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( ・∀・)カリスマ美容師と地縛霊のようです川д川
1
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:07:40 ID:/M3NjSU60
ああ、憎らしい恨めしい妬ましい。
幸せそうな笑顔が憎らしい。
希望に輝く瞳が恨めしい。
『生』あるすべてのものが妬ましい。
私は幽霊。
私は、怨嗟の塊。
.
2
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:08:00 ID:/M3NjSU60
( ・∀・) 〜♪
丑三つ時は私の時間。
今日もまた、私は人間に話しかける。
川д川「ねえ……お兄さん……」
( ・∀・)「ん?」
3
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:08:57 ID:/M3NjSU60
人も、動物も、草も花も、何もかも。
私を深く絶望させたこの世界が、恨めしくてたまらない。
川∀川「私が見えるのね、お兄さん……うふふ……」
だから私は、すべてを呪う。
.
4
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:10:19 ID:/M3NjSU60
男が顔を引き攣らせる。
そうだ、恐れろ。絶望しろ。
きっと今にも叫びだす。ほら、今だ――
( ∀ )「……も……」
……も?
5
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:11:26 ID:/M3NjSU60
(# ・∀・)「もっっっっったいない!!!!!!」
川д川「…………」
川д川「……は?」
.
6
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:12:39 ID:/M3NjSU60
(# ・∀・)「こんな夜中に女の子が一人で! いやそれはいい! よくないけど! それよりも君、そのなりは正気なのかい!?」
(# ・∀・)「それ冬物のワンピースだろう!? 見てるこっちが暑い! スカートの丈も中途半端で君の魅力を殺してる!」
(# ・∀・)「それに君はイエローベースだね? そんな重たい黒髪が似合うと思っているのかい? せめて量を減らして軽く見せようとは思わないのかい!?」
川;д川「……は?……は……??」
(# ・∀・)「まったく! いいかい? 名刺をあげるから、明日ここにくるんだ。わかったね!?」
7
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:13:27 ID:/M3NjSU60
【美容室 Moral】
ξ ゚⊿゚)ξ「いらっしゃいませー」
ξ ゚⊿゚)ξ「あ、出連様ですね。お待ちしてました」
ξ ゚⊿゚)ξ「お客様ご来店でーす」 \イラッシャイマセー/
ξ ゚⊿゚)ξ「…………」
ξ ゚⊿゚)ξ「いや、どうしてこうなったのよ」 (川д川←同一人物)
( ・∀・)+ 「うむ、見違えたね。流石僕、圧倒的天才」
ξ ゚⊿゚)ξ「そっちじゃなくて。そっちもだけどそうじゃなくて」
( ・∀・)「僕の恋人の有無が知りたいって?」
ξ ゚⊿゚)ξ「耳クソ詰まってんのあんた」
8
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:13:56 ID:/M3NjSU60
第1話「美容室Moralへようこそ」
.
9
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:14:36 ID:/M3NjSU60
〜〜数日前〜〜
( ・∀・)「やあやあいらっしゃい。ちょうど前のお客様の施術が終わったところなんだ、さあこちらへどうぞ」
( ・∀・)「昨日名刺は渡したけど、改めまして。僕の名前はモララー、この美容室の店長さ」
( ・∀・)「ではケープをかけるので、前を失礼」
( ・∀・)「飲み物の希望はあるかい? ミネラルウォーター、コーヒー、紅茶から選べるよ」
川д川「紅茶」
( ・∀・)「了解。少々お待ちを」
川д川「ちょっと待って」
( ・∀・)「うん? 別のにする?」
川д川「そこに変更はないけど待って」
10
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:15:16 ID:/M3NjSU60
川д川「これは一体どういう状況なの?」
( ・∀・)「今から君の髪を切ります」
川д川「えぇ……」
( ・∀・)「さて、ちょっと失礼」
川;д川「ちょっ、何す……」
( ・∀・)「何って髪を触っているんだよ。美容師なんだから当然だろう?」
11
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:15:47 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)「うーむ……」
( ・∀・)「なんていうか、あれだね。率直な感想だけど」
( ・∀・)「君の髪、ちょっとびっくりするくらい痛んでるね」
川д川「決めた。呪い殺す」
( ・∀・)「いや本当、逆にどうしたらここまで痛むのか知りたいくらいだよ。チリチリゴワゴワでドイヒーだよ。頭から針金生えてるのかってレベル」
川д川「マジで殺す。一番苦しい方法で殺す」
12
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:16:28 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)「安心したまえ、君の悩みは僕が解決してみせる」
川д川「私が今悩んでるのあんたをどう殺すかなんだけど」
( ・∀・)「この天才美容師モララーにかかれば! たとえいかなるタワシであろうとも!」
川д川「お前今私の髪をタワシっつったな?」
( ・∀・)「イッツァマジックタイム!!」
13
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:16:55 ID:/M3NjSU60
ド ξ ゚⊿゚)ξ ンッ!!!
ξ ゚⊿゚)ξ「えっ?……いや……えっ?」
( ・∀・)+ 「イッツァマジック!」
ξ ゚⊿゚)ξ「マジックってレベルじゃなくない?」
( ・∀・)「ははは、なにせ僕は天才だからね」
14
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:17:27 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)「さあ、自分の髪に指を通してみてごらん」
ξ ゚⊿゚)ξ+ サラサラサラ……
ξ* ゚⊿゚)ξ「……」
( ・∀・)「どうだい?」
ξ*; ゚⊿゚)ξ「う、嬉しくなんかないんだからねっ!」
15
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:17:54 ID:/M3NjSU60
ξ ゚⊿゚)ξ「でも、どうやったらこんな風に……」
( ・∀・)「カット+シャンプー&トリートメント+カラー+パーマだよ。うちのフルメニューだね」
ξ ゚⊿゚)ξ「この髪飾りみたいなやつと、メイクは?」
( ・∀・)「ああ、ヘアメイクね。それは僕からのサービスだよ」
ξ ゚⊿゚)ξ「え……」
( ・∀・)「僕の誘いも多少強引だったし、わざわざ来てくれたお礼さ。気に入ってもらえたかい?」
ξ* ゚⊿゚)ξ「……ま、まぁ、一番苦しい殺り方はやめてあげてもいいわよ」
( ・∀・)「うんうん、そうやって喜んでもらえると美容師冥利に尽きるよ」
16
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:18:32 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)「ではお会計、25,800円でございます」
ξ ゚⊿゚)ξ「えっ」
( ・∀・)「えっ」
17
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:19:07 ID:/M3NjSU60
ξ; ゚⊿゚)ξ「何よその金額! 計算間違ってんじゃないの!?」
( ・∀・)「カット+カラー+パーマが20,800円、トリートメントが5,000円」
( ・∀・)「ほら、25,800円。間違っていないよ?」
ξ; ゚⊿゚)ξ「髪切るだけで……にまんごせん……!?」
( ・∀・)「カット+カラー+パーマだってば」
ξ; ゚⊿゚)ξ「詐欺よ!! ボッタクリよ!!」
( ・∀・)「そう言われてもねぇ。うちはこの料金でやってるし」
18
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:19:44 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)「お客様、お支払いは現金? カード?」
ξ; ゚⊿゚)ξ「……ない」
( ・∀・)「なんだって?」
ξ; ゚⊿゚)ξ「……現金もカードも、ない」
( ・∀・)「ほう?」
19
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:20:13 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)「するとあれだ。君は一文無し、身一つってやつだね?」
ξ; ゚⊿゚)ξ「……」
( ・∀・)「そうか、ならば仕方ない。昨日出会ったばかりの女性に対して気は引けるが……」
( ・∀・)+「……体で払ってもらうしかないね?」
ξ; ゚⊿゚)ξ「ひぃーっ!!」
20
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:20:41 ID:/M3NjSU60
〜〜現在〜〜
ξ ∩⊿∩)ξ「どうして……どうしてこんなことに……」
( ・∀・)「いやあ助かったよ、ちょうどバイトを探してたんだ」
ξ ∩⊿∩)ξ「犯されたほうがましだったぁ……」
( ・∀・)「すごく聞き捨てならないことを言われている気がする」
21
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:21:28 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)「ところで君、僕を呪い殺すとか言っていたけれど」
ξ ゚⊿゚)ξ(あ、そこちゃんと聞いてたんだ……)
( ・∀・)「君ってあれかい? もしかして幽霊ってやつ?」
ξ ゚⊿゚)ξ「えっ……うん……そうだけど……」
( ・∀・)「やっぱりね! いかにもジャパニーズ・ホラーって出で立ちだったもの」
ξ ゚⊿゚)ξ「……いや……なんか、もっと驚くとか……ないの?」
( ・∀・)+ 「誰であろうとこの店に入った瞬間から皆平等! 皆僕の愛する子猫ちゃんさ!」
ξ ゚⊿゚)ξ「キモ……」
( ・∀・)「うーん、なぜかたまに言われてしまう言葉だ」
22
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:22:04 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)「君、幽霊っていうくらいだから、お金どころか帰る場所もないんじゃないの?」
ξ; ゚⊿゚)ξ「うっ」
( ・∀・)「やっぱりね。ならばこうしよう、僕の家に住むといい。その代わり……」
ξ; ゚⊿゚)ξ「わ、私の体を!?」
( ・∀・)「それはいらない。住む場所を提供する代わりにここで働く、それでどうかな?」
23
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:22:26 ID:/M3NjSU60
ξ ゚⊿゚)ξ「……変な奴だってことはわかってたけど、正気? 私はあんたを殺そうとしてるのよ?」
( ・∀・)「スリリングでいいじゃないか」
ξ ゚⊿゚)ξ「その胆力どこから湧いてくるのよ……」
( ・∀・)「真面目な話、人手が足りなくて困ってるんだよ。猫の手でも幽霊の手でもタワシの手でも借りたいくらいなんだ」
ξ ゚⊿゚)ξ「お前またタワシっつったな? そろそろ殺すぞ?」
24
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:22:51 ID:/M3NjSU60
【モララー宅】
( ・∀・)「さあ、遠慮せずくつろいでくれたまえ。今日からここは君のマイホームでもあるんだからね」
ノハ ゚⊿゚)" カミノケ ホドキホドキ
ノハ ∩⊿∩)" クレンジング ワシャワシャ
川д川「はぁ〜〜すっきり〜〜」 ビール プシュー
川д川 ゴクッゴクッゴクッ
川*д川「っっかぁ〜〜〜!! 生き返るぅ〜〜〜!!」
( ・∀・)「馴染むの早いな。あとそれ僕のビール」
25
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:23:17 ID:/M3NjSU60
川д川「別にいいでしょ、労働の対価よ」
( ・∀・)「給料ならちゃんと払うよ」
川д川「お金もらったってどうせ酒に消えるわよ」
( ・∀・)「君、そんなにお酒が好きなのか……いやとにかく、給料は払うからね」
26
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:23:42 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)「ああそうだ、すっかり忘れていた。君、名前は?」
川д川「……名前?」
( ・∀・)「いつまでも『君』と呼ぶのも味気ないだろう」
川д川「……」
川д川「……人間だった頃は、貞子って名前だった」
川д川「でもこの名前で呼ばれたくない。生きていた頃のこと、思い出したくないから」
( ・∀・)「……ふむ」
27
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:24:11 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)+「だったらこの天才である僕が、新しい名をプレゼントしようじゃないか!」
川д川「うわ……嫌な予感しかしない……」
( ・∀・)「そうだね……君はちょっとツンケンしてるところがあるから……」
( ・∀・)「ツンデレからとって、『ツン』」
川д川「……」
( ・∀・)「どうだい?」
川д川「あ……まぁそれなら、うん」
川д川(変な名前挙げたらぶっ殺す準備してたのに……)
28
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:25:10 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)「では改めてツンくん、よーく聞きたまえ」
( ・∀・)「いいかい? これから君には、僕のお店で働いてもらう」
( ・∀・)「つまり君は美の伝道師になるのさ! お客様を幸せに導く、美容室Moralの一員だ」
( ・∀・)「君自身にもおしゃれの奥深さ、たっぷり味わってもらうからね」
川д川「ふん。こっちこそあんたを殺すまで出ていってやらないわ」
29
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:25:42 ID:/M3NjSU60
第1話 終わり
.
30
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:27:34 ID:/M3NjSU60
のんびり投下していきたいと思います
お付き合いいただければ嬉しいです
>>6
の『イエローベース』について、ちょっとだけ解釈的なものを入れます
31
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:28:48 ID:/M3NjSU60
〜〜おまけ〜〜
( ・∀・)「イエローベースっていうのは『パーソナルカラー』の一種だよ」
( ・∀・)「服を選ぶとき、『肌に馴染まないなぁ』とか『顔色悪く見えるなぁ』とか思ったことはないかい?」
( ・∀・)「人にはそれぞれ得意不得意な色があって、それをパーソナルカラーと呼ぶんだ」
( ・∀・)「とはいえ色なんて星の数ほどあるからね。よく使われる色を抜粋して、彩度や明度を基準に四つのグループに分類しているんだ」
( ・∀・)「その中で自分が得意な色のグループを探し当てるのが『パーソナルカラー診断』と言われているものだよ」
32
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:30:32 ID:/M3NjSU60
( ・∀・)「ちなみにグループは春・夏・秋・冬という名前で分類されていて、春と秋のグループが『イエローベース』、秋と冬のグループが『ブルーベース』と呼ばれてる」
( ・∀・)「ツンくんのパーソナルカラーはイエローベース春で、このグループは『春の花や新緑のように華やかな色』を得意とするんだけど……」
( ・∀・)「重たく見える黒髪はまぁ、苦手とするところだね」
( ・∀・)「……だいたいこんな感じかな。説明が下手で申し訳ない」
( ・∀・)「ググれば自己診断のやりかたなんかも出てくるから、一度やってみるのも面白いと思うよ」
33
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 20:32:07 ID:/M3NjSU60
投下は以上です
作者は専門家ではないので、作品内の知識等は「ふーん」程度に見てもらえれば
何卒よろしくお願いします
34
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 21:02:10 ID:IHxJjBFg0
乙
川д川とξ゚⊿゚)ξの変貌の間にノパ⊿゚)がいるの面白い
35
:
名無しさん
:2020/09/07(月) 21:17:25 ID:mku0FOp20
期待
36
:
名無しさん
:2020/09/08(火) 08:08:39 ID:ZyljyLLg0
乙です
期待
37
:
名無しさん
:2020/09/09(水) 22:35:21 ID:KWQYi2160
ショボンのカリスマ美容師を思い出した
あれとはまた違った感じだけど面白そう
38
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 21:37:33 ID:kS0gOYOM0
乙です
異色過ぎる組み合わせなのにハマってるな
次も楽しみ
39
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:44:38 ID:vI1CGKAU0
乙ありがとうございます、とても嬉しいです
期待に添えるよう頑張ります
第2話投下します
40
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:45:10 ID:vI1CGKAU0
今日こそ話しかけるんだ。
おはようって、その一言でいいんだ。
(;'A`)「あ……す……」
(;'A`)「す、ぁ……お、おは……」
o川*゚ー゚)o「クー! おはよー!」
川 ゚ -゚)「おはよう、キュート」
(;'A`)「……あ……」
41
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:45:46 ID:vI1CGKAU0
ああ、またダメだった。
話すどころか目線も合わなかった。
俺がブサイクだからだ。
だから見向きもされないんだ。
こんな顔じゃなかったら、きっとうまく話せたのに。
.
42
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:46:11 ID:vI1CGKAU0
第2話『カルテ:鬱田ドクオ様』
.
43
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:46:35 ID:vI1CGKAU0
ξ ゚⊿゚)ξ「では、しばらくカラーの時間を置きますね」
ζ(゚ー゚*ζ「わかったわ。あとで新しい雑誌を持ってきてもらえる?」
ξ ゚⊿゚)ξ「はい、わかりました」
ζ(゚ー゚*ζ「そういえばツンちゃん、もうお仕事には慣れた?」
ξ ゚⊿゚)ξ「はい、お陰様で……あ、お飲み物は紅茶でよろしかったですか?」
ζ(^ー^*ζ「ふふ、私の飲み物まで覚えてくれたのね。ありがとう」
ξ* ゚⊿゚)ξ「いえ、あの……出連様はいつも来てくださってるので……」
44
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:47:34 ID:vI1CGKAU0
('A`)「……あの……すみません……」
ξ; ゚⊿゚)ξそ「おわっ! い、いらっしゃいませ!」
ξ; ゚⊿゚)ξ(やば……お客さん来てるの気付かなかった)
ξ; ゚⊿゚)ξ(というか全然気配なかったんだけど! 幽霊の私より影薄いんじゃないの!?)
ξ ゚⊿゚)ξ「すみません出連様、少しいってきます」
ζ(゚ー゚*ζ「あらあら、いってらっしゃい」
45
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:49:38 ID:vI1CGKAU0
ξ ゚⊿゚)ξ「お待たせして申し訳ありません」
(;'A`)「あ……いえ……」
ξ; ゚⊿゚)ξ(……この人、髪の毛がテカテカしてる……ていうかヌラヌラしてる……)
ξ; ゚⊿゚)ξ(髪につけるやつ……ワックスだっけ? あれつけすぎてるのかな……?)
ξ; ゚⊿゚)ξ(前髪も長すぎて表情わかんない……メイクする前の私みたい)
ξ; ゚⊿゚)ξ(私こんな感じで化けて出てたのね。そりゃ怖いわ)
46
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:50:20 ID:vI1CGKAU0
ξ ゚⊿゚)ξ「ええと、ご予約はされていますか?」
(;'A`)「あ、ネ、ネットで、十四時に」
ξ ゚⊿゚)ξ「あ、鬱田様ですか?」
(;'A`))) コクコク
ξ ゚⊿゚)ξ「お待ちしていました。こちらへどうぞ」
ξ ゚⊿゚)ξ「お客様ご来店でーす!」 \イラッシャイマセー/
(;'A`)そ ビクッ
47
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:50:52 ID:vI1CGKAU0
ξ ゚⊿゚)ξ「ええと……本日はモララーをご指名いただいているようですが」
(;'A`)「あ、はい、すみません」
ξ; ゚⊿゚)ξ「いや、謝ることでは……すぐに呼んで参りますので、お待ちください」
(;'A`)「あ、はい」
( ・∀・)+「もう来ているよ」
(;゚A゚)「ヒエッ!」
ξ ゚⊿゚)ξ「あんたね……客をビビらせてんじゃないわよ」
( ・∀・)「あんたではなく店長と呼びたまえ、ツンくん」
48
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:51:52 ID:vI1CGKAU0
( ・∀・)「さて、鬱田様は本日カットをご希望と伺っておりますが」
(;'A`)「あ、はい……髪切ってほしくて……それと……」
( ・∀・)「オプションもつけられますか? カラーやパーマ、トリートメントなどもございますが」
(;'A`)「いや、あの……俺、俺を……」
(;'A`)「お、俺を、イケメンにしてください!」
( ・∀・)「……」
ξ ゚⊿゚)ξ「……」
( ・∀・)+「よしきた」
ξ; ゚⊿゚)ξ「よしきた!?」
49
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:52:25 ID:vI1CGKAU0
( ・∀・)「お客様のオーダーだ。断る理由があるかい?」
ξ; ゚⊿゚)ξ「いや、まぁ……でもイケメンって、なんていうか……えらく抽象的じゃない?」
( ・∀・)「要するに今より輝かせてほしいってことだろう?」
( ・∀・)「僕は美容師、老若男女すべての人間を輝かせるのが仕事さ」
( ・∀・)「ツンくん! 至急鬱田様にシャンプーを!」
(;'A`)「シャンプー……」
( ・∀・)「シャンプー代はカット料金に含まれておりますので、ご心配なく」
(;'A`)=3 ホッ
50
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:53:00 ID:vI1CGKAU0
ξ ゚⊿゚)ξ「ではシャンプーしていきますね。フェイスガーゼ失礼します」
( □ )「あ、は、はい」
ξ ゚⊿゚)ξ「お湯の温度大丈夫ですか?」
( □ )「あ、は、はい」
ξ ゚⊿゚)ξ「かゆいところはございませんか?」
( □ )「あ……ないです、はい」
51
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:53:45 ID:Gb.wTDuE0
支援
ワックステカテカはクラスに一人はいたよね
52
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:53:53 ID:vI1CGKAU0
ξ ゚⊿゚)ξ(この人、来店したときからずっと『あ』から喋ってる……)
ξ ゚⊿゚)ξ(……緊張してるのかな)
ξ ゚⊿゚)ξ(わかるわ〜〜〜、めっちゃわかるわ〜〜〜)
ξ ゚⊿゚)ξ(この店無駄に内装がオシャレなのよね……私も初めて入るときビビり上がったもん……)
ξ ゚⊿゚)ξ(鬱田さん、きっと普段美容室なんて来ないんだろうなぁ)
53
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:54:37 ID:vI1CGKAU0
ξ ゚⊿゚)ξ「鬱田様は、こちらの美容室のご利用は初めてですよね?」
( □ )「ひぇっ、あ、はい!」
ξ ゚⊿゚)ξ「この辺りは美容室多いですけど、どうしてここを選ばれたんですか?」
( □ )「こ、ここの美容室、口コミよかったから……」
ξ ゚⊿゚)ξ「ああ、ホットペッパーに載せてますもんね」
( □ )「は、はい」
54
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:55:12 ID:vI1CGKAU0
( □ )「モ、モララーさんも評判よかったし、男のほうが俺も緊張しないし……書いてることもよかったし……」
ξ ゚⊿゚)ξ「書いてること?」
( □ )「は、はい。モララーさんのプロフィールです」
( □ )「『僕はすべての人間を美しくする、そのために生まれてきた』って……」
ξ ゚⊿゚)ξ(あいつ、よく恥ずかしげもなくそんなこと書けるわね……)
55
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:55:36 ID:vI1CGKAU0
( □ )「モララーさんなら、俺をイケメンにしてくれるかもって……それで……」
ξ ゚⊿゚)ξ「その『イケメン』って、さっきも言ってましたよね。何か理由があるんですか?」
( □ )「……それは……」
( ・∀・)「ツンくん、鬱田様のシャンプーは終わったかい?」
ξ ゚⊿゚)ξ「ええ、ちょうど終わったわ」
ξ ゚⊿゚)ξ「鬱田様、席へどうぞ」
(;'A`)「は、はい!」
56
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:56:27 ID:vI1CGKAU0
( ・∀・)「では、これから施術に入らせていただきますが……」
( ・∀・)「鬱田様、髪型のご希望はありますか?」
('A`)「あ、えっと、これ……これと同じ髪型ってできますか?」
( ・∀・)「どれどれ……ああ、この俳優は人気ですよね。お好きなんですか?」
(;'A`)「え? いえ、『イケメン』ってググったらこれが出てきたから……有名なんですか?」
( ・∀・)「……ふむ」
57
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:57:03 ID:vI1CGKAU0
( ・∀・)「ところで、イケメンになりたいとのことですが……何か特別な理由でも?」
('A`)「……」
( ・∀・)「ああ、話したくなければ結構ですよ」
('A`)「いえ……」
('A`)「……実は俺、好きな子がいるんです」
58
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:57:38 ID:vI1CGKAU0
同じクラスメイトの女の子で、あ、素直さんっていうんですけど……。
すごい美人なんです。マドンナっていうのかな、みんな一度は好きになる、みたいな。
俺、ブサイクじゃないですか。なのに素直さん、こんな俺にも優しくしてくれるんです。
でも、自分から話しかけるのはどうしてもできなくて。
クラスのイケメンが素直さんと話してるところなんか見ちゃったら、なおさら悔しくて。
59
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:58:28 ID:vI1CGKAU0
('A`)「イケメンって堂々としてるじゃないですか」
('A`)「あれって多分、相手に好かれてるっていう余裕があるからじゃないですか」
('A`)「俺も見た目がかっこよかったら、素直さんに好きになってもらえるんじゃないかって」
('A`)「だから俺、イケメンになりたいんです」
( ・∀・)「なるほど。よくわかりました」
60
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:58:54 ID:vI1CGKAU0
( ・∀・)「では、少し目を閉じていただけますか?」
('A`)「あ、はい」
(-A-)(……これでやっと変われる)
(-A-)(ダサい俺ともおさらばできる)
(-A-)(そうしたらきっと、素直さんと……)
61
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 22:59:15 ID:vI1CGKAU0
( ・∀・)「はい、終わりです。もう目を開けて大丈夫ですよ」
(;-A-)(え? もう?)
(;'A`)「……って! 前髪しか切ってないじゃないですか!?」
( ・∀・)「ええ。前髪カットです」
(;'A`)「いや、ちょっ、そうじゃなくて……」
62
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:00:27 ID:vI1CGKAU0
( ・∀・)「鬱田様。差し出がましいようですが、鬱田様の希望は『イケメンになりたい』でしたね?」
(;'A`)「そうですけど……」
( ・∀・)「確かに見た目の印象という点において、髪はかなり重要です」
( ・∀・)「髪型を変えて雰囲気を一新するという鬱田様の見立ては間違っていません」
(;'A`)「だったら」
( ・∀・)「ですが、本当の願いは『イケメンになること』とは違うのではないですか?」
('A`)「……え?」
63
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:01:03 ID:vI1CGKAU0
( ・∀・)「素直さんという方は俳優のファンなのですか?」
(;'A`)「え、いや、それはわからないですけど……でも、女子ってみんなイケメン好きじゃないですか」
( ・∀・)「まあ、基本的にそうだとは思いますが。素直さんに直接聞いたわけではないでしょう」
(;'A`)「……それは……」
64
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:01:35 ID:vI1CGKAU0
( ・∀・)「鬱田様が『イケメンになりたい』と思ったのは、心からの願いでしょう」
( ・∀・)「でなければ慣れない美容院に赴いて、自分をイケメンにしてくれなんて言いません」
( ・∀・)「ですが、そう思い立ったきっかけは違うのではないですか?」
( ・∀・)「鬱田様が素直さんを好きになったのは、どんなことがきっかけでしたか?」
(; A )「……」
(; A )「……俺が」
(; A )「俺が初めて素直さんと話したのは、先月で……」
65
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:02:05 ID:vI1CGKAU0
川 ゚ -゚)『それ、『ブンアル』?』
(;*'A`)『っひぇ!?』
川 ゚ -゚)『ああ、ごめん。急に話しかけて』
(;*'A`)『う……ううん』
川 ゚ -゚)『ブンアル、前に友達から勧められてさ、アニメは見たんだ。面白かった』
川 ゚ -゚)『それ原作の小説だよね。読みやすい? 私でも読めるかな?』
(;*'A`)『……あ……』
66
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:02:31 ID:vI1CGKAU0
ちょっと難しいけど読みやすいよ。素直さん頭いいし、全然読めると思う。
アニメ、俺も見たよ。面白かったよね。
やっぱり原作が長い分削られたシーンもあるから、読んだら絶対に面白いと思うよ。
o川*゚ー゚)o『ねえねえ、クー! こっち来てー!』
川 ゚ -゚)『あ、ごめん。またね、鬱田くん』
(;'A`)『あ……』
67
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:03:04 ID:vI1CGKAU0
本当は言いたかったのに。
面白いよって、おすすめだって。
俺、全巻持ってるから、貸そうかって。
話しかけてもらえて嬉しかったのに。
もっと話したかったのに。
俺は一言も喋れなかった。
68
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:03:59 ID:vI1CGKAU0
全部この顔のせいだと思った。
こんなブサイクだから自信が持てないんだと思った。
もっとイケメンだったら、全部うまくいったはずだって。
でも。
思い返せば、あの時の素直さんは。
川 ゚ー゚)
.
69
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:04:30 ID:vI1CGKAU0
俺の顔面なんて気にも留めずに、純粋な好意で話しかけてくれた。
それなのに他愛ない会話にすら応じられない自分が、あまりに情けなくて。
だから全部、自分の顔が悪いせいだと思うことにした。
本当にダサいのは、全部顔のせいにするこの性格だ。
そんなこと気付いていた。
気付いていたけど、気付かないふりをした。
70
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:05:03 ID:vI1CGKAU0
(;A;)「素直さんは、きっと顔とかそんなの、気にしないです」
(;A;)「俺もブンアルのファンだったから、同じ作品好きな人に会えて、嬉しかったから」
(;A;)「もっと話したいって、思ったんです」
( ・∀・)「……」
( ・∀・)「今回、私の独断で前髪カットのみとさせていただきましたが」
( ・∀・)「あの長い前髪ではさぞかし不便だったでしょう。学業にも支障が出ていたのでは?」
( ・∀・)「なにより、あれじゃ相手をしっかり見れるはずがない」
71
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:05:40 ID:vI1CGKAU0
( ・∀・)「とはいえ鬱田様のオーダーとは違う形で進めてしまいました。申し訳ありません」
( ・∀・)「ご希望でしたら、無料でやり直しをさせていただきます」
(;A;)「……いえ」
(;A;)「このままでいいです。この髪型がいいです」
(;∀;)「……前髪切るだけで、こんなに変われるんですね」
72
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:06:26 ID:vI1CGKAU0
\アリガトウゴザイマシター/
ξ ゚⊿゚)ξ「……ねえ」
( ・∀・)「ん?」
ξ ゚⊿゚)ξ「前髪だけならシャンプーしなくてもよかったんじゃないの? 結局、前髪カット代しかもらわなかったじゃない」
( ・∀・)「だってワックスつけすぎだったから。あれで帰らせるわけにもいかないだろう?」
ξ ゚⊿゚)ξ(やっぱりあれつけすぎだったんだ……)
( ・∀・)「まぁ正直、シャンプー代や人件費を考えれば赤字だけど」
( ・∀・)「老若男女すべての人間を輝かせるのが、美容師の仕事だからね」
73
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:06:50 ID:vI1CGKAU0
o川*゚ー゚)o「クー、おはよー」
川 ゚ -゚)「おはよう」
(*;'A`)「……す……」
(*;'A`)「……っ」
(*;'A`)「……素直さん! おはよう!」
川 ゚ -゚)「ああ、鬱田くん。おはよう」
74
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:07:16 ID:vI1CGKAU0
(*;'A`)「こ、これ、この前話してた、ブンアル……」
川 ゚ -゚)「貸してくれるの?」
(*;'A`)「う、うん」
(*;'A`)「アニメもよかったけど、げ、原作も面白いから……素直さんに、読んでほしくて……」
75
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:07:46 ID:vI1CGKAU0
川 ゚ -゚)「……ああ、何か違うと思ったら」
川 ゚ -゚)「鬱田くん、前髪切ったんだね」
(*;'A`)「えっ……あ、うん……へ、変かな?」
川 ゚ -゚)「ううん」
川 ゚ー゚)「すごくいいと思う。そのほうが鬱田くんの目、しっかり見えるから」
(*'∀`)「……! あ、ありがとう……!」
76
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:08:31 ID:vI1CGKAU0
ξ ゚⊿゚)ξ「ところで前髪カット代っていくらだっけ?」
( ・∀・)「500円だよ」
ξ; ゚⊿゚)ξ「前髪切るだけで500円!?」
( ・∀・)「ツン君もそろそろ、うちの価格設定に慣れてほしいところだね」
77
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:08:57 ID:vI1CGKAU0
第2話 終わり
.
78
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:09:36 ID:vI1CGKAU0
投下は以上です
リアタイ支援めちゃくちゃ嬉しかったです、ありがとうございました
79
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:13:50 ID:uyLqwics0
乙乙乙!!!!
モララー顔も心もイケメンだなぁ
めっちゃ面白い次も期待
80
:
名無しさん
:2020/09/11(金) 23:30:51 ID:cD2tbdqo0
乙
面白かったです
これからも続けて欲しいです
81
:
名無しさん
:2020/09/12(土) 01:16:40 ID:lKdadgyg0
乙です
このモララーはマジイケメン
ツンの出自が気になる
82
:
名無しさん
:2020/09/12(土) 09:05:25 ID:nMBd0ysc0
待ってました!
83
:
名無しさん
:2020/09/13(日) 20:42:37 ID:Vh4M5yNM0
うわあ素敵な話だ
めちゃ支援しちゃうね
84
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:48:58 ID:dpCq/qMw0
乙ありがとうございます
楽しんでもらえるように頑張ります
第3話投下します
85
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:49:21 ID:dpCq/qMw0
「じゃあ、カンパーイ!」
「ねえ、誰かサラダ取り分けてよ。こっちのポテトサラダも」
「女子頼むわー」
「えー、私そういうの苦手ー」
「いやいや、こういうのはしぃに任せるべきでしょ!」
86
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:49:43 ID:dpCq/qMw0
(;*゚ー゚)「えっ……うん……いいけど……」
「おーっ、さすがしぃちゃん!」
「女子力たかーい、いいお嫁さんになれるよー」
(;*゚ー゚)「あはは……」
(*゚ー゚)(……こういう取り分けとか苦手だし、やりたくないなぁ)
(*゚ー゚)(でもせっかく盛り上がってるのに、そんなこと言ったら空気壊しちゃうよね……)
87
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:50:23 ID:dpCq/qMw0
料理の取り分けはいつも私の担当。
女の子の愚痴に共感して相槌を打ったり、男の子の自慢話を盛り上げるのも私の担当。
だって私は『女の子』だから。
(,,゚Д゚)「はい、しぃさんの分」
(*゚ー゚)「え?」
(,,゚Д゚)「しぃさん、みんなの分取り分けてばっかりで、自分の分取れてなかったでしょ」
(*^ー^)「う、うん! ありがとう!」
88
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:50:50 ID:dpCq/qMw0
でも、そんな人ばかりじゃない。
私に気付いて、優しくしてくれる人もいる。
大丈夫。きっとこの人は、私自身を見てくれる。
(,,゚Д゚)「来週、ここのケーキバイキングに行こう」
(*゚ー゚)「あ……私、甘いものはちょっと……」
(,,゚Д゚)「え、マジで? 嘘だろ?」
(,,゚Д゚)「『女の子』だったら、普通スイーツとjか好きじゃん」
(* ー )「……」
89
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:51:34 ID:dpCq/qMw0
可愛いって褒めてもらえるのは、すごく嬉しい。
髪を巻くのも、ふんわりした服も、全部私が望んでやっていることだから。
だけどたまに息苦しくなる。
私はみんなが望む『女の子』でいなくちゃいけないの?
.
90
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:51:56 ID:dpCq/qMw0
第二話『スタッフ:椎名しぃ』
.
91
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:52:18 ID:dpCq/qMw0
ξ; ゚⊿゚)ξ「ううう……疲れた……足が……足が棒よぅ……」
ξ; -⊿-)ξ「顔洗う気力もないわ……このまま寝ちゃお……」
ξ -⊿-)ξ スピー
(# ・∀・)「コラーッッ!!!」
ξ; ゚⊿゚)ξ「ヒエッ」
92
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:52:48 ID:dpCq/qMw0
(# ・∀・)「あ・れ・ほ・ど! メイクは必ず落として寝るようにと言っただろう!?」
ξ# ゚⊿゚)ξ「はいはいわかったわよ! わかりましたわよっ!」
ξ#∩⊿∩)ξ" クレンジング ゴシゴシ
(# ・∀・)「ゴシゴシ擦らない! 目元のメイクにはアイメイクリムーバーを使う!」
ξ# ゚⊿゚)ξ「ああもう、うるっっさいわね!!」
93
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:53:15 ID:dpCq/qMw0
【美容室 Moral】
ξ# ゚⊿゚)ξ「まったくもう……面倒臭いったらないわ……」
(*゚ー゚)「ツンちゃん、どうしたの?」
ξ ゚⊿゚)ξ「昨日メイク落とすのが面倒臭くて……」
(*゚ー゚)「わかる! 疲れて帰ったとき面倒臭いよねー」
ξ* ゚⊿゚)ξ「そうよね!? 私もそのまま寝ようとしたんだけど、怒られちゃって」
(*゚ー゚)「怒られたって、誰に?」
ξ; ゚⊿゚)ξ「あっ……いや……ど、同居人」
(*゚ー゚)「へー、ツンちゃんルームシェアしてるんだ」
ξ; ゚⊿゚)ξ「あは、あはは……」
94
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:53:39 ID:dpCq/qMw0
(*゚ー゚)「でもきちんと落とさないとダメだもんね。面倒臭いけど、ちゃんとアイメイクリムーバーも使ってるよ」
ξ ゚⊿゚)ξ「目元専用のクレンジングだっけ。あれってそんなに大事なの?」
(*゚ー゚)「大事だよー! 目の周りの皮膚は薄いから、普通のクレンジングだと刺激が強いんだよ」
(*゚ー゚)「0.6mmだったかな。たまごの薄皮と同じくらいなんだって」
ξ; ゚⊿゚)ξ「えー、そんなに!? 知らなかった……」
(*゚ー゚)「まぁ、私もたまに落とさないまま寝ちゃうけどね」
ξ ゚⊿゚)ξ「しぃちゃんでもそういうことあるのね。意外」
(*゚ー゚)「……そう?」
ξ ゚⊿゚)ξ「だってしぃちゃん、美容とか完璧そうだし……ほら、女子力高いじゃない」
(*゚ー゚)「……そんなこと、ないよ」
95
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:55:35 ID:dpCq/qMw0
( ・∀・)「しぃくん、そろそろ時間だったね。上がって大丈夫だよ」
(*゚ー゚)「あ、はい!」
(*゚ー゚)(ふぅ……今日も疲れたなぁ)
(*゚ー゚)(ギコくんとの待ち合わせは19時だし、ゆっくり着替えて……)
(*゚ー゚)(あれ? LINEがきてる)
『バイト早めに終わったからもう着いた〜! 待ってる!』
(;*゚ー゚)(えっ!? ま、待ってるって、まだ18時半なんだけど!)
(;*゚ー゚)(もう、なんでこうせっかちなのよ!!)
96
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:55:59 ID:dpCq/qMw0
ξ; ゚⊿゚)ξ「うぅ……もう足がパンパン……」
( ・∀・)「ふくらはぎの真ん中辺りを押すといいよ。承山というツボがあってね」
(;*゚ー゚)「お、お疲れさまですっ!」 ドタドタドタ
( ・∀・)「お疲れさま」
ξ; ゚⊿゚)ξ「お、お疲れさま!」
ξ ゚⊿゚)ξ「……しぃちゃんどうしたのかしら。随分急いでたけど……」
( ・∀・)「待ち合わせでもしているんじゃないのかい?」
97
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:56:24 ID:dpCq/qMw0
(;*゚ー゚)「ギ、ギコくん!」
(,,゚Д゚)「おー、お疲れ。じゃあ行こっか」
(;*゚ー゚)「え? あ、うん……」
(*゚ー゚)(……人を急がせておいて、一言謝るとかないわけ? 流石に言ったほうがいいよね)
(,,゚Д゚)「今日の店さー、全然予約取れなくて。やっと今日取れたんだ」
(*゚ー゚)「あ、そ、そうなんだ」
(;*゚ー゚)(うぅ……言うタイミング逃した……)
(;*゚ー゚)(……もういいや。気にしないようにしよう)
98
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:56:47 ID:dpCq/qMw0
(,,゚Д゚)「内装も料理も洒落てんなー。しぃ、こういうの好きだろ?」
(*゚ー゚)「うん」
(,,^Д^)「やっぱりな! 女の子ってこういう店好きだもんな」
(,,^Д^)「予約取るの本当大変だったんだぜ? 感謝してくれよー」
(*゚ー゚)「……うん。ありがとう、ギコくん」
(*゚ー゚)(そんなに恩着せがましく言われるなら、別に来たくなかったよ)
(*゚ー゚)(それにここ、友達と来たことあるし……)
99
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:57:52 ID:dpCq/qMw0
(,,゚Д゚)「あ、そうだ。しぃ、来週って予定開いてる?」
(*゚ー゚)「来週? 空いてるけど……」
(,,゚Д゚)「よかった! 実は連れていきたいところがあってさ」
(*゚ー゚)「連れていきたいところ……? ご飯屋さんとか?」
(,,^Д^)「それは内緒! 楽しみにしてて!」
(;*゚ー゚)「ま、待って待って。せめてどんな服着ていけばいいのか教えて」
(,,^Д^)「なんでもいいよ。しぃは何着ても可愛いって」
(;*゚ー゚)「いや……そういう話じゃなくて……」
(;*゚ー゚)(もしも高級なお店に行くんだったら、普段着だと私が恥かくんですけど……)
100
:
名無しさん
:2020/09/14(月) 21:58:23 ID:dpCq/qMw0
(;*゚ー゚)(結局どこに行くのか教えてもらえなかった……)
(*゚ー゚)(高級店は……多分ないかな。ギコくん、そういうのに詳しくないし)
(*゚ー゚)(そもそもご飯屋さんだったらあんなにもったいぶらないよね……遊園地とか水族館?)
(*゚ー゚)(だったら普段着でも大丈夫かな。写真も撮るだろうから、ちょっと華やかなアクセサリーもつけよう)
(*゚ー゚)(……あ、このネックレス……前にギコくんが買ってくれたやつだ)
(*゚ー゚)(……これ着けていったら、ギコくん気付いてくれるかなぁ)
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