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( ФωФ)ロマネスクは誓いを果たすようです

6名無しさん:2020/08/26(水) 15:48:55 ID:jPMJIv5Q0



剣を右に振るう。



朦朧としていた意識がかすかに覚醒する。
身体が鉛のように重い。

疲れ果てた精神は、眼前にいるであろう魔のものどもの気配しか把握できていない。
長年の相棒だった大身槍はかの翼竜を突き殺すために投擲し、翼竜と共に遥かなる地平へと沈んでいった。



剣を左に振るう。



殿を務めてから日が暮れ、日が昇り、そして再び日が暮れた。
斬った首は千を超えてからは数えていない。

闘争心が枯れる気配はない。
むしろ薪と油をくべたように、なお燃え滾っている。
だが鍛えぬいたはずの肉体が、この業火のような闘争心についていかない。



剣を一周させる。



返り血が体中に付着し、そのわずかな重みが全身を蝕んでいく。
足は棒のように凝り固まっている。
腕の感覚は、慣れ親しんだ大剣のかすかな感覚しか感じ取ることができない。
その腕を振るう度、喉に熱いものが迫り上がり、口から溢れ出す。
それでもなお腕を止める事はない。

地には無数の死体、体液でまみれている。
これを戦場と口にするのも憚られるほどの惨状。
まさしく地獄絵図である。

一息の休息すら許されない阿鼻叫喚の真っ只中で、ただただ剣を振るい続ける。
将として、兵より先に倒れる訳にはいかない。

――そんな事を、何度考えただろうか。


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