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( ^ω^)文戟のブーンのようです[5ページ目]
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【このスレについて】
●このスレは何か
→ブーン系の品評会企画です。
作品による競い合いと、それによる作者同士の研鑽を目的としています。
●品評会はどう行うのか→>>2参照
●どうすれば参加できる?→>>3参照
●スレタイにある『文戟』って何?→>>4参照
【その他のルール、細則>>5】
【生徒名簿>>6】
【過去スレ】
テストスレ
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https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1538666460/
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スマンが( ・∀ ∀・)は何て呼べばいいんだ
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奇け…いや配慮して天使モララーとでも呼ぼうか
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奇形モララー……キモラー
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キモラーはあんまりだろ……
きめぇモララーだから略してキメラでいいんじゃね?
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>>96
( ・∀ ∀・)「「ショボーン君、早速反映させてくれてありがとう。ありがとう」」
d( ・∀ ∀・)b「「ブログの進展も、これから投下されるであろう作品も楽しみにしているよ!! よ‼︎」」
( ・∀ ∀・)「「それから皆々様」」
∩( ・∀ A・)「僕の事と」
( ・A ∀・)∩「僕の事は」
d( ・∀ ∀・)b「「キケイと呼んでくれて構わないんだからな‼︎ な‼︎」」
( ・∀ ∀・)「「あ‼︎」」
( ・∀ ∀・)「「それから>>103-4のお二人さん。お二人さん」」
( ◉∀ ∀◉)「「お前も奇形にしてやろうか??」」
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>>105
( ◉∀ ∀◉)「「怒りのあまり酉を打ち間違えていたようだよ。ようだよ」」
( ・∀ ∀・)「「申し訳無い。申し訳無い」」
( ・∀ ∀・)「「こちらが正しい酉になります」」
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ちなみに皆さん作品の進歩状況はどんなものなんですかね?
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(´・ω・`)「礼には及びません、仕事ですから。」
(´・ω・`)「ブログは更新しつつ、利便性を上げてくつもりなので乞うご期待。」
(´・ω・`)「取りあえず『前の記事』『次の記事』の表示をつける予定。」
(´・ω・`)(ところでブログを見てくれてる人ってどれだけいるんだろう)
(´・ω・`)「ところでみんなは作品を書き始めてるのかな?僕はまだ序盤しか書き終えてないよ。多分手直しはしなきゃいけないし。」
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>>108
¥;・∀・¥(この慈善事業を仕事だと……?)
¥;・∀・¥(そして素晴らしいブログの出来栄え……)
¥;・∀・¥(こいつ……出来る!)
¥・∀・¥「ショボーン様のブログありがたく使わせて貰ってるよ」
¥・∀・¥「読み返すときの手間が省けて大変助かってる」
¥・∀・¥「作品の進捗だけども半分くらいかなぁ」
¥・∀・¥「仕事から帰って家のことやって、やっと書き始めたらこんな時間だし中々進まないね」
¥・∀・¥「プロットとか書かないでそのまま書いてるから作業量自体は少ないんだけどね」
ヽ¥・∀・¥ゝ「時間を作るのが一番大変だと実感したよ」
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>>108
( ・∀ ∀・)「「そのストイックさは尊敬に値するよ‼︎ 値するよ‼︎」」
( ・∀ ∀・)「「現在の進歩は後で推敲する事も考えると6割くらいかな? かな?」
( ・∀ ∀・)「「12月には投下出来るといいなー。いいなー」」
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夏休みの宿題は最終日になんとかしようとしてなんとかならないタイプの人でした
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从 ゚∀从 「12月入ってから頑張ろうと思ってる…」
从 ゚∀从 「書き溜めどころかプロットすらゼロだぜ」
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スニフィは性別は何なのだろう
男なのか女なのか男の娘なのか雄んなの子なのか
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スニフィの鱗剥がす小説で抜いたことあるからスニフィはメス派
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>>109
(´・ω・`)(シン・ゴジラをパロったんだが気づかれなかったか…)
(´・ω・`)「それはともかく、ド素人の作ったサイトを評価してくれてありがとう。励みになるよ。」
>>110
(´・ω・`)「はっはっは自身を様付けで呼ぶ奴がストイックだと思うかい?」
(;´・ω・`)「12月10日が締め切りだからね、急がないと。」
(;´・ω・`)(無事に完成するかなあ〜)
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>>113
(´・ω・`)「スニフィ君は女役で見ることが多いかなあってか男役の作品がすぐに思いつかない」
>>112
(´・ω・`)「てっきり女だと思ってたが…稀にある男のハインだったか」
(´・ω・`)「大五郎のハインは確か男だったよね」
(´・ω・`)(中性的な顔立ち、細身で筋肉質なボディ、ちょっと高い声、長い髪、活発でちょっと捻くれた性格…)
(´・ω・`)(そんな男の子とあんなことやこんなことをするとなると…)
(´・ω・`)
(´・ω・`)
(´^ω^`)
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ハイン!貞操の危機だぞ逃げろ!!
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>>115
¥;・∀・¥(もう、まずは君が落ち着けくらいしか覚えてないよ……)
¥;・∀・¥「自分の筆が進んでないので、」
¥・∀・¥「まだ書いてないっていう生徒の意見を見ると、なんかホッとするね」
¥・∀・¥「早く競い合いたいものだ」
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( ・∀・)「三味線の演奏会場はここかい?」
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ベベンベベンベンベン
<アビバノンノン
ベベンベベンベンベン
<アビバビバビバ
ベベンベベンベンベン
<アビバノンノン
ベベンベベンベンベン
<ハーアビバノンノン
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(´・ω・`)「いい湯だな(ハハハン)」
(´・ω・`)「いい湯だな(ハハハン)」
(´^ω^`)「湯気が天井からポタリと背中に」
(*´-ω-`)「つめてえな(ハハハン)」
(*´-ω-`)「つめてえな(ハハハン)」
(*´・ω・`)「ここは北国 登別の湯」
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(´・ω・`)「bing(=インターネットエクスプローラ)のseo対策完了」
(´・ω・`)「要は、検索結果に僕の作ったサイトを表示させる為の方法ね。」
(´・ω・`)「グーグルの対策が終わってたからつい忘れてた。」
(´・ω・`)「これで、主要な検索エンジンの検索結果ではウェブが表示されるようになる筈。」
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>>120
>>121
このネタが分かる住民がどれだけいるのだろうか
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(ネタレスくらいsageろよショボン)
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(何も貢献してない名無しが人に指図してんなよ…)
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(´・ω・`)「まあまあまあ。彼の指摘はもっともだ。」
(´・ω・`)「僕が悪かったけど、その後にブログ関連のレスをしてるから許してちょんまげ。」
(´・ω・`)「まーbingのseo対策なんかについてレスされても困るだろうけど。」
(´・ω・`)「3連休中に第3回のまとめを終わらせたい。3繋がりでね。」
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( ´_ゝ`)(「12月に入っても10日間もある!ラッキー!」)
( ´_ゝ`)(って余裕ぶっこいてたけどみんなそんな早いのね……)
( ´_ゝ`)(ニューフェイス盛りだくさんでうれしいよ。よろしくな)
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>>127
(´・ω・`)「まだ兄者君にはキチンと挨拶してなかったね。」
(´-ω-`)「や」
(´・ω<`)「ら」
v(*´>ω<`)v「な」
(´^ω^`)「い」
v(´゜)Q(゜`) v「か?」
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¥・∀・¥(やっべー、件の半分から全然筆が進まねー)
¥・∀・¥(三連休とか幻想だしなぁ)
¥・∀・¥「そういえば僕らの学年とかどうなんだろうね」
¥・∀・¥「勝手に先に入学した生徒は先輩だと解釈してたよ」
¥・∀・¥「取り敢えず今期はみんな同級生的な立ち位置で良いのかな」
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(´^ω^`)「おっはよーうございまーーーす!!!!!!!!」
(´^ω^`)「今日も元気だチンポが美味い!」
(´^ω^`)「このショボーン様が!!」
(´^ω^`)「3連休を満喫出来ない社畜のチミ達を憂い!!!」
(´^ω^`)「第3回品評会『9作品を』!!!!」
(´゚ω゚`)「豪華大放出だぁーーーーー!!!!!!!!」
ワーワーワー
キャーキャーキャーキャー
ショボーンサマ-!
オレヲダイテークレー!
イヤオレガサキダー!!!
(´・ω・`)「まあまあ、もちつきたまえチミ達チミ達」
(´・ω・`)「ここから真面目な話ね」
(´・ω・`)「デミタス君の作品『赤き瑪瑙は喪に服すようです』なんだけどね、」
(´・ω・`)「あまりに長すぎるんだ。」
(´・ω・`)「だもんで、前編と後編に分けようと思うんだがいいかな?」
(´・ω・`)「一つの作品に2記事も使ってて不公平だという意見がないかの確認だけしとこうと思ってね。」
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(´・ω・`)「また、またんき君がいたら答えて欲しいんだが、『零感のようです』の最初と最後にロウソクのaaを入れてただろう?」
(´・ω・`)「今はそれをブログに反映させていないんだ。」
(´・ω・`)「何故かっていうと、君が発言をしているから。」
(´・ω・`)「今まで、僕は平等性を保つ為に作者自身の発言がまとめに入らないようにしてたんだよね。」
(´・ω・`)「たとえば『(´・ω・`) これで終わりだよ』のレスの代わりに『了』を入れるとか。」
(´・ω・`)「だから、ロウソクを乗せる為だけに君の発言を含めていいものかなと思っていてね…。」
(´・ω・`)「だったらロウソクのaaだけ乗せとけってことになるかもしれないけど、やっぱ百物語だったら『終わりだよ』と言いながらロウソクを消すものかなと思ってみたりもして。」
(´・ω・`)「是非またんき君の意見を求めるが、他の住人諸君も力を貸してくれたまえ。」
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(・∀ ・)「……もうねたらどうだ?」
(・∀ ・)「デミタスのやつを前とあとにわけるのはべつにいいとおもうぞ」
(・∀ ・)「きじのかずがptにかわるわけじゃねーし」
(・∀ ・)「オレ様のローソクにかんしてはべつになくてもいいぞ」
(・∀ ・)「ちょっとしたフレーバー的につけただけだし」
(・∀ ・)ノシ「いつもおつかれー」
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( ・∀ ∀・)「「やあやあ皆さん、皆さん」」
( ・∀ ∀・)「「一足早く投下するよ、投下するよ」」
( ◉∀ ∀◉)「「閲覧注意」」
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従兄弟のマニー氏はこの辺りでは名の知れた大富豪だ。
そこらの貴族よりか立派な作りの豪奢なお城に住んでいて、目玉が飛び出るような伝説級のアーティファクトやらマジックアイテムをたんまりと所有している。
ほんのちょっとばかし同じ血が流れているというだけで、大凡人である僕みたいな人間に色々と良くしてくれる彼の事は決して嫌いでは無い。
ただ、まあ。実際のところコイツの頭はマジでヤベーなーと冷や汗流した数は結構な回数だったりする。
彼の趣味は珍しい物の収集だ。
コレクター気質の人間というのは特に珍しい訳では無い。
無いのだが、問題の氏のように金を阿保ほど持っていて尚且つその興味の矛先が常人には理解出来ないぶっ飛んだ処にあると途端にイかれた趣味に思えてくる。
なんか良くわかんない生物の剥製とかならまだ可愛い方で、どっかの密林の原住民が作っている獣人の生首の塩漬けだとか。
過激な差別主義者のドワーフが作る、エルフの骨で作った工芸品だとか。
それらをキラキラとした瞳でもって自慢された僕の心境はどうだったと思う?
引いたよ。普通にドン引きだよ。
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ぶっちゃけた話をするとマニー氏は成金な上に悪趣味で、悲しくなる程に友人が少ない。
だもんだから僕みたいな金も力も才能もない、無い無い尽くしの凡夫じゃないと誰も構ってくれないしチヤホヤしてくれないんだろう。
金やコネ目当てで寄ってくる人は腐る程いるらしいのだが、それに対して氏は。
¥・∀・¥「僕は人間だ。だからこそ彼らと会話をしようとは思わない。
君は黄金という糞に集る蠅に対話を申し込む狂人を見た事があるかね?」
とのコメント。
無駄にプライドが高くてめんどくせーなコイツと思った数だって、流した冷や汗と同じくらいなのだけれども。
しかし氏から受けている恩恵を考えるとそう無碍にも出来ない。
何てったって氏は金を持っている。
珍しい物を沢山所有している。
美味い飯に最高の美酒をたらふく馳走してくれる。
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¥・∀・¥「この世で最上の美味、如何かしらん?」
そんな氏にこんな事を言われたのだから、そりゃあもうホイホイ着いていってしまうのも無理は無いって訳で。
僕はそこそこに心を踊らせながら、氏が迎えに寄越した最新式のゴーレム馬車に乗り込んだ。
.
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[この世で最も尊いようです]
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相も変わらず悪趣味のキンキラキンに輝く城内をマニー氏の案内で歩く。
執事やメイドは腐る程いるっていうのに僕を案内する役目は城主である彼が譲らない。
( ・∀・)「前来た時より派手になってません? なんつーか、金色の比率が増えたような」
¥・∀・¥「所有地で金山が見つかってね。市場に流しすぎると値崩れするから建築材料にしたんだよ」
( ・∀・)「ヒャー。こりゃまたスッゲーことを軽々と言ってくれますねー」
¥・∀・¥「君って奴は素直に驚いてくれるから好きだよ」
ふかふかの真っ赤な絨毯の上で弾むように歩きながら大食堂へ向かう。
あんた迷宮でも作りてーの? とツッコミ入れたくなるような無駄に長い廊下にはこれでもかと氏のコレクションが展示してある。
ミスリル製のフルアーマー型、最新式魔導騎士鎧。
宮廷魔道士が丹精込めて魔法を掛けたであろう、動く絵画。
素人目から見ても明らかに高価そうな、それでいて変な形の壺。
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( ・∀・)(どれか1つとっても、僕が一生かかっても買えないくらい高価なモノなんだろうなー)
辺りをキョロキョロ見回しながらそんな事を考えた。
まあ実際のところ、これ見よがしにコレクションを見せつけてくる氏に対して欠けらも羨望も嫉妬も抱く事は無いんだけど。
住む世界が違いすぎるしね。あと、やっぱり趣味が悪い。
廊下をテクテク歩く、たった3分の間に僕の目ん玉は無駄に豪華でキラキラした芸術品達のお陰ですっかりチカチカしていた。
大食堂はデカかった。
冷静に考えりゃあ名前にわざわざ大なんてつけるんだから御立派で当然な訳だね。
中央にドジャーンといった感じで吊るされた巨大なシャンデリアは、なんとクリスタル製ならぬ驚きのダイヤモンド製。
黄金色で統一された嫌味で悪趣味な室内をしつこい程にギラギラと照らしている。
シミ一つ無い真っ白なテーブルクロスにはヒヒイロカネ製の燭台が何個も飾られていて、黄金の大皿には世界各国から取り寄せた様々なフルーツがたっぷりと乗っている。
そんでもって相も変わらず凡人には良さが理解出来ない美術品やら何やらが其処彼処に所狭しと飾られている。
鬼の形相でこちらを睨むトーテムポール。
大股を開いて女性器を見せつける裸婦像。
頭に斧が刺さったグリフォンの剥製。
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( ・∀・)(玩具箱だ。無駄に金の掛かった、眩いばかりの金メッキで、虚勢を張った、玩具箱)
子供の頃に、宝物を集めて大事に隠した事を思い出した。
規模と金額と熱意は違うが、要はそーゆー事なんだろう。
メイドの1人に勧められるまま、精巧な細工を施しているこれまた高価に見える木材と、真珠みたいな柔らかい光を放つ上物の革で作られたチェアーに腰掛けながらそんな事を考えた。
¥・∀・¥「食前酒だよ」
我等を見守る偉大な神々に乾杯。
ここいらじゃスラムの糞ガキでも知っているお決まりの台詞を呟きグラスを掲げて、そのまま口元に向けて軽く傾ける。
普段の僕ならば今現在しっかりと握りしめている、この宝石みたいにカッティングされたロックグラスのお値段が気になるところだろう。
だが今はそんな俗っぽい事よりもその中身に心を奪われた。
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( ・∀・)(何だ、この酒?)
色は赤。
だが林檎の果実のように鮮やかな赤でも無ければ、ルビーのように煌めくように燃え上がる赤でも無い。
何と言うか汚い赤なのだ。獣の血みたいな色だ。
そこらで唸り声を上げながら臭い立つ糞を垂らしているような、そんな下等な獣の血液を態々絞りとったみたいな、澱んで燻む黒みがかった赤だった。
ふと向かいに座るマニー氏に視線をやる。
すると氏は、グラスに口を近づけたまま固まっている僕を見てニヤニヤと面白そうに笑っていた。
( ・∀・)(まさか本気で獣の血を注いだんじゃあるまいな)
この悪趣味な男ならやりかねないんだよね、マジで。
そんな事を考えながら香りを確かめる為にグラスを軽く回す。
すると意外にもそのアロマは心地良く、官能的なまでに甘露ではないか。
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勿論それだけで終わる筈も無く、後を追うようにしてスパイシーな香りが鼻腔にふわりと広がっていく。
具体的に言うならばアニスやジンジャー、ラベンダーなんかのボタニカル。
それらを中心にして、恐らくは何十種類もの貴重な薬草を惜しみも無く使ったように思える。
そして粘度は高め。
グラスの中をくるくるとかき回す度に産まれる天使の輪。
そこから垂れていくレッグはまるで透明の杯の中でこびりつくようにして、未練がましくドロドロと垂れていく。
察するにこれは、相当に甘い酒なのだろう。
最初の内はその色に怯んでいた僕だったが、小さく息を飲み込んで覚悟を決めてゴクリと喉を鳴らして一気に呷った。
( ・∀・)「あ、これは美味い」
複雑に絡み合う数多のハーブの香りが広がって、それをマイルドに包み込むのは濃厚なシロップの甘み。
口いっぱいにそれらが蕩けたところでフィニッシュはレモンとジンジャーが爽やかに締めくくる。
と、ここまでならまあよくある混成酒と変わらない訳なんだけども。
この酒はそんなモンじゃなかった。
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喉を通る度に身体の芯から燃え上がる様な熱。
これはアルコール度数なんかのチャチな問題じゃない。
実際のとこ、この酒はアペリティフにしちゃあ弱いくらいなのだ。
それでも何と言うか、飲む度に身体の中から活力が湧いてくる感じだった。
心臓の鼓動がドクンドクンと激しくなって身体全体が熱くなり、僕の魂までもが熱く燃え上がっているようではないか。
今なら南の森で我が物顔で巣食ってる糞ったれの鬼人族もワンパンでぶっ殺せる。
そんな事を本気で思えるくらいに力が溢れてくるのだ。
¥・∀・¥「気に入ったかね」
その言葉に僕は大きく頷く。
やはり氏からの誘いを受けて正解だったと確信した瞬間だった。
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¥・∀・¥「良かった。では次は料理を運ばせよう」
( ・∀・)「あ、毎度の事ながら僕は作法とか分かんないですけど」
¥・∀・¥「気にしないでくれ。そもそも今日の食事はしっかりしたコース料理って訳でも無いからね。君が楽しんでくれればそれでいいのさ」
( ・∀・)「なら良かった。あ、その前にこの酒のお代わり下さい」
¥・∀・¥「君は本当に正直で素直な子だね」
そんな会話を楽しみつつ、真っ赤な美酒をスルスルと3杯も飲み干した。
程なくしてメイドの一人が僕の前静かに皿を置いた。
だがその料理の衝撃に僕はまたしても固まるハメになる。
ミスリル銀とサファイアで彩られた、あんた何で食器をこんなに高価にするのよ。とツッコミいれたくなる程に美しい皿に乗せられた料理。
その正体は何とホカホカと湯気を立てる2つに割れた大きな大きな茹で卵だった。
そう、茹で卵だった。
茹で卵だった。
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( ・∀・)(茹で卵じゃん)
期待外れだったか。
そんな事を一瞬だけ考えた。が、そんな愚かな考えは瞬き1つするまも無く直ぐに吹き飛ばされてしまった。
バスケットボール大の茹で卵は鶏のソレと変わらない色合いだけども、いかんせんサイズが全然違う。
そしてそれに比例するかのようにして、その芳香も比較にならない程だったのだ。
シンプル・イズ・ベスト。
いっそ寒々しいくらいに飾り気の無い、その料理とも言えないような食い物だった筈が、その香りを嗅いだ瞬間から僕はすっかりコイツに夢中になってしまった。
¥・∀・¥「味付けに使っている塩は人魚の狩場で有名なシタラバ海岸で取れる、特1級品のプラチナ・ソルトだよ。ご賞味あれ」
氏が何かウダウダ言っているが、そんな事はどうでもいい。
僕はナイフで切り分ける事すら忘れて乱暴にフォークを卵の中心にぶっ刺すとそのまま貪るようにして噛り付いた。
噛みしめるように咀嚼し、喉を鳴らして飲み込む。
すると気がついたら時にはこう呟いていた。
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( ・∀・)「美味すぎる」
味が濃い。なんてもんじゃない。
ムースのように蕩ける半熟の黄身はベルベットの舌触りで上質なクリームチーズのような奥深い味わいではないか。
本来は味なんてしない卵白の部分でさえ、仄かな甘味が感じられたし、鶏のそれとは比べ物にならない程にプリプリとした愉しい歯応えは飽きが来ない。
噛む度にジューシーな旨みがこれでもかと溢れ、飲み込む度に僕の腹がもっと寄越せと催促してくるのだ。
何だってんだコレは。
ただの茹で卵だっていうのに天にも昇るような美食じゃないか。
口内どころか脳内までしっかり蕩けて惚けた僕は、今まで味わって来た様々な料理がこの卵と比べると犬の糞みたいに思えて来た。
果たしてこれが本当に。本当に卵を茹でて、塩をかけた。
そんな料理とも言えない粗末な食い物だと言うのだろうか?
幸せだ。
口に含む度に、噛む度に、飲み込む度に。
その食感に、その喉越しに、その味わいに。
こいつぁ、ヤベェよ。
僕はすっかり参っちまった。
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あっという間に大きな茹で卵を完食した僕はとてつもなく満たされていた。
こんな美味い物を食えたのだ。これから一生マニー氏の奴隷になっても構わない。
そんな馬鹿な事を大真面目に考える程には、骨の髄まで恍惚としていた。
¥・∀・¥「先程の酒だがね」
お上品にナイフとフォークでチマチマ切り分け、随分と僕から遅れてようやっと卵を完食したマニー氏が紙ナプキンで口を拭いながら語り出す。
僕はその時になって初めて目の前に食中酒のワインが用意されている事に気付いた。
さり気無くラベルに目をやって銘柄を確認すると、それはかなりの上物。
僕のような庶民にも朧げながら聞き覚えのある名は、確かロマネスク伯爵領特産のモノの筈だ。
それの32年ものの赤だから、馬車3台は買える高級酒に違いない。
( ・∀・)(一生の内に飲むことが出来るかどうかっていう高級酒。なんだけどなー)
だが残念な事に、僕の食指は全く伸びない。
あの極上の美酒に、異常なまでに美味な卵を味わった後では、どうにも物足りないものだろうと飲まずにも悟ってしまうからだ。
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¥・∀・¥「『ドラグーン・マイスター』という名の酒なんだよ。聴いた事は?」
( ・∀・)「いや、全然。何となく、ドラゴン絡みの由来なんだとは解りますけど」
¥・∀・¥「うん、その通りだ」
氏は悪戯がまんまと上手くいった子供のような顔で僕を見つめる。
今までの経験則、この人がこんな顔をしている時は大概ロクなことが起きない。
僕は未だ惚けてる頭を何とか揺さぶると、これから飛び出すやもしれないビックリドッキリに身構えた。
¥・∀・¥「直訳すると『龍騎士の守護聖人』という意味のこの酒の原料なんだがね。
実は、滅多に手に入らないものなんだよ」
( ・∀・)「ほほう。まさか御伽噺の世界に登場する本物の龍騎士の生き血。だなんて言わないですよね?」
¥・∀・¥「まさか。僕は悪食な自覚はあるけどね、それでもカニバリズムに傾倒するほど人間は辞めたつもりは無いよ」
僕はその言葉を聴いて心底安堵した。
あのドロドロした血のような酒は確かに絶品だった。
ぶっちゃけ食前酒とか食中酒とかそーいう面倒な事を置いといて浴びるように飲みたいのが本音なのだ。
けどやっぱりその正体が気になっていた。
実は口にするのも憚れるような恐ろしいものだったのでは無いのかと、気が気では無かったのだ。
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紫煙
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¥・∀・¥「原料はだね。実のところ、これなんだよ」
パチリとマニー氏が指を鳴らす。
するとそれを合図に大食堂の扉が開かれ、ガチャガチャと音を立てて誰かが室内に入って来た。
そちらに目を移すと、そこには何と鎧をつけた見るからに屈強な二人の男。
それから彼等に拘束されて強引に引きづられるようにして連れて来られた首輪付きの女性が居た。
Σz ー )リ
わあ、ビックリ。
¥・∀・¥「知っているかね? 半龍人を」
半龍人。通称ドラゴニュート。
1000年前に絶滅されたと言われる絶対強者、ドラゴンと人との間に生まれた混ざり物の種族だ。
そこで改めてその女性を観察してみると、確かに人間と似ている姿形だが角やら尻尾やら翼等と余計なものがくっついている。
良かった、人間では無い。
そんでもって見るからにたわわで豊満な胸や柔らかそうな股間などの、女性としての急所にあたる部分は緑がかった堅牢な鱗で覆われている。
いやはや、何と言うか。
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紫煙
sageてたぜ
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( ・∀・)「変な民族衣装を着て、ゴテゴテと余計なものをつけた踊り子みたいですね」
半龍人なんて初めて見たけれども、僕の第一印象はそれだったね。
エルフを思わせる、何ていうか、いき過ぎたような作り物のような冷たい美貌。
人間でいう全裸の状態にも関わらず肝心なところだけ、まるで男を焦らす為だけのようにしっかり隠していやがるエメラルドグリーンの鱗。
こうして間近で見ているというのに翼やら角やらオマケがどうにもフェイクの安物に見えてくるし、やっぱりどう見ても夜の特殊なお仕事やってるお姉ちゃんにしか見えなかった。
¥・∀・¥「君は本当に素直だね」
お決まりとなったセリフを呟いた氏はクツクツと笑いながら説明を始めた。
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¥・∀・¥「先程の酒の材料はこのドラゴン娘の血を特殊な魔法で発酵させたモノをベースにしているのだよ。」
¥・∀・¥「もちろん副材料だって拘ったとも。
最高品質の香草を百種以上は使用してるし、シロップには稀少なブリリアント・ダイヤモンド・シュガーを」
¥・∀・¥「他にもマルタスニム子爵領自慢のジャイアント・レモンを選びに選び抜いて使用している訳だが」
¥・∀・¥「それら一級品の食材達が、あっという間に添え役になってしまう程にだ。
龍の血っていうのは最上の美味な訳さ」
¥・∀・¥「無論、美味いのは血液だけに限った話では無いけれどね」
そう言いながら氏は静かに立ち上がると、半龍人の前に歩み出した。
舞台俳優のような堂々としたその姿はなかなか様になっているのだが、どうしたことかその右手にはこれまた装飾過多なスプーンが握られている。
¥・∀・¥「最高の食材なんだよ。半龍人の女っていうのは」
氏はそう言いながらドラゴン娘の前に立ち止まる。
そしてゆっくりと右手に持ったスプーンをその眼球に突き入れた。
-
Σz;# )リ「——————‼︎‼︎」
たちまちドラゴン娘はギャンギャンと耳に刺さるような悲鳴を上げて暴れ出した。
おいこら、非常に五月蝿いぞ。
左右で抑えている男達がいなかったらマニー氏を弾き飛ばして大暴れしていた事だろう。
だがそれを予期していたであろう氏が何かを呟くと途端に甲高い悲鳴は消えて、あっという間に静かになった。
気絶でもしたのかと様子を伺うと、ドラゴン娘の口元は死にかけの人魚みたいにパクパクとしっかり動いている。
消音効果のマジックアイテムでも使ったのだろう。
氏は静かになった半龍人を満足気に見やると手に持ったスプーンをまるで焦らすかのようにしてゆっくり動かした。
ぐりぃん。ぐりぃん。と音が聞こえそうなくらいの大袈裟で勿体ぶった動きで氏が手首を捻る度に、ドラゴン女がビクンビクンと打ち上げられた魚みたいに激しく痙攣している。酷く滑稽だ。
その動作を一分近く繰り返していた氏は、やがてスプーンを静かに引き抜いて僕にソレを見せてくれた。
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体液でヌラリと光るスプーンの上には、ドラゴン娘とサヨナラしたばかりの右眼がふるふると震えながら乗っている。
ピンポン玉サイズのソレはピンク色の視神経をびっしりと纏わりつかせていて、中央で静かに輝くディープグリーンの瞳の色との対比がいっそ美しいくらい。
芸術品に疎い僕でさえ何となく見惚れてしまう程だった。
¥・∀・¥「次はスープだ」
氏のその一言でメイドさんがテーブルの上に平皿を静かに置いた。
目の前に置かれた皿は飾り気の無い地味なモノだ。
とても氏の私物とは思えない。
¥・∀・¥「料理の中でも特に色が重要だからね、スープっていうのは。皿はシンプルな物に限る」
どうやら顔に出ていたらしい僕の疑問に氏は気分を害する事も無く説明してくれた。
なるほど。そういう意図か。
確かに皿の中に入っているスープは小麦のようなごくごく薄い褐色で、シャンデリアの光をキラキラと反射している。とても綺麗だ。
だが具材は何も入っていない。野菜も、肉も、豆も。
-
ふふん、成る程。
先程の卵といい、今回の料理の趣旨は食材の味をとことんまで直球に訴えたいらしい。
¥・∀・¥「先ずは一口どうぞ」
何故か立ち上がったままスプーンを掲げて静止している氏の言葉を聞いた僕は早速スープを頂く事にした。
最早今日の食事に対する不安など何も無い。先程の酒と卵でそんなものは全て吹き飛んでいるのだ。
スプーンで掬ってそのままキス。
人は良く食材同士の調和や、味のハーモニーを音楽に例えたりする。
シンフォニーだとかオーケストラだとか、そういった具合にだ。
そして本当に素晴らしい音楽というものはだ。
心の底から、魂の根幹から揺さぶられたその瞬間に、鳥肌が立ち静かに涙を流すものだ。
( ;∀;)
舌の上にスープが乗った瞬間が、まさにそれだった。
僕は食事という行為において産まれて初めて涙を流した。
-
¥・∀・¥「そうそう。先ほどの卵はあの半龍人に産ませた無精卵だよ。濃厚な味付きが堪らなかっただろう?」
¥・∀・¥「そして今、君が飲んでいるそれこそが半龍人のテイルスープ。
切り落とした尾の骨を十日間じっくりと溶けきるまで丁寧に煮込んだモノでね。僕もお気に入りさ」
¥・∀・¥「だけどね、そのスープ。実はそれで完成って訳じゃないんだよ」
そう言う氏はいつの間に僕の隣に立っていた。
右手には勿論、オン・ザ・目玉のスプーンをしっかりと握っている。
そしてゆっくりとスプーンを傾けて、音も立てる事無く眼球を僕のスープに沈めていく。
キラキラ光る小麦色のスープに赤い色が波紋と共に広がっていく。
うにょうにょした視神経がフワリと広がる様はまるで海を揺蕩うクラゲのようだ。
緑色の眼球がスープの中でプカプカ浮きながらチャーミングに僕を見つめている。
こんにちは。ハニー。
僕は心の中で挨拶した。
-
¥・∀・¥「潰して、混ぜて、飲んでごらん?」
死んでくれ。ハニー。
僕は心の中で別れを告げると氏の言う通りにした。
スプーンの先端でゆっくりと突っつくように眼球を潰すとプチュリと音を立てて、透明なエキスが弾けて溶けていく。
そしてスープ全体を満遍なく静かに混ぜる。
赤と金の斑らだった色が均一になった事を確認すると、僕は静かにサーモンピンクに染まった液体を掬い上げて口に含んだ。
その瞬間、僕はとてつもない後悔に襲われた。
思わず号泣してしまう程に後悔するハメになった。
それはもう、深く、深く、底の見えない崖にでも突き落とされた気分だ。
心の奥の大事な部分がヒビ割れて痛みを感じるような、そんな深すぎる後悔なのだ。
どうして僕には詩の才能が無いのだろうかと。
どうして僕には物書きとしての才能が無いのだろうかと。
いや、例え才が有ろうと無かろうと学ぶ姿勢が大事なのだろう。
僕はそれらを必死で学ぶべきだったのだ。
だと言うのに、何故僕は今まで学ぼうとしなかったのかだろうか。
実に、実に愚かな事じゃ無いか。
僕は心底悔やんだ。
この味を、この美味を、この天上の味を!
この感動を、愉悦を、この至福を!!
おお神よ! この世に生を与えてくれた事を感謝致します‼︎
ブラボー! おお、ブラボー‼︎
人間万歳! 食いしん坊万歳‼︎ お代わり下さい‼︎‼︎
そしてこのトキメキを言葉にする力の無い僕に裁きを下さい‼︎
嗚呼、神よ‼︎
-
¥・∀・¥「筆舌尽くし難い。と言ったところだろうか」
氏の言葉に僕は滝のような涙を流しながら、壊れた人形みたいにガクンガクンと頷く事しか出来なかった。
何という事だろう。何てものを味わってしまったのだろう。
きっと僕はこれからの人生で飲む全ての液体が下等な獣人族の小便にしか感じられ無いのだろう。
ああ、なんて残酷なんだろう。そんでもってなんて美味いんだろう。
室内には暫くの間、あっという間にスープを平らげた僕の嗚咽だけが虚しく響いていた。
¥・∀・¥「落ち着いたかね?」
僕が平静を取り戻した事を確認した氏は声をかけてくれた。
細やかな気遣いが心に沁み渡る気分だ。
( ・∀・)「はい。無様なところをお見せして申し訳無いです」
¥・∀・¥「気にする事はないよ。人間というものは真に美しいものの前では無力な存在なのだから。
芸術しかり、音楽しかり、風景しかり。
もちろん美しき食、美食の前にも」
しばし僕とマニー氏は歓談の時間を楽しんだ。
-
そんな中、僕の視界の端に空洞になった右目があった処から血を流し震えているドラゴン娘が入った。
その尻からは緑の鱗に覆われた太い尻尾がしっかりと生えているではないか。
ふむん。何か妙だなー。
それに気付いた僕は思わず氏に尋ねた。
( ・∀・)「あのスープって尻尾が材料なんですよね? でもあのドラゴン娘には傷1つ無いように見えるんですけど。あ、右目以外は」
僕のその素朴な疑問に氏は待ってましたとばかりの笑みを浮かべ、氏は歌うように語り出した。
¥・∀・¥「半龍人の凄いところはだね、何て言ってもその生命力の強さと無限の保有魔力な訳なんだよ。
彼女らの自然治癒力はドラゴン譲り。
故に時間さえかければ大概の傷だってどうにかなる」
¥・∀・¥「そこに我ら種族人間の叡智の結晶である魔法を加えるのだ。
そう、ご想像の通りの治癒魔法さ。するとどうなると思う?」
氏はここで1つ指を鳴らした。
するとドラゴン娘を抑えていた男の1人が木製の小さな杖を取り出して彼女に向けて呪文を唱える。
話の流れから察するに治癒の魔法なのだろう。
氏が態々雇っている人間だ。きっと宮廷魔道士並みの実力ある魔導師に違いない。
-
するとここで奇妙な事が起きた。
ドラゴン娘の空っぽになった眼孔の奥から細長く白い何かが這い出て来た。
何だあれは。氏に尋ねてみようかと思った時には、既にその白っぽい何かは風船のように徐々に膨らんでいくではないか。
結局、一分もしない内に完璧に元どおりのディープグリーンの瞳がそこにあった。
なんと目玉が新たに生えて来たというのか。
¥・∀・¥「答えは欠損すらも乗り越える驚異の治癒力。
つまり半龍人とは、天上の美味にして決して尽きる事の無い。
まさにこれ以上の無い最高の食材と言えるのだよ」
普通ならどんなに素晴らしい魔導師だろうが、欠損を回復させる事は困難だ。
怪我から30分以内じゃないとダメだとか、切断された側の腕やら足やらが綺麗な状態で残ってないとダメだとか。
かなりの制約がある事は無知な僕だって知っている常識の中の常識だ。
だが今しがた目の前で起きた光景はその大前提を打ち破るものだった。
¥・∀・¥「驚いたかね?」
悪戯っぽい笑みを浮かべる氏の言葉を遮るようにして、僕は思わず立ち上がって拳を強く握り締めた。
今の僕はギラギラと充血した目をこれでもかと見開き、間抜け面を晒している事だろう。
-
だが、そんな事はどうだって良かった。
溢れる唾液をゴッキュンと飲み込み、グルグルと音立てる腹からの訴えでそれどころでは無いのだから。
( ・∀・)「そんな事より目玉のお代わり下さい」
¥・∀・¥「君って奴は。僕は君のそういうところが好きで堪らないんだよ」
一層楽しそうな笑みを浮かべた氏は、えいっと茶目っ気を含んだ声をあげながら再びドラゴン娘の右目にスプーンを突き刺した。
痛みからか恐怖からか、先程よりも激しく暴れるドラゴン娘の脚と尻尾がバタバタと跳ね回る。
何だかその様子が下手くそなフラメンコを披露しているようで、とても愉快だ。
( ・∀・)「ははは」
¥・∀・¥「ははは」
ははは、無様。
氏と僕は互いに笑いあった。
-
¥・∀・¥「君はドンブリという料理を知ってるかね?」
夢中になって7個目のぷりぷりドラゴンアイを貪る僕に氏は尋ねた。
恐らく次の料理に関する事なのだろう。
僕は口の中でレロレロと舐め回すようにして味わっていた目玉を手早く咀嚼し飲み込むと、素直に知らないと応えた。
氏は小さく頷きながら説明してくれた。
¥・∀・¥「以前にライスを食べさせた事があるだろう?
そう、白くてツヤツヤしていて、君が穀物とは思えないと驚嘆していたアレだよ。
アレを使った料理でね、何と説明したらいいだろうか。
ふむ、新しい食事のスタイルとでも言うべきか」
¥・∀・¥「ライスの上にね、本来なら別の皿に盛り付ける筈のメインディッシュをそのまま乗せてしまうのだよ。
海鮮のフライやローストした家畜の肉。果てにはトロトロのカリーやシチューなんかもね」
( ・∀・)「ほほう」
僕は物知り顔で相槌を1つ打つ。もちろん全く想像なんてつかない。
だが何の問題も無いだろう。どうせ美味いのだから。
-
見た目が悪かろうが、臭いが酷かろうが、何だろうがどうせ美味いのだ。
問題は無い。
期待に胸を踊らせる僕を見て小さく頷いた氏はまたもや指を鳴らした。
間も無く僕と氏の前に置かれたのは少々変わった深めの器だった。
真っ黒なそれは飾り気の無くシンプルなものだ。
照明を控えめに反射しているその様は上品に光輝いている。
きっとこれも高価な物なのだろう。
そして察するに、この器の正体はドンブリという料理に適した専用の食器なのだろう。
そして肝心のその中身だ。
( ・∀・)「ヤバイ」
ヤバイ。
マジでヤバイ。
わりかし上流階級の人間である氏の目の前で、必要最低限の礼儀作法すら吹っ飛ぶほどのインパクト。
待ってました、コイツの登場を。
僕の大好物であるそいつが、食欲をそそる芳しい芳香をプンプンさせながらドデーンと座しているの。
¥・∀・¥「メインディッシュだ。目の前にいる半龍人のたわわな胸肉。
丸々肥えた尻肉、逞しい尾の肉。
その他もろもろをそれぞれに適した方法でもって、ブリューレアに焼き上げたステーキドンブリさ。
君は我慢出来ないだろう。先ずは」
-
お食べなさいな。氏がそう締めくくる前に僕の身体は勝手に動いていた。
器を抱え込むようにしてから極上の肉料理を一心不乱に掻き込む。掻き込む。ひたすらに掻き入れた。
爆発した。
味覚が。感覚が。脳が。魂が。
どうか語彙の貧困な僕を許して欲しい。
だがこれだけは伝えたい。
爆発だ。
芸術は、爆発だ。
噛めば噛むほど広がるドラゴン肉の脂は甘い。
ドロッドロに濃いガーリックベースのソースの塩っぱさを宝石のようなライスが和らげて、絶妙なハーモニーを醸し出す。
掻き込む、掻き込む、ひたすら掻き込む。
空腹が止まらない。欲望が溢れ出す。
もっと、もっと寄越せ。
このドンブリを僕が死ぬまで掻き込ませろ‼︎
身体が熱くなる、燃えるように熱くなる。
魂が煌々と輝きながら熱を帯びて今まさに爆発せんとばかりにドクドクと脈を打つ。
燃やせ燃やせ!
貪り食らってもやすのだ‼︎
ウォンと唸りをあげながら丸呑みする勢いであっという間にドラゴン・ステーキ・ドンブリを完食した。
-
そして僕はニコヤカに見守る氏をギロリと睨みつけてこう叫んだ。
( ・∀・)「お代わり‼︎」
¥・∀・¥「君は本当に素直だなあ」
( ・∀・)「お代わり! お代わり! お代わりー‼︎」
お代わり絶対食べるマンと化した僕を宥めながらも、氏は卵の時のようなチマチマとした動作で自分の分のドンブリを突っついている。
殺してでも、奪い取る。
僕の殺気を感じとったのか困ったような笑みを浮かべた氏はナプキンで上品に口を拭うと語り始めた。
¥・∀・¥「君が夢中になるのも分かる。お肉は君の大好物、しかも素材は最高の半龍人のもの。
限界まで堪能したいという気持ちは痛い程に分かるとも」
氏の言葉などもはや僕の耳には入って来ない。
そうか、寄越さないというのか。
貴様は僕に見せつけるようにしてチマチマ食べているソレを僕に寄越さないというのか。
ぶっ殺す。
そう決断して飛びかかろうとした僕を止めたのは、グダグダとしゃべり続けている氏のある言葉だった。
-
¥・∀・¥「……つまり、このドンブリも、先程のスープと一緒なのだよ」
今、何と言った?
僕は椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がり氏に食いついた。
おいおいおいおい。待っておくれよ、とっつぁん。
氏は今、何て言った?
一緒だと?
あのスープと、一緒だと?
つまり、それは。
( ・∀・)「つまり。つまりですよ?
このドンブリはまだ進化すると?
目玉を入れて溶かす事によって、美食どころかそれらを越えた神々の食い物に変身を遂げた、さっきのテイルスープのように?」
¥・∀・¥「うん。その通りだとも」
僕の煮え滾る殺意はそっくりそのまま次の美食に対する期待にコロッと代わった。
早く自慢したくて堪らない。この至高の美食を味あわせてやりたい。
そんな感情がありありと分かる笑顔を向ける氏を見ていると、ますます持って期待が溢れて心臓が破裂しそうなくらいだ。
-
ああ、氏よ。どうか焦らさないでください。
今までの無礼は心の底からお詫び致します。
ですからどうか御慈悲をくださいませ。
僕の心臓とお腹は3日間餌をお預けされた犬獣人のような気持ちでビートと催促の大合奏中なのです。
ああ、一刻も早くまだ見ぬ美食を我が舌に。
二杯目のドンブリが僕の前にリロードされる。
先程のモノと全く同じ、僕が待ちに待ったお代わりだ。
お代わりだよね? これ食べていいやつだよねマニー氏? メイドさん?
僕は首をブゥンブゥンと振り回して、笑顔のマニー氏とお代わりを持ってきたメイドさんを交互に見つめる。気分は主人に尻尾振ってる犬獣人のソレ。
全力で媚びを売って許可を仰ぐのだ。
だが氏は愉しそうに笑っているだけだし、メイドさんは頭を下げると直ぐに下がってしまう。
目の前で湯気と香りを立ち上らせる目の前のドンブリに飛びつきたい気持ちを必死で、まさに血を吐くような必死の気持ちで抑えつつ僕は氏の解説を待つ事にした。
先程のスープのように、既に最高の領域に達している至高のドンブリが更なる天上の料理に昇華するかもしれないのだ。
ここは座して待つべきなのだ。
血の涙を流さんとばかりに真っ赤に血走った目つきのまま、震える身体を自ら抱き締める。
そんな、自分で自分を押さえ付ける必死な僕の姿に氏はようやく満足したのか一つ頷き、先程よりも愉しそうに語り始めた。
-
¥・∀・¥「先程も軽く触れたが、このドンブリに使われている肉は全てあの半龍人のものだ。
胸に尻に脹脛に尻尾に翼膜、更には舌まで」
¥・∀・¥「言うまでもなくこれらの肉自体の品質はもちろん素晴らしいものだ。
だけれどね。先程君が食したような柔らかく、それでいてジューシーな肉質にするには下拵えが大事なのだよ。」
氏はそこでワインを口にして軽く喉を湿らせた。
ふう。と態とらしく溜め息をついてワイングラスを揺らして黄昏れている。
焦らすんだから。んもう。
¥・∀・¥「さて、と。君は食用の肉を柔らかくする方法を知っているかね?」
( ・∀・)「それなら聞いた事ありますよ。確か焼く前にペチペチと叩くんだとか」
¥・∀・¥「うん。それも正解で間違えないね」
うんうん。と腕を組んで頷く氏はまるで大御所の料理人のようだった。
察するに僕の返答は氏の予想通りだったようだ。
-
¥・∀・¥「でもね。これは案外広まってない事なんだけど、どんな肉でも叩けば正解ってもんじゃ無いんだよ。
例えば酒に漬け込んだり、塩を揉み込んだりね。
肉の種類や部位によって下拵えのやり方が変わると言うわけだね」
¥・∀・¥「で、だ。ここからがドラゴンの、半龍人の面白いところでね。
彼女らの肉を柔らかく蕩けるものにする為には、ある変わった方法が必要なんだ。
それも、とても楽しい方法でね。解るかね?」
( ・∀・)「いえ全くそれよりドンブリの進化を早よ」
¥・∀・¥「んふふ。せっかちさんの正直者なんだから。ヒントは先程の卵だ」
氏は完全に目を据わらせた僕の即答に気分を害する事なく、悪戯をした子供を叱るような困った笑みを浮かべる。
どうやら、ここは真剣に回答しなければいけないらしい。
ここで氏の御機嫌を損ね、今まさに最強の美食へと進化するであろうネオ・ドラゴン・ドンブリがお預けになってしまったら僕は死んでも死にきれないだろう。
煩悩を必死に抑えながら少しだけ真面目に考えてみた。
卵だ。そう、卵だ。
-
( ・∀・)「そもそも半龍人にどうやって無精卵なんか産ませたんですか?」
伝承でしか知らないが今は亡きドラゴン族は元々の個体数が少なかった筈だ。
無精卵とは言えしょっちゅう産卵できるな程の繁殖能力があるならばそう簡単に絶滅なんてしないのでは無いのだろうか?
いや、そもそもだ。
( ・∀・)「ほら、一応そのドラゴン娘って人の形してる訳じゃないですか。そもそも卵なんてどうやって産むんですか?」
僕がそう尋ねるとマニー氏は満足そうに大きく頷いた。
大正解と言わんばかりの表情で「実にいい着眼点だよ」と僕を褒めつつ説明を始めた。
¥・∀・¥「結論から言うと半龍人は卵生だ。
妊婦のような形で子宮の中で卵を作る訳だね。そしてそれをある程度暖めた後に産卵して繁殖する。これは有精卵の話だ」
¥・∀・¥「そして無精卵を産卵する方法というのは簡単なんだ。発情させて放置すればいい。
ドラゴンは元々性欲が強い種族。だからこそ多種族とも子供を産める訳だよ。
着手率が低いから交尾の回数の割には出産率が悲惨らしいがね」
つまりどうにかして発情さえさせてしまえば、何度でもあの極上の卵を味わえるという事だ。
僕の腹がまた大きな音をあげて空腹を訴えた。
-
¥・∀・¥「ここで最初の話に戻ろう。
半龍人の肉を柔らかくする為の方法だが、特殊なフェロモンを分泌させる必要があるんだ。
例えば、そう。かの種族が交尾をする時に溢れ出すようなやつをね」
¥・∀・¥「さて、答え合わせだ」
そこまで言うと氏は懐から小さな小瓶を取り出した。
照明の光をキラリと反射するガラス瓶の中には毒々しいショッキングピンクの液体が入っていた。
¥・∀・¥「これは特別製の秘薬だよ。
エルダーアルラウネの蜜、キメラスミレの雌しべ、マンドラゴラの乾燥粉末。
そう、材料から君が察したように夜の妙薬という訳さ。
俗に言うなら媚薬だね」
そう言いながらドラゴン娘の前に立つ氏は静かに小瓶の蓋を開けると、摘んだ瓶を必死に暴れる彼女の鼻先に近付けた。
ははぁん、なるほど。
ここまで説明されれば鈍い僕の頭だって正解が分かるってもんだった。
つまりだ。何て言うか、僕が最初にあのドラゴン娘を見た時の印象通りの話ってオチじゃないか。
-
¥・∀・¥「発情だ。半龍人は発情させる事によって蕩けるように柔らかい肉質になるんだ。
特に雌の場合はそのオマケに無精卵まで作ってくれるオマケつき」
小瓶の中身に本能的な危機感でも覚えたのかドラゴン娘はイヤイヤと大きく首を振り回し逃れようとする。
だがそんな事が許される筈もなく、直ぐに左右の男から頭をギリギリと抑えつけられて小瓶の方に固定された。
何かを拒否して堪えでもするかのようにキュッと目を瞑っていた羽根つき蜥蜴女の末路は呆気なかった。
5秒もしない内に顔を赤くなり吐息が荒くなる。
ゆっくりと開いた瞳は涙に潤んでトロントロンに蕩けている。
どっからどう見ても発情しているではないか。チョロい生物だこと。
¥・∀・¥「面白いのはここからだよ」
どう言うことかと氏の言葉に首を傾げようとしたその時、蜥蜴女の体に予期せぬ変化が始まった。
まるで蛹から蝶が羽化するように。それとも蕾が花開くようにと言うべきか。
ゆっくりとした動きで彼女の秘部を隠していた鱗がパリパリと音を立てて剥がれ出したのだ。
-
外気から素肌を護るため覆っていたエメラルドグリーンの鱗。
その堅牢な護りから解放された乳房はまるで熟したピーチだった。
匂い立つような色気を放ち興奮で火照った身体のせいなのか、僅かながら本当に湯気も出ているではないか。
ピンク色の余りに魅力的な二つの大きな肉の塊は、乱暴に扱ったら直ぐに痛んでしまいそうな程に柔らかく、儚い。
見ているだけでその甘露でジューシーな味わいが口内に広がるような気がした。
しかしながら、そんな魅力的な乳房の肉とは対極的にチョコンとついた両胸の突起や解放された無毛の女性器についた陰核は、ピンピンと波打つように勃起している。
処女なのかしっかりと閉じている下の口からはドバドバと涎が垂れ流し状態。
何とまあ、蜥蜴女に相応しい酷く下品な眺めだった。
¥・∀・¥「こうしてしっかりと下拵えを済ませれば、後は思う存分味わうだけさ」
氏が指を鳴らす。
ああ、待っていました氏よ。
その仕草は僕にとっては最早これから始まる幸福を予告させる合図そのもの。
そう、言うなれば天使の福音のようなもの。
-
ドラゴン娘を抑えていた男の1人が腰に挿していた剣を見せつけるようにゆっくりと引き抜いた。
先程、杖を抜いた方とは別の男だ。
シャランと音立てて露わになった美しいショートソードを掲げるようにして僕と氏に向かって一礼すると、やがて静かに女の方に向き直る。
息を荒げて過剰な色気を撒き散らしつつも、やたらめったらに暴れようとする哀れな馬鹿女の様子に先の展開は簡単に予想出来た。
僕は演劇でも観賞するかのような心持ちでワクワクと来るであろうその光景を待っていた。
男が静かに構える。
姿がブレた。そう思った時には既に一閃。
いつの間に男の側にはメイドがしゃがむようにして大皿を頭上に掲げて待ち構えており、重力に従ってボトンと落ちたソレは衝撃で皿の上でプルルンと揺れた。
Σz;#◯ )リ「——————‼︎‼︎」
哀れな女が翼バサバサ尻尾ベチベチ、とやけに前衛的な踊りを披露しているが関係ない。
所詮は混じり物。
どっかの未開の地に伝わるような変ちくりんな伝統舞踊とかそこら変だろう。
-
それよりも僕を魅了してやまないのは皿で踊る桃色お肉のドームだ。
切断面からは真っ白な皿を侵食するかのように赤い赤い血がドロリと流れて鉄臭さを充満させている。
僕にはそれさえも美味しそうな匂いに感じる。
だが、本命はもちろん違う。
メイドからマニー氏へ手渡されたソレはほんの少し動くたびにプルルンプルルンと魅惑のセクシーダンスにて僕を魅了して止まないのだ。
¥・∀・¥「発情させる事によって蕩けるように柔くなった半龍人の乳房だ。大きくて立派なものだろう?」
そう言いながら氏はしばらく芸術的な乳房を眺めていたが、程なくしてテーブルからナイフを右手で掴んで乳房の肉にあてがった。
一体何をするつもりなのかと疑問を浮かべる僕に向かってニコリと優しい笑みを浮かべて氏はこう言った。
¥・∀・¥「そして料理には見た目も大事な要素だ」
ズブズブとナイフがピーチのような柔肉に沈んでいった。
-
時には豪快に、時には繊細にして乳房の肉を切り刻み、何かを象っていく。
やがて氏の動きはクルクルと果実の皮を剥くような華麗な手付きに変わっていく。
極上の肉に細やかな細工を施し、ようやくその全貌が僕にも想像できるくらいの形になった。
桃色の肉塊からは、刃が突き刺さる度に血液の赤や脂肪の線による黄色がチラホラと見え隠れする。
本来ならグロテスクに感じるべきソレらも、今この瞬間だけは一種の色彩の調和をとったアートのように思えた。
やがて極上の肉塊は、花弁の1枚1枚が薄く透けるような。
血と脂の雫がまるで朝露に濡れた艶やかさを表現するような。
そんな見るものを全てを虜にするような、見事な薔薇の花に生まれ変わった。
¥・∀・¥「美しいだろう」
氏の言葉は自信に溢れていた。
いやはや、全くもって見事です。僕はそんな思いを込めて精一杯の拍手を送った。
-
花弁の断面は肉と脂肪と数多の筋が照明の光に照らされる事によって、まるで木目のような美しい模様を描いている。
切り落とす前は下品なセクシャルポイントでしか無かった乳頭も、花の中央にあしらう事によって、ますます薔薇の花を構成するパーツにしか見えないではないか。
氏はやはり数多くの芸術品を愛でるだけあるのだろう。
そういったセンスが浮き彫りになるような見事な作品だった。
やがて氏はゆっくりと僕の方に近づき、繊細なガラス細工にでも触れるような優しい手付きで桃色肉の薔薇をソッと掴む。
¥・∀・¥「これで完成だ」
最高の料理の上に、それをさらなる美食へと昇華させる奇跡の花が静かに彩られた。
¥・∀・¥「ドラゴン・ステーキ・ドンブリの真の姿だよ。
薔薇の形に飾り切りしたサシミと呼ばれる生の肉を添えて、ね。
約束通りの最高の美食。味わいたまえ」
僕の身体は興奮と歓喜で極度に震えていた。
スプーンを手に取るも手が震えて今にも乗せたお肉が溢れ落ちてしまいそうだった。
ゴクリ。
唾を飲む。
覚悟を決めて、僕はスプーンごと天上の美食に噛り付いた。
-
¥・∀・¥「踊ろう」
放心していた僕はそんな氏の言葉で我に返った。
目の前には空のドンブリとスプーン。
ああ、僕はあれを食してしまったのか。
この世で最も美味い、究極の料理を。
差し出された氏の右手を取り、僕は立ち上がった。
静かなヴァイオリンの音色を機に盛大なオーケストラが幕を開ける。
いつの間にやら控えていた最高の楽団の最高の演奏をバックに僕と氏は互いに手を取り踊った。
言葉は要らない。
最高。そんな言葉すら安っぽく聞こえてしまう究極な味を知った者同士。
僕と氏はこの感動を分かち合える唯一無二の存在なのだ。
回る、回る。
手を取り合い、しっかりと互いを見つめ合いながら僕達は踊り続けた。
この輝かしい瞬間が、永遠に続く事だけを願って。
ただただ、夢中で踊り続けた。
-
¥・∀・¥「何を隠そう、半龍人のコースは未完成なんだ」
外では日が暮れて月が夜を照らしている頃だろうか。
すっかり踊り疲れた僕がドラゴン娘の陰核のフライをツマミにして気怠げにワインを飲んでいると氏がこう切り出した。
はて?あれで未完成とは。
一体どういう事なのだろう。
¥・∀・¥「前菜が無かっただろう? それにデザートもだ。
実はメニュー自体は出来ているんだが、材料を揃えるのに手間がかかってね」
手間がかかるとは一体どういう意味だろう。
氏は大陸の裏側からでも金にモノ言わせてあらゆるものを収集できる男だ。
そんな彼が手に入れる事にまごつくモノなどあるのだろうか?
¥・∀・¥「前菜はトマトとチーズのカプレーゼ。
デザートはシンプルなヴァニラ・アイスクリン。
これらに必要なモノは分かるかね?」
¥・∀・¥「そう、ミルクだ。半龍人の母乳が欲しいのだよ」
.
-
なるほど、確かにそれは手間がかかるだろう。
種を仕込み母乳が出るまでの期間は人間換算で数えると約10ヶ月。
半龍人がどうだかは分からないが半分とは言え我ら人の子の血を継いでいるなら時間はかかるだろう。
¥・∀・¥「という訳で、今日これから極上の母乳を手に入れる為の下拵えをするつもりなんだが」
¥・∀・¥「一緒に如何かしらん?」
氏の言葉に僕はドラゴン娘に目を向ける。
すっかり魔法で傷一つ残す事なく回復したにその裸体は極上だ。
今までは食材としてしか見ていなかったが、改めて考えると性欲処理の相手としても悪くは無いだろう。
¥・∀・¥「血も肉も卵も骨も乳も。
全てが天上の食材と化す半龍人は、この世で最も尊い存在だ」
部下のショートソードを拝借したのか手遊び代わりに蜥蜴女の臀部の肉を削ぎ落としながら氏は呟いた。
確かにその通りだ。
味は極上。魔法を加えれば無限に増える。
おまけに文句無い美形だから夜を慰めるのにも利用が出来る。
だが僕から言わせて貰うなら氏はやはり趣味が悪い。
母乳の為とは言え、自分の子供を孕ませ、あまつさえその女の全てを食材にしようなどと考えるとは。
僕のような一般的な感性を持った凡人からは考えられない、まさに狂気の沙汰ではないか。
-
¥・∀・¥「これをお飲み。
半龍人の睾丸を加工して作った精力剤さ。
一口飲めば一週間は寝ないですむ」
( ・∀・)「あれ? あのドラゴン娘って雌ですよね? なんで睾丸なんか用意出来たんですか?」
切り落とした蜥蜴娘の耳を甘噛みしていた氏は僕の疑問に一瞬キョトンとした表情を見せた。
やがて何かに納得したかのように何度か頷くと説明してくれた。
¥・∀・¥「言い忘れていたんだが、実は手に入れたのは番いでね。
まあ雄の方は先日、心臓のソテーを試す為に解体してしまったのだよ」
( ・∀・)「ははぁん。なるほど」
.
-
従兄弟のマニー氏はこの辺りでは名の知れた大富豪だ。
そこらの貴族よりか立派な作りの豪奢なお城に住んでいて、目玉が飛び出るような伝説級のアーティファクトやらマジックアイテムをたんまりと所有している。
ほんのちょっとばかし同じ血が流れているというだけで、大凡人である僕みたいな人間に色々と良くしてくれる彼の事は決して嫌いでは無い。
ただ、まあ。実際のところコイツの頭はマジでヤベーなーと冷や汗流した数は結構な回数だったりする。
そして今まさにその回数が更新されたところだ。
( ・∀・)「全く、やれやれだぜ」
僕は渡された精力剤を一気に飲み干した。
存外、フルーティーなその風味に驚きながらもシャツを脱ぎ捨てる。
全くマニー氏は本当に趣味が悪い。
僕はそんな事を考えながらズボンのホックに手をかけた。
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[了]
.
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( ・∀ ∀・)「「約19000字、長々と失礼しました! 失礼しました‼︎」」
( ・∀ ∀・)「「それからショボーン君、支援ありがとう! ありがとう‼︎」」
d( ・∀ ∀・)b「「先輩方や同期のみんなの作品を楽しみに待っているんだからな! な‼︎」」
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Σz ^ー )リ おもしれぇ〜〜〜〜〜乙
Σz ^ー )リ 腹減ったわ〜〜〜〜〜〜〜〜
Σz ^ー )リ 文戟相手じゃねえけど負けてらんねぇ〜〜〜〜〜〜
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めっちゃ面白かった
こういう悪い奴らが楽しくやってる作品すげぇ良いわ乙
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乙乙
やべーやつ
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(;´・ω・`)「なんてもんを読ませてくれたんだ」
(;´・ω・`)「僕はグロ耐性があまり無いんだけどな〜」
(;´・ω・`)「取りあえず生首外して感想を書いてくよ」
一番最初に「引き込まれる文章だ」と感じた。一つ一つを見ていくと「くっさい」のだが、「くっさい」言葉が読者を作品の世界に上手い具合に取り込んでいく。
「とっつぁん」や「芸術は爆発だ」等の「パクり」も地の文の「くささ」で文章内に溶け込み、全く違和感ないのには脱帽。
マニーだけでなくモララーも狂ってるのもとても良い。半龍人が出てきた時、前からの流れでモララーが拒否反応を示すのかと思ったがそうでなかった。
「引いたよ。普通にドン引きだよ。」「本当に趣味が悪い」となどと言っておきながらとても楽しそう、幸せそうにマニー氏に付き合っている。
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ただ、少しやり過ぎ、とか、蛇足なのではと感じる部分もあった。
例えば、>>142の「勿論それだけで終わる筈も無く」とか。ここでは勿論の効果が薄いから、「それだけでなく」の方がいいとは思う。あくまで僕の意見だけどね。
だが、全体的に見ればやり過ぎな位の表現がこの作品の味を出していて、これは驚嘆に値する。僕はブーン系作者の一部が用いるクド過ぎる表現が好きでは無いのだが、そのクドさを上手く使っているキケイ君は凄い!本当に凄い!このショボーン様の賛辞を貰えて幸せだろう。はっはっは。
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Σz#^ー )リ 感想期間にやりぃや! こっちも感想書きたくても我慢しとんのやぞ!
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(´・ω・`)「個人的な趣味を言わせてもらうなら、雄も生かしておいてチンポの味を堪能してもらいたかったかな。苦手なグロ作品を読むならね。」
(;´・ω・`)(偉そうな感想を書いておいて、まだ作品が仕上がる気配がないんだよな〜どうしよう)
>>132
(´・ω・`)「あの後キチンと『寝た』さ」
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( ・∀・)「いや、いつ何を書こうと自由だろ」
( ・∀・)「感想期間が正式に感想を書くことになってるだけで」
( ・∀・)「今感想を書きたいという気持ちを制限するものではない」
( ・∀・)「感想って水モノだと思うしね」
( ・∀・)「時間が経てば相対化されてしまう」
( ・∀・)「熱いうちに書きなぐって、冷えてからもう一度書くのだってありさ」
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>>191
(´・ω・`)「投稿期間に感想を書いてはいけないというルールは無かった筈だがね。今までも投稿期間に感想を書いてた人もいたことだし。」
(;´・ω・`)「ただ、確かに投稿期間に書く感想にしては重すぎたかもしれないね。自粛も考えておくよ。」
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>>193
(´・ω・`)「そういってくれると嬉しいね。ありがとう。」
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( ・∀・)「ちなみに僕は、マニーが踊ろうって言ったところが好きだな」
( ・∀・)「それにしても…」
( ・∀・)「今まで余裕ぶっこいてたことを後悔してるよ僕は」
( ・∀・)「所謂ピンチってやつだね…」
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(´・ω・`)(そういや先輩後輩の区別ってどこでつけるんだろう)
(´・ω・`)(ここら辺の話し合いは品評会後でいいかな?)
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Σz ^ー )リ ……
Σz ^ー )リ 確かに軽率に叱ったやいね
Σz ^ー )リ 申し訳ない
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( ・∀ ∀・)「「暖かい感想や乙、ありがとう。ありがとう」」
( ・∀ ∀・)「「改めて読み直したりショボーン君の感想、批評。モララー君の感想を受けて僕等ものすごーく自作品語りをしたくて堪らない」」
∩( ・∀ A・)「だが!」
( ・A ∀・)∩「だが!」
( ・∀ ∀・)「「ここはググっと我慢させてもらうんだからな‼︎ な‼︎」」
( ・∀ ∀・)「「品評会後にみんなの作品を読みながらじっくり語りたい。そんな事を考える僕等でした。僕等でした」」
>>197
( ・∀ ∀・)「「勝手にブーン君やドクオ君辺りまでが先輩だと認識していたよ」」
( ・∀ ∀・)「「あんまり明確に決めなくてもいいんじゃないかな? かな? 各々のフィーリングでさ」」
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あとがき作者の一言コーナー大好きマンだから自作品語り楽しみだわ
解説とか読むと評価が一変したりするしな
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