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錬金術師は遂せるようです

73 ◆vXEvaff8lA:2020/05/03(日) 21:43:48 ID:YLCyI6VU0
( ^ν^)(いよいよピンチだな)

ピンボケした危機感が身を襲うが、入間にとっては計算の内だ。
不遜な笑みを漏らし、模原はナイフを逆手持ちした。
入間がそれを視認するよりも早く、模原は彼の間近へと駆け出した。
入間へと振られるナイフは、相変わらず大味な攻撃である。
――さて入間の脳裏には、こんな選択肢が浮かんでいた。

一、模原の首をへし折る
二、模原を撲りつける
三、鍔迫り合いをして、攻撃を防ぐ
四、自殺する
五、自分の目玉を抉り出す
六、土下座して、模原に首を差し出す

この中にどれだけ、入間の自由意志が与えられているのか。
答えはたった二つ――三番以降の選択肢は、模原の干渉によって与えられた選択肢であった。
この勝負、入間の分は相当悪かった。
なにせ彼の脳裏では身勝手な陣取りゲームが行われているし、
選択肢を注視するには、余計な集中力を割かなくてはならなかった。
おまけに入間の肉体は、長年の勘によって反射的に動くきらいがあった。
うっかり陣地を増やし、それを一斉に奪い返されてしまったら、
一戦目に起きた選択肢の詰みに陥ってしまう。
平時であれば有難い反射神経も、今回ばかりは足手まといと化していた。

( ^ν^)(まったくもって、クソみてぇな選択肢ばかりだな!)

バチギレしながら、入間はマシな選択肢を採った。
入間の持つナイフと、模原のナイフが交差。
そして一厘の火花を散らし、聞くに耐えない音を生み出した。

(;^ν^)(あっっっぶね)

飛び退く入間は、手中のナイフを見やった。
幸いナイフには小さな傷が残るばかりで、折れることはなかった。


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