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(,,゜Д゜)薔薇の海のようです(*゜ー゜)
1
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/03(日) 12:12:24 ID:D2fZG3yg0
ラノブンピック参加作品
77
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:42:30 ID:f7EtI8Ec0
二人の距離が僅か2メートルまで縮まったところで、お互いの動きが止まる。
それでも、しぃからは確かな殺気を感じるし、俺もそれに応えるべく身構える。
どうやら、今回ばかりはどちらかが動けなくなるなんてことはないらしい。
暫くの静寂。
やがて、どちらからともなく、
しぃは俺に向かって、俺はしぃと反対方向に駆け出した。
78
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:42:55 ID:f7EtI8Ec0
(*゚ー゚)「えっ!!」
しぃの驚嘆する声が後ろから聞こえてくるが、俺は一切目もくれず走り出す。
(*゚ー゚)「ちょっ……待ちなさい!」
制止の声を振り切って、俺はひたすらに走り続ける。
79
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:43:19 ID:f7EtI8Ec0
しぃがこの状況に対してどれだけの理解度があるかは分からないが、
俺よりも知識があるのは確かだ。真っ向から戦うのは分が悪すぎる。
それに、運よく勝ったところで何かのはずみにしぃを殺してしまっては、
それがトリガーとなって再び世界が繰り返されてしまう可能性だってある。
ナイフで切り合うなんて言語道断だ。
80
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:43:41 ID:f7EtI8Ec0
しかし、何というか、俺はしぃに黙ってこの鍵を使うのが何となく嫌だった。
何度も共に同じ運命を繰り返した相手だ。正々堂々(?)と蹴りをつけたいと思うものだ。
走って、走って、走り続けるが、さほど苦しくはない。
社会人になってからも最低限の体力を保つ為、ジムに通っていた自身を褒め称えた。
81
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:44:02 ID:f7EtI8Ec0
暫く走り続けたところで俺は違和感に気づく。
それと同時に、足から力が抜ける感覚がして前のめりに派手に転倒した。
(,,゚Д゚)「うぉあ!! うっ……。なんだ?」
何かに躓いたような感覚はなかった。ただ突如として、大地を蹴る足が空を切った。
起き上がろうとしても、足が地面を捉えることはない。
不思議に思い自身に目をやると、そこにあるべきはずの左足がなかった。
82
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:44:23 ID:f7EtI8Ec0
(,,゚Д゚)「なっ!? は……?」
驚嘆の声が漏れ出る。
先ほどまで力いっぱいに動かしていた足の、膝から下が無くなってしまっているのだ。
いくら太ももをばたつかせても、ただ中身を失ったトラックパンツがはためくだけだ。
(*゚ー゚)「出来れば綺麗な状態で生贄に捧げたかったんだけど、そうも言っていられないみたいね」
ゆっくりと歩いてきたのはしぃだ。
向こうも全速力で追ってきたからか、肩で息をしている。
83
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:44:47 ID:f7EtI8Ec0
(,,゚Д゚)「お前が……やったのか……」
(*゚ー゚)「そうだよ。僕がやったの。いくら止まれって言っても止まらないんだもの」
(,,゚Д゚)「くそっ、これも魔術ってやつか……!! ふざけやがって」
(*゚ー゚)「ふざけてなんかいないよ。大真面目。僕はその銀の鍵を使って、神様に会いに行くんだ」
(,,゚Д゚)「……そうかい。もうこうなっちゃ、諦めるしかなさそうだな」
俺を両手を挙げて、無抵抗を主張する。
84
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:45:17 ID:f7EtI8Ec0
(*゚ー゚)「いい子だね」
(,,゚Д゚)「なぁ、しぃ。最後に一つだけ教えてくれないか?」
(*゚ー゚)「なぁに?」
(,,゚Д゚)「お前、その神様とやらに会ってどうする気なんだ?」
(*゚ー゚)「どうするって? そうだなぁ。特別に教えてあげる」
しぃの無表情が崩れて、一瞬だけ笑顔になる。
85
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:45:49 ID:f7EtI8Ec0
(*゚ー゚)「僕はね……。僕の好きな通りに世界を作り替えるの」
しぃがどんどん笑顔になる。
(*゚ー゚)「僕のお母さんはね。僕を産んでから、気がおかしくなって死んでしまったんだって」
屈託のない笑み。
(*゚ー゚)「僕ってお父さんの本当の子じゃないんだ。
僕のお父さんは、子供が産めなかったお母さんに“神様の子”を孕ませたの」
その表情に浮かぶ下弦の月は、
(*゚ー゚)「僕は、今は人間の姿を保てているけど、あと1年もしたら神様と同じ姿になっちゃうんだよ」
益々深くなる、
(*゚ー゚)「気付かなかったでしょ?
僕こう見えて4歳なんだよ。神様の子供ってね、成長がとても早いんだって」
夜の訪れを、
(*゚ー゚)「だからね。僕は……僕が新しい世界の神様にになって、
本当のお父さんの後を継いで、この世界を僕の思い通りにするの」
錯覚してしまう程に。
86
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:46:25 ID:f7EtI8Ec0
(,,゚Д゚)「……」
(*゚ー゚)「ほらだから、早くその鍵を渡して」
(,,゚Д゚)「成程な。それを聞いて思ったよ」
(*゚ー゚)「……?」
(,,゚Д゚)「やっぱり、この鍵は渡せないってな……!!」
俺はポケットから鍵を取り出し、夕日に向かって回し始めた。
(*゚ー゚)「ちょっと……!!」
(,,゚Д゚)「おっと、待ちな!!」
しぃはナイフを掲げて攻撃する体勢を取るが、俺はそれを制止する。
87
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:46:46 ID:f7EtI8Ec0
(,,゚Д゚)「今回に限って、なんでお前が俺をすぐに殺そうとしてこなかったか確信出来たぜ。
お前も今回、初めて気付いたな……!!“俺を殺したらループしてしまう”ことに……!!」
(*゚ー゚)「なっ……!!」
(,,゚Д゚)「ループしたらお前がどの時点に戻るのかは知らねえが、
何もかも元通りになってしまったら、お前はまた一から俺に接触しなくちゃならない。
つまり、今回で決めなきゃならないんだ。俺も、お前も……!!」
そういう間にも、俺は鍵を回し続ける。
88
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:47:08 ID:f7EtI8Ec0
1回
2回、
3回、
4回、
5回、と。
回数を重ねる毎に、鍵を回す手を何かが押し返してくるような感覚になる。
今鍵から手を離せば、空中で静止するのではないかとも思えるような。
目に見えない鍵穴が虚空に開いてあるかのような、そんな確かな感触がある。
89
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:47:40 ID:f7EtI8Ec0
(*゚ー゚)「いや……!! やめて……!!」
しぃが俺に覆いかぶさり、鍵を回す左手にナイフを突き立てる。
鋭い痛みに歯を食いしばって耐えながら、俺は鍵を回し続ける。
6回、
7回、
90
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:48:02 ID:f7EtI8Ec0
(*゚ー゚)「だめ……!! おねがい……!! ギコくん、離して……」
しぃは左手に刺さったナイフを抜いて、無差別に俺の身体の至る所に突き立てるが、
やはり致命傷となるような場所は外している。
しかし連続して襲い来る痛みによって、意識は朦朧とし始める。
しかし、俺は手を止めない。止めるわけにはいかないのだ。
8回、
(,,゚Д゚)「心配すんな……。悪いようにはしないから……」
9回。
91
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:48:29 ID:f7EtI8Ec0
―カチリ―
どこかで何かと何かが噛み合うような音がして、それを最後に意識をさらわれた。
92
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:49:08 ID:f7EtI8Ec0
心地よい波の音が耳をくすぐり、意識を優しく覚醒させた。
目を開ければ、視界の端から端までが薄く青色に輝き、そこかしこが泡立っていた。
(,,゚Д゚)「ここは……?」
まるで、広い水槽の中だ、と真っ先に思った。
その途方もない片隅だか中心だかも知りえぬ場所で、俺の身体はぷかぷかと浮遊していた。
意識がはっきりし始めると、
この空間に蔓延する強い花の香りが、俺の鼻腔を刺激していることにも気づく。
これは……薔薇の香りだろうか。確信は持てないが、そんな気がする。
93
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:51:26 ID:f7EtI8Ec0
( ΦωΦ)「目覚めたようだな」
声の方へ目をやると、フードを深くかぶり
その全身を虹色に輝くベールに包んだ人物が、いつの間にかそこに立っていた。
(,,゚Д゚)「あんた……もしかして」
( ΦωΦ)「さよう。吾輩はウムル・アト=タウィルだ」
あの喋る猫と同じ名を名乗ったこの人物。
疑えるはずもない。俺がここに至るまでの手がかりをくれた人物だ。
94
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:51:47 ID:f7EtI8Ec0
(,,゚Д゚)「ということは、俺は成功したのか」
( ΦωΦ)「うむ、そういうことだ。よくぞここまで辿り着いたな」
また会ったな、と彼はフードの奥で笑った。
( ΦωΦ)「さて、ここで終わりではない。吾輩に着いてくるのだ」
そう言って彼は、前とも後ろも取れない方向に泳ぎ始める。
見様見真似で俺も泳いでみると、行きたい方向に進むことが出来た。
95
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:52:40 ID:f7EtI8Ec0
お互い無言のまま暫く泳ぎ続けると、遠くに巨大な石組みのアーチが見えた。
近付けば分かるのだが、とにかくでかい。一体何を通らせる為のサイズだというのか。
( ΦωΦ)「あれが窮極の門だ」
(,,゚Д゚)「あれが……」
遠くに聳えるあれこそが、死に物狂いで至ろうとした“窮極の門”らしい。
イメージしていた形状とは違っていたが、それでも目指したものであることに違いない。
96
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:53:01 ID:f7EtI8Ec0
( ΦωΦ)「あれを通るぞ。着いてこい」
彼と共にその門を潜る。
とにかく巨大な為、少しばかり時間がかかったが何事もなく通ることが出来た。
門を通り抜けたところで、この空間を満たす水の流れが急激に強くなる。
身体が満ち満ちた海に揉まれ、回り、上下左右の間隔が消え失せる。
97
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:53:30 ID:f7EtI8Ec0
やがて、視界は青から黒へと切り変わる。
目の前に拡がったのは、闇だ。
幼い頃に見た、部屋の電気を消した時に現れる、眠りにつく前の薄い闇ではない。
もしここに光が迷い込んでしまえば、二度と外に出ることは叶わず、
間もなく塗り潰されてしまいそうな、そんな濃厚な闇だ。
ここまで共にきた彼の姿はなく、唯一人その闇を見つめている。
98
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:53:55 ID:f7EtI8Ec0
―かつんー
ふと、硬い何かと何かがぶつかる音を、この虚無の闇の中で鼓膜が感じ取った。
音が響いた方へ目をやれば、今まさに、闇に溺れて消えてしまいそうな光を見つけた。
近付いて拾い上げれば、それは鍵だ。俺をここに連れてきてくれた、あの銀の鍵だ。
99
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:54:17 ID:f7EtI8Ec0
(,,゚Д゚)「また、回せってことか」
手に持った銀の鍵を、漆黒に突き刺し、回す。
前回と同じく、左に9回。
すると、鍵は輝きを増し、形状が変化する。
真っ白に、縦に、薄く伸びる。
やがてそれは一本の線になり、そこを中心に左右に、長方形に広がった。
100
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:54:41 ID:f7EtI8Ec0
(,,゚Д゚)「……」
その煌めきに、ただただ、見とれていた。
濃厚な闇の中にあっても強く存在を主張する、世界の何処よりも白い窓。
その向こう側から、声なき声で己を呼ぶ声が聞こえる。
101
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:55:01 ID:f7EtI8Ec0
「窮極の門を経て、無名の闇へと辿り着いたまれびとよ。
悠久の果てなる孤独、宇宙が生まれてからの記憶が、
一つとして漏らさず刻まれた此の地にて、汝の望みはなんだ」
(,,゚Д゚)「俺の望みは、この非常識な出来事を全て忘れて、
何も知らないしぃと出会い、一からやり直して結ばれることだ」
「何と。
其れを叶えてやれぬ事はないが、そうして仕舞えば
汝らはこの曲線の理から外れ、我が加護を失い、
過去、現在、未来、その総ての可能性へ戻る術を失うことになる。
それでも構わないというのだな」
(,,゚Д゚)「あぁ、構わない。もう巻き戻す必要なんてないからな」
102
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:55:23 ID:f7EtI8Ec0
暫しの沈黙。
後にまた声が聞こえる。
「了解した。
それが汝の望みであれば、快く聞き入れよう。
悠久の環から外れ、我の及ばぬ時の最果てへ旅立つ汝らに、
刹那の幸あれ」
その言葉を皮切りに、真四角の窓はこの黒い闇一面に広がり、視界を余すことなく白で埋め尽くす。
その奥、無数の玉虫色の球体が連なる不定形の巨大なのたうつ肉体が、無限に泡立つ様を見た。
そうして俺は、この巡り巡る長い旅路が、遂に終わるのだと、静かに確信し、目を閉じた。
103
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:55:43 ID:f7EtI8Ec0
「…コ…ん」
誰かが俺を呼ぶ声が聞こえる。
「……コくん、ギコくん!」
遠い記憶の彼方、俺の認知を超えた場所まで追いやってしまった、
それでもどこかで確かに聞いたことのある声。
(*゚ー゚)「ギコくん!!!!」
(,,゚Д゚)「おわ!」
104
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:56:10 ID:f7EtI8Ec0
耳元で強く叫ばれて、俺は尻餅をついた。
痛みに尻をさすりながら見上げれば、そこには我が恋人である猫田しぃがこちらを見下ろしていた。
(*゚ー゚)「もう、ギコくんったらいくら呼んでも全然反応しないんだから!
デート中に考え事なんて失礼だよ!」
デート……、と言われて俺は直ちに思い出す。
そうだ。今日は猫田しぃと付き合ってちょうど三年になる記念日だ。
俺たちは、レストラン“ユゴス” にてディナーを摂った後、
しぃの希望で、夜の桜並木道を散歩していたのだった。
105
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:56:30 ID:f7EtI8Ec0
(,,゚Д゚)「あ……すまん。つい」
(*゚ー゚)「つい、じゃないよ! もう、難しい顔して何考えてたのよ」
(,,゚Д゚)「いや……その」
一呼吸おいて、俺は今日の為に用意していた言葉を胸から喉へと絞り出した。
106
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:56:53 ID:f7EtI8Ec0
(,,゚Д゚)「しぃ、これを受け取ってくれないか」
俺はポケットの中から小さな箱を取り出す。
それをしぃの目の前まで持って来てゆっくり開ける。
中に入れていたのは一組の銀の輪。婚約指輪だ。
(*゚ー゚)「ギコくん、これ……」
(,,゚Д゚)「俺は頭も悪いし、これから先も何度もしぃに迷惑を掛けちゃうと思うけど、
それでも、俺はしぃと一緒に、この一度きりの人生を歩いていきたい」
一度深呼吸して、
俺は、俺の胸の内にある最も伝えたい言葉をしぃに向けて放った。
107
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:57:16 ID:f7EtI8Ec0
(,,゚Д゚)「しぃ、俺と結婚してくれ」
その言葉に、
しぃの体が止まる。
しぃの体が震える。
しぃの目元から、大粒の涙が流れ、その赤く染まった頬を濡らしていく。
(*^ー^)「喜んで」
そう言って、しぃはこの世の誰よりも美しく、眩しく笑った。
108
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:57:39 ID:f7EtI8Ec0
やがて俺たちは、世にいる夫婦が皆そうしたように、
婚姻届けに記名し、判を押し、役所へ提出し、入籍し、その半年後、式を挙げた。
多くの人に祝福されながら、
式場の地面に敷き詰められた色とりどりの薔薇の道を歩き、石作りのアーチをくぐる。
かつて俺は、同じように誰かと薔薇の海を泳ぎ、巨大な石組みのアーチを通る夢を見た覚えがある。
あれは、この日を暗示した正夢だったのだろうか。いや、真実など重要ではない。
今こうして、俺の傍で笑うしぃがいる。それが一番大切なことなのだ。
https://f.easyuploader.app/eu-prd/upload/20200318142453_66734270695032537354.jpg
(,,゚Д゚)薔薇の海のようです(*゚ー゚)
109
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 15:58:12 ID:f7EtI8Ec0
一旦切ります。あと少しだけ続きます。
110
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 18:40:49 ID:f7EtI8Ec0
再開します。
111
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 18:41:11 ID:f7EtI8Ec0
結婚生活は順風満帆だった。
些細な喧嘩こそあれど、お互いを想い、それはそれは幸せな毎日を送っていた。
しかし、近頃何かおかしいものを見るのだ。
112
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 18:41:34 ID:f7EtI8Ec0
初めは視界の端に青黒い靄のようなものが映った。
同時に例えようのない腐臭が部屋内に立ち込めた。
俺もしぃも、それが何かは分からないが、
この家の中にいるその不気味な何かに怯えた。
113
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 18:41:55 ID:f7EtI8Ec0
そんな中迎えた、初めての結婚記念日。
不安は払拭できないが、
こんな日だからこそ無理にでも元気を出して笑って過ごしたいというのは、
俺もしぃも同じ気持ちだった。
しぃは張り切り、食卓に豪勢な料理を並べる。
俺はといえば、普段しぃに任せっきりの掃除や洗濯を、
昼から夕飯時に掛けてみっちり丁寧にこなした。
114
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 18:42:15 ID:f7EtI8Ec0
お互いが席に着き、幾度か言葉を交わし、晩餐にありつこうとしたその時。
テーブルの隅に置いたペアで購入したグラスのかたわれが床に落ち、音を立てて割れた。
素手で欠片を拾おうとするしぃを危ないからと制止し、
俺はゴム手袋を付けて片づけようと手を伸ばしたその時だった。
115
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 18:42:38 ID:f7EtI8Ec0
その破片の歪な“角”から、雨が降る前の空よりも濁った青い煙が立ち始めた。
116
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 18:42:58 ID:f7EtI8Ec0
煙は初め、螺旋を描き始めた。それはやがて大きくなり人一人分程の渦となる。
渦の中心へと凝縮されるように吸い込まれる煙は、少しずつ、その輪郭を形成していく。
その姿は、どの角度から見ても騙し絵のように尖っており、形が出来ても尚、不規則な変化を繰り返している。
幾千もの刃が蠢く姿は、精一杯に比喩表現すればかろうじて犬のように見えるかもしれない。
その大きく裂けた口と思われる穴からは、腐臭を漂わせる長く青い舌が垂れ下がっており、
身体と同じ青色をした膿を滴らせながら、獲物を探す蛇のように不気味にうねっていた。
117
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 18:43:20 ID:f7EtI8Ec0
言葉を失った。何なのだ。これは。
頭の奥で常識が崩壊する音がする。
その不浄の存在は、固まる俺たちを放置して好き勝手に出現し続ける。
118
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 18:44:36 ID:f7EtI8Ec0
テーブルに並べたサンドイッチの角から、
念入りに掃除機をかけた絨毯の角から、
貯金して買った液晶テレビの角から、
写真を飾るコルクボードの角から、
二人が座っていた食卓の角から、
中庭へと繋がるガラス戸の角から、
冷蔵庫に張ったたメモ用紙の角から、
今日を丸で囲んだカレンダーの角から、
お揃いの服を仕舞う衣装ケースの角から、
無数の舌と唾液を引きずりながら、飢えた目でこちらを視ていた。
( )薔薇の膿のようです( )
了
119
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/04(月) 18:49:18 ID:f7EtI8Ec0
主催者様
大変申し訳ありません。
台詞の頭位置が完全にずれておりますね……。
まとめられる際は修正して頂けると幸甚にございます。
120
:
◆S/V.fhvKrE
:2020/05/04(月) 20:52:54 ID:VhOxsCqo0
>>119
主催です。
台詞の頭位置のズレというのは、どの部分のことか詳しくご指定いただけますでしょうか
二行以上の台詞の(以下引用です)
(,,゚Д゚)「俺の望みは、この非常識な出来事を全て忘れて、
何も知らないしぃと出会い、一からやり直して結ばれることだ」
↑↑
二行目の、この空白の数のことでしょうか?
それからもう一点確認です。
タイトルAAを半角半濁点への変更は必要ですか?
以上二点、ご回答よろしくお願いします
121
:
名無しさん
:2020/05/05(火) 15:33:04 ID:LML993D20
乙乙
ホラーかと思ったらファンタジーだと思ったらホラーな作品だった
122
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/05(火) 19:26:07 ID:gGVRfSsg0
>>120
主催様
作者です。レスありがとうございます。
二行目の空白ですね……。
それからタイトルAAについても半角半濁点への変更を希望します。
お手数をお掛けして申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。
123
:
◆S/V.fhvKrE
:2020/05/05(火) 19:39:15 ID:JQBlYSNY0
>>122
ご返信ありがとうございます。承知しました。
124
:
◆NqJ/Phe1aU
:2020/05/06(水) 09:48:03 ID:1WZV.3go0
>>123
確認しました。ご対応ありがとうございます。
125
:
◆S/V.fhvKrE
:2020/05/07(木) 00:17:25 ID:4Y9D4uis0
【投下期間終了のお知らせ】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
126
:
名無しさん
:2020/05/22(金) 22:14:40 ID:JZi2g9120
良き
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