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ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです
253
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 21:57:44 ID:GWXSQBmE0
≡ξ;゚⊿゚)ξ「うおおおやるぞ特訓をば!!」ダダダダダッ
ヘ(;'∀`)ノ「いいぞツン!! 頑張れうおおおおお!!」
大の大人が荒ぶるや否や、私とドクオは大声を出して誤魔化しにかかった。
ハインさんがキレるのは流石にヤバい。怖いので止めざるを得ない。
私は急いで立ち上がり、全速力で庭に飛び出していった。
ξ;゚⊿゚)ξ「やりましょ特訓!! 仕上げなんだか知らないけども!!」ザッ
庭の半ばで勢いよく振り返り、ハインさんへと叫ぶ私。
頼む、私の金髪キューティクルに免じてくれ……!
从 ゚∀从「……お前の用事、相手は俺だな?」
(´・_ゝ・`)「違ったりして。とにかく済ませてこいってば」
('A`)
(;'∀`)b(……なんかギリ収まったっぽい!!)
ξ;゚⊿゚)ξ(よし、事なかれ!!)
ドクオのハンドサインで無事を確認、ひとまず私も胸を撫で下ろす。
なんでこう喧嘩っ早いんだよ男衆。いっそ一回殴り合った方が友情芽生えるんだろうか。
.
254
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:07:45 ID:GWXSQBmE0
――ハインさんはすぐに落ち着きを取り戻し、私の方に来てくれた。
それでも感情を不完全燃焼させるのはしんどい。ハインさんの嘆息も無理からぬものだった。
从;-∀从「……ツンちゃん、俺あいつ嫌いっぽいわ」
ξ゚⊿゚)ξ(どちらかと言えば私も嫌いだ)
どちらかと言えば私も嫌いだ。でも嫌いじゃない時もあるので心は難しい。
人付き合いとはかくも困難。盛岡はそれを分かって壊しに来るのでたちが悪い。
ハインさんの素を見れたのは収穫だが、やっぱあいつ一度くらい殴られていいと思う。
ξ゚⊿゚)ξ(しかし決して言葉にはできぬ)
ξ゚⊿゚)ξ(負債1000万円の、この身の上では……)
盛岡に対する負い目については前回のオチから察してほしい。
あの財布を思い出すと一瞬で心が枯れていくのだ。ほんともう察してほしい。
1000万円分のぬか喜びを失くした感覚、あまりにも直視に耐え難い。
从 ゚∀从「……まぁ、仕上げっても単純な話よ。
今のツンちゃんに足りないのは成長の実感だけだしな」
調子を戻したハインさんが相変わらずの軽口で話を戻す。
私も同じく我に返り、彼の話に耳を傾けた。
从 ゚∀从「この一週間やってきた特訓だが、ツンちゃん的にはどうだったよ」
ξ゚⊿゚)ξ「回想シーン行きます?」
从;゚∀从「いや一言で済むだろ。というか、俺の特訓自体そんな疲れなかったろ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……そりゃまあ、死ぬほどって感じでは」
从 ゚∀从「そう。だから手応えが足りてねえと思ってな」
ミセリさんのせいで感覚が狂っているかもしれないが、ハインさんとの特訓は確かに退屈気味だった。
激しい運動はほぼ無く、むしろ基本的運動の復習に終始していた気がする。
もちろん負荷は魔物基準だったとは思うが、内容自体は初代Wii Fitくらいシンプルだったような……。
.
255
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:11:31 ID:GWXSQBmE0
从 ゚∀从「仕上げってのは要するにそこ、手応えのチェックなのよ。
んだから大した話でもねえ。自信をつけて、それで終わりだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「えーそれ実績増やす為に卒検甘くするヤツじゃん」
Σ从;゚∀从「いやちげェよ! そういう卑屈さを直したいからやるんだよ!」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「卑屈!? この私が!?」
从;-∀从「……あのなぁ、あえて言うけど俺って強いの。強かったの。
今でこそ衰えたが、そんでも俺の特訓はキツい方なんだぞ?」
ξ;´⊿`)ξ「でもそれ人間基準……」
从;゚∀从σ「だからそこだよ!! その自分を認めねえ性格をどうにかすんの!!」
大仰な身振りを交えながら訴えかけてくるハインさん。
その形相に気圧されたのか、私も流れで話を聞き入れてしまった。
魔王城ツン、流されやすい女なのかもしれない。
.
256
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:15:02 ID:GWXSQBmE0
ξ;゚⊿゚)ξ「分かったから、とにかくやればいいのよね?
それで結局なにするの? 筆記?」
从 ゚∀从「ああ、そいつは単純だよ」
言いながら、ハインさんは半身を下げて軽く身構えた。
从 ゚∀从「雑談しながら戦うだけ。簡単だろ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……そういう特訓してないのに?」
疑問を覚えて首を傾げると、その瞬間、私の耳元を突風が吹き抜けた。
从 ゚∀从「――そうだ」
そう呟いたハインさんは、既に私の懐に踏み込んでいた。
なんなら、既に初撃すら済ませていた。
ξ;゚⊿゚)ξ …!
先の突風はハインさんの拳が生んだもので、その一撃は私の右耳を掠めるように空を貫いていた。
首を傾げていなければ当たっていたし、そもそもこの初撃は――
ξ;゚⊿゚)ξ(今の、素直クールにやられたのと同じ……!)
進研ゼミめいた気付きを得て、私は息を呑んだ。
.
257
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:17:24 ID:GWXSQBmE0
从 ゚∀从「流石に分かるか。殺されかけた手口だもんなッ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっ、急に始めなッ――!」
戸惑い慌てる魔王城ツン(ジャージ姿)。
しかし、ハインさんは私の制止を聞き入れなかった。
从 ゚∀从「じゃあ始め! はいスタートな!」ガシッ
ハインさんは有無を言わさずジャージの襟を掴み、片腕だけで呆気なく私を持ち上げた。
ξ;゚⊿゚)ξ「ウワァー乱雑な幕開け!! 流石にちょっと待って!!」ジタバタ
从 ゚∀从「ツンちゃん軽いな! もっと食べた方がいいぜ!」
そう言いながら勢いづけて、ハインさんは全力で私を投げ飛ばした。
――乱暴だがダメージを生むような投げではない。
速度と高さが十分にあり、着地を考える余裕があった。
もつれた体を空中で立て直し、私は玉砂利を蹴散らしながら受け身を取った。
減速するにつれて四足の姿勢に推移、体幹を安定させて完全に勢いを殺しきる。
ξ;゚⊿゚)ξ「……ふぅ」
そうして生まれた間合いはおよそ、…たぶん50メートルくらい。
あんまり遠いと間合い分かんないな。すごい投げられたとだけ伝えたい。
.
258
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:20:12 ID:GWXSQBmE0
从 ゚∀从「今の初動、一週間前なら大慌てで受けてたろ」
从 ゚∀从「そんで理性が追いついたらこうだ。
戦うべきか否か、しかも人間相手に」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
从 ゚∀从「この悪癖、今ならマシになってると思うぜ」
言葉の後、2度の手招き。
かかって来いという意味の、常套句に等しい煽りを見せつけられる。
――心臓が高鳴る。しかし、一旦落ち着きたい。
私は長い息を吐きながらゆるりと立ち上がり、時間稼ぎの話題を彼に投げかけた。
ξ;゚⊿゚)ξ「でも、そんなアドバイス一回だって聞いてないのだわ」
从 ゚∀从「そりゃ言ってもゴネるだろ? 効率悪いし、体に覚えさせた」
ξ;゚⊿゚)ξ !?
从 ゚∀从「慣れだよ慣れ。人間相手に戦い慣れる、これ一番大事」
知らない間に体を開発、しかもそれを実戦で分からせようとは卑猥な魂胆だ。
とはいえ彼の言い分には思い当たる節がいくつもあった。
あの特訓の日々(全カット)が本当に有意義だったのなら、私の予感は的中しているに違いない。
.
259
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:22:03 ID:GWXSQBmE0
この特訓で得られたものは知識ばかり。
肉体的、魔力的なパワーアップはほぼ皆無だが、でなければ分からなかった事も1つだけある。
人間には、およそ魔界には存在しない『弱者の利』のようなものが存在する。
弱者が強者を打倒する――その戦術を、彼らは当然の知識として弁えているのだ。
人間と違い、魔物の個体差には天と地ほどのバラつきがある。
弱肉強食は当然のこと。自然淘汰はより強烈で、強者を倒そうなんて発想は即死を招くだけ。
生き残るならまず逃亡。真の強者を前にした時、私達には『戦う』なんて選択はありえない。
――しかし人間は違う。
生物としての個体差が小さいからこそ、彼らには『弱者が強者を倒す』という展開が起こりうる。
私達にはないそんな貴重な経験を積み重ね、ただひたすらに継承してきた人類史。
確かに彼らは脆弱だが、しかし単なる弱者でもない。
2000年余年の時を経て、彼らはもはや強者を倒し慣れているのだ。
.
260
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:34:01 ID:GWXSQBmE0
ハインさんとの特訓で、私は人間にとっての基本を教わってきた。
その云々が何らかの結実を果たしていたとすれば、それは恐らく『違い』の再確認だ。
特に『弱者の利』。あれを知れたのは最大の収穫と言っていい。
弱者のままで強者を倒す、ただそれだけの為に作られた執念の集合知。
魔界であれば決して実を結ばない『弱さとの共存』という発想。
私に欠けていた知識、技術、心得の数々――。
ξ;゚⊿゚)ξ「……何がどう変わったんだか知らないけど」
人間という生物を私と同じ弱者、ひいては格下だと思っていた自分が嘆かわしい。
彼らと私達とでは基準が違う。常識が違う。世界観が違う。
その程度の前提さえ失念していた私が問題外と扱われるのも、今思えば当然の事だったのだろう。
ξ#゚⊿゚)ξ「そこまで言うなら、加減はしなくていいのよね……!」ザッ
从 ゚∀从「余裕があるならしてもいいぜ。自信つけるのが目的だしな」
ξ#゚⊿゚)ξ「……じゃあ、少し試してみるのだわ」
私は拳を固く握り、弱者の歴史の足を踏み入れた。
.
261
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:37:52 ID:GWXSQBmE0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
从 ゚∀从「――どうだ、体が軽いだろ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ッ!」
手捌きと同時に体を捻り、ハインさんの蹴り上げを受け流す。
拳が来たなら寸で避け、組み技ならば即離脱。
そして反撃――とまではいかないが、体の軽さは確かにヤバかった。
从 ゚∀从「俺たち人間は、五体の運動を型に嵌めて考える!」
从 ゚∀从「だが大抵の魔物には型が無い! 必要が無い!
基本誰もが唯一無二、先手必勝かつ初見殺しが基本だからな!」
从 ゚∀从「この辺の違い、ミセリから教わらなかったか!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「教えてもらってないです!! 1回も!!」
从;゚∀从「それはそれでダメだろ!! あいつバカなのか!?」
私は目をそらした。
.
262
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:44:04 ID:GWXSQBmE0
从;゚∀从「……とにかくパターン覚えるのが大事ってワケよ! 人間は!
セオリーってもんを作って、その上で戦いを成立させてくんだわ!」
从 ゚∀从「体のキレが良くなってんのも、体がそれを覚えたからだ!
ミセリも同じ事をしたかったんだろうが、教え上手は俺の方だったな!」
ξ;゚⊿゚)ξ !
そう言い切った直後、ハインさんの手元から石つぶてが弾き出された。
地面の玉砂利を使われたのだ。私はそれに目を奪われ、一瞬ハインさんの存在を忘れてしまった。
从 ゚∀从「――だからまだ、こういう動きに不意を突かれる」
石礫を避け、ハインさんを思い出したその時。
私達の間には大きく距離が空いていて、彼はどこぞから持ち出してきた刀を腰に据えていた。
攻撃ではない防御の構え。私は、あの構えに見覚えがあった。
ξ;゚⊿゚)ξ(ハインさん、まさかまた真似を……!?)
あれは素直クールが最後に見せた抜刀術だ。
たしか名前は糸桜。あの剣撃は目で追えなかったし、手も足も出なかった。
ξ;゚⊿゚)ξ(くっ、あれはトラウマなのだわ……!)
腰だめに構えるハインさんからは素直クールほどの殺気は感じられない。
私が成長したのか手を抜かれているのか、或いは全てが勘違いか。
いずれせよ、今の私は精神的な変化を問われているはずだ。
特訓前後で変わった部分といえばそれくらいだし、でなきゃ根本的に方針を間違えていた事になる。
――ハインさんの性格からして方針が間違っていた可能性は低い。
だったら私は、今ある手札であれを打破できるという事だ。
現に、やってみせろという気合いがビシバシ伝わってくる。
ξ;゚⊿゚)ξ(……手札はある、解き方は自分で考えろということね)
ξ;゚⊿゚)ξ(だったら私がすべき事はひとつ、考えること……!)
.
263
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:48:19 ID:GWXSQBmE0
从 ゚∀从(……ビビりから来る気質とはいえ、つくづく察しはいいな。
間違いなく長所だ。魔界じゃ当然のスキルだが、こっちじゃ簡単には身につかないからな)
从 ゚∀从(敵に合わせて律儀に飛び込んでこねえのも良しだ。
型に嵌めた分だけ余裕が生まれてる。そのうち自分のペースも掴めるだろう)
从 ゚∀从(ツンちゃん意外と意固地というか、自分への差別意識がかなり強いんだよな。
その辺かなり障害になると思ってたんだが、暗示が噛み合ってきたのか?)
ξ;゚⊿゚)ξ(……あっ、いっそ内藤くんみたいに戦闘放棄してみる?
カウンター技なんか放置で安全じゃん、みたいな……)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(でもあれマジでムカつくのよね。絶対やりたくないのだわ)
大きく息を吐き、ゆっくりと魔力を練り上げる。
時間を使い、余裕をもって態勢を整えていく。
赤マフラーも程なく完成。私の体は真紅を纏い、今までにない充足を覚える。
从 ゚∀从(こいつは言わば過去問からの文章問題。
闇雲に書き殴っても意味ねえし、同情で△くれる敵はそう多くねえ)
从 ゚∀从(ここで必要なのは『問題を読み解く』っていう人間側のスキルだ。
魔物パワーでゴリ押しできねえ以上、ツンちゃんにはどうしてもコレが要る)
.
264
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:53:23 ID:GWXSQBmE0
从 ゚∀从(……大器晩成を許さない魔界という環境が、魔王城ツンの素養を腐らせてきた。
その毒気を抜く為だったら荒療治でも大歓迎だ。手段は選ばねえ)
从 ゚∀从(一発勝負の魔界と違って、こっちはトライアンドエラーが前提なんだ。
慣れないとしても慣れてもらう。生き残るにはそれしかない)
从 ゚∀从(とにかく『やって覚えろ』だ。間違えていい、添削は俺がやる。
人の歴史もそこそこ長い。まずは古臭えとこから始めようや)
ハインさんの覇気が際立ち、私を急かすように風を起こす。
なんかこう、毎度思うが生身の人間強くないか?
出てくる相手がみんな素で私より強いの、本当にやめてほしい。
ξ;゚ー゚)ξ「……自信、失くすわね」
わざとらしく自嘲を呟き、今の自分にどこか解放感を覚える。
心に風が通るようだ。失くした分だけ身軽になった、その実感を強く自覚する。
从 ゚∀从「……楽しいか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「タイムカプセルを開ける日を想像したら、ついね」
从 ゚∀从「なら急ぎな。俺はブーンみたいに甘かねえぞ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(あいつが私に甘かった事なくない?)
.
265
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:54:45 ID:GWXSQBmE0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
从 ゚∀从「あー終わった終わった」
ξ;x⊿x)ξ ばたんきゅ〜
かくして1時間ほどが経過。
またも全カットされた云々の中で、私は結局ボコボコにされた。
前時代的な敗北演出をしつつ地面に横たわる私、……なんかこれデジャブ感あるわね。
( ^ω^)「お爺ちゃん! すごかったお!」
从 ゚∀从「おおブーン、もう戻ってたのか」
( ^ω^)「退屈な見張りだったお」
仕上げという名の格付けが済んだ頃、縁側組(盛岡&ドクオ)には内藤くんの姿が加わっていた。
彼のすごかったという一言には地の文数十行分の中身が感じられた。
それは筆舌に尽くしがたく、しかしすごいの一言で形容できる日本語の不思議だった。
从 ゚∀从「そんじゃあ今日はこれで終わりな! 悪くない仕上がりだったぜ。
俺が見たかったもんは見れたし、仮免合格ってトコかな」
ξ;´⊿`)ξ「ウス…」
刀の峰で肩を叩きつつ、ハインさんは余裕ぶって私を見下ろした。
ちくしょう何がイケオジだ。どいつもこいつも物理ゴリラなんだよ。
(; 'A`)>「やっぱボコられっか〜」
つ⑩ スッ
(´・_ゝ・`)「だから言ったろ成立しないって。金は貰うけども」
あっちもあっちで不敬極まる賭け事してるし本当に腹立たしい。あとで絶対に分け前を貰う。
.
266
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 22:57:04 ID:GWXSQBmE0
('A`)「そんじゃもう行こうぜ。帰って夕飯だ」
私の分のカバンも持って、解散ムードでのそりと動き始めるドクオ。
帰りを急かす彼に引っ張られ、渋々私も気持ちを切り替える。
ξ;´⊿`)ξ「待って、汗拭いてから帰る……着替えも……」
('A`)「そんなん帰ってからでいいだろ」
やっぱりドクオは無神経だなぁと思った。
私は普通に着替えなどを済ませた。
ξ゚⊿゚)ξ「そんじゃ帰るっす」
从 ゚∀从「おう。ちゃんと休むんだぞ。ブーンもついてってやれ」
( ^ω^)「分かっている」
('A`)「別について来なくていいぞ」
( ^ω^)「仕事だと割り切れ。いい加減に慣れろ」
从 ゚∀从「試験の日取りもそろそろだよな?
決まったらすぐに教えてくれ。最悪の悪知恵、用意してっからよ」
ξ゚⊿゚)ξ「分かったのだわ!」
私は家に帰った。
メシ食って寝た。
.
267
:
名無しさん
:2021/03/28(日) 23:01:43 ID:GWXSQBmE0
眠いので残りは明日にします(^ω^)
268
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 07:45:33 ID:mM927Tdk0
乙
269
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 08:08:12 ID:ax3S0raQ0
今更だけどここsage進行だったか
ほんのり寂しい
270
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:13:44 ID:VyF5mjO.0
乙!ツンちゃんアホじゃないからかちゃんと鍛えれば強くなるんだね
271
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:27:27 ID:Q55tYwuk0
≪3≫
ツンちゃんズが帰った後、ハインは特訓の片付けを気怠げにこなしていた。
引きずるように熊手を使い、しっちゃかめっちゃかに荒れた玉砂利の庭を歩き回る。
从 ゚∀从「……んで、人払いは済んだ訳だが」
从 ゚∀从「これでもまだ口を開かねえのか? 盛岡デミタス」
ざっと一面を均し終えて、ハインは満足気に庭を見渡した。
しかし視界は既に暗く、頼りない夕陽は今にも消えて無くなりそうだった。
从 ゚∀从「どうせだ、晩飯食ってけよ。モツ煮あるぞモツ煮」
(´・_ゝ・`)
盛岡は無言かつノーリアクションだった。
縁側に座ったまま、ハインをまじまじと眺める盛岡デミタス。
それに対するハインもまた、普段通りのまま熊手を持ち上げ、槍投げ選手のように大きく身構えた。
从 ゚∀从「分かった3秒以内に答えろ。でなきゃコレ投げるわ」
――呆気なく、3秒が経過する。
从 ゚∀从「いくぞ〜」
一瞬後、ハインの豪腕が風を切った。
その膂力を一身に受けた熊手は投擲と同時に先端が炸裂。
十分な殺傷能力を持つ槍そのものへと変貌し、盛岡を急襲した。
だが盛岡は微動だにしない。
動けたとしてコンマ数秒の世界、回避は既に不可能だった。
(´・_ゝ・`)「モツ煮はいいな。あとで食っとく」
なので避けず、盛岡は普通に返事をした。
槍は外れて屋敷の中へ。窓と障子と壁を数枚貫き、屋敷の奥で沈黙した。
.
272
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:34:38 ID:Q55tYwuk0
从 ゚∀从
从 ゚∀从「びっ、くり」
的中必至の投擲が理由もなく的を外した。
ハインは露骨に驚いて見せ、困った様子で腰に手を当てた。
从 ゚∀从「俺が外した……というか外させた感じか? あんま見ない能力だな」
(´・_ゝ・`)「『外された』なら可もなく不可もない。俺はそこまで有能じゃない」
(´・_ゝ・`)「俺としては、一目でそこまで察しちゃうお前にビックリだよ」
从 ゚∀从「これでも場数は踏んでるからな。お前みたいな輩も、たまに居る」
(´・_ゝ・`)「でもノーリアクションはダメだろ。もっと大袈裟じゃないと見栄えが」
从;゚∀从「ブッチギリで反応つまんねぇ奴に言われたくねえよ……」
ハインは盛岡の前に行き、特訓中にも使っていた刀を静かに抜いた。
鞘は投げ捨て、納める気はないと暗に示す。
从 ゚∀从「そもそもなんだが、お前は魔物じゃないよな?」
言いながら、彼は盛岡の胸に切っ先を突きつけた。
狙いは心臓。ハインの腕前をもってすれば、たった数センチの加速で骨身を貫ける。
从 ゚∀从
(´・_ゝ・`)
それでも2人は顔色を変えなかった。
平然と、何食わぬ顔で互いを見合っている。
.
273
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:36:00 ID:Q55tYwuk0
从 ゚∀从「なんで人間が魔王軍に居る。目的は?」
(´・_ゝ・`)「魔王城ツンの育成。それに尽きる」
从 ゚∀从「……詳細が気になるねぇ」
刀の切っ先が盛岡の上着に沈む。
スーツの布地が点に歪んで、盛岡の乳首に変な刺激が走った。
(´・_ゝ・`)「えっ?」
言葉を選ばず表現すると乳首責めである。
いかな盛岡も困惑を露わにし、刀とハインを数度見返していた。
.
274
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:41:22 ID:Q55tYwuk0
从 ゚∀从「俺だってツンちゃんには強くなってほしい。
だからこうして手を貸してる。お前に疎まれる覚えはねぇんだがな」
(´・_ゝ・`)「待ってこれ俺の乳首押してる」
从 ゚∀从「茶化すなって。こっちは真面目に聞いてんだぜ?」
(´・_ゝ・`)「じゃあ頼むから1センチだけずらしてくれ、気が散るんだよ。
つーかマジで心臓狙うなら乳首には行かねえだろ普通」
从 ゚∀从「だから適当に誤魔化すんじゃ……」チラッ
从;゚∀从「って、マジですげぇズレてんな」
(´・_ゝ・`)「頼むぜオイ」
心臓は胸の中央辺りにあるらしいぞ。
気付いたハインは切っ先の位置を直し、改めて口を開いた。
.
275
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:42:21 ID:Q55tYwuk0
从 ゚∀从「とにかくだ! お前は俺を怪しんでる、俺はそいつが気に入らない」
从 ゚∀从「お前の用事ってのは大体これだろ?
腹を割ろうぜ、いい加減によ」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「それはできないな」
盛岡は会話を打ち切り、
.
276
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:43:21 ID:Q55tYwuk0
─ ̄ ─_─ ̄ ─_ ─ ̄─_─  ̄─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─
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Loading Privilege - Block Buster Breaker
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277
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:44:20 ID:Q55tYwuk0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
――日は落ち、すっかり夜になっていた。
ハインを倒した盛岡は、以降1時間ほど泥棒紛いの行動に勤しんでいた。
彼の目当てはとある妖刀。結局それは母屋ではなく、離れの物置小屋に隠されていた。
(;´・_ゝ・`)「あーもう、やっと見つけた……」ポイッ
かくして物置小屋から出てきた盛岡。
彼はお目当ての刀を地面に投げ捨てると、埃にまみれたスーツを懸命にはたき始めた。
金持ちの家は無駄に広くて困る、と咳込みながら愚痴を思う。
( ω ) ザッ…
やがて、そんな油断しきった彼のもとへ太ましい影が近付いてきた。
それに気付くと、盛岡は気さくに手を上げて彼を歓迎した。
.
278
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:46:04 ID:Q55tYwuk0
( ^ω^)「……これか、お前が言っていたモノは」スッ
内藤ホライゾンが、捨てられた刀を拾って柄を持ち上げる。
そうして顔を出したのは、薄紫の夜光を宿した妖しい刀身。
彼は一目で刀を納め、心を鎮めるために大きく息を吐いた。
(´・_ゝ・`)「うん。そいつが 『妖刀・首断ち』 だ。
使い方にもよるんだが、かなり悪用できる」
(; ^ω^)「だろうな。一発で分かった」
たった一目で心中を蠱惑され、他人事のような好奇心に思考がぼやける。
確かにこれは妖刀と呼ぶべき代物だ。安易に使えば自我さえ危ういだろう。
内藤ホライゾンは強く瞑目し、妖刀の魔力を振り払うように頭を振った。
(´・_ゝ・`)「少し手に持っただけで効果ありか。すごいね魔王軍」
(; ^ω^)「……人間が扱うように作られていない。毒気が強すぎるぞ」
(´・_ゝ・`)「そりゃそうよ。ハイン自身これを扱いきれてたとは言えねえしな。
そんだけ強力かつ重要ってワケ。困った舞台装置だ」
.
279
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:48:53 ID:Q55tYwuk0
――妖刀首断ちは、かつてのハインが魔王軍の中ボスを殺して奪ったもの。
その切れ味は絶世の一言であり、本当にすごい。
しかし、妖刀たる所以は武器としての性能だけに留まらない。
魔界で制作されたこの刀には、毒性付与、呪術展開、精神操作という3つの能力が備わっているのだ。
こと『他者の心身を汚染する』という事にかけて、妖刀首断ちは本当に凄い性能を誇っていた。
すごくすごいので本当に大変な一品であり、ハインの切り札的なやつだった。
(´・_ゝ・`)「貸して」
( ^ω^)「ん」
つ╋─
スッ・・・
(´・_ゝ・`)
_ / ,⌒)
\三三三[G ´ ヽ
(_,ノ⌒ヽ_) (石)
↑
妖刀
_______
\ やぁぁー /
 ̄ ̄\| ̄ ̄
(´・_ゝ・`) ヽ ヽ ヽ
(⌒ 'ヽ\,
_(_,⌒)ヽ○○=|二二> Σ二フ
/_,(__) (石)
ボキッ
(図3:妖刀と石)
.
280
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:50:35 ID:Q55tYwuk0
(´・_ゝ・`)
( ^ω^)
( ^ω^)「本当にやっちゃったな」
(´・_ゝ・`)「やるよ。これすげぇ邪魔だもん」
――かくして妖刀は折れた。
その辺にあった(石)に叩きつけられ、真っ二つになった。
呆気なさすぎる最期だった。
かなしい。
( ^ω^)「……で、これをまた復元すればいいのか?」
(´・_ゝ・`)「そうよ。やっておしまい」
( ^ω^)「……」
言葉少なに確認を取るも、内藤ホライゾンは無言で盛岡を注視した。
彼の意思を再確認する為の沈黙は、たった数秒でも十分過ぎる意味を含んでいた。
.
281
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:53:35 ID:Q55tYwuk0
(´・_ゝ・`)「頼むって。そりゃ心細くなるのは分かるけどさ」
( ^ω^)「……そんな感傷じゃない。ただ単に、意味不明なんだ」
( ^ω^)「お前がここまでやる理由が、結局私には分からなかったからな」
つ゚
内々に割り切ったのか、内藤ホライゾンは激化薬を取り出して口に含んだ。
彼の激化能力――『復元』が、2人の間に一縷の光明を描き始める。
( ^ω^)「一応お前に救われた身だ。もう少し、手を貸してもよかったんだが」
不服そうに小声で付け足す。
デレ表現である。盛岡は少しだけ驚いた。
(´・_ゝ・`)「……ああそう」
(´・_ゝ・`)「ならいいじゃん。なに、止めてくれんの?」スッ
内藤ホライゾンを言葉でおちょくり、盛岡は目の前の光明に手を伸ばした。
触れると同時に弾ける光。その内側にあったのは、今しがた破壊したばかりの妖刀だった。
オリジナルの妖刀は邪魔でしかないが、刀の能力には用がある。
盛岡の思惑はすべて順調だった。
.
282
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 22:57:59 ID:Q55tYwuk0
(´・_ゝ・`)
(´^_ゝ^`)「アッハッハ」
それは完全に嘘の笑い。
コメディで使うSEの方が、もっとちゃんと笑う。
(´・_ゝ・`)「あーほんと不愉快だよな、不完全なものってさ」
_,
( ^ω^)「……急に何の話だ?」
(´・_ゝ・`)「ほらそうやって、俺の話が不完全だから眉をしかめる」
盛岡は揚げ足を見せつつ揚げ足を取った。
不毛なタップダンスに付き合う気もないので、内藤ホライゾンはスルーを決め込む。
(´・_ゝ・`)「そもそも人間は間違いや欠落に対する認知が鋭いんだろうな。過剰なまでにさ。
そう感じた瞬間に無意識で補完を行ってしまう。それが的外れな錯視でも」
( ^ω^)
(´・_ゝ・`)「ほらまた黙って聞き入れる。補完があるから意味が通る。間違ってても話は進む。
これってほんと凄いよな。無意識だし、角を立てないし、効果もバッチリだし」
( ^ω^)「待て、いきなり話を進めまくるな。
私はなにも分かってないだけだぞ。ゆっくり頼む」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「えっ、……俺の行動原理を聞きたいんじゃないの?」
(; ^ω^)(そこに着地する流れだったか……?)
遠回りが過ぎるが、何も言うまい。
内藤ホライゾンは諦めて口を閉ざし、盛岡に話を任せた。
.
283
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:00:45 ID:Q55tYwuk0
(´・_ゝ・`)「まーーーーーーーなんだ。アレよアレ」
(´・_ゝ・`)「俺らの相手は、そこら辺を突き詰めちゃった化け物なのよ。
だから、あれの相手をするには『不完全さ』が必要なんだ」
(´・_ゝ・`)「でも人間は『完全』を目指してしまう生き物だ。無理なのに。
まぁ言い方は色々あるけどさ、物事にゴールが欲しいのは誰だってそうだろ?」
(´・_ゝ・`)「そんなんだから厄介なのよ。
だって基本、人間ってのは向こうの味方なんだから」
( ^ω^) …
( ^ω^)「で、そのゴールとやら遠ざける為に、お前は不完全を装っているのか?」
(´・_ゝ・`)「いやお前、そりゃあ――……」
返事半ばで言葉を濁し、そこで、盛岡は長い沈黙を挟んだ。
(´・_ゝ・`)
分かりやすい行動がなくとも無から有への変化は劇的だ。
内藤ホライゾンの双眸には、盛岡デミタスの内なる機微がハッキリと見えていた。
(´・_ゝ・`)「……ある男は、」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「っていうか俺は、あいつに縁を奪われた」
( ^ω^)「すごい身近な言い方に切り替えたな」
(´・_ゝ・`)「別にいっかって思っちゃった」
.
284
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:05:22 ID:Q55tYwuk0
(´・_ゝ・`)「まぁ彼女も顔を剥がれてるし、他の奴らも色々とな」
(´・_ゝ・`)「完璧さの為に補完されて、添削されて、大団円。
そもそも俺らの行動なんて、その結末への逆ギレで全部だぞ?」
盛岡は語りながら妖刀を構え、その切っ先を自分の喉元に突き立てた。
――妖刀首断ちの各能力は斬撃をもって初めて成立する。
故にこの刀で確実な洗脳を行いたい場合、拘束&拷問の用意は最優先で必要だった。
効果を強める為に刀傷を広げ、それで相手を殺しては元も子もない。
そういった塩梅をいい感じにする為にも、妖刀の扱いは色々と繊細なのだった。
(´・_ゝ・`)「……なんかこう、自宅をいきなり大豪邸にされたら困るだろ?」
(´・_ゝ・`)「隣の芝生が青いのはともかく、『お前ん家を真っ青にしてやるぜ!』はキレるだろ?」
( ^ω^)「たしかに」
(´・_ゝ・`)「だからそんだけ。くだらん恩には最大級の仇を返す、それだけ。
危ないからって公園潰されたガキがブチギレてる。俺らは大体、そんな感じよ」
( ^ω^)「いやお前、絶対そんな感じじゃないだろ」
(´・_ゝ・`)
盛岡は肯定も否定もしなかった。
( ^ω^)「……ついでに、前から思ってた事を聞きたいんだが」
( ^ω^)「そういう事情を素直に話して、各勢力に協力を求めるのは駄目なのか?」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「聞きたいか? マッチ売りの少女、盛岡デミタス版」
(; ^ω^)「……いや、すまん」
(´・_ゝ・`)「いいよ。今後はリアル童話マンと呼んでくれ」
.
285
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:12:53 ID:Q55tYwuk0
(´・_ゝ・`)「そんじゃあ後は任せる。残り時間は好きにしていい」
(´・_ゝ・`)「これでお前は一人ぼっちだ。どうだ、清々するだろ?」
( ^ω^)「する」
即答だった。
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「くっそー」グッ
盛岡は僅かに両手を遠ざけてから、勢いをつけて妖刀を引き寄せた。
その切っ先は血肉を溶かすようにするりと喉を貫通し、頚椎を断って向こう側まで突き抜ける。
(;´・_ゝ・`)「……ん゙ふっ」
一瞬で完遂された自刃、あまりに淡白な自殺行為。
ほどなく思考は激痛に溺れ、妖刀の力が彼の心を塗り替えていく。
――盛岡デミタスは死んでも洗脳なんか受け付けない。
それでも効果をもたらすには、いっそ『死ぬほど』でなければ話にならなかった。
(;´・_ゝ・`)
( ^ω^)
すべて承知の上だった。
最後に内藤ホライゾンと視線を交わし、盛岡デミタスは意識を失った。
そのまま膝から崩れ落ち、血潮にまみれて地面に横たわる。
.
286
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:16:27 ID:Q55tYwuk0
( ^ω^)「……こんな奴が、マッチ売りの少女か」
俯瞰的に呟き、内藤ホライゾンは激化能力を解除した。
盛岡の首を貫いた妖刀はそれと同時に消滅し、彼の傷口からは更に血が溢れる。
当然このままでは盛岡は死ぬ。しかしそれでは妖刀を使った意味まで消えてしまう。
そこで必要なのが内藤ホライゾンの復元能力。
彼は盛岡の傍らに膝をつき、致命傷を負った盛岡に復元を施した。
(;´-_ゝ-`) …!
復元能力によって傷を直すと、気絶中の盛岡が目に見えて身じろいだ。
途切れた生気が再び巡り、濁った呼吸が命を繋ぎ始める。
( ^ω^)「これでお役御免だ」
( ^ω^)「言われずとも、あとは自由にやらせてもらう」
かくして自演の片棒を担ぎ終えた内藤ホライゾン役の人。
彼は程なく立ち上がり、自分の舞台に帰っていった。
.
287
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:20:41 ID:Q55tYwuk0
______________________________
━━━√━━━━━━━━━━━━━━━━━#━━━━━━#━━
 ̄ ̄ ̄
,、,,..._
ノ ・ ヽ. ラザロとは、貧乏だったり、死んで蘇ったりする人。
/ ::::: i その名前は 「神はわが助け」 を意味する。
/ ::::: ゙.、 主に鎌倉の鶴岡八幡宮の土産として有名。(wikipedia)
__________
━━━#━━━━━#━━━━━━━━━━#━━━√━━━━━━━━━
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
288
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:22:08 ID:Q55tYwuk0
≪3≫
(; ^ω^)「――! ――――!」
从;-∀从「……ん、あぁ……?」
聞き慣れた声が耳朶に響く。
ハインは目覚め、慌てふためく声に応えた。
Σ(; ^ω^)「あっ起きた! んもう起きるの遅すぎだお!」
_,
从;゚∀从「……あぇ。お前、誰だ……?」
(; ^ω^)「寝惚けてる場合じゃないお! 盛岡が僕らの暗躍に気付いて(ry」
( ^ω^)「でも僕が倒しといたお! 危ないとこだったお!」
从;゚∀从 ・ ・ ・
从;-∀从「駄目だ、なんにも思い出せねえ……」
( ^ω^)「今はとにかく逃げるんだお! はいこれ大事な妖刀!」
つ╋─
从;゚∀从「……それもそうだな! ちょい待て、すぐに用意してくる!」ダッ
≡┌(; ^ω^)┘「僕も手伝うお!」
.
289
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:23:13 ID:Q55tYwuk0
______________________________
━━━√━━━━━━━━━━━━━━━━━#━━━━━━#━━
 ̄ ̄ ̄
少女は座ったまま、死んでかたくなっていて、
その手の中に、マッチのもえかすの束がにぎりしめられていました。
「この子は自分をあたためようとしたんだ……」と、人々は言いました。
でも、少女がマッチでふしぎできれいなものを見たことも、
おばあさんといっしょに新しい年をお祝いしに行ったことも、
だれも知らないのです。だれも……
また、新しい一年が始まりました。
__________
━━━#━━━━━#━━━━━━━━━━#━━━√━━━━━━━━━
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
O 。 , ─ヽ
________ /,/\ヾ\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_ __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/''' )ヽ \_________
||__| | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从 | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\ / ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/ 〜おわり〜
.
290
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/03/29(月) 23:33:15 ID:Q55tYwuk0
#1
>>2-65
#2
>>74-117
#3
>>122-160
#4
>>169-212
#5
>>231-266
>>271-289
>>289
は青空文庫のマッチ売りの少女(大久保ゆう訳)から引用しました
このスレでクリエイティブ・コモンズのお世話になるとは…
https://www.aozora.gr.jp/cards/000019/files/194_23024.html
291
:
名無しさん
:2021/03/29(月) 23:46:47 ID:Q55tYwuk0
忘れてましたが次回投下は3月31日です
ツンちゃんのお風呂シーンがあります
>>230
投下で話題流しちゃってごめんNE(^ω^)
作者的には読んでる人が多いような気はしているよ('A`)
292
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 06:22:56 ID:UlulrRuU0
乙乙
>>291
なるほどあざます
293
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 09:57:45 ID:a6DJMOko0
乙!
294
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/03/31(水) 21:00:45 ID:enOHtg6M0
≪1≫
〜ツンちゃんの家〜
ξ゚⊿゚)ξ「ただいま〜」
('A`)「おじゃまします」
ミセ*゚ー゚)リ「おかえりなさい、遅かったですね」トテトテ
ξ゚⊿゚)ξ「ええ。特訓が長引いちゃって」
話の導入をコピペで済ませ、かくして私は家に帰ってきた。
奥のリビングからは美味しそうな夕飯の匂いが漂ってくる。
ミセリさんのエプロン姿も相まってか、この時ばかりは日常的な感慨を覚えてしまう。
.
295
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:08:17 ID:enOHtg6M0
ミセ*゚ー゚)リ「今日の特訓はどうでした?」
ξ-⊿-)ξ「なんか仕上げとか言って散々イジメられたのだわ。
分かりやすい成長もあんま無いし……」
ミセ*゚ー゚)リ「そう簡単に強くなられちゃ私の立場が無いですよ。日進月歩です」
ξ´⊿`)ξ「やむをえないけどアナログなのだわ……」
スニーカーを脱いで床に上がる。新妻ぶっこいてるミセリさんがカバンを受け取ってくれる。
今日は疲れた。さっさと風呂に入りたい。
しかし私は振り返り、何食わぬ顔で帰ろうとしてるドクオを呼び止めた。
ξ゚⊿゚)ξ「待て、帰るな」
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ「夕飯、食ってきな」
('A`)「へい……」
ここでドクオを帰してはならない。
特訓期間中、我が家の食卓は常に満漢全席。
私一人ではとても食べ切れない物量が襲ってくる為、ドクオには第二の胃袋として働いてもらう。
ミセ*゚ー゚)リ「もう夕飯できてますからね! 湯船は程々に!」
ξ゚⊿゚)ξ「へーい」トテトテ
否、ここでは絶対に長風呂をキメる。
一旦ドクオに夕飯を任せ、先に食べ始めてもらう事で私への分配を減らすのだ。
かくして私は逃げ込むように脱衣所に入り、汗ばんだ衣服をポイポイと脱ぎ捨てた。
.
296
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:09:43 ID:enOHtg6M0
〜入浴シーン〜
,.._,/ /〉.________
./// //──とつ――─::ァ/|
/// //~'~~ξ゚⊿゚)ξ~~~/ / |
.///_// "'''"'''"'" ./ / |
//_《_》′─────‐ ' / ./
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| /
| .| ./
|__________|/
※ツンちゃんボディは謎の光によって守られています
.
297
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:15:16 ID:enOHtg6M0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ´⊿`)ξ「ふぃ〜〜〜〜ぉぅ」ザパー
大きく息を吐き、湯船に沈む。
溢れたお湯が床に流れ、湯気がふわりと立ち上ってくる。
*
ξ*゚⊿゚)ξ ~
ラベンダーの入浴剤を入れたおかげで香りもよい。
花王は神。バブ様様であった。
ξ*-⊿-)ξ(……今日も疲れたけど、前に比べれば余裕あるのよね)
ハインさんとの特訓はせいぜい2〜3時間。
運動量も最低限で、ぶっちゃけ部活の域を出ない。
今でこそ思うが、体力的な部分はミセリさんが十分に鍛えてくれていたのだろう。
「そりゃあんだけやれば体力つくわ」と思わなくもないが、ここは素直に感謝である。
ξ´⊿`)ξ(ミセリさんは先生で、ハインさんはコーチって感じなのだわ。
だったらいい感じにバランス取れてるのよね、きっと……)
.
298
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:22:04 ID:enOHtg6M0
腰を滑らせ、浴槽の縁に背中を預ける。
疲れた〜なんて言えるレベルで特訓が終わる日々には、やはり多少の消化不良感があった。
というか暇が多いのだ。考える時間が増えすぎて、そこで何を考えればいいのかよく分からない。
ξ´⊿`)ξ(でも多分、それが課題なのよね)
ξ´⊿`)ξ(なんというか、考えること自体というか……)
――では、空いた時間で何をすべきか。
そう考えて最初に思い浮かんだのは、さしあたり無い学校の風景だった。
なんでもないような事を優先して考えられる。余裕があるって本当に素晴らしいな。
ξ゚⊿゚)ξ(風呂出て、飯食って、学校のあれこれ済ませて、今日は終わり)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(もうやる事ないな)
ξ´⊿`)ξ(早寝でいっか……)ブクブクブク
ちゃんと考えた上でやる事が無いので、寝よう。
私の結論は早かった。
.
299
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:32:53 ID:enOHtg6M0
――しばらく経ってのぼせてきた頃合い。
そろそろドクオが過食で死んでいるだろうし、これ以上待っても逆に夕飯を補充されてしまう。
ここらが潮時というヤツだ。私はゆっくりと湯船を出た。
ξ゚⊿゚)ξ「おっ――」
――床に立った途端、不意に体の力が抜けた。
立ち眩むほどではないが、五体の感覚がわずかに遠ざかる。
ξ;゚⊿゚)ξ「……っと」
私は咄嗟に壁に手をつき、血圧とかが落ち着くのを待った。
脳ミソに血が巡ってくる感覚が、時間をかけてじわりと馴染んでいく。
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;-⊿-)ξ「……ふぅ」
やれやれ、ちょいと風呂場で粘りすぎたようだ。
私は一息ついて調子を戻してから、低めの適温にしたシャワーで体を流し始めた。
ξ;゚⊿゚)ξ(無自覚な疲れが溜まってる、ってヤツなのかな)
ξ;゚⊿゚)ξ(これ本当に早寝した方がよさそうね……)
.
300
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:35:15 ID:enOHtg6M0
そんな正常な思考も束の間、正体不明の謎の光が私の視界を埋め尽くした。
サービスシーンを隠す演出か、あるいは目眩から来るマジのヤツか、その判別をする間は無かった。
.
301
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:37:47 ID:enOHtg6M0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
そして光が過ぎた時、私の目前には赤黒い壁があった。
あと重力の向きもおかしい。背中に重力を感じる。
私は両手を壁に当て、ぐっと押し出すように体を持ち上げた。
ξ;-⊿-)ξ(……ああ、倒れたのね)
認知が追いつき、腑に落ちる。
壁だと思ったものは床で、赤黒の正体は自分の血だった。
頭のどこかを切ったのだろう。水気と混ざった血が輪郭を伝って落ち、ぼたぼたと床を跳ねている。
顔を上げると、ひび割れた鏡に自分が映った。
どうやらまぁまぁの高威力で頭突きをかましたっぽい。鏡が砕け散っていないのは不幸中の幸いだ。
ξ;゚⊿゚)ξ(でも結構やっちゃってるな……)
謎の光が過ぎった一瞬、どれほどの惨事が起こっていたのか。
その逡巡に気を取られた私は、つい普段通りの加減で立ち上がろうとしてしまった。
浴槽の縁を頼りに、ぐっと力を入れた瞬間――。
.
302
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:40:18 ID:enOHtg6M0
ξ゚⊿゚)ξ「――あっ」
私はかくんと腰砕け、なにかに後ろ髪を引かれるように大きく仰け反った。
世界が逆に回転し、見慣れた景色が視界を飛び越えていく。
ξ゚⊿゚)ξ(……って)
ξ;゚⊿゚)ξ(いかん! 覚醒ヒロイズムの歌詞を引用してる場合じゃ――!)
ひっくり返って湯船に落ちる。
その直感を覚えていながら、私の体は言うことを聞いてくれなかった。
.
303
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:51:22 ID:enOHtg6M0
〜リビング(数分前)〜
('A`)「やめてくださいしんでしまいます」
ミセ*゚ー゚)リ「だったら消化をするんですよ」
('A`) ?
ツンちゃん第二の胃袋として無限の夕飯に立ち向かうドクオ。
弱音を吐いても通じないので、ドクオはとにかく食べまくっていた。
卓上には山盛りの山盛り料理が大量に並べられており、死を意味していた。
ミセ*´ー`)リ「お嬢様も早く出てこないかなぁ。
冷めても減っても、まぁ作り直せばいいんだけど……」
('A`)
(;゚A゚)(ツン今すぐ戻れ!! 俺の努力が!!)
なんとも微笑ましい食事風景である。
しかしその折、玄関の方から不穏な物音が聞こえてきた。
ドアを何度も叩く音だ。インターホンを押さない辺り、いやが上にも緊張が走る。
.
304
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:55:12 ID:enOHtg6M0
ミセ*゚ー゚)リ「……これ貞子ね。妙に魔力を隠してるけど」スッ
('A`)「……ああ、そうなんすか」
ミセリ判断のもと警戒を解くドクオ。
ひとまず無事ではあるらしく、ミセリにも慌てる素振りはない。
ミセ*゚ー゚)リ「でも何かあったわね。ドクオ、ちょっとお嬢様を呼んで――」
――指示の最中、今度は風呂場の方で音が上がった。
今度は更に物々しい、最後のガラスがブチ破れるような音。
それに続いて異様な水音。ツンが湯船に落ちたのだと、2人はすぐに直感した。
ミセ*゚ー゚)リ
('A`)
ミセ;*゚Д゚)リ「――前言撤回、ドクオはダッシュで風呂場に突撃!」
Σ(;'A`)「えっ!? でも今あいつ全裸なんじゃ」
ミセ;*゚Д゚)リ「超法規的措置よ! 記憶はあとで消せばいいの!」ダッ
(;'A`)「……はいはい了解!」ダッ
一転して顔色を変え、2人は急いで各方に散った。
.
305
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:56:41 ID:enOHtg6M0
〜お風呂〜
|┃三 ___________
|┃ /
|┃ ≡ < おいツン! 大丈夫か!?
____.|ミ\____('A`)_ \
|┃=___ \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|┃ ≡ ) 人 \ ガラッ
「\
ヽ ) /~)
/ / ( / ブクブクブク.......
,.._,/ /〉.__/ / | |____
./// //──\\/ /―::::ァ/| ←ツン
/// //~~'~~ | | ~~/ /|
.///_// "'''"'''"'" ./ / .|
//_《_》′─────‐ ' / ./
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| /
| .| ./
|__________|/
('A`) ・ ・ ・
(;゚A゚)「ウ”ウ”ァ゙ー!! ツンの犬神家が丸見えだァァーッ!!」
この瞬間、入念な記憶処理が確定した。
.
306
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:59:24 ID:enOHtg6M0
〜玄関の方〜
ミセ;*゚ー゚)リ「貞子、何があったの!?」
川; д川「……ちょっと待って。私も整理できてない」
ミセリが廊下に飛び出すと、見回りから戻ってきた貞子が疲れた様子で待ち構えていた。
貞子に負傷は無いようだったが、彼女が連れ帰ってきた男は明らかに満身創痍だった。
(;´-_ゝ-`) …
玄関マットに倒れていたのは盛岡デミタス。
こちらも同じく無傷だが、どういう訳だか虫の息。
ミセリからして目に見える相違と言えば、喉元にある直りかけの刀傷だけだった。
川; д川「えっと、とにかく色々あったらしいんだけど、内通者が分かったの。
盛岡が起きたら忙しくなるわよ。私達は特にね」
ミセ;*゚ー゚)リ …!
ミセリは一瞬考えて、消去法で内通者を割り出した。
さほど難しい話でもない。ここに不在の関係者は、2人だけだ。
ミセ;*´ー`)リ「ああ、やっぱりあれが相手か……」
川д川「それよりお嬢様は? 今すぐ確かめたい事が――」
<ウウァー!! ツンの犬神家がァァーッ!!
ミセ;*゚ー゚)リ「――お風呂場よ! 急ぎましょう!」ダッ
川; д川「なんか別の意味で嫌な予感が!!」
.
307
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 21:59:45 ID:enOHtg6M0
#05 ラザロと畜群 その2
.
308
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:01:55 ID:enOHtg6M0
| ロ :
| 口 ・
 ̄ ̄ ̄ ̄ ゚ ロ ・
・ : 。 口
ロ ロ
・
口 ゚ ロ []
。
・ ロ ・ : ロ 口 []
□ ・
[] | ̄| 口
。 口  ̄ 。
ξ;-⊿-)ξ「う、うーん……」
『……早く起きなさい。寝てる場合じゃないんだけど』
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「……って、どこじゃここは」
目覚めたとき、私は限りない純白の世界に立っていた。
風呂場でひっくり返って、湯船に落ちそうになって――そこから先の覚えが無い。
ξ゚⊿゚)ξ
あー、こりゃダメかも分からんね。
魔王城ツン、死んだかもしれぬ。
.
309
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:06:22 ID:enOHtg6M0
『いっそ、ほんとに死んでた方が楽だったかもね』
ξ゚⊿゚)ξ !
桑島法子に似た声がつんけんした口調で突っかかってくる。
こいつ、脳内に直接……!
『でもそれじゃ困るのよ。残念だけど、もうあなたしか残ってないから』
と思いきや、声はすぐさま弱気になった。
姿の見えない誰かを探し、私は周囲を一望する。
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『――………』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、_
,i ::::::: / /⌒`ー-、
| ::::::: / / i
! ::::::::../ / ノ
`ー―" "―――――‐ "
ξ;゚⊿゚)ξ「くっ、ここは一体どこなのよ……!」
今なんか巨大な銘菓が見えた気が、いや気のせいだろう。
.
310
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:13:09 ID:enOHtg6M0
時間が経って、そろそろ意識がハッキリしてきた。
見えてる景色に現実味はなくとも、私の五感は確かに機能している。
良くも悪くも、ここは死後の世界ではなさそうだった。
『そんなに慌てなくて大丈夫よ』
『ここ、あなたが長居できる場所じゃないもの』
優しい声が聞こえた後、遠く離れた場所に淡い彩虹が湧き上がる。
やがて彩虹はいい感じにまとまり、人型の実体を形成して動き出した。
<`/>'^ヾヘ/>
ノノ/((ノ´ノ))ヾ
(((ゝd*゚⊿゚)っ 『――はい。これで話しやすいかしら』
リ (_]っl:>
</_ハゝ
(ノノ
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「いやそれ私だが」
<`/>'^ヾヘ/>
ノノ/((ノ´ノ))ヾ
(((ゝd*゚⊿゚)っ 『なによ。あんまり見るんじゃないわよ』
リ (_]っl:>
</_ハゝ
(ノノ
ξ゚⊿゚)ξ ???
いよいよ悪夢めいてきた。
なんなのだこれは、どうすればよいのだ。
.
311
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:17:57 ID:enOHtg6M0
――なんて、困惑に呑まれた直後。
私のような見た目のそれに、大きなノイズと色ズレが奔った。
ついさっき現れたばかりにも関わらず、その実体はすでに崩壊を始めていたのだ。
<`/>'^ヾヘ/>
ノノ/((ノ´ノ))ヾ
(((ゝd*::⊿゚) 『時間も無いし、とりあえず最初の質問に答えておくわ』
リ (_]::::l:>
ξ;゚⊿゚)ξ(早くも4行に……!)
<`/>'''ヾヘ/>
ノノ゚。(ノ´ノ))ヾ
(((ゝd*::⊿゚) 『ここはサブレ時空よ。特権で色々イジられてるけどね』
リ (_]::::l:>
ξ゚⊿゚)ξ
ははーん、なるほど。
ここはサブレ時空だそうです。
<`/>'''ヾヘ/>
ノ。゚((ノ´ノ))ヾ
(((ゝd*::⊿゚) 『……ピンと来ないなら夢オチでいいわ。
リ (_]:::::l:> ここでの記憶、ほとんど持って帰れないんだし』
ξ゚⊿゚)ξ「では帰りたいのですが」
d*::⊿゚)『さっき言ったでしょ。それは時間の問題。すぐ帰れるから安心して』
ξ゚⊿゚)ξ「一気にAA省かれましたね……」
.
312
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:26:06 ID:enOHtg6M0
d*::⊿゚)『――だから急いで用を済ますわ』
バックアップ
d*::⊿゚)『私が選んだ《余剰周回》としての役割、ちゃんとやっておかなきゃね』
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、こんな状況で私に用が……?」アトズサリ
⊂⊂ )
d*::⊿゚)っ『そりゃもちろん。ていうか、来た瞬間から始めてたけど?』
桑島法子ボイスの彼女は残った手指で私の体を示した。
つられて体を見直すと、今度は私の体にノイズが奔りまくっていた。
ξ゚⊿゚)ξ
Σξ;゚⊿゚)ξ「ウワァーー!! なんだこれ!?」
バックアップ
d*::⊿゚)『見ての通り、《余剰周回》のデータをあなたに送ってるのよ。
2度目の出涸らしみたいなもんだけど、まぁ切欠にはなるんじゃない?』
そこまで言われてようやく気付いた。
崩壊していく彼女の体はなんかこう電子的なエフェクトになり、私の体に流れてきていた。
ノイズの原因はまさにそれだ。何が何だか分からないが、私はもうめちゃくちゃだった。
ξ;゚⊿゚)ξ「――キッカケ!? 切欠って何の話よ!?」
d*::⊿゚)『ひとつ分の陽だまりに、ふたつはちょっと入れないのよね』
ξ゚⊿゚)ξ オーイェアハン
ξ;゚⊿゚)ξ「いやあのカルマ歌ってないで止めてくれない!?
なんかデリートされそうなんだけど! ロックマンみたいに!」
d*::⊿゚)『今度会えたらお茶しましょうね。ツンちゃん道場で』
ξ; ⊿ )ξ「そんな知ってる体で話されても――!!」
.
313
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:29:24 ID:enOHtg6M0
d*::⊿゚)『いい? 使えるものは全部使って、望めるものは全て望みなさい。
あなたはあのトゥルーマンを負かしたんだもの。きっと大丈夫、期待してるわ』
ξ;゚⊿゚)ξ「だったら状況説明が欲しいのですが!! かなり切実に!!」
d*::⊿゚)『だから記憶が持たないって言ってるでしょ?
とにかく気にせず受け入れて。ゼノグラシアってそんなもんだし』
ξ;´⊿`)ξ「急にゼノグラシアとか言われても知らんが……」
d*::⊿゚)『……ブーンとドクオによろしくね。それじゃ、頑張って』
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ アッ
◎ ◎ ティウンティウンティウン
◎ ◎
◎ ◎
◎ ◎
◎ ◎ ◎
.
314
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:31:43 ID:enOHtg6M0
─ ̄ ─_─ ̄ ─_ ─ ̄─_─  ̄─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─
─ ̄─_─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─_ ─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─
─_ ̄─_─  ̄─_─ ̄─_─  ̄─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─
─ ̄─ ̄_─ ̄_ ̄─_ ─ ̄─ ̄─_─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─_─
─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─_─  ̄ ─ ̄ ─_─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─
Block Buster Breaker
Loading Privilege - Counter Context Confusion
Exceptional Enigma End
─_ ̄─_─  ̄─_─ ̄─_─  ̄─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄
─ ̄ ─_─ ̄ ─_ ─ ̄─_─  ̄─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_
─ ̄─_─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─_ ─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─
─ ̄─ ̄_─ ̄_ ̄─_ ─ ̄─ ̄─_─ ̄─_─  ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄─
─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─_─  ̄ ─ ̄ ─_─ ̄─_─ ̄─_─ ̄─ ̄─_─ ̄
315
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:33:46 ID:enOHtg6M0
______________________________
━━━√━━━━━━━━━━━━━━━━━#━━━━━━#━━
 ̄ ̄ ̄
,、,,..._ ブロックバスター
ノ ・ ヽ. 《Blockbuster》は、興行的な大成功を収めた作品を指す用語。
/ ::::: i 主に長編映画に対して使用されるチーズケーキ。
/ ::::: ゙.、 北海道北見市に所在する清月が製造・販売している。(wikipedia)
__________
━━━#━━━━━#━━━━━━━━━━#━━━√━━━━━━━━━
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
316
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:34:30 ID:enOHtg6M0
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
。゚ スヤスヤ
ξ´⊿`)ξ
ミセ;*゚ー゚)リ「……お嬢様、ほんとに倒れただけなのね」
川; д川「ビックリするほど健康体……」
――ツンちゃん犬神家事件から数時間後。
かくして寝室に運ばれた魔王城ツンは、一種のスヤスヤ状態に陥っていた。
貞子の診察ではまったく問題なし。そりゃ普通に寝てるだけなので当然であった。
.
317
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:37:59 ID:enOHtg6M0
川д川「これなら朝には起きると思うけど、今夜は大事を取りましょうか。
どうにも事情が変わりすぎた。盛岡の対処もしなくちゃだし……」
ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*´ー`)リ「……大界封印。なんか久し振りに聞いたわね」
川д川「私も同意見。ハインの狙いもアレらしいし」
ミセ;*゚ー゚)リ「まったく、なんで人間が封印のこと知ってるのよ」
川д川「そこも含めて緊急事態。今は対応を急ぎましょう」
ミセ;*゚ー゚)リ「これじゃあ試験も先送りよね。上がゴネなきゃいいんだけど……」
ツンが寝ているベッドを離れ、2人は小声で話しながら部屋を出ていった――
.
318
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:39:15 ID:enOHtg6M0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━ ━ ・
─── ─────────── ─── ── ─…
─────────── … ……
_________
__ __
__
.
319
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:40:02 ID:enOHtg6M0
:::::::::::::::::::::::: | ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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::::::::::::.......... | : ... . .........: : | 2021 :| ::........:...
::::::::::::.......... | | 03/ :::|
::::::....... | ○ | /31 :|
::::::....... |______O_, `ー―――'
|| ○丶、 。゚ .|
||__ノ:;_;;.ヽ___| スピー…
/⊂ξ´⊿`)ξ. /|
ノ⌒~⌒⌒"⌒U~"\/::|
/ .' ゛ .: ゝ ヽ`!' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/,: '´ ,._ 、 ヾ.,j
/ ゛ ヽ., _)
|  ̄  ̄ ̄ . ̄  ̄ ̄.. ̄|| 、,;'
| ||_,ノ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´
.
320
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:40:57 ID:enOHtg6M0
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::::::::::::.......... | : ... . .........: : | 20?? ::| ::........:...
::::::::::::.......... | | ?? / ::::|
::::::....... | ○ | /?? ::|
::::::....... |______O_, `ー―――'
|| ○丶、 。゚ |
ムニャ :||_ノ:;_;;.ヽ____| シュゥゥゥ-…
/ ξ´、`)ξ ゝ:|
ノ⌒~⌒∪⌒U~"\,/::::| ,.;'"~⌒'"~,.;'"~⌒'"~:::::
/ .' ゛ .: ゝ ヽ`!' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.,_,,('" (⌒ヾ:::::::::::
/,: '´ ,._ 、 ヾ.,j ^'ノ⌒ヽ,,._ソ''":::::::::::::::
/ ゛ ヽ., _)” _ _,.,_,人⌒`'"~:::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ ヾ,....ソ:
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321
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:43:13 ID:enOHtg6M0
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::::::::::::.......... | | 10/ :::| ,, サァァァー…
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|| ○丶、 。゚ | __|::::|':##:::::
ンヌァ… :||_ノ:;_;;.ヽ____| く:(::_⊿,####:::
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ ヾ,....ソ::::ソ'`"'(,,.、ソー"'-
.
322
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:44:12 ID:enOHtg6M0
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
323
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:46:33 ID:enOHtg6M0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| ――今宵、3月最終幕 |
: : : :\__________/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: : : : : : : : : : : : : : : : : : :
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| 遠き月よ、やっと追いついたぞ―― |
\________________/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
324
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:47:03 ID:enOHtg6M0
世 界 に 3 月 が や っ て く る
〜おわり〜
.
325
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 22:52:31 ID:enOHtg6M0
#1
>>2-65
#2
>>74-117
#3
>>122-160
#4
>>169-212
#5
>>231-266
>>271-289
#6
>>294-324
次回投下は4月中です
できれば2話分投下したいと思っています
がんばるぞ!(^ω^)
326
:
名無しさん
:2021/03/31(水) 23:01:41 ID:MhftUmZY0
乙!!
327
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/04/01(木) 00:26:57 ID:hlk0XYF60
身体はエイプリルフールを求める
https://youtu.be/G1tx6s6-RJM
328
:
名無しさん
:2021/04/01(木) 07:26:05 ID:lShJVYXI0
第二弾……だと……?
329
:
名無しさん
:2021/04/01(木) 22:37:08 ID:RcatqFmY0
乙、このツンちゃんにもゼノグラシア……うさちゃんが付くのか!?
そしてこのPVはどこまでが嘘なんだろう
330
:
◆gFPbblEHlQ
:2021/04/24(土) 16:38:50 ID:EB69w2Q20
≪1≫
趣味ってほどでもないけど、人間観察は好き。
他者との繋がりを再認識できるし、相対的にも自分が際立つ。
あらゆる事象に共有共通共感が割り込んでくる馴れ馴れしい時代だ。
多感な十代少女としては、後者の方が大事だったりして。
.
331
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 16:42:51 ID:EB69w2Q20
――時刻は午前の6時過ぎ。
場所は学校、私のクラス。
子供にとっては早朝と言えるこの時間帯に、私は誰よりも早く登校を終えていた。
他にも誰かが来てるかもしれないけど、私が認知してないのでノーカウントだ。
早朝登校の理由は自習。諸般の体裁とか、諸般のアピールとか、そういう打算が90割だった。
(´・ω・`)「……今後の予定、まだ決まらないのか」
私の椅子は窓辺の最後尾にある。
学校正門がバッチリ覗けて、人間観察にも丁度いいポジションだ。
あと、ついでに言うならハルヒの席でもある。
(´・ω・`)「……無視しないでほしいな」
ふと、不満気な太眉が視界に入り込んできた。
彼は当然のように私の前の席に座り、半端に振り返って私を覗き込んだ。
「……なに」
それに対して悪態をつき、牽制する。
しかし彼には効果がなく、顔色ひとつ変えてくれなかった。
(´・ω・`)「いや別に。毛利まゆへの期待は無いよ。勘違いさせてたらごめん」
言い切り、彼は話を変えた。
.
332
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 16:44:15 ID:EB69w2Q20
(´・ω・`)「で、僕は予定を聞いてるんだよね。
今現在の膠着状態、しわ寄せは僕に来てるんだからさ」
(´・ω・`)「ハインリッヒが逃げた時点でお前の利用価値はほぼゼロだ。
出せる情報がもう無いなら、僕らのコネはここまでだよ」
「……状況は逐一教えてる。変化が無いのは私のせいじゃない」
(´・ω・`)「だったら変化を作りなよ。できるんだから」
短絡的な言葉の売り買い、じつに不毛だ。
私は瞑目して顔を伏せた。
(´・ω・`)「大体、日常を変えたいと願ったのはキミだろう?
俺はその助力をしているだけ。進路はどうぞご勝手に」
(´・ω・`)「ま、やめるって言うならもう現れないよ。
今後の安全も保証する。保身に関しちゃ負ける気しないし」
.
333
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 16:52:14 ID:EB69w2Q20
――私のクラスには、魔王城ツンという女が居る。
魔王の娘で魔物らしい。ふざけた話だが、関係者の様子からして本当っぽい。
私がそれを知ったのは高校入学の数ヶ月前。
ある日私はハインリッヒ高岡という老人に出会い、なんらかの手段で洗脳を施された。
今でこそ思うが、あの出会いは完全にエロ本の導入だった。
しかし老人には別の目的があり、エロい事にはならなかった。
加えて偶然洗脳も解けてしまい、(起きてるんだけどなぁ……)的なシチュにもなってしまった。
かくして始まる非現実的な展開の数々。
私は、その多くでハインリッヒの操り人形になっていた。
ハインリッヒの洗脳通りに魔王城ツンと仲良くなり、スパイのような行動を沢山した。
襲撃の手引きも私がやった。彼女がアホみたいに垂れ流してた情報も全部横流しした。
素直四天王を学校に引き込んだのも私。他にも色々、危ない橋を渡らされてきた。
――しかしそれらの暗躍は、非生産的な倦怠を一掃するに余りある快感を伴っていた。
綺麗に整えられた被害者としての体裁。安全圏から眺める非現実。火に油を注ぐだけの楽な仕事。
射幸心パパと承認欲求ママに育てられた私達の世代に、この劇薬を御せる人格者はそうは居ないだろう。
かくいう私もちょっと暴走した。暴走したので今に至っている。
勇者軍に属する彼、ショボーンとの繋がりもそういう流れで生まれたものだ。
ちょっとは事情があったりするけど、……まぁ関係ないよね。結果論。私も納得してるし。
.
334
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 16:57:53 ID:EB69w2Q20
(´・ω・`)「――キミは魔王軍関係者の情報を集める」
(´・ω・`)d「私がそいつを持ち帰り、上に報告する」
契約書を読み上げるように私達の関係を言語化するショボーン。
指を立てて見せるその仕草、まず間違いなく私への当てつけだった。
(´・ω・`)「僕は組織で成功したいだけ。キミは自由を手にしたいだけ。
単純だけどそこらの利害、忘れてもらっちゃ困るんだよね」
「……忘れてない。今は待つのが正解なだけ」
(´・ω・`)「いいね。でその根拠は?」
「ハインリッヒがまだ諦めてない。もう一度、彼女達を使うみたい」
(´・ω・`)
(´・ω・`)「あー、彼女達って素直四天王のこと? それは期待できるね」
彼は心にもない同調を吐いて背筋を正した。
まともに聞く価値は無いと判断されたのか、振り向く姿勢すら打ち切られてしまった。
(´・ω・`)「でも今は無理じゃない? 向こうの防衛だって特に厳しいんだしさ」
(´・ω・`)「そもそも、襲撃可能ならとっくに上が動いてるんだよね。用意も済んでるし」
「分かってる。だから、素直四天王には入れ知恵をしておいた」
(´・ω・`)「……入れ知恵ね。それ流行語だったりする?」
言葉の後に、ありふれた溜息が続く。
.
335
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:02:41 ID:EB69w2Q20
(´・ω・`)「まぁ一応聞いておこうかな。素直四天王になんて言ったの?」
「特別な事はなにも。ただちょっと、報酬をピンハネして補足しただけ」
「依頼主が危機的状況にあるため、報酬は1000万円以下になると思います、って」
(´・ω・`) …
(;´・ω・`)「えっ、本当にそんな事したの?」
ショボーンが再び振り返り、肩越しに私を一瞥する。
この話、ちょっとくらいは興味を惹けたようだ。
(;´・ω・`)「彼女達への依頼料、たしか数倍になってたよね?
色々話が違うからって結構な高額にさ」
「そうだね。平気で数千万動いてたよ」
あれほどの大金、一部とはいえ現ナマで触った時はさすがに興奮したな。
ちなみにピンハネした分はポケットマネーにした。隠し場所で逆に困ってるけど。
(;´・ω・`)「なのに、それをピンハネして3桁万円にしちゃったの?
本来値上げすべきタイミングでそれは、流石に……」
「うん。まず確実に破綻する」
(´・ω・`)
「だから、素直四天王が次にどう動くか、誰にも分からない」
(´・ω・`)
(´・ω・`)「いやそれは、何も起こらない可能性が一番高いよ。普通に」
言いながら、彼はまたもや背筋を正した。
無理もないな、と我ながら思う。
.
336
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:04:48 ID:EB69w2Q20
素直四天王がハインリッヒの依頼を受けたとして、敵防衛を突破したとして。
魔王城ツンに接敵し、その側近をも撃破し、ターゲットを連れ帰れる可能性はほぼ皆無だ。
ショボーンの考えは至極真当。何も起こらないのが自然で当然だし、私もそこに異論は無い。
では、どうして私が素直四天王の独断に期待を寄せているかというと。
その理由はとても単純で、ただ単に、魔王城ツンが『特別』だからだ。
生きてる世界が違うという致命的な矛盾。
存在自体が物事の発端になるような、歩く無法地帯。
彼女の周囲に居る限り、私が知っている普通など意味を成さない。
「あれは、何も無くても何かが起こる人なんだよ」
「魔王城ツンは変化に恵まれている。本人は停滞を好んでるけどね」
彼女によって日常を破壊された者として断言できる。
あれに関わろうとするならば、『何も起こらない』なんて予想は無意味なのだ。
(´・ω・`)「……だから偶然何かが起こり、隙が生まれると?」
目の前にあるショボーンの背中が、露骨にしなびて丸くなっていく。
当然の反応だ。個人的な印象に基づいた適当な推測など、当てにする方がおかしい。
.
337
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:06:30 ID:EB69w2Q20
(´・ω・`)「……あれかなぁ。学校に不審者が乗り込んできて、それ倒す妄想みたいな」
(´・ω・`)「もしそんな感じで話してるなら、やっぱりウチらは今回限りだよ」
言葉の後、彼はあっさりと席を立った。
もう9割くらいは見限られたのだろう。やむをえないと思う。
(´・ω・`)「どうやらボクも顔が割れてるみたいでね。
街中で視線を感じる事が多いんだ。待てる時間は少ないよ」
「……そう。運よくいったら、またよろしく」
(´・ω・`)「……このショボーン様が居なければ、毛利まゆはただの一般人に過ぎない。
キミが求めた『特別』なんて簡単に崩れ去るということ、よく覚えておくといい」
去り際に忠告を残し、ショボーンは教室を出ていった。
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338
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:08:19 ID:EB69w2Q20
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
|┃三 _____
|┃ /
|┃ ≡ < オ〜イェ アハン
____.|ミ\___ξ゚⊿゚)ξ_ \
|┃=___ \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|┃ ≡ ) 人 \ ガラッ
ξ゚⊿゚)ξ「あっまゆちゃん! おはようなのだわ!」
「おはよう魔王城さん!」
ξ゚⊿゚)ξ「いま教室出てった人って姉妹だったりする!?
後ろ姿がすごい似てたのだわ!」
「……よく言われるけど全然違うよ! ほら、私って特徴無いから」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「そいつは解釈違いだな」
「朝から強火じゃん」
――小さな変化なのだが、少し前からツンちゃんの登校が早い。
こっちは私の気のせいかもしれないが、どこか雰囲気も変わった気がする。
「それより今日も勉強するんでしょ? 手伝うよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんと? お願いするのだわ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「今日はこちらの『超実践! 効率的人体破壊術入門』の解説をば……」
つ[ ]と スッ
あと、やたら物騒な本を読むようになった。
本人いわくスポーツに目覚めたらしいのだが、詳しい事は私も知らなかった。
おおよそ、例の試験に向けた自主練だとは思うけど。
.
339
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:19:32 ID:EB69w2Q20
ハインリッヒが消えて一ヶ月くらい。
その間目立った事もなく、私達は本位を隠しあったまま、自然に普通を演じあっていた。
――市立VIP高校で、すごく平和な日常を送るために。
なんて、彼女ならこんな風に考えるのかな。
だったら私はどうだろう。私にとって、この寓意譚は――
.
340
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:20:57 ID:EB69w2Q20
#05 ラザロと畜群 その3
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341
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:22:36 ID:EB69w2Q20
≪2≫
〜お昼くらい! 教室!〜
( ´∀`)「……であるからして」
( ´∀`)「つまりそういう事なんだモナ」
ξ゚⊿゚)ξ(なんて分かりやすい授業なんだ)
( ´∀`)「しかも爆発するモナ」
授業もそろそろ終わり際。
モナー先生の話がまとめに入った頃合いで、私こと魔王城ツンは物憂げに外を見遣った。
ξ゚⊿゚)ξ フゥ…
日常風景からモノローグに移る時にありがちなムーブ。
私はモノローグに突入した。
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342
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:24:27 ID:EB69w2Q20
――ハインさんとの特訓を経て、ざっくり一ヶ月。
積もる話が色々とあり、私の日常はすっかり落ち着いていた。
例の試験も延期されたまま動きがない。これは正直ラッキーだが。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ-⊿-)ξ(……ハインさん、本当に内通者だったのかしら)
モノローグらしく話の要点を蒸し返す私。なんとも殊勝でしかもかわいい。
とはいえそうなのである。話を聞くに、どうもあのハインさんが内通者だったらしいのだ。
現在ハインさんは逃亡中の身。内藤くんも一緒に消えてしまって、状況的にはほぼ黒らしい。
私は一応中立なのだが、すでに感情的な擁護が通用しないレベルのアウト判定が出ている模様。
立場的にも下手な発言はしちゃいけないし、現状私にできる事は何もなかった。
ξ゚⊿゚)ξ(あの盛岡が実際に戦ってる辺り、相当な一大事なのよね)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ´⊿`)ξ(あいつが戦ってるとこ、まったくイメージできねー)
( ´∀`)「……ツンさん、授業聞いてるモナ?」
ξ゚⊿゚)ξ「はい先生。つまりそういう事です」
( ´∀`)「しっかり聞いているようだな」
そして今、この街には魔王軍の一部隊が送り込まれていた。
協力関係にあったハインさんの裏切りを重く見たのか、そのメンバーは結構マジである。
ミセリさん貞子さんも同じくマジになっていて、今のVIP市内は超が付くほどの厳戒態勢。
警戒範囲内に一歩踏み込んだ時点で最悪死ぬ。
そんなレベルで守られてる私が平穏を持て余し、まんがタイムきららるのは半ば必然だった。
.
343
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:26:54 ID:EB69w2Q20
( ´∀`)「そいじゃ授業を終わるモナ〜」
モノローグに耽ってたら授業が終わった。昼飯の時間になった。
私はドクオに声をかけ、まゆちゃんと3人でメシを食らい始めた。
('A`)「俺、今日は部活行っとくわ」モグモグ
ξ゚⊿゚)ξ「そう」パクパク
ちなみにドクオも暇を持て余している。
魔王軍が本格的に守りを固めたため、ドクオが私を護衛する必要も無くなってしまったのだ。
かわいそう
「……えっと、ドクオくんってそういえば何部? 聞いた事なかったよね?」
('A`)「茶道部の数合わせ。幽霊部員だよ」
コミュ障相手に話を広げようとするまゆちゃん。
なんとも殊勝で健気でかわいいが、ドクオの返事を聞いて一瞬言葉に詰まってしまう。
「あっ、……お茶かぁ。そっかぁ」
そこは卓球部じゃないんだな、という感想を呑み込んで微笑むまゆちゃん。
この野郎ドクオ、私が居ない場所ではそこそこリア充なので腹が立つ。
茶道部の先輩(渡辺さん)は実際美人だ。もはや怒りしかない。
ξ゚⊿゚)ξ
同じコミュ障なのに私にだけ青春が無いの、コミュ障が原因じゃないと言われてる気がして終わりだった。
金髪美少女がちやほやされない世界、私は絶対に認めないからな。
('A`)「ほんとに何もしてないけどな。たまに顔出してお茶飲んでるだけだよ。
せめて部費分くらいは飲みに来てくれって感じ。あと雑用」
「……へえ。なんていうか、意外と人徳あるんですね」
ほらもう気付かれた。あの優しいまゆちゃんが明らかに距離を置いたぞ。
しかもドクオは気付かない。無神経なので顔色さえ窺わない。レクイエム。
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344
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:29:36 ID:EB69w2Q20
('A`)「そうだ、ツンも暇なら部活とか入ってみろよ。
俺よかまともに楽しめるだろ、ああいうの」
ξ-⊿-)ξ「……この状況が卒業まで続くならね。
今だけやっても冷やかしになるのだわ。それは嫌よ」
( 'A`)「ああ、……まぁそうか」
そりゃ私だって部活に入りたい。もっと言うなら氷菓みたいになりたい。
さりとて私は魔王の娘。諸般の事情を鑑みるに、敵わぬ願いなのだ。
だったら自分で作ればいいのよ! 私の脳内ハルヒが声高に言った。
「部活いいと思うけどなー。時間あるならもったいないよ」
ξ´⊿`)ξ「まぁ、それはそうなんだけど……」
ξ´⊿`)ξ「なんていうかさー、最近フラグ折られがちでさー。
今後どうなるかも分かんないし、保守的なのが無難な感じで……」
「……そうなんだ。最近の魔王城さん、なんか調子よさそうなのに」
ξ゚⊿゚)ξ
_,
ξ゚⊿゚)ξ「そう?」チラッ
('A`) シラネ
「絶対そうだよ! 前より勉強頑張ってるし、学校にも遅刻してこないし!」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ*゚⊿゚)ξ「え、照れますねそれね」
いや参っちゃうね友達の甘言は。承認が過ぎるぜ。
金を払えばいいのか?
.
345
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:31:24 ID:EB69w2Q20
「――環境の変化、心境の変化かな?」
言いながら、まゆちゃんがずいと身を乗り出してくる。
「 ありがちなトコで言うなら、好きな人ができたとか」
ξ;゚⊿゚)ξ「えぇ……」
彼女の顔には、好奇心から生まれる笑みがハッキリと浮かんでいた。
他人の色恋を勘繰る楽しみは人種年齢を問わないものだ。
やれやれ、まゆちゃんもティーンエイジですな。
ξ;゚⊿゚)ξ「うーん、残念だけどそういうヤツじゃないのだわ。
強いて言うならなんかこう、絶好調が続きすぎな感じというか……」
「--------終了-------」
ξ゚⊿゚)ξ「--------再開-------」
('A`)「おっぱいうp」
ξ゚⊿゚)ξ「とにかく私は相変わらずよ。
急に音信不通になったりしないから、安心して」
言いながら、私は内藤くんの席を一瞥した。
あまり気にしていないつもりだったが、不意に口走った言葉が彼を連想させた。
「……内藤くん、学校来なくなっちゃったね」
一瞥に気付いたまゆちゃんが独り言のように事実を呟く。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ-⊿-)ξ「そのうちまた来るでしょ。転校してきたばっかなんだし」
せめてもの期待を込めて言い、私はあっさりと話を流した。
.
346
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:33:59 ID:EB69w2Q20
≪3≫
〜ツンちゃんの家!〜
ξ゚⊿゚)ξ「ただいま〜」
ミセ*゚ー゚)リ「おかえりなさい! 待ってましたよ」トテトテ
放課後、1人で帰った夕飯時。
玄関を開けるとミセリさんが駆け寄ってきて、いつものように出迎えてくれた。
今日もハインさんの捜索で忙しいだろうに、ちょっと嬉しい。
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリさんこそおかえりなさい。今日は早いのね」
ミセ;*´ー`)リ「そこは色々ありまして。今も一応任務中です」
ξ゚⊿゚)ξ「ほーん」
ミセ*゚ー゚)リ「今朝方の話になりますが捜索の手掛かりが見つかったんです。
ただちょっと、ほんの少しお嬢様の助力が必要でして……」
ξ゚⊿゚)ξ「いいわよ」
ミセ;*´ー`)リ「思うところもあるでしょうが……」
ミセ;*゚ー゚)リ「って即決されましたね!? ダメですよ話も聞かずに!」
ξ゚⊿゚)ξ「今日の私はあっさりなのよ。それで何すればいいの?」
ミセ;*゚ー゚)リ「……それでは、ひとまず地下の特訓場へ。
貞子も向こうに居ますから、そこで事情をお話します」
ξ゚⊿゚)ξ「すこぶる分かった」
かくして私は特訓場へ向かった。
.
347
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:36:39 ID:EB69w2Q20
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
|| || || ||
|| || || || プラーン
|| || || ||
川 ゚ -゚) lw´‐ _‐ノv ノパ⊿゚) o川*゚ー゚)o
ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j
ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j
ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j ミ≡≡≡j
∪∪ ∪∪ ∪∪ ∪∪
ξ゚⊿゚)ξ「いや急だな全てが」
特訓場に入るや否や、おもしろFLASHみたいな光景に全てを持ってかれた。
物理的に拘束され、適当な岩場に吊るされている4人。
その内の1人には見覚えがあったが、全体的に理解が追いつかなかった。
ちなみに特訓場の仕様は東京ドームくらいの荒野である。
第2話以来の登場なので改めて言及しておく。
ミセ*゚ー゚)リ「向かって左端の女、素直クールで間違いないですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうだけど、何が何だか分からない」
分からないあまり一句飛び出してしまった。
ミセ*゚ー゚)リ「あの4人、お嬢様が登校してる間にまた襲撃して来たんです。
それで敢えなくこうなりました。以前ならともかく、今やるのは完全に無謀でしたね」
川 ゚ -゚)「現実の世界は、どうしてこんなにつらくきびしいのだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「あの人もう心折れてない?」
ミセ*゚ー゚)リ「そりゃ魔王軍と正面からやりあったんですから、折れてますよ」
ξ゚⊿゚)ξ「えげつねェな……」
.
348
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:38:27 ID:EB69w2Q20
川д川「――それでも、多少は善戦してましたよ」
その瞬間、不意に上空から補足が飛んできた。
私が真上を見上げると、当然のように空に浮いていた貞子さんが降りてくるタイミングだった。
いいよな当然のように浮かべるの。あれできたら絶対楽しいもんな……。
川д川「あのエクスト相手に数十秒は持ち堪えましたからね。
4人掛かりだったとはいえ、人間基準なら十分です」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、あのエクストさん相手に!?」
今後数十話は登場しないキャラを引き合いに驚くのもどうかと思うが、事実であれば確かにすごい。
エクストさんはバリバリの超武闘派。脳筋具合ではミセリさんをも超えてくる手合いだ。
それを相手に生き残れた素直四天王の実力など、私の感覚ではとても計りきれない。
そして同時に、先日の素直クールが少しも本気じゃなかったという事も判明してしまった。
私は私で彼女を殺さないよう加減していたが、彼女はそれ以上の技術で微細な手加減をしていたのだ。
コントロールは私の弱点。そこで競ってしまったのだから、そりゃあ負ける。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「で、結局私は何すればいいの? 拷問?」
川; д川「……なんか妙にあっさりしてますね」
ミセ*゚ー゚)リ「今日はそういう気分なんだって」
.
349
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:41:17 ID:EB69w2Q20
川д川「――それではまず、今朝の事から話しましょうか」
〜中略!〜
ξ;゚⊿゚)ξ「ま、まさかそんな事が……!?」
川д川「今朝の襲撃、それはもう見事な大立ち回りでしたよ。
結果だけならこちらの圧勝ですが、模擬戦闘としては丁度いい相手でした」
川д川「戦闘に関しては以上。問題は次です」
改まり、貞子さんは素直四天王の方を向いた。
彼女達の大立ち回りに胸打たれている場合ではない。私も気持ちを切り替えていくぞ。
川д川「彼女らは引き際もキッチリしていました。負けた瞬間に即時降伏。
更には取り引きまで持ちかけてきて、それがまた変に方向に転がって……」
ξ゚⊿゚)ξ「……歯切れが悪いのだわ。向こうの要求って、つまり私なんでしょう?」
私はあけすけに言って肩を落とした。
次の話も大体読める。ここは早めに開き直っておくのだ。
川д川「……その通りです。今日は本当にあっさり系ですね」
ξ゚⊿゚)ξ「サクサクいくのよ」
.
350
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:42:42 ID:EB69w2Q20
||
||
||
川 ゚ -゚) 「 ――こちらの要求はたったひとつ。
ミ≡≡≡j 魔王城ツンとの一騎打ち、それだけだ 」
ミ≡≡≡j
ミ≡≡≡j
∪∪
ξ゚⊿゚)ξ
||
||
ξ ゚⊿゚)ξ スッ… 川 ゚ -゚) !?
γ/ γ⌒ヽ ミ≡≡≡j
/ | 、 イ ミ≡≡≡j
.l | l } ミ≡≡≡j
{ | l、 ´⌒ヽ-'巛( ∪∪
.\ | T ''' ――‐‐'^
.| |
ミセ;*゚ー゚)リ「お嬢様!? いったい何を!?」
ξ゚⊿゚)ξ「お望み通りの一騎打ちよ。そして今がチャンス」
ミセ;*゚ー゚)リ「いやそれ処刑ですよ! 例の試験も絡んでるので落ち着いて下さい!」
ξ゚⊿゚)ξ !
ξ-⊿-)ξ「……ごめんなさい。話を聞くのだわ」
ミセ;*゚ー゚)リ(これ止めなかったら本気でやってたわね……)」
.
351
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:45:59 ID:EB69w2Q20
川д川「この子達、ハインリッヒの居場所を知っているそうです」
本題の口火を切ったのは貞子さん。
私のペースに合わせてくれたのか、要点らしき部分から話が始まる。
川д川「そして、さっき話に出た取引もここに繋がります」
川д川「彼の居場所を知りたければ一騎打ちをさせろ、と」
ξ゚⊿゚)ξ「……確認だけど、それってそもそも成立してないわよね?」
前提として、貞子さんの魔術があれば人間の記憶など簡単に覗けてしまう。
なので、素直四天王が持ちかけてきた取り引きに効力は無いはずだ。
どこかに恣意がない限り、貞子さんがその辺を失念するとは到底思えなかった。
川; д川「ええそうです。まったくもってその通りです。
なんですけど、『じゃあついでに試験を』なんて流れになっちゃいまして……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ああ、妙な方に転がったってそういう……」
そんでやっぱり恣意があった。
あのエクストさんが出てきてて、貞子さんすら手を止められている。
今回の一件、多分めちゃくちゃな権力パワーが蠢いているぞ。
ミセ*゚ー゚)リ「とは言っても、試験相手が務まるだけの実力も見ちゃいましたからね。
本来の相手もハインの方に出張ってますし、代役としてピッタリというか」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、試験の相手ってもう来てるの? 聞いてないんだけど……」
ミセ*´ー`)リ「そこも予定が狂いすぎましたからねー。
顔合わせもなにも後回しですよ。全部ハインリッヒのせいです」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ついでに聞くけど、その人と素直四天王ってどっちが強い?」
ミセ*゚ー゚)リ「それはもう完全に前者ですね。圧倒的に。
なので彼女達と戦った方が無難ではあります。一応」
.
352
:
名無しさん
:2021/04/24(土) 17:47:08 ID:EB69w2Q20
ミセ*゚ー゚)リ「……で、どうされますか?」
ミセ*゚ー゚)リ「ここで試験をするもよし、事が落ち着くまで延ばすもよし。
決定権はお嬢様にありますから、お好きに決めて下さい」
川д川「そして、可能であれば即決をお願いします。
彼女達の処遇はともかく、ハインリッヒの件は急ぎたいので」
ξ;゚⊿゚)ξ「うっ、確かにそうよね……」
ミセリさん達だって時間を作ってここに来ている。
私がここで戦わないなら、貞子さんはすぐにでも素直四天王の記憶を探るのだろう。
いま優先すべきはハインさんの捜索だ。私の気分で進捗を遅らせる訳にはいかない。
ξ;゚⊿゚)ξ ウーン…
( ∞(
――試験を先延ばしにしたとして、それでもハインさんは数日以内に捕まるはず。
であれば、ここでやってもやらなくても時間的猶予に大差はない。
個人的な特訓も煮詰まってきた所だ。試験突破を考慮しても、今すぐやるのはそう悪くない。
ξ-⊿-)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「分かった。試験を受けるのだわ」
ミセ*゚ー゚)リ「おお! またもあっさりと!」
川д川「なんと目覚ましい成長……!」
この間たったの5秒である。
内藤くん相手にあれだけ渋った手前、この即決はかなり高印象だろう。
試験結果に関係するかは知らないが、できる子アピールをしておいて損はない。
.
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