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ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです

754 ◆gFPbblEHlQ:2023/01/30(月) 22:04:47 ID:.eE0h2Dw0

≪1≫


 ソ連シベリアを横断する世界最長の鉄道へ向けてラッパを吹く。
 戦争で死んだ父を弔うため、これから戦地へ向かう兵士のために。

 シーン少年はこの習慣を2年と続け、列車の汽笛を聞き逃すまいと常に耳をそばだてていた。
 いくつもの山を越え、山彦混じりに聞こえてくる「ぽぉーう」という音。
 少年はただそれだけを合図にし、来る日も来る日もラッパを持って町外れへと駆け出すのだった。

( ・-・ )(……聞こえた!)

 汽笛の音は、早朝の配達仕事の傍ら耳にすることが多かった。
 今朝も配達はあと1件というところで汽笛が聞こえ、シーンは尚更往路を急ぐこととなった。
 配達先は町の中央にある教会。2人の男が、シーンの到着を待ちかね表に出てきていた。

( ・-・ )「おはようございまーす! 配達です!」

( ^ν^)「やぁおはよう。列車には間に合うのかい?」

( ・-・ )「転ばなければ、何とか!」ゴソゴソ

 彼らのもとに滑り込むなり、シーンはショルダーバッグを開けて最後の配達物を彼らに手渡した。
 男たちはサインと引き換えにそれを受け取ると、白息を繰り返すシーンをすぐさま送り出した。

£°ゞ°)「そろそろ薬が切れる頃だろう。あとで来なさい」

( ・-・ )「分かりました! またあとで!」ダッ

 シーンは急いで走り出し、町を出て、タイガの山林を一目散に抜けていった。
 程なく峠に出たシーンは、息を整えるのも忘れて山下を一望した。

(;・-・ )(よし、間に合った……!)

 広大な雪景色を分かつ黒い線。列車の線路にくっと目を凝らす。
 雪の具合からして列車はまだ来ていない。シーンは安堵し、そこでようやく息を整えた。

 そして十秒と経たないうちに、彼はまた慌ただしくバッグを検めて自前のラッパを取り出した。
 分厚い手袋を外してラッパを構え、簡易的に音を取り、口周りの筋肉を入念にほぐして列車を待つ。

 ――やがて、シーンの耳朶が音を捉えた。

 規則正しい地響きが山間の向こうからかすかに聞こえてくる。
 音の輪郭は秒ごとに鮮明になり、確かなものとなっていく。
 列車が近い。シーンは確信をもってラッパを構え、最後に一度、息を吸った。

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