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ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです
282
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:57:59 ID:Q55tYwuk0
(´・_ゝ・`)
(´^_ゝ^`)「アッハッハ」
それは完全に嘘の笑い。
コメディで使うSEの方が、もっとちゃんと笑う。
(´・_ゝ・`)「あーほんと不愉快だよな、不完全なものってさ」
_,
( ^ω^)「……急に何の話だ?」
(´・_ゝ・`)「ほらそうやって、俺の話が不完全だから眉をしかめる」
盛岡は揚げ足を見せつつ揚げ足を取った。
不毛なタップダンスに付き合う気もないので、内藤ホライゾンはスルーを決め込む。
(´・_ゝ・`)「そもそも人間は間違いや欠落に対する認知が鋭いんだろうな。過剰なまでにさ。
そう感じた瞬間に無意識で補完を行ってしまう。それが的外れな錯視でも」
( ^ω^)
(´・_ゝ・`)「ほらまた黙って聞き入れる。補完があるから意味が通る。間違ってても話は進む。
これってほんと凄いよな。無意識だし、角を立てないし、効果もバッチリだし」
( ^ω^)「待て、いきなり話を進めまくるな。
私はなにも分かってないだけだぞ。ゆっくり頼む」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「えっ、……俺の行動原理を聞きたいんじゃないの?」
(; ^ω^)(そこに着地する流れだったか……?)
遠回りが過ぎるが、何も言うまい。
内藤ホライゾンは諦めて口を閉ざし、盛岡に話を任せた。
.
283
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:00:45 ID:Q55tYwuk0
(´・_ゝ・`)「まーーーーーーーなんだ。アレよアレ」
(´・_ゝ・`)「俺らの相手は、そこら辺を突き詰めちゃった化け物なのよ。
だから、あれの相手をするには『不完全さ』が必要なんだ」
(´・_ゝ・`)「でも人間は『完全』を目指してしまう生き物だ。無理なのに。
まぁ言い方は色々あるけどさ、物事にゴールが欲しいのは誰だってそうだろ?」
(´・_ゝ・`)「そんなんだから厄介なのよ。
だって基本、人間ってのは向こうの味方なんだから」
( ^ω^) …
( ^ω^)「で、そのゴールとやら遠ざける為に、お前は不完全を装っているのか?」
(´・_ゝ・`)「いやお前、そりゃあ――……」
返事半ばで言葉を濁し、そこで、盛岡は長い沈黙を挟んだ。
(´・_ゝ・`)
分かりやすい行動がなくとも無から有への変化は劇的だ。
内藤ホライゾンの双眸には、盛岡デミタスの内なる機微がハッキリと見えていた。
(´・_ゝ・`)「……ある男は、」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「っていうか俺は、あいつに縁を奪われた」
( ^ω^)「すごい身近な言い方に切り替えたな」
(´・_ゝ・`)「別にいっかって思っちゃった」
.
284
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:05:22 ID:Q55tYwuk0
(´・_ゝ・`)「まぁ彼女も顔を剥がれてるし、他の奴らも色々とな」
(´・_ゝ・`)「完璧さの為に補完されて、添削されて、大団円。
そもそも俺らの行動なんて、その結末への逆ギレで全部だぞ?」
盛岡は語りながら妖刀を構え、その切っ先を自分の喉元に突き立てた。
――妖刀首断ちの各能力は斬撃をもって初めて成立する。
故にこの刀で確実な洗脳を行いたい場合、拘束&拷問の用意は最優先で必要だった。
効果を強める為に刀傷を広げ、それで相手を殺しては元も子もない。
そういった塩梅をいい感じにする為にも、妖刀の扱いは色々と繊細なのだった。
(´・_ゝ・`)「……なんかこう、自宅をいきなり大豪邸にされたら困るだろ?」
(´・_ゝ・`)「隣の芝生が青いのはともかく、『お前ん家を真っ青にしてやるぜ!』はキレるだろ?」
( ^ω^)「たしかに」
(´・_ゝ・`)「だからそんだけ。くだらん恩には最大級の仇を返す、それだけ。
危ないからって公園潰されたガキがブチギレてる。俺らは大体、そんな感じよ」
( ^ω^)「いやお前、絶対そんな感じじゃないだろ」
(´・_ゝ・`)
盛岡は肯定も否定もしなかった。
( ^ω^)「……ついでに、前から思ってた事を聞きたいんだが」
( ^ω^)「そういう事情を素直に話して、各勢力に協力を求めるのは駄目なのか?」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「聞きたいか? マッチ売りの少女、盛岡デミタス版」
(; ^ω^)「……いや、すまん」
(´・_ゝ・`)「いいよ。今後はリアル童話マンと呼んでくれ」
.
285
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:12:53 ID:Q55tYwuk0
(´・_ゝ・`)「そんじゃあ後は任せる。残り時間は好きにしていい」
(´・_ゝ・`)「これでお前は一人ぼっちだ。どうだ、清々するだろ?」
( ^ω^)「する」
即答だった。
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「くっそー」グッ
盛岡は僅かに両手を遠ざけてから、勢いをつけて妖刀を引き寄せた。
その切っ先は血肉を溶かすようにするりと喉を貫通し、頚椎を断って向こう側まで突き抜ける。
(;´・_ゝ・`)「……ん゙ふっ」
一瞬で完遂された自刃、あまりに淡白な自殺行為。
ほどなく思考は激痛に溺れ、妖刀の力が彼の心を塗り替えていく。
――盛岡デミタスは死んでも洗脳なんか受け付けない。
それでも効果をもたらすには、いっそ『死ぬほど』でなければ話にならなかった。
(;´・_ゝ・`)
( ^ω^)
すべて承知の上だった。
最後に内藤ホライゾンと視線を交わし、盛岡デミタスは意識を失った。
そのまま膝から崩れ落ち、血潮にまみれて地面に横たわる。
.
286
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:16:27 ID:Q55tYwuk0
( ^ω^)「……こんな奴が、マッチ売りの少女か」
俯瞰的に呟き、内藤ホライゾンは激化能力を解除した。
盛岡の首を貫いた妖刀はそれと同時に消滅し、彼の傷口からは更に血が溢れる。
当然このままでは盛岡は死ぬ。しかしそれでは妖刀を使った意味まで消えてしまう。
そこで必要なのが内藤ホライゾンの復元能力。
彼は盛岡の傍らに膝をつき、致命傷を負った盛岡に復元を施した。
(;´-_ゝ-`) …!
復元能力によって傷を直すと、気絶中の盛岡が目に見えて身じろいだ。
途切れた生気が再び巡り、濁った呼吸が命を繋ぎ始める。
( ^ω^)「これでお役御免だ」
( ^ω^)「言われずとも、あとは自由にやらせてもらう」
かくして自演の片棒を担ぎ終えた内藤ホライゾン役の人。
彼は程なく立ち上がり、自分の舞台に帰っていった。
.
287
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:20:41 ID:Q55tYwuk0
______________________________
━━━√━━━━━━━━━━━━━━━━━#━━━━━━#━━
 ̄ ̄ ̄
,、,,..._
ノ ・ ヽ. ラザロとは、貧乏だったり、死んで蘇ったりする人。
/ ::::: i その名前は 「神はわが助け」 を意味する。
/ ::::: ゙.、 主に鎌倉の鶴岡八幡宮の土産として有名。(wikipedia)
__________
━━━#━━━━━#━━━━━━━━━━#━━━√━━━━━━━━━
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
288
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:22:08 ID:Q55tYwuk0
≪3≫
(; ^ω^)「――! ――――!」
从;-∀从「……ん、あぁ……?」
聞き慣れた声が耳朶に響く。
ハインは目覚め、慌てふためく声に応えた。
Σ(; ^ω^)「あっ起きた! んもう起きるの遅すぎだお!」
_,
从;゚∀从「……あぇ。お前、誰だ……?」
(; ^ω^)「寝惚けてる場合じゃないお! 盛岡が僕らの暗躍に気付いて(ry」
( ^ω^)「でも僕が倒しといたお! 危ないとこだったお!」
从;゚∀从 ・ ・ ・
从;-∀从「駄目だ、なんにも思い出せねえ……」
( ^ω^)「今はとにかく逃げるんだお! はいこれ大事な妖刀!」
つ╋─
从;゚∀从「……それもそうだな! ちょい待て、すぐに用意してくる!」ダッ
≡┌(; ^ω^)┘「僕も手伝うお!」
.
289
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:23:13 ID:Q55tYwuk0
______________________________
━━━√━━━━━━━━━━━━━━━━━#━━━━━━#━━
 ̄ ̄ ̄
少女は座ったまま、死んでかたくなっていて、
その手の中に、マッチのもえかすの束がにぎりしめられていました。
「この子は自分をあたためようとしたんだ……」と、人々は言いました。
でも、少女がマッチでふしぎできれいなものを見たことも、
おばあさんといっしょに新しい年をお祝いしに行ったことも、
だれも知らないのです。だれも……
また、新しい一年が始まりました。
__________
━━━#━━━━━#━━━━━━━━━━#━━━√━━━━━━━━━
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
O 。 , ─ヽ
________ /,/\ヾ\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_ __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/''' )ヽ \_________
||__| | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从 | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\ / ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/ 〜おわり〜
.
290
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/03/29(月) 23:33:15 ID:Q55tYwuk0
#1
>>2-65
#2
>>74-117
#3
>>122-160
#4
>>169-212
#5
>>231-266
>>271-289
>>289
は青空文庫のマッチ売りの少女(大久保ゆう訳)から引用しました
このスレでクリエイティブ・コモンズのお世話になるとは…
https://www.aozora.gr.jp/cards/000019/files/194_23024.html
291
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:46:47 ID:Q55tYwuk0
忘れてましたが次回投下は3月31日です
ツンちゃんのお風呂シーンがあります
>>230
投下で話題流しちゃってごめんNE(^ω^)
作者的には読んでる人が多いような気はしているよ('A`)
292
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 06:22:56 ID:UlulrRuU0
乙乙
>>291
なるほどあざます
293
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 09:57:45 ID:a6DJMOko0
乙!
294
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/03/31(水) 21:00:45 ID:enOHtg6M0
≪1≫
〜ツンちゃんの家〜
ξ゚⊿゚)ξ「ただいま〜」
('A`)「おじゃまします」
ミセ*゚ー゚)リ「おかえりなさい、遅かったですね」トテトテ
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。特訓が長引いちゃって」
話の導入をコピペで済ませ、かくして私は家に帰ってきた。
奥のリビングからは美味しそうな夕飯の匂いが漂ってくる。
ミセリさんのエプロン姿も相まってか、この時ばかりは日常的な感慨を覚えてしまう。
.
295
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:08:17 ID:enOHtg6M0
ミセ*゚ー゚)リ「今日の特訓はどうでした?」
ξ-⊿-)ξ「なんか仕上げとか言って散々イジメられたのだわ。
分かりやすい成長もあんま無いし……」
ミセ*゚ー゚)リ「そう簡単に強くなられちゃ私の立場が無いですよ。日進月歩です」
ξ´⊿`)ξ「やむをえないけどアナログなのだわ……」
スニーカーを脱いで床に上がる。新妻ぶっこいてるミセリさんがカバンを受け取ってくれる。
今日は疲れた。さっさと風呂に入りたい。
しかし私は振り返り、何食わぬ顔で帰ろうとしてるドクオを呼び止めた。
ξ゚⊿゚)ξ「待て、帰るな」
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ「夕飯、食ってきな」
('A`)「へい……」
ここでドクオを帰してはならない。
特訓期間中、我が家の食卓は常に満漢全席。
私一人ではとても食べ切れない物量が襲ってくる為、ドクオには第二の胃袋として働いてもらう。
ミセ*゚ー゚)リ「もう夕飯できてますからね! 湯船は程々に!」
ξ゚⊿゚)ξ「へーい」トテトテ
否、ここでは絶対に長風呂をキメる。
一旦ドクオに夕飯を任せ、先に食べ始めてもらう事で私への分配を減らすのだ。
かくして私は逃げ込むように脱衣所に入り、汗ばんだ衣服をポイポイと脱ぎ捨てた。
.
296
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:09:43 ID:enOHtg6M0
〜入浴シーン〜
,.._,/ /〉.________
./// //──とつ――─::ァ/|
/// //~'~~ξ゚⊿゚)ξ~~~/ / |
.///_// "'''"'''"'" ./ / |
//_《_》′─────‐ ' / ./
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| /
| .| ./
|__________|/
※ツンちゃんボディは謎の光によって守られています
.
297
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:15:16 ID:enOHtg6M0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ´⊿`)ξ「ふぃ〜〜〜〜ぉぅ」ザパー
大きく息を吐き、湯船に沈む。
溢れたお湯が床に流れ、湯気がふわりと立ち上ってくる。
*
ξ*゚⊿゚)ξ ~
ラベンダーの入浴剤を入れたおかげで香りもよい。
花王は神。バブ様様であった。
ξ*-⊿-)ξ(……今日も疲れたけど、前に比べれば余裕あるのよね)
ハインさんとの特訓はせいぜい2〜3時間。
運動量も最低限で、ぶっちゃけ部活の域を出ない。
今でこそ思うが、体力的な部分はミセリさんが十分に鍛えてくれていたのだろう。
「そりゃあんだけやれば体力つくわ」と思わなくもないが、ここは素直に感謝である。
ξ´⊿`)ξ(ミセリさんは先生で、ハインさんはコーチって感じなのだわ。
だったらいい感じにバランス取れてるのよね、きっと……)
.
298
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:22:04 ID:enOHtg6M0
腰を滑らせ、浴槽の縁に背中を預ける。
疲れた〜なんて言えるレベルで特訓が終わる日々には、やはり多少の消化不良感があった。
というか暇が多いのだ。考える時間が増えすぎて、そこで何を考えればいいのかよく分からない。
ξ´⊿`)ξ(でも多分、それが課題なのよね)
ξ´⊿`)ξ(なんというか、考えること自体というか……)
――では、空いた時間で何をすべきか。
そう考えて最初に思い浮かんだのは、さしあたり無い学校の風景だった。
なんでもないような事を優先して考えられる。余裕があるって本当に素晴らしいな。
ξ゚⊿゚)ξ(風呂出て、飯食って、学校のあれこれ済ませて、今日は終わり)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(もうやる事ないな)
ξ´⊿`)ξ(早寝でいっか……)ブクブクブク
ちゃんと考えた上でやる事が無いので、寝よう。
私の結論は早かった。
.
299
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:32:53 ID:enOHtg6M0
――しばらく経ってのぼせてきた頃合い。
そろそろドクオが過食で死んでいるだろうし、これ以上待っても逆に夕飯を補充されてしまう。
ここらが潮時というヤツだ。私はゆっくりと湯船を出た。
ξ゚⊿゚)ξ「おっ――」
――床に立った途端、不意に体の力が抜けた。
立ち眩むほどではないが、五体の感覚がわずかに遠ざかる。
ξ;゚⊿゚)ξ「……っと」
私は咄嗟に壁に手をつき、血圧とかが落ち着くのを待った。
脳ミソに血が巡ってくる感覚が、時間をかけてじわりと馴染んでいく。
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;-⊿-)ξ「……ふぅ」
やれやれ、ちょいと風呂場で粘りすぎたようだ。
私は一息ついて調子を戻してから、低めの適温にしたシャワーで体を流し始めた。
ξ;゚⊿゚)ξ(無自覚な疲れが溜まってる、ってヤツなのかな)
ξ;゚⊿゚)ξ(これ本当に早寝した方がよさそうね……)
.
300
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:35:15 ID:enOHtg6M0
そんな正常な思考も束の間、正体不明の謎の光が私の視界を埋め尽くした。
サービスシーンを隠す演出か、あるいは目眩から来るマジのヤツか、その判別をする間は無かった。
.
301
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:37:47 ID:enOHtg6M0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
そして光が過ぎた時、私の目前には赤黒い壁があった。
あと重力の向きもおかしい。背中に重力を感じる。
私は両手を壁に当て、ぐっと押し出すように体を持ち上げた。
ξ;-⊿-)ξ(……ああ、倒れたのね)
認知が追いつき、腑に落ちる。
壁だと思ったものは床で、赤黒の正体は自分の血だった。
頭のどこかを切ったのだろう。水気と混ざった血が輪郭を伝って落ち、ぼたぼたと床を跳ねている。
顔を上げると、ひび割れた鏡に自分が映った。
どうやらまぁまぁの高威力で頭突きをかましたっぽい。鏡が砕け散っていないのは不幸中の幸いだ。
ξ;゚⊿゚)ξ(でも結構やっちゃってるな……)
謎の光が過ぎった一瞬、どれほどの惨事が起こっていたのか。
その逡巡に気を取られた私は、つい普段通りの加減で立ち上がろうとしてしまった。
浴槽の縁を頼りに、ぐっと力を入れた瞬間――。
.
302
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:40:18 ID:enOHtg6M0
ξ゚⊿゚)ξ「――あっ」
私はかくんと腰砕け、なにかに後ろ髪を引かれるように大きく仰け反った。
世界が逆に回転し、見慣れた景色が視界を飛び越えていく。
ξ゚⊿゚)ξ(……って)
ξ;゚⊿゚)ξ(いかん! 覚醒ヒロイズムの歌詞を引用してる場合じゃ――!)
ひっくり返って湯船に落ちる。
その直感を覚えていながら、私の体は言うことを聞いてくれなかった。
.
303
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:51:22 ID:enOHtg6M0
〜リビング(数分前)〜
('A`)「やめてくださいしんでしまいます」
ミセ*゚ー゚)リ「だったら消化をするんですよ」
('A`) ?
ツンちゃん第二の胃袋として無限の夕飯に立ち向かうドクオ。
弱音を吐いても通じないので、ドクオはとにかく食べまくっていた。
卓上には山盛りの山盛り料理が大量に並べられており、死を意味していた。
ミセ*´ー`)リ「お嬢様も早く出てこないかなぁ。
冷めても減っても、まぁ作り直せばいいんだけど……」
('A`)
(;゚A゚)(ツン今すぐ戻れ!! 俺の努力が!!)
なんとも微笑ましい食事風景である。
しかしその折、玄関の方から不穏な物音が聞こえてきた。
ドアを何度も叩く音だ。インターホンを押さない辺り、いやが上にも緊張が走る。
.
304
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:55:12 ID:enOHtg6M0
ミセ*゚ー゚)リ「……これ貞子ね。妙に魔力を隠してるけど」スッ
('A`)「……ああ、そうなんすか」
ミセリ判断のもと警戒を解くドクオ。
ひとまず無事ではあるらしく、ミセリにも慌てる素振りはない。
ミセ*゚ー゚)リ「でも何かあったわね。ドクオ、ちょっとお嬢様を呼んで――」
――指示の最中、今度は風呂場の方で音が上がった。
今度は更に物々しい、最後のガラスがブチ破れるような音。
それに続いて異様な水音。ツンが湯船に落ちたのだと、2人はすぐに直感した。
ミセ*゚ー゚)リ
('A`)
ミセ;*゚Д゚)リ「――前言撤回、ドクオはダッシュで風呂場に突撃!」
Σ(;'A`)「えっ!? でも今あいつ全裸なんじゃ」
ミセ;*゚Д゚)リ「超法規的措置よ! 記憶はあとで消せばいいの!」ダッ
(;'A`)「……はいはい了解!」ダッ
一転して顔色を変え、2人は急いで各方に散った。
.
305
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:56:41 ID:enOHtg6M0
〜お風呂〜
|┃三 ___________
|┃ /
|┃ ≡ < おいツン! 大丈夫か!?
____.|ミ\____('A`)_ \
|┃=___ \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|┃ ≡ ) 人 \ ガラッ
「\
ヽ ) /~)
/ / ( / ブクブクブク.......
,.._,/ /〉.__/ / | |____
./// //──\\/ /―::::ァ/| ←ツン
/// //~~'~~ | | ~~/ /|
.///_// "'''"'''"'" ./ / .|
//_《_》′─────‐ ' / ./
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| /
| .| ./
|__________|/
('A`) ・ ・ ・
(;゚A゚)「ウ”ウ”ァ゙ー!! ツンの犬神家が丸見えだァァーッ!!」
この瞬間、入念な記憶処理が確定した。
.
306
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:59:24 ID:enOHtg6M0
〜玄関の方〜
ミセ;*゚ー゚)リ「貞子、何があったの!?」
川; д川「……ちょっと待って。私も整理できてない」
ミセリが廊下に飛び出すと、見回りから戻ってきた貞子が疲れた様子で待ち構えていた。
貞子に負傷は無いようだったが、彼女が連れ帰ってきた男は明らかに満身創痍だった。
(;´-_ゝ-`) …
玄関マットに倒れていたのは盛岡デミタス。
こちらも同じく無傷だが、どういう訳だか虫の息。
ミセリからして目に見える相違と言えば、喉元にある直りかけの刀傷だけだった。
川; д川「えっと、とにかく色々あったらしいんだけど、内通者が分かったの。
盛岡が起きたら忙しくなるわよ。私達は特にね」
ミセ;*゚ー゚)リ …!
ミセリは一瞬考えて、消去法で内通者を割り出した。
さほど難しい話でもない。ここに不在の関係者は、2人だけだ。
ミセ;*´ー`)リ「ああ、やっぱりあれが相手か……」
川д川「それよりお嬢様は? 今すぐ確かめたい事が――」
<ウウァー!! ツンの犬神家がァァーッ!!
ミセ;*゚ー゚)リ「――お風呂場よ! 急ぎましょう!」ダッ
川; д川「なんか別の意味で嫌な予感が!!」
.
307
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:59:45 ID:enOHtg6M0
#05 ラザロと畜群 その2
.
308
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:01:55 ID:enOHtg6M0
| ロ :
| 口 ・
 ̄ ̄ ̄ ̄ ゚ ロ ・
・ : 。 口
ロ ロ
・
口 ゚ ロ []
。
・ ロ ・ : ロ 口 []
□ ・
[] | ̄| 口
。 口  ̄ 。
ξ;-⊿-)ξ「う、うーん……」
『……早く起きなさい。寝てる場合じゃないんだけど』
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「……って、どこじゃここは」
目覚めたとき、私は限りない純白の世界に立っていた。
風呂場でひっくり返って、湯船に落ちそうになって――そこから先の覚えが無い。
ξ゚⊿゚)ξ
あー、こりゃダメかも分からんね。
魔王城ツン、死んだかもしれぬ。
.
309
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:06:22 ID:enOHtg6M0
『いっそ、ほんとに死んでた方が楽だったかもね』
ξ゚⊿゚)ξ !
桑島法子に似た声がつんけんした口調で突っかかってくる。
こいつ、脳内に直接……!
『でもそれじゃ困るのよ。残念だけど、もうあなたしか残ってないから』
と思いきや、声はすぐさま弱気になった。
姿の見えない誰かを探し、私は周囲を一望する。
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『――………』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、_
,i ::::::: / /⌒`ー-、
| ::::::: / / i
! ::::::::../ / ノ
`ー―" "―――――‐ "
ξ;゚⊿゚)ξ「くっ、ここは一体どこなのよ……!」
今なんか巨大な銘菓が見えた気が、いや気のせいだろう。
.
310
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:13:09 ID:enOHtg6M0
時間が経って、そろそろ意識がハッキリしてきた。
見えてる景色に現実味はなくとも、私の五感は確かに機能している。
良くも悪くも、ここは死後の世界ではなさそうだった。
『そんなに慌てなくて大丈夫よ』
『ここ、あなたが長居できる場所じゃないもの』
優しい声が聞こえた後、遠く離れた場所に淡い彩虹が湧き上がる。
やがて彩虹はいい感じにまとまり、人型の実体を形成して動き出した。
<`/>'^ヾヘ/>
ノノ/((ノ´ノ))ヾ
(((ゝd*゚⊿゚)っ 『――はい。これで話しやすいかしら』
リ (_]っl:>
</_ハゝ
(ノノ
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「いやそれ私だが」
<`/>'^ヾヘ/>
ノノ/((ノ´ノ))ヾ
(((ゝd*゚⊿゚)っ 『なによ。あんまり見るんじゃないわよ』
リ (_]っl:>
</_ハゝ
(ノノ
ξ゚⊿゚)ξ ???
いよいよ悪夢めいてきた。
なんなのだこれは、どうすればよいのだ。
.
311
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:17:57 ID:enOHtg6M0
――なんて、困惑に呑まれた直後。
私のような見た目のそれに、大きなノイズと色ズレが奔った。
ついさっき現れたばかりにも関わらず、その実体はすでに崩壊を始めていたのだ。
<`/>'^ヾヘ/>
ノノ/((ノ´ノ))ヾ
(((ゝd*::⊿゚) 『時間も無いし、とりあえず最初の質問に答えておくわ』
リ (_]::::l:>
ξ;゚⊿゚)ξ(早くも4行に……!)
<`/>'''ヾヘ/>
ノノ゚。(ノ´ノ))ヾ
(((ゝd*::⊿゚) 『ここはサブレ時空よ。特権で色々イジられてるけどね』
リ (_]::::l:>
ξ゚⊿゚)ξ
ははーん、なるほど。
ここはサブレ時空だそうです。
<`/>'''ヾヘ/>
ノ。゚((ノ´ノ))ヾ
(((ゝd*::⊿゚) 『……ピンと来ないなら夢オチでいいわ。
リ (_]:::::l:> ここでの記憶、ほとんど持って帰れないんだし』
ξ゚⊿゚)ξ「では帰りたいのですが」
d*::⊿゚)『さっき言ったでしょ。それは時間の問題。すぐ帰れるから安心して』
ξ゚⊿゚)ξ「一気にAA省かれましたね……」
.
312
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:26:06 ID:enOHtg6M0
d*::⊿゚)『――だから急いで用を済ますわ』
バックアップ
d*::⊿゚)『私が選んだ《余剰周回》としての役割、ちゃんとやっておかなきゃね』
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、こんな状況で私に用が……?」アトズサリ
⊂⊂ )
d*::⊿゚)っ『そりゃもちろん。ていうか、来た瞬間から始めてたけど?』
桑島法子ボイスの彼女は残った手指で私の体を示した。
つられて体を見直すと、今度は私の体にノイズが奔りまくっていた。
ξ゚⊿゚)ξ
Σξ;゚⊿゚)ξ「ウワァーー!! なんだこれ!?」
バックアップ
d*::⊿゚)『見ての通り、《余剰周回》のデータをあなたに送ってるのよ。
2度目の出涸らしみたいなもんだけど、まぁ切欠にはなるんじゃない?』
そこまで言われてようやく気付いた。
崩壊していく彼女の体はなんかこう電子的なエフェクトになり、私の体に流れてきていた。
ノイズの原因はまさにそれだ。何が何だか分からないが、私はもうめちゃくちゃだった。
ξ;゚⊿゚)ξ「――キッカケ!? 切欠って何の話よ!?」
d*::⊿゚)『ひとつ分の陽だまりに、ふたつはちょっと入れないのよね』
ξ゚⊿゚)ξ オーイェアハン
ξ;゚⊿゚)ξ「いやあのカルマ歌ってないで止めてくれない!?
なんかデリートされそうなんだけど! ロックマンみたいに!」
d*::⊿゚)『今度会えたらお茶しましょうね。ツンちゃん道場で』
ξ; ⊿ )ξ「そんな知ってる体で話されても――!!」
.
313
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:29:24 ID:enOHtg6M0
d*::⊿゚)『いい? 使えるものは全部使って、望めるものは全て望みなさい。
あなたはあのトゥルーマンを負かしたんだもの。きっと大丈夫、期待してるわ』
ξ;゚⊿゚)ξ「だったら状況説明が欲しいのですが!! かなり切実に!!」
d*::⊿゚)『だから記憶が持たないって言ってるでしょ?
とにかく気にせず受け入れて。ゼノグラシアってそんなもんだし』
ξ;´⊿`)ξ「急にゼノグラシアとか言われても知らんが……」
d*::⊿゚)『……ブーンとドクオによろしくね。それじゃ、頑張って』
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ アッ
◎ ◎ ティウンティウンティウン
◎ ◎
◎ ◎
◎ ◎
◎ ◎ ◎
.
314
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:31:43 ID:enOHtg6M0
─ ̄ ─_─ ̄ ─_ ─ ̄─_─  ̄─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─
─ ̄─_─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─_ ─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─
─_ ̄─_─  ̄─_─ ̄─_─  ̄─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─
─ ̄─ ̄_─ ̄_ ̄─_ ─ ̄─ ̄─_─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─_─
─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─_─  ̄ ─ ̄ ─_─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─
Block Buster Breaker
Loading Privilege - Counter Context Confusion
Exceptional Enigma End
─_ ̄─_─  ̄─_─ ̄─_─  ̄─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄
─ ̄ ─_─ ̄ ─_ ─ ̄─_─  ̄─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_
─ ̄─_─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─_ ─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─
─ ̄─ ̄_─ ̄_ ̄─_ ─ ̄─ ̄─_─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─
─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─_─  ̄ ─ ̄ ─_─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄
315
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:33:46 ID:enOHtg6M0
______________________________
━━━√━━━━━━━━━━━━━━━━━#━━━━━━#━━
 ̄ ̄ ̄
,、,,..._ ブロックバスター
ノ ・ ヽ. 《Blockbuster》は、興行的な大成功を収めた作品を指す用語。
/ ::::: i 主に長編映画に対して使用されるチーズケーキ。
/ ::::: ゙.、 北海道北見市に所在する清月が製造・販売している。(wikipedia)
__________
━━━#━━━━━#━━━━━━━━━━#━━━√━━━━━━━━━
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
316
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:34:30 ID:enOHtg6M0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
。゚ スヤスヤ
ξ´⊿`)ξ
ミセ;*゚ー゚)リ「……お嬢様、ほんとに倒れただけなのね」
川; д川「ビックリするほど健康体……」
――ツンちゃん犬神家事件から数時間後。
かくして寝室に運ばれた魔王城ツンは、一種のスヤスヤ状態に陥っていた。
貞子の診察ではまったく問題なし。そりゃ普通に寝てるだけなので当然であった。
.
317
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:37:59 ID:enOHtg6M0
川д川「これなら朝には起きると思うけど、今夜は大事を取りましょうか。
どうにも事情が変わりすぎた。盛岡の対処もしなくちゃだし……」
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*´ー`)リ「……大界封印。なんか久し振りに聞いたわね」
川д川「私も同意見。ハインの狙いもアレらしいし」
ミセ;*゚ー゚)リ「まったく、なんで人間が封印のこと知ってるのよ」
川д川「そこも含めて緊急事態。今は対応を急ぎましょう」
ミセ;*゚ー゚)リ「これじゃあ試験も先送りよね。上がゴネなきゃいいんだけど……」
ツンが寝ているベッドを離れ、2人は小声で話しながら部屋を出ていった――
.
318
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:39:15 ID:enOHtg6M0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━ ━ ・
─── ─────────── ─── ── ─…
─────────── … ……
_________
__ __
__
.
319
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:40:02 ID:enOHtg6M0
:::::::::::::::::::::::: | ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::: | :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 。::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::: | ::::::::::::::............:::::::::::::: :::......:.... /i :.....:..::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::: | :::::.................... . ...:::::::..........┌==┴===┐ :::........:.:
::::::::::::.......... | : ... . .........: : | 2021 :| ::........:...
::::::::::::.......... | | 03/ :::|
::::::....... | ○ | /31 :|
::::::....... |______O_, `ー―――'
|| ○丶、 。゚ .|
||__ノ:;_;;.ヽ___| スピー…
/⊂ξ´⊿`)ξ. /|
ノ⌒~⌒⌒"⌒U~"\/::|
/ .' ゛ .: ゝ ヽ`!' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/,: '´ ,._ 、 ヾ.,j
/ ゛ ヽ., _)
|  ̄  ̄ ̄ . ̄  ̄ ̄.. ̄|| 、,;'
| ||_,ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´
.
320
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:40:57 ID:enOHtg6M0
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:::::::::::::::::::::::: | :::::.................... . ...:::::::..........┌==┴===┐ :::........:.:
::::::::::::.......... | : ... . .........: : | 20?? ::| ::........:...
::::::::::::.......... | | ?? / ::::|
::::::....... | ○ | /?? ::|
::::::....... |______O_, `ー―――'
|| ○丶、 。゚ |
ムニャ :||_ノ:;_;;.ヽ____| シュゥゥゥ-…
/ ξ´、`)ξ ゝ:|
ノ⌒~⌒∪⌒U~"\,/::::| ,.;'"~⌒'"~,.;'"~⌒'"~:::::
/ .' ゛ .: ゝ ヽ`!' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.,_,,('" (⌒ヾ:::::::::::
/,: '´ ,._ 、 ヾ.,j ^'ノ⌒ヽ,,._ソ''":::::::::::::::
/ ゛ ヽ., _)” _ _,.,_,人⌒`'"~:::::::::::::::::::::::::::::::::::::
|  ̄  ̄ ̄ . ̄  ̄ ̄.. ̄|| 、,;' ^`"'ー- 'ヘ.,_,.ソ'ヽ(⌒"'::::::::
| ||_,ノ (.., 、:::::::::::::::::::::
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ ヾ,....ソ:
.
321
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:43:13 ID:enOHtg6M0
:::::::::::::::::::::::: | ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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::::::::::::.......... | : ... . .........: : | 2015 :| ::........:...
::::::::::::.......... | | 10/ :::| ,, サァァァー…
::::::....... | ○ | /10 :| (######:::::::::::::::
::::::....... |______O_, `ー―――' \\###:::::::
|| ○丶、 。゚ | __|::::|':##:::::
ンヌァ… :||_ノ:;_;;.ヽ____| く:(::_⊿,####:::
/ ξ´。`)ξ ./ | 〉:::::7:::::####::::::
ノ⌒~⌒~~⌒~~"\ / :::| ,.;'"~⌒'"~,.;'"~⌒'~ハ::::::####:::::::
/ .' ゛ .: ゝ ヽ`!' ̄ ̄ ̄.,_,,('"⌒ :::::::: (⌒ヾ:::::::::::( :'"'⌒'`^~(⌒ヾ、
/,: '´ ,._ 、 ヾ.,j ^'ノ⌒ヽ,,._ソ''":::::::::::::::λ::::::::::,.⌒):::::::::::::::::::
/ ゛ ヽ., _)_ _,.,_,人⌒`'"~:::::::::::'⌒'`^~(⌒ヾ:::::::::::::::::ヽ);;;;;;;,,,
|  ̄  ̄ ̄ . ̄  ̄ ̄.. ̄|| 、,;' ^`"'ー- 'ヘ.,_,.ソ'ヽ(⌒"'::::::::,.ノ'"~`ヾ.,_ソ' ヽ);;;;;;;,,,
| ||_,ノ (.., 、:::::::::::::::::::::::ヽ);;;;;ソ;;,,,,,,):::::::::
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ ヾ,....ソ::::ソ'`"'(,,.、ソー"'-
.
322
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:44:12 ID:enOHtg6M0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.: : : : : : : : : : : 、 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: : : : : : : : :
: : :':⌒ : モクモク : : . . . ':::::::::::::::::::r:::::::::::〜::::::⌒::::::::::::::::::::..: :、: : : : : :
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y. : : : : : :):y'"~)::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::r.:〜.. :〜''”~: ..、. . : : : : : : .
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
323
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:46:33 ID:enOHtg6M0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| ――今宵、3月最終幕 |
: : : :\__________/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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: : : : : : : : : : :,, '": : : :::'": : : . . .:: :~"'y'´/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| 遠き月よ、やっと追いついたぞ―― |
\________________/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
324
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:47:03 ID:enOHtg6M0
世 界 に 3 月 が や っ て く る
〜おわり〜
.
325
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:52:31 ID:enOHtg6M0
#1
>>2-65
#2
>>74-117
#3
>>122-160
#4
>>169-212
#5
>>231-266
>>271-289
#6
>>294-324
次回投下は4月中です
できれば2話分投下したいと思っています
がんばるぞ!(^ω^)
326
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 23:01:41 ID:MhftUmZY0
乙!!
327
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/04/01(木) 00:26:57 ID:hlk0XYF60
身体はエイプリルフールを求める
https://youtu.be/G1tx6s6-RJM
328
:
名無しさん
:2021/04/01(木) 07:26:05 ID:lShJVYXI0
第二弾……だと……?
329
:
名無しさん
:2021/04/01(木) 22:37:08 ID:RcatqFmY0
乙、このツンちゃんにもゼノグラシア……うさちゃんが付くのか!?
そしてこのPVはどこまでが嘘なんだろう
330
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/04/24(土) 16:38:50 ID:EB69w2Q20
≪1≫
趣味ってほどでもないけど、人間観察は好き。
他者との繋がりを再認識できるし、相対的にも自分が際立つ。
あらゆる事象に共有共通共感が割り込んでくる馴れ馴れしい時代だ。
多感な十代少女としては、後者の方が大事だったりして。
.
331
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 16:42:51 ID:EB69w2Q20
――時刻は午前の6時過ぎ。
場所は学校、私のクラス。
子供にとっては早朝と言えるこの時間帯に、私は誰よりも早く登校を終えていた。
他にも誰かが来てるかもしれないけど、私が認知してないのでノーカウントだ。
早朝登校の理由は自習。諸般の体裁とか、諸般のアピールとか、そういう打算が90割だった。
(´・ω・`)「……今後の予定、まだ決まらないのか」
私の椅子は窓辺の最後尾にある。
学校正門がバッチリ覗けて、人間観察にも丁度いいポジションだ。
あと、ついでに言うならハルヒの席でもある。
(´・ω・`)「……無視しないでほしいな」
ふと、不満気な太眉が視界に入り込んできた。
彼は当然のように私の前の席に座り、半端に振り返って私を覗き込んだ。
「……なに」
それに対して悪態をつき、牽制する。
しかし彼には効果がなく、顔色ひとつ変えてくれなかった。
(´・ω・`)「いや別に。毛利まゆへの期待は無いよ。勘違いさせてたらごめん」
言い切り、彼は話を変えた。
.
332
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 16:44:15 ID:EB69w2Q20
(´・ω・`)「で、僕は予定を聞いてるんだよね。
今現在の膠着状態、しわ寄せは僕に来てるんだからさ」
(´・ω・`)「ハインリッヒが逃げた時点でお前の利用価値はほぼゼロだ。
出せる情報がもう無いなら、僕らのコネはここまでだよ」
「……状況は逐一教えてる。変化が無いのは私のせいじゃない」
(´・ω・`)「だったら変化を作りなよ。できるんだから」
短絡的な言葉の売り買い、じつに不毛だ。
私は瞑目して顔を伏せた。
(´・ω・`)「大体、日常を変えたいと願ったのはキミだろう?
俺はその助力をしているだけ。進路はどうぞご勝手に」
(´・ω・`)「ま、やめるって言うならもう現れないよ。
今後の安全も保証する。保身に関しちゃ負ける気しないし」
.
333
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 16:52:14 ID:EB69w2Q20
――私のクラスには、魔王城ツンという女が居る。
魔王の娘で魔物らしい。ふざけた話だが、関係者の様子からして本当っぽい。
私がそれを知ったのは高校入学の数ヶ月前。
ある日私はハインリッヒ高岡という老人に出会い、なんらかの手段で洗脳を施された。
今でこそ思うが、あの出会いは完全にエロ本の導入だった。
しかし老人には別の目的があり、エロい事にはならなかった。
加えて偶然洗脳も解けてしまい、(起きてるんだけどなぁ……)的なシチュにもなってしまった。
かくして始まる非現実的な展開の数々。
私は、その多くでハインリッヒの操り人形になっていた。
ハインリッヒの洗脳通りに魔王城ツンと仲良くなり、スパイのような行動を沢山した。
襲撃の手引きも私がやった。彼女がアホみたいに垂れ流してた情報も全部横流しした。
素直四天王を学校に引き込んだのも私。他にも色々、危ない橋を渡らされてきた。
――しかしそれらの暗躍は、非生産的な倦怠を一掃するに余りある快感を伴っていた。
綺麗に整えられた被害者としての体裁。安全圏から眺める非現実。火に油を注ぐだけの楽な仕事。
射幸心パパと承認欲求ママに育てられた私達の世代に、この劇薬を御せる人格者はそうは居ないだろう。
かくいう私もちょっと暴走した。暴走したので今に至っている。
勇者軍に属する彼、ショボーンとの繋がりもそういう流れで生まれたものだ。
ちょっとは事情があったりするけど、……まぁ関係ないよね。結果論。私も納得してるし。
.
334
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 16:57:53 ID:EB69w2Q20
(´・ω・`)「――キミは魔王軍関係者の情報を集める」
(´・ω・`)d「私がそいつを持ち帰り、上に報告する」
契約書を読み上げるように私達の関係を言語化するショボーン。
指を立てて見せるその仕草、まず間違いなく私への当てつけだった。
(´・ω・`)「僕は組織で成功したいだけ。キミは自由を手にしたいだけ。
単純だけどそこらの利害、忘れてもらっちゃ困るんだよね」
「……忘れてない。今は待つのが正解なだけ」
(´・ω・`)「いいね。でその根拠は?」
「ハインリッヒがまだ諦めてない。もう一度、彼女達を使うみたい」
(´・ω・`)
(´・ω・`)「あー、彼女達って素直四天王のこと? それは期待できるね」
彼は心にもない同調を吐いて背筋を正した。
まともに聞く価値は無いと判断されたのか、振り向く姿勢すら打ち切られてしまった。
(´・ω・`)「でも今は無理じゃない? 向こうの防衛だって特に厳しいんだしさ」
(´・ω・`)「そもそも、襲撃可能ならとっくに上が動いてるんだよね。用意も済んでるし」
「分かってる。だから、素直四天王には入れ知恵をしておいた」
(´・ω・`)「……入れ知恵ね。それ流行語だったりする?」
言葉の後に、ありふれた溜息が続く。
.
335
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:02:41 ID:EB69w2Q20
(´・ω・`)「まぁ一応聞いておこうかな。素直四天王になんて言ったの?」
「特別な事はなにも。ただちょっと、報酬をピンハネして補足しただけ」
「依頼主が危機的状況にあるため、報酬は1000万円以下になると思います、って」
(´・ω・`) …
(;´・ω・`)「えっ、本当にそんな事したの?」
ショボーンが再び振り返り、肩越しに私を一瞥する。
この話、ちょっとくらいは興味を惹けたようだ。
(;´・ω・`)「彼女達への依頼料、たしか数倍になってたよね?
色々話が違うからって結構な高額にさ」
「そうだね。平気で数千万動いてたよ」
あれほどの大金、一部とはいえ現ナマで触った時はさすがに興奮したな。
ちなみにピンハネした分はポケットマネーにした。隠し場所で逆に困ってるけど。
(;´・ω・`)「なのに、それをピンハネして3桁万円にしちゃったの?
本来値上げすべきタイミングでそれは、流石に……」
「うん。まず確実に破綻する」
(´・ω・`)
「だから、素直四天王が次にどう動くか、誰にも分からない」
(´・ω・`)
(´・ω・`)「いやそれは、何も起こらない可能性が一番高いよ。普通に」
言いながら、彼はまたもや背筋を正した。
無理もないな、と我ながら思う。
.
336
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:04:48 ID:EB69w2Q20
素直四天王がハインリッヒの依頼を受けたとして、敵防衛を突破したとして。
魔王城ツンに接敵し、その側近をも撃破し、ターゲットを連れ帰れる可能性はほぼ皆無だ。
ショボーンの考えは至極真当。何も起こらないのが自然で当然だし、私もそこに異論は無い。
では、どうして私が素直四天王の独断に期待を寄せているかというと。
その理由はとても単純で、ただ単に、魔王城ツンが『特別』だからだ。
生きてる世界が違うという致命的な矛盾。
存在自体が物事の発端になるような、歩く無法地帯。
彼女の周囲に居る限り、私が知っている普通など意味を成さない。
「あれは、何も無くても何かが起こる人なんだよ」
「魔王城ツンは変化に恵まれている。本人は停滞を好んでるけどね」
彼女によって日常を破壊された者として断言できる。
あれに関わろうとするならば、『何も起こらない』なんて予想は無意味なのだ。
(´・ω・`)「……だから偶然何かが起こり、隙が生まれると?」
目の前にあるショボーンの背中が、露骨にしなびて丸くなっていく。
当然の反応だ。個人的な印象に基づいた適当な推測など、当てにする方がおかしい。
.
337
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:06:30 ID:EB69w2Q20
(´・ω・`)「……あれかなぁ。学校に不審者が乗り込んできて、それ倒す妄想みたいな」
(´・ω・`)「もしそんな感じで話してるなら、やっぱりウチらは今回限りだよ」
言葉の後、彼はあっさりと席を立った。
もう9割くらいは見限られたのだろう。やむをえないと思う。
(´・ω・`)「どうやらボクも顔が割れてるみたいでね。
街中で視線を感じる事が多いんだ。待てる時間は少ないよ」
「……そう。運よくいったら、またよろしく」
(´・ω・`)「……このショボーン様が居なければ、毛利まゆはただの一般人に過ぎない。
キミが求めた『特別』なんて簡単に崩れ去るということ、よく覚えておくといい」
去り際に忠告を残し、ショボーンは教室を出ていった。
.
338
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:08:19 ID:EB69w2Q20
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
|┃三 _____
|┃ /
|┃ ≡ < オ〜イェ アハン
____.|ミ\___ξ゚⊿゚)ξ_ \
|┃=___ \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|┃ ≡ ) 人 \ ガラッ
ξ゚⊿゚)ξ「あっまゆちゃん! おはようなのだわ!」
「おはよう魔王城さん!」
ξ゚⊿゚)ξ「いま教室出てった人って姉妹だったりする!?
後ろ姿がすごい似てたのだわ!」
「……よく言われるけど全然違うよ! ほら、私って特徴無いから」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「そいつは解釈違いだな」
「朝から強火じゃん」
――小さな変化なのだが、少し前からツンちゃんの登校が早い。
こっちは私の気のせいかもしれないが、どこか雰囲気も変わった気がする。
「それより今日も勉強するんでしょ? 手伝うよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんと? お願いするのだわ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「今日はこちらの『超実践! 効率的人体破壊術入門』の解説をば……」
つ[ ]と スッ
あと、やたら物騒な本を読むようになった。
本人いわくスポーツに目覚めたらしいのだが、詳しい事は私も知らなかった。
おおよそ、例の試験に向けた自主練だとは思うけど。
.
339
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:19:32 ID:EB69w2Q20
ハインリッヒが消えて一ヶ月くらい。
その間目立った事もなく、私達は本位を隠しあったまま、自然に普通を演じあっていた。
――市立VIP高校で、すごく平和な日常を送るために。
なんて、彼女ならこんな風に考えるのかな。
だったら私はどうだろう。私にとって、この寓意譚は――
.
340
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:20:57 ID:EB69w2Q20
#05 ラザロと畜群 その3
.
341
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:22:36 ID:EB69w2Q20
≪2≫
〜お昼くらい! 教室!〜
( ´∀`)「……であるからして」
( ´∀`)「つまりそういう事なんだモナ」
ξ゚⊿゚)ξ(なんて分かりやすい授業なんだ)
( ´∀`)「しかも爆発するモナ」
授業もそろそろ終わり際。
モナー先生の話がまとめに入った頃合いで、私こと魔王城ツンは物憂げに外を見遣った。
ξ゚⊿゚)ξ フゥ…
日常風景からモノローグに移る時にありがちなムーブ。
私はモノローグに突入した。
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342
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:24:27 ID:EB69w2Q20
――ハインさんとの特訓を経て、ざっくり一ヶ月。
積もる話が色々とあり、私の日常はすっかり落ち着いていた。
例の試験も延期されたまま動きがない。これは正直ラッキーだが。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ-⊿-)ξ(……ハインさん、本当に内通者だったのかしら)
モノローグらしく話の要点を蒸し返す私。なんとも殊勝でしかもかわいい。
とはいえそうなのである。話を聞くに、どうもあのハインさんが内通者だったらしいのだ。
現在ハインさんは逃亡中の身。内藤くんも一緒に消えてしまって、状況的にはほぼ黒らしい。
私は一応中立なのだが、すでに感情的な擁護が通用しないレベルのアウト判定が出ている模様。
立場的にも下手な発言はしちゃいけないし、現状私にできる事は何もなかった。
ξ゚⊿゚)ξ(あの盛岡が実際に戦ってる辺り、相当な一大事なのよね)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ´⊿`)ξ(あいつが戦ってるとこ、まったくイメージできねー)
( ´∀`)「……ツンさん、授業聞いてるモナ?」
ξ゚⊿゚)ξ「はい先生。つまりそういう事です」
( ´∀`)「しっかり聞いているようだな」
そして今、この街には魔王軍の一部隊が送り込まれていた。
協力関係にあったハインさんの裏切りを重く見たのか、そのメンバーは結構マジである。
ミセリさん貞子さんも同じくマジになっていて、今のVIP市内は超が付くほどの厳戒態勢。
警戒範囲内に一歩踏み込んだ時点で最悪死ぬ。
そんなレベルで守られてる私が平穏を持て余し、まんがタイムきららるのは半ば必然だった。
.
343
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:26:54 ID:EB69w2Q20
( ´∀`)「そいじゃ授業を終わるモナ〜」
モノローグに耽ってたら授業が終わった。昼飯の時間になった。
私はドクオに声をかけ、まゆちゃんと3人でメシを食らい始めた。
('A`)「俺、今日は部活行っとくわ」モグモグ
ξ゚⊿゚)ξ「そう」パクパク
ちなみにドクオも暇を持て余している。
魔王軍が本格的に守りを固めたため、ドクオが私を護衛する必要も無くなってしまったのだ。
かわいそう
「……えっと、ドクオくんってそういえば何部? 聞いた事なかったよね?」
('A`)「茶道部の数合わせ。幽霊部員だよ」
コミュ障相手に話を広げようとするまゆちゃん。
なんとも殊勝で健気でかわいいが、ドクオの返事を聞いて一瞬言葉に詰まってしまう。
「あっ、……お茶かぁ。そっかぁ」
そこは卓球部じゃないんだな、という感想を呑み込んで微笑むまゆちゃん。
この野郎ドクオ、私が居ない場所ではそこそこリア充なので腹が立つ。
茶道部の先輩(渡辺さん)は実際美人だ。もはや怒りしかない。
ξ゚⊿゚)ξ
同じコミュ障なのに私にだけ青春が無いの、コミュ障が原因じゃないと言われてる気がして終わりだった。
金髪美少女がちやほやされない世界、私は絶対に認めないからな。
('A`)「ほんとに何もしてないけどな。たまに顔出してお茶飲んでるだけだよ。
せめて部費分くらいは飲みに来てくれって感じ。あと雑用」
「……へえ。なんていうか、意外と人徳あるんですね」
ほらもう気付かれた。あの優しいまゆちゃんが明らかに距離を置いたぞ。
しかもドクオは気付かない。無神経なので顔色さえ窺わない。レクイエム。
.
344
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:29:36 ID:EB69w2Q20
('A`)「そうだ、ツンも暇なら部活とか入ってみろよ。
俺よかまともに楽しめるだろ、ああいうの」
ξ-⊿-)ξ「……この状況が卒業まで続くならね。
今だけやっても冷やかしになるのだわ。それは嫌よ」
( 'A`)「ああ、……まぁそうか」
そりゃ私だって部活に入りたい。もっと言うなら氷菓みたいになりたい。
さりとて私は魔王の娘。諸般の事情を鑑みるに、敵わぬ願いなのだ。
だったら自分で作ればいいのよ! 私の脳内ハルヒが声高に言った。
「部活いいと思うけどなー。時間あるならもったいないよ」
ξ´⊿`)ξ「まぁ、それはそうなんだけど……」
ξ´⊿`)ξ「なんていうかさー、最近フラグ折られがちでさー。
今後どうなるかも分かんないし、保守的なのが無難な感じで……」
「……そうなんだ。最近の魔王城さん、なんか調子よさそうなのに」
ξ゚⊿゚)ξ
_,
ξ゚⊿゚)ξ「そう?」チラッ
('A`) シラネ
「絶対そうだよ! 前より勉強頑張ってるし、学校にも遅刻してこないし!」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ*゚⊿゚)ξ「え、照れますねそれね」
いや参っちゃうね友達の甘言は。承認が過ぎるぜ。
金を払えばいいのか?
.
345
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:31:24 ID:EB69w2Q20
「――環境の変化、心境の変化かな?」
言いながら、まゆちゃんがずいと身を乗り出してくる。
「 ありがちなトコで言うなら、好きな人ができたとか」
ξ;゚⊿゚)ξ「えぇ……」
彼女の顔には、好奇心から生まれる笑みがハッキリと浮かんでいた。
他人の色恋を勘繰る楽しみは人種年齢を問わないものだ。
やれやれ、まゆちゃんもティーンエイジですな。
ξ;゚⊿゚)ξ「うーん、残念だけどそういうヤツじゃないのだわ。
強いて言うならなんかこう、絶好調が続きすぎな感じというか……」
「--------終了-------」
ξ゚⊿゚)ξ「--------再開-------」
('A`)「おっぱいうp」
ξ゚⊿゚)ξ「とにかく私は相変わらずよ。
急に音信不通になったりしないから、安心して」
言いながら、私は内藤くんの席を一瞥した。
あまり気にしていないつもりだったが、不意に口走った言葉が彼を連想させた。
「……内藤くん、学校来なくなっちゃったね」
一瞥に気付いたまゆちゃんが独り言のように事実を呟く。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ-⊿-)ξ「そのうちまた来るでしょ。転校してきたばっかなんだし」
せめてもの期待を込めて言い、私はあっさりと話を流した。
.
346
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:33:59 ID:EB69w2Q20
≪3≫
〜ツンちゃんの家!〜
ξ゚⊿゚)ξ「ただいま〜」
ミセ*゚ー゚)リ「おかえりなさい! 待ってましたよ」トテトテ
放課後、1人で帰った夕飯時。
玄関を開けるとミセリさんが駆け寄ってきて、いつものように出迎えてくれた。
今日もハインさんの捜索で忙しいだろうに、ちょっと嬉しい。
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリさんこそおかえりなさい。今日は早いのね」
ミセ;*´ー`)リ「そこは色々ありまして。今も一応任務中です」
ξ゚⊿゚)ξ「ほーん」
ミセ*゚ー゚)リ「今朝方の話になりますが捜索の手掛かりが見つかったんです。
ただちょっと、ほんの少しお嬢様の助力が必要でして……」
ξ゚⊿゚)ξ「いいわよ」
ミセ;*´ー`)リ「思うところもあるでしょうが……」
ミセ;*゚ー゚)リ「って即決されましたね!? ダメですよ話も聞かずに!」
ξ゚⊿゚)ξ「今日の私はあっさりなのよ。それで何すればいいの?」
ミセ;*゚ー゚)リ「……それでは、ひとまず地下の特訓場へ。
貞子も向こうに居ますから、そこで事情をお話します」
ξ゚⊿゚)ξ「すこぶる分かった」
かくして私は特訓場へ向かった。
.
347
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:36:39 ID:EB69w2Q20
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
|| || || ||
|| || || || プラーン
|| || || ||
川 ゚ -゚) lw´‐ _‐ノv ノパ⊿゚) o川*゚ー゚)o
ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j
ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j
ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j
∪∪ ∪∪ ∪∪ ∪∪
ξ゚⊿゚)ξ「いや急だな全てが」
特訓場に入るや否や、おもしろFLASHみたいな光景に全てを持ってかれた。
物理的に拘束され、適当な岩場に吊るされている4人。
その内の1人には見覚えがあったが、全体的に理解が追いつかなかった。
ちなみに特訓場の仕様は東京ドームくらいの荒野である。
第2話以来の登場なので改めて言及しておく。
ミセ*゚ー゚)リ「向かって左端の女、素直クールで間違いないですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうだけど、何が何だか分からない」
分からないあまり一句飛び出してしまった。
ミセ*゚ー゚)リ「あの4人、お嬢様が登校してる間にまた襲撃して来たんです。
それで敢えなくこうなりました。以前ならともかく、今やるのは完全に無謀でしたね」
川 ゚ -゚)「現実の世界は、どうしてこんなにつらくきびしいのだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「あの人もう心折れてない?」
ミセ*゚ー゚)リ「そりゃ魔王軍と正面からやりあったんですから、折れてますよ」
ξ゚⊿゚)ξ「えげつねェな……」
.
348
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:38:27 ID:EB69w2Q20
川д川「――それでも、多少は善戦してましたよ」
その瞬間、不意に上空から補足が飛んできた。
私が真上を見上げると、当然のように空に浮いていた貞子さんが降りてくるタイミングだった。
いいよな当然のように浮かべるの。あれできたら絶対楽しいもんな……。
川д川「あのエクスト相手に数十秒は持ち堪えましたからね。
4人掛かりだったとはいえ、人間基準なら十分です」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、あのエクストさん相手に!?」
今後数十話は登場しないキャラを引き合いに驚くのもどうかと思うが、事実であれば確かにすごい。
エクストさんはバリバリの超武闘派。脳筋具合ではミセリさんをも超えてくる手合いだ。
それを相手に生き残れた素直四天王の実力など、私の感覚ではとても計りきれない。
そして同時に、先日の素直クールが少しも本気じゃなかったという事も判明してしまった。
私は私で彼女を殺さないよう加減していたが、彼女はそれ以上の技術で微細な手加減をしていたのだ。
コントロールは私の弱点。そこで競ってしまったのだから、そりゃあ負ける。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「で、結局私は何すればいいの? 拷問?」
川; д川「……なんか妙にあっさりしてますね」
ミセ*゚ー゚)リ「今日はそういう気分なんだって」
.
349
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:41:17 ID:EB69w2Q20
川д川「――それではまず、今朝の事から話しましょうか」
〜中略!〜
ξ;゚⊿゚)ξ「ま、まさかそんな事が……!?」
川д川「今朝の襲撃、それはもう見事な大立ち回りでしたよ。
結果だけならこちらの圧勝ですが、模擬戦闘としては丁度いい相手でした」
川д川「戦闘に関しては以上。問題は次です」
改まり、貞子さんは素直四天王の方を向いた。
彼女達の大立ち回りに胸打たれている場合ではない。私も気持ちを切り替えていくぞ。
川д川「彼女らは引き際もキッチリしていました。負けた瞬間に即時降伏。
更には取り引きまで持ちかけてきて、それがまた変に方向に転がって……」
ξ゚⊿゚)ξ「……歯切れが悪いのだわ。向こうの要求って、つまり私なんでしょう?」
私はあけすけに言って肩を落とした。
次の話も大体読める。ここは早めに開き直っておくのだ。
川д川「……その通りです。今日は本当にあっさり系ですね」
ξ゚⊿゚)ξ「サクサクいくのよ」
.
350
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:42:42 ID:EB69w2Q20
||
||
||
川 ゚ -゚) 「 ――こちらの要求はたったひとつ。
ミ≡≡≡j 魔王城ツンとの一騎打ち、それだけだ 」
ミ≡≡≡j
ミ≡≡≡j
∪∪
ξ゚⊿゚)ξ
||
||
ξ ゚⊿゚)ξ スッ… 川 ゚ -゚) !?
γ/ γ⌒ヽ ミ≡≡≡j
/ | 、 イ ミ≡≡≡j
.l | l } ミ≡≡≡j
{ | l、 ´⌒ヽ-'巛( ∪∪
.\ | T ''' ――‐‐'^
.| |
ミセ;*゚ー゚)リ「お嬢様!? いったい何を!?」
ξ゚⊿゚)ξ「お望み通りの一騎打ちよ。そして今がチャンス」
ミセ;*゚ー゚)リ「いやそれ処刑ですよ! 例の試験も絡んでるので落ち着いて下さい!」
ξ゚⊿゚)ξ !
ξ-⊿-)ξ「……ごめんなさい。話を聞くのだわ」
ミセ;*゚ー゚)リ(これ止めなかったら本気でやってたわね……)」
.
351
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:45:59 ID:EB69w2Q20
川д川「この子達、ハインリッヒの居場所を知っているそうです」
本題の口火を切ったのは貞子さん。
私のペースに合わせてくれたのか、要点らしき部分から話が始まる。
川д川「そして、さっき話に出た取引もここに繋がります」
川д川「彼の居場所を知りたければ一騎打ちをさせろ、と」
ξ゚⊿゚)ξ「……確認だけど、それってそもそも成立してないわよね?」
前提として、貞子さんの魔術があれば人間の記憶など簡単に覗けてしまう。
なので、素直四天王が持ちかけてきた取り引きに効力は無いはずだ。
どこかに恣意がない限り、貞子さんがその辺を失念するとは到底思えなかった。
川; д川「ええそうです。まったくもってその通りです。
なんですけど、『じゃあついでに試験を』なんて流れになっちゃいまして……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ああ、妙な方に転がったってそういう……」
そんでやっぱり恣意があった。
あのエクストさんが出てきてて、貞子さんすら手を止められている。
今回の一件、多分めちゃくちゃな権力パワーが蠢いているぞ。
ミセ*゚ー゚)リ「とは言っても、試験相手が務まるだけの実力も見ちゃいましたからね。
本来の相手もハインの方に出張ってますし、代役としてピッタリというか」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、試験の相手ってもう来てるの? 聞いてないんだけど……」
ミセ*´ー`)リ「そこも予定が狂いすぎましたからねー。
顔合わせもなにも後回しですよ。全部ハインリッヒのせいです」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ついでに聞くけど、その人と素直四天王ってどっちが強い?」
ミセ*゚ー゚)リ「それはもう完全に前者ですね。圧倒的に。
なので彼女達と戦った方が無難ではあります。一応」
.
352
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:47:08 ID:EB69w2Q20
ミセ*゚ー゚)リ「……で、どうされますか?」
ミセ*゚ー゚)リ「ここで試験をするもよし、事が落ち着くまで延ばすもよし。
決定権はお嬢様にありますから、お好きに決めて下さい」
川д川「そして、可能であれば即決をお願いします。
彼女達の処遇はともかく、ハインリッヒの件は急ぎたいので」
ξ;゚⊿゚)ξ「うっ、確かにそうよね……」
ミセリさん達だって時間を作ってここに来ている。
私がここで戦わないなら、貞子さんはすぐにでも素直四天王の記憶を探るのだろう。
いま優先すべきはハインさんの捜索だ。私の気分で進捗を遅らせる訳にはいかない。
ξ;゚⊿゚)ξ ウーン…
( ∞(
――試験を先延ばしにしたとして、それでもハインさんは数日以内に捕まるはず。
であれば、ここでやってもやらなくても時間的猶予に大差はない。
個人的な特訓も煮詰まってきた所だ。試験突破を考慮しても、今すぐやるのはそう悪くない。
ξ-⊿-)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「分かった。試験を受けるのだわ」
ミセ*゚ー゚)リ「おお! またもあっさりと!」
川д川「なんと目覚ましい成長……!」
この間たったの5秒である。
内藤くん相手にあれだけ渋った手前、この即決はかなり高印象だろう。
試験結果に関係するかは知らないが、できる子アピールをしておいて損はない。
.
353
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:48:36 ID:EB69w2Q20
ミセ*゚ー゚)リ「それでは早速準備をば!
お嬢様、いつ頃スタートされますか?」
ミセリさんが張り切った様子で躍り出る。かわいい。
しかし私は『いつ頃』というのがピンと来ず、彼女に聞き直されるまで言葉を失ってしまった。
ミセ;*゚ー゚)リ「あの、お嬢様?」
ξ゚⊿゚)ξ「……え? うん」
ミセ*゚ー゚)リ「私達も今晩中は空けておりますから、どうされますか?
食事やウォーミングアップをする余裕はありますが……」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「やるんじゃないの? 今、ここで」
ミセ*゚ー゚)リ
川д川
ξ゚⊿゚)ξ「……えっ?」
答えると、なぜか2人が硬直してしまった。
変なことは言っていないはずだが、また私なんかやっちゃいましたか?
ξ;゚⊿゚)ξ「あっ、夕飯もう作ってあるとか……?」
ミセ;*゚ー゚)リ「……いえ、少々面食らったというか、ねえ?」
川; д川「いや話振らないでよ。私も驚いてるけど」
ξ;´⊿`)ξ「な、なんだってんだよぉ……」
.
354
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:50:15 ID:EB69w2Q20
||
||
||
川 ゚ -゚) 「 ――どうした、さっさと話を進めてくれないか。
ミ≡≡≡j やる気があるならいいだろ。あと早く下ろしてくれ 」
ミ≡≡≡j
ミ≡≡≡j
∪∪
ξ゚⊿゚)ξ
||
||
ξ ゚⊿゚)ξ スッ… 川 ゚ -゚) !?
γ/ γ⌒ヽ ミ≡≡≡j
/ | 、 イ ミ≡≡≡j
.l | l } ミ≡≡≡j
{ | l、 ´⌒ヽ-'巛( ∪∪
.\ | T ''' ――‐‐'^
.| |
ミセ*゚ー゚)リ「そんじゃスタートで」
川;゚ -゚)「おい待て!! 処刑呼ばわりした状態のままだぞ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「スト2ボーナスステージなのだわ」
川; д川「……私が仕切るのでみんな落ち着いて。
急拵えでも、せめて試験の体裁くらいは整えますよ……」
.
355
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:51:34 ID:EB69w2Q20
――貞子さんが間を取り持ち、私達と素直四天王、それぞれの要求を試験内容に落とし込んでいく。
途中で話が拗れる事もなく、試験の取り決めは速やかに決着した。
川д川「それでは最後に確認だけ」
川д川「試験は1対1。素直四天王側は素直ヒートのみを解放し、他3人は特訓場の方々へと移す」
貞子さんの一瞥が私と素直四天王に配られる。
私は黙って頷いた。向こうからも異議は無い。
川д川「ただし、素直ヒートは捕まっている3人を救出し、戦力に加えてもよい」
川д川「禁止行為は故意の殺害のみで、どちらかの全滅をもって決着とする」
\了解なのだわ/ ||
||
ξ ゚⊿゚)ξ 川 ゚ -゚) <こちらもだ
γ/ γ⌒ヽ ミ≡≡≡j
/ | 、 イ ミ≡≡≡j
.l | l } ミ≡≡≡j
{ | l、 ´⌒ヽ-'巛( ∪∪
.\ | T ''' ――‐‐'^
.| |
.
356
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:55:24 ID:EB69w2Q20
川д川「ではみんな準備に取り掛かりましょう。開始の合図はミセリに任せます」
ミセ*゚ー゚)リ「こっちも了解。試験官は任されましたよっと」
短くまとめて話し終えると、貞子さんは素直四天王を地面に下ろした。
そうして素直ヒートだけを解放し、彼女達に作戦会議の猶予を与えた。
試験の初動は1対1でも、向こうには戦力増強のチャンスがある。
まず摘むべきはその一手。開戦直後は、互いに戦略の潰し合いになるだろう。
川 ゚ -゚)「いいかヒート、最初は逃げて私達を探すんだぞ」
o川*゚ー゚)o「お姉ちゃんズがんばってー」
lw´‐ _‐ノv「すいませんトイレどこですか」
川; д川「……途中で寄るから」
ノパ⊿゚)「みんな、あとは任せてくれよな!」
ξ゚⊿゚)ξ(とてもわちゃわちゃしている……)
かくして貞子さんは素直ヒート以外の3人を連れてどこかに瞬間移動した。
魔術、便利すぎて本当に羨ましい。
.
357
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:58:20 ID:EB69w2Q20
〜5分後〜
ミセ*゚ー゚)リ「お嬢様、着替えはよろしいんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……あ、忘れてた」
言われて気付いたが、そういえば学校から帰ったきり着替えていなかった。
動きやすさに大差は無いが、制服を汚してしまうのはちょっと気掛かりだ。
ミセ*゚ー゚)リ「持ってきましょうか? 貞子に言えばポイっと出してくれそうですけど」
ξ;゚⊿゚)ξ「うーん、もう始めるし構わないのだわ。ありがとね」
ミセ*゚ー゚)リ「……頑張ってください。応援しています」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。行ってくる」
適当にストレッチを終え、ミセリさんから少し離れる。
今の彼女は試験官であって私の味方ではない。馴れ合ってても始まらないし、邪魔になる。
励ましをもらえただけで今は十分だ。ぶっつけ本番、意外と緊張していない。
.
358
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 18:00:18 ID:EB69w2Q20
ξ゚⊿゚)ξ(……さて)
何があってもギリ即死しない距離として、私は素直ヒートとの間隔を10メートルくらい空けた。
ミセリさんはその中間に立ち、試験官らしい泰然とした様子で私達を一瞥した。
こっちの準備は出来ているから、あとは素直ヒートがOKなら試験開始である。
ミセ*゚ー゚)リ「素直ヒート、そっちも準備はいい?」
ノパ⊿゚)「いっつ、でっも、どー、ぞっ」
深々と腰を落とし、伸脚を繰り返しながらリズムよく答える素直ヒート。
うなじを隠すくらいの赤いポニテは、溌剌とした彼女の雰囲気によく似合っていた。
しかし問題は彼女の――いや素直四天王のグループ衣装だ。
素直クールとまったく同じのドンキで買ってきた感しかない制服、あれだけはない。
気にする私もどうかと思うが、彼女の制服姿は素直クールのそれより違和感がすごかった。
ノパ⊿゚)「……んだよじっと見て。緊張してんのか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「そうじゃないけど……あなた達って何歳なの?
その制服、見た感じコスプレのやつよね?」
ノパ⊿゚)「……は?」
結果、試験直前にまったく無関係な質問をしてしまった。
素直ヒートもキョトンとしてしまい、数秒間の無音が過ぎていく。
ノパ⊿゚)「あー……なんつーか、私ら学校とか通った事なくてさ。
まぁ形だけでも着てみるかって感じで、そのまま定着しちゃった的な……」
彼女は制服の胸元をつまみ、気恥ずかしそうに苦笑した。
ノハ;゚ー゚)「てかそれ今聞くか? お前どういう心境なんだよ」
私だってそう思う。だが違和感が口をついてしまったのだ。
『そういうものだから』で片付ければよかったなと、今になって思う。
.
359
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 18:02:48 ID:EB69w2Q20
ξ-⊿-)ξ「……別に。ちょっと気になっただけよ。
なんか違和感あったから聞いただけ。余裕の表れなのだわ」
ノパ⊿゚)「へっ、大して強くねぇのに吠えやがるぜ」
ξ゚⊿゚)ξ …
ξ;゚⊿゚)ξ「いや、強くないとかあんま言えなくない? お互いにだけど」
ミセリさん達の見立てのもと、私達はほぼ互角だろうと判断されていた。
そこから考えると、素直ヒートは四天王最弱である可能性がかなり高い。
仲間を増やせる追加ルールも、これがなければ試験が単調になると判断されたからだろう。
ξ゚⊿゚)ξ
要するにザコ2人なのだ。
急に自信なくなってきたな。
.
360
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 18:04:51 ID:EB69w2Q20
ノパ⊿゚)「――おうとも。私は弱いぜ。みんなに比べりゃ2枚は落ちるな」
しかし素直ヒートは快活に開き直り、私の小言を一蹴してみせた。
敵なのに、なぜだか無性に励まされてしまう。
ノパー゚)「だからその分、『弱い奴の役割』ってもんは弁えてるんだ。
ねーちゃん達もそれを認めてる。だから私に勝負を預けた。信頼関係だぜ」
自信たっぷりに断言し、満面の笑みを浮かべる素直ヒート。
雰囲気からしてアホの子かと思っていたが、その考え方は存外クレバーだった。
なんかもう精神的な気位で負けている気がする。がんばれ私、がんばるぞ!
――恐らく、私には無いチームワークが向こうにはあるのだ。
そしてその地盤作りを任された素直ヒート、彼女を低く見積るのは危険かもしれない。
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;-⊿-)ξ
思い上がりは私の大敵、それを努めて自覚する。
一発勝負は魔界の常。ここでやらねば魔の字がすたる。
.
361
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 18:06:41 ID:EB69w2Q20
ミセ*゚ー゚)リ「はーい、そろそろ始めますよ」
途端、ミセリさんが呑気な催促を入れてきた。
私はその場で身構えて、真紅の魔力を首に纏った。
ξ゚⊿゚)ξ(……うん、魔力も安定してくれてる)
ハインさんが消えて以降、赤マフラーの成形は妙に調子がよかった。
魔力の生成&コントロールも淀みが無くなった感じで、これまた好調だった。
その辺の描写が一行足らずで済んでるあたりすごい成長だ。過程は全カットだけども。
ノパ⊿゚)(……あの野郎、例の赤マフラーを一瞬で作りやがったな)
ノパ⊿゚)(ねーちゃんの時と同じ、事前情報とのギャップってヤツか。
みんなを助けに行くのは確定として、まずは探りを入れとくべきか)
.
362
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 18:11:18 ID:EB69w2Q20
ミセ*゚ー゚)リ「……時間はまだありますけど、待ちましょうか?」
険しい表情を浮かべるヒートにミセリさんが確認を取る。
だがその配慮は無用に終わった。
彼女は途端に調子を戻し、鋭い視線で私に敵意を向けてきた。
ノハ#゚⊿゚)「――いつでもどうぞ、だ!」
腰をかがめ、両手を広げてぐっと構える素直ヒート。
どうやら彼女は真正面から私とやりあうらしい。
まずは逃げ出し仲間を助ける、それが無難だと分かっているだろうに。
ξ゚⊿゚)ξ(敵ながら見上げた根性。場数の違いなのかしら)
彼女の威風を眺めていると、今までない高揚感が湧いてくる。
雑念が晴れていき、どこか懐かしさすら感じるワクワクで頬が緩む。
子供っぽいかもしれないが、私は今、彼女との戦いをとても楽しみにしていた。
ξ゚⊿゚)ξ …?
でも、私はここまで好戦的だっただろうか?
まぁ私だって戦いには慣れてきたしな。大体そういうものなんだろう。
.
363
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 18:12:49 ID:EB69w2Q20
_
( ゚∀゚)o彡゜「うおお頑張れツンちゃん!! ぶっとばせ!!」
ミセ*゚ー゚)リ「──双方準備よし! 合図で試験を始めます!」
ミセ*゚ー゚)リ「3、2、1……!」
ξ#゚⊿゚)ξ(今日は私が追う側だ、絶対に目を離すな――!)
ミセリさんのカウントがゼロに迫る。
私は咄嗟に地面を踏みしめ、完璧なタイミングで前に飛び出した。
.
364
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 18:15:20 ID:EB69w2Q20
#1
>>2-65
#2
>>74-117
#3
>>122-160
#4
>>169-212
#5
>>231-266
>>271-289
#6
>>294-324
#7
>>330-363
ちょっと進捗が掛かり気味なので次の投下は8月頃にします(うまだっち)
年内に12話目くらいまでは投下したいNE…(^ω^)
365
:
名無しさん
:2021/04/25(日) 08:37:28 ID:dze8U3/s0
乙乙乙
366
:
名無しさん
:2021/04/25(日) 08:53:47 ID:EcmN9UG.0
乙!今回も面白い
367
:
名無しさん
:2021/05/01(土) 22:08:44 ID:qktqfzc20
一気読みした、面白い
八月が楽しみ
368
:
名無しさん
:2021/05/03(月) 01:40:16 ID:82B4uvrw0
乙!素直四天王のキャラ好きだ
369
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/05/26(水) 17:12:51 ID:g2SMlm3o0
進捗です
8話目が書けました
9話目は10レスくらい書けています
訂正です
>>246
>>307
>>340
の話数表記が#05になっちゃっていますが完全に手違いです
今回のは「ラザロと畜群は一括りの話なんだよ〜」的な解釈でゴリ押せそうなのでそうします('A`)
ミスはなるべく自供するので怪しいのがあったら教えてNE…(^ω^)
370
:
名無しさん
:2021/05/28(金) 08:33:13 ID:YTmqm.qg0
やったー!
371
:
名無しさん
:2021/08/01(日) 20:39:57 ID:ht6TpCT20
≪1≫
〜特訓場〜
川 ゚ -゚)「……ふむ」
遠くの方から聞こえてくる轟音。地べたに伝わる振動の数々。
素直クールはそれらを吟味し、素直ヒートの戦況を事細かに思い描いていた。
――手数、威力は共に五分。
これはしばらく助けは来ないな、と彼女は落ち着いて一考した。
lw´‐ _‐ノv「ごめん、待った?」
川 ゚ -゚) !?
lw´‐ _‐ノv「ううん、今来たとこ」(萌え声)
と、一息ついた途端に現れる素直シュール。
早々に予想を裏切られたクールだったが、その内心にさしたる驚きはないようだった。
川;゚ -゚)「……そうだよな、お前だったら1人でも抜け出せるか」
lw´‐ _‐ノv「まぁね。拘束用の縄が普通ので助かったよ」(萌え声)
そう言いながら片膝をつき、彼女は見せびらかすように両手をひっくり返した。
見るべき部分はその指先――研削用の仕込みが施された十の爪。
束ねて使えば金属にも通用する使い切りの保険。縄を切るくらいなら造作もなかった。
lw´‐ _‐ノv「とりあえず縄切っちゃうから動かないでね」ザリザリ
川 ゚ -゚)「すまぬ」
lw´‐ _‐ノv「おかげでネイルがめちゃくちゃなのよ」ザリザリ
シュールは縄を擦り切って、素直クールを娑婆に解き放った。
.
372
:
名無しさん
:2021/08/01(日) 20:44:02 ID:ht6TpCT20
川 ゚ -゚)「……これでこっちは3人だ。勝つだけだったらこれでいけるな」
シュールのおかげで自由になれた素直クール。
すらりとその場に立ち上がり、凝り固まった体をぐっと伸ばす。
川 ゚ -゚)「とはいえ、剣士としては刃物のひとつでも欲しいところなんだが……」
lw´‐ _‐ノv「あ、私は一応装備あるよ。縄を適当に編み直しただけだけど」
クールの懸念を先回りするように語るシュール。
彼女は上の制服をめくって見せ、すでに体に巻き付けておいた即席の縄鎧をアピールした。
川;゚ -゚)「うわぁ、手が早い」
lw´‐ _‐ノv「素手ゴロ多そうなんで防御重点よ。姉さんもいる?」
川;゚ -゚)「……いや、お前はお前で装備を整えてくれ。そうしてくれた方が心強い。
今回私は出番少なそうだしな。このままキュートを探しに行くよ」
o川*゚ー゚)o「私なら居るけど」
lw´‐ _‐ノv「居ますが」
川 ゚ -゚)
o川*゚ー゚)o「いや普通に居ますけど」
川 ゚ -゚)「えっ?」
素直キュートの呆気ない登場。またしても出鼻を挫かれたクール。
妹達の頼もしさを実感すると同時に、彼女は長女としての威厳に危機感を覚えた。
lw´‐ _‐ノv「えー早いね。どったん?」
o川*゚ー゚)o「関節外したり内蔵動かしたり。縄は噛みちぎってみた」
lw´‐ _‐ノv「全部物騒でワロタ」
川;゚ -゚)「私そんなの教えてない……」
lw´‐ _‐ノv「末妹の成長速度には参ったな」
.
373
:
名無しさん
:2021/08/01(日) 20:47:19 ID:ht6TpCT20
o川*゚ー゚)o「んでこれ武器ね、日本刀」スッ
川 ゚ -゚)「えっ」
o川*゚ー゚)o「普通に落ちてたから拾っといたよ」
川 ゚ -゚)
o川*゚-゚)o「……いらなかった?」
lw´‐ _‐ノv「違うよキュート、今回姉さんは参謀的なムーブをやりたかったんだよ。
でも全部こっちで解決しちゃったからできないんだよ。悲しいね」
o川;*゚ー゚)o「えーなにそのダルいやつ」
川;゚ -゚)「いいだろ別に! キュートありがとな!」
複雑な長女心は置いといて、素直クールはしかと刀を受け取った。
まずは鞘から抜いて刀身を仰ぎ、武器としての質を吟味し始める。
o川*゚ー゚)o「それほんとに普通に落ちてたんだよね。なんか支給品ぽくない?」
川 ゚ -゚)「……ああ、魔物を斬るには心許ないがナマクラでもない。
無いよりは断然マシだが、この刀、少し妙だな……」
怪訝そうに呟き、目を細める。
浅い目利きでは製作者の影が見えなかったのか、彼女は殊更丁寧に刃を読んだ。
.
374
:
名無しさん
:2021/08/01(日) 20:52:34 ID:fSmKEoZA0
おいおい来てるよおいおいおい
375
:
名無しさん
:2021/08/01(日) 20:53:53 ID:ht6TpCT20
川;゚ -゚)「……やっぱり手入れが巧妙すぎる。この刀、完全に人間業じゃないか」
o川*゚ー゚)o「人間業ならよくない? ダメなの?」
川;゚ -゚)「いや、手に馴染むって意味ではむしろありがたい。
でも絶対に地上の作りじゃないんだよ。なのにやたらと人間臭いのが引っ掛かる……」
lw´‐ _‐ノv「だったら魔界に居るんだよ。人間、しかも刀匠の」
川;゚ -゚)「うーん、そんな話は聞いた事もないがな……」
結局それらしい結論は思い浮かばず、素直クールは疑問を抱えたまま刀を納めた。
もしこれが新キャラ登場の布石だった場合、今後数十話は登場しなさそうだった。
川 ゚ -゚)「まぁそろそろ行ってみるか。ヒートの居場所は大体分かってるしな」
o川;*゚ー゚)o「えーもう疲れてるんだけど。それ行かなきゃダメ?」
川 ゚ -゚)「いや別に? 呼べる範囲に居てくれるなら休んでていいぞ。
私もすぐに加勢するつもりはないしな」
lw´‐ _‐ノv「……それマジで言ってる? ヒートだけじゃ勝ちきれなくない?」
川 ゚ -゚)「分かってはいるが、最初に一騎打ちって言った手前すぐに囲んで殴るのも可哀想だろ。
こっちも体力温存したいし、ヒートもやる気みたいだし、一旦これで様子を見てみる」
そう言いながら鞘を携え、クールは戦いの轟音に向かって一歩踏み出した。
川 ゚ -゚)「という訳で、ヒートには悪いがギリギリまで1人でやってもらう。
ヤバくなったら当然助ける。異論があるなら早めに言ってくれ」
o川*゚ー゚)o「すごい楽そうだしそれで」
lw´‐ _‐ノv「……ヤバい判定やらせてくれるなら」
素直四天王は足並みを揃え、行動を開始した。
.
376
:
名無しさん
:2021/08/01(日) 20:55:59 ID:ht6TpCT20
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
――武器、という概念にはそれ自体に威力がある。
たとえその実態が玩具や嘘の類でも、『武器として使う』と想像させた時点で効果は絶大だ。
それが生身相手なら殊更顕著に、相手の理性を強制的に引き出す道具として大きな意味を持つ。
だから武器には素手で挑まない。備えがあっても基本は逃亡、コスパを考えれば当然の判断となる。
ξ゚⊿゚)ξ
ここで前回までのツンちゃんを振り返ってみよう。
各話における戦闘を思い返すと、ツンちゃんの相手は誰もが武器を携えていた。
そこに加えて激化薬というイレギュラーまで存在する始末。
人と魔物の性能差はあれど、素手で戦うツンちゃんにはつらく厳しい環境だったと言わざるをえない。
長所は潰され致命的な短所を伸ばされる不利な展開。対策なしでは負けて当然であった。
.
377
:
名無しさん
:2021/08/01(日) 20:57:15 ID:ht6TpCT20
優しさとか自虐心とか、なまじ人間的な理性を持っているのも悪い方に働いてきた。
相手の武器によってそれを引き出されたツンはまさに壊滅的。
魔物のレベルでも人間のレベルでも戦えない、ひたすら中途半端な金髪ドリル女に落ちぶれてしまう。
そしてなにより、人の理性など魔物にとってはノイズでしかないのだ。
人の理性に魔物の素養――その相性は事実最悪だった。
ξ゚⊿゚)ξ「すみません、そふとうえあが動かないのですが」
( ´∀`)「あーこれwin用だね。マックじゃ動かないよー」
ξ゚⊿゚)ξ「win用? 私はwinnerですが…」
( ´∀`)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「モス行ったら動きますか?」
これくらい最悪だった。
.
378
:
名無しさん
:2021/08/01(日) 21:00:04 ID:ht6TpCT20
彼女は魔王の娘であり、その行く先は間違いなく覇道に続いている。
それがまさか人間用スペックの演算装置で動いていたとは誰も考えない。
とどめの不運はこの状態でも多少の成長が見て取れた事。
確かな努力と決してゼロではない成長。周囲がそれらを多分に認め、本人のやる気を尊重した事。
――信頼を寄せ合うからこそ見落とされる齟齬の数々。
誰かがそれを壊さねば、魔王城ツンの成長は早々に頭打ちになっていただろう。
ハインリッヒ高岡、盛岡デミタス、あるいは顔すら持たない第三者。
誰でもいい。魔王城ツンという人物を前進させるには何らかの毒が必要だったのだ。
極端な話、卵の殻を破るだけなら床に叩きつけちゃった方が早い。
雛鳥だったらそれで死ぬかもしれないが、魔物だったら多分大丈夫だ。
ハンプティ・ダンプティと出るかイースターエッグと出るか、寓意表現の孵化は目前に迫っていた。
.
379
:
名無しさん
:2021/08/01(日) 21:01:48 ID:ht6TpCT20
≪2≫
勝手知ったる荒野の特訓場。
近距離での戦闘に終始しているため、彼女達の戦いは極めて小規模に展開されていた。
ξ#゚⊿゚)ξ「――ッ!」
戦闘開始の初動として、ツンが真っ先に接近を選んだのは正解であった。
相手の準備が整う前に、武器を抜かれる前にまずは動く。
この反省は内藤ホライゾンとの一合で得られたものだった。
ノパ⊿゚)(……現状単なる打撃戦。あのマフラーも攻撃には使ってこない)
ノパ⊿゚)(威力はともかく動きはシンプル。応用の幅は狭いし、この感じだとアドリブにも弱そうだな。
これで全力ならいいが、……まさか手加減されてんのか?)
逃げる素振りでツンを誘い、防戦ながら情報収集をこなす素直ヒート。
対魔物における鉄則はそもそも攻撃を受けないこと。
その点で言えば、彼女は現在パーフェクトゲームを進行中だった。
ξ#゚⊿゚)ξ「だァらッッッ!!」
もう何度目かも分からない必殺の拳撃が目前に迫り、空を切る。
ヒートの回避は完璧だった。両手はひたすら捌きに徹し、必要分だけ後ろに引き下がる。
しかし、たとえ捌くだけでもツンの打撃は驚異的だった。
直撃せずとも余波が響き、通過列車が鼻先を掠めるような迫力に体を引っ張られてしまう。
ノハ;゚⊿゚)「ちッ――!」
ヒートは即座に身を翻し、数度の跳躍で間合いを作り直した。
流れをリセットし、ダメージの蓄積を確認し、ペース配分を考え直す。
細かくクールタイムを確保して無難に立ち回る。彼女の動きは徹底的に強かだった。
.
380
:
名無しさん
:2021/08/01(日) 21:08:58 ID:ht6TpCT20
ノハ;゚⊿゚)(避けても伝わるこの感じ、素の状態での直撃は流石にキツそうだな)
ノハ;゚⊿゚)(個人的には倒せそうなんけど、……仕方ねえ。ここらが引き際と見たぜ)
試験に際し、素直四天王側にだけ追加された特別ルール。
『素直ヒートは捕まっている3人を救出し、戦力に加えてもよい』。
このルールの存在からして素直ヒートの勝ち筋はじつに明瞭。
逃げて助けて4人でボコる。単純ゆえに堅実で、そして誰でも思いつける強力な勝ち筋だ。
しかし、その一方で『読まれやすい』という当然の欠点がある。
たとえそうする事がベストであっても、既に読み切られている行動には多くのリスクが伴ってくる。
魔物の攻撃は基本的には一撃必殺。魔力からくる初見殺しも数多く、低リスクでも軽視は危うい。
即死攻撃を避け続けるしかない魔物戦、こちらの行動を読まれる事は即死に直結する。
だからヒートも序盤は逃げず、魔王城ツンの実力を見ることにコストを割いてきた。
彼女もプロの端くれである。自分らしからぬ判断とはいえ、そこにはしっかりと打算が組み込まれていた。
ノパ⊿゚)(最初の仕事は済ませた。向こうの基礎能力も大体測れた。
こっちの居場所もねーちゃん達には伝わってるはずだ。こんだけうるさく戦ってるしな)
ノパ⊿゚)(――みんなだったら私を待たない。転がってでも近くに来てくれる。
それを見つけて一旦離脱、数を増やせりゃ上々なんだが……)
ξ#゚⊿゚)ξ
ノパ⊿゚)(……難しいのは背を向けるタイミングか。決め手があるならそこで使われる。
このまま膠着状態になっても体力負けしちまうし、どっかでアドリブ決めねえとな……)
ツンを見据えて緩やかに拳を上げるヒート。
彼女の武器は徒手空拳。ツンとは奇しくも同じ構えであり、ゆえに彼女には油断がなかった。
私達はどこか似ている。ヒートは心の片隅で、ツンに対してそんな思いを抱き始めていた。
.
381
:
名無しさん
:2021/08/01(日) 21:11:23 ID:ht6TpCT20
ミセ*゚ー゚)リ(……さて、お嬢様はどう出るのか)
主戦場から遠く離れた岩場の頂。
ミセリはそこから目を凝らし、ツンと素直四天王の動向をそれぞれ観察していた。
ミセ*゚ー゚)リ(素直四天王はとっくに自由。集合されたらそれだけで終わる。
あの子達の拘束を甘くしたつもりはないけど、お嬢様には酷になった)
ミセ*゚ー゚)リ(正直かなりマズい。4対1が確定してるのが何よりも厳しい。
向こうは装備が貧弱だけど、それを加味しても相当不利な気が……)
ミセ*゚ー゚)リ(……お嬢様ってパワーは無いし動きは遅いし、技術も知識も未熟だし)※ミセリ基準
ミセ;*゚ー゚)リ(勝つだけだったら簡単なのに絶対にそれをやらないし。
持ってる御方は発想が贅沢で困るわ。お嬢様、ここからどうするんだろ……)
.
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