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錬金術師は遂せるようです

53 ◆vXEvaff8lA:2020/05/03(日) 21:12:25 ID:YLCyI6VU0
入間の脳に、見えざる手が近付く。
親しみと、慈悲を携えて、恣意的な選択を、柔らかく、浸透するように。
入間の脳を、その手は捏ねる。
捏ねる手から、一献の雫が垂れる。
親しみ、情報、個人的な話、記憶。
知らずとも知らされる、彼のこと。

(; ν )(そんな、バカな)

焦げのようにこびり付いた入間の倫理観が、理解を拒もうとする。
不可解な現象に対する解の一部――鮮やかな毒を持つ
真実の尾は、入間の手に委ねられていた。

(; ν )(あり得ない)

道徳的に考えて、と言い訳する彼は、溜飲の下がるような思いがした。
一方彼の手の内からは、真実の尾がすべり落ちようとしていた。

川 ゚ 々゚)[本当にあり得ないことかなぁ?]

現か夢かも分からぬ精度で、來狂はそう言った。
今ここに出現した彼の実在性など、この際入間には関係なかった。
それは入間にとって、非常識を象徴する存在が、
身近な人間の形を借りているに過ぎなかったからだ。

川 ゚ 々゚)[ここで飛び抜けなきゃ、生きては帰れないぜ?]

乱雑な物言いは、調子のいい入間そっくりだった。

(; ν )(――認めなくては、ならない)

悍ましい業は、人間が持つ無限の可能性の一つであった。
それを否定することは、智へと近付く階段を引き返すことに、他ならなかった。

( ^ν^)「俺は、認める」

落ちかけていた毒の尾を掴み、入間は宣言する。
バラバラに散じ、宙へと撒きかけたピースが、一つの理論として結びつく。
それは、思考の黎明ともいえる瞬間だった。
夢幻めいた空想が、黴くさい空気と混ざり合う。
朧となる白い夢の向こうで、來狂は微笑んだ。
彼はやはり、狂っていた。


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