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錬金術師は遂せるようです

78 ◆vXEvaff8lA:2020/05/03(日) 21:47:16 ID:YLCyI6VU0
激昂する模原は、今や人としての形を保っていなかった。
自身を人間として定義する動機――妹について、都子が否定を口にしたからである。
しかし模原は、そんな自分の有様に気付くことはなく、
未だ自らを人間の一種として認識をしていた。
すべては盲目的に、黄金を産み出す業――錬金術の成せる奇蹟と信じたままに。
彼は、進みゆく。
立ち竦み、こちらを見下ろす、高出 都子の元へ。
息を呑む都子が一つ瞬きをする度に、模原はその距離を縮めていた。
もはや彼の手は梯子を捉えている。
あと一つ、息をすれば彼女の首は捻られていたことだろう。

ζ( ー *;ζ(だけど、怖がってなんかいられない――!)

数巡前に入間と交わした言葉を思い出し、都子は勇気を口にする。

ζ(゚ー゚*ζ「そもそもあなたは、生きた人間ではない」

恐怖が膠のように張り付いていた筈の口が、
雄弁に言葉を紡いだ瞬間、模原は動きを止めていた。
彼自身理由は分かっていなかったが、
都子にはそれが、呆気に取られていたようにも思えた。

ζ(゚ー゚*ζ「あなたは、ホムンクルスなの」

(#o∀o)「何を、言っている――」

嘲笑するように、模原は呟いた。
彼の脳裏では、参倍郷に従事する錬金術師の口が動いている。
蒸留機に人間の精液を封じ、一定の温度を保ち続けることで、産まれる小人。
姿を生じた時点で、それはあらゆる知識を備えているが、フラスコの外へは出られない。
取るに足らない知識を持つ人間の手なしでは、
存在することすら叶わぬ知恵の小人。
――それこそが、ホムンクルス。


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