したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

錬金術師は遂せるようです

102 ◆vXEvaff8lA:2020/05/03(日) 22:21:47 ID:YLCyI6VU0
――都子の救出劇より、半年が経とうとしていた。
彼女は現在も、來狂の住居に匿われている。
【傷みの王】を摘出したことで、彼女の肉体は超常的な回復力を失った。
人並みの身体能力を得た都子は、
移植された心臓の経過を見ながら、日々リハビリに励んでいる。
長い努力の末、ようやく都子は軽い運動ができるようになった。
短時間であれば走ることも、泳ぐこともできる。
制約の多い日々は、未だ抜けることができない。
だが何も許されていなかった頃に比べれば、彼女は自由に選び採ることが出来た。
更に空いた時間を活用して、彼女は勉学にも励んでいた。
通信制の高校に入学すべく、都子は自力で問題集をこなしていた。
数学はやや苦手だが、特に気に入っているのは歴史や英語である。
物語めいた教科とそれに追随する文化の枝葉に、
どうやら彼女は惹かれているらしかった。
その興味は止まるところを知らず、じきに同世代の人間を追い越すことが予想できた。
もっとも本人はそれに気付いていないのだが。
――そんな忙しく過ごす彼女も、時折外出することがあった。
來狂の庇護を離れ、散歩をするのだ。
時間にして最大一時間半の、散歩。
それが都子にとって、一番の楽しみであった。
さて今日の都子は、川沿いのサイクリングコースを、歩いていた。
気付けば季節は秋へと変わり、微かに夏を残した風が吹いていた。

ζ(゚ー゚*ζ「気持ちいい天気ですね」

三つ編みを風に攫われながら、都子は言った。
柔らかく笑みを浮かべる視線の先には、お目付役の入間が佇んでいる。

( ^ν^)「ああ」

都子の外出には、毎回入間は携わっていた。
護衛半分、楽しみ半分といった割合で、彼も都子との時間を楽しんでいた。
なんと先日は彼女の自立を見守るべく、アパートの内見にも付き合った。
その際彼女には頼れる身内がいないことに気付き、
不肖ながらも彼女の従兄弟を入間は名乗ることになった。
多少気恥ずかしかったものの、入間は満更でもなかった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板