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(´・ω・`)は偽りの亡霊を捕まえるようです <解決編>

258名無しさん:2018/11/13(火) 17:53:09 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 亡霊から?
 そういえば、どうして、亡霊はギミックに用いたスマホを持ち出した?
 
 状況を鑑みるに、指紋は必ず残ってしまう。
 指紋というものは、すべてを完全に拭い去るのは非常に難しい。
 
 また、持っているところを見られるだけで命運は尽き、
 どこかで処分したとしても、それがまた足跡となる。
 だからこそ、亡霊にとっての失態になりうるのだが、どこか、香ばしい。
 
 そんなリスクなど、承知に違いない。
 とすると、どうして亡霊はスマホを持ち出した。
 
 
 動機は、十中八九、
 兄者のスマホが亡霊にとって致命的な弱点だからだろう。
 しかし、亡霊の050番号から電話をかけたとなれば、それはさしたる弱点にはならない。
 どうやって兄者の電話番号を得たのか、という疑問こそ残るが、持ち出すほどではなかろう。
 
 亡霊にとっての致命的な弱点。
 持ち出した、というのが失態にはなりそうであるが、
 それと兄者の異変が、リンクしない。
 
 兄者は、亡霊以外の何者かから、電話を受けた。
 それも、何事にも優先されるほどの、重要な相手から。
 
.

259名無しさん:2018/11/13(火) 17:54:02 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 ┏━─
    午前十一時〇〇分  ヴィップ県警  捜査本部
                               ─━┛
 
 
 
( ゚д゚) 「なにッ!?」
 
 東風さんの怒号で捜査一課に緊張が走った。
 ペニーから流される、擬古と貞子をつなぐ第三者の可能性。
 人手を総動員させたなかでの作業に、進捗が見られた。
 
( ゚д゚) 「わかった!」
 
 内線を、受話器を叩きつけて切った。
 何事だ、と思った自分と鈴木は、手を止めて東風さんの後ろに集まった。
 
 
.

260名無しさん:2018/11/13(火) 17:55:03 ID:0on9OJjc0
 
 
 
/ ゚、。 / 「どうしましたか!」
 
( ゚д゚) 「……やりやがった……」
 
 東風さんが、拳を握りしめる。
 しかし、それは怒りで震えていない。
 噛みしめるように、手を、固く握っていた。
 
 
( ゚д゚) 「ビンゴだ、大当たりだ」
 
( ゚д゚) 「フッサール擬古が便宜を図った第三者を、特定した!」
 
( <●><●>) 「…!」
 
 可能性の濃かった話とはいえ、
 いざ本当にそれを聞くと、かえって疑いたくなった。
 
 ほんとうに、そんなことがあり得たのか。
 今までの捜査がことごとく空回りだったこともあり、言葉にできない達成感が込み上げてきた。
 
.

261名無しさん:2018/11/13(火) 17:56:04 ID:0on9OJjc0
 
 
 
( ゚д゚) 「子に恵まれなかった老夫婦、名前は鷺宮」
 
( ゚д゚) 「七年前、擬古を仲介して貞子が引き取られている!」
 
 鷺宮、老夫婦。
 名前からして、裕福な家庭なのだろう。
 
 
( <●><●>) 「対応は」
 
( ゚д゚) 「いま下から引き継いだところだ」
 
 息遣いが荒い。
 警部とは対照的に、東風さんは喜びを一切隠そうとしない人なのだ。
 捜査も佳境に入ったことを、改めて肌で感じた。
 
 
( ゚д゚) 「姪っ子さんが電話に対応していたらしい」
 
( ゚д゚) 「肝心の老夫婦は寝ているようでな、いま起こしてもらってるんだ」
 
/ ゚、。 / 「じゃあ……!」
 
( ゚д゚) 「はじめるぞ、亡霊の墓荒らし!」
 
.

262名無しさん:2018/11/13(火) 17:56:43 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 ┏━─
    午前十一時〇八分  ヴィップ大学
                           ─━┛
 
 
 
(´・ω・`) 「!」
 
 電話がかかってきた。
 間髪入れず手に取った。
 
(´・ω・`) 「…ッ」
 
 どくん、と心臓が鳴った。
 亡霊からだ。
 
 
(´・ω・`) 「今度はなんだ」
 
  『第二の指示』
 
(´・ω・`) 「なに?」
 
.

263名無しさん:2018/11/13(火) 17:57:16 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 この期に及んで、第二の指示だと。
 逃げるつもりは、さらさらないというのか。
 それとも、そう見せかけて、逃げるつもりなのか。
 
(´・ω・`) 「よく呑気なことを言ってられるな」
 
(´・ω・`) 「なんだ、逃亡用の車でも欲しいのか」
 
  『盛岡デミタスを、経済学部学生課まで連れていきなさい』
  『それも、なるべく多くの職員と一緒に』
 
(´・ω・`) 「……なんだと?」
 
 法学部の次は経済学部か。
 結構な距離がある、十分ほどかかるだろうか。
 しかし、多くの職員と一緒に、とは。
 
 
  『約束破り、だなんて言われたくないから、先に予告します』
  『道中、隙あらばデミタスを、殺します』
  『むろん、殺さない可能性もありますがね』
 
(´・ω・`) 「…? いったい…」
 
 
(´・ω・`) 「!」
 
.

264名無しさん:2018/11/13(火) 17:57:37 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 そうか。
 そういうことか。
 亡霊は、逃げるつもりだ。
 
 人が多いことの優位、それはわかった。
 まわりにいる人間の全員が、容疑者に見えてしまうのだ。
 
 亡霊は女だと思っている。
 三十代で、痩身で、筋肉が衰えていそうな、女性。
 
 しかし、そんな人間、未だに見つけられていない。
 文字通り、亡霊のように姿をうまく消して立ち回られている。
 
 
 僕としては、もうそんな虚像を頼りにはしていられなくなる。
 男だろうが女だろうが、職員だろうが教授だろうが一般人だろうが、
 あらゆる人物が亡霊に見えて仕方なくなっているのだ。
 
(´・ω・`) 「………そういうことか」
 
  『お気づきいただけましたか』
  『なら、わかるでしょう』
 
  『時間的猶予は与えません』
  『応援が到着するまでに、デミタスたちを連れていきなさい』
 
.

265名無しさん:2018/11/13(火) 17:58:06 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 そうなってしまうと、僕は、デミタス含む大勢を連れていく過程で、
 常に神経を研ぎ澄まさなければならなくなる。
 むろん、この場に人手は僕一人しかいない。
 
 一人で、大勢を相手に、隙を見せてはならなくなる。
 それも、遠い距離を、だ。
 
 亡霊が、そのなかに潜むなり、騒ぎを起こさせるなりで、殺してくるのか。
 あるいは、時間がかかって僕の目から逃れられるのをいいことに、逃げるのか。
 
 どちらも、十二分にあり得る。
 そしてその場合、僕は、より最悪な事態を防ごうと動かなければならない。
 亡霊を捕まえるよりも、デミタスを殺させないよう立ち回らざるを得なくなる。
 
 
 亡霊は、逃げるつもりだ。
 
 
(´・ω・`) 「………」
 
  『あなたは、優秀な刑事です』
  『ただ……だからこそ、肝に銘じるべきなのです』
 
 
  『亡霊は、どんな刑事でも、決して捕まえられない』
 
.

266名無しさん:2018/11/13(火) 17:58:54 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 僕は怒りのあまり、無言で電話を切った。
 こんなに怒りがこみ上がってくるのは、久しぶりだ。
 電話を、握りしめて壊したくなるのを押さえて、ポケットに戻す。
 
  _,
( ・ω・`) 「…!」
 
 戻した、瞬間。
 再びコール音が鳴った。
 
 
(´・ω・`) 「なんなんだッ!」
 
(´・ω・`) 「ちゃんと、指示には従う!」
 
(´・ω・`) 「てめえの時間稼ぎには、乗らん!」
 
 
  『警部ッ!!』
 
 
(´・ω・`) 「!」
 
 
.

267名無しさん:2018/11/13(火) 18:01:15 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 ワカッテマスの声が、どこかからした。
 どこだ、と思ったが、いま握っている電話からだった。
 
(´・ω・`) 「ワカッテマスか!」
 
(´・ω・`) 「いま時間はない、手短に言え!」
 
 どんな希少な情報だとしても、とにかく今は、時間がない。
 走りながら、走って法学部のほうに戻りながら、声に集中する。
 
 
  『亡霊の正体ですッ!』
 
(´・ω・`) 「なに?」
 
 
 正体だと?
 山村貞子の正体か?
 
 
 
  『亡霊はッ!』
  『山村貞子ではあり得ませんッ!』
 
 
 →ttps://www.youtube.com/watch?v=cW0vEuaetjY
 
 
.

268名無しさん:2018/11/13(火) 18:01:39 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(´・ω・`) 「なッ……」
 
 思わず、速度が落ちた。
 
 
(;´゚ω゚`) 「     どういうことだッ!!」
 
(;´゚ω゚`) 「貞子は、貞子が、亡霊じゃないのか!?」
 
 
 
  『貞子を引き取った第三者を、特定しましたが……ッ』
 
  『確認したところ、今もそこで、静かに眠っています!』
 
 
 
  『亡霊は、山村貞子では、なかったんですッ!!』
 
  『奴には完全なアリバイがあった!!』
 
 
 
.

269名無しさん:2018/11/13(火) 18:02:28 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´・ω・`) 「じゃあ、誰なんだ!!」
 
(;´・ω・`) 「いま、僕と話していた、亡霊は!!」
 
 
  『目下再検討しております!』
  『山村貞子以外に……亡霊になれた人物を!』
 
 
(;´・ω・`) 「いるかよ、そんな奴ッ!!」
 
(;´・ω・`) 「十年前の面々は全員死んで、残るは兄者と、デミタスッ!!」
 
(;´・ω・`) 「    貞子こそが、亡霊のはずなんだッ!!」
 
 
   、 、 、 、 、 、 、、 、 、
  『実は死んでいない人物がいた可能性ッ!』
 
 
 
 
.

270名無しさん:2018/11/13(火) 18:03:34 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´・ω・`) 「はァ!?」
 
(;´・ω・`) 「すべての事件を、警察が担当して、死亡を確認してンだ!!」
 
(;´・ω・`) 「あるワケねえだろ、そんな可能性が!!」
 
 
  『もはやそれしかないんですよ!』
  『本部でも至急ッ!』
  『すべての事件の再検討にまいります!』
 
  『以上です!』
  『切りますよ!』
 
 
 
(;´・ω・`) 「………」
 
 電話の切れる音がした。
 
(;´・ω・`) 「………」
 
 
(;´・ω・`) 「ど……どういうことだ……?」
 
 
.

271名無しさん:2018/11/13(火) 18:03:56 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 ワカッテマスの焦燥。
 これは、勘違いでも、ミスでもない。
 ほんとうに、山村貞子の存在が、特定されたのだ。
 
 いまも、まだ、眠っている。
 完全なアリバイがあった。
 
 
(;´・ω・`) 「……クソッ!!」
 
 再検討するには、時間が足りなさすぎる。
 こうしている間も、亡霊は逃げ出そうとしている。
 僕は、法学部棟、学生課の扉を再び蹴破った。
 
 
(´・_ゝ・`) 「…!」
 
(´・_ゝ・`) 「刑事さんッ!」
 
(;´・ω・`) 「話は後だッ!!」
 
(;´・ω・`) 「おい、ここにいる全員で、経済学部棟まで走れ!!」
 
 周囲にいる職員全員に、大声でアナウンスした。
 突然の指示に皆一様に動揺したが、
 僕がデミタスの手を引っ張って走り出すと、皆、ついてきてくれた。
 
.

272名無しさん:2018/11/13(火) 18:04:47 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´・_ゝ・`) 「何があったんですか!」
 
(;´・ω・`) 「話はあと   ……ッ」
 
 
 いた。
 いま、このタイミングで、唯一、亡霊の正体を暴き得る男が。
 
 
(´・ω・`) 「デミタスッ!」
 
(;´・_ゝ・`) 「なんですか!?」
 
 
(´・ω・`) 「あんたの力を貸してほしい!」
 
(´・ω・`) 「たった今、亡霊に関する新事実が入った!」
 
(;´・_ゝ・`) 「!」
 
 
 
(´・ω・`) 「亡霊は、山村貞子では、あり得ない!」
 
(´・ω・`) 「別の誰かが、貞子の名を騙り、亡霊になっているんだ!!」
 
.

273名無しさん:2018/11/13(火) 18:05:29 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´゚_ゝ゚`) 「   ンなァ!?」
 
(´・ω・`) 「貞子以外で、亡霊になれそうなやつを……教えてくれ!」
 
(´・ω・`) 「八人目のメンバーとかだ!」
 
 
(;´・_ゝ・`) 「いませんよ、そんなの!」
 
(;´・_ゝ・`) 「マジな話だ! サークルは、マジで七人しかいなかった!」
 
 ここまで来て八人目を隠す道理はない。
 七人しか、いないんだ。
 
 
(;´・ω・`) 「だったら、その七人から、貞子を除いた六人ッ」
            、 、 、 、、 、 、 、 、 、
(;´・ω・`) 「    亡霊になれるのは誰だ!?」
 
 
.

274名無しさん:2018/11/13(火) 18:05:53 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 今までの事件すべてが、蘇ってくる。
 
 フッサール擬古。
 ヒッキー小森。
 クックル三階堂。
 芹澤ミセリ。
 盛岡デミタス。
 流石兄者。
 
 全員の完全なアリバイは、警察が立証している。
 しかし。
 この六人のうち、誰か、ひとりだけ。
 アリバイが成立していない人物が、いる。
 
 多くは死亡が認められ、
 兄者とデミタスは僕自身がアリバイを立証している。
 
 つまり。
 
 
(;´・ω・`) 「擬古ッ! ヒッキーッ! クックルッ! ミセリッ!」
 
(;´・ω・`) 「誰かは、まだ生きてるんだ!!」
 
.

275名無しさん:2018/11/13(火) 18:06:23 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 死んだはずなのに、なお生きている存在。
 山村貞子は、偽りの亡霊だった。
 
 殺された四人のなかに、真の亡霊が、隠れている。
 亡霊とは、そういうことだったんだ。
 
 
 
(;´゚_ゝ゚`) 「はあ!?」
 
(;´・_ゝ・`) 「え、だって、え、みんな殺されたんでしょ!?」
 
(;´・ω・`) 「誰か一人だけは、事件を、偽ったんだ!!」
 
 
(;´・_ゝ・`) 「だいたい、僕、全然事件のこと知らないんだから!」
 
(;´・_ゝ・`) 「考えようがないッ!」
 
(;´・ω・`) 「くッ………!」
 
.

276名無しさん:2018/11/13(火) 18:06:44 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 事件を徹底的に捜査した僕たち警察が、わからないんだ。
 途中から事件に参加したデミタスに、わかりようは、ないのか。
 
 
(;´・_ゝ・`) 「名前をごまかしていた可能性は!?」
 
(;´・ω・`) 「名前ッて……被害者のか!?」
 
(;´・ω・`) 「できない、害者の特定は間違えようがない!」
 
 
 殺された連中の名前に、偽りはない。
 
 フッサール擬古。
 ヒッキー小森。
 クックル三階堂。
 芹澤ミセリ。
 
 この四つの名前は、国にも認められている、ほんとうの名前だ。
 
 
.

277名無しさん:2018/11/13(火) 18:07:05 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 事件を徹底的に捜査した僕たち警察が、わからないんだ。
 途中から事件に参加したデミタスに、わかりようは、ないのか。
 
 
(;´・_ゝ・`) 「名前をごまかしていた可能性は!?」
 
(;´・ω・`) 「名前ッて……被害者のか!?」
 
(;´・ω・`) 「できない、害者の特定は間違えようがない!」
 
 
 殺された連中の名前に、偽りはない。
 
 フッサール擬古。
 ヒッキー小森。
 クックル三階堂。
 芹澤ミセリ。
 
 この四つの名前は、国にも認められている、ほんとうの名前だ。
 
 
.

278>>277ミス:2018/11/13(火) 18:07:53 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´・_ゝ・`) 「死んでなかったわけでも、他人のふりをしたわけでもないんじゃあ」
 
(;´・_ゝ・`) 「わかるわけがない!」
 
 
 思い出せ。
 この、長かった、連続予告殺人事件。
 
 地下鉄殺人事件。
 ビジネスホテル殺人事件。
 ライブ殺人事件。
 ヴィップの滝公園殺人事件。
 
 四つの事件のすべてに、謎が残っている。
 そのうちどこかに、今回の事件の、すべてのトリックが隠されていたんだ。
 
 
 そして思い出せ。
 ミセリ、兄者、デミタスが話してくれた、サークルに関する情報をすべて。
 
 サークル結成。
 少しずつ集まるメンバー。
 バカバカしくも憎めなかった活動内容。
 すべての発端となった、十年前の紅葉狩り。
 
.

279名無しさん:2018/11/13(火) 18:08:30 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 まずは事件だ。
 事件のどこかに、偽りがあった。
 
 亡霊は、貞子じゃなかった。
 だからこの際、犯人像に関する謎は、すべて無視だ。
 
 
 現場で、捜査本部で。
 幾度となく、四つの事件の謎について、話されてきた。
 
 
.

280名無しさん:2018/11/13(火) 18:08:54 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 地下鉄殺人。
 殺されたのはフッサール擬古。
 
 監視カメラや調書から亡霊が炙り出せなかったのは、もはや謎じゃない。
 となると、他の謎には、なにがあったか。
 
 
 
 ビジネスホテル殺人事件。
 殺されたのはヒッキー小森。
 
 亡霊がどうやって害者の常備薬に干渉したかは、もはや謎じゃない。
 となると、他の謎には、なにがあったか。
 
 
.

281名無しさん:2018/11/13(火) 18:09:17 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 ライブ殺人事件。
 殺されたのはクックル三階堂。
 
 どこでクックルと連絡を取ったかは、もはや謎じゃない。
 となると、他の謎には、なにがあったか。
 
 
 
 ヴィップの滝殺人事件。
 殺されたのは芹澤ミセリ。
 
 害者のなかで唯一僕が話をした相手だ。
 まして事件そのものには謎という謎はなかった。
 
 芹澤ミセリは、亡霊ではない。
 
 
.

282名無しさん:2018/11/13(火) 18:09:40 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´・ω・`) 「わかった、こうしよう!」
 
(;´・ω・`) 「ミセリは、亡霊じゃない!」
 
 
(;´・ω・`) 「ギコ、ヒッキー、クックル」
 
(;´・ω・`) 「真の亡霊は、この三人のうち、誰かだッ!」
 
 
(;´・_ゝ・`) 「で、でも、だからといって……」
 
(;´・ω・`) 「クソッ!!」
 
 
 一瞬で時間が経っているのだろう、
 遠いと思われていた経済学部棟は、すぐ目の前まできていた。
 
 後ろも、職員たちがついてきてくれている。
 亡霊の第二の指示は間もなく完遂だ。
 
 いまが、反撃の時だ。
 
.

283名無しさん:2018/11/13(火) 18:10:00 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´・ω・`) 「!」
 
 そもそも。
 どうして、殺された人物が、亡霊になれるんだ。
 
 何度も、何度も言ってきた。
 死んだ人間に、犯行はできない。
 
 
 つまり、生きている。
 残された三人のうち、誰かは、生きている。
 
 しかし、死んでいる。
 重体、重傷、そんな曖昧な結果は出ていない。
 全員、国が認めた、死亡しているんだ。
 
 
 矛盾している。
 あり得ないんだ。
 でも、どこかに偽りが、潜んでいる。
 
 
.

284名無しさん:2018/11/13(火) 18:10:43 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 
(´・ω・`) 「      ッ 」
 
 ばちばちッと。
 脳を、皮膚を、骨を、全身を。
 凄まじい電流が走る。
 
 
.

285名無しさん:2018/11/13(火) 18:12:48 ID:0on9OJjc0
 
 
 
  >
  >(´・ω・`) 「亡霊は、山村貞子では、あり得ない!」
  >
  >(´・ω・`) 「別の誰かが、貞子の名を騙り、亡霊になっているんだ!!」
  >
 
 
 誰かが山村貞子の名を騙っている。
 手口から、語り口から、部外者の線は完全にない。
 
 亡霊は、名を騙っていた。    、 、 、 、 、 、 、 、、
 奴が騙ったのは、ほんとうに、山村貞子の名前だけだったのか?
 
 
.

286名無しさん:2018/11/13(火) 18:13:26 ID:0on9OJjc0
 
 
 
  >
  >(;´・_ゝ・`) 「名前をごまかしていた可能性は!?」
  >
  >(;´・ω・`) 「名前ッて……被害者のか!?」
  >
  >(;´・ω・`) 「できない、害者の特定は間違えようがない!」
  >
 
 
 名前をごまかしていた可能性。
 殺された人物の名は、すべて、偽りようのない、真実。
 しかし。
  、 、 、 、、 、 、 、 、 、
 我々が知っている名前は、ほんとうに偽りようのない、真実だったのか?
 
 
.

287名無しさん:2018/11/13(火) 18:14:25 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 亡霊は、たった今、何かを偽っているわけではない。
 十年前から、亡霊は、サークル内で、何かを偽ってきた。
 
 十年前から、常人では考えもつかない方法で、
 亡霊は、それを、偽ってきた。
 
 
 だったら、十年前と、たった今。
 そのふたつの視点を持つことで浮かび上がる、矛盾。
 
 それも。
 現状、デミタスにしか見抜くことができない、偽り。
 
 
(;´・ω・`) 「    デミタスッ!!」
 
.

288名無しさん:2018/11/13(火) 18:15:19 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´・_ゝ・`) 「!」
 
(;´・ω・`) 「一度あんたは、捜査本部に来たよな?」
 
        、 、 、  、 、 、 、 、 、 、 、 、  、、 、 、、 、 、
(;´・ω・`) 「その時、害者一覧の顔写真は、貼ってあったか?」
 
 
 
  >
  >(´・ω・`) 「となると、だ」
  >
  > びっしり書き込まれたホワイトボードを、目で辿る。 、 、、 、 、、
  > 貼ってあった写真の類は、スペースを広げるためにひっぺがした。
  > そんななか、一番情報が少ないのは、右端、流石兄者の項目。
  >
  >(´・ω・`) 「流石兄者、サークル部長」
  >
  >(´・ω・`) 「奴こそが、事件の鍵となる」
  >
  >( <●><●>) 「そして、現状容疑者筆頭、と」
  >
  >(;´・_ゝ・`) 「…」
  >
 
 
 
(;´・_ゝ・`) 「?」
 
(;´・_ゝ・`) 「写真なんてあったら、見てるけど……」
 
.

289名無しさん:2018/11/13(火) 18:16:10 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´゚ω゚`) 「………ッ!!!」
 
 
 見つけた。
 デミタスという銃口を向けるべき場所が。
 
 
 
(´・ω・`) 「だったら、見せてやる!」
 
 僕の携帯電話を、デミタスに押し付けた。
 有無山を登っている時に、ワカッテマスが送ってくれた、資料だ。
 
 そこには、各事件の被害者の情報や、
 プロフィール、顔写真が、参考資料として添付されている。
 
 
.

290名無しさん:2018/11/13(火) 18:16:40 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´・_ゝ・`) 「……?」
 
(;´・_ゝ・`) 「いったい、何を見れば……」
 
 
 
 
 
 
(´・_ゝ・`) 「え?」
 
 
(;´・ω・`) 「ッ!!」
 
 
 
 
.

291名無しさん:2018/11/13(火) 18:18:06 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´・_ゝ・`) 「けッ ……刑事さん!!」
 
 
 →BGMここまで
 
 
 
           、、 、 、、 、 、
(;´・_ゝ・`) 「こいつ誰ですか!?」
 
(;´゚ω゚`) 「!!!」
 
 
 
 起こり得て、しまうのか。
 そんな、人間として、常人として、考えられない、
 大胆で、規格外な、事件の根底の根底に眠る、トリックが。
 
  「人物」 にまつわる謎をすべて線でつなげば、浮かび上がってくる虚像。
 その輪郭に実体を与える、デミタスの、急所を貫く一撃。
 
.

292名無しさん:2018/11/13(火) 18:19:16 ID:0on9OJjc0
 
 
 
  >
  >( <●><●>) 「じゃあ、小森の」
  >
  >( <●><●>) 「ギター趣味というのも、そこから?」
  >
  >ミセ*゚-゚)リ 「ギター?」
  >
  >( <●><●>) 「どうやらギター趣味があったようですが
  >               、 、、、 、、 、
  >ミセ*゚-゚)リ 「ふうん……そうだったんだ」
  >
 
 
.

293名無しさん:2018/11/13(火) 18:20:17 ID:0on9OJjc0
 
 
 
  >                                    、 、、 、、 、
  >(´・ω・`) 「あんたらは、ヒッキーのアレルギーについては知らなかった、と」
  >
  >( ´_ゝ`) 「ピーナッツ……ピーナッツ、か……」
  >
  >( ´_ゝ`) 「食ってた、と言われたらそんな気もするし……」
  >
 
 
.

294名無しさん:2018/11/13(火) 18:21:03 ID:0on9OJjc0
 
 
 
  >
  >( ´_ゝ`) 「中学の頃、いじめが原因で不登校になったそうで」
  >
  >( ´_ゝ`) 「その頃にネット始めて、いろいろ変わったみたいだ」
  >
  >(´・ω・`) 「ん?」
  >
  > ちょっと引っかかるな。
  >
  >(´・ω・`) 「確か、おたくとヒッキーって、昔からの仲だよね」
  >                        、 、、
  >(´・ω・`) 「不登校になった……そうで、ッてのは?」
  >
 
 
.

295名無しさん:2018/11/13(火) 18:21:41 ID:0on9OJjc0
 
 
 
  >                  、、 、
  >( ´_ゝ`) 「俺とやつは、ネットで知り合ったんだ」
  >
  >(´・_ゝ・`) 「え、そうなの!」
  >
  >( ´_ゝ`) 「あれ? もしや誰も知らんかった?」
  >
  >(´・_ゝ・`) 「てっきり、腐れ縁とかそんなもんかと」
  >
 
 
.

296名無しさん:2018/11/13(火) 18:22:49 ID:0on9OJjc0
 
 
 
  >
  >( ´_ゝ`) 「ネットで知り合って、意気投合してな」
  >
  >( ´_ゝ`) 「ちょいちょい実際に会ったりもしたぜ」
  >                          、 、
  >(´・_ゝ・`) 「って、じゃあヒッキーって半値だったの?」
  >
 
 
.

297名無しさん:2018/11/13(火) 18:24:11 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 
  「 ( ゚"_ゞ゚) 」
  「ヒッキー小森 (34)」
 
 デミタスは、そこを指さして、叫んだ。
 
 
 
(;´・_ゝ・`) 「こいつ、誰なんだよ!!」
 
(;´・_ゝ・`) 「こいつはヒッキーじゃないッ!!」
 
 
 
 →ttps://www.youtube.com/watch?v=Rr9AVYDEeMQ
 
 
.

298名無しさん:2018/11/13(火) 18:26:07 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´゚ω゚`)
 
            、 、、
 ヒッキー小森だけが、ヴィップ大学ではない理由。
            、 、、
 ヒッキー小森だけが、完全たる名指しで殺害予告された理由。
 
 
(;´・ω・`)
 
                       、 、、 、 、、
 誰も、ヒッキーのアレルギーは知らなかった。
                     、 、、 、 、、
 誰も、ヒッキーの音楽趣味は知らなかった。
 
 
(;´‐ω‐`)
 
                              、 、
 ヒッキーのアレルギーを知り得たのは、家族くらいなものだった。
                                          、 、
 ヒッキーの通話履歴に残っていたのは、九割の職場と、一割の家族だった。
 
.

299名無しさん:2018/11/13(火) 18:26:37 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(´・ω・`) 「捕まえたぞ!!!」
 
 すぐさま電話を取り返す。
 発信する先は、履歴の一番上にあった、ワカッテマスだ。
 
 
(´・ω・`) 「僕だ!」
 
(´・ω・`) 「いますぐ、事件にかかわる全員にまわせッ!」
 
 
(´・ω・`) 「連続予告殺人ッ!!」
 
(´・ω・`) 「その真の犯人は、ヒッキー小森!!」
 
(´・ω・`) 「もっと言うと……」
 
 
  >                      、
  >/ ゚、。 / 「ヒッキー小森は、両親と弟の四人家族」
  >
  >/ ゚、。 / 「住まいは当時も今もアルプス」
  >
 
 
.

300名無しさん:2018/11/13(火) 18:26:42 ID:Si/MFqts0
佳境支援

301名無しさん:2018/11/13(火) 18:26:57 ID:0on9OJjc0
 
 
 
       、、 、 、 、 、 、 、
(´・ω・`) 「ヒッキー小森の弟ッ!!」
 
  『!!』
 
                     、 、 、 、 、、 、
(´・ω・`) 「奴は十年以上前から、兄の名を騙って生きてきたんだ!」
 
(´・ω・`) 「至急、正体を特定してこっちにまわせ!!」
 
 
 ワカッテマスが、即座に応答した。
 電話が切れる直前に、大声を出すのが聞き取れた。
 
 十年以上前から、ずっと隠されてきた、偽り。
 もう、すべて、ひっぺがしてやった。
 残るは、偽りの亡霊を、捕まえるだけだ。
 
 
.

302名無しさん:2018/11/13(火) 18:27:21 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(;´・_ゝ・`) 「弟ォ!?」
 
(;´・_ゝ・`) 「そんな話、聞いたことないぞ!」
 
(´・ω・`) 「そりゃあそうだ!」
 
 
(´・ω・`) 「奴は、十年前、」
 
(´・ω・`) 「何も事件すらなかった頃から、あんたらを、」
 
(´・ω・`) 「友だちを、自分すらをも、偽ってきたんだ!」
 
 
(´・ω・`) 「ッ!」
 
 すぐに電話が震えた。
 鈴木ダイオード。
 壁から、添付ファイル付きのメールが送られてきた。
 
.

303名無しさん:2018/11/13(火) 18:27:50 ID:0on9OJjc0
 
 
 
  「 (-_-) 」
  「 小森マサオ (32) 」
 
 顔写真と名前しか載っていない。
 そいつをすぐに、デミタスに見せた。
 
 
(´・ω・`) 「こいつに、見覚えは!」
 
(´・_ゝ・`) 「ッ!!」
 
(´・_ゝ・`) 「間違いない!」
 
(´・ω・`) 「!」
 
 
 
(;´・_ゝ・`) 「こいつです!」
 
(;´・_ゝ・`) 「十年前……僕らと一緒にいた……」
 
(;´・_ゝ・`) 「ずっと……一緒に遊んできた……ヒッキー小森は!」
 
 
.

304名無しさん:2018/11/13(火) 18:28:15 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 デミタスの背中を、ばんばんと叩いた。
 よくやった。
 亡霊の正体を、ついに、暴いた。
 
 
(´・ω・`) 「あんたも一緒に探せ!!」
 
(´・ω・`) 「見つけたら、大声で叫べ!」
 
(´・ω・`) 「殺されそうになったら、全力で、ぶん殴れ!」
 
(;´・_ゝ・`) 「もちろんッ!」
 
 
(´・ω・`) 「相手は、あんたがよく知る男だ、できるだろ!」
 
(;´・_ゝ・`) 「当たり前だッ!!」
 
 
      '_
(´・ω・`) 、
 
 
 タイムリミット。
 要請しておいた、所轄署や交番の警官たちが、サイレンを鳴らして集まってきた。
 
 本来なら、すべての、終わり。
 しかし、亡霊を暴いた今となっては、すべての、はじまりだ。
 
.

305名無しさん:2018/11/13(火) 18:28:37 ID:0on9OJjc0
 
 
 
刑事 「イツワリさん!」
 
(´・ω・`) 「話は後だ!」
 
 所轄署の刑事が、パトカーから降りて、走ってきた。
 添付された顔写真を見せる。
 
 
(´・ω・`) 「この男を見つけ次第、全力で捕まえろ!!」
 
刑事 「わかりました!」
 
 
 刑事は、携帯電話に表示された画像の、写真を撮った。
 到着した全員に、まわしてくれるだろう。
 
 
 警察のネットワークを、舐めるな。
 警察の組織力を、舐めるな。
 
 今まで、何度も、その網をくぐり抜けてきた?
 どんな刑事でも、亡霊は捕まえられない?
 
.

306名無しさん:2018/11/13(火) 18:29:02 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 相手を間違えたな。
 この僕に勝てると思うな。
 相手は、この、ショボーンだ。
 
 
(´・ω・`) 「もしもしッ!」
 
 まわりは固めた。
 もう、逃げられる心配もない。
 今日逃げられたとしても、全国に指名手配として流す。
 
 追い打ちだ。
 デミタスが一の矢、応援が二の矢なら、トドメの三の矢だ。
 
 
  『え、あ、はい! トソンです!』
 
(´・ω・`) 「今から犯人の顔写真を送る!」
 
(´・ω・`) 「その男について、」
 
 
 
  『いま経済学部棟ですよね!?』
  『二階にいるんでそっち行きます!』
 
(´・ω・`) 「ッ!」
 
.

307名無しさん:2018/11/13(火) 18:29:33 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 トソンちゃんは、まだ帰ってなかったのか。
 というよりも。  、 、 、 、 、
 そうか、僕は、経済学部棟に彼女を残してきたのか。
 
 
(゚、゚;トソン 「警部ッ!」
 
(´・ω・`) 「ッ! どうして!」
 
(゚、゚;トソン 「お説教はあとでいいですよ!」
 
 
(゚、゚;トソン 「犯人の、顔が、わかったんですよね!?」
 
(´・ω・`) 「あとで覚えてろ……いや、いい!」
 
 
(´・ω・`) 「こいつだ!」
 
 ヒッキー小森、ではない。
 ただしくは、亡霊。
 小森マサオの、顔写真を見せた。
 
.

308名無しさん:2018/11/13(火) 18:29:57 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(゚、゚トソン 「……」
 
(゚、゚;トソン 「あっ!」
 
(´・ω・`) 「見たか!?」
 
 
 言うと、トソンちゃんは僕の手を引っ張った。
 全力で、走り出している。
 
        、 、 、
(゚、゚;トソン 「駐車場ですッ!」
 
(゚、゚;トソン 「学部棟の裏の駐車場を、ついさっき、走ってッてました!」
 
(´・ω・`) 「ッ!」
 
 
  >
  >(゚、゚;トソン 「あっ!」
  >
  >(´・ω・`) 「えっ」
  >
  > 急になんだ。
  > 思わずトソンちゃんの視線の先を追ってしまった。
  > 誰か、それこそ亡霊が後ろにでもいたんじゃないか、みたいな。
  >                     、 、 、
  > そこには、人も車も少ない、駐車場しか広がっていなかった。
  > 経済学部棟の裏には、駐車場があるようだ。
  >
 
.

309名無しさん:2018/11/13(火) 18:30:19 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(゚、゚トソン 「間違いないです!」
 
(゚、゚トソン 「変な人だなッて思って、凝視しましたもん!」
 
(´・ω・`) 「上出来ッ!」
 
 すぐさま情報をまわす。
 亡霊は、成仏を嫌い、駐車場方面から逃げ出した。
 
 
 
(´・ω・`) 「犯人は経済学部棟裏手の駐車場より逃亡ッ!」
 
(´・ω・`) 「全員をそっちにまわせ! 検問も怠るな!」
 
 
.

310名無しさん:2018/11/13(火) 18:30:49 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 そのままデミタスにも電話する。
 
(´・ω・`) 「デミタス、駐車場に行け!」
 
  『!』
 
 
(´・ω・`) 「ずっと会いたかった、亡霊が……」
 
(´・ω・`) 「あんたらの友だちだった!」
 
 
       、、 、 、、 、
(´・ω・`) 「ヒッキー小森が!!」
 
(´・ω・`) 「いるはずだッ!!」
 
 
 駐車場に出て、周囲を見やりながら、奥へ、奥へと走る。
 車も人も少ない。
 
 この開けた場所に、ぞくぞくと、警官が集まってきた。
 近くにいたのだろう、デミタスも、駆け寄ってきた。
 
 
.

311名無しさん:2018/11/13(火) 18:31:19 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 さあ、どうする、亡霊。
 
 お望みの盛岡デミタスも、丸腰だぞ。
 
 お望みの警官も、刑事も、僕も、集まっているぞ。
 
 
 
 サークルを抹殺するとか言ったな。
 
 亡霊は捕まらないとか言ったな。
 
 
 
 
(ill゚_゚) 「ッ!!!」
 
 
 すべて、お望み通り。
 
 願いを、叶えてやったぞ。
 
 さあ、どうする、亡霊。
 
 
(´・ω・`) 「………捕まえたぜ。」
 
 
.

312名無しさん:2018/11/13(火) 18:31:42 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(ill゚_゚) 「あああああああああああああああああああああああッッ!!!!」
 
 
(´・ω・`) 「ッ!!」
 
 即座に拳銃を抜き出した。
 職員に扮したそいつの、腰から下、太ももの辺りを狙う。
 
 
(ill゚_゚) 「!!!」
 
(´・ω・`) 「あるじゃねえかよ!!」
 
 駆け出そうとした亡霊は、
 足から血を流して、大袈裟に倒れ込んだ。
 
 
                       、
(´・ω・`) 「あんたにも、立派な足がなァ!!」
 
(ill゚_゚) 「     ァァァああああああああああああああああ!!!!」
 
 
.

313名無しさん:2018/11/13(火) 18:32:05 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(´・ω・`) 「取り押さえろッ!!」
 
 
 一人、二人、三人。
 また一人、二人、三人。
 
 次々と、獲物に食らいつくピラニアのように、警官が飛びかかる。
 先ほど兄者がされたように、亡霊が、羽交い絞めにされていく。
 
 
 
(ill-_-) 「離せッ!!」
 
(ill-_-) 「全員ぶっ殺すぞ!!」
 
(ill゚_゚) 「  聞いてんのか!? おい!! おいッ!!!」
 
 
 
.

314名無しさん:2018/11/13(火) 18:32:27 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 十一時二一分。
 容疑者、確保。
 
 羽交い絞めの中心から、場を貫く大声が放たれた。
 続けて確保、確保、と、野郎どもが叫ぶ。
 
 
(ill゚_゚) 「俺は無実だ!!」
 
(ill゚_゚) 「確保!? なんの話だ!!」
 
 
(´・ω・`) 「どけッ!」
 
 警官を数人押しやり、後ろ手錠のかかった亡霊と対面する。
 それでもなお、暴れている。
 
(ill゚_゚) 「ッ!」
 
 服を漁る。
 今更ロジックを展開させるつもりはない。
 
 この事件で、はじめて。
 犯人を特定する物的証拠を、突き付けてやるのだ。
 
.

315名無しさん:2018/11/13(火) 18:32:50 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(´・ω・`) 「……持ってるねえ」
 
(´・ω・`) 「持ってるじゃねえか、亡霊。」
 
(ill゚_゚) 「違うッ!! これは          ッ!!」
 
 
 血を吸ったハンカチで覆われた、包丁。
 スマートフォンが、三台。
 ボイスチェンジャーと呼ばれる、声を機械的に変える装置。
 
 まだ出てくるぞ。
 財布のなかには、ご丁寧に身分を証明する普通免許。
 そして、こいつもあった。
 
 
(´・ω・`) 「持っててくれたんだねェ!」
 
(´・ω・`) 「僕の名刺を、後生大事になあ!!」
 
 
.

316名無しさん:2018/11/13(火) 18:33:13 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 包丁を隣の警官に押し付け、僕はスマホを開く。
 ひとつは、亡霊自身のスマホと思しきものだ。
 
 続けて、格安スマホ。
 型番などわからないが、通話アプリがトップ画面にあった。
 
 そして。
 通話履歴が表示されたままの、スマホ。
 持ち去られた、兄者のスマホだ。
 
 通話履歴には、ヒッキー、の文字があった。
 
 
(´・ω・`) 「………そうか」
 
(´・ω・`) 「兄者は、これを見て……」
 
 
 ヒッキーからの、着信。
 当時の兄者視点で言えば、
 他の何者を差し置いてでも優先すべき、電話の相手だ。
 
 十年以上前からの、兄者の、親友。
 にして、自分を貶めた、十年前の事件の、真犯人。
 なにより、死んだ男からの、文字通り亡霊からの、着信。
 
.

317名無しさん:2018/11/13(火) 18:33:35 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(ill゚_゚) 「違うんだ!!」
 
(ill゚_゚) 「これには深いワケがある!!」
 
 
(ill゚_゚) 「第一……ヒッキー小森は殺されたんだろ!?」
 
(ill゚_゚) 「俺は犯人じゃない!」
 
(ill゚_゚) 「犯人じゃない!」
 
 
(´・ω・`) 「ああ、犯人じゃないさ」
 
(ill゚_゚) 「ッ!」
 
(´・ω・`) 「あんたは、犯人なんてもんじゃない」
 
.

318名無しさん:2018/11/13(火) 18:33:56 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(´・ω・`) 「友だちから呼ばれる名前も」
 
(´・ω・`) 「十年前の真実も」
 
(´・ω・`) 「山村貞子の名前も」
 
 
(´‐ω‐`) 「その全てを偽ってきた……亡霊。」
 
 
 
(´・ω・`) 「偽りの、亡霊だッ!!」
 
(´・ω・`) 「話はすべて、署でッ!!」
 
(´・ω・`) 「この僕が、じきじきにすべて、聞いてやる!!」
 
 
.

319名無しさん:2018/11/13(火) 18:34:42 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(´・ω・`) 「亡霊ッ!!」
 
(´・ω・`) 「成仏の時間だッ!!」
 
 
(ill゚_゚) 「!」
 
(ill゚_゚)
 
(ill-_-)
 
 
 
( -_-)
 
(;゚'_゚)
 
 
 
.

320名無しさん:2018/11/13(火) 18:35:02 ID:0on9OJjc0
 
 
 
(ill゚'_゚) 「ああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」
 
(ill゚'_゚) 「ああああああああああああああああああああああ!!!!!」
 
 
(ill゚'_゚) 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 
 
 
 
 
 
 
 亡霊は、力尽きるその時まで、ずっと、叫び続けた。
 
 力尽きたその時に、口をパクパクさせたかと思うと、
 
 そのまま白目を剥いて、抵抗していた力と一緒に、
 
 魂が抜け落ちたように、倒れこんだ。
 
 
 
.

321名無しさん:2018/11/13(火) 18:35:45 ID:0on9OJjc0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

322名無しさん:2018/11/13(火) 18:37:33 ID:0on9OJjc0
第九幕  >>9-143
第十幕  >>164-321

次回最終回です
トリック解説とか後日談とかエンドロールとか全部まとめて次で片付けます

323名無しさん:2018/11/13(火) 18:38:48 ID:M8bbK4W.0
おつおつ
ネットで知り合いってのは違和感あった

324名無しさん:2018/11/13(火) 18:43:33 ID:H3jyKtig0
おつ
予想してなかった展開だわ

325名無しさん:2018/11/13(火) 18:43:39 ID:Si/MFqts0
やったぜ

326名無しさん:2018/11/13(火) 18:47:33 ID:E4ccVPbI0
おつ!
とうとう次回で最終回か、動機とか気になりすぎるな!

327名無しさん:2018/11/13(火) 18:52:45 ID:fr.Q/pnI0
おつ!こりゃ最後楽しみだ

328名無しさん:2018/11/13(火) 18:53:49 ID:DwbvsOT60
おつ

329名無しさん:2018/11/13(火) 19:45:33 ID:J9U2QHiU0
おーまいが…

330名無しさん:2018/11/13(火) 19:45:43 ID:39p7MKCE0
おつ!!

うおおおお……
今回はトソンなんともなくてよかった……

331名無しさん:2018/11/13(火) 19:56:18 ID:7y5HnOeI0
乙!

332名無しさん:2018/11/13(火) 20:29:10 ID:TOMCJIr60
やべぇ・・・文章にメタクソ引き込まれた

小学生や中学生の頃に推理小説にはまってた以来だ

最終回も期待乙

333名無しさん:2018/11/13(火) 21:20:34 ID:PJR9FjrY0
やっぱりトソンちゃん有能!

334名無しさん:2018/11/13(火) 21:33:22 ID:/nJ7FpcA0
クッソ面白かった!乙!!!!
そういやAA出してなかったもんな
勝手に脳内で想像してたからすっかり考えの外だったわ

335名無しさん:2018/11/13(火) 21:46:44 ID:PJR9FjrY0
叙述トリックって言うの?

336名無しさん:2018/11/14(水) 10:15:25 ID:TElHsDMQ0
前スレ>>713とかも伏線というかヒントかな、面白かった。
動機は気になるわ〜

337名無しさん:2018/11/16(金) 07:22:51 ID:UFa7aw6k0
やっぱり読みごたえあるなぁ。しかし次で最終回か、また1つ更新を楽しみにしていた現行が終わってしまうのか…

338名無しさん:2018/11/16(金) 11:04:55 ID:TJYIIfy20
ブーン系だからこそのネタだから面白い

339名無しさん:2018/11/16(金) 14:22:55 ID:eistRLR.0
復活してたの今更気付いて一気読みしたわ

340名無しさん:2018/11/16(金) 19:21:26 ID:JZCM/o2U0
電話での反応的にヒッキーが貞子殺そうとしたっていうの違うっぽいしまだなんかありそうだな

341名無しさん:2018/11/18(日) 23:31:05 ID:mzQyUXV60
 
 
 
 ┏━─
    五月八日  午前十一時四八分  国道二十七号線
                                      ─━┛
 
 
 
 続々やってきた、更なる応援や救急車、野次馬の数々。
 ヴィップ大学は本日、あくまで緊急メンテナンスという名目で休講させていた。
 
 噂を聞きつけた野次馬の大多数は、学生だ。
 何があったのか、噂は本当なのか、といったそれぞれの思惑で、
 帰宅させたはずの彼らが、絶えず大学に集まってきた。
 
 
(´・ω・`) 「……」
 
(lli _ )
 
 
 僕は一通りの指示を出して、そそくさとパトカーに乗り込んだ。
 ひとまずは、小森マサオの取調を進めるべきなのだ。
 一刻も早く、世間に、公表しなければならないのだから。
 
 連続予告殺人事件が終わったことを。
 
.

342名無しさん:2018/11/18(日) 23:31:43 ID:mzQyUXV60
 
 
 
 救急車の到着と同時に、流石兄者を搬送させた。
 死亡は、していない。
 しかし一刻を争う事態であることは間違いなかった。
 
 兄者は学長が責任をもって介抱してくれていた。
 おかげで、あの数十分の間に、事尽きることはなかった。
 今頃は、輸血パックが大量に使われていることだろう。
 
 
 流石兄者以外の犠牲を出すことは、なかった。
 それは、小森マサオが 「亡霊」 に縛られていたからであった。
 
 彼は、意識を取り戻し、いま自分がパトカーのなかにいて、
 隣に自分を捕まえた男がいる状況を察し、
 とうとう、亡霊としての成仏を迎える時がきたことを知った。
 
 揺れるパトカーの車内で、ゆっくり、重い口を開いた。
 
 
(lli _ ) 「……」
 
(lli _ ) 「どうして……わかったんだ……」
 
.

343名無しさん:2018/11/18(日) 23:32:33 ID:mzQyUXV60
 
 
      '_
(´・ω・`) 、
 
 僕と話をする体力が、残っていたか。
 あるいは、成仏する前の、最後の余力なのか。
 
 煙草に火をつけ、少し開けた窓に向けて紫煙を吹き散らした。
 
 
(´・ω・`) 「亡霊の、正体を、か?」
 
(lli _ ) 「すべて……」
 
(lli _ ) 「そう……すべてだ」
 
 
(lli _ ) 「十年前の事件もそう……」
 
(lli _ ) 「亡霊が俺であること……」
       、 、、 、
(lli _ ) 「ヒッキーという名前のことも……すべて。」
 
 
.

344名無しさん:2018/11/18(日) 23:32:55 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(´‐ω‐`)
 
 二口目、一気に煙草の燃焼が進んだ。
 思えば、長いロジックの道のりだった。
 
(´‐ω‐`)
 
 
(´・ω・`) 「すべての発端は、あんたの自供だ」
 
(lli _ ) 「自供…?」
 
 
(´・ω・`) 「亡霊を、山村貞子を名乗るあんたからの、電話」
 
(´・ω・`) 「あの一本の電話で、今回の事件は、姿を変えたんだ」
 
(´・ω・`) 「今回の事件は、十年前のあの日が、すべての発端だったんだぞ、と」
 
 
(´・ω・`) 「あんたが、そいつを、教えてくれた」
 
(´・ω・`) 「兄者も、デミタスも、ミセリも、みんな、隠してたんだぜ」
 
(lli _ ) 「…!」
 
.

345名無しさん:2018/11/18(日) 23:34:44 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(´・ω・`) 「なぜなら、ほんとうに」
 
(´・ω・`) 「誰一人として、十年前の事故を疑う人は、いなかったから」
 
 
(´・ω・`) 「疑っていたのは、たった一人」
 
(´・ω・`) 「貞子を突き落とした真犯人たる、小森マサオ」
 
(´・ω・`) 「あんただけだ」
 
 小森マサオは、下唇を強く噛んだ。
 少し血が滲んできていた。
 
 
(lli _ ) 「でも……それもだ」
 
(lli _ ) 「当時の警察ですら、俺が犯人だったこと……」
 
(lli _ ) 「わからなかったんだぞ?」
 
(lli _ ) 「兄者も……わかるはずが、なかったんだ」
 
.

346名無しさん:2018/11/18(日) 23:35:06 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(´・ω・`) 「当然だ」
 
(´・ω・`) 「誰も、墓荒らしに挑もうと思わなかったからな」
 
(lli _ ) 「あんたが……その墓荒らし、ッてわけか…」
 
 犯人が特定できない事件だった。
 
 犯人、と思い込んでいた兄者は、事件から目を背ける。
 サークルメンバーは、事件と思わないため、隠そうとする。
 警察は、証拠がなさすぎた本件を、事件と処理できなかった。
 
 巧妙に偽られた事件だった。
 全員が、隠し通そうとしてきた事件なのだ。
 墓荒らしに成功したのが、ひとつの大きな機転だった。
 
 
(lli _ ) 「嘘……なんだろ?」
 
(lli _ ) 「兄者が、自供した、ッて話……」
 
 
.

347名無しさん:2018/11/18(日) 23:36:27 ID:mzQyUXV60
 
 
 
  >
  >(´・ω・`) 「兄者が自供したさ」
  >
  >  『それはあり得ない』
  >
  >(´・ω・`) 「…!」
  >
 
 
 思えば。
 さっきは、亡霊が山村貞子だと思って話をしていたが。
 本当は、僕は、小森マサオ相手に、あの話をしていたことになるのか。
 
 奴視点だと、果たしてどんな話に聞こえたのだろうか。
 もう、あの時、なにをどう話したのかすら、おぼろげになっている。
 
 
(´・ω・`) 「ああ。 嘘だな」
 
(lli _ ) 「!」
 
(´・ω・`) 「奴がした正確な自供は、たったひとつ」
 
.

348名無しさん:2018/11/18(日) 23:37:07 ID:mzQyUXV60
 
 
 
  >
  >(´・ω・`) 「じゃあ、確実なことだけを、話せ!」
  >
  >( ::;゚_ゝ::) 「確実なのは、ヒッキーはいいやつッてことだけだ!」
  >
 
       、 、 、 、 、、 、
(´・ω・`) 「いいやつだった」
 
 
(lli _ ) 「…?」
 
 兄者は、偽りの濁流に飲み込まれていた。
 右を見ても左を見ても、なにが現実でなにが本当かわからない。
 
 窒息しかけ、溺れかけたなか、
 兄者がたったひとつだけできた、本当の証言がそれだった。
 
 
(´・ω・`) 「たったそれだけの証言があれば、十分だった」
 
(´・ω・`) 「流れるように、十年前の真実に、気が付けたよ」
 
.

349名無しさん:2018/11/18(日) 23:37:43 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(lli _ ) 「………もう、許してくれ」
 
(lli _ ) 「たちの悪い冗談だ」
 
(´・ω・`) 「いや、本当だぞ?」
 
 兄者との対決を、思い出す。
 なにかを、真実を、自分でさえも偽るのが、巧妙な男だった。
 
 
(´・ω・`) 「兄者は、あんたに完全に、騙されていた」
 
(´・ω・`) 「ずっと、自分が犯人だと思い込んでいたし」
 
(´・ω・`) 「事件を、犯人たる自分を偽ろうと、兄者自身を、偽りで支配していた」
 
(lli _ ) 「……ッ」
 
 僕自身が、衝撃だった。
 数多もの偽りを見抜いてきた僕にとっても。
 十年以上、さまざまなことを偽ってきた小森マサオにとっても。
 
 流石兄者という存在は、衝撃的な人物だった。
 おそらく、今後、僕は奴を忘れることはないだろう。
 
.

350名無しさん:2018/11/18(日) 23:38:47 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(´・ω・`) 「さて」
 
(´・ω・`) 「それでも僕は、今回の真犯人が、誰なのか」
 
(´・ω・`) 「最後の最後まで、山村貞子なんだと、信じていたよ」
 
(lli _ ) 「……ほんとうか?」
 
(lli _ ) 「すべてが、嘘、偽りなんじゃないのか?」
 
 
 小森マサオも、疑心暗鬼になっている。
 猜疑心を持つことができない流石兄者と、
 疑心暗鬼になってしまった小森マサオ。
 
 本件のキーパーソンにして、対照的なふたりだ。
 
 
(´・ω・`) 「それだけ、あんたが自然に偽りを纏っていたのさ」
                、、 、 、
(´・ω・`) 「……どうして、ヒッキーの名を、あんたが使っていたんだ?」
 
.

351名無しさん:2018/11/18(日) 23:39:21 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(lli _ ) 「………」
 
(´・ω・`) 「どうせ、署につけば、何時間とかけてする質問のひとつなんだ」
 
(´・ω・`) 「先に言っといたほうが、後が楽だぜ」
 
 
(lli _ ) 「……隠すつもりは、ねえよ」
 
(lli _ ) 「大した理由でもないんだ」
 
(´・ω・`) 「ん?」
 
 大層な理由があって、名前を偽ってきたのかと思った。
 しかし、実際は、なんてことのない話だった。
 
 
(lli _ ) 「知ってるだろ?」
 
(lli _ ) 「俺は、兄者とは、ネットで知り合った」
 
(lli _ ) 「いじめられて、不登校になっててな、人間が信じられなかった」
 
.

352名無しさん:2018/11/18(日) 23:39:43 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(lli _ ) 「兄者と仲良くなって、本名を知りあう仲にまでなったのは、嬉しかったさ」
 
(lli _ ) 「兄者自身が、すげえいい奴だったし」
 
(lli _ ) 「こんな俺が、ネット上とはいえ友だちを作れたのが、嬉しかった」
 
 
(lli _ ) 「でも、それでも」
 
(lli _ ) 「当時俺は、兄者を信じることが、できなかった」
 
(´・ω・`) 「それは、いじめられたことで、か」
 
 それもある。
 小森マサオが、ちいさく言った。
 
(lli _ ) 「親も、アニキもそうだ」
 
(lli _ ) 「親は、俺が人間不信になったのを、受け入れなかった」
 
(lli _ ) 「甘ったれている、逃げるな、の一点張りよ」
 
.

353名無しさん:2018/11/18(日) 23:40:18 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(´・ω・`) 「ひどい親だったのか?」
 
 聞くと、小森マサオは首を傾げた。
 そうだ、と即答しかけて、しかしその口を閉じた。
 
(lli _ ) 「アニキが、出来る男だった」
 
(lli _ ) 「運動もできる、頭もいい、ギターも弾ける」
 
(lli _ ) 「二年遅れて俺が生まれる時、おふくろの腹ンなかには、何もなかったんだよ」
 
(lli _ ) 「才能とか、恵まれたものとか、すべてな」
 
 捜査中に、わずかに引っかかっていた点。
 僕が写真で見た 「ヒッキー小森」 と、サークルメンバーが語る 「ヒッキー小森」 の差異。
 当時、まさか別人である、だなんて疑いもしなかった。
 
 
(lli _ ) 「アニキと比較される人生で」
 
(lli _ ) 「だんだん俺がインドアに、卑屈に、根暗になった」
 
(lli _ ) 「デキが悪いんだ、そりゃあいじめの標的にもなるさ」
 
 
 人は、十年もあれば変われるものだと思っていた。
 しかし、もっとそこを、疑うべきだった。
 
 確かに多くのものが変わるが、
 それ以上にもっと多くのものは、変わらないのだ。
 
.

354名無しさん:2018/11/18(日) 23:41:07 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(´・ω・`) 「だから、アニキにも復讐を?」
 
(lli _ ) 「殺したのは復讐だがな」
 
(lli _ ) 「名前は、違う」
 
(lli _ ) 「あれは、本当にただの、偶然だ」
 
 小森マサオは、十何年も昔から、ヒッキー小森の名を騙った。
 それも、アウトドアサークルが創設されるよりも、ずっと昔から。
 
 
(lli _ ) 「本名の話になって、俺は」
 
(lli _ ) 「兄者に対して心を許しつつあった俺だがな」
 
(lli _ ) 「それでも、やっぱり、性分の人間不信が再発した」
 
(´・ω・`) 「…?」
 
.

355名無しさん:2018/11/18(日) 23:41:48 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(lli _ ) 「あんたにはわからんだろうがな」
 
(lli _ ) 「ネットの相手に本名を知られることほど」
 
(lli _ ) 「ネット依存の引きこもりにとって、怖ろしいことはない」
 
 ネット依存。
 はじめて出るワードだな。
 
(´・ω・`) 「でも、兄者は隠そうとしていなかったんだろう」
 
(lli _ ) 「兄者は、俺のことを信じていたからな」
 
(lli _ ) 「でも、俺は。」
 
(lli _ ) 「本名を晒す、有り体の自分を晒すことが、怖かった」
 
 
 ピンときた。
 ネット依存、とは言うが。
 要は、インターネットの世界に生きる人間だ。
 
 インターネットの世界では、現実の自分を偽ることができる。
 それこそ、ナントカネームというものが当てはまる。
 親から与えられた名前とは別の、自分の名前を、自分で名乗ることができる。
 
.

356名無しさん:2018/11/18(日) 23:42:38 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(lli _ ) 「かといって、兄者がさらけ出してくれているのに」
 
(lli _ ) 「自分だけ頑なに隠そうとするのも、奴を、拒むことになると思った」
 
(lli _ ) 「俺は、咄嗟に、アニキの名前を言ったよ」
 
(´・ω・`) 「それが、ヒッキーだった」
 
 
(lli _ ) 「まさか、あの時の、あの些細な一言が、」
 
(lli _ ) 「こうも、自分の人生を、狂わせることになるなんてな」
 
(´・ω・`) 「今回の連続殺人の、トリックのことを、言ってるのか?」
 
 連続殺人が、ここまで難航したのは、
 ひとえに、真犯人が既に殺されていたと思われたところにあった。
 
 警察が調べて、答えを出していたのだ。
  「ヒッキー小森」 は、殺されている、と。
 
.

357名無しさん:2018/11/18(日) 23:43:04 ID:mzQyUXV60
 
 
 
(lli _ ) 「違う」
 
(lli _ ) 「……考えても見ろ」
 
(lli _ ) 「サークルで、いろんな人と仲良くなれたッてのに」
 
 
(lli _ ) 「誰一人として、俺の」
 
(lli _ ) 「小森マサオという本名を、誰一人、呼んでくれなかったんだ」
 
 
(´・ω・`) 「…!」
 
 孤独な人生を送ってきた、境遇。
 大学の年頃になって、ようやく掴めた、友人達との楽しい日々。
 
 しかし、その日々を過ごしたのは、ほんとうの自分ではない。
 偽りを纏った、ヒッキー小森という男だったのだ。
 
 
(lli _ ) 「俺は毎日、毎日、ずっと、後悔してたよ」
 
(lli _ ) 「まさか、今更になって、ヒッキーってのは偽名だ、なんて言えない」
 
(lli _ ) 「………どうして、こうもいい奴らばっかなのに、俺は、警戒したんだ」
 
(lli _ ) 「……毎日、後悔し続けていたさ」
 
.


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