし、失われる酸素のことを考えていなければ保護下にあっても十分に死に得る状況だった。

(’e’)「君達なら大丈夫だと思っていたよ」

[,.゚゚::|::゚゚.,]『どうだかな。 俺たちを消耗品――エクスペンダブルズ――だとでも思ってたんじゃないのか』

クックル・タンカーブーツの声に感情はあまり感じられないが、内心で憤っていることは流石のジョーンズでも分かる。
ミルナの防御が間に合わなければ、町で唯一の生存者はミルナだけになっていたはずだ。

(’e’)「はははっ、上手い事を言うね。
   君たちはかけがえのない存在だと思っているんだよ、僕ぁ」

実際に戦闘を行っていたのは、最初に動員した半分の兵士と町の人間だけだ。
ジュスティア陸軍を町に釘付けにし、そこを試射がてら遠距離から砲撃する。
消耗品がいるのならば、それはミルナとクックルを除いた人間達のことだ。
量産機の棺桶に大した価値はない。

コンセプト・シリーズは替えが効かず、一度失えば二度と戻らないのだ。
クックルが使用している物も一度は壊されたが、修理と改良を施すことでこうして戦場に戻ることが出来ている。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『あぁ、そうかい。
     とにかく、残党を処分したら次は本丸だ。
     頼んだぞ』

(’e’)「任されよう」

256名無しさん:2022/05/17(火) 20:06:17 ID:EzOowemM0
こちらが本気を演じ、哀れにも陸軍兵士がそれに応じて全滅したというのは、あまりにも滑稽だった。
複雑に入り組む形をあえて取らせていた町がこちらの戦力を相手に錯覚させ、結果として一網打尽にすることが出来た。
町の外に待機している砲兵部隊と戦車隊が滅びるのは時間の問題だ。
積み重ねていた準備と作戦が、一つずつ消化されていく。

結局、世界最強に名を連ねるジュスティアでさえも、ジョーンズの予想を裏切りはしなかった。

(’e’)「焼夷弾を装填しておけ。
   次はジュスティアに撃ち込むぞ」

しかし。
ジョーンズの計算は完璧ではなかった。
人間とは常に予想外の動きをするものであり、そして何より、ジョーンズが計算に入れていない要素を持つのが人間なのだった。

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同日 同時刻

通信障害に気づいたのは、クックルだった。
味方にいくら話しかけても通じず、ジョーンズにもつながらない。
ジュスティアの砲兵隊が妨害電波を使用しているのだとしたら、少し遅すぎる。
何か意味のある通信障害であると考えた時、背後の瓦礫がゆっくりと持ち上がった。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『……驚いた、まだ生きていたのか』

恐らく、ジュスティアで最も爆破に慣れている人間を前に、ミルナは冷静に分析をした。

〔 【≡|≡】〕『体に仕込んでいた榴弾が、爆発反応装甲の役割を果たしたらしいな』

そこに立ち上がっていたのは、装甲の大部分が炭化したユリシーズだった。
機敏さはなく、まるで各関節が錆びついているかのように、動きに繊細さはない。
気化爆弾の爆風に耐えるために、己の持つ爆薬を使って防御に使った機敏さは流石だ。
陸軍史上最も死地に立った回数が多いと言われるだけあり、彼が正当な評価を受けていることは間違いないだろう。

〔 <::::日::>〕『行かせるか!!』

257名無しさん:2022/05/17(火) 20:06:39 ID:EzOowemM0
〔 【≡|≡】〕『その体で止めるつもりか?
       せっかく拾った命だ、祈る時間ぐらいはくれてやるよ』

〔 <::::日::>〕『はっ、そいつはいいな。
       お前らの魂とやらが地獄に行くことを祈ってやる』

強がりを言っているが、棺桶の要であるバッテリーも損傷を受けていることは間違いない。
装甲を取り外さなければ、文字通りの棺桶と化し、誰かに救助されるまでそのままになる。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『減らず口はそこまでだ』

エクスペンダブルズの両腕にある爪を一つに束ね、クックルは容赦なくその両腕を振るってオワタを切り裂く。
胴体が二分された棺桶が地に伏す姿を、その場にいた誰もが幻視した。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『……ちっ』

だが、その一撃は寸前で防がれた。
クックルの懐に入り込んだ棺桶によって両腕が空に向けられ、無駄撃ちをすることになったのだ。
バッテリーが排莢されなければ次の攻撃が出来ない。
目の前にいる小柄な棺桶は、的確にこちらの腕を掴み、排莢作業を防いでいる。

似`゚益゚似

棺桶の性能に頼らず、己の四肢を鍛え抜き、そして武術を極めた人間の動き。
驚くほど真っすぐな肉弾戦を仕掛けてくるタイプだと一目で分かったが、それ故に、クックルは身動きが取れない。

〔 【≡|≡】〕『気をつけろ、そいつは円卓十二騎士の“番犬”だ』

[,.゚゚::|::゚゚.,]『分かってる!!』

クックルの攻撃を防いでいた棺桶が一瞬で深々とその場に屈みこみ、後ろ回し蹴りを膝関節に向けて放った。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『くそっ!!』

辛うじて避けつつ、両腕からバッテリーを排莢する。
それと同時に鉤爪を展開し、近接戦に備えた。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『名乗るんなら今の内だ』

クックルのその声に対し、“番犬”ダニー・エクストプラズマンは返答しなかった。

似`゚益゚似

無言のまま、その拳を握り固める。
どこまでも武人。
しかし、その真っすぐな気持ちは戦場では命取りになる。
全身が高周波振動兵器である“ダニー・ザ・ドッグ”に対抗できる棺桶がこちらにはいるのだ。

〔 【≡|≡】〕『俺がそいつを抑える。
       その間に殺せ』

258名無しさん:2022/05/17(火) 20:07:04 ID:EzOowemM0
[,.゚゚::|::゚゚.,]『あぁ、そうする』

ジュスティア最高戦力の一人とこうして戦えるのは、元イルトリア軍人としてはこの上のない喜びだった。
時代錯誤な称号を与えられて喜んでいる様な人間を暴力で組み伏せることの楽しみ。
これは、持つ者にしか分からない優越感だ。
力が全てを支配できるというこの世界のルールに則った、いわば許容された暴力の正しい使い方だ。

似`゚益゚似

武術など、優れた兵器の前には無力なのだ。
いくら拳を鍛え上げ、拳足を刃の様に武器化したところで、銃弾一発で人は死ぬ。
兵器の使用に長けていることの方が、肉体の研鑽よりも遥かに意味がある。

〔 【≡|≡】〕『悪く思うなよ』

全身の装甲が花弁のように広がり、制圧の構えを取る。

似`゚益゚似『……哀れな』

ようやく放った一言は、憐みの言葉だった。
それは所詮、騎士としての一言。
矜持の鎧を心にまとった人間の言葉など、響きはしない。
マン・オブ・スティールの巨躯が一気にダニー・ザ・ドッグに向かって疾駆した。

展開した装甲でダニー・ザ・ドッグを包むようにしてやれば、活路は前か後ろだけに絞られる。
物理的に捕まえた後は、エクスペンダブルズのレーザーで首を切れば終わりだ。
この上なく分かりやすい作戦に、だがしかし、円卓十二騎士の男は正面から迎え撃つ形で駆けだした。
見た目には勇ましいが、結局のところ、自ら掴まりに行くだけの行為だ。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『耄碌したか』

そう、思った。
そう思ったからこそ、そう口にした。
だが。
だが――

〔 【≡|≡】〕『ぬうっ?!』

捕まえようと伸ばした両腕が内側から払い除けられ、胸部に拳が押し当てられる。
身長の差は歴然だったが。
頭三つ分はマン・オブ・スティールの方が高く、拳は垂直ではなく斜め上を向いていた。
それを辛うじて目視した次の刹那、マン・オブ・スティールの巨体が宙を舞った。

似`゚益゚似『イルトリア軍人だと思って少しは期待していたが、兵器の力を己の力と過信した類の間抜けとはな』

[,.゚゚::|::゚゚.,]『しっ……!!』

両腕の合計8本の爪の先端からレーザーが放たれ、ダニー・ザ・ドッグを八方から襲う。
高熱で物質を焼き切るこの攻撃は、高周波振動で防げるようなものではない。
サイコロステーキのようにバラバラに切り裂かれる姿を想像したが、それは一瞬で打ち砕かれた。

259名無しさん:2022/05/17(火) 20:07:27 ID:EzOowemM0
似`゚益゚似『その攻撃の報告は受けている』

全身が振動したかと思うと、レーザー光が装甲の表面で霧散し、淡い光がダニー・ザ・ドッグの周囲を照らす。
驚く間もなく距離を詰められると、拳が腹部に押し当てられ、馬鹿げた衝撃が内側にまで貫通してきた。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『うがっ?!』

高周波振動による打撃。
その本質は破壊力の向上だが、装甲を貫通しての一撃は聞いたことがなかった。
内蔵に重い一撃を食らったクックルは呼吸を乱し、その場に膝を突く。
棺桶の体格差、重量を無視したような打撃は体だけでなく、心にも傷を負わせた。

似`゚益゚似『装甲の頑丈さ、レーザーの破壊力。
      そんなもの、誰が使っても同じだ。
      で、ある以上はそれを使う人間の技量に帰結する』

言葉を置き去りに、ダニー・ザ・ドッグの姿がクックルの視界から消失する。
培った戦闘本能に従い、視線を上方に向ける。
飛び蹴りを放つ仕草を、ただ茫然と見つめるしかなく、防御行動に入る前に胸部に強烈な打撃。
重量級のエクスペンダブルズが呆気なく蹴り飛ばされ、瓦礫の山に背中から激突する。

〔 【≡|≡】〕『なめるなよ、犬の分際で!!』

ミルナの怒号と重なった突進。
その一撃は戦車すら横転させ得る砲弾並みの威力を秘めた物だったが、ダニー・ザ・ドッグは回避行動にすら移ろうとしなかった。
左腕をただ静かに、舞うような優雅ささえ感じさせる動きで空に向けて払う。
直後、マン・オブ・スティールは宙を舞い、優に10メートル離れた瓦礫に突っ込んだ。

似`゚益゚似『……』

クックルは否が応でも思い出さざるを得なかった。
ジュスティアが誇る最高戦力の12人。
その実力はイルトリア二将軍にも匹敵すると言われ、与えられた称号に決して恥じない者で構成されていると。
以前相対した“左の大槌”は生身でこちらを圧倒したが、目の前にいる男の力は間違いなくそれに迫るものだ。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『ジョルジュ!! どこにいる?!
     こっちに来て援護しろ!!』

二人で分が悪いなら、三人がかりで対応するしかない。
しかし、その声に答えたのは切羽詰まった様子のジョルジュ・マグナーニの声だった。
  _
(;゚∀゚)『駄目だ!! 今こっちも戦闘中だ!!』

無線機の向こうからは銃声だけでなく、爆発音がいくつも重なって聞こえてきている。
ジョルジュがこれほどまでに慌てた様子を見せているのは、これまでに初めてのことだった。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『何?!』

260名無しさん:2022/05/17(火) 20:07:56 ID:EzOowemM0
回り込まれるような愚策はしていなかったはずだ。
ジュスティア陸軍が移動したのであれば、その連絡が入り、即応している。
つまり、相手は軍隊ではなく個人。
個人で軍隊を相手にするということは必然――
  _
(;゚∀゚)『円卓十二騎士だ!! それも、レジェンドセブンの!!
    くっそ、さっさと……!!』

[,.゚゚::|::゚゚.,]『たった二人の援軍で、俺たちを止めるつもりなのか?』

追加の砲撃支援を要請しようにも、今は味方も巻き込みかねない状況だ。
それに、まだジュスティア陸軍には残党の砲兵隊がいる。
この見晴らしがよくなった状況であれば、さぞや狙い撃ちやすくなることだろう。
入り込ませた細胞は5人。

その5人がどう動くのかは、こちらでは指示が出来ない。
彼が行うのは精確な座標を小型端末を使用して伝えることであり、基本としては怪しまれないよう、陸軍として動いてもらうことになっている。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『なめられたものだな、流石に!!』

新たなバッテリーを装填し、クックルは呼吸を整えた。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『本気でやれそうだ、久しぶりに!!』

左右八本の爪を展開。
レーザー攻撃が対策されているのならば、肉弾戦だ。
技術をねじ伏せる膂力を見せれば、こちらが負ける道理はない。

〔 【≡|≡】〕『あぁ、騎士を相手にできるなんて、願ってもみなかった!!』

そうだ。
この時を願っていたのだ。
イルトリア軍人として生きていた時も、除隊してからも。
胸の中に生まれるざわめきだけは、どうしても消えなかった。

長年にわたって積み重ねられてきた戦闘衝動はやがて夢となり、願いとなり、そして実現すべき目標と化した。
強者のための世界の実現。
それこそが、二人がティンバーランドに参加する理由だった。

似`゚益゚似『……そうか。
      ぬんっ!!』

気合を込めた一声が響いたかと思うと、いつの間にか傍に立っていたオワタの棺桶の装甲が左右に分かれて落ちた。
恐ろしく速い手刀。
クックルでなければ見逃していただろう。

\(^o^)/「ふぅ……!!
      モナーじいさんと殺りあった時以来だ、ここまで追い詰められたのは」

似`゚益゚似『まだ動けますか?』

261名無しさん:2022/05/17(火) 20:08:24 ID:EzOowemM0
\(^o^)/「あぁ、勿論だ」

似`゚益゚似『では、この場はひとまず私が。
      ジュスティアに戻り、陸軍への指示を継続してください』

傷で歪んだ顔を更に歪ませ、不承不承、オワタは頷いた。

\(^o^)/「……ここは頼んだ」

[,.゚゚::|::゚゚.,]『大将を逃がすと思うか、しかも生身の』

〔 【≡|≡】〕『石で殺してやろう。
       部下と同じように、な!!』

生身の人間であれば石を投擲してやるだけで殺せる。
ミルナが拳大の瓦礫をオワタの後頭部目掛け、目にも止まらぬ速度で投げる。
それをエクストプラズマンが投げた石で撃ち落とした。
拳をゆっくりと前に出し、言った。



似`゚益゚似『駄目だ。 お前たちには、もう何も奪わせない』



――その堂々たる佇まいは、正に騎士そのものだった。


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          ̄ 三ニ=--‐='ヽ==/iiト       |ii|''     Y\/////Y        r=イ//イ/,三ニラ
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第八章 【 Ammo for Rebalance part5 -世界を変える銃弾 part5-】 了

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262名無しさん:2022/05/17(火) 20:08:46 ID:EzOowemM0
これにて今回の投下はお終いです
質問、指摘、感想等あれば幸いです

263名無しさん:2022/05/17(火) 22:16:03 ID:lceAJZGQ0
乙!!
見どころ満載の回だな
武人として戦うエクストがまじでかっこいい

264名無しさん:2022/05/18(水) 10:42:52 ID:uVs8SH1.0
おつです

265名無しさん:2022/05/18(水) 20:12:27 ID:Hc41LLqY0
乙!
ワカッテマスあんた最高だよwww
ティンバーランド組じゃショボンが一番好きだなぁ
後、"恐ろしく速い手刀。クックルでなければ見逃していただろう。"
シリアスなシーンにネタ仕込むんじゃないよ笑っちゃったじゃないのさww

>>239
事前情報"殿"すり合わせも終わっている。

事前情報"との"だね

>>240
軍用第三世代強化外骨格と比較すると大人しい"平気"だが

ここは"兵器"だね

>>259
"内蔵"に重い一撃を食らった

体の一部だから"内臓"の方だね

266名無しさん:2022/05/18(水) 20:55:57 ID:uUQ4ePYg0
>>265
ネタに気づいてもらえて幸いです!

そして今回もまた変換ミスがあぁぁぁぁ!!
ご指摘ありがとうございます!!

267名無しさん:2022/05/19(木) 20:52:12 ID:6ty1OAqw0
おつ
兵器とか身体能力とかのゴリ押しばかりのところに武道が入るの熱いな

268名無しさん:2022/05/20(金) 17:08:41 ID:yUCF7m4I0
おつ!

269名無しさん:2022/05/20(金) 21:30:36 ID:o56gcreo0

なんで大将が最前線に出張ってきてんだ…?

270名無しさん:2022/05/21(土) 06:06:45 ID:0bUMUqo.0
>>269
>>250にちょっとだけ書いてあるのですが、
『指揮官が最前線で戦わなければならないという彼の信念』のため、大将なのに最前線にいる次第です。

271名無しさん:2022/05/23(月) 21:42:55 ID:1ylXCPwg0
乙乙
ダニーに勝って欲しいけどどうなるかね

272名無しさん:2022/07/10(日) 20:14:10 ID:C6.mBjdg0
来週の日曜日VIPでお会いしましょう

273名無しさん:2022/07/10(日) 20:31:50 ID:TGQySG7I0
2ヶ月ぶり!楽しみ!

274名無しさん:2022/07/17(日) 09:03:41 ID:FeHM4xO.0
今日だな
待ってる

275名無しさん:2022/07/18(月) 07:39:03 ID:C7JjIM2M0
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原初より人と十字は常に共に在り。
視線を巡らせれば、必ずや視界に入ることだろう。
即ちそれは神の分身。
我ら、常に神と共に在り。

故に我ら、死地に赴くも恐れることなし。
例え命を落とそうとも、我らの傍に神は在り。
我らの心に刻まれた十字が、必ずや神の元へと導くことだろう。

                                   ――十字教聖書 序章 より抜粋

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September 25th AM08:12

――世界が誕生した時、最初に光があった。
十字教の使用する聖書はこのように書き始められている。
彼らにとって信仰の対象は存在の疑わしい不実在の概念的な物ではなく、十字そのものにあった。
机、椅子、家屋、ナイフ、果ては衣類を代表するように人の生活には常に十字があったことがその起源である。

十字教聖書によれば十字は盾であり剣であり人であり、そして神として定義されている。
同時に、十字教徒にとって人と人とが交わって作る交配の十字は神聖な行為として見なされていた。
それは男女、あるいは雌雄によってのみ作ることのできる十字。
決して同性で作ることが許される物ではなく、それを許容することは神の作った世界の仕組みに対する冒涜そのものだった。

故にこそ、十字教の人間達は同性愛者を嫌悪し、世界から滅ぼす必要があると考えていた。
穢れを取り除かなければ世界に広まり、不浄な十字が増えることになってしまう。
同性愛者は人間の言葉を口にするが、その実、彼らは悪魔に魂を売った外道なのだ。
“クルセイダー”の中でも信仰心が強く、異教徒を誰よりも多く屠ってきたグノール・クニスは戦車の銃座に腰かけ、目の前から迫ってくる敵を睨みつけていた。

常に最前線で戦うことを良しとし、最初に神の敵を殺すことを意識し続けている男の視線は険しさの中に嗜虐心の色が浮かんでいた。

Ie゚U゚eI「接敵までは?」

戦車のエンジン音とキャタピラの駆動音がうるさいため、怒鳴るような大声で足元の操縦士にそう声をかける。
ヘッドセットを付けていても、大してその恩恵を感じられない。

「間もなくです!!
……っ連中、散開してます!!」

Ie゚U゚eI「絶対に逃がすなよ!!
     各位、これは聖戦だ!!
     一人も逃がすな!!」

276名無しさん:2022/07/18(月) 07:39:28 ID:C7JjIM2M0
グノールは背後を振り返り、怒鳴るように命令した。
先頭を走る数十台の戦車の背後には、土煙を上げながら追走する数千の兵士がいる。
この戦いの為に用意されたレリジョン・シリーズの棺桶を纏った聖戦士達。
これだけの数を復元するためには、内藤財団の力が必要不可欠だった。

彼らは十字教に多額の支援をし、技術と兵器の提供もしてくれた。
世界中から集めた十字教徒たちがこうして一堂に会し、怨敵を屠る機会を得られたのも彼らのおかげだ。

Ie゚U゚eI「数も質もこちらが有利だ!!
     逃げる者も命乞いする者も、全て等しく忌々しい人の道を外れた外道だ!!
     神の威光をここに示せ!!」

その言葉が、戦闘の火蓋を切って落とすことになった。
クルセイダーが用意した棺桶は全部で5種類。
その内4種類が、細かな武装が異なる同型機だ。
第三次世界大戦時にも十字教が使用していた、“アポストル”と呼ばれるBクラスの棺桶。

装飾品や調度品としての使われ方が多いレリジョン・シリーズの棺桶だが、アポストルは戦闘に特化して設計された戦闘用の棺桶だ。
銀色の装甲は三重の装甲版で構成され、高周波振動を用いる兵器に対しても絶対ではないが高い防御力を誇る。
それでいて装甲は薄手で、追加装備が容易に接続できるように洗練された造形をしている。
頭部を覆うヘルメットは円と流線型を主に使用しており、銃弾を受け流しやすい設計をしていた。

一瞥すれば甲冑そのものだが、観察すれば近代兵器の造形なのは間違いない。
その設計は信者にいた兵器設計者が行ったため、実用性は信頼できるものだ。
多才な戦場に対応できるよう、装備を変えるだけでなく細かな調節を同型機に行うことでジョン・ドゥなどの汎用型のそれとは一線を画すことができた。
基本形のアポストルを使用し、4種の棺桶が作り出された。

(||[╋]||)

近接戦に特化したアポストル・マルコ。
中距離支援に特化したアポストル・マタイ。
遠距離攻撃を得意とするアポストル・ルカ。
そして、防御による支援を行うアポストル・ヨハネ。

この4機を1班とし、更に世界に点在する教会中から集めたデヴォティーが随伴している。
戦場となったのが荒野だったのは神の采配だと言わざるを得ない。
あらゆる戦況下で対応が出来る棺桶が一丸となって対応できる場所は、正に、この荒野を置いて他にないのだ。
猛烈な速度で戦車隊の横を、その4種の棺桶たちが通り過ぎていく。

『敵、後退していきます』

すぐに届いたその報告に、若干の苛立ちを覚えながら答える。

Ie゚U゚eI「だったら追え!!」

圧倒的な数を前にすれば、どれだけ崇高な目的を掲げていたとしても現実がその心を折ってくれる。
戦力差を見て撤退の判断をしたのは賢明だが、すでに手遅れだ。

277名無しさん:2022/07/18(月) 07:39:48 ID:C7JjIM2M0
『そ、それが!!
連中、逃げる方向がバラバラで!!
対赤外線センサーのスモークを炊いているので、向かう場所が分かりません!!』

Ie゚U゚eI「ちっ、それぐらい……!!」

――神がこの世に姿を現し、信者たちを救うために舞台を整えたとしても。
決して手出しできない領域がある。
それは、人間の根底にある愚かさだ。
戦闘経験の浅い人間が武器を手にしたところで、結局こちらの戦力の大半を占めるのは素人の集団。

手痛い所を突かれてしまった。

『ど、どうすれば?!』

侵略行為に対して何度も立ち向かい、迎撃してきた人間達とは覚悟も何もかもが違う。
少人数だからこそ考え、身につけ、そして生き延びてきた経験は誰かに与えられるものではない。
彼らが煙幕によって姿をくらまし、数の不利を補うための戦い方を選んだ理由を素人のクルセイダーが考えることなど出来ない。
正義感を胸に暴力に酔い痴れた人間達に出来るのは、頭の悪い犬のように影を追いかけるだけだ。

煙幕が有効であると判断したのか、続々と視線の先で煙が発生している。
最早、こうなってしまえば煙がなくなるまでは混乱が収まることはない。
無線機から聞こえてくる声は無視し、状況が凪ぐことをひたすらに待つ。
戦車で突撃したところで、煙幕に紛れた対戦車地雷を踏めばそこまで。

Ie゚U゚eI「戦車隊は待機。 砲撃もするな」

今戦車隊に出来るのは砲撃による支援だが、味方に当たらないようにするのは不可能だ。
故に、待つだけしか出来ない。
気が狂いそうになるほど長く感じた時間が過ぎ、ようやく朗報が耳に入ってきたのは10分が経過してのこと。

『煙幕が切れてきました!!
交戦開始しまっ……ああ!?』

Ie゚U゚eI「どうした!!」

狼狽した味方の声に、怒鳴る様に答える。

『て、敵が……!! ああ、あり得ない!!』

Ie゚U゚eI「報告は正確にしろ!!」

『よ、4人しかいません……!!』

戦力差は数百倍。
しかし。
そこにいる4人は道理の通らない世の中に、あえて道理を通そうとする人間達。
胸に秘めた覚悟がその戦場にいる誰よりも強く、そして――

278名無しさん:2022/07/18(月) 07:40:08 ID:C7JjIM2M0
( 【ΞVΞ】)『覚悟があるなら来なよ。
       俺達は聖職者でもかまわないで殺っちまう男だぜ』

――何よりも厄介な戦力であることは、明白だった。

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同日 AM08:35

“Aチーム”。
それは、完璧を目指して設計された棺桶だった。
コンセプト・シリーズでありながら、“4機揃って初めて性能が発揮される”ことを前提とした設計は他に類を見ない。
開発当時、出された条件は『独立して戦闘が可能で尚且つあらゆる局面に対応が可能』という無理難題だったが、設計者の機転によってそれは実現した。

単独での戦闘ではなく、性能の異なる同型機が一つとなって戦うことで、全局面に対応可能な棺桶を作り出したのである。
完全独立型相互データ共有システムは音声のみならず、それぞれが手に入れた様々な情報を共有することで比類のない連携を可能にした。
データ中継用のポールを要所に設置すれば、極めて広範囲での情報共有も可能だった。
この棺桶が発掘された時、その損傷具合は素人目に見ても復元は不可能な物に思われた。

しかし、ストーンウォールには世界中から集まった人間がおり、その中にはラヴニカからの技術者も大勢いた。
彼らは街を守る要石としてその棺桶が役立つことをいち早く見抜き、数に対抗するための質を確保するため、街の収入の多くがその復元作業に投じられた。
技術者たちの手によって4機は復元され、備わっていたデータ共有システムは無傷のまま使用することが出来た。
求められていたのは重装甲、高火力、高機動の全てをこなせるオールラウンダーだったが、高機動だけは元の設計でも切り捨てられたものだった。

ラヴニカの技術者はこのままでは要石としての役割を果たすのは不十分であると考え、苦肉の策を生み出すことによってそれを攻略した。
それは高火力との併用だった。
主兵装である砲を使って加速、跳躍を可能にするという狂気の発想。
圧縮空気を使っての飛翔についてはラスト・エアベンダーが実用化させており、その技術を転用すればその発想は現実のものとなる。

両肩、両腕の大口径滑腔砲を改造し、火薬ではなく圧縮空気によって砲弾を射出させるという形を取った。
そして、その圧縮空気を任意の方向に噴出させることで一時的な加速力と跳躍を可能にさせた。
その代償は大きかった。
両腕は従来の折り畳み式の砲身から一転し、より軽量な砲身の短い物へと変更した。

279名無しさん:2022/07/18(月) 07:40:30 ID:C7JjIM2M0
腕そのものを砲に変えることになったため、ライフルなどの装備を使用できない、細かな作業が出来ないという大きなハンデを背負うことになった。
それを補うため、技術者たちは更なる改造を施した。
滑腔砲であることを生かし、砲身に入る岩や瓦礫でも射出できるように大きな改造が行われた。
それによって戦闘時にバッテリーを大量に消費することを懸念し、両腕と背中の滑腔砲には独立したバッテリーを採用した。

合計で5つのバッテリーを搭載し、それらは分厚い装甲の下に隠された。
棺桶同士の戦闘の概念を変え得るその機能は、事実、四方を埋め尽くすクルセイダーを相手にしても圧倒的だった。
アベ・サンタマリア率いるA班が相手にするのは数百倍の数だが、一度の戦闘で相手にするのを四人に限定することが出来れば問題はない。
意図的に接近し、四方向に注意しながら戦えば数の不利を補える。

( 【ΞVΞ】)『デヴォティーにだけ注意しろ!!』

デヴォティーの主兵装である火炎放射兵装は味方をも巻き込みかねない兵装であるため、こちらが近接戦をする限り使われる可能性は低くなる。
十字教の教えでは味方殺しは大罪という特性を利用した戦法は、てき面だった。
圧縮空気を利用した三次元的な戦い方はジュスティア軍人はおろか、イルトリア軍人でさえ経験がほとんどない物だ。
空を舞うことのできる量産型の棺桶は現代においてラスト・エアベンダーのみであり、それはほとんど戦場に姿を見せないという稀有さがあった。

日々戦場にいる人間ならばまだしも、そうでない素人にとって立体的戦闘は異次元のそれだ。
攻撃の手段を有していながらも、その有効的な使い方が思い浮かばない。
仮にその戦い方を指示されたとしても、実行に移せる人間はその場にわずかしかいなかった。

(||[╋]||)『くっ、こいつら!!』

狼狽する人間に向けて次々と滑腔砲を放ち、吹き飛ばしていく。
短い砲身が可能にする近接戦によって、アポストルたちは成す術なく文字通り吹き飛ぶ。

(||[╋]||)『援護を!! 狙撃部隊は何やってるんだ?!』

銃弾はすぐに味方同士の撃ち合いになるため、クルセイダーにできるのは白兵戦だけだ。
相手が苦手としている接近戦に持ち込む際に、圧縮空気による高速移動は極めて高い効果を発揮した。
戦闘の素人は接近戦に持ち込まれると正常な判断力を失う。
その結果、面白いほどに棺桶が宙を舞い、地面に叩きつけられる光景が広がっていた。

遠距離狙撃と火炎放射にさえ気をつければ、アベ達の目的が達成されるのは間違いない。
唯一警戒すべき遠距離からの一撃は、周囲の物陰に配置されたアンテナと観測手によって警告音に変換され、回避が可能となる。

( 【ΞVΞ】)『どうってことないね、当たらなければさ!!』

クルセイダー達にとって、この開けた戦場は極めて不自由に感じることだろう。
起伏が少ない場所であるが故に、銃を持つ人間は満足に優位な位置からの射撃が出来ない。
少し頭を使えば少人数で遠距離からの攻撃を考えつくものだが、Aチームの加速力がその発想を根底から否定する。
それでいて、Aチームにとっては砲弾になる物がいくらでも転がっている場所だった。

装甲があるとはいえ、纏っているのは人間だ。
飛来する岩石や味方のパーツから顔を守り損ねると、たちまち脳震盪を起こしてしまう。
首が繋がっているだけでも防御力に感謝しなければならない次元なのだが、素人には棺桶の性能不足に感じることだろう。
至近距離で食らえば重量のある棺桶でさえ、簡単に宙を舞う。

アポストルの性能は正しく使えばジョン・ドゥをも上回るものだが、使う人間次第ではただの防弾着程度に成り下がる。
激しい戦闘中にも関わらず、アベは無線を使い、味方との通話を継続していた。

280名無しさん:2022/07/18(月) 07:40:50 ID:C7JjIM2M0
( 【ΞVΞ】)『ハンニバル、相手の動きはどうだ?』

同じA班のハンニバル・スミスから返ってきたのは、どこか楽しそうな声だった。

( 【ΞVΞ】)『面白いぐらいこっちの予想通りだ。
       ただ、狙撃手がそろそろ面倒になってきたな』

被せるようにして、アーサー・マードックが続く。

( 【ΞVΞ】)『こっちの人数に気づいたからね。
        デヴォティーだけ残してストーンウォールに向かうみたいだ。
        少し予定よりも遅いぐらいだ』

( 【ΞVΞ】)『せめてデヴォティーを何体か壊しておこう。
        燃料タンクを壊せばあっという間だ』

コング・バラカスの提案はもっともだった。
クルセイダーの中で最も注意しなければならないのは、やはり、火炎放射器の存在だ。
粘性が高く、装甲に着いたら簡単には消えることのない炎は、街を地図上から消すのにも極めて有効な物。
街を守る人間達の負担を減らすことを考えれば、デヴォティーの数は少なければ少ないほどいい。

デヴォティー最大の弱点は背負った燃料タンクそのものにある。
黄金を燃やす、と比喩される兵器である火炎放射器を使用する棺桶でありながら、燃料タンクは排熱の関係でその装甲に穴がある。
そこを狙えば一撃で破壊することが出来る。

( 【ΞVΞ】)『アベ、連中が残しているのは腕利きの奴らだ。
        さっきまでとは攻め方が違う!!』

冷静さに定評のあるハンニバルの言葉は、その場に残る人間に強い警戒心を植え付けた。
彼はこれまでに幾度となく死線を越え、不可能とも言える防衛線を可能にしてきた歴戦の猛者だ。
十字教がこれまで栄えてきた背景を考えると、汚れ仕事を請け負ってきた人間がいても不思議ではない。
ならば、多少の苦戦は仕方がない。

それは織り込み済みだ。
しかし、可能であれば ま だ 苦 戦 を 演 じ 続 け る 必 要 が あ る。

( 【ΞVΞ】)『誰も欠けずにこの場を切り抜けるぞ!!』

アベ達に必要なのは時間だった。
いつの時代も、時間があれば大抵のことは解決できる。
圧倒的な数の差とは、数字上の差でしかない。
それを補うだけの策があれば、その数字は意味がない。

策は質に勝り、質は数に勝る。
策と質、その二つを両立させることが出来るのがストーンウォールのA班なのだ。

( 【ΞVΞ】)『さぁて、もうひと踏ん張りだ!!』

今は、可能な限り相手の主戦力をこの場に釘付けにし、時間を稼ぐことが重要なのであった。

281名無しさん:2022/07/18(月) 07:41:10 ID:C7JjIM2M0
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同日 AM08:45

ティンバーランド、あるいは内藤財団からの申し出を暴力によって拒絶したラヴニカでは、史上最大の戦闘が起きていた。
街は二つの勢力が入り混じった状態から戦闘を開始し、その影響はほんの一分続くだけでも世界経済に多大な打撃を与えるほどだった。
少なくとも戦闘が終わるまでは街中の工場が停止し、ラヴニカを出入りする車輌が停止したことによって物流も止まらざるを得ないためだ。
それでも、ラヴニカの人間達が戦うことを選んだこの内戦は後に“灯内戦”と呼ばれることになる。

それは世界で最新かつ最も希少な棺桶が大量に投入された、経済的にも世界最大の内戦だった。

<=ΘwΘ=>『チップを持っている奴を探せ!!
       ビプロマイヤー・ニューリか、裏切り者のモーガン・コーラだ!!
       とにかく探せ!!』

街中に展開する軽量の棺桶、“ハムナプトラ”が街を飛び回る。
屋根の上を走り、路地を走り、時には壁に足を突き立てて走る姿は異様と形容するのが相応しいだろう。
だが混戦状態の街の空気に飲まれないよう、効率だけを重視した動きだ。
それは影を生きてきた者ならではの動きであり、棺桶の特性を生かした戦い方を知る者の動きでもあった。

目的は一つ。
ビプロマイヤーが復元に成功した高性能な誘導チップの試作品の奪取である。
それがあれば今後、世界のバランスを保ち続けるために大いに役立つ。
シナー・クラークスが率いる私兵部隊“テラコッタ”はその連絡を受け、チップを手に入れるべく街の戦闘には関わらないように動いていた。

だがそれは、決して順調ではなかった。

282名無しさん:2022/07/18(月) 07:41:30 ID:C7JjIM2M0
([∴-〓-]『行かせるかよ!!』

ラヴニカの人間達はハムナプトラを見つけ次第、容赦なく撃ってきた。
戦闘が始まってから十分ほどしか経過していない中、シナーたちが相手にしている人間達の持つ情報は正確だった。
その上、準備が万端。
まるでこうなることが分かっていたかのようであり、苦戦は必至だった。

量産機であるはずのソルダットでさえその動きはコンセプト・シリーズを思わせるほどに機敏で、武装が充実している。
市場に流れるカスタム用のパーツをふんだんに取り入れた機体は、名持ちの棺桶と同等の力を有していた。
しかし、厄介なのはそれだけではなかった。

〔欒゚[::|::]゚〕『くそっ、通信がノイズだらけで聞こえない!!』

通信妨害が酷く、味方の連携が行えないのだ。
直接会っての会話だけでしか彼らは意思の疎通が出来ず、遠方に向けての伝達はハンドサインを使うか、昔ながらの伝令係を立てるしかない。
対してラヴニカの反乱分子たちは何らかの手段で通信を取り合い、連携しながら戦況を有利に運んでいる。

( `ハ´)「腹立たしいアルね」

万全の状態ではない上に、土壇場で期待を裏切られたのは手痛い展開だ。
だがしかしシナーは銃弾と怒号の飛び交うラヴニカの街を、まるで散歩するかのように優雅に眺めながら歩いていた。
彼の周囲にはハムナプトラが10機以上待機し、全方位に対して警戒をしている。
その手が持つM60機関銃の銃爪には指が添えられ、いつでも発砲が可能な状態になっている。

前後左右を囲む四機は対戦車砲でも貫通させることが出来ない盾を構え、彼らの主を守っていた。
そして、その集団から離れた前後にはジョン・ドゥが二機ずつ位置し、露払いと殿の役割を担っている。
腕利きの人間が担当しているだけあって、襲撃に対して難なく対応している。
ただし、チップの行方が分からない以上、余裕があるわけではない。

少なくともモーガンかビプロマイヤーを確保し、情報を吐き出させなければならない。
誘導チップは手のひらに収まる程の大きさであり、どこかに隠されてしまえば、このラヴニカの広い街の中から探すのは至難の業だ。
隠されているならばまだしも、破壊されてしまえば取り返しがつかなくなる。

<=ΘwΘ=>『シナー大兄、そろそろ棺桶を装着してください。
       前方から戦闘音がします』

( `ハ´)「私は大丈夫アル。
     お前たちが護るから、それは必要ないアル」

<=ΘwΘ=>『ですが、万全の状態ではないのですから』

ジュスティアで受けた激しい尋問の影響は、シナーの体に深い傷を残している。
両膝の火傷は未だに完治しておらず、走るだけで激痛が走る。
本来であれば走って追いかけたいが、それが出来ないためにこうして歩くしかない。

( `ハ´)「いいから、チップを手に入れるアル」

283名無しさん:2022/07/18(月) 07:41:50 ID:C7JjIM2M0
シナーの私兵部隊“テラコッタ”の最大の強みはその数にある。
街中に散らばってもなお余りあるその兵力は、実に8000。
訓練と実戦を経て鍛え上げられたその部隊は、シナーがティンバーランドに参加する前から目をかけていた人間達で構成されている。
ティンバーランド内でこうした私兵部隊を持っているのは、シナーとキュート・ウルヴァリンだけだ。

だが大規模な部隊であったとしても、今のラヴニカではあまり有利に働いていない。
強みである通信による連携が絶たれた以上は、古典的な人海戦術で攻めるしかない。
地の利は相手にある。
弱小ギルドがいくつかこちら側についてはいるが、恐らく、早々に全滅していることだろう。

ラヴニカは街を守る為に徹底して戦っている。
殺されたはずのギルドマスターたちが生きていたということは、今日という日に備えて何かしらの準備をしていたと考えるのが普通だ。
ゲリラ戦を挑まれると、時間の経過と共にこちらが不利になるのは明白だ。
短期決戦が出来なければ、チップの入手は不可能。

( `ハ´)「……」

しかし。
正直なところ、シナーはチップについて諦めていた。
彼らがそれを持ち去るだけならばまだ手に入るという可能性が残るが、破壊されるという選択が下される可能性の方が高い。
今の段階でこうして追っているのは、壊されたという明白な証拠がないからに過ぎない。

こうしてラヴニカが蜂起したことは、組織にとっては著しくマイナスだ。
騒動の鎮圧化が最優先となるが可能性がゼロというわけではないのが惜しい所だ。

( `ハ´)「2000を動かして、相手の指揮官を殺すアル。
     それと、今すぐ街中に伝えられる放送手段を手に入れて、チップを渡さなければ街を焼き払うと放送するアル。
     放送からきっかり30分後、街を燃やすアル」

家があれば敗北したとしても生きていく希望を持てるが、帰るべき場所を奪われれば、それだけで街の復興は遅れる。
嫌がらせとしては十分だ。
復興が遅れれば、周囲にいる他の街に飲み込まれるのはあまりにも簡単なのだから。

<=ΘwΘ=>『承知』

無論、ラヴニカを火の海にするのは最後の手段である。
この街の利用価値は極めて高いが、この世界から争いがなくなれば棺桶は必要なくなる。
優れた職人と技術さえ確保できれば、街に用はない。
脅しではなく、シナーの命令は面倒を省くための手段でしかない。

手に入らないのであれば、そのどちらも燃やすに限る。
炎こそ、世界を変えてきた原初の力なのだ。
世界最大の組織を敵にした見せしめとして滅びるか。
それとも――

( `ハ´)「どうするか、見せてもらうアルよ」

――世界が一歩前進するための灯になるのか、それだけだ。

284名無しさん:2022/07/18(月) 07:42:11 ID:C7JjIM2M0
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TITI| ̄¨¨|ア ̄ ̄,∧ ̄/ \_ヽ /≧s。.,/ ̄/ ̄ \ \:.:./: _:_:_:_/\ \|_」」/
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ニァ´ィ |/|,ィi「 | ≧s。.,|_/ /:. :. :. :. :. :. :. :. :. ,::::::::::::::i|:.:.:.r‐ ¨_ -┘  セントラス
´| | | |/| | ┘    //:. :. :. :. :. :. :. :. :. :. ,:::::::::::::::i|:.:.:└:.:.¨:.:.:.:.:.:..
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同日 AM09:00

治安の良さ、豊富な種類の食事、心躍るような行事、そして美麗な景観。
これら全てを満たす街は、まず間違いなく優秀な観光地として繁栄することが約束されている。
しかし、その条件を満たしているセントラスを観光地として訪れる人間は、実のところあまり多くない。
街中に建ち並ぶ協会認定の飲食店、小売店、そして教会。

全てが同一の規格で建築されているため、街にある全ての建物がまるで一つの巨大な建造物であるかのように思わせる景観は世界屈指のものだ。
だが同時に、街を歩く教会関係者、あるいは熱心な十字教徒の人数は疑う余地もなく世界最大である。
十字教徒にとっては過ごしやすい街だが、その信仰の対象外である人間にとっては息の詰まる街だ。
決められた手順に従っての食事や、就寝前の行動の制限などはまだ可愛い物で、それを他者に親切心から強要するのが問題だった。

一度異教徒であること、もしくは無神論者であることが判明した場合は命の危険に晒されてしまう。
郷に入っては郷に従え、という言葉を無言の内に守らせる人間の気質。
そこにプライバシーというものはないが、悪意というものもない。
観光客や移住者にとっては居心地の悪い街であることが知れ渡り、それが事実であることはある意味で世界の常識でもあった。

「日々の糧に感謝します」

ナタリー・ブラウンはセントラスに住む敬虔な十字教徒であり、クルセイダーに所属する夫を持つ41歳のシスターだった。
遅めの朝食となったのは、それまで教会で夫の無事を祈り続けていたからであり、彼女の様な人間は街中にいた。
世界各地から集まったクルセイダー達は今、長年手をこまねいていたストーンウォールの異常者たちを駆逐すべく行動している。
今彼女たちにできるのは祈ることだけだ。

285名無しさん:2022/07/18(月) 07:42:33 ID:C7JjIM2M0
一人でも多くの敵を屠り。
一人でも多く生還する。
聖戦を無事に終えることが出来れば、この世界は神の望む理想郷に近づく。
焼いたパンとサラダ、そしてスープという質素な朝食は強い祈りを成就させるための習わしだ。

彼女がパンに手を伸ばした、正にその時。
時を告げるものとは別の鐘の音が街中に鳴り響いた。

「な、何?!」

それはまるで喚き散らす悲鳴のような、まるで法則性のない鐘の音。
反射的に家の外に飛び出すと、彼女と同じように家の外に出てきた隣人たちと鉢合わせる。
お互いに見合い、そして、誰ともなく街の外に視線を向ける。
――何かが来ている。

何かが見えているわけではない。
何かが聞こえているわけではない。
何かが匂っているわけでもない。
だが確かに、何かが迫っていることだけは分かる。

その感覚は、現代人から失われつつある動物的な直感ともいうべきものだった。
もしも緊張感に音があるのだとしたら、それは耳鳴りにも似た音に違いない。
頭の奥から響く甲高い音から逃れるように瞼を降ろし、何かをしなければと思う心が両手を胸の前で組ませる。
そして、自分たちの意思の遥か遠くにいると信じる存在に懇願するように膝を突く。

鐘の音が鳴り響く中、街中が祈りを捧げるという異常な光景。
彼らを現実の世界に引き戻したのは神の力ではなく、一声放送システムから響いた切羽詰まった声だった。

『い、今すぐ避難を!! 大聖堂に!! 避難してください!!
街の西側から、武装勢力が接近しています!!』

鐘の音がサイレンへと切り替わり、次いで、悲鳴と怒号が街に溢れ返った。
誰もが一目散に街の中心にある大聖堂“ノーザンライツ”へと走り出す。
十字教徒にとってそこは神聖不可侵の領域だったが、緊急時には街の中で最も安全な避難場所として開放される。
本来であれば内部に足を入れる前にいくつかの手順や手続きが必要だったが、それを実行しようとする律儀な人間はこの瞬間には不在だった。

だが、全員が大聖堂に向かうわけではなかった。
仮に武装勢力が接近しているとしても、神の膝元であるこのセントラスを侵略することは誰にも許されていない。
神の起こす奇跡を心の底から信じている人間は、決して慌てない。
日々の祈りを神が聞き届けているのだから、そもそも慌てる必要がないのだと信じている人間達だ。

ナタリーもまた、敬虔な十字教徒らしくその場に膝を突いて祈りを捧げていた。

「神よ、我々を守り給え……」

ある意味では、彼女の行動は仕方のない事だったと言えよう。
街を守る人間は皆、クルセイダーとしてストーンウォールに向かっており、防衛するための手段はほぼないと言ってもいい。
この状況下で出来るのは銃を持って戦うか、祈るか、それとも逃げるかしかない。
しかしいつの時代も、人を助けるのは神ではない――

286名無しさん:2022/07/18(月) 07:43:13 ID:C7JjIM2M0
( ・∀・)「楽できると思ったのですが、残念ですね」

大聖堂の屋上から、街に迫ってくる脅威を睨みつける者がいた。
かつては聖職者として己の道に迷う人間を導き、今はティンバーランドの一人として世界を導こうとする男。
マドラス・モララーは憂いを称えた目を細め、傍らで好戦的な視線を敵に向ける男に言葉を投げかけた。

<゚Д゚=>「やっと戦えるぜぇ!!」

それは正義の為に、世界のルールを変えると誓った男だった。
“CAL21号事件”をきっかけに世界の正義に疑いを持ち、この世界に正義をもたらそうと決意した男。
男はジュスティア警察で“毒蛇”と呼ばれる、ギコタイガー・オニツカ・コブレッティだった。

ジュスティア警察のはみ出し者だった男は、目前に迫ってきた悪に対しての敵意をむき出しにしている。
しかしその敵意は正義感の表れでもある。

( ・∀・)「まぁ、ほどほどに仕事をこなしましょうか」

彼の背後には。
彼らの足元には。
護るべき、救うべき人が大勢いる。
そして、変わる世界の目撃者が。

ギコタイガーはこの時が来るのを誰よりも心待ちにしていた。
悪を前に正義が立ち上がる、この瞬間を。
夢見てきた瞬間が現実のものとなり、彼は興奮をそのままに、咆哮するようにして叫び声をあげた。






<゚Д゚=>「護って救って、ぶっ殺してやるトルァ!!」






――人を助けるのは、正しき心を持った人間なのだと宣言するように。

287名無しさん:2022/07/18(月) 07:43:43 ID:C7JjIM2M0
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第九章 【 Ammo for Rebalance part6 -世界を変える銃弾 part6-】
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同日 AM09:23

人類が己の過ちによって空を手放して以来、最大の空戦がイルトリア上空で始まっていた。
歴代の空戦とは明らかに様子の異なるものだったが、空戦という言葉以外に形容のしようがなかった。
パラシュートを開いて落下してくる戦車、ヘリコプター、棺桶に対し、武装したヘリコプターが銃弾の雨を浴びせる。
最初は一方的に銃撃を受けるばかりだったが、やがて応戦が始まり、空には流星群のように曳光弾と炎が浮かんでいた。

爆発が起きるたび、命が散る。
血煙と化した死体が海に降り注ぎ、波しぶきが立つ。
圧倒的なまでにグロテスクな光景は、どこか美しさすら覚えるほどだ。
イルトリアが経験した中でも五指に入る程の激しい戦闘は、戦いの音が満ち溢れ、壮大なオーケストラを彷彿とさせている。

288名無しさん:2022/07/18(月) 07:44:04 ID:C7JjIM2M0
轟音。
銃声。
爆発音。
時折悲鳴か雄叫びかも分からない声が聞こえるが、すぐに別の音によって上塗りされてしまう。

世界最強の軍隊を有すると言われるイルトリアが秘蔵していた空軍にとって、これが最初の実戦だった。
地上や海上とは違い、全方位を警戒しながらの戦闘は猛者揃いのイルトリア軍といえども、実戦経験がない以上は苦戦を強いられていた。
パラシュートを切り離して空戦を挑んでくる棺桶に対して、ヘリコプターでは機動力が足りないのだ。
ローターを狙い撃ちにされてしまえば、ヘリコプターはたちまちコントロールを失い、墜落することになる。

地上からの支援がなければ被害は甚大な物になっていたことだろう。
フレシェット弾によって空を飛ぶラスト・エアベンダーは容赦なく薙ぎ払われ、機銃掃射は戦車とヘリコプターの床に穴を開け、操縦士達をミンチにした。
それでも、蝗の群れのように現れる部隊の全てを排除することは物理的に不可能だった。
イルトリア上空からの襲撃者を、陸軍大将トソン・エディ・バウアーは陸軍基地指令室の窓から腕を組んで見上げていた。

(゚、゚トソン「……」

一方的な戦闘が出来ないのは予想通り展開として彼女は勿論、その部下たち全員が理解していた。
空を飛ぶ相手を想定しての訓練は、部隊の隠匿という観点があってほとんど積んでいない。
陸軍、海兵隊に分散していたヘリコプターの操縦士達は操縦と戦闘に長けているが、空対空戦闘は未経験と言っていい。
だが、それは相手にとっても条件はほとんど変わらないはずだ。

降下する棺桶が撃ち落とされ、それを見てから反撃するまでの間の時間が実戦経験の少なさを雄弁に物語っている。
戦えているのは一部の人間。
とりわけ、最初に降下した仲間の動きを観察してから降りてきた人間だ。
恐らくは最初の部隊は生贄で、戦闘経験豊富な人間が後続部隊として降下する作戦なのだろう。

戦車とヘリコプターは分かりやすい的の役割を持っているが、それでも銃腔を向けざるを得ない存在だ。
物量を上手く使った戦術だが、重要なのは質だ。
市街戦を挑まれているのであれば、全力で叩き潰すのが陸軍としての礼節である。
特に、侵略行為に関してはイルトリアに勝る軍隊はない。

油断はしないが、過大評価をしすぎて空回りしないように注意しなければならない。
イルトリアが常に仮想敵として訓練をしてきたのはジュスティア軍なのだ。
防衛に関して彼ら以上に訓練を積み、対イルトリアに関して彼ら以上に意識してきた軍はいない。
必要な情報さえあれば、軍が即応するのはわけのない話だ。

(゚、゚トソン「情報の集約は完了したな?
     連中の装備の報告を」

無線機からはすぐに返答があった。

『……六連グレネードランチャー、それとコルトカービンです。
ラスト・エアベンダーのカスタム機以外、目視できたものはありません』

それは街中に潜んでいる陸軍、海兵隊、海軍の狙撃兵たちの通信を管理する部隊の責任者の声だった。
既に街には大規模な妨害電波を放っているが、当然、イルトリア軍が使用する無線機だけはその影響を受けないよう、ラヴニカに復元させたものを使用している。
観測手たちから報告される大量の情報を統制する通信担当者からの情報を聞き、トソンは手短に命令する。

289名無しさん:2022/07/18(月) 07:44:25 ID:C7JjIM2M0
(゚、゚トソン「よし、では各個撃破しろ。
     空は囮も兼ねているはずだ。
     引き続き、周囲の警戒を怠るな」

欲しい情報は得た。
それであれば、後は撃ち漏らすことなく潰すだけである。
屋内や屋上に潜む狙撃手たちが淡々と狙撃を開始する。
それまで軽快に空を飛んでいたラスト・エアベンダーが、まるで毒を浴びた蚊の様に力を失って落ちていく。

中には予備の榴弾を撃ち抜かれ、空中で爆散する者もいた。
しかし、それでも降り注ぐ物量の全てを食い止めることはできなかった。
撃ち落とされると分かった途端、グレネードランチャーとライフル、そして焼夷手榴弾による無差別攻撃が始まったのである。
榴弾が建物に着弾し、爆散する。

焼夷手榴弾によって街路樹が燃え、民家に燃え移り、黒煙が上がる。
だがトソンは落ち着き払っていた。

(゚、゚トソン「消火活動は市民が行う。
     惑わされるな」

『了解』

イルトリアは街そのものが一つの組織として機能できるよう、緊急時の役割が割り当てられている。
消火活動や救命活動についてはその専門職とボランティアによって迅速に行われるため、軍隊は戦闘に集中することが出来る。
建物を壁にして街に降り立った敵の数と位置は、市民からの通報によって陸軍の情報統制室に集約され、共有される。
狙撃手たちはその情報を元に移動し、即座に敵を撃ち殺す。

(゚、゚トソン「……おや」

空を見上げていたトソンが、小さく声を上げた。
視線の先。
そこには巨大な航空機が2機浮かんでいるが、その内の一機の機体からはオレンジ色の炎が上がっていた。
そして、螺旋を描くようにして落下を始めたのであった。

290名無しさん:2022/07/18(月) 07:45:09 ID:C7JjIM2M0
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同日 AM09:28

高高度での戦闘は僅かに3機の航空機によって繰り広げられていた。
巨大な鳥と相対する一匹の蜂の様な構図だったが、その戦闘は一方的だった。
攻防は互いの大きさとは真逆で、小型の戦闘機が優位に立っている。

『敵航空機、本艦の直上に!!』

原子力飛行空母“ムーンフォール”は突如として現れた戦闘機に対し、慌てふためく他なかった。
彼らの予想の中に戦闘行という概念は存在せず、ましてや、彼らが事前に与えられていた知識の中にもそれはなかったのだ。
そしてそれは、ムーンフォールの復元の際にも存在しない物だった。
操縦室にいる人間達が無線を通じて、艦内だけでなくもう一機の原子力飛行空母にも現状が伝わっているが、手助けはできない。

ムーンフォールの艦長、マーヴェリック・アイスマンはこの事態を収束させようと、力強く命令を下した。

(+゚べ゚+)『何をしている、迎撃部隊を出せ!!』

『だ、駄目です!! 高度が高すぎます!!』

旧来のムーンフォールに備わっていた対空装備は外され、その代わりに有線式のラスト・エアベンダーが配備されていた。
万が一頭上を取られることがあるとしてもヘリコプター相手であるため、ラスト・エアベンダーの方がより柔軟な迎撃が出来るという理由からだった。
それが裏目に出てしまった。
ラスト・エアベンダーは高高度での戦闘を前提とされていないため、圧縮空気による飛行が困難なのだ。

291名無しさん:2022/07/18(月) 07:46:09 ID:C7JjIM2M0
対空機銃があれば高度は関係なく使用できるため、どんな種類が相手でも問題はなかったのだ。
イルトリア相手に優位性を確保するために高高度を飛行していることが仇となった。

(+゚べ゚+)『ギリギリまで高度を落として迎撃をしろ!!
     この艦が落とされることがあってはならない!!』

ムーンフォールとスカイフォールは対イルトリアの象徴でもある。
ここでその片翼が失われることがあってはならない。
むしろ、失われるという前提がない。
しかし、彼らの思惑を嘲笑うかのように巨大な船体に振動が伝わる。

それからほとんど間を開けずに、大きな爆発が起きた。
瞬く間に機体が左に傾き、高度が落ちる感覚に襲われる。

『被弾しました!! 第1、3、4、5、8エンジン出力停止!! エンジンストール!!
速度、高度、方向維持不可能です!!』

(+゚べ゚+)『ちいっ……!!
     一人でも多く生きて降下させろ、今すぐに!!
     せめてこの艦をイルトリアに落とし、奴らを地獄に送ってやるぞ』

左側のエンジンが軒並み破壊されたため、ムーンフォールは螺旋を描くようにして落下しながら飛行するしかない。
加速と減速を適切に続ければ、その巨体は質量兵器として使用することが出来る。
しかし、細かな操縦が出来なければ海に落ちるだけだ。

『乗員は全員、緊急降下準備!!
何でもいい、近くにある降下兵器に搭乗しろ!!
後部ハッチ開放、降下開始……っ?!』

それまで勇ましく指示していたオペレーターの声が狼狽に振るえ、直後、悲鳴のような声で報告をする。

『敵機、急減速!!
後ろに取りつかれました!!』

そして再びの衝撃。
容赦のない銃撃が開かれた後部ハッチから内部に向けて浴びせかけられ、そこにある機材や人間を撃ち抜いていく。
振動は操縦室にまで伝わってきた。

(+゚べ゚+)『ハッチを閉じろ!! このままじゃ誘ば――』

明らかに内部で発生した爆発が、艦全体を大きく揺さぶった。
後部には支援用の弾薬が積まれているため、これだけ撃たれれば誘爆するのは必至。
爆発が次の爆発を生むのは時間の問題だ。

『接続部をやられました!! ハッチが閉じ切りません!!』
消火装置が作動しません……!!
誰かが手動で動かさないと!!』

『コントロール不能!! 推力偏向不可能です!!
海上に墜落します!!』

292名無しさん:2022/07/18(月) 07:46:56 ID:C7JjIM2M0
パニックは伝播し、冷静さを取り戻そうとするのはごく少数。
目の前に迫る死は大義を忘れさせ、統率を失わせる。
マーヴェリックはゆっくりと息を吸い、そして活を入れるようにして声を張り上げた。

(+゚べ゚+)『駄目だ、最後まであきらめるな!!
     我々の空は、ここで終わらない!!
     ラスト・エアベンダー部隊、生存者を一人でも多く連れて本艦から離脱するんだ!!』

高度が下がれば、ラスト・エアベンダーも使えるようになる。
ハッチが開かなくとも、人間用の脱出口はいくつも存在する。
危険な状況だが、今はこれが最善であると判断したのは、マーヴェリックがこれまでに幾度も辛酸をなめてきた敗軍の将故。
イルトリア軍相手の撤退戦は誰よりも経験してきたと自負しており、一人でも生還させるための決断の経験は誰よりも豊富だ。

無線機のマイクをオフにし、マーヴェリックは静かに、その場にいる仲間たちに命令を下した。

(+゚べ゚+)「後は私に任せて、君たちも逃げるんだ」

「いえ、艦長。 私もお供させてください。
最後まで、私はあなたの部下として戦いたいんです」

(+゚べ゚+)「駄目だ。 いいか、この戦いは我々が勝つ。
     だがな、空で散っていった同志たちの事を語り継ぐ人間が必要になる。
     君たちが生きてさえいれば、同志たちは永遠に生き続ける。
     降下中、一人でも多くの同志を守るんだ。

     さぁ、行くんだ!!」

それ以上の会話は必要なかった。
艦長の命令は絶対であり、その言葉の正しさは言うまでもなかったからだ。
皆敬礼をし、持ち場を離れる。
一人残ったマーヴェリックは操縦桿を握りしめ、落下する巨体の姿勢を直すべく、バランスを崩している原因のエンジンを切った。

(+゚べ゚+)「征くぞっ……!!」

代わりに、フラップを駆使して機首を上げ、落下速度を落とす。
制御された墜落へと転化させれば、状況は好転する。
あわよくばイルトリアへの墜落だが、それが叶うような進路ではない。
どうにか海上に胴体での着陸をすることができれば、味方の士気が落ちることは無い。

(+゚べ゚+)「うおぉぉぉ!!」

今こうしている間にも、味方が一人でも多く脱出していることを願う。
変化した世界を生きることが彼らの夢。
ここで死ぬようなことがあれば、それは、あまりにも惨めな夢の終わり方だ。
そうならないためにも、そうさせないためにも、彼は一人でこの事態を収拾させようとしているのだった。

川 ゚ -゚)『同志マーヴェリック、どうだ?』

それは、幹部であるクール・オロラ・レッドウィングからの通信だった。
スカイフォールはこちらが攻撃されているのを見て、即座に距離を取っていた。

293名無しさん:2022/07/18(月) 07:47:45 ID:C7JjIM2M0
(+゚べ゚+)「正直、もう持ちません……
     イルトリアに進路を持っていきたいのですが、それが出来そうもないので海に胴体着陸を試みます」

海上からイルトリア海軍による激しい砲撃を受け始め、機体全体が悲鳴を上げている。
落下地点にいる軍艦程度であれば巻き添えにできるかもしれない。

川 ゚ -゚)『なるほど。 よくやったぞ』

(+゚べ゚+)「ありがとうございます…… 今、一人でも多くの同志が生きられるよう、脱出させています。
     彼らの事を頼みます」

川 ゚ -゚)『あぁ』

(+゚べ゚+)「それと、ラスト・エアベンダーでは頭上に取りつかれた時に対応できません。
     高度を下げなければ……」

川 ゚ -゚)『分かっている。 だから、私がやる。
    後は任せろ』

その力強い言葉を聞いて、マーヴェリックは安堵のため息を吐いた。
心の底から安心した。
もう。
後のことは、任せていいのだ。

(+゚べ゚+)「……後をお任せします」

彼の目に映る海はその大きさを増す。
ゆっくりと瞼を降ろす。
そして――

294名無しさん:2022/07/18(月) 07:48:59 ID:C7JjIM2M0
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同日 同時刻

山の様に巨大な水しぶきが上がった。
それまで空を優雅に飛んでいた巨大な航空機が海に墜落した光景は、まるで夢の様な光景だった。
味方からすれば悪夢。
敵からすれば嬉しい夢だ。

マーヴェリック・アイスマンの決死の操縦の甲斐あり、ムーンフォールの動力源であるニューソクは爆発を起こさなかった。
仮に爆発が起きれば、周辺にいる敵味方関係なしに致命的な打撃を受けることになる。
更には、空に向けて広がる衝撃波によってもう一機が墜落しないとも限らない。
クール・オロラ・レッドウィングは瞬き一つで気持ちを切り替え、部下たちに向けて命令を下した。

川 ゚ -゚)「高度は維持だ。
     後部ハッチに射撃部隊を用意し、牽制射撃で奴を頭上におびき寄せろ。
     私が討ち取る」

上着のポケットから、ケースに入ったサングラス型ヘッドマウントディスプレイを取り出して被る。
白い本体に青白い光が灯り、クールは言葉を紡いだ。

川 【::▼:】)『真の心は真の肉体に宿る』

直後。
彼女の傍らで、もう一人のクールが立ち上がった。
違いは服装ぐらいで、光の宿らない冷たい目も無表情なところも彼女そのもの。

295名無しさん:2022/07/18(月) 07:49:27 ID:C7JjIM2M0
川 【::▼:】)
     『徹甲弾を装填したミニガンとジョン・ドゥを用意しろ。 それと、狙撃に自身のある者は対ブルライフルをもって私についてこい』
川 ゚ -゚)

声は両者の口から出た。
奇妙な芸にも見えるその光景。
彼女が起動させた“サロゲート”は自分自身の分身として遠隔操作が可能な物で、彼女が遠征する際には必ず用意している物だった。
人間よりも強い膂力を持つが、その脆さは人間並みだ。

しかし、毒ガスも酸素も、水中であろうとも関係がない。
半径1キロ以内であれば何一つ不自由なく操作が可能なその棺桶は、使い方一つで十分な兵器としての力を発揮できる。
彼女が乗るスカイフォールはムーンフォールと同様に対空砲を取り除いているため、防御手段がない。
だがサロゲートであれば、例え高高度を飛行する航空機の上であっても問題なく戦える。

小さな飛行機相手であれば迎撃できる。
クールの脳波に従い、サロゲートが艦内を人間離れした速度で駆け抜ける。
操作には集中力が必要となるため、クールは椅子にもたれかかり、深く息を吸う。

川 【::▼:】)『叩き落してやる』

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同日 同時刻

視線の先を飛ぶ巨大な航空機は、海を泳ぐ鯨の様にゆっくりとして見えた。
合計18基のエンジンが通過した後には白い筋が生まれ、これまでの軌道を青空というキャンバスに描いている。
横幅は優に一キロを超え、輸送している兵の数は数百以上。
高高度から相手の領空に侵入し、大量の兵を降下させるという目的に特化して設計されたのは言うまでもない。

だが本来は単体ではなく護衛機を伴って運用するのも言うまでもない。
護衛がいなければ、同じく高高度を領域とする戦闘機にとってはただの巨大な的でしかないからだ。

从´ヮ`从ト「……」

296名無しさん:2022/07/18(月) 07:50:55 ID:C7JjIM2M0
既に一隻、あるいは一機を撃墜したばかりのチハル・ランバージャックは慎重に相手の動きを観察していた。
左斜め後方、更に高度は相手と同じ高さを保っている。
味方が撃墜されたのを見て、どう動くのか。
流石に後部ハッチを開く愚はまだ犯していないが、背後に取りつけばそれは時間の問題だ。

故に、妙な感覚があった。
この距離に取りつかれていながら、目立った動きがない。
進路をイルトリアから変更し、南に向かって進んでいる。
明らかに誘っている動きだ。

从´ヮ`从ト「ふぅん……」

巨躯で出来ることはいくつもあるが、相手の注目をこちらが浴びている今が好機。
しかし既に積載していた銃弾のほとんどは撃ち尽くされ、残されたのは僅かな弾と無誘導弾二発――直線にしか飛ばないロケット弾――だ。
こちらの弾がないことを知る術はないため、相手はこちらが攻め込んでくることを前提とし、準備をしているだろう。
弾を補給しに戻れば相手に逃げられる可能性がある。

ここで落とす。
それが最善の手であることは間違いない。

从´ヮ`从ト「……予定通りに行くよ」

それだけ言って、チハルはアフターバーナーを使用して機体を加速させた。
高度を上げ、エンジンを撃ち抜ける位置に付けるように位置取りをする。
そして、視線の先に相手の思惑を見つけた。

从´ヮ`从ト「誘いに乗ってあげるんだ、退屈させないでよ」

〔欒゚[::|::]゚〕

人間離れした視力を持つ彼女の視界には、はっきりとその白いシルエットが映っている。
それは、ミニガンを手にした一機の棺桶だった。
間違いなく対空防御をするために機上に武器を持って現れ、チハルの邪魔をする為に命をかけようとする愚か者の類。
その姿はあまりにも健気だった。

握りつぶすのが惜しくはない。
逆に、たった一機だけが姿を現していることが奇妙だった。
積載している対空防御用の棺桶がまさか一機だけということはないだろう。
射程圏内にこちらが入るのを待っているのか、まだ発砲がない。

ミニガンはその性質上、砲身が回転しなければ発砲することは無い。
曳光弾を装填していればこちらも射線を読むことが出来るが、果たして、そこまでの準備を相手がしているかが問題だ。
撃ってこないのならば、それを待つ理由はない。
彼女の脳波、そして視線をヘルメットに組み込まれた高性能な演算装置が読み取り、即座に機体の隅々に反映させる。

装備された四門のガトリング砲の銃腔がエンジンに向けられる。
ヘッドマウントディスプレイに表示される照準は彼女の視線に合わせて的確に定められ、それぞれの砲がどのエンジンを狙っているのかが一目で分かる。
菱形の照準の横にはそれぞれの残弾が表示されており、ほとんどが100発前後の数だった。
合計で400発弱。

297名無しさん:2022/07/18(月) 07:51:15 ID:C7JjIM2M0
エンジンを破壊して墜落させるには不十分と言わざるを得ない残弾だ。
そんな事を考えていると、ジョン・ドゥに変化が現れた。
ミニガンの銃腔をこちらに向け、発砲の準備に入っている。
空気そのものが壁となって背中からぶつかってくる状況にもかかわらず、ジョン・ドゥの使用者は迷いがない。

恐らくは足場と磁石によって固定されているため、吹き飛ぶことがないと信じているに違いない。
エンジンを破壊するよりも先に、あのたった一機のジョン・ドゥを始末したほうがいいと、彼女の直感が告げる。
一門だけジョン・ドゥに向け、銃撃を始めようとした、その刹那――

从´ヮ`从ト「っと」

――ジョン・ドゥの足元に潜んでいた狙撃手が放った一発を、チハルはバレルロールで回避しつつ、その場に向けて銃弾の雨を浴びせかけた。
瞬く間に銃弾がジョン・ドゥと狙撃手を襲うが、仕留められたのは狙撃手だけだった。
ジョン・ドゥはその場から素早く移動しており、ミニガンによる対空射撃を始めた。
引き続きバレルロールによってその場から離れ、曳光弾が空に吸い込まれるのを目で追う。

残されたガトリングは三門。
どうやらあのジョン・ドゥは予想以上に命知らずの様だ。
文字通り一歩間違えれば自由落下するのに、まるで躊躇いがない。
高所という圧倒的なまでの状況下で、そこまで冷静に動けるとしたら、よほどの馬鹿かそれに慣れる訓練を積んだ者。

仮に後者だとしたら、不自然なのはその装備だ。
準備不足にもほどがある。
対空防御の要として配備されているのならば、もっと装備に気を配っているはずだ。
射撃についても偏差射撃をしてこない。

戦闘は素人。
しかし胆力は並み以上。
ちぐはぐな相手だ。

从´ヮ`从ト「……面倒だな」

こういう時、相手にするだけの弾薬の余裕があれば容赦なく蜂の巣にしているところだが、今はその余裕がない。
排除を後回しにし、別の手段で落とすことにした。
機首を下に向け、急降下すると同時に敵の射線上から姿を隠す。
そして相手の懐へと潜り込む。

機体底部へと難なく入り込み、チハルは機体構造を観察し始める。
着水に耐えられるように設計はされているらしく、中途半端な攻撃をしたところで不時着をされてしまう。
先ほどの様に鋭角で墜落させなければならないが、今の装備でそれをするのは非常に難しい。
一門の弾薬を使いきってエンジンを一つ破壊し、無誘導弾で更に二つ。

合計で四基のエンジンを停止させたとしても、墜落を誘発するのは無理だ。
だが、ここまでは想定通り。

从´ヮ`从ト「落ちてもらおうか」

298名無しさん:2022/07/18(月) 07:52:11 ID:C7JjIM2M0
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同日 同時刻

スカイフォールの操縦室内は焦りの色が如実に浮かび、切羽詰まった空気が漂っている。
こちらの対空防御手段を見て即座に逃げられ、機体の下に入り込まれたのは手痛い展開だった。
殺された狙撃手は艦内で一番腕のいい男だったが、相手はいかなるトリックを使ったのか、必殺の一撃を回避した。
もう同じ手は使えない。

「敵の位置を絶対に見失うなよ!!」

艦内中の戦闘員が棺桶を身に着け、銃を手に取り、射撃可能な位置を探している。
だが、このスカイフォールは内部からの銃撃を想定した設計はされていない。
どの窓も分厚いガラスで作られており、開閉は不可能だ。
今考えついている手は後部ハッチを開き、パラシュート降下した兵士たちに撃たせるというものだが、滞空時間が絶望的だった。

「同志クール、提案が」

川 【::▼:】)「何だ?」

「このまま南下し、ストラットバームに向かいましょう。
相手の燃料が尽きれば、こちらから離れていくはず。
もしくは、こちらに攻撃を仕掛けてくるはずです」

少なくとも、相手が攻撃できる位置は前後左右、そして上だ。
下から上に向けて攻撃する手段はないため、こうしている限り、こちらが攻撃を受ける恐れはない。
クールの存在が抑止力となり、相手を牽制で来ているのであれば、この状況はこちらにとって有利だ。

川 【::▼:】)「……」

299名無しさん:2022/07/18(月) 07:54:24 ID:C7JjIM2M0
しかし、クールは即答しなかった。
何かを考えているのか、それとも、遠隔操作に集中しているのか。
その答えを知る前に、事態が大きく動いた。
衝撃がスカイフォールを揺さぶり、一斉に警報装置が鳴り始める。

「な、何だ?! 敵の位置は!!」

「攻撃は……真下からです!!
真下から攻撃を受けています!!」

「そんな……馬鹿な?!
映像を出せ!!」

真下から攻撃するとしたら、銃腔が真上を向くか、機体が真上を向いていなければならない。
だが、上昇してきているならばいざ知らず、こちらとの距離は大して開いていない。
そんな中で真上を無ことなど不可能だ。
機体の各所に設置されたカメラによって、敵影がモニターに映し出される。

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敵の飛行機は、ほぼ真上を向いたまま飛行していた。
まるで子供がおもちゃを持って飛ばすかのように、非常識な姿勢での飛行は、彼らの中にある常識のどれにも当てはまらない。

「あんな動き……出来るはずが……!!」

300名無しさん:2022/07/18(月) 07:54:51 ID:C7JjIM2M0
敵の飛行機は、ほぼ真上を向いたまま飛行していた。
まるで子供がおもちゃを持って飛ばすかのように、非常識な姿勢での飛行は、彼らの中にある常識のどれにも当てはまらない。

「あんな動き……出来るはずが……!!」

現実であることを再認識させるように、衝撃が彼らを襲う。
機体の大きさから考えて、相手のガトリング砲の攻撃を受けたところで、機体底部には大した打撃を与えることはできない。
本来であれば、そうなのだ。
一点集中などという非常識な撃ち方をされない限り。

両翼の下に吊り下げられたガトリング砲の砲門はそれ自身に意志があるかの様に動き、正確に照準を一か所に向けている。

「被害報告、急げ!!」

「底部装甲、第3層まで貫通。
電気系統に支障が出ています!!」

ほぼ一か所に集中して撃ち込まれた銃弾が装甲を穿ち、装甲内部で跳弾し、打撃を与えた。

「まだだ、まだ耐えるんだ!!
奴の残弾はほとんどないはずだ!!
落ち着いて対処を――」

これまでにない大きな衝撃と爆発音がスカイフォールを襲った。
まるで真下から殴られたような衝撃、そして間近に落ちた雷の様な音。
それらの原因を一瞬の間に理解できたのは、注意深くモニターを見ていた人間だけだった。

「な、何だ?!」

「ロケット弾のようなものがっ……!?」

そして、二度目の衝撃。
その衝撃は機体を大きく傾けさせ、高度を落とさせた。
報告を担当している男は、それでも己の役割を決して見失わなかった。

「か、火災発生!! 装甲内部での火災です!!
機内気圧急激に低下!! 機体底部に穴が開きました!!」

「隔壁閉鎖、消火急げ!!」

撃ち込まれた物が何であれ、今の状況が非常に危険なのは言うまでもない。
機外は酸素が薄いため、火災など気にもならないが、機内は酸素で満たされている。
炎は酸素を求めて燃え広がり、たちまち機体内部に煙と熱気が侵入する。
隔壁を閉鎖しなければ貪欲な炎と空気がこの機体を内側から破壊していくことになる。

「電気系統にエラー発生!!
隔壁閉鎖も、自動消火装置も作動しません!!」

「敵機離脱!! くそっ、高みの見物かっ……!!」

301名無しさん:2022/07/18(月) 07:55:14 ID:C7JjIM2M0
このままでは機体が空中で分解する可能性がある。
炎をどうにかしなければと思うが、断続的に何かが爆ぜる衝撃と安定感を失った機体の動きが彼らから容赦なく判断力を奪う。
唯一、現実的な判断を下したのは、冷静さを常に失わない人物だった。
ヘッドマウントディスプレイを取り外したクール・オロラ・レッドウィングは、淡々と言葉を紡いだ。

川 ゚ -゚)「急降下し、海面に一時的に不時着しろ。
     海水で一気に消火し、隔壁を手動操作で閉じてから再び空に昇れば機内の気圧は問題ないはずだ。
     高度が多少下がろうが問題ない。
     後部ハッチを開放し、海水が抜け出るようにしろ。

     電気系統が更にやられたらそれすらできなくなるぞ」

異議を唱える者も、反対する者もいなかった。
このまま沈むのであれば、一か八かの賭けに出るべきである。
海水の影響で電気系統が破損したとしても、墜落よりもずっといい。
今このスカイフォール内で命令系統の最上位に君臨する人間の言葉は、まるで金言のように染み渡り、行動を促した。

「了解!! これより急降下する!!
総員、体を固定させろ!!」

「カウント30、用意!!
近くの物に体を固定させろ!!
固定されていない物に潰されないよう、気をつけろ!!」

「破損区画への送電中止!!
後部ハッチ緊急開放!!」

艦内に放送をする人間達はベルトで自分の身を座席に固定しながら、声を出し続ける。
その間にも、時間は刻一刻と迫る。

「カウント20!! 急降下に備えろ!!」

エンジンの出力が最大値になり、進行方向とは逆側に押し付けられる。

「カウント5!! 行くぞ!!」

僅かな浮遊感を覚えた直後、全てが海面に向けて吸い込まれるような猛烈な加速。
ほとんど鋭角に飛び込んだ急降下は、正に墜落と表現するのが相応しいほどの速度だった。
瞬く間に目の前に海面が迫る。
巨体を持ち上げるのに必要な時間を誤れば、即座に墜落することになる。

操縦桿を握る人間は勿論、計器類を見る人間も、誰もが死の隣に座っているような物だった。
それでも、彼らは諦めや絶望、ましてや失敗する未来を考えもしていなかった。
彼らの目の前にあるのは死ではなく、明日に続く道。
これが唯一の活路なのであれば、必ずや切り開けるはずだと信じていた。

「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」

操縦室にいる人間達の咆哮に呼応するように、計器類の針が絶叫を上げて振動する。
乗員全員に強烈なGが全員に襲い掛かるが、クール・オロラ・レッドウィングは眉一つ動かさず、瞬き一つすらせず、睨みつけるようにして全てを見届けようとしていた。

302名無しさん:2022/07/18(月) 07:57:04 ID:C7JjIM2M0
川 ゚ -゚)

スカイフォールとムーンフォールの真の役割は、イルトリア攻略戦の最終工程にある。
組織でも屈指の戦闘力と経験を持つ人間、そして高性能な棺桶。
この二つを合わせることにより、長期戦闘によって疲弊し、油断したイルトリアにとどめを刺すという計画を担っている。
ムーンフォールから脱出した者達がイルトリアを攻めることで、順番は変わるが、イルトリアに打撃を与えるという目的は達成できる。

だが、今この艦が沈むわけにはいかない。
伏兵は機会を選ぶものだ。
可能な限り空からプレッシャーをかけ、この後合流する地上部隊と連携してイルトリアを攻め落とす。
最善のタイミングで最高の兵を送り込むことこそが、スカイフォールの真なる役割なのである。

「衝撃に備えろ!!」

急激な浮遊感が彼らの平衡感覚を一瞬狂わせ、重力を忘れさせた。
しかし、直後に艦を襲った衝撃は即座に彼らを現実の世界に引き戻す。
世界の全てが揺れていると思わせるほどの上下の激しい衝撃。
視線の先にある物を注視していたとしても、その焦点が正確に合うことは難しい。

だが、スカイフォールの操縦室にいる人間達は違った。
海面と僅かに降れる超低空飛行は、一歩間違えればそのまま海の藻屑と化す危険がある。

「一部着水確認!! 各計器類チェック急げ!!
最寄りの人間は破損個所の隔壁を手動で閉鎖しろ!!
完了後即座に報告!!」

「敵戦艦が撃ってきてる!! 死にたくなければ死ぬ気で動け!!」

「消火、もう間もなく完了します!!
っ……!! 第3エンジン被弾!!
エンジンストール!! 出力低下、第17エンジンを切ります!!」

「海水の侵入確認!! 後部ハッチ可動部への負荷、許容量を越えました!!
隔壁閉鎖確認できました!!」

機体の振動が着水時以上に大きくなる。
必然、脳裏に墜落の二文字が浮かぶ。

川 ゚ -゚)「第3、第17エンジン共に海に投棄。
     後部ハッチ切断。
     消火完了と同時に全速力で空に飛べ」

彼女の言葉に従い、機体のバランスを崩していた原因が海に捨てられる。
後部ハッチが切り離され、海面に叩きつけられるようにして投棄される。

「消火完了!! 各計器類数値確認!!」

「全計器類、許容範囲内!!」

「エンジン最終確認、出力問題なし!!」

303名無しさん:2022/07/18(月) 07:57:28 ID:C7JjIM2M0
川 ゚ -゚)「よし、飛べ」

機首が上を向くと、機内に入り込んだ大量の海水が吐き捨てられた。
そして空に向けてスカイフォールは再び浮上を始めた。

「やったぞおおおお!!」

歓声がいたるところから聞こえ、スカイフォール内は祝賀ムードに包まれた。
空という安全圏に再び浮上したスカイフォールは転身し、イルトリア上空へと向かう。
だが。
だがしかし。

着水の瞬間を待っていたのは、彼らだけではなかった――

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同日 某時刻

――規格外の巨大航空機が出現した時、その対応策は即座に練り上げられた。
超高高度への上昇が可能な唯一のヘリは、別の作戦に使うことになっている。
イルトリアが所有する空軍が対応できるのは、恐らくは一機だけ。
高高度での戦闘が可能なSu-37に積載できる武装では、どれだけ効率的な攻撃をしたとしてもそれが限界だった。

そして、即座に対応策が生まれた。

304名無しさん:2022/07/18(月) 07:57:50 ID:C7JjIM2M0
从´ヮ`从ト「海面か地上ギリギリまで降下させて、乗り込んで内部から落とすのはどう?」

空軍大将、チハル・ランバージャックからの提案に対し、目の前に座っていた男は憮然として答えた。

( ゙゚_ゞ゚)「どうやって降ろすつもりなんだ?
    それができるんなら、乗り込まないで海軍の集中砲火で十分だろ」

オサム・ブッテロの発言はもっともだった。
高高度にいる航空機を墜落寸前まで高度を降ろさせることが出来るなら、そのまま十字砲火を浴びせて撃墜したほうが確実である。
しかし、それは航空機の持つ問題を無視すればの話だ。

从´ヮ`从ト「動力源のニューソクが爆発すれば、それだけで大打撃になる。
      もっと言えば、それが何基積まれているのか我々は知らない。
      戦艦の砲撃じゃ、調節が難しいんだ」

( ゙゚_ゞ゚)「だけど一機は落とすんだろ? なら一緒だろ」

从´ヮ`从ト「エンジンをいくつか停止させて、ね。
       連中も馬鹿じゃないだろうから、ニューソクを使って何もかもを吹き飛ばすつもりはないはずだ。
       もしそうなら、ニューソクを空から落とせばそれで済むからな」

( ゙゚_ゞ゚)「手厚く落とすってことか。
     分かった。
     それで、どうやって乗り込むんだ?」

从´ヮ`从ト「そりゃあ、海を渡ってさ」

( ゙゚_ゞ゚)「船か」

从´ヮ`从ト「半分正解。
      船と二輪バイクを使って移動してもらう」

オサムは目頭を指で押さえ、二秒後、言葉を選ぶように口を開いた。

( ゙゚_ゞ゚)「正気か?」

从´ヮ`从ト「この上なく正気だよ。
      落下地点が分からない以上は、臨機応変に立ち回れて尚且つ相手に見つからないのが必要だ。
      更に言えば、上陸能力があるのがいい。
      そうなると、水上バイクが選択肢から消える」

( ゙゚_ゞ゚)「だからって、普通のバイクが海を走るなんて聞いたことないぞ」

从´ヮ`从ト「私も見たことがないよ。
       だけどね、出来る能力があるなら、それを使うのが戦術ってものさ。
       三人でやれば、簡単に落とせるだろうよ」

( ゙゚_ゞ゚)「で、運転は」

ノパ⊿゚)「あたしだ」

305名無しさん:2022/07/18(月) 07:59:58 ID:C7JjIM2M0
それまで彼の後ろで腕を組み、沈黙を貫いていたヒート・オロラ・レッドウィングが短く声を発した。
オサムはそちらを一瞬だけ見て、すぐに視線を前に戻した。

( ゙゚_ゞ゚)「三人目は?」

(∪´ω`)゛

小さく手を挙げたのはヒートの隣に座るブーンだった。
だがその挙動にオサムが視線を向けることは無かった。

从´ヮ`从ト「以上三人で二隻目を落としてもらう。
      質問は?」

( ゙゚_ゞ゚)「勝算はあるのか? 悪いが、俺は命を懸けるほどの義理はねぇぞ」

从´ヮ`从ト「知りたがっている情報を教えてやる、と言ったら?」

( ゙゚_ゞ゚)「仕方ねぇ、やってやるか」

腕を頭の後ろで組み、オサムはそう言い切った。
チハルはその姿を見て僅かに笑みを浮かべた。

从´ヮ`从ト「と、言うわけだ。
      バイクのカスタムはタイヤの交換とフローティングの取り付けで終わるから、すぐに準備は終わる。
      じゃあ、詳細を説明するよ」

――そして、時が来た。

「敵航空機、高度急速に低下。
作戦開始」

合図を受け、海軍の所有する一隻の戦艦の甲板上に置かれた防弾コンテナからバイクが姿を現した。
深い蒼に塗装されたそのバイクの両脇には重量のあるコンテナが取り付けられ、更に子供を含めて三人がフルフェイスのヘルメットを被って座っていた。
ハンドルを握るのはヒート。
その後ろにブーン、そしてオサムが続く。

( ゙゚_ゞ゚)「……」

オサムは両手を背後のグリップ回し、ブーンから距離を置いていた。
一方、ブーンはヒートにしがみつく様にして両手を腹に回している。

ノパ⊿゚)「落とされても拾わねぇからな」

( ゙゚_ゞ゚)「……ふん」

ノパ⊿゚)「ディ、行くぞ!!」

ブーンが名付けたバイクの名前を口にすると、三人が跨るバイクが静かに起動した。
ほぼ同時にエンジンが高速走行に備えて始動し、ブーンとヒートのインカムに静かな声が届いた。

306名無しさん:2022/07/18(月) 08:00:19 ID:C7JjIM2M0
(#゚;;-゚)『えぇ、行きましょう』

(;゙゚_ゞ゚)「え? しゃべ――」

そして、ディは放たれた弓の様な勢いで甲板から飛び出した。
音速を越える速度を出すのに要した時間は1秒にも満たなかった。
飛翔したディは別の戦艦の甲板に着地し、再び飛翔。
配備された戦艦の甲板を橋として移動し、頭上に浮かぶ航空機を追う。

最後の一隻から飛び立ち、海面に向けて猛スピードで落下する。

(#゚;;-゚)『衝撃に備えてください』

それは驚くほど優しい声色だったが、その状況に全くそぐわないものだった。
彼女としては機械的に口にしているだけだが、どこか皮肉の様にも聞こえた。
着水は鋭角に行われ、想像していたよりも揺れは少なかった。

(;゙゚_ゞ゚)「マジで走ってるのか、海面を……!!」

その言葉は無意識のうちに紡がれた物だったが、それも無理からぬ話だ。
二輪のバイクが液体の上を走るなど、普通は不可能だ。
ましてや両脇には重量の大きく異なる棺桶を取り付けているため、バランスを取るなど不可能なはず。
だが後輪のタイヤにオールの役割を果たすヒダをつけ、機体を浮かせるためのフローティングがあるのならば不可能ではなくなる。

荒れる海面でアンバランスな状況のバイクでバランスを取るのは極めて難しい物だが、バランスは全てディに備わる電子機器が制御するため、搭乗者には負担が一切ない。
人間であれば不可能だが、ディの人工知能が行う計算に狂いはない。

(#゚;;-゚)『海面を走るのは初めてですが、悪くないものですね』

ノパー゚)「あたしも初めてだよ!!」

(∪*´ω`)「ディすごいお!!」

(;゙゚_ゞ゚)「バイクが喋るのもすげぇな、おい」

(#゚;;-゚)『えぇ、そうです。 私はすごいんです』

(;゙゚_ゞ゚)「……」

誇らしそうなディの言葉に、オサムは言葉を失っていた。

(#゚;;-゚)『シートが汚れるので、排せつ物を出さないでくださいね』

(;゙゚_ゞ゚)「……腹立つ!!」

(#゚;;-゚)『冗談です。 目標物、急速に高度を低下させています』

ノパ⊿゚)「あぁ……」

307名無しさん:2022/07/18(月) 08:01:21 ID:C7JjIM2M0
ヒートの言葉が尻すぼみになったのは、何も臆したからではない。
目の前に迫る光景があまりにも現実離れした物で見とれていたからだ。
巨大な翼を広げた航空機が目の前で機首を思いきり持ち上げ、海にその胴体を擦り付けた瞬間、巨大な波が発生した。

( ゙゚_ゞ゚)「おおっ!! やっぱりデカイな!!」

ノパ⊿゚)「一気に行くぞ!!」

(#゚;;-゚)『了解です』

その瞬間、ディは最高速度に達した。
音速の二倍近くの速度で海面を走り、目の前にある巨大な航空機の生み出した波を器用に避けながら接近していく。
胴体が着水しているため、後部の空間から内部に入ることが可能になっている。
しかし、問題はその波だ。

移動する傾斜の厳しい丘を連続で越えるようなもの。
一度ミスを犯せばたちまち波に飲まれ、ディが再度浮上することは無い。
ディが波の上でも沈まずにいられるのは、常に移動しているからに他ならない。
止まることは沈没を意味する。

巨大な白波をものともせず、ディは航空機の真後ろに位置取った。
波しぶきを浴びながら、三人と一台はその距離を着々と縮めて行く。
ひと際巨大な波を乗り越えた先に、それはあった。
直線で構成された人工洞窟と形容できる程の、巨大すぎる貨物室の入り口。

そこには戦車やヘリが床に固定されており、それだけで軍隊を形成できるほどの兵器が並んでいた。
積んでいた全ての兵力を降下し終えたものだと思っていたが、まだ余力を残している様だ。
海面を擦るギリギリの高度で飛行しているため、そこに入るための段差は僅かしかない。
搬入用の道も兼ねたハッチが海面にぶつかり、跳ね上がっては波を生み出している。

(#゚;;-゚)『加速します』

リミッターがディの意思で解除され、更に速度が上がる。
跳ねあがったハッチが海面に触れたのと同時に、ディの前輪がそこに乗り上げる。
それまで感じていた風が全て凪ぎ、四方全てが鋼鉄の空間に切り替わった。
戦車の影に停車すると、三人はすぐに降り、周囲を警戒した。

ノパ⊿゚)「……」

ヒートは懐から取り出したベレッタM93Rを片手で構え、もう片方の手でブーンを自分の背中に隠す。
オサムは周囲を睨めつけつつ、背負っていたG36を構えている。
だが激しい振動によって、その銃腔は上下左右に激しく揺れてまともな照準は期待できない。

( ゙゚_ゞ゚)「……」

アイコンタクトで周囲に危険がないことを確認し、ヘルメットを脱ぎ捨てる。
ディからそれぞれ棺桶を取り外して背負った直後、足場が急激に傾き始めた。

308名無しさん:2022/07/18(月) 08:02:18 ID:C7JjIM2M0
ノハ;゚⊿゚)「やばっ?!」

(;゙゚_ゞ゚)「ちいっ!!」

(∪;´ω`)「おっ?!」

三人は立てなくなるほどの斜面になる前に近くの物に手を伸ばし、それぞれ両手で掴んで体を固定させた。
だが。

(#゚;;-゚)

視線の先で、手を持たないディが物理法則に従って貨物室をずり落ちていく。
タイヤのグリップで耐えきれる角度には限度がある。

(∪;´ω`)「……!!」

ディに呼びかけるブーンの声は、地響きの如く響くエンジンの音でかき消される。
インカムがなければディの声を聞くことはできない。
今、彼女が何を思い、何を口にするのかも分からない。
手を伸ばそうにも、ブーンの両手は戦車を固定している部品を掴んでいるため、声を出すしか出来ない。

助けるには遠く、彼はあまりにも無力だった。

(#゚;;-゚)

後輪から海に向かって落ちる寸前、ディのヘッドライトが数度瞬き、そしてその姿は消えた。
三人を乗せた巨大航空機は凄まじい速度で上昇し、雲の上へと到達。
次第に姿勢を整え、ようやく水平になった。
エンジンも静かになったが、風の音はブーンの心の様にざわめき、落ち着くことは無かった。

(∪;´ω`)「おっ……」

既に見えなくなったディの安否を心配し、ブーンは声を漏らした。
ブーンにとってディはただのバイクではなく、友人や姉弟の様な存在だった。
あまりにも呆気のない離別に耐えられるほど、まだ彼の心は強くない。
ヒートは呆然とするブーンの肩を掴み、強引に自分と目線を合わせることで心が折れるのを寸前で止めさせた。

ノパ⊿゚)「落ち着け、ブーン」

その声は静かで優しかった。

ノパ⊿゚)「最後にライトが光ってただろ?
    あれはモールス信号ってやつだ。
    大丈夫、って言ってたんだ」

(∪;´ω`)「ほ、本当ですかお?」

309名無しさん:2022/07/18(月) 08:02:39 ID:C7JjIM2M0
いつもなら即座に受け入れる言葉だが、ブーンの不安はぬぐいきれなかった。
今の彼は猜疑心に囚われていた。
自分を落ち着けようと言ってくれている言葉なのかもしれないと、思わず近くにいたオサムに視線が向いた。
それを見たオサムは眉を顰める。
  _,
( ゙゚_ゞ゚)「……少し違うな」

そして少しだけ口角を上げ、言った。
  _,
( ゙゚_ゞ゚)「“ちょっと海水浴に行ってくるけど大丈夫”、だとさ。
     あいつ、本当にバイクなのか?」

それを聞いたブーンは、心から安心して方から力を抜いた。
すぐに気持ちを切り替え、ヒートの手に自分の手を添えた。

(∪´ω`)「……僕も、大丈夫ですお」

ノパー゚)「よし」

ヒートはブーンの頭を撫で、立ち上がった。

ノパ⊿゚)「ブーンはあたしと一緒に操縦室に行く。
     えーっと、あんた名前なんだっけ……」
     とりあえず、あんたはどうする?」

( ゙゚_ゞ゚)「……俺は好きにさせてもらう。
     派手に暴れてやるさ」

コンテナを背負い直し、オサムは起動コードを口にした。

( ゙゚_ゞ゚)『どんな戦いにも正義が二つあるわけじゃない。
     最後まで正義を貫いた者が唯一の正義なんだよ』

姿を現したのは重装甲のユリシーズ・カスタム。
オサムが依頼し、イルトリアに用意させたそのユリシーズの手にはMk48軽機関銃が握られている。
制圧を目的とし、弾数と射程を要求したオサムに与えられたその銃には対強化外骨格用の弾が込められている。
最大の特徴は給弾方法だ。

バックパック式給弾装置によって安定した給弾が可能となり、戦闘中の動きに制約がなくなる。
一度に給弾できるのは約1000発。
それを二つ装備しているため、オサムは一人で2000発の銃弾をこの船の中にまき散らすことが可能だ。
銃身自体にも加工が施されているが、予備の銃身も用意されているため、全てを撃ち尽くすことが出来る。

〔 <::::日::>〕『覚えておけ。
       俺はオサム・ブッテロ。
       愛の為に戦う男だ』

ノパ⊿゚)「……そっか、頑張ってくれ」

310名無しさん:2022/07/18(月) 08:03:09 ID:C7JjIM2M0
そして、オサムは駆け出した。
残されたヒートとブーンはその背中を見送ってから、戦車やヘリを固定している器具の解除を始めた。
次に機首を上に向けるようなことがあれば、ハッチを失ったせいでこの貨物室の中身は全て海中に落ちることになる。
逆に、機首が下を向けば中身は全て奥へと転がって行き、これらの兵器は壊れることになる。

運が良ければ爆発も期待が出来た。

ノパ⊿゚)「……人を撃つのはあたしがやる。
    ブーンは敵が近づいてきたり、隠れていたりする相手の方向を教えてくれるか?」

(∪´ω`)゛「分かりましたお」

ノパ⊿゚)「だけどもし撃つ必要があったら、その時は撃っていい。
     その為の銃だ」

ブーンの腰のホルスターには悩みぬいて選んだ銃があった。
ベレッタM84には小型だが強力な対強化外骨格用の弾が装填されており、ブーンの両手で支えることで十分に正確な射撃が出来るよう訓練が済んでいた。
候補に残った三種類の銃からそれを選んだ最終的な理由は、ヒートが使用している銃と同じ会社の物だからというものだった。

ノパー゚)「さて、行くか」

ヒートは懐のホルスターからベレッタM93Rを取り出し、安全装置を解除してセレクターをフルオートに切り替えた。

(∪´ω`)゛

ブーンも銃を取り出し、安全装置を解除して両手で構えた。
イルトリア軍人と共に訓練した結果、今の彼にとって銃器は未知の道具ではない。
その使い方も。
その存在理由も、よく理解している。


















――知らないのは、人を撃ち殺す経験だけ。
.

311名無しさん:2022/07/18(月) 08:03:33 ID:C7JjIM2M0
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     〃      /、 !      /
第九章 【 Ammo for Rebalance part6 -世界を変える銃弾 part6-】 了
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312名無しさん:2022/07/18(月) 08:03:56 ID:C7JjIM2M0
これにて今回の投下は終了です
質問、指摘、感想等あれば幸いです

313名無しさん:2022/07/18(月) 08:34:26 ID:2GWAQKm20


314名無しさん:2022/07/18(月) 12:54:44 ID:O/CfaWK20
乙乙
特攻野郎Aチーム好きだから出てきて嬉しい!
ヒートとクールどうやって決着つけるんだろうと思ってたけどまさか乗り込むとはビックリだわ

315名無しさん:2022/07/18(月) 21:46:55 ID:3yG/zwgo0
おつ!
全戦順調だけどまだまだ序盤だもんな
オサムのアウェイ感半端ないけど生き残ってほしい

316名無しさん:2022/07/20(水) 20:59:47 ID:Fc71Oeho0
乙乙
ディさん余裕っすねwww
オサムモールス信号わかるのか、凄いな。流石愛の為に戦う男だねぇ
マーヴェリック艦長しっかりとした軍人らしくてかっこよかった。ちゃんと責任果たしてるところが特に
アベさんのセリフの汎用性ホント高いよねwwちょっと改変したらすぐカッコよくなるところが凄いww
おまけに某赤い人の名言も、ね

>>276
"多才"な戦場に対応できるよう

多彩だね。

>>285
"一声"放送システムから響いた

"一斉"放送かな。

>>295
狙撃に自身のある者は"対ブルライフル"をもって

"対物ライフル"の事かな……? あんま自信無いけど

>>299
そんな中で真上を"無こと"など不可能だ。

真上を"向くこと"など不可能だ。かな。

あとついでに同レス内でAAの後の敵の飛行機は〜の下りが次レスの最初の部分と被っちゃってるね。

>>302
海面と僅かに"降れる"超低空飛行

"触れる"の方が正しい…のかな?

317名無しさん:2022/07/20(水) 22:27:55 ID:3U5Zl6vs0
乙です
何気ブーンとオサムが一緒にいるの初めてか?
デレシアと風呂場でアレやってたの知られたらオサムの脳ぶっ壊れそうだなwww

318名無しさん:2022/07/21(木) 19:06:50 ID:O.al8bkU0
>>316
毎回ありがとうございます!
今回はいつにもまして酷い誤字脱字でお手数をおかけしました……

319名無しさん:2022/08/16(火) 17:28:27 ID:Dd2ljih60
今度の日曜日にVIPでお会いしましょう

320名無しさん:2022/08/17(水) 10:14:00 ID:fpT2woW20
早く感じる 楽しみ

321名無しさん:2022/08/22(月) 21:23:54 ID:uIzofZlI0
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その日、世界の天秤が傾いた。
傾いた天秤の中身がどうなるのか、言うまでもないだろう。
ましてやそれが――

                                         ――ボブ・スプレマシー

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September 25th AM10:01

それは成人男性の身の丈ほどもある二振りの刃だった。
湾曲したその特徴的な刃は実体があるにも関わらず、その切っ先が見えない程の速度で眼前を通過した。
息をする間もなく繰り出される連撃を生身の人間でありながら回避する男は、その手が持つ強力な拳銃を使う機会を窺う余裕もなかった。
ジョルジュ・マグナーニの目の前にいる円卓十二騎士最古参の男は、同郷相手でも一切手を抜くつもりはないようだった。
  _
(;゚∀゚)「くおっ!!」

瓦礫の上をバックステップで下がり、足場が崩れたおかげで顔を両断するはずだった一線を避けたジョルジュの肩が背後から掴まれ、思いきり引っ張られる。
その直後に言葉がかけられた。

〔欒゚[::|::]゚〕『同志!! 下がって!!』

<::::_/''>

砂漠用の迷彩を施されたCクラスの棺桶は、ジョルジュと入れ替わるようにして現れたジョン・ドゥの首を一閃。
更に見せつけるようにして両側から袈裟斬りにし、肉塊を作り上げた。
数の有利はジョルジュたちにあったが、戦場の環境は相手に地の利があった。
四足歩行という異形の脚部は、瓦礫と化した町での白兵戦を優位にしている。

高周波振動の音はしないが、単純な膂力と速度、そして正確に装甲の隙間を狙う技量がジョン・ドゥを切り殺したのである。
ジョルジュはその棺桶を使う人間を知っていた。
無論、名前だけだが。
円卓十二騎士の第一騎士、シラネーヨ・ステファノベーメル。

詳細は知らないが、確実に言えるのはその戦闘能力がシナー・クラークスを凌駕しているということ。
シナーの戦闘能力はジョルジュよりも高い。
つまり、ジョルジュが正攻法で勝つことは無理ということだ。

〔欒゚[::|::]゚〕『距離を取って撃ち殺せ!!』

ジョルジュが離れたのを機に、銃弾が一斉に襲い掛かる。
ジュスティア陸軍相手を前提としているため、ライフルに装填されているのは対強化外骨格用のそれだ。
追加装甲でもない限り、その使用者を殺めることのできる強力な銃弾。

<::::_/''>『小賢しい』

322名無しさん:2022/08/22(月) 21:24:24 ID:uIzofZlI0
銃撃が始まる寸前、四つの足が動いたのをジョルジュだけが目視できた。
限界まで前傾姿勢を取った次の瞬間、その体が加速。
爆ぜるようにして後退し、左手のショーテルを投擲した。
そのショーテルはジョン・ドゥの手が持つライフルを切り裂き、柄から伸びるワイヤーによって誘導され、つむじ風の様に周囲を薙ぎ払う。

まるでそれ自身に意志があるかのようにうねり、次々と味方を襲っていく。

〔欒゚[::|::]゚〕『う、おおおっ?!』

殺傷力は先ほどよりも落ちているとはいえ、十分すぎるほどの牽制が出来る。
特に、その戦闘力の断片を見せつけられれば警戒しないわけにはいかない。
照準が定まらなくなったその一瞬。
巨体が肉食獣めいた動きを見せ、その場から瞬時に移動した。

着地と同時に二体のジョン・ドゥの胴体を切り裂き、更に別のジョン・ドゥにショーテルを投げ、顔を破壊した。
その間、ジョルジュは後退しつつ、手に持ったオートマチック・ツェリザカ――ダーティハリー――を構えて狙いを付けようとしていた。
だが巨体に似つかわしくない高機動に対し、狙いが簡単に定まるはずもない。
威力は絶大だが反動も大きいため、狙いを誤ると次の瞬間には殺されている可能性が高い。

近くにいる味方に当たれば命を奪うだけの威力を持つ銃弾だけに、ジョルジュの行動は慎重さが求められるものとなっていた。
撃鉄は既に起きており、銃爪を引くだけだが、それができない。
オートマチックで放たれるのは六発だけという不安が、どうしても拭いきれないのだ。
未だジュスティアで受けた尋問の傷が癒え切らないジョルジュが逃げ続けるのは不可能であり、どこかで覚悟を決めなければならない。
  _
(;゚∀゚)「あぁ、くそっ……!!」

次々に味方が現れ、そして殺されていく。
退くしかない。
彼の周囲にいるのは組織の中でも腕利きの人間だった。
だが、まるで歯が立たない。

ジュスティアの最高戦力の中でも、上位七人――レジェンドセブン――の一人。
更に言えば、入れ替わり制の円卓十二騎士の中で最古参ということは、最も戦闘経験のある人間ということでもある。
ジョルジュが知る情報はそこまでだが、それだけで十分だった。
こうして目の前で圧倒的な力を見せつけられれば、嫌でも理解することになる。
  _
(;゚∀゚)「ミルナ、クックル!! こっちに来れるか?!」

だが無線機はむなしくホワイトノイズを吐き出すだけ。
大規模な通信妨害が行われている様だった。
自軍が壊滅状態にあるという状況からか、それとも、あえて無線を完全に封鎖した状態で戦うことが出来るのか。
  _
(;゚∀゚)「ちっ……!! おい、俺をミルナたちのところに連れていけ!!
    こいつは円卓十二騎士だ!! 全力中の全力で殺せ!!」

ここで負けることは許されない。
ジュスティアにはまだこのレベルの人間が後11人はいることになる。
この日の為に訓練と実戦を積んできた部下たちがまるで赤子扱いだ。
調整を済ませた量産機ではまるで太刀打ちできない。

323名無しさん:2022/08/22(月) 21:25:36 ID:uIzofZlI0
ミルナ・G・ホーキンスとクックル・タンカーブーツの二人ならば、この規格外の人間を相手に戦えるはずだ。
あの二人と合流すれば、生存率が高まることは確実だ。
正面から戦って勝てる相手でないと判断したジョルジュは、この場からの撤退を決めた。

<::::_/''>『指揮官が逃げるとは、情けないな!!』

何と言われようとも、生きていなければ意味がない。
挑発に乗るような矜持は持ち合わせがなかった。

〔欒゚[::|::]゚〕『同志、お急ぎください!!』

銃声を背に、ジョルジュはジョン・ドゥに担がれてその場から逃げ出した。
果たしてどこまで持ちこたえられるのか。
10分も稼げれば御の字と言えるだろう。

<::::_/''>『雑魚が集まったところで、何も変わらん』

〔欒゚[::|::]゚〕『いいや、変わるね!!』

ライフルを撃ちながら男が答える。
答える義理などないのに。
答えたところで何かが変わることは無いのに。
あと少しの命だというのに。

それでも、男は答えたのだ。

〔欒゚[::|::]゚〕『世界は、今日変わるんだ!!
      俺達が変えるんだよ!!』

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第十章 【 Ammo for Rebalance part7 -世界を変える銃弾 part7-】

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324名無しさん:2022/08/22(月) 21:25:56 ID:uIzofZlI0
同日 同時刻

市長執務室にて、フォックス・ジャラン・スリウァヤは情報の統合による状況の整理を行っていた。
既に街に質量弾が撃ち込まれ、スリーピースが持つ防衛機能は7割以下に落ち込んでしまっている。
対空防御の穴を突かれるのは時間の問題だった。
海戦ではまだ目新しい戦果を挙げられていない。

爪'ー`)y‐「……ふぅ」

溜息を吐き、万年筆を机に置く。
海軍大将が死に、陸軍大将は命からがら逃げ伸びた。
既に陸軍は大打撃を受けており、大規模な妨害電波による攪乱と円卓十二騎士を二人派遣することでどうにか偽りの均衡を演じている。
正直なところ、陸軍が受けた打撃は極めて大きかった。

全てを失ったわけではないが、これだけの短時間で半数近くを失ったのは明らかに予定外だ。
超長距離からの非常識な砲撃がなければ、こうはなっていなかった。
既にハート・ロッカーが起動し、砲撃を開始しているという事実はジュスティアだけでなくイルトリアにとっても脅威だ。
派遣したハロー・コールハーンからの連絡は途絶えており、状況は分からない。

同様に、敵艦に潜入しているワカッテマス・ロンウルフからも連絡がない。
だがラヴニカにいるティングル・ポーツマス・ポールスミスからは連絡があり、ラヴニカでの武装蜂起が成功した旨は聞いていた。
更に、アサピー・ポストマンと共に行動しているニダー・スベヌも連絡を寄越してきたが、イルトリアに向かう敵を追跡しているというものが最後だった。
街の外に円卓十二騎士の半数を派遣しているため、街の中の守りも完璧とは言えない。

次に敵が打つ手は容易に想像が出来る。
市街戦は決して避けることのできない展開だろう。
特に気をつけたいのは海上から上陸してくる敵だ。
積極的な姿勢に切り替わった敵艦隊を止められないと仮定すると、次に控えているのは上陸戦。

ラスト・エアベンダーの飛行可能な高さ次第では、スリーピースに迎撃用の兵を送らなければならない。
敵艦の到着までは後10分程度だろう。
それまでに打てる手を打たなければ、ジュスティアは負ける。
敵戦艦とハート・ロッカーが健在である以上、それは避けられない。

戦闘における攻撃可能範囲は絶対だ。
より遠方からより正確な攻撃が出来るのであれば、反撃を気にせずに一方的に相手に大打撃を与えることが出来る。
こちらは人員を派遣しているが、それが効果を発揮するまでには時間がかかる。
こればかりは現場の人間達を信じるしかないが、状況が状況であるため、絶対はない。

爪'ー`)y‐「……保険をかけるか」

電話を手にし、フォックスはダイヤルを押して言葉通りの保険をかけることにした。
彼が電話を終えた時、状況は更に変化していたのであった。

325名無しさん:2022/08/22(月) 21:26:57 ID:uIzofZlI0
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同日 同時刻

ジュスティアの海上は大荒れだった。
残骸と化したジュスティア海軍の艦隊を巨大な空母が蹴散らし、容赦なく進んで行く。
空母であるオーシャンズ13はそれ一隻だけで十分な壁として機能するだけでなく、侵攻対象の湾に対して物理的に接岸することで部隊を安全に上陸させる役割を担っていた。
後方に控えるロストアークによる砲撃は一発単位で指揮を向上させ、同時にジュスティアの士気を低下させる。

ワカッテマス・ロンウルフはジュスティア攻略の要であるロストアーク内で、大規模な妨害工作を行っていた。
円卓十二騎士として彼がティングル・ポーツマス・ポールスミスと共に与えられた任務は、正体不明の秘密結社に潜入し、その目的と作戦の一切合切を把握すること。
そして、相手にとって最悪のタイミングで出鼻を挫くこと。
潜入中の報告は全て各自に委ねられ、どこまで手を貸すのかも委ねられていた。

結果、ワカッテマスが選んだのはまさにジュスティアに攻め入るこの瞬間だった。
彼が潜入して分かったのは、敵組織の持つ圧倒的な軍事力と用意周到な準備は決して崩せないという非情な現実だった。
用意されていた棺桶の総数と性能はジュスティア軍を凌ぐほどであり、今日を迎えるにあたって用意された全ての計画は容易に覆せないほど綿密な物だった。
世界各地で行う一斉蜂起。

その規模。
その執念。
計画が実行に移されるまでの間で解決できる可能性も策もないため、彼が選んだのは出鼻を挫くこと。
13隻の空母という規格外の概念。

そして、スリーピースを破壊し得るロストアークという戦艦。
少なくともジュスティア軍は正面切っての戦闘には耐えられるかもしれないが、この戦艦が持っている主砲は危険極まりない。
スリーピース唯一の弱点である質量弾を用意していることが分かったのは、出航の直前だった。
今ワカッテマスにとって優先するのは主砲の無力化だった。

合計20門ある主砲の内、5門を無力化することが出来ているが、まだ15門も残されている。
自動装填装置に細工をしたことが功を奏し、今のところは砲撃を抑え込めているが、修理にどのくらい時間を費やすのかはまるで読めない。
優秀なエンジニアが乗っている可能性を考えれば、後5分もすれば解決してしまうかもしれない。

(#´・ω・`)「待てよああああ!!」

326名無しさん:2022/08/22(月) 21:27:36 ID:uIzofZlI0
背後から怒鳴りながら走ってくるショボン・パドローネもまた、解決しなければならない問題だった。
今、ワカッテマスは船中から狙われる身となっていた。
操舵室に向かって進んでいることを悟られないように戦艦内を走っている間も、思考を止めることはしない。
構造は理解しているため、逃げ道に迷うことは無かったが――

( <●><●>)「ふんっ……!!」

――出会い頭に現れる人間を掌底で殴り倒し、武器を奪い、拾い上げた閃光手榴弾を背後に投げ捨てて行くのには限界がある。
狭い船内で使うことを想定した棺桶がいないことが幸いだったが、Bクラスの棺桶が出されることは時間の問題だった。
奪い取った銃に装填されているのは通常の弾だった。
生身の人間を殺すことは出来るが、棺桶相手には意味を成さない。

船の中で撃てば船の隔壁を貫通し、思いもよらない被害を生み出してしまうためだ。

( <●><●>)「さて、どうしたもんですかね」

主砲の無力化は絶対の任務だ。
スリーピースが無事である限り、壁を越えて侵入しようとする敵は蚊の様に落ちることになる。
だがその壁が失われてしまえば、ジュスティアは混沌の坩堝と化す。
外からの攻撃を防ぐ壁が転じて内部の人間の退路を断つことになる。

( <●><●>)「ふぅむ」

数の力をどう抑え込むのか。
いつ、どんな時でも彼はその状況に直面してきた。
モスカウの統率者である“ロールシャッハ”が使用する棺桶“ウォッチメン”の能力で補えるのは、いつでも限りがあった。
それはいつものことであると同時に、彼がこの仕事を続ける理由の一つでもあった。

容赦のない制約の中で自分を試す。
己を試すという行為は、彼にとって幼少期から常にあったものだ。
学力、体力、人望など、あらゆるものを試すことで自分の力を知ることが出来る。
それは危険と隣り合わせのものだが、彼はその快楽から逃げることが出来なかった。

試して、知る。
一つの結果が幾つもの結果に転じるその瞬間が、彼にとって生きているということを実感させた。
謎を解き明かすことは彼にとってその代案でしかなく、モスカウの最高責任者の椅子に座ることになったのはその産物に過ぎない。
彼にとって現段階で最大の目標は、ある女の素性を知ることにあった。

今はその過程であり、世界の天秤を狂わせようとする輩の計画を邪魔することはついででしかない。
無事に真の目的を達成するためには、この場を生きて抜け出さなければならない。

〔欒゚[::|::]゚〕『逃がすか!!』

( <●><●>)「あー、もう」

一機のジョン・ドゥが道を塞ぐようにして現れ、拳を握り固めて振りかぶり、襲い掛かってきた。
その速度は人間を遥かに凌駕しているが、ワカッテマスの動体視力と彼の肉体を補助するウォッチメンの能力が力の差を埋め合わせる。
狭い空間であることと、味方が大勢いることから銃を使うという選択を選ばなかったのは正解だが、棺桶を使っての格闘戦は経験値が物を言う。
余裕をもって右ストレートを回避し、ワカッテマスは猫の様にしなやかな動きで相手の懐に入り込む。

327名無しさん:2022/08/22(月) 21:28:18 ID:uIzofZlI0
ジョン・ドゥの腰のホルスターから拳銃を抜き取り、その銃腔を相手の腹部に向けて銃爪を引く。
連続で放たれた銃弾は装甲を撃ち抜き、守られていた内臓を著しく損傷させた。

〔欒゚[::|::]゚〕『ごふっ……!?』

彼らの装備については熟知している。
棺桶が持っている武器にだけは対棺桶用の弾が装填されていることも、知っていた。
ようやく戦える武器を手にしたワカッテマスだったが、銃声によってこちらの位置は更に広く知れ渡ることとなった。
瀕死の男を押しのけ、右舷甲板に通じる扉を開いた。

潮風と砲声が一気に飛び込んできた。

( <●><●>)「うん、良くないですね」

海面に浮かぶ船の残骸はジュスティア海軍の物が多く、戦況が芳しくないことを物語っている。
やはり一斉に起きた自爆がジュスティア海軍に一番の打撃を与えたのだろう。
連携力を失い、虚を突かれた軍隊は極めて脆くなる。
ましてや指揮官を失った後ともなれば、混乱が収まるのはまずもって不可能と言える。

二つの砲撃にさらされれば、スリーピースはひとたまりもない。
スリーピース唯一の弱点である質量弾についてこうも早く看破されるのは、流石に予想外だった。
いや、正確に言えば、本番用の砲弾として爆発以外の手段で壁を破壊する用意があったことが予想外だったのだ。
敵の準備は完璧だった。

用意周到。
最悪を予期して最善を尽くす、という基本に忠実な準備でありながら、一切の油断もない。
ジュスティアを相手にするということをよく理解している。
甲板を走りながら、ワカッテマスは相手に対して畏敬の念を抱いていた。

世界を変えるという目的を達するために用意してきた歳月と執念は、呪いの類と言っても過言ではないだろう。
標的も正確に定め、その攻略についても徹底している。

(#´・ω・`)「見つけたぞ糞野郎が!!」

( <●><●>)「あ、もう来ちゃいました?」

筋力補助を受けたワカッテマスの走る速度と、薬物によって強化されたショボンの速力は拮抗していた。
巨大な戦艦の甲板は波に揺られて左右に傾き、足場は不安定だった。
未だ健在の主砲を無力化するという目的を気取られないよう、ワカッテマスは別の入り口から再び船内へと向かった。
階段を一気に飛び降り、狭い通路を全力で駆け抜ける。

曲がり角は壁を使って走り抜けることで速度を落とさないようにし、時間的な余裕を少しでも捻出するように努めた。
主砲を無力化する為に彼が用意したプランは二つ。
一つは直接手を下すこと。
もう一つは、すでに仕掛けが終わっているが、装填される砲弾の細工が発動することだ。

時間がなかったために大掛かりな仕掛けではないが、自動装填装置の不備を突いたその細工は実際に上手く効果を発揮した。
装填される砲弾に爆薬を仕掛け、砲撃しようとした瞬間に砲門が吹き飛ぶというシンプルな物だ。
一つは遠隔操作で爆破できるようにしていたこともあり、任意のタイミングで砲弾が置かれている場所ごと吹き飛ばすことが出来たが、他の場所は健在。
仕掛けを施した砲弾がいつ使われるのか分からないため、残った三か所については自ら手を下さなければ早急な無力化は不可能だ。

328名無しさん:2022/08/22(月) 21:28:58 ID:uIzofZlI0
だがどちらも重要な場所であるため、常に兵士が待機している。
侵入は容易ではない。

(#´・ω・`)「待てって言ってるだろうが!!」

( <●><●>)「嫌ですよ、男との追いかけっこなんて」

〔欒゚[::|::]゚〕『通すか!!』

曲がった先でジョン・ドゥが2機、両手を広げて道を塞いでいる。
ワカッテマスは速度を緩めることなく走りながら、奪った拳銃を発砲した。
正確に頭部のカメラを撃ち抜かれた2機は仰向けに倒れて沈黙した。
死体を乗り越え、すぐに水密扉を閉めてバルブをねじ切った。

これで多少は時間が稼げる。
船を沈めるという最終手段を取らずに済むよう、やれる限りの事をするしかない。
モスカウの統率者は静かに息を吐き、意識を任務に向けて集中させた。
ジュスティアが敗北するということは、正義の天秤が傾くということ。

そうなれば、世界は――

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             ____
i√i¨}==、     __ィf===========ト丶
  i|:i}  ー 、 {辷ア'¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨}i}\丶
  i|:i} i/i ii } i}イ {i/i}   {i/i}  }i}//\}                            
\i|:i} i/i ii },ri|  {i/i}   {i/i}  }i}//}¨       ,r‐t、
、 .ムi}   ,ィ升f、   ┌i    ┌i 込、/}=ri|    i}/i}圦      r=i   _
 乂i}_/  /乂}     ¨     ¨    r‐t辷*。__i}/i}  `i、     | イ,少'´ ̄¨
 /}、込ム__//iillム-‐‐‐冖宀冖¬'¨ ̄|  | |\_斧'i}   }   | /i}
  \彡ヘ/_/            .......i|  | |乂_}}イ'    i}   /..{/}            /}
    }、//}、_/            ............i|  | |i/\ ̄\=‐、i}¨i_/. //i}          //
    iト、/ム          ...............i|  | |{  / ̄ ̄ヽ__ノフ7劣辷i}         /イ___
    / i}斧ム         ...............i|  | |i\/:.:.:.:.:.:./i}/ ̄ ̄|i\込、_ -‐_ -‐'./   /|
       i}、州i}\      ...................i|  | |≧=‐-≦「_イ´ ̄ ̄¨¨¨´t辷__〕__.ィ.........../ i|
       ≧=≦ム==f宀 冖冖冖¬'¨¨ ̄    ,、     r‐ュ          ´ ̄¨¨¨¨' \_
      /厂≧=‐\      ,    ゜ 
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同日 AM10:25

相手は戦闘のプロだった。
困難な任務に幾度も参加し、成功を収めてきた。
イルトリア軍人として訓練を積み、経験を積み、実戦を生き延びてきたことは何よりも自信につながっていた。
その自信はジュスティア軍に対しての過小評価につながり、そして、今につながる。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『ぬぇああああ!!』

329名無しさん:2022/08/22(月) 21:30:44 ID:uIzofZlI0
レーザーによる攻撃を諦め、力任せに振りかぶる巨大な鉤爪。
その挙動の全てから、彼がこれまでに経験してきた戦闘の多くを理解することが出来る。
ダニー・エクストプラズマンは攻撃を回避し、冷静に目の前の巨漢を分析していた。
武力、戦闘力があれば大概の事は解決できると信じてきた動きだ。

似`゚益゚似『しっ!!』

隙だらけとなった胴体に放ったのは槍の様な鋭い前蹴り。
接触する寸前に高周波振動を付加し、破壊力を爆発的に向上させる。
しかしその一撃を、横合いから伸びてきた四枚の盾が防ぐ。
高周波振動と触れた盾は壊れることなく、金属同士を擦り合うような甲高い音を上げてダニーの攻撃を防ぎ続けている。

本来は自分の装甲として身にまとっている物が展開し、薄い盾として広域の防御が出来る棺桶なのだろう。
つまりは防御特化のコンセプト・シリーズ。
攻撃については驚異足り得ない。

〔 【≡|≡】〕『雄雄雄おおっ!!』

似`゚益゚似『キャオラッ!!』

盾を足場にして飛び上がり、空中で四度蹴りを放つ。
演舞でしか見せることのないようなその攻撃を実戦で披露したのは、決して彼の油断や過信が原因ではない。
武術全般を習得し、これまでは演舞として披露されていた技の数々を実戦で使えるように鍛え抜いてきた自信に基づく行為だ。
攻撃を全て防いできた盾を蹴り飛ばし、着地と同時にバク転で距離を置く。

直後、八本のレーザーがその場を網目状に切り裂き、離れた位置に着地したダニーに向かって伸びてくる。
しかしそのどれも彼に当たることなく虚空へと消えてゆく。

似`゚益゚似『だおっ!!』

強烈に踏み込み、その場から一気に跳躍する。
一見して無防備な空中だが、攻撃を担当している人間は今再装填の際中。
迎撃するとしたら、盾を持った人間だけとなる。
ダニーにとって盾は攻撃を防がれるだけでなく、こちらの攻撃の足場にもなり得るものだ。

相手が次にどの手を選ぶかによって、更に力量を測ることが出来る。
放つのは正中線連撃。
強化外骨格に身を包まれていたとしても、そこの奥にある急所に変わりはない。
正中線がある以上、その法則から逸脱することはまずない。

そう。
棺桶にも急所は存在する。
各関節のつなぎ目。
機械の集中する中心部。

そこを的確に狙い、打撃を与えることで人体と同じかそれ以上の損傷を与えられる。
人体であれば精神力でカバーできることもあるが、機械の場合はそうはいかない。
一度エラーを出せば命令を受け入れず、動くことは無い。
股間、水月、喉、人中。

330名無しさん:2022/08/22(月) 21:31:56 ID:uIzofZlI0
そこに存在するのは関節の要所、精密機器の中継地点、そして外部情報を収取する重要箇所だ。
一秒にも満たない間に放たれた必殺の連撃を防ぐために再び盾が展開される。
想定通りだった。
確かにここではそうするしかないだろう。

互いに役割を決めているのであれば、そうするしかない。
しかしそれでは足りない。
盾を踏み台にしてさらに跳躍し、狙うのは青黒い装甲を持つ盾役の棺桶。
防御特化であろうとも、それを打ち破る武術の前には意味を持たない。

頭上から重力を加えた踵落としを相手の頭部に放つ。

〔 【≡|≡】〕『んなああぁっ!!』

こちらの意図を寸前で察したのか、両腕を交差させてその攻撃を防ぐ。
衝撃が腕を通じて下半身に向かい、そして足場にしている瓦礫に伝達する。
瓦礫が砕け、足場が崩落する。
防御は出来ても姿勢制御は平均通りの性能であるため、そのまま姿勢を崩して転倒した。

一方、備えていたダニーは着地と同時に疾駆し、不安定な足場から強烈な足払いを鉤爪の棺桶に向けて放った。
再装填の終わったレーザーを放とうとしていた姿勢が大きく崩れ、レーザーは空に向けて放たれた。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『うおおおっ?!』

姿勢を元に戻そうと力むも、足場が脆いため、すぐにまた姿勢を崩す。
どちらもCクラスということが災いし、瓦礫の山と化したこのオリノシではその重量と巨体が仇となる。
崩れた姿勢を見逃すことなく、後ろ回し蹴りを無防備な股関節部に向けて放った。
その一撃はつるはしの様に鉤爪の棺桶の股関節部に直撃したが、妙な手応えにダニーは眉をしかめた。

似`゚益゚似『追加装甲かっ……!!』

彼の打撃が間接に到達した瞬間、足に覚えた違和感。
そして一撃を当てた途端に外れた黒い装甲。
通常の設計とは別に追加された肉厚の装甲に間違いない。

似`゚益゚似『それが弱点か!!』

追加装甲はとどのつまり、装甲の補強が目的だ。
通常の装甲では不安であることの裏返しであり、排熱の関係で装甲の厚みが薄いことを示唆している。
狙うならば追加装甲のはがれた場所。
更に連続して蹴りと拳を放ち、装甲の継ぎ目を執拗に狙って攻撃するのが定石。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『こっ、こいつ!!』

似`゚益゚似『逃がすか!!』

腕と足を駆使した連撃は練り上げられた武の極致。
例え実戦経験豊富な軍属だったとしても、防ぎきることは不可能だ。
巨大な氷を削る刃の様に追加装甲を剥ぎ取り、元の白い装甲が露わになっていく。
その連撃を防ごうと青黒い盾が介入してくるが、その都度弾き飛ばす。

331名無しさん:2022/08/22(月) 21:34:09 ID:uIzofZlI0
防御力は比類がないほどに高いが、衝撃にはそれほど強くはない。
折り畳み式の構造上、特に上下への衝撃は負荷がかかるため安全装置が備わっているはずだ。
事実、ダニーが弾いた盾は関節部に負荷がかかったようで、再び動き出すまでに時間がかかっている。

〔 【≡|≡】〕『クックル!!』

展開していた盾が一斉に使用者の元に戻り、分厚い装甲へと変貌する。
防御による援護を早々に諦めた青黒い棺桶がダニー目掛けて突進する。
肉薄する巨体、後退する巨体。
ダニーはそのどちらにも対応した。

似`゚益゚似『ふんぬっ!!』

まずは青黒い棺桶。
接近してくるエネルギーを利用し、左拳の直突き。
高周波振動は使わず、純粋な技術と力を合わせた攻撃。
狙い違わず胸部に拳が触れた瞬間、強い踏み込みによって威力を増強。

つま先から段階的に加速を加えたその一撃は、通常の直突きとは一線を画す威力を発揮した。

〔 【≡|≡】〕『ぬっああああ!?』

装甲が頑丈でも、衝撃を殺しきることは出来ない。
ましてや、装甲の内側に向けて衝撃が入る様に放った一撃は至近距離で暴徒鎮圧用の弾を食らうようなものだ。
重量のある棺桶が宙を舞い、瓦礫の山に背中から倒れ込んだ。

似`゚益゚似『ちぇえあああ!!』

そして続く一撃は、正面の追加装甲をほとんど失った棺桶に向けての渾身の右ストレート――

[,.゚゚::|::゚゚.,]『っせるかよ!!』

――まるで空間そのものを切り裂く様に、上と横から合計八本のレーザーが襲い掛かる。
逃げ道はない。
元より、後退という道はない。
前に進む。

ただ、それだけ。

似`゚益゚似『呼っ!!』

本命は、右ストレートに偽装した超低姿勢からの足払い。
上から迫るレーザーが当たるよりも早く、ダニーの足払いは相手から足場を奪い取った。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『そう何度も!!』

不安定な姿勢から腕を地面に突き立て、それを軸にしたアクロバティックな回し蹴り。
しかし付け焼き刃的な攻撃だ。
左腕の高周波振動を起動させ、防御と攻撃を両立させる。
回し蹴りを放った右足を受け止めると、金切り声の様な音が鳴り響く。

332名無しさん:2022/08/22(月) 21:35:04 ID:uIzofZlI0
辛うじてふくらはぎに残されていた追加装甲が粉々に散って行く。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『やれ!!』

〔 【≡|≡】〕『応!!』

頭上から両手を組んだ棺桶が降下。

似`゚益゚似『ちっ……!!』

すかさず高周波振動によって全身を守る。
相手がこちらの衝撃を防ぎきれないのと同じく、こちらも相手の重量を完全に防ぎきることは出来ない。
左脚で直上からの攻撃を防ぎ、体術によってその衝撃を全て地面へと受け流した。
足場となっていた地面が大きく陥没し、三人は体勢を崩す。

ダニーだけはその状況でも冷静さを失わず、白い棺桶の両腕に備わった排莢口に打撃を加えるだけの余裕があった。
一撃を加え、ダニーは即座に両者から距離を取る。

似`゚益゚似『ふーっ!!』

深く息を吐いて呼吸を整え、ダニーは右手右足を前にして構えた。

〔 【≡|≡】〕『化け物か、こいつ……』

[,.゚゚::|::゚゚.,]『くそっ、排莢出来ねぇ……!!』

これで近距離戦に集中できる。
油断なく、躊躇いなく。
確実にここで息の根を止める。

似`゚益゚似『――しっ!!』

吐きだした息を置き去りに、ダニーは疾駆する。
狙うのは防御特化の棺桶。
打撃が駄目ならば、別の技で仕留めればいい。
高周波振動さえ防ぎきる鎧。

だが、動く以上は関節が存在する。
足元の瓦礫を蹴り上げ、相手のカメラを物理的に一時無力化する。
その隙に低い姿勢から一気に飛び掛かり、相手の肩に背後から乗る。

〔 【≡|≡】〕『んなっ?!』

似`゚益゚似『ふっ!!』

首を脚で包むにようにして胡坐をかき、全体重と反動を利用して――

333名無しさん:2022/08/22(月) 21:35:25 ID:uIzofZlI0
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同日 同時刻

“魔術師”シラネーヨ・ステファノベーメルは無心で戦闘を続行していた。
両手のショーテルは的確にジョン・ドゥの関節部に突き刺さり、その奥にある人間の体を傷つけ、致命傷を与える。
十字砲火を浴びるも、銃弾を受け流すように設計された流線型の装甲の恩恵もあって致命傷には至らない。
バッテリーの残量は十分とは言えないが、ここにいる敵軍を排除するには十分だ。

<::::_/''>『……!!』

彼の使用する“ロレンス・オブ・アラビア”にとって、この戦場は有利とは言い難い。
液体か、もしくは細かな粒子状の物がなければその性能を最大限発揮することは出来ない。
現実的な問題として、彼の棺桶が有する武器は両手のショーテルだけだ。
地の利がなければ、その威力はただのナイフ程度でしかない。

それを補うのが経験と実力、そして身につけてきた武力だ。
今彼が敵対している様な、無抵抗な人間を殺してきた即物的な兵士とは違い、実戦でこそ真価を発揮する力。
例えば、ショーテルの切っ先を使って釣り上げた瓦礫を投擲したり、刃の食い込んだジョン・ドゥを盾にしたりと、戦い方は多彩を極める。
時間はかかるだろうが、この戦場で後れを取ることなど有り得ない。

「何だ、この体たらくは」

その声の主は、50メートルほど先の場所で停車していたジュスティア陸軍の車輌から姿を現した。
誰もいないものと思っていたが、何かに苛立ち、我慢しかねて現れたようだった。
そして奇妙なことに、白いパンツスーツに身を包んだその女の出現と共に銃撃が止んだ。
あまりにも異様な光景に、思わずシラネーヨは立ち止まって攻撃の手を止めていた。

334名無しさん:2022/08/22(月) 21:36:18 ID:uIzofZlI0
その女に、彼は見覚えがあった。
爆殺されたライダル・ヅーの死を偽装するため、ジュスティア警察が雇い入れた女。
名は――

〔欒゚[::|::]゚〕『ど、同志キュート・ウルヴァリン!?
      何故ここへ?!』

o川*゚-゚)o「殺しの童貞は捨てたが、結局のところこの程度か」

――キュート・ウルヴァリン。

<::::_/''>『なぜ貴様がここに?』

o川*゚-゚)o「シラネーヨ」

それは、紛れもなくシラネーヨの声色そのものだった。
自分の声色で自分の口癖を使われたことに対する驚きよりも、その胆力に驚いた。
ここは非の打ち所のない戦場で、激戦地だ。
生身のまま姿を現すことの愚を知らないわけではないだろう。

o川*゚-゚)o「質で劣るなら数で攻め落とせばいいだけだろう。
       こんな老人相手に躊躇する必要などない」

<::::_/''>『……はっ、随分と吠えるな。
    お前、最初からこいつらの仲間だったのか』

o川*゚-゚)o「あぁ、そうだよ。
       知らなかったのか、この間抜けが」

<::::_/''>『なら、今ここで殺す』

o川*゚-゚)o「殺す? お前が? 私を?」

直後、キュートはそれまでの顰め面を歪ませ、爆笑した。
黒い手袋をはめた手で腹を抱えて笑い、目尻からは涙が流れている。
その手袋にケーブルが繋がっているのを、シラネーヨは見逃さなかった。
あれは、Aクラスの棺桶だ。

o川*゚ー゚)o「あっはっはははは!!
       本気か?! 正気か?! 痴呆症か?!
       無理だよ、無理。
       自慢の棺桶を使っても、お前は私を縊り殺すことさえ出来ないさ」

<::::_/''>『駄犬ほどよく吠える。
     多少は鍛えているようだが、その驕りは若さ故か?
     哀れなものだ』

335名無しさん:2022/08/22(月) 21:37:19 ID:uIzofZlI0
o川*゚ー゚)o「レジェンドセブンも耄碌したものだ。
       最古参の席、そろそろ若手に譲る日が来たみたいだな。
       おい、お前たちは一切手を出すな。
       これは私とこの死にぞこない、あぁ、“棺桶に入った”爺との喧嘩だ」

その高慢な態度は一切変化しないどころか、完全にこちらを見下したままだった。
生身でCクラスの棺桶を身にまとったこちらに勝てると、本気で思っているのだ。
何か策があるのか、それともただの驕りなのか。
いずれにしても、安い挑発に乗る程シラネーヨは若くない。

罠があると考えて間違いない。
このタイミングで登場し、このタイミングで裏切りを宣言したのには意味がある。
そして挑発行為。
間違いなく、何かしらの勝算があってこちらを誘っているのだ。

恐らくは装着している棺桶の性能に自信があるのだろう。
小型という点で考えれば、コンセプト・シリーズだとしても過剰に恐れる必要はない。
彼の知るAクラスのコンセプト・シリーズのほとんどが携帯性と対強化外骨格戦闘に特化させた物。
その戦闘力を上げているのは、例外なく武器の類を使用してのこと。

ダーティハリーであれば銃を。
ブリッツであれば高周波振動刀を、といった具合だ。
しかも手袋に偽装しているということは、それ自身に何かしらの力があるということだ。
精々電撃によってこちらのバッテリーを破壊する程度だろう。

電撃対策に予備のバッテリーが備わっているこちらには、大した脅威ではない。
無論、それすらも触れられればの話だ。
生身の人間に後れを取ることは絶対にない。

<::::_/''>『乗ると思うか、そんな安い挑発に』

o川*゚ー゚)o「挑発? あぁ、そう聞こえたなら謝罪しよう。
       事実を述べただけだ。
       私と喧嘩をしたくないのなら、そう言えばいい。
       怖いものな、罠だと思って一斉射撃でもされるのは。

       全員、弾倉を外して銃をその場に置き、両手を挙げて跪け。
       そんなもの、この場には必要ない。
       私一人でこいつを殺す」

その言葉に対し、周囲の残党は驚くほどにあっさりと従った。
ほとんど同時に弾倉を外し、ライフルを地面に置いた。
更には両手を頭の上に乗せ、跪いた。

o川*゚ー゚)o「これでも怖いか?
       丹念に練り上げ、積み上げ、育て上げてきた武が否定されるのが」

不意打ちの可能性がこれで消えたが、まだ不十分だ。
キュートに対して彼の本能が一切の油断を許さない現状に、何一つとして疑問はない。

336名無しさん:2022/08/22(月) 21:40:00 ID:uIzofZlI0
<::::_/''>『そこまで自信があるのか、自分の腕に』

o川*゚ー゚)o「いいや、それはない。
       だが確信がある。
       円卓十二騎士などともてはやされて図に乗った馬鹿など、恐れる必要はないとな。
       銅像を恐れる道理がどこにある?」

<::::_/''>『はっ! 言うに事を欠い――』

――直後。
彼の姿は砂塵を残して消失し、最大出力で加速。
キュートの死角となる背後に位置取り、ショーテルをその胴体目掛けて振り下ろした。
華奢な体が袈裟斬りにされ、宙を舞う。

<::::_/''>『……』

そのはずだった。
ショーテルはキュートを切り裂く前に空中で静止し、それ以上進むことは無かった。
否、それだけではない。
彼の使用するロレンス・オブ・アラビアその物が動きを止めている。

人間の反応速度で対応できるものではない。
正に必殺を確信して放った一撃だった。
キュートの意識と視界の死角を利用したその一撃は、止められたのではなく、止まってしまっていた。
彼女に触れられてすらいないというのに。

o川*゚ー゚)o「感心しないな、死角から不意打ちなどと。
       騎士のすることではないだろうに」

<::::_/''>『……』

シラネーヨは反論の声を出していた。
だが、マイクは一切機能をしていない。
棺桶のあらゆる機能が停止し、身動き一つ取れない。
バッテリーの破壊に備えた予備電源も備わっているが、それも動かない。

o川*゚ー゚)o「どうした? 女は殺せないか?
       優しいな、騎士様は」

違う。
どれだけ力んでも、彼の全身を覆う棺桶は人の力で動くことは無い。
間違いなく言えることは、彼は攻撃を受けてなどいない。
電撃で回路がショートさせられたのであれば分かるが、それでもない。

キュートは彼の耳元に顔を寄せ、囁いた。

o川*゚-゚)o「EMP――電磁パルス――だよ」

337名無しさん:2022/08/22(月) 21:41:22 ID:uIzofZlI0
その言葉の意味を、シラネーヨは知らなかった。
果たしてそれが何を指し示し、この結果に繋がったのか。
一体いつ、それが彼の棺桶を襲ったのか。
冷静に巡る思考の中、紛れのない動揺の一欠が彼の心を刺激する。

o川*゚-゚)o「気になるか? 何が起きたのか。
       だがな、もう必要のないことだ。
       貴様は今ここで死ぬんだ」

淡々と述べられる言葉。
動かない体。
シラネーヨの背筋に冷たい物が走る。

o川*゚ー゚)o「関節部に銃腔を突っ込んで撃て。
       カメラに向けて撃て。
       確実に殺すんだ。
       お前たちは、円卓十二騎士最強の男をその手で一方的に殺す。

       死体はジュスティアに見せつけてやれ」

<::::_/''>『……!!』

戦って死ぬのならばいい。
戦いに敗れるのならばいい。
不意打ちで傷つくのもいい。
だが。

何も抵抗できずに死ぬのだけは、断じて受け入れられない。
体が動きさえすれば。
腕の一つでも動けば、戦って死ぬことが出来る。
せめて何か、相手に一矢報いるまでは死ねない。

無抵抗のままに死にたくない。
無意味に死にたくない。
こんなところで死にたくない。
ただ死ぬことだけは、絶対に!

<::::_/''>『〜〜っ!!』

カメラは光学レンズを通して見える正面の世界だけを映しており、周囲で何が起きているのかは音でしか判断できない。
弾倉が装着され、コッキングレバーを引く音が聞こえる。
薬室の中の一発が地面に転がる音が聞こえる。
興奮した兵士の息遣いと跫音が聞こえる。

銃腔が間接部に乱暴に押し込まれるのが分かる。
レンズに銃腔が押し当てられるのが見える。
そして――

<::::_/''>『……』

338名無しさん:2022/08/22(月) 21:41:42 ID:uIzofZlI0
――銃声が、一斉に彼を襲った。
銃撃で関節は砕け、その先にある彼の肉体を貫通した。
内部で跳弾した弾丸が更に彼の体を破壊し、徐々に肉塊へと変えてゆく。
しかしその苦痛と恐怖は一瞬のこと。

目の前で光った白い光を最後に、彼の命は瓦礫の山に散っていたのだから――

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  π /;::::::::(,.,.(;;;::::(   ,,.,  ・っ                    ;,;;( ):::::;.    c::── '`'''::::::::::;''
   ):::::::::::::::::::::::::::/  '''''`   `        '`                     ⌒ ` !.:::τ'' ``
 τ !::::::::::::::::::::::::::::)/,,,,, γ               :'`'``:!
   (::::::::::::::::::::::::::::冫 `'`'    、,:'::::::`:::,,,,        !:::::ノ         ・
 :::':'::::::::::::::::::::::::::::;(,,,,,,,、:::::::-ー''''`'`''''''''"
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同日 同時刻

――自ら技を外し、転がり落ちるようにしてその場から避難していなければ、間違いなくダニーの頭部は宙を舞っていただろう。
代わりに左肩の装甲が吹き飛び、鈍い痛みが左腕全体に走る。
大口径の対強化外骨格用の弾は掠め飛んだだけでも十分な威力を持つ。
高周波振動の防御を発動していない場合、ダニー・ザ・ドッグの装甲は普通のBクラスの棺桶と大差はない。

似`゚益゚似『……ジョルジュ・マグナーニ!!』
  _
( ゚∀゚)「悪い、痛かったか?」

硝煙の立ち上る銃腔をダニーに向けたまま、ジョルジュはそう言った。
己の迂闊さに憤りを覚えるが、即座に気持ちを落ち着けた。
左肩の防御が失われても、彼には戦う術がある。
だが鍛え上げた体と技があっても、今の状況は圧倒的に不利だ。
  _
(;゚∀゚)「くっそ、一難去ってまた一難かよ……」

こうしてジョルジュが現れたことは、ダニーにとって予想外の事だった。
後ろ側から挟撃を担当していた“魔術師”が生身の人間を取り逃がすことなど有り得ない。
起きてはならないことが起きている。

339名無しさん:2022/08/22(月) 21:43:43 ID:uIzofZlI0
似`゚益゚似『……』

鉄壁の防御となる全身の高周波振動は、左腕以外でしか使うことが出来なくなってしまった。
しかも、左腕はマヒした状態であり、戦いに使うことも出来ない。
そのことが悟られるのは時間の問題だろう。
左腕を集中して狙われれば、果たしてどうなるのか。

考えても仕方のない話だ。
左腕を捨てる覚悟を決め、右腕を眼前に構える。
そして、全身の高周波振動発生装置を起動し、盾と矛を手に入れた。
現状を打破する戦略は、短期決戦一択。

問答は一切不要。
三人とも殺すだけだ。
  _
(;゚∀゚)「ミルナ!! 盾を!!」

〔 【≡|≡】〕『分かってる!!』

こちらの意図を察した二人が即応する。
ダニーが狙うのは当然、ジョルジュだ。
腕以外は生身である彼を殺すのが容易であること、そして、飛び道具を持つ人間であるという点で優先的に殺すのはあまりも自然。
最大出力で加速するのと同時に、足元にある瓦礫を思いきり蹴り飛ばす。

飛び道具などなくても、足場には町一つ分の瓦礫がある。
当たれば致命的な一撃となる瓦礫が横殴りの雨よろしくジョルジュを襲う。
青黒い装甲が展開し、ジョルジュを包み込むようにして瓦礫を防ぐ。

〔 【≡|≡】〕『お前が強いのは分かった、認めてやる。
       だがな、武術なんていうのは!!
       兵器の!! 性能の!! 前には!! 意味がない!!』

瓦礫を防ぎながら、こちらの突進に合わせて迫ってきた。

似`゚益゚似『ぬっ……!!』

タイミングが僅かに狂い、ダニーの体が盾に押される。
しかし、狙いは決して外さない。
展開された盾の関節部に向け、上から拳を叩きつける。
関節部にかかった負荷は設定された数字を大きく上回り、結果、関節を起点に折れ――

似`゚益゚似『ちいっ!!』

――ない。
関節部にまで強固な素材を使っているらしく、関節が折れることは無かった。
だがその駆動部は今の一撃で故障した。
残る盾は三枚。

一瞬の攻防の中、次々と盾を払い除け、蹴り飛ばして進路を確保する。

340名無しさん:2022/08/22(月) 21:44:04 ID:uIzofZlI0
  _
(;゚∀゚)「待ってたぜ!!」

盾の先に待ち受けていたジョルジュが銃を構え、こちらが絶対に避けられない状況で攻撃してくることは分かっていた。
銃爪が引き絞られ、大口径の銃弾が六発放たれる。
全てが必殺の銃弾。
高周波振動で弾丸自体を削り落としても、衝撃で各部位が使い物にならなくなるのは必至だ。

ならば、受け流せばいい。
狙われるのが分かっているのならば、それも出来る。
右手の手刀と右足で銃弾の軌道を横合いから妨害し、全て自らの周囲に着弾させた。
演舞の類として披露されるその技は、だがしかし、ダニーの技術があれば実戦でも十分に使える。
  _
(;゚∀゚)「なっ?!」

既にジョルジュは間合い。
盾は全て払い除けた。
踏み込み、放つのは基本の拳。
基本を極めた者が放つ崩拳の威力は、人間を即死させるほどのものを発揮する。

似`゚益゚似『破ぁっ!!』

右拳の一撃は、彼に敵対する者の命を奪い取るのだ。

〔 【≡|≡】〕『通じないんだよ!!』

――飛び出してきた棺桶によって、ダニーの拳は正面から受け止められた。

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     |  ヽ   ./´./ . ,!ノ   /             :!______________________二二二_____
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ミルナ・G・ホーキンスの人生は、失うばかりの人生だった。
幼少期、彼は貧困によって夢を失った。
彼の進む道は軍人以外になくなったが、両親はそれを喜んだ。
今ではその頃の夢を思い出すことはできない。

341名無しさん:2022/08/22(月) 21:45:19 ID:uIzofZlI0
軍人となり、命令に従って生きるのは楽だったが、彼の心は満たされなかった。
やがて部下を引き連れる立場となり、ようやく、彼は己の心が求めるものが理解できた。
それは支配欲。
力によって物事をあるべき姿に変えるという、人間の持つ薄暗い欲望の一つだ。

彼の部隊は常に作戦を成功させてきた。
戦果は求められた以上を叩きだし、世界は彼の望んだ姿に近づいていった。
イルトリアの考え方は彼にとって眩しいほど理想的だった。
力による支配。

力による変革。
そう。
力があれば世界を変えることが出来る。
自分の夢を叶えるために自分の力を使えばいい。

今の時代にこそあった考え方であり、彼にとって最高の指針だった。
イルトリアという街への愛着は、人一倍あると自覚していた。
だが。
ある日を境に、彼の軍歴にケチが付き始めた。

派遣された戦闘地域で、奴隷として飼われていた耳付きを部下に射殺させた日。
害獣を始末させただけだったのだが、その日を境に部下からの人望が徐々に失われていったのだ。
確かに、イルトリアでは耳付きに対して差別的な傾向はない。
しかし世界的に見れば、耳付きは害獣の類として認識されている。

間違っているのは自分ではない。
“ビースト”と呼ばれる耳付きの人間がイルトリア軍でも高い地位にいるのが間違いなのだ。
軍内部には彼の考えを理解する者もいた。
クックル・タンカーブーツもその内の一人だった。

耳付きに関する発言で注意を受け、謹慎処分を受けた時にミルナの気持ちに疑念が生まれた。
果たして、間違いはこのままでいいのだろうか。
ジュスティアに対していつまで経っても宣戦布告をしないのは、なぜなのだろうか。
争いを避ける姿勢は、イルトリアらしいと言えるのだろうか。

やがて、クックルが降格処分を受けて除隊したことでミルナはイルトリアに対して強い不信感を抱くようになった。
彼が憧れていた、心酔していた強いイルトリアは失われつつある。
取り戻すためには、荒療治が必要になる。
改めて世界のルールを統一すれば、その目的は達成することが出来るはずだ。

彼は争いの中に身を置かなければ正気ではいられなかった。
イルトリア軍を抜けた後、彼は他の軍人たちと違って名を変えることなく傭兵会社に籍を置いた。
世界中に派遣され、殺しを請け負った。
街を襲い、無垢な人間を殺すたび、彼は心を痛めた。

だがそれ以上に心を痛めたのは、少年兵の存在だった。
少年兵は不要な存在だ。
子供が人を殺すなど、あってはならない。
ましてや、子供が殺されることなど許容されてはならない。

342名無しさん:2022/08/22(月) 21:45:41 ID:uIzofZlI0
世界のバランスは、間違いなく狂っていると思った。
力は正しく使わなければならない。
壊れたバランスを正すためには力が必要だ。
真に強いイルトリアがこの世界に再誕すれば、無用な争いはなくなる。

いつかその日が来ることを夢見て、ミルナは銃を手に戦い続けた。
やがてクックルが彼と同じ傭兵会社に加わり、傭兵として民間人を殺すことにも慣れてきた頃、運命の転機が訪れた。
クックルを介したティンバーランドという秘密結社からの接触だった。
彼らが掲げる世界を一つにするという目標に触発され、参加を快諾した。

世界が一つになっても争いがなくなることはないだろう。
管理されることを嫌う人間は決していなくなることはない。
故に、世界という基準で見た時にそうした人間は明確な悪となる。
悪を撃ち滅ぼすための暴力が正義として定義され、ジュスティアの様な自己満足の正義が淘汰される。

世界から耳付きを絶滅させることで、世界は完全な形に向かって行く。
全ては、世界が大樹となる為に必要な行動だった。
故に。
今、防御特化の棺桶を用いる自分とジュスティア内部に精通しているジョルジュの命を天秤にかけた場合。

優先されるのは、ジョルジュの命を守り、円卓十二騎士の命を奪うこと。
その為であれば、ここでマン・オブ・スティールを失っても構わない。
ほぼ生身のジョルジュを守るため、彼の前に飛び出した行動にミスはない。
ここで相手の拳を受け止めれば、後の二人が始末をつけてくれる。

世界最硬度の装甲を打ち破れる攻撃など、この世界には存在しない。
先ほど見せた装甲を貫通する打撃は確かに驚いたが、耐えきれない程ではない。
鍛えた肉体に力を込めれば、受けきることなど造作もない。

〔 【≡|≡】〕『……ごふっ?!』

――そう。
装甲は、確かに無事だった。
傷一つつかず、確かに拳を受け止めている。
だが、如何なる原理か、彼の内蔵は深刻なダメージを負っていた。

口の中いっぱいに血の味が広がり、たまらず吐血。
意識は全て痛みで満たされる。
予想外の一撃。
想定外の負傷。

辛うじて倒れないように膝に力を入れているのが精いっぱい。
受け止めた拳を掴もうと腕を動かそうとするも、指一本動かない。
苦痛が体の動きを阻害しているのか、それとも、別の要因があるのか。
思考が止まる。

意識が朦朧とする。
意識が飛べば、次に目覚めるのはいつになるのか分からない。
視界がぼやけ、徐々に黒く染まる。
目の前に現実とも妄想とも分からない幼少期の己の姿が浮かぶ。

343名無しさん:2022/08/22(月) 21:46:51 ID:uIzofZlI0
楽しそうに笑う自分。
果たして、自分にはそんな瞬間はあったのだろうか。
分からない。
自分が戦う理由はそこにあるのだろうか。

嗚呼。
そうだ、とミルナは思う。
子供が戦わなくていい世界。
子供が笑顔でいられる世界。

その為に、力が欲しかったのだ。
自分の夢。
幼少期に抱いた、あまりにも稚拙な夢。
世界中の人が笑顔でいられる世界を作るという、夢。

大人になるにつれ、その夢は形を変え、戦いというものに変化した。
子供たちが戦うのではなく、大人が戦えばいい。
殺し合いは大人たちだけで十分。
それも、必要最低限の戦いたい人間がやればいい。

そのために、世界のルールを変えたかったのだ。
初心を一瞬にして思い出したが、すでに意識は消えつつあった。

〔 【≡|≡】〕『お……は……』

まだ、世界が変わるその瞬間を見ていない。
夢見た世界を見届けていない。
世界はこれから――

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      ! {: : : : : : : : : :     .i  i´         .....::::          .l |   : : : : : : : : : : :     i |
       i .{           し´      ........:::::::         .i.j               i l
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クックル・タンカーブーツにとって、ミルナはかけがえのない戦友だった。
彼が身を挺してジョルジュを庇う間に、クックルはジョルジュを抱えて素早く後退していた。
この場にいる三人の中で最も無防備でありながら、最も重要な役割を担っているのがジョルジュであることは議論の余地もない。
ジュスティアに地上から入るためにはスリーピースを突破しなければならず、ジョルジュはその方法を知る人間だ。

344名無しさん:2022/08/22(月) 21:47:13 ID:uIzofZlI0
彼だけが知る壁の抜け道。
それを利用し、一気に攻め入る。
地上部隊の本命はオセアンに待機させているキュート・ウルヴァリンの私兵部隊“サウザンドマイル”だ。
精鋭無比の兵士だけで統一されたその部隊ならば、攻城戦で苦戦することは無いだろう。

既にジュスティアには砲弾が幾つも着弾しており、混乱状態にあるはずだ。
攻め落とすのは時間の問題だが、要となる地上部隊への道を作るのがクックルたちの主任務だった。
ここで勢いを失いたくはない。
例えミルナを失ったとしても、その命を無駄にはしない。

似`゚益゚似『邪っ!!』

すぐに迫ってくる棺桶を前に、クックルは覚悟を決めた。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『ジョルジュ!! お前は先にジュスティアに行け!!』
  _
(;゚∀゚)「……ちっ、借りにしといてくれ!!」

ジョルジュはこちらの意図を汲み取り、すぐにその場から逃走した。
目指す先には乗り捨てられた装甲車がある。
それに乗れば、負傷しているジョルジュでもジュスティアに問題なく到着できる。
問題は、ただ一つ。

似`゚益゚似『行かせるか!!』

[,.゚゚::|::゚゚.,]『邪魔させるか!!』

四本の鉤爪を展開し、打撃戦へと備える。
未だ使用済みのバッテリーは排莢出来ていないが、それでも、ジョルジュが逃げられるだけの時間を稼がなければならない。
ミルナを失い、仮にクックルが死んだとしても、計画の遂行が最優先だ。
この歩みは止めてはならない。

ジョルジュを生かすために倒れたミルナの覚悟を無駄にはしない。
バトンをここでつなぐことが、クックルの役割だ。
命を懸けるのは、ここだ。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『はいだらぁああああああああ!!』

ミルナが打撃でやられた瞬間、クックルは理解した。
確かにこの世の中には、積み上げてきた技術が兵器の性能を上回ることがあると。
彼の敗因は装甲に対する絶対的な評価と相手の技量を見誤ったこと。
しかし今のクックルは相手を正しく分析し、油断なく戦うだけの覚悟が決まっている。

改良型エクスペンダブルズの四本の鉤爪は飾りではない。
リミッターを解除すれば、Bクラスの棺桶の装甲を握り潰すほどの力を発揮するだけの近接武器になる。
高周波振動相手には敵わないが、ダニーの左腕には装甲がない。
弱点を徹底して狙い、ジョルジュがジュスティアに到着するだけの時間を確保するしかない。

345名無しさん:2022/08/22(月) 21:48:27 ID:uIzofZlI0
左下から薙ぎ払うように放つ四本の爪。
それをあっさりと回避されたが、それは囮だ。
右上から放つ対角線上からの攻撃。
だが、それすらも躱される。

こちらの意図を読まれないよう、攻撃の手は決して緩めない。
回避された後も、クックルは右のローキックを放つ。

似`゚益゚似『付け焼き刃の武など!!』

踏みつけるようにしてローキックを払い除け、その体勢から後ろ回し蹴りが飛んでくる。
それを左腕で防いでいなければ、胸部の装甲が抉れていたに違いない。
代わりに左腕の装甲の一部が剥がれ落ち、地面に突き刺さった。
更に、こちらが反撃する間もなく次の蹴りがクックルを襲う。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『雄雄おおおお!!』

今度は右腕の装甲を犠牲にし、攻撃を防ぐ。
内に宿る恐怖を押し殺し、クックルは前に進んだ。
蹴り技を使う人間は接近を嫌う。
蹴りが放てない距離に接近すれば、残されたのは右腕の攻撃だけ。

それを防ぎさえすれば、活路はある。
実際、すでに半分は開かれている。
しかもまだ気づかれていない。
ならば、ここで攻めなければ次のチャンスはない。

技も何もない、身長差と力を利用したタックル。

似`゚益゚似『っせい!!』

だが、ダニーは右腕一本で対処してのけた。
それを軸に、クックルの巨体が嘘のように宙を一回転し、地面に叩きつけられた。
力の流れを操作する類の技術が実戦で使われるのを、クックルは初めて体験した。
この男はクックルにとっての初めてをあまりにも多く奪ってくる。

起き上がる間もなく踏みつけが来ると予想して両腕で顔と胸を防御する。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『ぐぬうっ……!!』

巨大な腕が幸いし、踏みつけ攻撃には耐えることが出来たが、アイスクリームをスプーンで削る様に装甲が削り取られた。
飛び上がり、四足歩行の獣の様に両手両足で前傾姿勢になる。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『がああっ!!』

決してジョルジュを追わせはしない。
醜態をさらしても、彼だけは絶対に守り抜く。
再び突撃。
狙いは変わらず、負傷している左腕。

346名無しさん:2022/08/22(月) 21:48:47 ID:uIzofZlI0
似`゚益゚似『じゃっ……!!』

振り向きざまに放たれた裏拳。
この時、クックルは装甲の下でほくそ笑んだ。
魚が針に食いついた。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『もらった!!』

左腕の爪がその拳を受け止める。
高周波振動と合わさった強力な打撃は、それだけでクックルの肘を破壊した。
何という威力。
何という練度。

そして、何という過信。

似`゚益゚似『っ?!』

腕一本を犠牲にし、“すでに相手の打撃で強制排莢を済ませた”クックルはエクスペンダブルズの主兵装であるレーザーを放った。
掴んだ相手の拳に直撃したレーザーが装甲を――

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347名無しさん:2022/08/22(月) 21:49:07 ID:uIzofZlI0
似`゚益゚似『ぜっ!!』

――削り切る前に、高周波振動によって左腕の爪が全て破壊され、レーザーの照射が停止した。
その僅かな隙が生まれるよりも早く放たれた回し蹴りが肘関節に直撃し、腕が千切れ飛んだ。
だがまだ右腕がある。
こちらの腕も排莢を済ませてあるため、レーザーを使える。

[,.゚゚::|::゚゚.,]『だああああ!!』

似`゚益゚似『ちいっ……!!』

両腕を使用不可能に持ち込んだ上に、相手は今片足立ちという不安定な姿勢。
回避も攻撃も、迎撃も不可能。
この瞬間の為に左腕を捨てたのだ。
この一瞬こそ、絶対の勝機。

四本の爪を合わせ、最大出力で放つ極太の一撃。
オリノシを両断した一撃は、爪先から放つ物とは比較にならない程の太さを持つ。
ならば、点や線ではなく面の攻撃となる。
武術は面の攻撃に弱いはずだ。

何故なら面で放つ攻撃など存在せず、その対応など出来るはずがない。

似`゚益゚似『あ゛ああああああ!!』

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                       ̄ 二─ _
                          ̄ 、  - 、
                           -、\   \
          /                  \\   \
         //                  \ヾ ヽ     ヽ
        ///                 \ ヾ、 |       i
     /__(                     |! `i        |
    <_,へ >- 、       ,.-、_         |         |
       \ノ人\    / 、 }! \        |         |
         \へ〃\/ヾ\_ノ、ノ人 ,.-、    |         |
          \|\rj\ヾ /   \_フ ,/   |! リ        |
          rm\ノ _  Y     Lノ      /    |    |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

咆哮が聞こえた気がした。
不安定な姿勢で回避が出来ないはずのダニーが繰り出したのは、サマーソルトキック、だった気がした。
顎を打ち抜くように衝撃が襲った時には、クックルの意識がブラックアウトし始めていた為だ。
自分の攻撃がどうなったのか、それを考えるよりも先に、クックルの思考は急激に遠のいていく。

――初めて軍隊に入った日、クックルは己の天職を見つけた気分がした。
イルトリア軍人として訓練を積み、必要に応じて派遣され、時には傭兵として戦争に参加した。
戦争はクックルにとって生きがいとなった。
粗暴者だった彼が彼らしく生きていけるのが、戦場だった。

348名無しさん:2022/08/22(月) 21:49:32 ID:uIzofZlI0
クックルの暴力性は戦場で多くの実績を生み出し、戦果となった。
一人でも多く敵を殺せばそれだけで味方の為になった。
見せしめの為にあえて残虐に殺す役を喜んで買って出た。
自ずと、彼に付き従う部下は彼と同じはぐれ者だった人間が増えていった。

フィリカ内戦という泥沼の戦場で、クックルはプレイグロードを投入し、戦況を変えた。
化学兵器による大虐殺となったが、それが効果を生んだことは明らかだった。
しかし、イルトリア軍はそれを良しとせず、彼を叱咤した。
それをきっかけに、クックルはイルトリア軍を抜けて傭兵として世界を転々とすることになった。

彼が求めているのは争いの絶えない世界。
つまり、兵士にとって理想的な世界だった。
ジュスティアが世界の正義を掲げ、仮にそれが達成された場合。
世界は平和になり、兵士たちは職を失う。

戦いの中でしか自分でいられない人間にとって、その世界は地獄そのものだ。
クックルは争いを少しでも長引かせるため、あえて劣勢の勢力に加担し、戦争を長引かせた。
その点で言えば、傭兵という仕事は彼にとって都合がよかった。
そしてある日、ティンバーランドの勧誘を受け、彼らと同じ夢を見ることにした。

例え己を犠牲にしたとしても。
例え何万人の犠牲を生んだとしても。
最終的に世界がより良い姿になるのであれば、悪と呼ばれても構わない。
争いがなければ生きられない人間の居場所を守ることが出来れば、それでいい――

似`゚益゚似『ねっ……!!』

――意識を失ったクックルの頭部は、その後に放たれた踵落としによってヘルメットごと叩き潰された。
だがそれよりも前に、ジョルジュが乗った装甲車はジュスティアに向かって出発することに成功していたのであった。

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似`゚益゚似『ふーっ……!! ふーっ……!!』

349名無しさん:2022/08/22(月) 21:49:54 ID:uIzofZlI0
二体の名持ちの棺桶を相手にし、両腕を負傷したダニーは息を整えつつ、ジョルジュが逃げた方向を睨みつける。
既に車輌は小さな点となり、走って追いつけるような距離にはいない。
妨害電波によって周囲の通信は封鎖されているが、その中でも使うことのできる特殊な無線機に向かってダニーは静かに告げた。

似`゚益゚似『ジョルジュに、逃げられました』

だが返答はない。
空電の一つもない。
それが物語るのは、最悪の展開だ。

似`゚益゚似『……奴を追います』

それだけ言葉を残し、ダニーは残されていたもう一台の装甲車に乗ってジュスティアに向かった。
視線の遥か先。
ジュスティアのある方角で、巨大な火柱が上がった。

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同日 AM10:44

350名無しさん:2022/08/22(月) 21:51:32 ID:uIzofZlI0
イーディン・S・ジョーンズは退屈していた。
観測手との連絡が途絶えて久しく、精密な砲撃ができないこともそうだが、彼の予想に反する動きの報告が来ないことが原因だった。
イルトリアとジュスティア、両方から連絡がない。
こちらの動きを読まれ、観測手を殺されたのか、妨害電波を使われているのだろう。

だが、ジュスティアにはまだ砲撃の手段がある。
その人間からの連絡があれば――

(::0::0::)「ドクタージョーンズ、連絡です。
     コードFoxtrotです」

(’e’)「あ、もうFなんだ。
   じゃあ、やっちゃおう」

――歴史を変える一撃は、あまりにも軽い口調で告げられた。

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          人:,   〈:.      , : fリノ
           从 f _    _  /.イ
       ,.. -‐≠∧  ニ==ー ^ , イ__
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同日 AM10:39

舞い込んでくる膨大な情報を処理するフォックス・ジャラン・スリウァヤの前に、一人の軍人が立っていた。
視線は前に向けず、作業はそのままでフォックスは言葉を投げかける。

爪'ー`)「珍しいな、作戦中に君が来るとは」

机の上に広がる無数の紙には、陸軍と海軍からの報告がまとめられており、もう間もなく全貌が見えるところだった。
情報を集めて見えてくるのは、敵の真の狙い。
そして、こちらが抱える穴。

( ,,^Д^)「急を要する要件だったもので」

ジュスティア軍元帥であるタカラ・クロガネ・トミーは短く告げた。
いつも通りの返答だが、彼の事をよく知る者が見れば、どこか緊張していることが分かったことだろう。
現在、ジュスティア軍は劣勢に立たされており、当初の予定よりもかなり多くの被害が出てしまっている。
その責任を一身に背負うのは、元帥である彼に他ならない。

351名無しさん:2022/08/22(月) 21:51:55 ID:uIzofZlI0
爪'ー`)「で、用件は何だ?」

( ,,^Д^)「単刀直入に申し上げます。
     降伏を考えてはいただけませんか?」

そこでようやく、フォックスは作業の手を止めてタカラを見た。

爪'ー`)「降伏、だと?
     それはないな。
     いや、それだけは絶対にない。
     降伏などすれば、この世界の天秤が狂うことになる」

( ,,^Д^)「お言葉ですが、すでに天秤は傾いています。
     今ならばまだ、無用な死者が出ずに済みます」

爪'ー`)「連中の砲撃に臆したか」

( ,,^Д^)「いえ、連中の戦力と兵力を鑑みての意見です」

爪'ー`)「そうか、答えは言った通りだ。
    オリノシに向かった陸軍からの連絡が途絶えているから、そちらの情報をすぐに集めてくれ」

そう言って、フォックスは再び作業に戻ろうとした。

( ,,^Д^)「……もう一度考えていただけませんか」

爪'ー`)「駄目だ。 ここで受け入れれば、我々はテロリストに屈したことになる。
    それのどこに正義がある?」

( ,,^Д^)「残念です、市長」

タカラはそう言って、フォックスに背を向けた。
執務室を出て行こうとする彼の背に、フォックスは静かに告げた。

爪'ー`)「君の目的は何なんだ?」

( ,,^Д^)「死者が減ることです」

爪'ー`)「違うよ。 君がティンバーランドに組する目的だ」

瞬間、その空間の空気が凍り付いた。
両者ともに身じろぎ一つせず、沈黙したまま。
指一つ、瞬き一つさえしない。
タカラが唾を飲み、口を開く。

( ,,^Д^)「仰る意味が分かりません」

352名無しさん:2022/08/22(月) 21:52:16 ID:uIzofZlI0
爪'ー`)「ティンカーベルで起きた連中の奪還事件の際、君は罠にかかった。
    関係者に伝えた情報はそれぞれ少しずつ違うようにして、内通者が分かるようにしていたんだよ。
    その結果、君だった。
    正直君の事を信じたかったが、街で起きた奪還事件でも関係していたのが決め手だった。

    で、何故だ?」

一つ深い溜息を吐いて、タカラは振り返らず答える。

( ,,^Д^)「私は、この世界に正義を取り戻したいのですよ、市長。
     今のジュスティアは正義の都を名乗るには、あまりにも腐敗している。
     どうして世界中の街に警察を配備しない?
     そうすれば、世界中が同じ基準、同じ法律の下、同じ正義を信じられるというのに。

     あなたはそれをしようとしなかった。
     このままでは世界は変わらない。
     このままでは正義は幻のままだ。
     故に、私は彼らに手を貸すことにしたんですよ、市長」

爪'ー`)「“世界警察”構想に近い考えだが、それよりも乱暴だな。
    それぞれの街の考えを統一するのは絶対に不可能だ。
    ましてや、従来の考えを力ずくで矯正することを避けられないのならば猶更。
    正義という概念に基準を設け、それを強いるとすれば間違いなく争いが起こる。

    人が人である限り、その争いは無くならない」

世界警察構想。
それは、ジュスティア警察が大昔に考え、そしてすぐに頓挫した考えだった。
全ての町にジュスティア警察を派遣することで連携が可能となり、犯罪者を確実に罰することが可能になる。
問題は、契約を結ばせなければならないという根本的な部分だった。

独自の警察組織を持つ街がある以上、この考えは決して実現しないという結論に落ち着いたのだ。

( ,,^Д^)「その争いを起こす人間こそが悪であると断じられる。
     時間はかかるでしょうが、間違いなく世界は正義を手に入れられるのです」

爪'ー`)「ははっ、大した自信だ。
    やれるものならやってみろ」

( ,,^Д^)「……えぇ、言われずとも」

タカラが懐に手を入れる。
フォックスは机の上で手を組み、その背を見つめる。
タカラが振り返ろうとした刹那、ショットガンの巨大な銃声と散弾の雨が彼の背中を襲った。
近距離で放たれた散弾は、防弾繊維の上から彼の背骨を破壊した。

机の下に隠された仕込みショットガンは足で操作する様に作られており、装填されている散弾の火薬の量は多めになっている。
執務室に備え付けられた緊急用の設備の一つで、その全てがこれまでに一度も使われることのなかった装置だ。
初めて使用されたのが同じジュスティア人で尚且つ軍の元帥だというのは、あまりにも最悪の歴史と言える。
席を立ち、フォックスはその場に倒れたタカラに歩み寄って膝を突き、言葉をかける。

353名無しさん:2022/08/22(月) 21:52:36 ID:uIzofZlI0
背骨を破壊されたタカラは立ち上がることも姿勢を変えることも出来ない。

爪'ー`)「馬鹿だよ、君は……」

( ,,^Д^)「知っています……
     だけど、これでいい。
     私の歩みが、世界を変える」

タカラの手に小さなリモコンがあるのを見て、それから、フォックスは窓の外に目を向ける。
小さく溜息を吐き、ゆっくりと机に向かって歩きながら呟いた。

爪 ー )「……とっておきの葉巻、吸っておけばよかったな。
     今日は今までで――」

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    .|i  |i-三.|i _ニ|i―ニミヽ .|i`ト、..i| `.i|  人__      }   Tヽイ ≧=-
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354名無しさん:2022/08/22(月) 21:53:02 ID:uIzofZlI0
そして、ピースメーカーの横腹に巨大な砲弾が直撃した。
一瞬にして爆炎が建物を包み込み、炎の柱と化す。
続けて新たな砲弾が着弾し、建物の半分が吹き飛んだ。
ジュスティアの街の中心にある70階建ての建物が倒壊するのに、5分とかからなかった。






――この日、世界の天秤が大きく傾いた。






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                     y(、,,'''ノ(、/ \~~~``ー--ゥ'~ ,.;;-‐''~~ |, :-|   |
                        ミ彡 /::::::::`>  ,.-''~.‐'~~-‐''~~.| .|  |    |
工___                       ミミ|彡ム-''~~ーv'~ ~:::::;;;::   i-‐i |~~|  |   |
\===|                 ミ-‐''~:::::_,.ィ''~~|~  ~~`|~   |T | |~I.|  |   |
  \==|======i__          ミ>,-|~~`i'~I |   |     |   | | |_,.+‐ !┴!―--'

第十章 【 Ammo for Rebalance part7 -世界を変える銃弾 part7-】 了

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