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ブーン系ビブリオバトル 投下スレ

72 ◆YA2dQ7l6ss:2020/09/28(月) 00:44:00 ID:56cYcIKE0
拝啓、人格障害。

私の背中からは無数の卒塔婆が突き出している。

所詮は衒学的な売文行為の結果に過ぎないのだが、この少しだけ人生の一部捧げれば飲み込めてしまう程度の悪文たちには、決して少なくない量の私観が注がれている。
蚯蚓ののたくったような文字列が綾なす羅列は、畢竟、集塵的行為のなれ果なのだろう。

中学生の患う流行病や高校生の赤黒く線の引かれた手首、大学生特有のモラトリアム文学、そして生き恥の大部分を占める社会人生活期に拵えた無能の叫び声。
ポエトリーリーディングに尽くした情熱が残した芥は、暗愚魯鈍な紀行文たちだ。

私はそれら一切を、過去の遺物としてかなぐり捨てた。
大きく広げた風呂敷を大衆に任せ、出来うる限り最大の札を注いで、風に靡く彼らの物語へと黙祷したのだ。

巨視的な観点を私が持ちうる可能性も有り得たと思いたい。
死ぬまで貫き通せるほどの熱量、或いは分相応の身分に満足出来ず、自らを徹底的に追い込める才能が在れば、
そして一文士となり、野望図に枯野を駆け巡る、白玉楼中の至りへと心血を注ぐ愚行を咎められない社会的地位を確立していれば、
もしかしたら、何か変わっていたのでは無いだろうか。

しかし結局、私は生き残ってしまった。
死ぬべき時に死ねず、義務やら責務やらで喉元を締め上げられ、苦心惨憺に溺れる中、憂いの長引いた隠居の一人娘に嘲笑されては、未だ不退転を繰り返している。
不承不承、死ぬ勇気も殺す覚悟も持っていなかったのだから、生きるしかないのだ。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬とSSRIを適当にウィスキーで流し込み、たまに訪れる眠れない夜などは、適量のマイスリーを飲み下す。
朝日が顔に日差しする一時間前に自然と目覚め、倦怠感に塗れた微睡みをカフェインと強心剤の手助けを借り、鬱屈した繊弱の精神性を鯨飲したつもりのまま扉を開ける。

打算的に生きてきた。

頑迷な小心を惑わしてくれるおつむの弱い醜女と懇意になった。
学も才能も乏しい女と緩慢に生活し、いつの間にか生まれていた赤子は赤子のまま齢二十を経過していて、
私が進退窮まっていた路地を歩んでいた事実に漸く気付いた頃、嫁から勘当を投げ付けられた。

憔悴に憔悴を重ねていた私は別居の提案が記載された蛍光色の付箋一枚が、どのような経緯で認められたのかすら分からぬのに、疲弊した家庭から逃げられると思い込んで、「了解」の二文字を綴ってしまった。

兎角、疲れていた。


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