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冬に百物語をするようです

1 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/23(月) 12:25:23 ID:3oiUhbt.0
障子戸で仕切られた和室。不釣り合いなミニシャンデリアが煌々と室内を照らす。
エアコンが静かな音を立てて暖かい空気を室内に作る。
そして4人の男女が集まって正方形を作るように座っていた。
その中央には100本のろうそくとチャッカマン2本。2本の懐中電灯と卓上ライト。
どこにでも売られているろうそく。だがまだ火はつけられていない。
戸が静かに開かれると四人の顔が一斉にそちらに向けられる。
夕日と中庭を背にしてスマホを片手に持った背の高い男が部屋に入ってきた。

( ゚д゚ )「さっきブーン、主催の奴から電話があって大事な用事ができて遅れてくると言われた」

男がほぼ初対面の四人にそう伝えると女の一人が気まずそうに斜め下に視線を映した。

lw´‐ _‐ノv「ブーンが百物語の主催なのに?」

視線を男に向けたままの女が問う。男は「ああ」と短い返事をして眼鏡の男と女の間に敷かれた座布団に座った。

(-@∀@)「素直さん、用事なら仕方ないですよ。僕と来る予定だった歯車君もお母さんが事故で入院してこれないと言ってましたし」

眼鏡の男が遅刻する主催に対して当たり障りのないフォローを入れながら、友人が来れなくなったことを告げた。
  _
( ゚∀゚)「え!?その友達のお母さん大丈夫なのかよ?」

「事故」と聞いて反射的に男が話に割り込んで聞く。

(-@∀@)「自転車がだめになったけどお母さんはケガ一つなくピンピンしてるそうですよ。検査入院だから心配しなくて良いって言ってました」
 _ 
( ゚∀゚)「ケガがなくって良かったけど大変だなぁ。あ、俺も友達のギコ、あっ、冨佐ギコていうんだけど
『今日の朝、爺ちゃんがいきなり大阪から遊びにきたから来れない』って伝言されたぜ」

(#゚;;-゚)「椎名さんと津出さんが部活の緊急ミーティングで遅れるって言ってた……」

2 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/23(月) 12:28:20 ID:3oiUhbt.0
気まずい空気が室内を包んだ。
 _ 
( ゚∀゚)(うわー……友達増やそう100物語大会って言ってたから参加したけどw俺の知ってる奴が皆遅刻w全員知らない人とかw待ち時間がきついw)
 _ 
( ゚∀゚)「100物語が始まるまであと20分あるし、一度、自己紹介しないか」

( ゚д゚ )「そうだな。はじめて会う人もいるし待ち時間をつぶすのにちょうどいいな」

男の言葉に誰も反対する者はおらず、静かに皆がうなずいていた。
 _ 
( ゚∀゚)「えーっと、じゃあ言い出しっぺのオレからな。俺は長岡ジョルジュ。2年1組でサッカー部。この100物語には練習でも応援に来てくれる彼女を探しに来ました!」

lw´‐ _‐ノv パチパチパチ

( ゚д゚ )(-@∀@)(#゚;;-゚) ……パチパチパチ

女がジョルジュの自己紹介に拍手をすると遅れてまばらな拍手が続いた。
 _ 
( ゚∀゚)(ええっ、拍手!?学校みたいでやりづらいっつーか、せめて彼女募集ってwとか笑って……)
 _ 
( ゚∀゚)「えー、えー、じゃあ次は時計回りでいくか?」

(-@∀@)「それでは次はボクですね!ボクは朝日アサピーです。2年3組科学部です。ブーン君に宇宙人の話ができるって誘われてきました。」

またまばらな拍手が起きて次の自己紹介が始まる。

( ゚д゚ )「俺は小鎚ミルナ。2年4組だ。バスケ部所属。ブーンに俺の爺さんの家(ここ)を貸すことになって、この会にも参加することになった」

パチパチパチと拍手の音が響く。

3 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/23(月) 12:30:16 ID:3oiUhbt.0
lw´‐ _‐ノv「私は素直シュール。弐年弐組。朝日君と同じく科学部。会の後に美味しいお米を振る舞うとブーンから聞いて来た」

顔を伏せていたもう一人の女が参加理由を聞いて初めて小さく笑った。また拍手が響く。

(#゚;;-゚)「えーと……根子村でぃです。二年三組です。えっと……帰宅部で、一緒に来る予定だった友達に誘われてきました」

パチパチパチ。最後の自己紹介にも拍手が送られた。そして沈黙。
 _ 
( ゚∀゚)「そうだ。友達増やそう100物語大会だし、今から友達ってことでお互いのことを下の名前で呼ぼうぜ」

/メールが届きました/

( ゚д゚ )「すまん。メールだ」

ジョルジュの提案を邪魔するようにミルナがジーンズの尻ポケットからスマホを取り出してお知らせ通知を見る。

( ゚д゚ )「「百物語大会」主催よりって書いてる。だがブーンのメアドとは違う」

(-@∀@)「雰囲気を盛り上げるためにフリーメールを使ったんじゃないですか?
差出人で驚かして『実はブーンでした!早く来れそうだお』ってて書いてるんじゃ」

( ゚д゚ )「見てみるか。……みんなへ。ぼくは……バンか?これ」

ミルナは文を読みかけて漢字に躓いて隣のアサピーに自分のスマホに届いたメールを見せた。

(-@∀@)「えー、どれどれ。多分バンじゃなくてオソですね。『みんなへ。ぼくは晩(おそ)くなります。
だからもう百物語をはじめてください。必ずいきます。迎え入れてください」って書いてますよ」

でぃが何か言いたげにミルナとアサピーを見たが二人の意識はメールに向けられていた。
代わりに彼女の隣にいたジョルジュが口を開いた。

4 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/23(月) 12:31:58 ID:3oiUhbt.0
( ゚∀゚)「でぃちゃん。どうしたんだよ。言いたいことがあったら言っていいんだぞ」

(#゚;;-゚)「ん……、電話で遅れるって言ったのにまたメールで遅れるっていう必要あるのかなって……」
 _ 
( ゚∀゚)「あー、文的にブーン的じゃないとは思うけどあいつ気配りしすぎな奴だし。
自分が遅れてこのまま待たせるのが悪いと思ってメールしたんじゃないか?」

lw´‐ _‐ノv「10点」

(#゚;;-゚)「え?」

lw´‐ _‐ノv「文的にブーン的じゃない。ダジャレとして10点」
 _ 
( ゚∀゚)「おっ!気づいた!?文的にブーン的じゃないってダジャレ。シュールちゃんから10点満点もらったぜ」

lw´‐ _‐ノv「残念。200点満点中の10点だ」

(#゚;;-゚)「シュールさん。せめて半分にして100点満点中で1点にしてあげましょう」
 
(  ∀ )「でぃちゃん。俺のダジャレ評価がもっと下がってるよ。200点の10点が半分になったら100点の5点なのに」

(#゚;;-゚)「フフフ」

ちょっと自信があったダジャレをメタメタに酷評されたジョルジュは白くなっていた。
反対にでぃは慣れないツッコミに自分で照れて頬をほんのりと染めて笑っていた。
ピッと無機質な高い音が聞こえたかと思うとシャンデリアの明かりが消える。
障子越しに入る夕日だけが室内を薄暗く照らす。でぃが小さく悲鳴をあげ、シュールが「大丈夫」と声をかけた。

(   )「みんな。開始時間より少し早いが主催に代わって開会宣言をさせてもらう。
これから冬の百物語大会を始めよう。途中で止めることは許されていない」

5 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/23(月) 12:40:09 ID:3oiUhbt.0
誰かが開催宣言をおこなった。
ミルナが立ち上がって壁に向かって歩き出した。彼が壁にあるスイッチを押すとシャンデリアの明かりがついた。


(-@∀@)「まだ明るいとはいえいきなり明かりが消えるとびっくりしましたね」

アサピーがのんきに笑って話す。
  _
( ゚∀゚)「おお、黄昏時って感じがでて良い雰囲気だったな。演出もばっちり決まってるじゃんか。ミルナ」

lw´‐ _‐ノv「大会名は友達増やそう百物語大会じゃなかったのって感じだな。まさに9割騙された〜っだ」
  _
( ゚∀゚)「あっ、それよくテレビに出るようになったホシナシグルメのセリフじゃんか。
ミルナとブーンが考えた演出にビビらされてまさに9割騙された〜っだぜ」

(#゚;;-゚)「……」

一人だけミルナの動きを見続けているでぃに彼は首を横に振った。

( ゚д゚ )「古い家だからな。心配しなくていい」

でぃが眉間にしわを寄せてたが場所の提供者であるミルナが心配ないという。
「壁のスイッチを押した理由」が幽霊の仕業なんて言われるよりも古い家の電気だからリモコンが利かなかった。
もしくは主催者側の演出と思うほうがずっと安心するからだ。

( ゚д゚ )「悪いが火事になるといけないからろうそく100本全部同時に火をつけるのは勘弁してくれ。
日が沈んで暗くなったら明かりは用意してある懐中電灯と卓上ライトで頼む」

淡々と注意事項を話すミルナ。

6 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/23(月) 12:45:28 ID:3oiUhbt.0
( ゚∀゚)「誰から話す?」

(-@∀@)「ミルナさんはどうですか?開会宣言もしてましたし」


( ゚д゚ )「俺は」


( ゚д゚ )


( ゚д゚ )「ああ、そうだな。俺から話すとしようか」

なにか考えるように間をあけてミルナが返事をした。でぃとシュールがろうそくに1本ずつ火をつけた。
そのうちの一本がミルナの前に置かれた。


(#゚;;-゚)「次に話す人は誰にしますか。ろうそく渡しておきますね」
  _
( ゚∀゚)ノ「じゃあ俺。次いくぞ」

ジョルジュがでぃから火のゆらめくろうそくを受け取り自分の前においた。

(-@∀@)「準備もOKですね。それではミルナさんに語ってもらいましょうか」

7 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/23(月) 13:04:01 ID:3oiUhbt.0
あれは俺が中学1年の時だ。
1年生は山の中に建てた公共宿泊施設で二泊三日の体験学習をするんだ。
山といっても道は反対側の麓まで続いていたし路線バスも通る。
ハイキングコースの山登りや地元の木彫り職人から教わって木で作るキーホルダー体験をした。
体験学習の二日目の夜は定番の肝試し。くじ引きでグループを作って五人一組で回るんだが
仮に鈴木と高崎というクラスメイトと俺が3人グループになった。

懐中電灯を持って施設の周辺を道沿いにぐるりと一周して帰ってくる。
夜の道から外れると危ないからとご丁寧にビニールひもが柵代わりに張られている。
俺たち三人も懐中電灯をもって肝試しに参加した。
先生達が脅かし役とはいえ予定より少ない人数と暗闇は怖かったな。
途中、先生の変装用カツラが強風で外れて追いかける姿のせいで肝試しの雰囲気が台無しになったけども。
だから俺たちは油断してた。
足の早いグループだと10分くらいでスタート兼ゴールにたどり着くんだが15分ほど歩いているのにゴールが見えない。

「ねえ、小鎚君、この道であってるのかな?大丈夫だよね」

鈴木が不安な顔をして俺に聞いてきた。

「変なこと言うなよ。鈴木。俺たち、ずっとあのビニールひも通りに歩いてるんだぞ」

高崎が俺より早く鈴木に言った。
道を外れてはしゃぐ奴がいるから出ないようにと張られたビニールひもに沿って歩いていたんだ。
間違いはないとその時は俺も思っていた。

「だって、なんかさ、ずっと同じ道を歩いているような気がしてさぁ。先生達もいないし怖いんだよ」

鈴木は怖くて泣く寸前で、高崎が「バッカじゃねー」と強がっていた。

8 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/23(月) 13:04:49 ID:3oiUhbt.0
このままでは喧嘩になると思った俺はなんとなくポケットを探った。固いものが指にふれた。
取り出すと昼間に作った木彫りのキーホルダーだった。

「これをここにつけておこう。同じ道に戻っているならこれがあるはずだ。宿に戻れた時は後で取りに行く」

俺はキーホールダーをビニールひもに吊るした。

「いいの?宝物なのに」

鈴木にとっては自分で作った手作りキーホルダーは宝物らしい。だから俺もそうだと思っている口ぶりだった。
俺は取りに行くといったけど無くしても惜しくはなかったし、同じ道を繰り返しているとは思っていなかった。
だから鈴木が立ち止まらずにゴールを目指すならそれでよかったんだ。

俺たち三人は先に見えるカーブ目指してしばらくまっすぐ歩いた。ビニールひもに導かれるようにカーブを曲がりきると
俺たちより少し小さな丸い影が前方に見えた。だれかが「ヒッ」っと短い悲鳴をあげる。
それに気が付いたのか丸い影が動いて白い眼が二つ見えた。こちらにズズ、ズズ、と音を立てて近づいてくる。
俺は金縛りにあって動けないし、二人も動けないようだった。

「三人……宝一つか」

近づいてきた毛玉に白い眼が付いた怪物は山がざわついたような声だった。
鈴木が「ヒッ、ヒッ」と呼吸音なのか悲鳴なのかわからない音をだしていた。

「 「僕の宝物も上げる!あげる!あげるから助」けて!お願いしますお願いします」

怪物の真ん中あたりの毛がもしょもしょと動いている。
直感で怪物がしゃべっていると思ったが鈴木の叫び声が怪物の声をかき消してしまう。
泣き叫びながら鈴木がキーホルダーを怪物に投げつけた。カランと軽い音を立てて地面に当たる。
それを静かに怪物は毛を伸ばして拾った。

9 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/23(月) 13:05:17 ID:3oiUhbt.0
「宝…あげよう…」

怪物の目が細くなった。多分、笑ったんだと思う。

「あ゛ーっあ゛ーっ」

正直言うと何もしてこない怪物より、口も目も全開にして意味のある言葉を言えなくなった鈴木のほうが怖かった。
怪物は高崎に目を向けたような気がした。高崎は硬直して動かない。

「もらった。もういい」

静かに怪物が動く。白い目が見えなくなる。背中を向けたんだ。ズリ、ズリという音を立てて離れていく。

なのに吐き気がするほど不安に押しつぶされる。何か足りない。何が?取られたキーホルダー。
どこまでもまっすぐに道を示すビニールひも。怪物。俺たち。ほんの少し明るくなった空。

「まっ、まってくれ」

俺はカラカラに乾いた喉から声を絞り出した。怪物が静かに振り向く。限界になった鈴木が倒れた。

「高崎!お前もだ!」

俺の体が高崎に飛びつくように動いた。「ひぎぃっ」って悲鳴を上げて高崎が後ろに下がったからぶつからずに済んだ。

「お前もだせ!キーホルダーっ!出せ!」

「キ、キーホルダー!?キーホルダー!?ない!カバンの!カバンの中!」

10 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/23(月) 13:05:45 ID:3oiUhbt.0
「じゃあなんでもいい!宝物だ!出せ!」

「宝!?そんなんなっ」

俺は慌てて高崎の口を押えた。怪物の白い目がビニールひもの外にむけられていた。
その姿は俺たちに興味を失っているが何かもらえるなら待ってやろうといった感じだった。

「ポケットの中とか全部探せ。あるだろ。一つくらいは『宝物』が」

口を押える手に力が入る。不安の正体はキーホルダーという宝物を渡していない高崎。
俺と鈴木がキーホルダーと命を交換して怪物を満足させた。だから怪物は去ろうとしている。でも高崎は?
三人の命と交換で宝物二つと交換なら帰ってもいい。でも対等になっていない。三つ手に入ったはずと後から後悔しないか?

口を押えられたまま涙を流して高崎が両手で自分の体を探る。あいつが自分の腹に手を当てた。
俺を見ながらガクガクとうなずくので俺は手を離した。

「こ、これ」

高崎が服をめくると黒い腹巻が顔をだす。その腹巻に手を突っ込んで何かを出した。

「これ、親父が隠してたシベリア産の酒。禁酒時代に作られて、自由のシンボル的な酒で
当時の人が喉から手が出るほどすごい酒って・・・・・・」

高崎が話している間、ズリリリ、ズリリリと必死になって怪物が近づいてきている。
高崎は震えて小さな瓶を前に突き出していた。

「シベリア。ほう、外国の酒か。酒をしらぬ稚児なら宝と思わぬも仕方ない」

この声を表すとしたらニタニタ。酒好きのおっさんが毛玉に入っていると思うぐらいご機嫌だ。
怪物は毛を伸ばして高崎が隠し持っていた酒を受け取った。

11 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/23(月) 13:06:52 ID:3oiUhbt.0
俺と高崎は、気絶してそのまま寝息を立てている鈴木を叩き起こした。
今度こそは迷わずたどり着き、一階の部屋に泊まっていた友達の部屋の窓を叩いた。
友達は起きていて俺達に気が付くと窓を開けて中に入れてくれた。

「目の下、クマで真っ黒じゃねーか。肝試し第二弾にでも行ってたのかよ」

ケラケラ笑いながら俺たちに言う友達。俺達は疲れすぎて怪物との間に起きたことを話せず曖昧にごまかした。

「なあ、先生達、怒ってなかったか?俺達が肝試しから帰ってないこと」
「はあ?何言ってんだよ。点呼の時にちゃんといたじゃねーか。消灯時間までババ抜きもして遊んだのにどうしたんだよ。
寝不足で頭やられたか?」

( ゚д゚ )「もしも鈴木が怪物の言葉を遮らずに怪物が「見逃してやる」って言っていたら、
俺たちは偽の俺達とバッティングしていたんだろうかとたまに考えるんだ」

ミルナが1本目のろうそくの火を消した。

12名無しさん:2020/11/23(月) 13:17:17 ID:11WrWbZw0
支援

13名無しさん:2020/11/23(月) 19:23:42 ID:vBmzf3c60
開幕怖いな

14名無しさん:2020/11/23(月) 20:04:33 ID:AZtF6XYw0
乙!面白そう!続き期待してます!

15名無しさん:2020/11/24(火) 01:58:09 ID:CCIgzLPE0
期待

16名無しさん:2020/11/24(火) 07:27:32 ID:OjtYm1.Y0
面白そう
続きwktk

17 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/24(火) 22:32:14 ID:GH0HyJjQ0
 _ 
( ゚∀゚)(怪物とドッペルゲンガーの二段オチってまじかよ。
『友達作るのが目的だから怖い話縛りでなくていいお」ってブーンが言ってたし、こんなにがっつり怖い話すると思ってなかったぞ。
開幕の演出も良かったし、俺の話で雰囲気を壊すのもあれだよなー。
中華料理屋のおっちゃんから聞いた「水餃子の怪」という話は
友達増やそう百物語大会向けで笑い話だしなあ。
どうしよう。とりあえず無難に『海でおぼれかけて誰かが足を引っ張ってくる。
たまたま近くで遊んでた知らないお兄さん達が助けてくれた。そして俺の足首には手形がくっきり。
助けてもらえなかったら死んでたかも』って話をするか)

二本目のろうそくの火はジョルジュの海の恐い話で定番といえる話で消された。

(#゚;;-゚)「三話目は私がしてもいいですか?」

(-@∀@)「男二人が続きましたからね。女性の語りでこのむさくるしさを浄化していただきましょう」

lw´‐ _‐ノv「むさ男の浄化w」

なぜか笑いのツボに入ったシュールが体を丸めて声を殺して笑いだす。ひとしきり笑うと「三話目どうぞ」と体を起こした。

(#゚;;-゚)「今から私がするのは『迷い家』の話です。『迷い家』は有名だから知ってる人もいるでしょうか」
 _ 
( ゚∀゚)「その『迷い家』って森とかで道に迷って見つけた家に入ったら出来立ての食べ物があった。だけど家主がいない。って話だっけ」

lw´‐ _‐ノv「その家のご飯を食べると幸せになるとか逆に不幸になってしまうとか言われてるな」

( ゚д゚ )「ほう。迷い家の飯を食べるのはギャンブルだな」

(#゚;;-゚)「迷い家でご飯を食べれるのは一度きりって言われているんです。だけど私の友達は2回食べた、その時の話です」

18 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/24(火) 22:35:16 ID:GH0HyJjQ0
迷い家に行って二回もご飯を食べたその子の名前は加藤ガナーちゃん。
ダイエットのために毎朝、散歩してる子だったの。

( ‘∀‘)「今日もダイエット頑張るがなー」

( ‘∀‘)「んん?毎日通るけどこんな道あったけー?行ってもうたるがなー」

ガナーちゃんの言葉遣いが独特?うん、あの子、お父さんが転勤族でいろんな方言が混ざった話し方になっちゃったんだって。

いつも通る道なのになぜか見慣れない脇道ある。それが気になってガナーちゃんはその道に足を踏み入れたの。
私ならどこに通じるか分からない道は通りたくないな。だけどガナーちゃんは引っ越しが多いから積極的に行動する子だった。

( ‘∀‘)「あれ?いつの間にやら自然公園みたいなとこやないのー。どないなっとんがー」

ガナーちゃんがどんどん進んでいくといつの間にか民家がなくなって森のような場所になっていたんだって。
迷子になったらもと来た道を戻って分かる場所に帰るって言われてるけどガナーちゃんはどんどん進んでいったわ。

( ‘∀‘)「えー、どーすっぺやー。どなたさんかの家についたがな」

ガナーちゃんは道を聞こうと思って家のインターホンを押した。家の中からピンポーンってくぐもった音が聞こえてきた。

( ‘∀‘)「誰も出んぞ。インターホンは鳴ってたから故障ちゃうし」

( ‘∀‘)「耳遠いかなー?」

ガナーちゃんは玄関のドアを開けてみることにしたの。鍵があいていたら声をかけようと思って。
ドアは何の抵抗もなく開いたわ。

19 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/24(火) 22:36:13 ID:GH0HyJjQ0
( ‘∀‘)「すーいませーん!誰かーいませんかー!」

ガナーちゃんは慣れない標準語で声をかけた。だけど返事がないからガナーちゃんは玄関に足を踏み入れた。

( ‘∀‘)「すーいませーん!あたし、道に迷ってー!困っとりますー!」

もう一度声をかける。するとふわりとお味噌汁の香りが漂ってきたの。

( ‘∀‘)「ご飯してくれてるならご馳走なろおか」

ガナーちゃん。なぜか自分のためにご飯を作っていると思って玄関で靴を脱いで上がってしまったんだって。
リビングに入るとテーブルの上には湯気がたっているご飯とお味噌汁。香ばしい香りの焼きしゃけ。たくわん二切れ。
そして淹れたばかりで香りのいいお茶。朝ごはんにピッタリのメニューが並んでいた。

( ‘∀,‘)「うわーっ!美味しそう!いただきます」

口端に流れた涎に気づかずガナーちゃんは椅子に座って箸をもってムシャムシャご飯を食べた。
焼きしゃけは程よい塩加減でご飯がよくすすんだって言ってた。
味噌汁もたくわんも行ったことはないけど高級和食屋の味だったって。

( ‘∀‘)「はー、お腹起きました〜」

最後にお茶をすすってご馳走様。道に迷ったことも忘れて満足して家を出たの。
気が付くと制服をきて学校に来てた。って本人は言っていたわ。

それからのガナーちゃん?飛び跳ねるような幸福がきたわけでもどん底の不幸でもなかったわ。ごく普通。
良いことはコンビニで700円以上買ったらくじがひけるっていうのでお菓子セットが当たったこと。
悪いことは社会のテストに出るところを間違えて勉強して赤点になって追試を受けたこと。
迷い家に行かなくても起きそうな日常だったの。

20 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/24(火) 22:37:08 ID:GH0HyJjQ0
だけどガナーちゃん自身が変わってしまった。

(‘A‘)「・・・・・・」

おしゃべりで明るいガナーちゃんが日に日に暗く無口になってどんどん痩せてしまった。
そしてとうとう学校に来なくなった。朝の散歩以外はずっと家にいて部屋にこもってしまったの。
私たちも心配してガナーちゃんが好きだったお店のケーキとかもっていったんだけど・・・・・・
後から分かったけどガナーちゃん拒食症になってた。
私が一人でガナーちゃんに会いに行って、彼女の部屋のドア越しに声をかけたらちょっとだけドアが開いたの。
ガナーちゃんがドアの隙間から顔を見せてくれたけどかわいかった面影は消えていた。

A゚)「でぃちゃん。ごめんねぇ。お部屋に入れれんの」
「ううん。いいよ。ショコラマインド・ティアラさんの新作ケーキ買ってきたんだ。これ食べて元気になってね」

今思うと知らなかったとはいえ残酷なことしたとおもう。

A゚)「ありがとお。でもなー、なにを食べても美味しい思わんなってしもたん。困ったがなー」

頭に浮かんだのは味覚障害。なにかの病気で味がわからなくなったんだと思ったわ。

A゚)「でぃちゃん。おかんみたいに怒ったり、先生みたいにあきれんと聞いてくれる?」
「私でいいのなら聞くよ。ガナーちゃんの力になれるか分からないけど」
∀゚)「ありがとー。でぃちゃん」

それから話してくれたのは今まで私が話したガナーちゃんが体験したこと。

21 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/24(火) 22:39:36 ID:GH0HyJjQ0
A゚)「でぃちゃん。あたしな、もっかい、明日、あの家を探しに行こうとおもっとるんじゃー」
「もうやめたほうがいいんじゃ・・・・・その家のせいで食べ物がおいしく感じなくなったとは思えないよ。
怖い病気かもしれないし病院に行ってきちんと調べてもらおうよ」
A゚)「病院じゃなおらん。わかるんじゃ。それにあの家が夢の中で呼んでるんやがなー」
「じゃあ私も行く」

自分で言ったのに自分でもびっくりしたよ。

∀‘)「でぃちゃん、こげんな話を信じてくれとるんか。ありがとー。一緒に明日行こうのー」

ガナーちゃんの目が元気だったころみたいに戻って輝いてた。
だから私は「やっぱり怖いから行けない」って言えなくて次の朝にガナーちゃんと一緒に家を探しに行ってた。

(゚∀゚)「でぃちゃん。ありがとー。夢の中でな。あの家の前に立ってたんよ。だから今日こそあの家に行けれるはずやがなー」
「うん、たどり着けるといいよね」

ガナーちゃんはずいぶん痩せていて歩く時も時々ふらついてた。体力も落ちているから休み休み歩いていた。
私はガナーちゃんの散歩コースを知らないから彼女について歩いていたんだけどいつの間にか森の中にきていた。

(゚∀゚)「ここやがなー。この自然公園やがなー」

自然公園というより森なんだけどガナーちゃんは森を見つけて嬉しそうだった。私は怖くてガナーちゃんの血管が浮いた手を握った。
家の前に来るとなんのためらいもなくガナーちゃんが玄関のドアをあけて入っていく。私もその後ろについて中に入った。
玄関はなんの変哲もなかったんだけど、普通なら並べられている家の人の靴が一つもなかった。
先に上がったガナーちゃんがフラフラとリビングに入っていくから私も慌てて靴を脱いであがった。

22 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/24(火) 22:42:05 ID:GH0HyJjQ0
リビングの中央に置かれたテーブルにはガナーちゃんが食べたという湯気の立つご飯といい匂いがする味噌汁。
ふっくらと焼かれた塩サバとたくわん二切れ。お茶も湯気が立っていた。話と違うのは塩サバと用意された料理が二人分ということ。
テーブルの奥側の椅子に座ったガナーちゃんが虚ろな笑みを浮かべて箸をもっていた。

( ,∀, )「いただきます」

ガナーちゃんの口からだらだらと垂れた涎が光っていた。
私が止める前に塩サバに箸がつけられてその身からふわりと湯気が立つ。
それをそのままご飯と一緒に口にいれるともう止まらない。ガナーちゃんは一心不乱に食べていた。
もしも私が一人だったらここに用意されたご飯を食べていたかもしれない。
だけどガナーちゃんの変化を見ていたし怖いから食べちゃだめだって思った。

ご飯を食べ終わるとはあはあと息をつき、呼吸を整えているガナーちゃん。

「・・・・・・大丈夫?」

なんとか話しかけるとガナーちゃんは笑った。

(゚∀゚)「あとお茶だけだから。お茶の前にもうちょっと休憩させて」

ガナーちゃん、久しぶりにたくさんご飯を食べたから疲れてたの。だから私に考える時間ができた。

いつだったか忘れたけどお寿司特集をしててね。それを思い出したの。
『寿司の間にお茶を飲むのは、お茶が前に食べた味を洗い流してくれるからなんっすよ。
脂っぽくなってもお茶できれいさっぱり味が消えるから次の寿司がさらにおいしく感じるんっすよね』

気が付くと私は熱々のお茶が入った湯飲みを二つとも払い倒していた。
そこで家主が表れてお茶を入れてくれました。なんてこともなかった。
私は夢から覚めたみたいな顔をしたガナーちゃんと手をつないで家を出た。

それからガナーちゃんの味覚は普通に戻っていた。拒食症も治ってリバウンドで前よりふっくらしたけど元気になってた。
ガナーちゃん、また引っ越しして転校しちゃったけど今も連絡を取り合ってるんだ。
あの家で食べた味が忘れられなくて和食の料理人を目指してるって。
だけどもうあの家に行くのはコリゴリだって。

でぃが三本目のろうそくの火を消した。

23 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/24(火) 22:43:40 ID:GH0HyJjQ0
lw´‐ _‐ノv「迷い家の炊き立てご飯。その米の銘柄がきになるな。
王道の秋田大町、頭ヒカリ、進出してきたゆめぴりりかや北斗一星・・・・・・大穴で古代米もいける」

(#゚;;-゚)「えっと、ガナーちゃんは炊き立てご飯としか言ってなかったからお米の種類までは、ちょっと」

lw´‐ _‐ノv「大事なところなのに?」

(#゚;;-゚)(ふえぇ・・・・・・)

(-@∀@)「ほんとにシュールさんはお米が好きですね。科科部にも『コメを作れそうな部活がここだから』って入部しましたし」
 _ 
( ゚∀゚)「え?科学部でコメ?園芸部とか園芸委員のほうが稲作できたんじゃないのか?」

lw´‐ _‐ノv「あそこは花と木を愛でる武士(もののふ)の集まり。私のような農耕民族は近寄ってはいけない」
 _ 
( ゚∀゚)(ふえぇ・・・・・・どっちも植物を育ててるのに人種の違いがわかんねー)

( ゚д゚ )「そろそろ次の話を始めてもらっていいか。アサピーとシュール、どっちから話す?」

(-@∀@)「僕が一週目のトリをさせてもらっていいですか。皆さんに僕のとっておきのUFO写真を見ていただきますよ!」

lw´‐ _‐ノv「フフフ。いいだろう。私のとっておきの話に鼻水垂らすんじゃないぞ」

( ゚д゚ )(焼きそば食べたくなった)

24 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/24(火) 23:02:51 ID:GH0HyJjQ0
lw´‐ _‐ノv「先月、科学部で天体観測会をした時だ」

lw´‐ _‐ノv「皆で星を観終わった帰りにアサピーの後ろに透き通った血まみれの女が引っ付いてた」

(-@∀@)「えっ」

アサピーの両隣にいたミルナとジョルジュ。二人は身の危険を回避するように飛び上がってアサピーから離れる。

(-@∀@)「えっ」

lw´‐ _‐ノv「先週、部活の片づけ当番が一緒になった時は血まみれの女がアサピーの隣でアサピーの顔を覗き込んでた」

(-@∀@)「えっ」

アサピーと距離を置くためにでぃが部屋の隅に走った。

(-@∀@)「えっ」

lw´‐ _‐ノv「今日も昼休みにその女が見えた」

ノ;゚゚;/|(-@∀@)「えっ」
      _
( ゚д゚ )(゚д゚ )(#゚;;д゚)「「「あっ・・・・・・」」」

4本目のろうそくの火が消えた。

25名無しさん:2020/11/24(火) 23:03:57 ID:jNt6z3nk0
ジョルジュの話省略されててワロタ

26 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/24(火) 23:10:34 ID:GH0HyJjQ0
(-@∀@)「ろうそくが風で消えてびっくりしましたね。まだ首筋がスースーする感じがしますよ」
      _
( ゚д゚ )(゚_゚ )(#゚;;_゚)「・・・・・・・」

lw´‐ _‐ノv「一週目、トリのアサピーに期待大」

5本目がいつ消えてもいいようにシュールが6本目のろうそくに火をつけて用意する。

(-@∀@)「ブーン君や遅刻した人たちがまだ来ないのは残念ですが、僕のUFO写真コレクションの第一弾を見てもらいましょう!」

()゚(*-@∀@*)「まずは一枚目!UFO初心者の皆さんにもこれはもうがっつりUFOって分かりやすいですよ!」

アサピーがUFOファイルと書いたファイルから一枚の写真を取り出した。
夕焼け空の帰り道を撮った写真。アサピーは右上の空に黄色い発光体を映して得意げだ。
だが4人の注目は下側、道の縁石に乗っかった血まみれの手だった。
   _
(゚_゚ )「アサピー、UFOより気が付きにくいだろうけどな。下のほうをよく見たらすごいのが移ってるぞ」

(゚(-@∀@)「ええ〜、僕はUFOしか撮ってないですよ。その写真で他に気になることはなかったですし」

ジョルジュが遠回しに心霊写真を気づかせようとするがアサピーは首をかしげるだけだった。

( ゚д゚ )「血まみれの」(#゚;;-゚)「次、次いきましょう」

ミルナがアサピーに伝えようとするとでぃが強引に話をすすめ、5本目のろうそくの火をけした。

(゚)゚(-@へ@)「ちょっ、まだいっぱい写真あるのに」

(#゚;;-゚)「5人全員話終わりましたし休憩!休憩しましょう!」
   _
(゚∀゚ )「でぃちゃんに賛成!まだ全員そろってないし一回休憩いれようぜ」

シュールが言っていた血まみれの女とは違う何か。
アサピーの後ろで動くそれに耐え切れず、部屋から出たがる二人が休憩を求めて百物語は短い休みに入った。

27 ◆.LuQ4TdvBw:2020/11/24(火) 23:40:19 ID:GH0HyJjQ0
部屋を出たでぃとジョルジュ。他所の家なのでうろうろするわけにもいかず、サンダルを借りて縁側を降りて中庭で立っていた。
ミルナも部屋を出たが静かに一人で廊下の奥へ姿を消した。

(#゚;;-゚)「はあ」

気がかりなのはアサピーの後ろの何かもだが、開幕で告げられた途中で止めることは許さないという言葉。
休憩は途中で止めることになるのではないかと今更だが怖気づいてしまう。
  _
( ゚∀゚)「シュールさんとアサピーのダークコンボにSUN値削られたな」

ジョルジュが伸びをしながら暗い顔をしているでぃに話かけた。

(#゚;;-゚)「SUNち?」
  _
( ゚∀゚)「あっ、なんて言うか精神力?ゲームのMPみたいなやつ?で分かるかな」

(#゚;;-゚)「それならわかります。すごく精神的に疲れてしまったから」

  _( ゚∀゚)「だよな〜。最初の演出の時から気合入ってるし、しょっぱなからミルナががっつり怖い話するから
俺なんか話そうと思った笑い話を急きょ変えちまったよ。焦ってたからつじつまとかあってるか今更気になっちまったぜ」

(#゚;;-゚)「そうなんですか?話し方とかすごく慣れてるなーって思って聞いてましたよ。全然変じゃなかったですよ」
 _
(*゚∀゚)「そ、そうか〜?俺のありきたりな体験より、でぃちゃんの方がオリジナルの話で面白かったぜ」

(#゚;;-゚*)
 _
(*゚∀゚*)(照れてる。かわいい)

28名無しさん:2020/11/24(火) 23:56:21 ID:zZY08h8s0
学校であった怖い話っぽい
アサピーが風間かなと思ったけどあれって感じ

29名無しさん:2020/11/26(木) 02:32:13 ID:Y3nPyA/I0
太陽値

30名無しさん:2020/12/12(土) 23:22:30 ID:efN905FU0
でぃちゃんの語りが飯テロで塩サバ食べたい

31 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/17(日) 22:06:02 ID:GQoRDw9E0
私情で遅くなりましたが「冬に百物語をするようです」の投稿再開します。
感想コメントありがとうございます。完結するまでは雰囲気を保つためお返事を控えさせていただきますが全て目を通して喜んでいます。
SUN値はSAN値をスぺルまで調べたのに投稿の時に間違えて覚えてた方を書いてしまったので、脳内変換でSAN値に変えてください。

32 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/17(日) 22:16:40 ID:GQoRDw9E0
先ほどの心霊体験を忘れるかのように明るく振る舞うジョルジュとでぃ。

( ゚д゚ )「そろそろ入るか?」

手に長細い紙をもって縁側からミルナが二人に声をかけた。
                                          _
Σ( ゚∀゚)「うお!ミルナ!」

Σ(#゚;;-゚)「きゃっ!びっくりした!」


( ゚д゚ )「中の変な奴に効くか分らんが札をもってきた」

ミルナが長細い紙「家内安全」と書かれたお守り札を二人に向けて見せた。
信心深くなくても初詣で買う人が多いそのお札。
  _
( ゚∀゚)「おお、あったほうがいいんじゃないか(ないより、きっといいよな?)」

(#゚;;-゚)人「ご利益ありますように」

二人は借りたサンダルを脱いで縁側に上がった。この会を途中で抜けて帰るという選択肢もあったのに
ミルナの後ろに隠れるように二人は彼の後に続いてシュールとアサピーがいる部屋に入った。

33 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/17(日) 22:22:39 ID:GQoRDw9E0
lw´‐ _‐ノv「おかえり」

(-@∀@)「シュールさんにも話していたんですけどね。ボクの写真、どう見てもUFO写真として傑作ですよ!
どうです。さっきの写真、もう一度見ませんか!」

(#゚;;-゚)「いえ、それはもういいです。結構です。いりません。ごめんなさい。付き合えません」

Σ(-@д@)「んぐあっ!?まるで僕が告白したみたいな断り方された!?」

三人が部屋に戻るとシュールが迎える。
そして自分のUFO写真でUFOの良さを再確認して興奮しているアサピーがいた。
UFOの良さを伝えようとするが心霊写真を二度も見たくないと即座にでぃが断った。
 _         _ 
( ゚∀゚)キョロ (゚∀゚ )キョロ

ジョルジュが部屋の周囲を見回して怪異がないか確認する。特にアサピーの背後は念入りに目で確認していた。

( ゚д゚ )「大丈夫そうだ」

ミルナも部屋の中を見回しながら手に持った札を部屋の端に寄せたテーブルの上に乗せた。

lw´‐ _‐ノv「百物語再開だな。次はどうする?さっきと同じ順番?」

( ゚д゚ )「俺はそれでもいいぞ」

(-@∀@)「ここは僕のUFO写真第二弾をぜひっ!」

34 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/17(日) 22:32:56 ID:GQoRDw9E0
 _
( ゚∀゚)「二番目から誰から話すか悩みそうだし、一週目の順番でいいと思うぞ」

(#゚;;-゚)「私もそれに賛成です」

Σ(-@д@)「んっがっ!?三対一で負けた!」

( ゚д゚ )「ちゃんと全員順番でいくから落ち込むな」
 _
lw´‐ _‐ノv「男とは涙を飲んで強くなると言う。けど目のゴミ入ってそうで嫌だな」

(-@∀@)「それはモノの例えで、本当に飲むわけじゃないですから・・・・・・」

シュールのボケなのか慰めのつもりなのかわからない言葉にアサピーが真面目に返す。


雑談から誰からともなく百物語を促す

( ゚д゚ )「分かった。二週目を始めようか」

その言葉を皮切りにミルナが話を始めた。

俺が通っていた小学校は元墓場をつぶしたっていう噂が立っていた。
そのせいか学校の七不思議どころか十三不思議とか四十四の恐怖とかいって怖い話には事欠かなかった。
そんな小学校で一年生の時に初めての運動会。三年生のリレーの時だ。
地面から伸びた青白い腕が地面から生えて、その手に足をつかまれた第一走者の先頭の子が転んだ。
俺は紅組だったから「幽霊のせいで紅組が負けてる!」って思った。
次は第二走者。先頭を走っていた白組の子が同じ場所で幽霊に足をつかまれて転んだ。
運動会を嫌いな子は冷めているせいか同じ場所で二度も先頭がこけるということに気づいて少しざわついてた。
俺は幽霊の腕が邪魔しているのを見えているから、そのまま白組の邪魔をしろってガキみたいなことを考えてた。
二度も連続で転ぶから危険物があると判断されて一時リレーが中断された。先生たちが腕だけの幽霊がいる場所を確認する。
だけど先生はだれも見えないらしくその場で首をかしげるだけだった。
第三走者の先頭がまた足をつかまれていた。だけど先頭はなんとか転ばずに掴まれたのを振り切って走り続ける。

地面の腕が伸びた。

いや、正確には上腕から肩までが地面から出てきたんだ。
その幽霊は一番早く走る奴の足をつかんで、自分を地面の中から引き揚げようとしていた。
最後から二番目の走者に掴まった時には髪の生えていない口だけがあるのっぺらぼうが上半身を地面から出していた。
先頭を走るアンカーに掴まってゴールまで進むそいつに下半身はなかった。
重みがあるみたいで先頭だったアンカーは足にしがみつかれてから急にスピードを落として最下位になった。
上半身んだけの怪物は三年生の足にゴールを越えてもしがみついていた。
選手は退場のときに俺達一年生の前を通るんだが、俺の視線に気づいたのかこっちを向いて笑っていた。
あの真っ赤な口は今でも夢にでる。

ミルナの語りが終わって6本目のろうそくの火が消される。

35 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/21(木) 14:34:01 ID:EtT3e55A0
ミルナの語りが終わって6本目のろうそくの火が消される。
 _
( ゚∀゚)「さあて、次は俺の番だな。
日本は八百万の神がいるっていうのは知ってるか」

lw´‐ _‐ノv「お米の神様。米の稲の神様。米の豊穣の神様あたりが有名だな」
 _
( ゚∀゚)「お、おう?おう、うん」

(-@∀@)「学生の僕たちは菅原公の御利益をもらいたいですよ」
 _
( ゚∀゚)「ああ、テストのときとか神様にもすがりたくなるよな。悪いことする奴も神を信じてすがる奴がいるし」
 _
( ゚∀゚)「俺が今から話すのは神の力に翻弄された奴の話だ」

36 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/21(木) 14:41:07 ID:EtT3e55A0
 _
( ゚∀゚)「俺のダチのダチにさ。会ったことはないけどすげー手癖の悪い奴がいるんだ。あだ名は万引きのジャック」

(-@∀@)「万引きwのwジャックwww」
 _
( ゚∀゚)「笑っちまうアサピーの気持ちはわかるぜ。だけどこいつのせいで本屋がつぶれたって言われるほど碌な奴じゃなかった」

(#゚;;-゚)「泥棒するなんてひどい。お店の人が可哀そう」
 _
( ゚∀゚)「すごい被害がでかいのになぜかこいつは警察どころか店員や万引きGメンにすら捕まらなかった」

lw´‐ _‐ノv「警察や店員たち全員がのっぺらぼうで目がない。だから見えないというオチ?」
 _
( ゚∀゚)「まさか。それなら神様の前振りなんかしないっすよ」
 _
( ゚∀゚)「ジャックは悪仲間に鈍いサツや店員に捕まらないのは――の力のおかげだって話してた」

( ゚д゚ )「――?聞いたことがないな。前振りからすると神様なのか?」
 _
( ゚∀゚)「ジャックは神だって言ってたけど、本当のところはどうだろうな」
 _
( ゚∀゚)「ジャックは毎回盗んだものを捧げて――に祈ってるんだそうだ。次を捧げるために俺を守ってくださいって。
それから捧げものを家にもって帰る。そうすると次の日は必ずどんな盗みも成功する。
店員が何人もいて、その目の前で盗んでも捕まらないって豪語してたな」

(-@A@)「さすがにそれは大げさですよ。透明人間にでもならないと目の前で万引きして成功なんてコントくらいですよ」
 _
( ゚∀゚)「ある意味、透明人間になったんだ。その神の力は存在を消す力ってジャックは言っていた」

( ゚д゚ )「誰にも気づかれないならやりたい放題できるな」
 _
( ゚∀゚)「だけど存在が消える時って一日一度の盗み限定なんだとよ」

37 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/21(木) 14:48:16 ID:EtT3e55A0
( ゚∀゚)「一日に店一軒だけの盗み。
店にとってはその一度でいくつも商品が盗まれるから大損害なんだが、ジャックは小さなことだと思っていた。
だからもっとデカいことをして裏世界に名を広げてやりたいって考えるようになったんだ。何をしたと思う?」

lw´‐ _‐ノv「女風呂の覗き?」
 _
( ゚∀゚)「男のロマンだけど裏世界に名を広げるのにそれはないっす。シュールさん」
 _
( ゚∀゚)「ジャックが手っ取り早く名を売れる方法として考えたのがヤクザからヤクを盗むこと。
それを売りさばいて闇のブローカーとしてのし上がろうとしたんだ。
どうやってヤクザの情報を手に入れたかはオレは知らない。
ジャックはヤクの受け取り現場に現れてヤクザたちの目の前でそれを盗んだ」
 _
( ゚∀゚)「店以外で盗みをしたのは初めてだったが、ヤクザ達はなんの疑いもしない。
ヤクが入ったカバンがなくなったのに気づかず取引を続けていた。
そしてジャックは堂々と姿を見せたままヤクを盗み出したんだ。
そしてヤクも――にお供えして、さすがに家にはもって帰らずに秘密の場所に隠したんだ。
学生とか素人相手にヤクの密売は成功。売り切れたらまた盗んでは売る生活。
だけど一年も経たずにでジャックはヤクザ達に捕まって自分のしてきた大きな責任をとらされた」

(-@A@)「盗むときだけは必ず存在が消えるのになぜ盗んだことが相手に分かったんですか」
( ゚∀゚)「そう。盗むときだけ存在が消える。これが万引きには重要なことだったからジャックは見落としてたんだ。
ヤクを売るのは、盗みじゃない。それに存在が消えたら売買の交渉なんてできないだろ?
素人相手といっても一度手を出した客は中毒が加速していく。坂を転がり落ちるようにな。
ついに本物のバイヤーから買うようになった。
客の誰かがポロっとジャックのことを話してしまったんだろうな。ジャックの方が良い物を売ってたって。
ヤクザと繋がりがないジャックは売人としてはド素人。なのにヤクは不純物が少ない上物。
だからヤクザ達に目をつけられてしまった。俺達に話を通さずに勝手に売ってる奴がいる。
盗まれたヤクを誰かがこいつを使って売ってるんじゃないかって」

(-@A@)「た、たしかにジャックはヤクザから盗んでいますが、それをヤクザ側が証拠もなく決めつけるのは突拍子もない話ですよ」

38 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/21(木) 14:49:32 ID:EtT3e55A0
( ゚∀゚)「ジャックにヤクの純度のことで面子をつぶされたからな。本当に盗んだかどうかなんて関係ないんだよ。
泥棒に泥棒をしましたか?って聞いて『していません』って言われても信じられないだろ。
盗まれたヤクを売ろうとした方も買おうとした方も責任をとらなきゃいけない。でも自分が責任をとるのは嫌だ。
相手に擦り付けると抗争になる。そうなるとあとは分かるよな」


(#゚;;-゚)「それって、まさか……」
 _
( ゚∀゚)「ジャックがしてきたことを考えれば今までのツケが回ったのさ。
ヤクザはその辺りの家出娘に金を握らせて、女がヤクを買うふりをしてジャックを呼び出した。
あらわれたジャックをヤクザが取り囲んで『ヤクザの女にヤクを売った罪』を被せたのさ。
あとは好き勝手に見張りがジャックを取引現場で見たとか口裏を合わせヤクを盗んだ罪も被せてしまう」

lw´‐ _‐ノv「最後はあれであれしてあれあれいないよ?ジャックはどこ?」
 _
( ゚∀゚)「そうそう。だーれもジャックを見なくなってしまった。だけど――の噂はひっそりとされるんだ。
――は存在を消すって。俺の話はこれでおしまい」

七本目のろうそくがの火が消される。

39 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/21(木) 15:02:32 ID:EtT3e55A0
( ゚∀゚)「さあて、七話目。次は俺の番だな」

(#゚;;-゚)「次はどんな話ですか?」
 _
( ゚∀゚)「それは聞いてのお楽しみってことで」
 _
( ゚∀゚)「俺のダチのダチにさ。会ったことはないけどすげー手癖の悪い奴がいるんだ。あだ名は万引きのマンダ」

(-@∀@)「万引きwのwマンダwww」
 _
( ゚∀゚)「笑っちまうアサピーの気持ちはわかるぜ。だけどこいつのせいで文房具屋がつぶれたって言われるほど碌な奴じゃなかった」

(#゚;;-゚)「ちゃんとお金を払って買うべきなのに。お店の人が可哀そう」
 _
( ゚∀゚)「一つの値段は小さくても幾つも盗むから被害でかい。なのに!こいつは警察どころか店員や万引きGメンにすら捕まらなかった」

lw´‐ _‐ノv「警察も店員ものっぺらぼうで目がない。だから盗まれても見えないというオチ?」
   _
Σ( ゚□゚)「シュールさん!俺の話のオチ盗らないで〜〜!!」

lw´‐ _‐ノv「メンゴ」
 _
( ゚∀゚)「謝ったから許す」

皆がジョルジュの話で盛り上がっている中でミルナが七本目のろうそくに目をやると燃え残った芯が緩やかに煙を上げていた。

( ゚д゚ )(さっきジョルジュの話が終わってまだ七本目のろうそくはまだ消していないのにおかしいな。暖房の風が当たって消えたか)
 _
( ゚∀゚)「よーし!次はでぃちゃんの番だな!」

ミルナ以外は七本目のろうそくが消えていたことに気が付いておらず次の話へと進んでいった。

40名無しさん:2021/01/21(木) 17:15:54 ID:U2aRNd3k0

これは・・・

41 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/22(金) 00:40:05 ID:iVAQ4mKs0
ミルナは七本目のろうそくの火が知らぬうちに消えているので、火のついた八本目のろうそくに手を伸ばした。

( ゚д゚ )(まだ蝋燭の予備もあるし、五人で話をするから話数の数え間違いもないだろう。このろうそくを消しておけばいいか)

ミルナは八本目のろうそくの火を消した。その間にでぃが話の前振りを始めておりミルナは彼女の言葉に耳を傾けた。

(#゚;;-゚)「次は八話目。私の番ですね。この話をする前に、皆さんは料理をしますか?」

lw´‐ _‐ノv「朝と休みの日の米炊きは私の当番だ」
 _
( ゚∀゚)「俺はカップラーメンとかカップ焼きそばくらいだなー」

(-@∀@)ノシ「それならボクもできますよ」

( ゚д゚ )「カップ麺は美味いが料理に含むのか?」

(#゚;;-゚)「うーん、カップ麺を料理に含むかは置いておいてね。今回話すことのイメージはできるかなあ?。
できるだけ分かるように話してみますけど」


私の友達に料理が好きな子がいるの。黒髪を伸ばしている子で見るからに女の子って感じ。
その子は小野 女末(おの めみ)ちゃん。

| l| ゚ー゚ノl「でぃちゃん。クッキー作ってきたよ!」

女未ちゃんはいつも焼き菓子を作って学校にもって来てくれるんだよ。

| l| ゚ー゚ノl「でぃちゃん。次の休みの時にまた何か作ってくるけど何がいい?」

お菓子のリクエストを聞かれたから私は「ケーキが良いな。生クリームのショートケーキとか」って答えたの。

| l| ゚。゚ノl「ケーキ。ケーキかあ。ホットケーキなら作れるんだけど……」

歯切れの悪い返事に私も図々しかったなって思って「ごめん。大変なのリクエストしちゃったね」って謝ったの。
え?なんで図々しいかって?ケーキ作りってスポンジを一から作るのって大変なんだよ。
いちごは季節によってスーパーにに売ってないし。

| l| ゚ー゚ノl「こっちこそごめんね。リクエスト聞いておきながら文句言っちゃって。
私の台所ってホイップクリームづくりやメレンゲづくりがダメなんだよね」

ホイップクリームは生クリーム、つまり乳製品。メレンゲは卵の白身が材料なのよ。
どちらもアレルギーが出る食品だから作れないのかなって思ったけど、
焼き菓子にはどっちも使われているからアレルギーが理由なのは変なのよね。 
だから「え?どうしてだめなの?」ってつい聞いちゃった。

| l| ゚―゚ノl「んー、どうしても知りたいなら今週の日曜に私の家においでよ」

「え?いいの?女未ちゃんの出来立てケーキ食べてみたいから遊びに行くよ」

| l| ゚―゚ノl「食べれるといいんだけどねぇ。クッキーとかは作れるけど……ケーキはクリーム作りが……あんまり期待しないでね」

42 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/22(金) 00:49:01 ID:iVAQ4mKs0
当日は女未ちゃんの家の台所で一緒にケーキ作りをしたの。材料は用意してくれてたから分量を量ったり簡単な手伝いを私もしたわ。
それでついにホイップクリーム作り。もしクリーム作りに失敗したらと思って私はスーパーで売ってるホイップクリームを買ったの。
絞り袋に入っているから包装袋からだしたらすぐに使える便利なやつをね。保冷剤と一緒に保冷バックに入れてきたの。
最初から出したら失礼かと思って失敗したときまではバックに入れておいたわ。

| l| ゚―゚ノl「生クリームと砂糖をボールに入れて、ハンドミキサーをスイッチオン」

ハンドミキサーがモーター音を響かせて生クリームをかき混ぜていく。
はじめは液体が泡立って、次第にホイップクリームらしくなっていったわ。

| l| ゚―゚ノl「あれ、いつもより来るの遅いなー」

白いきめ細やかな泡が増えるにつれて女未ちゃんが首を傾げた。それでもミキサーの動きは止まらない。

| l| ゚―゚ノl「あっ、きた。でぃちゃんもよく見ててね」

ミキサーのスイッチを止めた女未ちゃん。クリームからミキサーを上げる。
するとそこからクリームのツノができて、それは上手にクリームができたって証だった。
クリームのツノの影から赤い何かが見えた。

「えっ?ゴミ?」

一瞬、小さなゴミが混ざったのかと思ってボールに手を伸ばした。
それより先に女未ちゃんが無言でテーブルに置いたままボールを回して向きを変えた。

43 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/22(金) 00:54:43 ID:iVAQ4mKs0
ボールの向きを変えるとツノの向こう側が私の手前側にきて赤い何かの正体が見えたわ。

「こおに?」

何も身に着けていない真っ赤な小人。髪も生えていない頭頂部から小さな黄色いツノが見えた。

| l| ゚―゚ノl「そ、小鬼がホイップクリームやメレンゲを食べちゃうの。クリームが減ってるのは見えても小鬼がお父さんもお母さんも見えないの。
それに他の料理やお菓子を作ってるときには出ないんだよ」


| l| ゚―゚ノl「ショートケーキについたクリームにはなんにも起こらないから、店で買ったものを食べればいいでしょって取り合ってくれないのよねー」

「じゃあ、こっち使ってみる?一応、用意してたんだけど」

私は保冷バックに入れていたホイップクリームを取りだしたんだけど……

| l| ゚―゚ノ「あー、先にこっちを食べてたんだね」

袋がところどころ破けてホイップクリームは吸い取られたようになくなってたわ。
ボールの中のクリームは舐めたようにきれいに空っぽになってた。
テーブルにはクリームが足あとのように一筋ついていたけど、それも途中で途切れていた。小鬼の姿はどこにもなかったわ。


(#゚;;-゚)「これで私の話はおしまい。残った材料は家にあった食材を足してクッキーになったわ」

9本目のろうそくの火が消された。
 _
( ゚∀゚)「おー、なんかプチファンタジーみたいな話だな」

(-@∀@)「それは日本にいる小鬼の形をした宇宙人かもしれませんね!」

lw´‐ _‐ノv「宇宙人はクリーム泥棒か。そう考えるとしょぼい生物だ」

Σ(-@O@)「さっきの僕の発言はなしで!宇宙人はクリーム泥棒とかしょぼいことしませんから!」

( ゚д゚ )「次は9話目、シュールの番だな。10話目はアサピーだが、写真はもういいからな」

アサピーが自信満々に見せたUFO写真。撮影した本人は気づいていないのが不思議なくらいはっきりした心霊写真だった。
心霊騒ぎも起きてもうあれはごめんだとミルナが釘をさした。

(-@ヘ@)「ふーむ、UFO写真の奥深さを語るには早すぎたみたいですね。ボクもとっかかりやすそうな宇宙人話をしていきましょう」

ただ一人、自分の周りにいた幽霊に気づかなかったアサピーは呑気に10話目をどんな話をするか考えていた。

44 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/22(金) 20:09:39 ID:iVAQ4mKs0
lw´‐ _‐ノv「次は私だな。次も私自身の体験を話そうか」

(#゚;;-゚)「またアサピーさんがでます?」

lw´‐ _‐ノv「いや、今回は出ない」
 _
( ゚∀゚)「ほっ、安心して聞けそうだ」

(-@∀@)「?」

( ゚д゚ )「アサピー、気にするな。9話目をしよう」


これは一年前に体験した話だ。季節はちょうど今くらいだった。
その日、私は米の気分だった。だから電車でV町に行って新しくできたおにぎり専門店に行こうと思った。
雨の降りそうな天気だったから電車は昼前だったが乗客はまばら。暖房がよく効いて暑さを感じるくらいだった。
おにぎり屋が楽しみで昨晩よく寝れなかった私はいつの間にか眠ってしまった。

ふと寒さを感じて目を開けると見慣れない町の風景だった。客が周りにいたし、私は単に乗り過ごしてしまったと思ったよ。

「次はのうらんちょう。次はのうらんちょう」

アナウンスが聞きなれない駅名を告げる。乗客の何人かが立ち上がってドアの前に立つ。
私も乗り過ぎてしまったから目的の駅に戻ろうと席をたってドアの方に向かった。

「もうし、もうし、お嬢さん」

その途中で知らないおばあさんが声をかけてきた。足を止めてみるとおばあさんは頭皮が見える薄い白髪でしわくちゃの顔が印象的だと思った。

「若いのにそんな駅で降りてはなりませんよ」

「降りる駅をうっかり過ぎてしまったので、ここの駅で乗り換えようと思って」

「急いでも仕方ありませんよ。もう少し乗っていけば素敵な景色が見えるようになりますよ」

「はあ。そうですか。私はちょっと用事があるんで」

私には専門店のおにぎりが待っている。だからおばあさんに軽く頭をさげてから足を進めた。

「でも、そこは」「もうほっとけや!ばあさん!この子は間違えたから戻るって言ってるだろ!」

二歩進んだところでおばあさんが引き留めようと声をかけてきた。
するとドアの前に立っていたスーツ姿の男がおばあさんを怒鳴りつけたんだ。
青白い顔をした男だった。寒さを感じる電車内なのに彼は額に汗をかいていた。

「ドアが開きます。お忘れものなどないようご確認してください」

プシュッーとドアがスライドして開く。まだらだが他の乗客が降りていく。スーツの男は何も言わずに降りた。

45 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/23(土) 20:31:04 ID:gjpkMKhE0
私は引き留めてきたおばあさんに少し頭を下げて駅へ降りた。

「改札がない……?」

はじめて経験したがそこは無人駅だった。待合所の建物に出入り口に改札がなかった。
代わりに出入り口の左右に鉄の短い長さの柵がついているだけで真ん中から出入りは自由。
駅員もいないのかチケット入れが左右の柵にぶら下がっている。待ち合い場所も一か所しかない駅だった。

駅でよく見る椅子に座って電車を待つんだが登りも下りも電車が来ない。不思議なことに構内には時刻表がなかった。
「お嬢さん、駅から出ないの?」
「乗り過ごしたんで戻ろ……」

声をかけられたから顔を上げると頭のない駅員が立っていた。
手のひらを私の方に向けていたんだが、その手のひらには色艶の良い唇と小型犬みたいな丸い黒目が付いていた。

( ∴)「お嬢さんね。他のお客さんから移動しない子がいるから流れがとどまって通りにくかったって言われてるんだよ。
行くことに踏ん切りがつかない?あ、その顔、なんにも知らないで来ちゃった?ここに来るのははじめて?」

他の客なんて通っていない。
駅員が話かけ続けているのを無視して周囲を見回すけど私と頭のない駅員以外は構内にいない。
客がいないのに客がいるように言うし、不気味な外見だが日本語をしゃべっている。
それに彼以外に戻りの電車のことを聞ける相手がいないから初めて来る場所だと私は肯定した。

「うっかり降りる駅を乗り過ごして……全然知らない場所に来てたんで電車に乗って帰ろうかと思って」

( ∴)「あー、やっぱり。表情が違うと思った。空気が乾燥すると空気の流れが変わるから、
君みたいにうっかり来る子がいるんだよね。
一方通行だから留まっちゃだめだよ。帰りの乗り場まで案内するからついておいで。
乗車券はそのまま持っておくんだよ。お金ないでしょ?乗車券がないと帰れなくなるから」

財布にはおにぎり代の他にもお金は入れていたが、乗車券代を余分に払う必要がないならいいかと私はその言葉を否定しなかった。

46 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/23(土) 20:32:23 ID:gjpkMKhE0
駅員について駅から出ると普通のアスファルトの道路だったよ。
道を挟んで見えた商店街のアーケードには「ようこそ!解放の町『脳乱町』へ」と日本語で書かれていた。
家も店の建物も奇抜なところはなかったけど違和感があった。駅前なのに人が一人も見当たらなかったんだ。
商店街に入ってまっすぐ進んで行く駅員の背中を追いかけながら初めての場所を見回した。
店の看板やのぼりに「あなたの恨み、買います」や「出張可。錯乱のご相談乗ります」「心中手配承ります」と書かれていた。
うん、どれも変な店だった。なにより変なことに気が付いたんだがどの建物にも窓がなかったんだ。
太陽は出ているし、北風も吹いている。普通なら明かりを取り入れるたり空気の入れ替えで窓があるはずなんだ。
どの建物もドアがあっても窓がなかった。そのドアも閉じられているから、あれ全部密室なんだって思うと気味が悪くなったよ。
本当にこの頭のない駅員について行っていいのかと心配になって足を止めてしまった。

( ∴)「ここは留まらない方が良い。君みたいな若い子が来る場所じゃあない」

駅員が足を止めて私がいる後ろを振り返らずに言った。それで電車で言われたおばあさんの言葉を私は思い出したよ。

「駅に降りずに電車に乗っていたら戻れたでしょうか」

( ∴)「電車を含めて一方通行だから。時間と一緒だよ。だけどね、ここは時計なんだよ。人間には手の届かない時計。
ここの人は時計の針を自由に動かせるから人間はここで時計の針を動かしてもらいに来るんだ。
そして時間を作りかえたように思っている。でもね、動くのは時計なんだよ。それでも良いと人間はくるけどね。
最後には節理のために針を合わせなきゃいけいないんだよ」

分かるようでよく分からない返事だった。ただあの電車に乗っていても乗り換えする必要があるのは分かった。
私は歩き出した駅員の背中を追ってまた歩き出した。

しばらく歩くと砂利道になって、砂利道から土の道になった。コンクリートの壁にドアが付いていて駅員が難なくドアをあけた。
ドアをくぐると四方をコンクリートの壁に囲まれた運動場のような場所だった。
中央には小さな土山があり10段くらいのエスカレーターが備え付けられていたよ。

( ∴)「ここが帰りの乗り場。君は初めてだから目守りをもっていなかったよね。あのエスカレーターに乗ったら目をつぶるんだよ」

「ここが帰りの乗り場?」

( ∴)「ここは一方通行の駅。行きと帰りで方法が違うのは当たり前だよ」

駅員が両手を胸のあたりで上げて、顔のついていない方の手を私に向かって振った。ここでさよならということだった。
私は思い切ってその短いエスカレーターに足をのせて目を閉じた。軽い重力を感じてエスカレーターの動きに集中した。

両足のつま先に固い何かが当たる衝撃があってつんのめるように足が前に出た。

47 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/23(土) 20:57:31 ID:gjpkMKhE0
「うわっ」

なんとかバランスを取って転ぶのは避けれたけど目を開けるのは怖かった。
周囲には人の気配や話声が聞こえて、駅に電車が来る合図の音楽が鳴り響く。

「まもなく2番線にV町行の電車が到着します。白線の内側に――」

聞きなれたアナウンスの放送でやっと私は目をあけることができた。駅構内の看板には粉田町と書かれていた。
粉田町はV町の手前の駅だった。気が抜けた私は座りたかった。
だけど駅構内に留まるのが怖くて仕方がなかった。
もっていた乗車券はV駅のものだけど粉田駅も同じ乗車料金だったからそのままそれを使って駅を出た。
V町にはバスに乗って何とかおにぎり専門店でおにぎりを買えた時は感動で涙がでたよ。
それから悩乱町をネットで調べたけど何も出てこなかった。だけど確かに私はあの駅に行ったんだ。

シュールがろうそくの火を消した。


( ゚д゚ )「一週目の時とはずいぶん違うテイストの話だったな」

(#゚;;-゚)「シュールさん以外の駅で降りた人達の仄暗い人間の感情が見え隠れする、実は人間の方が怖いって話にもなりますね」

 _
( ゚∀゚)「俺は駅員が話の途中で障子をあけて出てくるんじゃないかとビクビクしたぜ」

(-@∀@)「ジョルジュさん、頭がなくて手に顔が付いた人間なんてそんな非現実的な存在はあらわれませんよ。
脳がすべての指示を出すんですよ。脳がない生命体が出る場合、実体験風の怖い作り話ですよ」


lw´‐ _‐ノv「創作かどうかはみんなのご想像にお任せするよ。しかしV町のおにぎり専門店のおにぎりは神だ」

アサピーに作り話と言われてもシュールは怒りもせずおにぎりを称えた。

48 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/24(日) 18:31:57 ID:M7F/TnyY0
(*ここから先の話はグロや流血注意な話も交じってきます。苦手な方はご注意ください。)

(-@∀@)「10話目、僕の番ですね。宇宙人の行動の一つであるキャトルミューティレーションが有名ですよね」
 _
( ゚∀゚)「この前、UMA特集でしてたな。宇宙人にUFOへさらわれるやつだったよな」

(-@∀@)「それはアブダクションです!アブダクションされてキャトルミューティレーションが行われる場合もありますが二つはまったくの別物です」

(#゚;;-゚)(どちらもよく分からないけど説明してもらうと長くなりそうだから黙っていよう)

lw´‐ _‐ノv「キャトルミューティレーションは家畜が宇宙人に内臓と血を一滴も残さずにを抜き取られる現象」

( ゚д゚ )「科学部は宇宙人研究部でもあるのか」

lw´‐ _‐ノv「耳にタコができるくらいアサピーが語るから……」
 _
( ゚。゚)「あー、宇宙人の話させたらしつこそうだもんな」

( ゚д゚ )(面倒なことになりそうだから質問は控えておこう)

(-@∀@)「この話は僕を宇宙人研究に引き込んだ出会いと別れの話です」


(-@∀@)「僕が小学2年生の時に転校生がやってきました。名前は偽田モナー君。
彼は僕の隣の席になったので仲良くなるのにそう時間はかかりませんでした」

偽田「アサピー。昨日の「未知なる研究」見たもにゃか?」

アサピー「見ましたよっ!未知研!火星の話、すごく面白かったですね」

当時の僕は宇宙や惑星が好きで、N〇Kでしていた未知なる研究〜宇宙の星々〜がテレビ番組の中で大好きでした。
偽田君は僕以上に宇宙や惑星のことが詳しくて僕は勝手に彼を宇宙師匠と心の中で読んでいました。

49 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/24(日) 18:33:39 ID:M7F/TnyY0
僕と偽田君が話をしていると歯車君も話に混ざってきました。

歯車「昨日の未知研、ボクもみた!お父さんが火星の研究が進む前は火星人がいるって皆が信じてたんだって!」

偽田「かせいじん?」

偽田君が首をかしげました。偽田君は僕達がよく知っているものや流行に疎いので当時は天然だと思っていました。

アサピー「火星に住む宇宙人を火星人って言うんですよ。でも未知研で火星に生命の痕跡があったのは大昔だったと言ってたじゃないですか」

偽田「うん、火星には宇宙人なんていないもにゃ」

歯車「火星に宇宙人がいたら面白そうじゃないか。すごい科学力で宇宙人は人間に見つからないように隠れてると思う!」


当時は僕より歯車君の方が宇宙人を信じていて、宇宙人に否定的なことを言うとちょっとムキになっていました。
今の僕ならあの時に宇宙人を否定された彼の気持ちも分かるんですけどね。

偽田「宇宙人は隠れてはいないよ。人間の目では見えないだけなんだ」

僕は偽田君がそんなことを言うから驚きましたよ。

歯車「ほら!偽田君もそう言ってるじゃないか!」

アサピー「目で見えないなんていないのと一緒じゃないですか!」

偽田「じゃあ宇宙人がいる証拠を見せてあげるもにゃ。明日、タコ公園に集合もにゃ」

50 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/24(日) 18:34:53 ID:M7F/TnyY0
次の日、タコ公園に三人で集まって偽田君の案内で近くの林に行きました。

アサピー「あとどれくらい歩くんですか」

偽田「もう少し奥もにゃ。宇宙人の実験場につくもにゃ」

僕と歯車君は顔を見合わせました。彼は不安そうな顔で、僕もきっと同じ顔をしていたと思います。
だって僕はもしかしたら偽田君が宇宙人かもしれない。そんなことを思ってましたから。
でも君もいるし二人でなら足の遅い偽田くんから逃げれると思ったんです。

偽田「ついたもにゃー。たしかこの木のところもにゃ」

偽田君が一本の木の前でしゃがんで山になった枯れ葉をかき分けていきます。
僕達はその後ろから何が出てくるのかとドキドキしながら見ていました。

それはすぐに出てきました。

歯車「うわっ」

あさぴー「んえっ」

僕と歯車君は同時に小さい悲鳴を上げました。
枯れ葉の下から中型の犬があらわれたんですけどね。目を閉じてピクリとも動かないんですよ。
なんでこんなところに犬がいるんだろう。なんで枯れ葉を被っているんだろう。小二の頭で辿り着いた発想に
僕はおもわず歯車君に抱き着きました。歯車君も僕に抱き着いてきましてね。
二人そろって嫌な予感から一歩後退りしました。

51 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/24(日) 18:36:31 ID:M7F/TnyY0
偽田「この前もここで犬の死体があったんだ。見てよ。この傷口」

興奮して早口で語る偽田君は手で犬の腹の傷口を開いたんです。
中は空洞でした。でも赤い肉がグロテスクで吐き気がしましたよ。
目を背けるために僕は顔を空に向けました。

偽田「それに傷口を触っても血の一滴もつかないもにゃ。こんなに大きな傷なのにどこにも血が流れてないもにゃ。
宇宙人はすごいもにゃ!ここで何度もキャトルミューティレーションをしているもにゃ!
だけど姿は見せないもにゃ!すごいもにゃ!」

興奮して笑う偽田君。僕は限界でした。歯車君の手を引いて叫びながら林を抜けて一目散に僕の家に駆けこみました。
心配する母に二人で泣きつき、気が付くと僕は自分の部屋のベッドで寝ていました。
歯車君は親が迎えに来てくれて僕が寝ている間に帰っていました。
起き上がった僕に母が「明日からおばあちゃんの所に行くからしばらく学校はお休みね」と言う言葉に
僕は僕達が宇宙人の実験場を見つけたのがバレたせいだと思いました。
実際は犬の死体を見たという僕達の言葉を信じた母が警察に通報して、あの場所で警察が死体を発見したからなんですけどね。
高い木々に吊るされたお腹がぽっかり空いた犬の死体達を。
犯人は捕まっていません。だって宇宙人の仕業ですからね。
偽田君は僕よりも長く学校を休みそのまま冬休みになり学校が始まった時には転校していました。

52 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/24(日) 18:37:52 ID:M7F/TnyY0
(#゚;;q゚)「うぅ……トイレはどこに……」

( ゚д゚ ;)「こっちだ。案内する」

lw´‐ _‐;ノv「私も付き添うよ」

ふらつくでぃを支えるようにシュールが寄り添う。二人を連れてミルナが部屋を出た。
 _
( ゚―゚)「どこがとっかかりやすい宇宙人の話なんだ。グロイ話じゃねーか」

(-@∀@)?「理科の授業で鶏の頭の解剖とかしたじゃないですか。それに比べたらこの話くらいなら大丈夫でしょう?」

不思議そうなアサピーに顔をしかめるジョルジュ。
 _
( ゚―゚)「いやいやいや、大丈夫じゃなかっただろ。あの話でなんでアサピーが宇宙人にハマったのかまったく分からないし」

(-@∀@)「恐怖を感じたからこそ宇宙人から身を守るために研究していたんです。
ですが調べていくうちに凶暴な宇宙人だけではないと分かりましたからね!宇宙は広大で人間には計り知れないものです。
それと同じだけ宇宙人にもいろいろな種族や考えがあるんですよ。NA〇Aや各国の軍も宇宙人の研究をしているといいますし、
日本が研究に遅れないように僕は常に勉強を欠かさないんですよ。
ジョルジュさんが言っていたアブダクションもキャトルミューティレーションを行うため混同されがちです。
アブダクションで連れ去れた人間は実験体にされることもあるんですが、宇宙人が人間とコミュニケーションをとるためでもあるんですよ。
僕の仮説なんですけど宇宙人に比べれば遥かに知能が低い人間に興味を持つということは宇宙研究が宇宙人もまだ進んでいないんですよ。
だから地球人の太陽系惑星研究はきっと宇宙人にとって目からうろこのはずですよ。
これを宇宙人に発表すれば彼らは驚くと同時に自分の研究を発表してくれるとおもんですよ。
まずは僕達は宇宙語がどんなものか知る必要があり――」

 _
( ゚―゚)(地雷踏んでしまった)

53名無しさん:2021/01/25(月) 02:01:41 ID:gVz0AdSM0
otsu

54名無しさん:2021/01/25(月) 12:27:59 ID:1cqK8ScA0
言うほどグロくなかったかなー

55名無しさん:2021/01/27(水) 23:05:27 ID:pgC2DNX20
俺は好きだぞ。アサピーの話。

56名無しさん:2021/01/28(木) 00:17:43 ID:IOtI5gec0
乙です
シュールの話した現実と陸続きだけどなんか変、みたいなの大好き

57 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/30(土) 16:53:12 ID:x.5VIKvY0
( ゚∀゚)「ろうそくは皆が出てる間に消しといたからな。俺たちはいつでも再開していいぞ」

( ゚д゚ )「11話目に進むが、でぃの方は大丈夫か?」

(#゚;;-゚)「うん。さっきの話は家で犬を飼ってたから感情移入しちゃって……。もう大丈夫」

( ゚д゚ )「そうか。他の奴も休憩が必要になったらいつでも言ってくれ。じゃあ、11話目を語ろうか」


皆は隣の市の思永(しえい)小学校が少子化で4年前に廃校になったのは知ってるか?
戦前からの学校で歴史が長く、平成になると鉄筋建てになり戦前の木造校舎の面影は残っていない。
もう築30年になるが廃校になるまで避難場所に指定されていた頑強な建物だった。
廃校になって2年が経った頃、廃校を利用した商業施設化の話があがった。
見積もりを兼ねた下見をしに行った2人のリフォーム業者と3人のベンチャー企業の会社員が廃校に行ったんだ。
廃校になってまだ二年ほどだから大きな傷みはなかった。
これなら大きな改修工事は少なくて済むと思っていたんだが三階の廊下の床に一か所だけ穴があった。
丸くぽっかりと開いた穴。人一人が通れそうな大きさだった。昼間で明かりが窓から入っているのに穴の中は何も見えなかった。
貫通していれば二階の床が見えるはずなんだ。貫通していないなら抉れた床の断面くらい見えるはずなのにそれすら見えなかった。

「なんですかね?この穴?」

リフォーム業者の若い従業員Aが面白半分で身に着けていたボールペンを穴の中に入れた。音もなく吸い込まれるボールペン。

「なに勝手なことやってんだ!」

この五人の中で一番年を取っているリフォーム業者Bが怒鳴る。

「こんな穴があるという報告はなかったのですが……」

会社員達は事前に用意されていた建物の資料に載っていない謎の穴に戸惑いを隠せない。

58 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/30(土) 16:54:42 ID:x.5VIKvY0
「今日はもうダメだ。変なことが起きる日は日が悪い。皆さんも今日は帰ったほうがいい。今日はダメな日だ。」

穴に興味深々で近づこうとする若い業者Aを無理やり引き離そうとする業者B。

「これって幽霊とか心霊現象というやつでしょうか?」

j会社員の一人Cが口を開いた。

「俺は幽霊や妖怪なんて信じてないが、俺の先輩や世話になった大工達から『変な事』が起きた日は仕事はするなって言われているんだ。
『変な事』が起きた日に仕事を続けると事故が起きるってな」

業者Bが業者Aに言い聞かせるように言った。

「でも今日中に報告書を出さないと上が……」

会社員達はいきなりできた穴のせいで下見ができなかったなんて上司に報告できるわけがない。
彼らの味方をするかのように穴は静かに小さくなっていき、手のひらくらいの大きさになると何かが飛びだしてきた。
皆が飛び出した何かに目を奪われている間に穴は消えてしまった。カチャンと音を立てて飛び出したモノが床に落ちる。
恐る恐るそれを従業員Aが手に取ると自分が穴に入れたボールペンだった。それには無数の小さな穴がいくつも開いていた。

「今日は仕事にならねえ。上に文句を言われるなら俺が動けなくなるくらい体調が悪くなって下見できなかったことにしてくれればいい」

もう誰も仕事を中断することを反対できなかった。たかがボールペンだがプラスチックを貫通する針だ。
それに全身を貫かれるなんて拷問でしかない。一歩足を出した途端にあの穴が開いて自分が吸い込まれるかもしれない。
そう思うと普通の床が怖いものになってしまったんだ。
学校から出るまで皆怯えて歩いていた。それからリフォーム業者は別の業者に変更されて話が進められたんだが、
ベンチャー企業の役員が脱税で逮捕されたことで廃校商業化の計画は中断された。
廃校は今もそのまま残っている。あの穴は学校のどこかでぽっかりと開いて獲物を待っているかもしれないな。


ミルナがろうそくを消した。

59 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/30(土) 17:00:55 ID:x.5VIKvY0
(-@∀@)「今回はミルナさんが体験した話じゃないんですね」

( ゚д゚ )「11話目は親父が体験した話にした」

lw´‐ _‐ノv「A、B、Cの誰かか?」

(#゚;;-゚)「リフォーム業者のBがお父さんっぽいですね」

( ゚д゚ )「会話に交じってないEだ」
 _
( ゚∀゚)「Dも会話に交じってないぞwこれがクイズだったら当てるの難しいヤツだw」

「おーい、ミルナ。入るぞー」

障子越しに声がかけら返事も待たずに戸が開いた。男が廊下に立ち、両手に一つずつ重箱をもっていた。

( ゚д゚ )「デミタスおじさん?」

 (´・_ゝ・`)「ミルナ、おじさんじゃなくてお兄さんだろ。久しぶりだね。元気にしてた?店に来てくれないからお兄さんさみしいよ。
これね。差し入れ。父さんにミルナの友達が来てるから、みんなのために晩飯をもってきてくれって電話があったから頑張って作ってきたよ」
 _
( ゚∀゚)「ミルナの知り合い?」

( ゚д゚ )「この人は俺の父さんの弟の盛岡デミタスおじさん」

(-@∀@)「苗字が……?」

 (´・_ゝ・`)「苗字が違うの気になる?男の子に興味持たれてもなー。あ、シャイで聞けない女の子達が可哀そうだからちゃんと言っておくね。
僕、結婚しててね。婿入りしたから奥さんの苗字を名乗ってるんだよ。あとおじさんじゃなくてお兄さんだからね」

60 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/30(土) 17:07:53 ID:x.5VIKvY0
デミタスは座っているミルナに重箱を渡して彼の隣に座った。

( ゚д゚ )「もう帰ってもらってもいいんですが」

 (´・_ゝ・`)「えー、せっかくはるばる五分くらい歩いて来たのに。父さん、あ、ミルナから見たらじいちゃんね。じいちゃんから聞いたよ。
百物語してるんでしょ?せっかくだから一話くらい語らせてよ」

( ゚д゚ )「 (´・_ゝ・`)「眼鏡君、今って何話目?五人でやってたの?さみしいでしょ〜。僕が一話くらい語っても大丈夫でしょ?
え?もしかして100話目ゲット?」

(-@∀@)「……11話目が終わったところです」

ミルナが何か言おうとしているのを無視してデミタスが質問を繰り出す。その勢いにアサピーがひいていた。

(´・_ゝ・`)「ということは12話目か〜。ちょっと中途半端だなー。まあいいか。皆は13階段って知ってる?知らない?
今の高校生って死刑囚が階段を13段登って死刑台に立つことを知らないのかー。死刑囚が使う階段は13段。
そういう理由で13段ある階段は不吉なんだよ」

(#゚;;-゚)「‥‥‥」

でぃがデミタスの今までの態度から「この人を入れて大丈夫なのか」と不安なまなざしをミルナに向ける。

( ゚人゚ )「(ごめん)」

ミルナは声を出さずに口を動かし、自分の顔の前で両手を合わせて謝った。

61 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/30(土) 17:11:24 ID:x.5VIKvY0
(´・_ゝ・`)「ある小学校の体育館は二階が倉庫になっているんだけどそこに繋がる階段が13段あるんだ。
13段の階段・踊り場・13段の階段・二階の倉庫。二階の倉庫は今回の話とは何の関係もないんだけどねー。
夜中の4時44分44秒に13段の階段を上がって踊り場の鏡を覗くと自分の死に顔が見えるんだよ。
僕はクラスのヤンキーに言われて一人肝試しで試したことがあるんだけど本当に映っててさー。
すんごい苦しそうな顔をして禿げてたよ。そりゃあんなにツルッツルな頭してたら苦悶の表情になるわってくらい頭が禿げてたよ。
いやー、あれを見て禿げあがりそうだったね。年をとったらツルピカ!
それから僕はフサフサを維持するためにスカルプシャンプーと育毛剤の愛用者になったよ。
今は安くスカルプケア用品が手に入るけど当時は働くおじさん向けで高いし種類も少ないし売っている場所も限られてたから苦労したよ。
若い時に頑張ったおかげで今があるんだよ。皆も髪は大事にしようね!」

デミタスが白い歯を見せて笑った。そしてろうそくを吹き消した。

62 ◆.LuQ4TdvBw:2021/01/30(土) 17:13:51 ID:x.5VIKvY0
(´・_ゝ・`)「みんな、またね!」

そしてデミタスは颯爽と部屋から出て行った。

lw´‐ _‐ノv「なんだあの禿げは」

(-@。@)「ミルナさんの……おじさん」

( ゚д゚ )「血縁者と思いたくない」
 _
( ゚ ゚)「若い時から頑張ってもO字禿げ……フサフサの維持は険しいな」

(#゚;;-゚)「えーっと、えーっと、せっかくだからお重箱開けてみましょう」

重箱の上から一段目「わかめとゴマのおにぎり」二段目「クルミといかなごのくぎ煮」「昆布の佃煮」「大豆と人参の煮物」
三段目「ささみのチーズフライ」「サーモンのソテー・チーズソース味」
 _
( ゚∀゚)「おっ!茶色ばっかりだけどうまそう!」

(#゚;;-゚)「これ全部手作りかな?」

( ゚д゚ )「おじさん、あんな人だけど雇われ料理人だから味は大丈夫だ」

(-@∀@)「もう一つのお重も同じ中身でしたよ」

lw´‐ _‐ノv「これ全部髪にいい食材と言われているな」

63名無しさん:2021/01/30(土) 18:06:38 ID:9KE1fVKU0
デミタス……

64 ◆.LuQ4TdvBw:2021/02/13(土) 22:58:11 ID:n46WLpJg0
(-@∀@)「ご飯もいただきましたし、次の話に入りましょうか」
 _
( ゚∀゚)「おっしゃ。次は13話目だな。おじさんに割り込まれる前はミルナだったから次は俺の番だな」

(#゚;;-゚)「これからも後から来る人もいるだろうし、何話、話したか忘れないようにしようね

lw´‐ _‐ノv「忘れたらろうそくを数えよう」

( ゚д゚ )「話が進むほどろうそくを数えるのが面倒になるがそれが一番正確だな」
 _
( ゚∀゚)「ろうそくもらって、と。まずは皆に質問だ。
3D画面のRPGゲームをよくプレイするか?」

 _
( ゚∀゚)「俺は部活で忙しいから、たまに友達の家で交代しながら遊ぶくらいだ」

(-@∀@)「僕はよくしますよ。リアルでどこまでも行けるような景色がすごいですよね」

(#゚;;-゚)「私は動画でプレイを見るくらいね」

lw´‐ _‐ノv「一人ジェンガ派」
 _
( ゚∀゚)「シュールさん以外は3D画面のRPGで「見えない壁」があるのは分かるよな」

(-@∀@)「どこまでも行けるように見えて実は透明の壁があってキャラが通れないようにしているあれですね。
透明の壁でゲーム進行に不必要な場所は通れないよう制限をしてますよね」
 _
( ゚∀゚)「そう、それ。ゲームの演出でもないかぎり普通なら透明の壁は通れないんだ。
だけどどんなゲームでもふとした瞬間、奇跡の確立で透明の壁をすり抜けて進むことができることがあるらしい」

65 ◆.LuQ4TdvBw:2021/02/13(土) 23:06:18 ID:n46WLpJg0
( ゚д゚ )「ゲームのことは詳しくないが、それは裏技というやつか?」
 _
( ゚∀゚)「いや、裏技じゃない。普通、ゲームでの演出や使う予定で作ったフィールドが使われなかったとか
理由がない限り、透明の透明の壁を越えた空間は作られてないことがほとんどだ。
3Dといっても立体絵みたいに奥行きがあるように見せてるだけだからな」

(#゚;;-゚)「奇跡的な確率で本当は通れないその透明の壁を越えたらどうなるの?」
 _
( ゚∀゚)「真っ黒な画面をただひたすらプレイキャラが進むだけさ。
だけどよーく見ると気が付くはずだ。




黒いテレビ画面に映る自分の後ろで


闇よりもっと黒い影が手を伸ばしてこちらの首を絞めようとしているのを……」

66名無しさん:2021/02/14(日) 13:19:09 ID:nQwC0TqM0
ウオオ…
真っ黒いバグフィールドとかその時点で苦手だからビビった

67 ◆.LuQ4TdvBw:2021/02/26(金) 16:01:51 ID:lSWiE8SA0
(#゚;;-゚)「次は私の番ね。今回は友達のおばあちゃんの家に招待された時に体験した話よ」
 _
( ゚∀゚)「友達のばあちゃんの家に行くって響きがなんかわくわくするな」

(-@∀@)「百物語の内の一話でなければ知らない町での冒険を期待しちゃいますよね」

( ゚д゚ )「俺はじいちゃんの家が近いから特別感はあまりないな」
 _
( ゚∀゚)「それはそれでいいことあるだろ。お袋が勉強しろとかうるさいときはこっちに逃げれて」

(-@∀@)「ミルナさんのおじいさんの家は古くて雰囲気があっていいですよね。気軽に行ける別荘みたいですよね」

lw´‐ _‐ノv「男子〜、ちょっと静かにしなよー。とか女委員長の定番を言う流れが来たので乗った」

(-@∀@)「ふひ、すいません」

68 ◆.LuQ4TdvBw:2021/02/26(金) 16:04:20 ID:lSWiE8SA0
高校を入学したての時って友達グループを自然と作るでしょ。
その時、同じグループになったのが「まみこちゃん」。
二人で会えば話が盛り上がるような親しさはないけど仲が悪くて喧嘩するような相手でもない。
学校の外で遊ぶことはない学校内の友達だったわ。
1学期の終業式が終わってグループの皆と集まっている時に夏休みにどう過ごすかの話になったの。

「まみこちゃんは夏休みはどこか旅行とか行くの?」

友達の誰かがまみこちゃんに話を振ったら彼女はいつものほんわかとした笑顔でこう言ったの。

从´ヮ`从ト「私はおばあちゃんの所へ行くん。今年は人魚餅の巫女さんを頼まれてるから」

「にんぎょう持ち?」

从´ヮ`从ト「人形じゃなくてマーメイドの人魚よ。お餅を搗いて配る漁村のお祭りみたいなん。
おばあちゃんが住むところは、毎年12歳と15歳の子が人魚餅を作って巫女さんが集落の人に配るん。
その配る役をおばあちゃんところから頼まれたんで行くんよ。皆も来てみる?
ばあちゃんが『集まる人が少のうなったで友達も連れてきよ』って。巫女さんは綺麗な着物を着るから多い方が華やかでええと」

巫女さんになれるとかきれいな着物って興味を引く言葉に釣られてグループの皆が行きたい。
皆で行こうって話になったんだけど……当日の待ち合わせ場所に来たのは私と前の話に出た女未ちゃんだけ。

| l| ゚ー゚ノl「でぃちゃん!良かったー!日にちが近づいてくるとだんだんと行けないって連絡が入ってくるし、
約束の時間がもうすぐなのにまだ誰も来ないから行くのは私だけかと思ってたんだよ〜。
もしかしたらハブられた!?なんてちょっと思ったし」

「私も一人だけかとドキドキしながら来たよ。女未ちゃんがいてよかった〜!」

从´ヮ`从ト「お待たせ〜。でぃちゃんと女未ちゃんが来てくれることになってよかった。
他の子から家族との用事とかで来れないって断られちゃったから。二人ともお父さんの車に乗って」

69 ◆.LuQ4TdvBw:2021/02/26(金) 16:09:48 ID:lSWiE8SA0
私と女未ちゃんはまみこちゃんのお父さんが運転する車に乗って漁村に行ったの。
漁村と言ってるけど数十年前に村同士が合併して町になっているから正確には漁師の集落といったところかしら。
今回の祭りは漁師たちの文化や記憶が途絶えないようにシニア世代の人たちを中心に行事を残す活動をしてるんだって。

初日はおばあちゃんの歓迎を受けて新鮮な山菜料理をごちそうになったわ。
巫女さんになる人は前日になま物を食すのはだめだからって。
翌日は朝から人魚餅作りをしたの。お餅を配る巫女は人魚餅ができるまで材料にも触ってはいけないって言われて
私と女未ちゃん、まみこちゃんは見ているだけだったけど。
おばあちゃんが蒸かしたもち米は神社の境内に運ばれていった。
私たちみたいな見学人以外は袴姿の15歳の男の子達が数人と男性が二人がいたと思う。
男の人が指示して餅つきは全部男の子達がしていたわ。

从´ヮ`从ト「15歳の男の子がこうして餅を作って、神主さんが作った魚の餡を12歳の女の子が餅に包んで丸めるん。
それが人魚餅よ。あんまり美味しくないけど無病息災、不老長寿を願って食べるんよ」

| l| ゚ー゚ノl「魚の餡?あんこじゃなくて?」

从´ヮ`从ト「人魚の肉に見立てた魚をまるごと潰したものを餅に包むん。だから人魚餅。私も12歳の時にしたんだけど
生のまま丸ごとつぶした魚をそのまま餅で包むから気持ち悪いし嫌やったわー」

「えっ……生の魚って骨ごと?」

从´ヮ`从ト「骨も内臓もまるごと。丸めた餅はまた蒸かして粗熱がとれたら竹皮に包んで巫女さんが配るんよ」

| l| ゚ペノl「それって……私たちも食べるの?」

从´ヮ`从ト「巫女さんは海の神の遣いだから魚を食べないんだって。
海の生き物を海の神の遣いの巫女さんが食べたら神様に怒られるって」

70 ◆.LuQ4TdvBw:2021/02/26(金) 16:12:17 ID:lSWiE8SA0
「だから昨日は山菜料理だったのね。美味しかったけどやっぱり海の町に来たら魚料理がいいな」

从´ヮ`从ト「お餅を配り終わったら巫女さんもお仕舞いだから魚料理を食べてもいいよ」

| l| ゚ー゚ノl「やった!魚料理が楽しみ」


| l| ゚ー゚ノl「そろそろ着替えに行こうね。こっち来てん」

まみこちゃんに誘われて神社の事務室に簡易的に作られた更衣室で巫女衣装に着替えたの。
巫女の衣装の定番って白の着物に赤い袴でしょ。
だけど渡された衣装は浦島太郎の乙姫みたいな姿って言えばイメージしやすいかな。
水色や桃色の着物と花柄の帯で綺麗だったわ。だけど巫女のイメージとは違うよね。
お餅が独特だから衣装も独特といえばそうなんだろうけど。

竹皮に包まれた餅は袋に入れられていて他の巫女さん達に混ざって私たちもそれを持って地図に書かれた家々を回っていったの。

| l| ゚ー゚ノl「ここは三件並んでるし私たちは三人。一人一軒を行ったらすぐに終わるね」

そこで私たちは一度分かれてそれぞれ別の家にお餅をもっていくことになったの。
私は一番奥の行き止まりの家に行ったの。
チャイムを鳴らすと「はーい。ちょっと待ってね」と大人の女性の声がインターフォン越しに聞こえたわ。
少し待つと同じ年くらいの女の子が出てきたわ。

|||д|||「……」

前髪が長くて顔が分からないけどすごく陰気な雰囲気の子だったわ。

「えっと人魚餅をどうぞ」

その子から魚の生臭さと汚れた犬の匂いがしてあんまり関わりたくはなかったから
早く渡してしまおうと袋をさしだしたんだけど受け取ってくれなかった。
ぼそぼそと呟いて私に背を向けると階段を上がって行ってしまったの。
家の人には渡せなかったお餅をどうしようかと悩んで動けずにいると奥から女の人が出てきたわ。

女「遅くなってごめんなさいね。揚げ物の途中だったから目が離せなくて」

「あっ、これ人魚餅です。渡すように言われて来ました」

女「ありがとう。かわいい巫女さんが持って来てくれたって言ったらおじいちゃんが喜ぶわ。
だけど一人で留守番をしてると家で留守番する自分と買い物とかするもう一人自分がいたらいいのにって思うわ」

71 ◆.LuQ4TdvBw:2021/02/26(金) 16:15:59 ID:lSWiE8SA0
背筋がひんやりとしたわ。さっきの女の子は幻なの?って。

从´ヮ`从ト「でぃちゃん。渡せれたん?」

| l| ゚ー゚ノl「でぃちゃん。次まわりに行くよ」

女「あら、次があるのね。お餅ありがとうね」

私達が背を向けて次に行こうかという時だったの。
閉まりかけたドアから「あら嫌だわ。床が濡れてる。お水なんて持ち歩いてないのに」という女の人の声が聞こえた。

(#゚;;-゚)これで私の話はおしまい。

でぃが慣れた手つきでろうそくを消すと同時に部屋の電球が点滅を繰り返す。
五人の視線が和室に不似合いなミニシャンデリアに向けられる。

「電灯切れか?」「最初のときみたいな演出じゃないの?」
「このチカチカの仕方はスイッチじゃできませんよ。ミルナさん、もう古い電球をかえたほうがいいですよ」
「私、殺されて食われたの」
「そうだな。祖父に交換するように言っておく」
「あ、明かりが消えた」

ついにミニシャンデリアの光が消えて頼りないろうそくの火が五人の姿を照らす。

( ゚д゚ )「すまん。じいちゃんに予備の電灯がないか聞いてくる。懐中電灯と卓上ライトがあるからそれをつけてくれ」
 _
( ゚∀゚)「ああ、頼む。待ってるからさ」

ジョルジュがスマートフォンで明かりを足し、あらかじめ準備されていた懐中電灯のスイッチを入れる。

(#゚;;-゚)「ごめんね。もう限界……あっ。あっ、時間の方ね。門限が近いから帰らせてもらうね」

でぃは取り繕うようにスマホで時間を確認して皆に帰ることを告げた。

(-@∀@)「僕もそろそろ帰らせてもらいますね。部活以外で遅くなると母がうるさいもので」

lw´‐ _‐ノv「私はまだ残れるからもう少し話をしよう」

( ゚д゚ )「そうか。来てくれてありがとう。ブーンには俺から伝えておくよ」

ミルナとでぃ、アサピーの三人が部屋を出た。

72名無しさん:2021/03/03(水) 19:36:42 ID:4sL6p/Go0
きてたか、sage進行だとたまに気付かないな


73 ◆.LuQ4TdvBw:2021/06/12(土) 23:12:48 ID:oROaQqpI0
ミルナが頭を掻きながら部屋に戻ってきた。

( ゚д゚ )「じいちゃんに電球を聞いてきたんだがなかった。交換は明日になる」

lw´‐ _‐ノv「それは仕方ない」
 _
( ゚∀゚)「電球って買い置きしないよな。暗くなったけど灯りはあるから移動は困らないから続けようぜ」

lw´‐ _‐ノv「そうだな。二人が帰ってしまったが百物語は続けよう。4話目は私から話すぞ」


私の家には叔父の形見の火鉢があるんだ。叔父は幽霊が憑いているなどのいわくつきの骨董品集めが趣味でな。
叔父が亡くなった後、いわくつきのモノだと気味悪がられてほとんどは骨董屋に流れていったよ。
骨董品屋に鑑定してもらって値がついたものだけが親戚に形見分けされたよ。
その一つがうちにあってね。
「セミの火鉢」と言わている。値がついたといっても火鉢自体は5千円くらいだけども。
最初の持ち主は冬が大嫌いだった。陶器の火鉢をオーダーメイドしてセミが鳴くほど部屋が暖かくなるようにと
セミの絵を描かせた。ごくごく普通のセミの絵だよ。誉め言葉で言われる生きているような絵とは程遠かったものの
だけど持ち主は冬になると好んで火鉢を使っていた。
その火鉢が使われるようになって幾度かの冬のある日、彼の妻がその火鉢で火を焚くとセミの鳴き声が聞こえるというんだ。

シャンシャンシャンシャン

「ねえ、あなた、セミが鳴いたような音がするわ。テレビの音かしら?」

なんて妻が言っているうちにセミの鳴き声は徐々に小さくなっていったそうだ。
主人は聞こえていなかったから空耳だろうと聞き流され、妻も何かの音がそう聞こえたんだろうと思った。

74 ◆.LuQ4TdvBw:2021/06/12(土) 23:13:34 ID:oROaQqpI0
また別の日は「ミーン、ミンミン」とセミの鳴き声がする。妻がまたセミの声がすると言うと持ち主がこういった。

「蝉の声なんて聞こえないよ。本当に鳴いているならセミは一週間の命さ。すぐに聞こえなくなるよ」

妻は最初に鳴き声を聞いた日を含めて6日間、セミの声を聞いた。7日目の昼、家で飼っていた金魚が全て死んでいた。

それから妻はセミの鳴き声が聞こえると一週間後を気にするようになった。
セミの鳴き声が聞こえて一週間後に誰かが死んでいる。
死んだのは近所の子供だったり、テレビでよく見る有名人だったりした。


近所の子供の死と火鉢のセミをつなげるのはともかく、直接会ったこともない有名人の死なんて偶然と言ってもいいものだろう。
だけど恐怖の穴に落ちた妻は完全に火鉢を怖がった。冬に生きたセミはいない。
なのに冬にセミの鳴き声が聞こえると一週間後に誰かが死ぬ。まるで死神が憑りついているようだ。
蝉の鳴き声が聞こえだしたのはこの火鉢が来た後だ。では火鉢のセミのせいではないのか?いや、この火鉢のセミのせいだ。
そんな考えを妻が口にするたびにバカなことと笑う持ち主。だが妻は火鉢が恐ろしいものに見えた。

翌年にも持ち主は火鉢を出して使おうとしたんだが、妻が離婚か火鉢かという二択を迫る事件が起きた。
主人は火鉢を気に入っていたが、妻がいないと何もできない人だった。妻に離婚されないように仕方なく火鉢は知人に譲ったんだが
巡り巡って私の家に来たんだ。うちはマンションだから火鉢が使えないから押し入れにしまってある。

lw´‐ _‐ノv「これで話はおしまいだ。ろうそくを消そう」

75 ◆.LuQ4TdvBw:2021/06/12(土) 23:19:35 ID:oROaQqpI0
( ゚д゚ )「付喪神だろうか?セミの声がする火鉢。……因果関係は実際のところ、どうなんだろうな」

lw´‐ _‐ノv「気になるなら使ってみるか?粗大ごみに出すとお金がかかる厄介物だから無料で譲ろう」
 _
( ゚∀゚)「セミが鳴いたらヤバイことが起きるなら無料でも俺はもらいたくないぜ」

( ゚д゚ )「本当に知っている人が亡くなるなら俺も遠慮する」

lw´‐ _‐ノv「ふふふ……次はミルナの話だな」

( ゚д゚ )「じゃあ次の話を始めよう」

じいちゃんが教えてくれた話なんだが、江戸時代も怖い話が流行っていたそうだ。
本所の七不思議で足洗い屋敷という話があるんだが二人は知っているか?

「いや、聞いたことがない」
「本所すらオレは分かんねーや」

……そうか。聞いたことがないか。本所は東京にある地名だ。同じ本所の七不思議でもおいてけ掘の方が有名だから影に隠れてしまうな。
簡単に話すと屋敷の天井から大きな足が出てきて「足を洗え」と言うんだ。
足を洗うと何もなかったかのように消えるんだが、洗うのに手を抜くと屋敷中の天井を踏み破ってしまうんだ。

「それが家に出たのか?」

ああ、出たけれども足じゃなかった。じいちゃんの家の床から大きな手が生えてきたんだ。「手を洗ってくれ」と。
じいちゃんが桶に水を張り、汗だくになって手拭いで手を洗ってやると何もなかったかのように消えていった。

76 ◆.LuQ4TdvBw:2021/06/12(土) 23:52:39 ID:oROaQqpI0
( ゚д゚ )「たくさん話をしたと思うんだが、まだ17話か。100話まで気が遠くなるな」

lw´‐ _‐ノv「5人だった時でも1人あたり20話話す必要があったから仕方ない」
 _
( ゚∀゚)「3人だと沢山自分が話しているのにロウソクを消しても消しても減らない気がするw」

♪ピロリローリー ライス 米 白米 皆 こめ〜 ピーひゃららー♪
 _
( ゚∀゚)「……なんだ、今の」

lw´‐ _‐ノv「ああ、私の電話の着信音だ。ちょっと失礼する」

( ゚д゚ )(米の着信音があるのか)

シュールが電話に出るために部屋からでた。
 _
( ゚∀゚)「……シュールさんの話の時に突っ込まなかったけど4話目って言ってたな」

( ゚д゚ )「ああ。シュールさんが話した回数はあれで三回目だ。多分だが4回、自分が話したと数え間違えたんだろ」
 _
( ゚∀゚)「なんか話数もだけどいろんな錯覚が起きてるよな。変なものが見えたり、聞こえたり……」

( ゚д゚ )「幽霊の正体みたり枯れ尾花と言われている。こういう事を含めて百物語なんだろう」
 _
( ゚∀゚)「ところでさ、他の奴はまだ来ないのか?ブーンがあちこちで誘ってるから途中で誰か来ると思ってたんだが……」

( ゚д゚ )「ブーンが「たくさん声をかけたから少なくとも10人は来ると思うお」って言ってたが……」
 _
( ゚∀゚)「でも俺たちの友達が当日に四人くらい来れなくなったからなー。ブーンも来ないし切り上げてもいいんじゃないか?」

77 ◆.LuQ4TdvBw:2021/06/13(日) 00:43:29 ID:kCsBpYck0
lw´‐ _‐ノv「おまたせ。友達が百物語の会場が分からないと電話してきたから場所を教えておいた」

lw´‐ _‐ノv「もう少し時間がかかるから先に17話目をしよう」

( ゚д゚ )「次は18話じゃなかったか?」

lw´‐ _‐ノv「たしか5人で2週して10話の話が終わった。3週目はミルナのおじさんが途中で入ってきたから私が15話目になったんだ」
 _
( ゚∀゚)「途中で順番が変わったし、アサピーも帰ったからややこしくなるけど3週目も5人が話をしたんだ。
んで、ミルナが16話目で次は17話だ」
 _
( ゚∀゚)(参加者が来るのか。せっかく来てくれるし百物語の中断が言いづらくなったな)。

( ゚д゚ )「……そう言われてみればそうか。会の途中でろうそくが風で消えていたから無意識に一つ多く数えていたようだ」

lw´‐ _‐ノv「複数人で集まった場所で数え間違えすることを怪奇現象にしてしまう話は多いな」
 _
( ゚∀゚)「それってあれだ!あ、この話は17話目としてオレにさせてくれよ」

78 ◆.LuQ4TdvBw:2021/06/13(日) 00:44:34 ID:kCsBpYck0
「雪山で4人が遭難してしまった。
このままでは確実に死んでしまうと4人が考えたはじめた時に山小屋を発見した。
息も絶え絶えに小屋に入る4人。凍死しそうな寒さなのに山小屋には暖房設備がなかった。
あったのは非常食のみ。
寝れば確実に凍え死んでしまうと考えたリーダーがこんなゲームを提案した。

「4人が小屋の四隅に座り、五分毎に東周りに歩いて、肩をタッチしよう。タッチされた人はタッチした人と交代して次の角へ向かう。」

なんとか誰も寝ずに朝が来た。運よく救助隊が山小屋にいる4人をを発見して保護した。

「全員ご無事でよかったです」

「寝ないように4人でゲームをしてまして」

とリーダーがゲームの内容を説明する。

少しの間をおいて救助隊が答える。

「そのゲーム、5人でなければできないよ!4人じゃ1人目は2人目の場所へと移動している。
4人目は2人分移動しないと1人目の肩を叩ける事は在り得ない!」

79名無しさん:2021/06/13(日) 08:08:19 ID:boeHd6mY0
おっ

80名無しさん:2021/06/13(日) 20:28:22 ID:ml2cHdh60
参加者出たり入ったりなのがなんかヒヤヒヤするな…

81名無しさん:2021/06/14(月) 00:07:15 ID:VB8e2zQg0
乙。夜中に見るんじゃなかった。
電灯が切れたところ、めっちゃ怖い。

82名無しさん:2021/06/14(月) 04:19:55 ID:9vgBHEdc0
うーん…

83 ◆.LuQ4TdvBw:2021/07/10(土) 23:35:37 ID:ToOsemy.0
lw´‐ _‐ノv「それって……たしか五人で山のぼりしていて小屋にたどりついたけど一人が低体温症で死んだ。
生き残った四人が四隅に立ち一人が壁に沿って進む。角に立つ人にタッチしたらタッチされた人が歩く。
すると四人目は一人目が最初に立っていた角に立つ人がいないから成立しない。
ではこのゲームができたのはなぜ?実は死体が……ということが重要だったのでは?」
   _
Σ( ゚∀゚)「えっ!?これって四人なのに五人でしか成立しないゲームが成立してしまった!
もう一人は誰!?っていうもやもや系の怖い話だろ?」

( ゚д゚ )「これは有名な話だから色々なパターンがあるな。
この怪奇現象は暗闇で感覚がなくなったから人にタッチするまで多く歩いたせいで起きた。と現実的な見方もある」

lw´‐ _‐ノv「人の数だけ真実があるということか。バーローに怒られそうだ」
 _
( ゚∀゚)「ちょっwバーローは口癖wそんな呼び方したら真実は一つっていう探偵のファンに叱られるっす」

〜〜〜〜〜〜

( ゚д゚ )「ハンザ―さんの話になってずいぶん話が脱線してしまった。そろそろ百物語の続きをしよう」

lw´‐ _‐ノv「次は真実を話して進ぜよう」


「もったいないおばけって知らない者はきっといないだろう。
多分、チビ時代に親や幼稚園などから一度は聞いたことあると思う。
かいつまんで説明すると食べ物を好き嫌いして残すとその食べ物が食べて欲しい一心で真夜中に化けて出てくるという。
私は好き嫌いをしたことがないから、もったいないお化けの全身を見たことがない。
だけどそのお化けらしき目は見たことがある。あれは六つ(むっつ)の時だった。
当時、私の親戚は農家が多くて「田植えだ」「畑の収穫だ」と一族で集まることが多かった。
当然、大人だけでなく子供も手伝いとして集まるから収穫時期は食事の時間も賑やかだった。

84 ◆.LuQ4TdvBw:2021/07/10(土) 23:37:07 ID:ToOsemy.0
人参を育てる農家の親戚をAちゃんとしよう。彼女は人参農家の子なのに人参を含め野菜が嫌いな子だった。
白米ですら「白くて嫌」という不届き者で私の中で関わりたくない子だった。
皆で草抜きをした後の食事の時間、サッと食べれるように野菜スティックやおにぎりが用意された。
当然、Aちゃんは嫌がる。周りが食事をしている中でふてくされてフォークで野菜スティックをつついては涙していた。
大人が食べるよう勧めたりするけどAちゃんは嫌がる。
最後はフォークが投げ捨てられて、使われていない取り皿へ音もなく不時着した。

……
…………
私はAちゃんが投げたフォークが弧を描いて取り皿に落ちようかというときに目を見つけた。
それは皿に落とされた生卵みたいだった。白目が生の白身。それで黄身にあたる部分が人間の目だった。
スローモーションのようにフォークが目の中央に向かって落ちていく。そしてフォークの切っ先が目を突いた。
目は逃げずフォークに刺されて消えてしまった。
そんな異常事態に関わらず周囲は普通だった。Aちゃんの親や大人達は行儀の悪いAちゃんを叱る。
彼女は更にふてくされて席を立ち泣きながら部屋を出て行く。その音をノイズのように聞いていた。

85 ◆.LuQ4TdvBw:2021/07/10(土) 23:39:01 ID:ToOsemy.0
子供心にも分かる現実感のない出来事が起きてしまったことにおにぎりを持って私は固まっていた。

「……目玉」

集まっていた子供の誰かが呟いた。それを聞いて私は「ああ、あれはきのこの幻覚じゃないんだ」と思った。

「もったいないさんは見てるんだよ。ちゃんと食べてるかお皿に擬態するんだよ」

いつもは寝てるかお菓子を食べてる静かな認知症のばあちゃんが呟いた。

「ばあちゃん?もったいないさんって?」

目玉に気が付いた子達がばあちゃんに声をかけたり、もったいないさんのことを聞く。
だけど、ばあちゃんはもうデザートの田舎饅頭に夢中で返事をしてくれなかった。
この事件は子供たちの中で年長者が「きっともったいないお化けのことだよ。
皆は好き嫌いしちゃだめよ」と言って締めくくった。
その数か月後、Aちゃんは左目を失明したと親戚たちの噂になっていた。
あの目玉事件からAちゃんを含め一家で集まりに来なくなったけど子供たちの間でも噂になったよ。

「Aちゃんはもったいないさんの目をフォークで刺したから、もったいないさんに目を食べられたんだ」って。

静かにろうそくの火が消される。

86名無しさん:2021/07/11(日) 01:07:49 ID:m93NMLJc0
otsu

87名無しさん:2021/07/12(月) 09:36:50 ID:s2fh.lXE0
乙乙
毎話楽しみにしてます
好き嫌いって舌が過敏なのが原因とかもあるだろうし、とょっと可哀想なところもあるな…

88 ◆.LuQ4TdvBw:2021/07/16(金) 22:18:55 ID:Nv8FtLoA0
 ピンポーンと玄関のチャイムが三人がいる部屋まで響く。

( ゚д゚ )「この時間に……ブーンか?」

lw´‐ _‐ノv「主催なのに遅刻だからな。もう来てもおかしくない」
  _
( ゚∀゚)「俺達、話を進めず待ってるから迎えに行って来てくれよ」

( ゚д゚ )「ああ、ちょっと見てくる」

ミルナが立ち上がって部屋をでた。
しばらく後に部屋のドアが開かれるとミルナと背の高い女が廊下に立っていた。
  _
( ゚∀゚)「……(D、いやEカップはありそうだ)」

∬´_ゝ`)「えっ、あれ、いない。えっ!場所間違えたかしら!?」

lw´‐ _‐ノv ( ゚д゚ ) 「「?」」

∬´_ゝ`)「えっ?ウソッ!?やだ!私ったら住所間違えちゃった!?弟達に頼まれて来たのに。
うわー!やだっ!よそ様の家に間違えて上がったなんて恥ずかしい!」

lw´‐ _‐ノv「よく分からないが、米つけ。ここはブーンが主催する百物語の会場で
ブーンが私達を含め大勢を呼んでいるらしい。だから私達にも誰がいつ来るのか分からない。」

∬´_ゝ`)「えっ?そうなの?あっ、だけど弟達から怖い話大会の場所にいるから姉ちゃん来てよってメールに
書いていたからここに来てると思うんだけどね。でも、どう見てもいないわ。ごめんね。ちょっとメール確認するわ」
  _
( ゚∀゚)「……(オレは胸以外に興味は薄いが、あの腰からヒップのラインから目が離せない。いや、胸・腰・尻の三位一体の
究極的なバランスがオレの目を釘付けにしているんだ)」

89 ◆.LuQ4TdvBw:2021/07/16(金) 22:20:03 ID:Nv8FtLoA0
――
――――五分後、

∬´_ゝ`)「ごめんね。タクシーが来るまでここで待たせてもらって」

lw´‐ _‐ノv「もう遅いし女性が外で立ってるのは危ない。ちょっと趣味の悪い部屋でよければいくらでも貸しますよ」

( ゚д゚ )「シャンデリアに畳は趣味が悪いと思うが、俺のじいちゃんの家だから俺のセリフで……」
  _
( ゚∀゚)「よく似てる字だけど宝島1丁目と宝鳥1丁目を見間違えて来たとはついてないっすねー」

∬´_ゝ`)「しかも今日に限ってタクシーが出払っててココに来るのが一時間以上かかるって。やれやれね。
ところで君たち、百物語してるんでしょ?弟達の怖い話大会でする話をタクシーが来るまで聞かせてあげようか?」

  _
( ゚∀゚) lw´‐ _‐ノv 「「ぜひお願いします」」

( ゚д゚ )「いいんですか」

∬´_ゝ`)「間違えて入った家でも怖い話大会をしてたんだから何かの縁でしょ。
私、看護師だからけっこう霊体験とかあるのよ。ほら、ろうそく何本かちょうだい」

90 ◆.LuQ4TdvBw:2021/07/16(金) 22:22:39 ID:Nv8FtLoA0
さあ、準備が整ったわ。私の一話目の題は「巡回するナース」よ。
私の病院は医師と看護師二人と看護助手一人で夜勤をするの。
医師は緊急時にすぐ動けるように待機だから巡回は看護師と看護助手がするのよ。
夜は交代で見回りとナースコールの対応、一人は仮眠って役割分担してるんだけどね。
ナースステーションに一人待機する必要があるから巡回は一人ですることになってるわ。
時々、巡回していると足音が一つ増えてることがあるのよ。
同じスピードで少し後ろからついてくる足音。後ろを振り返っても誰もいない。
霊感が強い子が言うには古いナース服を着た女性が不安そうに後ろをついてくるのよ。
足はないのに足音を立てて、ね。噂では新人看護師だったけど事故で亡くなり仕事に未練があって出るとか
新人看護師が巡回中に心臓発作で死んでしまい死んだ自覚がなくて彷徨っているとか色々言われているわ。

∬´_ゝ`)「私なら死んだら家族の所へ行くわね。死んでまで仕事はしたくないもの」

彼女は火のついたろうそくを消した。

( ゚д゚ )「なんで二種の噂とも新人看護師が出ると言われているんです?」
  _
( ゚∀゚) 「ん?そういやなんでだろうな。普通に看護師とかナースでいいのに」

∬´_ゝ`)「ああ、それねー。これを言うと蛇足になっちゃうんだけどね。
話をした時に巡回は一人でするって言ったでしょ。
だけど新人ナースが入ったら仕事を教えるために必ず先輩ナースが付き添うのよ。
新人は自然と仕事の時に先輩の後ろをついて歩くのよ。
もしも彼女が熟練の看護師なら私達の前を歩くか追い越すか、幽霊でも意思があるなら好きに歩いていくでしょ。
だけどずーっと後ろをついて歩くから新人で時間が止まった子なのよ」

lw´‐ _‐ノv「ずいぶんと人間臭い幽霊だ」

∬´_ゝ`)「元々、人間だからね。でも、死んで何をすればいいか分からないからって仕事したいとは思わないわ」

91 ◆.LuQ4TdvBw:2021/08/03(火) 21:46:40 ID:R8lH1vKo0
続けて話すわよ。今回も病院で伝わってる話。
病院の待ち合い所や面会ホールに本が並べてあるでしょ。
あの中にね。読むと苦しみが無くなる本があるんですって。
題名は「家族の童話 0(ゼロ)」よ。え?そうね「家族の童話シリーズ」は「家族の童話1〜12巻」よ。
だけどなぜか「家族の童話 0」がいつの間にか他の本に混ざって並んでいるのよ。
その本の内容だけどね。読んだ人は「普通の童話だったよ」って言うのよね。
本を読んだ人から内容を聞いてもなぜか覚えていないのよ。読み終わった直前で聞いても「あれ?なんだったかな」って
不思議そうに首をかしげていたわ。でも表情は今まで見たことないくらい穏やかなのよ。
そう。そうね。そんなに怖くないでしょ。童話を読んで童心にかえったから穏やかな気持ちになった。良いことよね。
でも、長生きしたいなら読まないほうがいいかもね。

この本を読むと翌日に死んでいるのよ。本を読み終わったときのような穏やかな表情を浮かべて静かに……ね。


∬´_ゝ`)「霊感が強い子によると『家族の童話 0』の表紙は赤い靴を履いた女の子が光を放つ黒塗りの人間に抱きかかえられている絵なのよ。
これって「赤い靴」の救済話を絵にしてると思うの。赤い靴でずっと踊る罰を受けた女の子を神が慈悲を持って救うってシーン。
人間って死ぬことだけが救いじゃないはずなのよ。それならなんで医療は発展しているのかってことになるでしょ。
だから私は本が好きじゃないのよね。健康な人間による贅沢で浅はかな考えなのかもしれないけど……」

92 ◆.LuQ4TdvBw:2021/08/03(火) 21:47:57 ID:R8lH1vKo0
( ゚д゚ )
  _
( ゚∀゚)

lw´‐ _‐ノv「二人とも美人に見とれてないで感想なり怖い話なり語るべきだろう」

( ゚д゚ ;)「オレは見とれているわけでは……」
  _
( ゚∀゚)「お……お、お(っぱい)おおおっぶねえ。本音が爆発するとこだった」

∬´_ゝ`)「あっ、ごめん。二回も病院の話なんて面白くなかったわよねえ」
  _
( ゚∀゚)そ 「めめめっ、めっちゃくちゃよかったです!!(おっぱい!)」

lw´‐ _‐ノv「……なんかやましい匂いが」

くっくどぅどぅどぅ くっくどぅどぅどぅ 

くっくどぅどぅどぅ 

∬´_ゝ`)「あ、私の電話だわ。呼んでたタクシーにここに着いたらチャイムは鳴らさずに電話してって言ってたのよ」

( ゚д゚ )「きりのいいところで迎えがきましたね」
  _
( ゚∀゚)そ「えっ!?ここでお別れ!?」

∬´_ゝ`)「残念だけどお別れね。短い時間だけど楽しかったわよ。待ち合わせに使わせてもらってありがとう」

lw´‐ _‐ノv「女性が一人で夜道に立っているのは危ないのでこんな家でよければいくらでも」

( ゚д゚ )「それは俺のセリフで……ああ、玄関まで送ります」

93 ◆.LuQ4TdvBw:2021/08/03(火) 21:49:56 ID:R8lH1vKo0
彼女が立ち上がるとミルナも見送りのために立ち上がる。
引き留める言葉が見つからないジョルジュが小さな声を漏らした。だが二人の耳には届かず来たときと同じように障子戸をあけて出て行った。

lw´‐ _‐ノv「ブーンはいつ来るんだろうな」
  _
( ゚∀゚)「……オレ、ちょっといってくる!愛のためにチャリ全開で空飛べるぜ!」

lw´‐ _‐ノv「今なら一緒にタクシー乗れるんじゃないか?」
  _
( ゚∀゚)「乗れなかったら最後の恋のため全力で追うわ!ブーンによろしく言っといてくれ!」

lw´‐ _‐ノv「はいよ」

シュールは勢いよく走るジョルジュの背に手を振って見送った。

94名無しさん:2021/08/04(水) 00:56:33 ID:0aJDRNa.0
乙デス

95 ◆.LuQ4TdvBw:2021/09/06(月) 21:59:25 ID:KGZxybk20
ミルナが新しい参加者を連れて戻ってきた。

( ゚д゚ )「まあ、座ってくれ。俺の友達のヒッキーだ。今は俺とシュールだけだが、もう少ししたらブーンが来ると思う」

lw´‐ _‐ノv「どうもシュールです。わたしの友達も来る予定だ」

(-_-)「あっ、ど、どうも。ヒッキーで、え?ヒッキーで、自己紹介、良かった?」

lw´‐ _‐ノv「名乗りもなく話だけしたお姉様がいたから気にしない」

(-_-)「は、はあ。い、いいの?ぼ、ぼくこんなの初めてで」

( ゚д゚ )「気楽にしてくれ。皆、好きなように語ってここで過ごしていった」

(-_-)「じゃ、じゃあ、そのよろしく」

lw´‐ _‐ノv「さてと。早速、怖い話は用意できているか?まだなら私から話そうか」

(-_-)「いきなり!?あっ、おおお、お願いします」

lw´‐ _‐ノv「よきぞ」

(-_-)そ「よきぞ!?」

96 ◆.LuQ4TdvBw:2021/09/06(月) 22:00:35 ID:KGZxybk20

「私の親戚たちは農家が多いと前の話でもしたな。農家はとにかくお祭りが好きだ。
祭りには五穀豊穣の祈りも含まれているからとても大切なんだ。
正月を含め祭りには餅つきが定番で親戚の家には代々受け継がれる石臼がある。
その中の石臼のひとつに変わった話があるんだ。
必ず臼に水を溜めておくこと。水が干からびると竜神の怒りで干ばつが起きるというんだ。
普通、臼に水なんて張らないものなんだ。水を溜めれば餅のひとつも作れなくなって臼の意味がない。
だけどその石臼を所有する親戚のおじいさんが若いころのことだ。
近所に池が作られる時に水を絶やさないようにと出来上がった池の中に沈めてしまった。
池に沈める前は竜神を怒らさないよう律儀に毎日水の確認をしていたらしい。
先祖代々の臼に水道のない時代は水汲みも苦労したし干からびることもあった。
それから解放されたかったから池を作るときに頼んで沈めたということだった。
それからおじいさんの近隣の田畑は水に困らなくなった。めでたし。めでたし」

(-_-)「めでたしって。え?それで……終わり?」

97 ◆.LuQ4TdvBw:2021/09/06(月) 22:01:18 ID:KGZxybk20
「まあ。普通はこれで終わり。小学生に教える地域の伝説なんてこれで終わりの方が良い。
ここから先は私達血縁者に伝わる話。その親戚のおじいさんが若い時は戦後すぐのこと。
いつの時代も怖い話は人気で、若かったおじいさんは仲間に水を絶やしてはいけない石臼の話をした。
戦争に負け神も仏もないと嘆く若者達だ。怖い話をするのに怖い話を信じていなかった。
誰からともなくおじいさんの石臼の水を捨てて竜神など迷信だと確かめようという話になった。
実際に石臼はバラック小屋の土間に置かれて水が張られていた。
長い間、水の入れ替えをせず水の補充だけされていたから苔が生えた石臼。はっきりと言えば捨ててもいいくらいの代物だ。
そんな石臼、見ても怖くはない。だから「こんなものに怯えるなど日本男児の恥よ!」と
血の気が盛んな若者が力任せに石臼を押し倒してしまった。
鈍く大きな音を聞きつけて田畑で仕事をしていたおじいさんの母親や近隣のおばさん達が集まってきた。
泡をくって驚くおじいさんの母親達と意気揚々と迷信を信じる愚かさを説く若者達。
当事者じゃないから少し冷静なおばさんが石臼に向かって指をさしてこういった。

「ねえ、あれ、石臼から何か流れてるわよ」

そこから次々におばさん達が異変を口にしていく。


「水じゃないの?あの石臼に水を溜めて火が上った時に使うって××さんが」
「でも変よ。踏みならされた土とはいえ水なら吸収されていくでしょ。それに色も……」
「ねえ、なんだか鉄の臭いがしない?」

石臼ほどではないが何か大きな音がした。皆の視線が一点に集まった先には石臼を倒した男が倒れていた。

……その男は全身の血が抜かれたかのように全身が真っ白になって息も止まっていた。
大慌てで呼んだ医者の診断では眩暈か転んだかして土間の石臼に頭をぶつけて出血多量でショック死になっていた。

彼の死を嘆いたおじいさんはその石臼を池に沈めて竜神さまを誰も怒らさないように祈りを込めて池に沈めたんだ。
これで本当にお終い。

98 ◆.LuQ4TdvBw:2021/09/06(月) 22:04:20 ID:KGZxybk20
(-_-)「ん、あの、っけっきょっく、結局、石臼が倒れて流れてたのって水?ですか」

lw´‐ _‐ノv「水かもしれないし血かもしれない」

(-_-)「ミルナ君。どういうこと?」

( ゚д゚ )「この話に出る医者の話を信じるなら石臼に頭をぶつけた事故。
おばさん達の見たものから推理するなら竜神の怒りで血を抜き取られて石臼から流し捨てられたってことだろう」

(-_-)「???結局、事故?竜神のたたり?干ばつはどこ?」

( ゚д゚ )「百物語の一話として考えるなら竜神のたたりだろうな。干ばつはこじつけになるが体の水、つまり血がない状態だろう」

lw´‐ _‐ノv「うーむ、私は話の受け取り手の想像に任せる話がうまくできないな。じいさんが教えてくれた時は怖かったんだが」

((-_-))ガクガク「えっ。ぼく、もしかしてまた変な事言った!?ぼく、本読めないから!!読めなくて!文とかできなくて!」

( ゚д゚ )「落ち着け。ヒッキー。誰も責めてないからな」

lw´‐ _‐ノv「ヒッキーは本を読むと眠くなる系か。私も寝る前の読書でよく眠れるタイプだ」

((-_-))ガクガク「っち、ちがくて。ぼく。ほんがだえなんえす」

( ゚д゚ )「ヒッキー、少し休憩しよう。落ち着いてから今日は帰った方がいい」

((-_-))ブルブル「だ、だ。だけど話したくて。今日ならきっと分かってくれるかもって」

lw´‐ _‐ノv「まあ米つけ。米搗きをすると心が安らぐぞ。道具がないからパントマイムになるが、ヒッキー私の真似をすると良いぞ」

【シュールによる米搗きのレクチャーが始まった】

99 ◆.LuQ4TdvBw:2021/09/06(月) 22:16:36 ID:KGZxybk20
読んでくださりありがとうございます。
ぼちぼちと怖い話を練っているため更新が遅いですが最後まで書きたいと思ってます。
それではまた次の話の時にもよろしくお願いします。

100名無しさん:2021/09/06(月) 23:02:03 ID:/GGn8OwI0



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