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( ^ω^)戦国を歩いたギタリストのようです
32
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 09:19:50 ID:upZCq1QE0
──
渚本介のリードは完璧で、3日後にはブーンと渚本介の旅の用意ができた。
この3日間、ブーンは馬に乗る練習をさせられていた。
急いで処理すべき問題だからという、渚本介の計らいからだ。
だが。
( ^ω^)「ハァッ!」
▼・ェ・▼ ヒヒーン
( ゚ω゚)「ぬぅふ!」
何度やっても、振り落とされる。
馬に乗った経験といえば、小さい頃に山梨かどこかの乗馬体験でインストラクターと一緒に乗ったくらいだ。
(;^ω^)「クソ、なんでこんな子犬みたいな馬に振り落とされるんだお…」
▼・ェ・▼ ヒヒーン(笑)
(;^ω^)「うわーすごい腹立つ」
(´メω・`)「ははは、馬は慣れだ。まずはその馬と心を通わせるんだな」
33
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 09:21:05 ID:upZCq1QE0
渚本介の教えで、馬の練習を繰り返した3日目の夕刻。
出発の時が来た。
久斗尚が籠城する具麗芭城に潜入し、久斗尚を押さえる。
内密の任務となる故に、出発の見送りはなかった。
出麗は二茶根留巳留那とともに"万が一"の準備をしているらしい。
(´メω・`)「準備は大丈夫か?」
( ^ω^)「大丈夫ですお。つっても、特に持ち物もないけど…」
(´メω・`)「はは、何を言ってるんだ。ほら」
( ^ω^)「お?」
渚本介が、大きな荷物を差し出した。
あまり綺麗じゃない、布地の荷袋。
それは、ちょうどギターが収まる大きさで、リュックのように背負える作りだった。
( ^ω^)「おお、こりゃ便利ですお!」
(´メω・`)「ははは。三年前の旅で、お前がずっと背負っていたぎたーの荷袋だ」
34
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 09:21:49 ID:upZCq1QE0
三年前。
自分の記憶の外で、タイムスリップして渚本介と旅をしていた時。
ブーンは不思議な落ち着きを感じていた。
いや、ブーンを落ち着かせる何かが、渚本介にはあった。
(´メω・`)「さ、自分の馬に乗るんだ。馬はいざという時の強力な武器となる」
( ^ω^)「はいですお。…よいしょ!」
▼・ェ・▼ ヒヒーン^^
( ゚ω゚)「ぬぅふ!」
馬に跨った途端、またしても振り落とされた。
しかも、振り落とされながら煽られたような気がした。
とっくに自分の馬に跨った渚本介が、「優しく乗るんだ」と声をかける。
言われた通り、ブーンは気持ち悪いほど優しさを込めて馬に跨った。
35
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 09:22:47 ID:upZCq1QE0
(´メω・`)「時間がない。出発だ」
( ^ω^)「はいですお」
渚本介が先に走り、ブーンがその後を追いかける。
振り落とされずに一度走ってしまえば、あとは楽だった。
( ^ω^)「なあ、馬。お前にぴったりな名前を考えたお」
▼・ェ・▼ ?
( ^ω^)「マルフォイだお」
▼・ェ・▼ …?
(;´メω・`)(何言ってんだこいつ…)
駆ける二騎は、人気のない山道へと進んでいく。
未来を変える力を、その体に秘めながら。
第一話 終
36
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 09:23:27 ID:upZCq1QE0
ちょっと時間空けます!
>>27
ありがとうございます!!
37
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 09:23:51 ID:ybdxyYa.0
乙
ファ板で読めるの嬉しいよ
38
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:04:23 ID:2YOLjRA.0
>>37
わあ、ありがとうございます…!
別IDで投下します。
時間空けながら、今日中には全部投下します!
39
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:06:46 ID:2YOLjRA.0
──
(‘_L’)「…そなたらも聞いておろう」
夜。
山中にある具麗芭城は、月明かりに照らされて妖しく輝いている。
その一室で、城主の吹連久斗尚は、対面する二人に話を続けた。
(‘_L’)「光世真宗が動き始めた。八尾井山で兵を募っている」
(‘_L’)「奴らの狙いも天下統一だ。そして、奴らが最初に潰しにかかるのは」
一呼吸、間に入れる。
この緊張は、どうにも晴れなかった。
(‘_L’)「…恐らく、我々吹連であろう」
40
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:07:32 ID:2YOLjRA.0
(‘_L’)「根十城攻めに敗れた我々は、最初に狙いやすいというのもあるやも知れん。だが、我らにも勝算はある」
(‘_L’)「先に我々が潰すのだ。八尾井山をな」
(‘_L’)「光世真宗が敗れれば、二茶根留にとっても痛手の筈。光世真宗は戦力補充の頼り先故にな」
対面する二人は、久斗尚の目をまっすぐ見つめたまま動かない。
そこには、別々の意思を含みながら。
(‘_L’)「戦の準備だ。八尾井山焼き討ちを決定する」
そして、二人のうち片方が、太くくぐもった声を響かせた。
「御意に」
──
.
41
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:08:33 ID:2YOLjRA.0
第二話
「勇気と矛盾の寝床」
──
二茶根留領から出ると、いかにも日本の内陸地らしく、大きな山がいくつも続いていた。
その途中にある小さな宿場町で、ブーンと渚本介は馬を下りた。
(´メω・`)「今日はここで宿を借りよう。旅にはうってつけの宿場町だ」
( ^ω^)「了解ですお。マルフォイもここで休むんだお」
▼・ェ・▼ ブルル
( ^ω^)「スリザリン寮ならロンドンにあると思うお(笑)」
▼・ェ・▼ ヒヒーン
( #)ω゚)「ぬぅふ!」
(;´メω・`)「何やってるんだ…早く来るんだ」
(;^ω^)「はいですお…」
42
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:09:07 ID:2YOLjRA.0
山間の宿場町、百合(ユリ)。
様々な国の境場にあるため、常に人で賑わっている。
商人や武士が入り組む小さな町は、明るい声が飛び交うほどの活気を持っていた。
だが、その中でもブーンは異質な存在であるらしい。
渚本介とブーンが通ると、町の人間達は一旦話を止め、見知らぬ「南蛮人」に目を奪われていた。
(;^ω^)(な、なんか恥ずかしいお…)
(´メω・`)「……」
恥ずかしそうにコソコソ歩くブーンに対し、渚本介は逆に町の人間達を見つめながら歩く。
その目には、ある違和感と警戒を秘めていた。
(´メω・`)(……何か、変だ)
(;^ω^)「しょ、渚本介さん、いつまで歩くんですかお」
(´メω・`)「ん?ああ、すまない。宿はここにしよう」
43
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:10:46 ID:2YOLjRA.0
適当な宿屋に入り、勘定を済ませる。
その間、中にいる人間達は皆ブーンを執拗に見ていた。
(;^ω^)(うわー…初レコーディングの時のドクオさんより視線がきついお…)
(;^ω^)(ここは目を逸らさなきゃ…ん?)
ふと、目を逸らした先。
何やら黄色の紙が、天井に貼ってあるのが見えた。
( ^ω^)(お札かお…?)
よく見れば、あちこちの柱にも同じような黄色の紙が貼ってある。
札のような形のそれには、何やら文字が書いてあったが、ブーンには全く読めなかった。
(´メω・`)「上がるぞ、ブーン」
( ^ω^)「あ、了解ですお」
あちこちに貼られてある札に、一種の不気味さを感じながら。
ブーンと渚本介は、二階の部屋まで上がった。
44
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:13:40 ID:vg8jTqRA0
復活してたのか!支援
45
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:15:59 ID:2YOLjRA.0
二階の部屋で、荷物を下ろす。
窓から町並みを見ると、やはり活気の良さが伺える。
だが、先程の札や周りの態度から、この町に対する違和感は拭えなかった。
さらに下、表通りを見下ろしてみる。
すると、まだ10歳前後であろう子供達が、何かを囲っているのが見えた。
(;^ω^)(あれは…イジメかお?)
囲っているのは、一人の小さな男の子だった。
どうやら、周りの子供はこの男の子に向かって色々と罵倒しているらしい。
聞こえたのは、「悪霊」や「貧乏」といった単語だけだった。
だが、その状況を詳しく察知するには充分な材料だった。
(´メω・`)「ブーン、何を見て…」
(;^ω^)「ちょっとあの子達を止めてきますお!」
(´メω・`)「えっ」
46
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:16:34 ID:2YOLjRA.0
宿屋を飛び出し、子供達の方へと駆け寄る。
(#^ω^)「こら君たち!イジメはダメだって道徳の時間に習わなかったのかお!」
(`A´;)「うわ、なんだこの南蛮人!」
(;゚ヽ゚)「こいつの味方だ!悪霊だ!逃げろー!」
(#^ω^)「誰が悪霊じゃこら!!お前らなんか今年大殺界に堕ちるがいいお!」
あっけなく逃げる子供達。
そして、そこには砂まみれになった男の子だけが残った。
(・∀ ・メ)「……」
( ^ω^)「キミ、大丈夫かお?あんな奴らとはもう関わらないほうがいいお」
(・∀ ・#)「う、うるさい!!」
47
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:17:22 ID:2YOLjRA.0
優しく差し伸ばした手は、勢いよく弾かれた。
唖然とするブーンに、男の子は更に声を上げる。
(・∀ ・#)「お前らなんか、みんな死んじまえばいいんだ!! 人間も、仏様も、みんな死んじまえ!!」
(;^ω^)「ちょっ…!」
ブーンだけでなく、周りの野次馬達にも吠えるような言葉。
それだけを残し、男の子はブーンに背を向けて走り出した。
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待てお!話を…!」
(<´-`)「あー、やめときな南蛮人」
驚いて振り向く。
そこには、荷台を引いた商人らしき男が、無表情で立っていた。
48
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:18:17 ID:2YOLjRA.0
(<´-`)「ありゃ紛れもなく悪霊が憑いとるんだ」
(;^ω^)「は?」
(<´-`)「あの子は持ってねぇんだよ。光世札をよ」
(;^ω^)「こうせ…ふだ?」
思い当たる節はある。
恐らく、先の宿屋で見たあの札のことだろう。
しかし、札を持っていないから「悪霊が憑いている」というのは、あまりにも短絡的すぎる。
(<´-`)「ま、あんたみてぇな南蛮人には考えらんねぇかもしらんけどよ。でも、あの子の態度を見りゃわかるだろう。悪霊がいなきゃ、人間はあそこまで汚くならねえ」
(;^ω^)「そ、そんな勝手な…」
(<´-`)「少なくとも、光世札を持ってなきゃこの町では生きてらんねぇ。あんたも早いとこ手に入れな」
49
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:18:58 ID:2YOLjRA.0
(;^ω^)「はあ…ありがとうございますお」
いまいち言ってる意味が掴めなかったが、とりあえずこういうことだろう。
この町では、「光世札」を持っていない者は悪霊に憑かれている、とされる。
光世札とは光世真宗に関わるものだろうか。
だとすれば、光世真宗は想像以上に強い影響力を持っている。
それにしても、この現状ではあまり良い影響とは言えない。
(;^ω^)(光世真宗って、本当は良くない宗教なのかお…?)
光世真宗を守る旅だというのに、これでは気分が落ち込んでしまう。
とぼとぼと宿屋に戻るその姿を、町の人間達は睨むように見つめていた。
──
50
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:19:21 ID:2YOLjRA.0
──
(´メω・`)「光世札…」
宿屋に戻り、事の顛末を渚本介に話したブーン。
疑問と警戒が、更に絡まったような。
難しい顔のまま、渚本介は黙り込んでしまった。
(;^ω^)「渚本介さん、光世札って一体何なんですかお?」
(´メω・`)「うむ…」
まだあまり状況が理解できていないブーンが、渚本介に尋ねる。
聞いた話だが、という前置きの後に渚本介が語った。
(´メω・`)「光世札が光世真宗に則った、所謂魔除けの為の札であるということは間違いない。ただ…」
( ^ω^)「ただ?」
51
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:21:58 ID:2YOLjRA.0
出かけた言葉を戻しながら、渚本介が溜め息をついた。
(´メω・`)「…いや、まだ確証がないな。俺が知ってるのは光世札という存在だけだ」
( ^ω^)「光世真宗の信者はみんな持ってるんですかお?」
(´メω・`)「否、恐らくこの町に流行しているだけだ。他ではあまり知られていないからな」
余計に理解が追いつかない。
数多い光世真宗の信者達の中で、この百合町にだけ流行する光世札が、先程の子供達のようなイジメを作っているということか。
「この町にだけ流行」する、「光世札」…
(´メω・`)「…いずれにせよ」
深く考え込んだブーンを、渚本介が現実に引き戻す。
52
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:22:20 ID:2YOLjRA.0
(´メω・`)「光世札による悪しき慣習が広がっては、今後の問題となりうる。できれば原因を突き止めたいのだが…」
渚本介が、ちらりと窓を見た。
外の賑やかな声は、もはや悪意のざわめきのように感じてしまう。
(´メω・`)「…少し、外に出てみるか」
──
53
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:22:50 ID:2YOLjRA.0
──
町に出て改めて見てみると、確かに光世札は至るところに貼られてあった。
あらゆる建物の壁、柱。
携帯している者も少なくない。
(´メω・`)「流行…なんてものじゃないな、これは」
渚本介が思わず呟いてしまうほど、それはもはや日常の一部だった。
黄色の札が散在する町を歩く二人。
その一角。小さな男の子が、ぽつんと座っているのが見えた。
(・∀ ・)「……」
(;^ω^)「あ、さっきの!」
(・∀ ・;)「!?」
光世札を持っていないという、男の子。
ブーンの姿を発見した途端、慌てて逃げ出した。
54
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:23:28 ID:2YOLjRA.0
(;^ω^)「ちょ、待てお!なんで逃げるんだお!」
(´メω・`)「ブーン?」
(;^ω^)「さっきのいじめられてた子ですお!追いかけますお!」
(・∀ ・;)「!」
人混みを掻き分けて逃げる子供と、それを追いかける奇怪な南蛮人と武士。
人混みを抜け、ようやく自由に走れるようになると、男の子はすぐに捕まえられた。
(;^ω^)「つ、捕まえたお…久しぶりに走った…」
(・∀ ・;)「離しやがれ南蛮人!悪霊め!」
(;^ω^)「人間じゃボケ!いいから話を聞けお!」
(・∀ ・;)「うるせえ!お前が……」
憎しみの籠もった目を、ブーンに向ける。
そして、全く理解できない台詞が、ブーンを襲った。
(・∀ ・#)「お前のせいで、こうなったんだ!」
55
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:23:54 ID:2YOLjRA.0
(;^ω^)「え…?」
言ってる意味が、わからない。
この子とはもちろん初対面だ。この町も初めて来た。
そもそも、この時代に来てまだ間もないのに。
(´メω・`)「…どういうことなのか、話を聞かせてくれないか」
男の子の横に、渚本介がしゃがみこむ。
渚本介には何の敵意も持っていない様子で、男の子は静かに俯いた。
(´メω・`)「俺達は、光世札の悪習を止めに来たんだ」
(・∀ ・;)「!」
男の子の驚いた顔が、渚本介の方へ跳ね上がる。
しかし、またすぐに俯いてしまった。
(・∀ ・;)「……無理だよ」
56
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:24:21 ID:2YOLjRA.0
聞き返す間もなく、男の子が続ける。
(・∀ ・;)「もう無理だよ…町のみんなは光世札を信じ込んじまってる。よくわかんねえけど、光世札を持ってたら救われるんだってよ」
(・∀ ・;)「うちは貧乏だからさ…光世札なんて大層なもん、買えなかった。光世札が買えなくて町から追い出された奴もいっぱいいる」
( ∀ ;)「おいらが小さいときは、町のみんなはこうじゃなかったのに……みんな…仲良く暮らしてたのに…」
( ^ω^)「……」
(´メω・`)「……」
小さな体が、更に小さくなり、震えている。
ブーンが慰めの言葉をかけようとしたのを、渚本介が制した。
(´メω・`)「安心しろ。俺達が絶対に止める」
(;∀ ;)「……」
57
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:26:19 ID:2YOLjRA.0
(´メω・`)「だから、最後にもう少しだけ教えてくれないか」
優しく尋ねる渚本介に対し、男の子は乱暴に頬を拭いて向き直った。
(´メω・`)「光世札を"買えない"と言ったな。光世札とは、売り物なのか?」
(・∀ ・)「…うん」
(´メω・`)「どこに売ってるんだ」
(・∀ ・)「商人が荷台を引いて売ってる。顔の骨が出た、目の細い奴だ」
(;^ω^)「!」
(´メω・`)「そうか…ありがとう」
男の子の手を引き、立ち上がる渚本介。
小さな体にまとわる着物の砂を払い、頭を撫でた。
(´メω・`)「お前、名は?」
(・∀ ・)「…斎藤又武貴(またんき)」
(´メω・`)「そうか。強く生きろよ、又武貴」
58
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:29:35 ID:2YOLjRA.0
(・∀ ・)「…うん!」
嬉しそうに頷き、走り去る又武貴。
その姿は、何ら普通の子供だった。
(´メω・`)「…さて、必要な情報は得られたな」
(;^ω^)「渚本介さん、又武貴くんが言ってたその商人、覚えがありますお」
最初に又武貴に逃げられ、話しかけてきた男。
その男の顔が、又武貴の言っていた特徴と合致する。
(´メω・`)「よし、その男を探すぞ」
( ^ω^)「了解ですお」
疑問と警戒が、一つの線となって結びついていく。
ブーンと渚本介は、人混みの中へと戻っていった。
──
59
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:30:12 ID:2YOLjRA.0
──
(<´-`)「…百合町における、殿の光世札の計…」
夕方。
商人の男は、誰もいない小さな部屋の中で、ひたすらに文を綴っていた。
(<´-`)「潤滑に、進行し候…」
書が完成し、それを丸める。
窓から差し込む夕陽と、夕陽に照らされる百合の町。
(< - )「……もう…」
小さな声が、男の口から洩れる。
(< - )「耐えられねぇよ…こんなの……」
その声は、小さな夕陽の光に吸い取られていった。
──
60
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:30:51 ID:2YOLjRA.0
──
夜、小さな小屋。
ブーンと渚本介は、その扉の前に立った。
(´メω・`)「ここだな。町人達が言っていたのは」
( ^ω^)「ごめんくださいおー」
(<;´-`)「!?」
突然の来客に、飛び上がる商人。
この声には聞き覚えがある。昼間の南蛮人だ。
短刀を懐に隠し、扉を開ける。
(<;´-`)「…どちらさん」
(´メω・`)「話を聞きたい。上がらせてもらうぞ」
(;^ω^)「あっ僕も…おじゃましますお」
61
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:31:19 ID:2YOLjRA.0
警戒を面に出した武士と、昼間の南蛮人。
用件はすぐに察した。
(<;´-`)「……」
(´メω・`)「早速で悪いが、お前にはちゃんと話を聞かなければならない」
(<;´-`)「…何の用だよ」
(´メω・`)「光世札を売る唯一の商人とは、お前のことだな?」
(<;´-`)「!?」
予想通り、目の前の二人は光世札のことを問いただしに来たようだ。
臆する様子を隠し、商人が応える。
(<;´-`)「…そうだ」
(;^ω^)「……」
(´メω・`)「それでは問う。お前は、光世真宗の使いなのか?」
62
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:31:51 ID:2YOLjRA.0
(<;´-`)「………」
開きかけた口を、必死に抑える。
言ってはならない。それを答えてはならない。
言ってしまえば、全てが台無しになる。
(<;´-`)「……」
(;^ω^)「……」
痺れを切らした渚本介が、ゆっくりを膝を立てた。
その目に、いつもの優しさはない。
(´メω・`)「……答えろ。さもなくば」
(;^ω^)「渚本介さん!?」
自らの刀に手をかける渚本介。
その瞬間、ブーンが飛び込んで渚本介の手を止めた。
だが、ブーンはすぐに手をどけた。
63
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:33:23 ID:2YOLjRA.0
(;^ω^)「……」
(´メω・`)「……」
渚本介の腕には、全く力が入っていなかった。
刀を出すつもりなど、元からないのだろう。
ブーンが安心したのも束の間、商人が静かに呟いた。
(<; - )「……斬れよ」
(´メω・`)「!」
(;^ω^)「え…」
心に貯まった感情が、溢れ出るように。
商人はゆっくりと呟いていく。
(<; - )「……斬れよ。俺なんて、さっさと殺してくれよ」
(;^ω^)「ちょ…」
(´メω・`)「…どういうことだか、話してくれないか」
又武貴のときと同じように、優しく尋ねる渚本介。
商人は、消え入るような声で続けた。
64
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:33:56 ID:2YOLjRA.0
(<; - )「俺はこの町の商人なんかじゃねえ。俺の名は山田竜兵衛」
(<; - )「…吹連家家臣だ」
(;^ω^)「!!」
二人の中に、衝撃が走る。
吹連家なら、光世真宗とは敵対しているはずだ。
(´メω・`)「なれば、光世札とは…」
(<; - )「ああ、光世真宗はこんなもん作っちゃいねえ。全ては殿、吹連久斗尚様の計らいだ」
そうとわかれば、話は見えてくる。
つまり、吹連久斗尚は光世真宗を弱体化させる為、光世札を作って流布した。
その結果、光世札が流行した地域では、光世真宗を巡って対立することになる。
そう、あの又武貴のように。
光世札を持っているか否か、ただそれだけで。
65
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:35:33 ID:2YOLjRA.0
(<; - )「殿の命で光世札を持ってこの地に降りた俺は、八尾井山が近く光世真宗が浸透したこの町で、ありもしない話をでっち上げた」
(<; - )「南蛮人が悪霊を連れ込んだ。天野が滅んだのも悪霊のせいだ。救われたくば光世札を買うがいい、と」
(<; - )「天野を破ったのは戦魔と南蛮人だ、という話が有名だったからな」
(;^ω^)「!」
又武貴に突然嫌われたのも、町の人間達がブーンを睨みつけていたのも、これで納得がいく。
全ては作り話だったのだ。
光世札を流行させる為に。
光世真宗を弱らせる為に。
(<; - )「我ながら、馬鹿みてえなおとぎ話だと思ったよ。でも、町の人間は思いの外それを信じた。光世札は売れに売れた」
(<; - )「でもよ、それは同時に、貧乏人達を淘汰しちまう結果になった…予想してたとはいえ、俺は…」
深く、深く、その頭は下がっていく。
悪い人間ではないことは、その様子でわかる。
66
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:36:30 ID:2YOLjRA.0
(<; - )「…俺はよ、女房と娘を戦で亡くしてるんだ。天野の仕業さ」
(;^ω^)「!」
(´メω・`)「……」
(<; - )「だから、戦は嫌いなんだ。できれば刀も槍も見たくねえ」
(<; - )「だが、殿が光世真宗と戦う気でいることはわかってた。それでも俺は、戦だけは避けたかったんだ。だから…」
(´メω・`)「…だから、光世札で結果を残すことに専念したのか」
(<; - )「………」
兵と兵がぶつかり合う戦なんて、絶対に嫌だった。
戦が何も生み出さないことは、よくわかっていた。
だから、この男、山田竜兵衛は光世札を売りに売ったのだ。
戦をするまでもないほどに、光世真宗を弱らせることが目的だった。
そうすれば、もう誰も死ぬことなんてないのだから。
67
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:36:53 ID:2YOLjRA.0
(<; - )「だがよ…光世札を売れば売るほど、罪のない人間達が苦しんでいくんだ。それに、殿は八尾井山焼き討ちを計ってる」
(<; - )「とんだお笑い草さ。もう、どうして生きていいのかわかんねえよ」
(<; - )「……だから、斬ってくれ。殺してくれよ。俺はもう疲れたんだ…」
(;^ω^)「……」
(´メω・`)「……」
あまりにも、哀れな男だ。
戦を忌み嫌う者が、また別の戦を生み出している。
恐らく、この男は強烈な自己矛盾と闘ってきたのだろう。
誰にも真相を語れずに。
たった一人で、家族を失った心を抑えながら。
68
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:37:16 ID:2YOLjRA.0
( ^ω^)「竜兵衛さん…」
ブーンが、竜兵衛の横に座る。
溢れる気持ちをまだ抑えようとするその横顔に、ブーンは静かに語りかけた。
( ^ω^)「竜兵衛さんは悪くないですお。戦を無くす為に、戦から人を救う為に闘ってきた竜兵衛さんは、誰よりも強い男ですお」
( ^ω^)「だから、顔を上げてくださいお。天にいる家族に顔を向けてくださいお」
( ^ω^)「竜兵衛さんは、よく頑張ってきましたお」
(<;-;)「……」
少しだけ上げた顔に、涙が流れる。
泣くわけにはいかなかった。
光世札を売るために、この町では明るい商人を演じなければならなかった。
これまで抑えていた感情が、勢いよく溢れ出る。
69
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:37:40 ID:2YOLjRA.0
(<;-;)「俺は……俺はどうすりゃいいんだよ…」
(´メω・`)「…俺達に任せるがいい、山田竜兵衛。お前の勇気は、俺達が必ず成就させる」
(<;-;)「………」
(´メω・`)「……ブーン」
二人と向かい合う位置に座りながら、渚本介がブーンに話しかける。
(´メω・`)「ぎたーを弾いてくれ。曲は任せる」
( ^ω^)「……」
不思議と、違和感なくギターを用意する。
ブーン自身、何故かギターを弾かなければならないと感じていた。
不思議そうにその様子を見つめる竜兵衛と、静かに座る渚本介に向かって、ブーンはギターを構えた。
70
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:38:45 ID:2YOLjRA.0
( ^ω^)「…いきますお」
指を弦に置き、ゆっくりと演奏を始める。
曲は、Secret Garden『you raise me up』のソロギターバージョン。
力強い愛の旋律が、小さな室内を響き渡る。
(<;-;)「…あ……あぁ…」
(´メω・`)「……」
一人で続ける戦いが、一体どれほど重いのか。
一体どれほど苦しいことか。
ブーンにはよくわからなかったが、この男を前にして、初めて理解した。
人間は、たった一人では闘えない、ということに。
自分の心と戦い続けた勇敢な男、山田竜兵衛。
その嗚咽は、夜の世界でいつまでも響いていった。
──
.
71
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:39:16 ID:2YOLjRA.0
──
翌朝。
これまでにないほど大量の光世札を荷台に詰め、竜兵衛は表に出た。
(<;´-`)「ほ、本当にこれで大丈夫なのか…?」
(´メω・`)「大丈夫さ。ブーンが言うんだから間違いない」
( ^ω^)「間違いないですお。だから、思いっきり町中に光世札をバラまいてくださいお」
光世札の解決策は、ブーンの提案が採用された。
それは、「光世札を大量に消費すること」だ。
つまり、大量消費によって物の価値を極端に下げる、資本主義的な方法だ。
高校のとき、社会科の何らかの授業で、そういった話を聞いたことがあった。
例えば、ダイヤモンドは希少で一定の価値を持つから特別なものであって、もしダイヤモンドが「誰もが持ってて当たり前の物」になると、その価値や興味は完全に薄まる。
72
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:39:44 ID:2YOLjRA.0
( ^ω^)「誰もが光世札を持ってて当たり前…消耗品みたいになってしまえば、光世札への興味なんてなくなりますお」
( ^ω^)「そうやって町は元通りになっていくはずですお」
(´メω・`)「しかし面白い方法だな。確かに説得力はある」
(<´-`)「…そうと決まりゃ、信じるしかねえな」
幾分か明るい顔になった竜兵衛が、荷台を動かす。
すると、表通りの一角に、子供達が集まっているのが見えた。
(;^ω^)「あ、昨日のガキ共!またイジメを…」
(´メω・`)「待て」
飛び出そうとするブーンを、渚本介が抑える。
すると、竜兵衛が荷台ごとその子供達に近づいていった。
73
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:40:20 ID:2YOLjRA.0
(<´-`)「うおーい、お前ら!」
(`A´;)「!」
(;゚ヽ゚)「やべ!」
(・∀ ・メ)「!」
仁王立ちの子供達と、砂まみれの又武貴が、驚いて振り向く。
すると、竜兵衛が笑顔で近づいてきた。
(<´-`)「朝からえげつねえもん見せんじゃねえよ!ほら、これ全部やるから帰りな!」
笑いながらそう言うと、竜兵衛は百枚近い光世札の束を足元に投げた。
(`A´;)(;゚ヽ゚)「!?」
(<´-`)「ほら又武貴、お前の分だ」
(・∀ ・;)「!?」
74
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:40:46 ID:2YOLjRA.0
何百枚という光世札が、足元に広がる。
固まる子供達に、笑いながら続ける。
(<´-`)「手に余るんなら、家族やお隣さんにも分けてやりな!じゃあな!」
そのまま荷台を引いて歩きだす竜兵衛。
未だ固まる子供達を後目に、竜兵衛は此方を振り向いた。
(<´-`)「じゃあな!ブーン、渚本介!あんがとよ!」
(<´-`)「俺、もっとこの町で生きてみるわ!」
元気な商人の姿は、百合町の人混みへと消えていく。
( ^ω^)「…強い人ですお、本当に」
(´メω・`)「ああ、そうだな」
75
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:41:30 ID:2YOLjRA.0
荷物を持ち、各々の馬の元へと戻る。
( ^ω^)「でも渚本介さん、あれで良かったのか不安ですお…もし吹連にバレたら…」
(´メω・`)「問題ない。流通しすぎた結果だと言えば、吹連も納得せざるを得ないはずだ」
( ^ω^)「…なるほど」
自然と笑顔に戻り、馬に跨る二人。
吹連領は、もう目の前だ。
(´メω・`)「さ、行くぞ」
( ^ω^)「了解ですお。行くおマルフォイ」
▼・ェ・▼ ヒーン
76
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:42:28 ID:2YOLjRA.0
活気のある宿場町を背に、二人は進む。
もう二度と訪れることはないだろう。
だが、この町の動向はいつまでも見守っていたい。
ブーンは心からそう思った。
一人の男の闘いが、成就するその時まで。
─You raise me up... To more than I can be.─
「あなたが勇気づけてくれるから 私は自分を超えてゆける」
『You raise me up』歌詞より
第二話 終
77
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:43:56 ID:2YOLjRA.0
支援ありがとうございます!
続けて投下していきますーーーー
78
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:45:52 ID:2YOLjRA.0
一つ、理解できないことがあった。
いや、この時代に飛ばされていること自体がもはや理解の外だが。
それ以上に、ブーンの心に引っかかることがあった。
渚本介の話によると、前にこの時代に来たときは、尾付出麗の命を救うため──彼女に音楽の人生を与える任務があったという。
これは、恐らく今回にも当てはまる。
八尾井山焼き討ちによって、二茶根留領一帯の平和が危ぶまれる。
それは、出麗の命にも直接関わるのだ。
そこまでは理解できる。
だが、やはりどうしてもわからないことがある。
そもそも、どうして出麗の為に、自分が駆り出されたのか。
──
79
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:47:29 ID:2YOLjRA.0
第三話
「二足の草鞋」
──
渚本介の言う通り、八尾井山はかなり近いようだった。
百合町を抜けて、大きな丘を越えると、それはすぐに見えてきた。
(´メω・`)「見ろ、あれが聖地八尾井山だ」
(*^ω^)「おお…!」
光世真宗の修行僧が、何十年も籠もるという山。
決して高くはない山だが、近隣の山に比べると、横幅は圧倒的に大きい。
その山頂付近には、下からでもはっきり見えるほどの立派な寺が建てられている。
(*^ω^)「こりゃ凄いですお!」
(´メω・`)「さあ、このまま登るぞ。光世真宗の長に話をしなくては」
(*^ω^)「はいですお」
80
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:47:55 ID:2YOLjRA.0
整備が施された山道を登り、光世真宗の本殿へと向かう。
近くで見るとその威圧感は凄まじいものだった。
観光客で賑わう現代の寺や神社とは雰囲気がまるで違う。一種の感動が、ブーンの心を震わせた。
(*^ω^)「ほんとすごいお…」
(´メω・`)「未来にも寺はあるんじゃないのか?」
(*^ω^)「ありますけど、なんつーか、こんなに神聖じゃないですお」
(´メω・`)「そうなのか」
壮麗な雰囲気を持つ本殿に入ろうとすると、すかさず門番に止められた。
渚本介が名乗ると、門番は目を丸くし、慌てた様子で境内へと走っていった。
(;^ω^)「…渚本介さん、なんかすっげー怖れられてましたけど」
(´メω・`)「ああ、いつものことさ」
81
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:48:27 ID:2YOLjRA.0
本殿に入る。
案内人の後ろを歩き、長い廊下を歩く。
外観を正面から見ただけでは分からなかったが、本殿はかなり奥行きのある建物らしく、
光世真宗の最高指導者――座主(ざす)の居る部屋はその一番奥、ということだった。
部屋の前に着くと、案内人は驚くほど深く頭を下げ、そそくさとその場を去った。
(´メω・`)「さあ、入るぞ」
(;^ω^)「はいですお…」
何となく、緊張してしまう。
宗教組織のリーダーだ。それも戦いのできる宗教組織。
一体どんな怖い奴がそれを統べてるのか、気にはなるが関わりたくない。
ブーンの緊張を知ってか知らずか、渚本介は何の躊躇いもなく扉を開いた。
中に居たのは。
川 ゚ -゚)「――来たか。待っていたぞ、太田渚本介」
(;^ω^)(女!?)
中に居たのは、30代半ばの女だった。座布団の上に綺麗に座っている。
かなりの美人だが、眼光が鋭い。
ブーンの予想外ではあったが、最高指揮者と呼ばれるほどの威厳は何となく感じる。
82
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:48:48 ID:2YOLjRA.0
(´メω・`)「俺が来ることを知ってたのか」
川 ゚ -゚)「吹連が兵を集めてる。天野亡き今、奴らとまともに敵対しているのは、我々光世真宗くらいだ」
川 ゚ -゚)「私から二茶根留に連絡するつもりだったが、既にお前が動いてると私の使者から言伝があってな」
川 ゚ -゚)「お前から来るということは、奴らはやはり我々を攻める気なのだな――して、そこの南蛮人は?」
(;^ω^)「えっ、あっ、はい!」
急に指され、驚くブーン。
相棒だ。と渚本介が即答する。
(;^ω^)「そ、そうですお。ブーンと呼んでくださいお。へへえ」
(;´メω・`)(へへえってお前…)
川 ゚ー゚)「ブーンだな。そんなに緊張しなくていいぞ」
川 ゚ー゚)「私は光世真宗の座主、素直空流(くうる)だ。よろしくな」
(*;^ω^)「よ、よろしくですお」
空流と名乗った女は、先程の威厳ある雰囲気から打って変わって、優しい笑顔をブーンに向けた。
その笑顔の柔らかさに、またもブーンは驚いた。
「怖い奴」というイメージは、この時点で完全に拭われた。
83
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:49:00 ID:HPFl86Z60
は????生きてたの??????
支援
84
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:52:27 ID:2YOLjRA.0
川 ゚ -゚)「それで、ブーン。お前のその荷物は何だ? 楽器のように見えるが」
空流がブーンの荷物に目を向ける。
ブーンは慌てて荷袋からギターを取り出した。
( ^ω^)「はい、楽器ですお。ギターといいますお」
川 ゚ -゚)「ぎたー? 随分いびつな楽器だな。私も琴を嗜むが、それは初めてだ」
川 ゚ -゚)「そうだ、折角だし弾いてみてくれないか。これから難しい話が始まるからな。まずは心を癒そう」
(´メω・`)「はは。それもそうだ」
渚本介がその場に座る。空流は純粋に興味があるといった目を向けている。
不慣れなタイミングで演奏を振られたが、それでもブーンはギターを構えた。
心が静まっていく。
( ^ω^)「わかりましたお。曲はどうしますかお?」
川 ゚ -゚)「そうだな…戦の前だ。私や兵の士気が上がるような音楽がいい」
85
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:54:07 ID:2YOLjRA.0
( ^ω^)(士気って…)
士気の上がる音楽。
即ち、戦を盛り上げるような曲だ。
そういう曲はいくつも知っている。だが、ブーンはそういった曲を弾くことにあまり気が進まなかった。
この旅は、戦を止めるのが目的だ。だからブーンはこの時代に飛ばされた。
吹連のように戦の準備を進める者もいれば、百合町の竜兵衛のように、心を削ってまで戦を止めようとする者もいる。
その中で、士気を上げるというのは、ブーンのが選びたい選択肢ではないのだ。
ギター弾く。たかがそれだけの話でもあるのだが。
頭の中に何百とあるレパートリーから、ある曲をみつける。
「それじゃあ行きますお」と呟くように言うと、ブーンは演奏を始めた。
( ^ω^)♪〜♪♪〜
川 ゚ -゚)「……」
(´メω・`)「……」
ブーンが選んだのは、ゲーム『メタルギアソリッド』シリーズのメインテーマだった。
曲名は『metal gear solid main theme』といったところか。
本来はオーケストラで奏でる曲だが、ブーンはそれをソロギターで表現していく。
知る人ぞ知る名作ゲームのその曲は、優しい旋律の中に、戦争に関する様々な感情を含んでいる。
86
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:54:53 ID:2YOLjRA.0
例えば、メタルギアシリーズといえば戦争やテロの中を進むアクションゲームだが、
監督した小島秀夫は、反戦争・反核兵器という思想を持っている。
戦は人が死ぬ。人が死ぬと、様々な感情が生まれる。
様々な感情の中で生きていくことに必要なのは、戦ではない。
( ^ω^)♪〜♪♪〜
名曲と呼ばれたその曲は、ブーンの左手が奏でるビブラートと共に、消え入るように終わった。
川 ゚ -゚)「……ありがとう。良い演奏だった。私が想像したものと少し違った雰囲気だったが」
ブーンがぎくりとして空流を見つめると、また優しい笑顔が返ってきた。
川 ゚ー゚)「素晴らしい曲だ。お前の表現力も相まって、いろいろと響いてくるものがあった。」
(;^ω^)「あ、ありがとうございますお…なんかすいません…」
川 ゚ー゚)「渚本介、お前はいつもこの演奏を聴いているのか」
(´メω・`)「ああ。贅沢だろう?」
川 ゚ー゚)「はは、そうだな。お前が相棒にしたくなるのもわかるよ」
さて、と空流が立ち上がり、部屋の奥にある戸棚から書物を取り出した。
川 ゚ -゚)「だいぶ頭が冴えたよ。さあ、作戦会議と行こうじゃないか」
87
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:55:23 ID:2YOLjRA.0
――
夜。
止まっていけという空流の言葉に甘えて、ブーンと渚本介は一晩過ごすことに決めた。
吹連が拠点とする具麗芭城は、この八尾井山からさほど遠くない。
だからこそ、決まった作戦は、ブーンにとって合理的かつ単純かつ不安なものだった。
川 ゚ -゚)「直談判だ」
(;^ω^)「はあ!?」
(´メω・`)「俺もそれがいいと思う。奴には一度命を拾わせた。俺が直接行くとなお話を聞いてくれそうだ」
川 ゚ -゚)「ブーン、何をそんなに驚いてるんだ」
(;^ω^)「え、だって空流さん、なんかさっき戦争する気満々ぽかったから、なんかこう、奇襲とか…」
しばしの沈黙。
渚本介と空流が顔を見合わせ、少し吹き出した。
川 ゚ -゚)「あのなブーン、確かに勘違いされやすいが、我々は最初から武力で争う気はない」
(´メω・`)「交渉も戦だ。勝ち負けがある。結果次第では誰も死なないしな」
(;^ω^)「そうなんですかお…」
88
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:55:45 ID:2YOLjRA.0
肩すかしを喰らった。そんな気分になった。
それなら、戦争なんかしなくても、自分がそんなこと気負わなくてもいいのか。
――後に、その安心が大きな間違いだったと、ブーンは知ることになる
第三話 終
89
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:57:21 ID:2YOLjRA.0
>>83
ありがとうございます。
はい。モリモリ生きてました!
逃亡してましたすんません!後日謝罪会見します!
90
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:57:53 ID:2YOLjRA.0
朝。
馬に跨った二人は、木の生い茂る森の中を進む。
空流は八尾井山に残った。万が一の攻撃に備えて準備がしたいという。
彼女の落ち着いた態度は、何となく渚本介に似てると思った。
ふと、ブーンはあることを思い出した。
( ^ω^)「あれ? 渚本介さん」
(´メω・`)「どうした」
( ^ω^)「最初から戦じゃなくて、交渉でいくつもりだったんですおね?」
(´メω・`)「ああ」
( ^ω^)「それなら、どうして二茶根留城で兵の準備なんかさせたんですかお?」
この旅に出る前のことを思い出す。
渚本介は二茶根留城の巳留那と出麗に、万が一のため兵を集めるよう進言していた。
(´メω・`)「空流と同じだ。万が一の攻撃に備えてだな。それに…」
渚本介の眼差しが、少し下がる。
(´メω・`)「──少々、思うところがあってな」
──
.
91
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:58:22 ID:2YOLjRA.0
第四話
「混沌の渦中」
──
何度か休憩を取り、夕方。
小高い丘の上に、具麗芭城が見えてきた。
夜に備えて、既に明かりを灯し始めている。
(´メω・`)「さあ、乗り込むぞ」
(;^ω^)「え、正面から堂々と行くんですかお?」
(´メω・`)「当然だ。こそこそ入ってくるような奴と交渉に応じたいと思うか」
(;^ω^)「そりゃそうですけど…」
馬を近くに待機させ、城門へ近づく。
門番に偽名を名乗り、光世真宗の使いとだけ身分を明かした。
最大限の警戒を受けた二人は、まず武器を預けるよう指示された。
渚本介は愛刀の虎恍丸を手渡す。
ブーンのギターは武器にならないと判断されたのか、没収されずに済んだ。
前に案内人、後ろに武器を持った数人の兵士。
挟まれた形で、二人は城内へ入っていく。
92
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 10:58:59 ID:2YOLjRA.0
本丸に入り、幾つかの廊下や階段を進む。
誰も何も話さない。
横を歩く渚本介は涼しい顔をしているが、ブーンは緊張で汗が止まらなかった。
案内人が大きな襖の前で立ち止まると、「お連れしました」と合図を送った。
(;^ω^)(この襖の向こうに、吹連久斗尚が…)
(´メω・`)「……」
ブーンにとっては、日本史の授業でしか知らない男。戦争を始めようとしている男。
渚本介にとっては、かつて天野が倒れた隙に二茶根留へ攻め込んだ、危険な男。
襖の向こうから返事はない。
案内人が襖に手を掛けた、その瞬間。
93
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:02:19 ID:2YOLjRA.0
二人の体に、衝撃が走った。
(;゚ω゚)「あっ!!」
(;´メω・`)「!!」
罠だ。
渚本介は襖の向こうに突き飛ばされ、バランスを崩しながらその部屋に入ってしまう。
部屋の中には槍を構えた大勢の兵士。
咄嗟に左腰に手を回すが、虎恍丸を門番に預けたことを思い出し、すぐに諦めた。
一方、ブーンの方を振り返ると。
数人の兵士達に抑えられ、引きずられるように廊下の奥へと連れ去れていくところだった。
(;゚ω゚)「しょ、渚本介さん!!」
(;´メω・`)(…くそ、どういうことだ)
門番には名前も身分もまともに明かしてない。
なのに、突然襲われている。
考えられる理由は二つ。
光世真宗の使いは問答無用で捕まえ、必要なら殺し、宣戦布告にでも利用するつもりか。
或いは──
94
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:03:10 ID:2YOLjRA.0
(;´メω・`)(──俺とブーンが来ることを、最初から知っていたのか?)
いや、有り得ない。
だが、そうでなければ、渚本介とブーンを分けた道理がない。
やがて、ブーンは引きずられたまま廊下の曲がり角へと消えていった。
大量の槍が向けられた渚本介に、リーダー格の男が一歩踏み寄り、話しかける。
(’e’)「"戦魔"、太田渚本介だな?」
(´メω・`)「……なぜ俺の名を」
(’e’)「着いてこい。抵抗したら即座に殺す」
男は背を向け、部屋の外へ歩き出した。
質問に答える気は無いということか。
一拍置いて、渚本介も歩き出す。
(´メω・`)「どこに連れて行く気だ。ブーンはどうした」
(’e’)「……」
徹底してるな、と小さく呟く。
もといた部屋より更に奥に進み、別の部屋に通される。
そこには、見知った男が座っていた。
95
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:03:47 ID:2YOLjRA.0
(‘_L’)「久しぶりだな。戦魔よ」
具麗芭城城主、吹連久斗尚。
かつて渚本介に敗れた男が、そこに居た。
(´メω・`)「……三年前、俺はお前に二つ命じたはずだ」
(´メω・`)「二茶根留は諦めよ。そして」
渚本介の語気が、強まる。
(´メω・`)「──二度とその名を口にするな、と」
復讐はやめた。
戦も、命を奪うことも、もう辞めた身だ。
業深き時代の、その呼び名は、もう捨てたのだ。
"戦魔"は、もう居ない。
(‘_L’)「ふん、関係ないな。お前はもうここで死ぬ身だ」
96
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:04:39 ID:2YOLjRA.0
(´メω・`)「立派なことが言えるようになったものだな。吹連久斗尚」
久斗尚の向かいに、渚本介が座った。
渚本介の背中に向けられていた数多の槍先が、それに合わせて下を向く。
(´メω・`)「聞きたいことが山ほどあるが… お前の目的は何だ」
まっすぐ睨み合う二人。
久斗尚が即答する。
(‘_L’)「天下統一。その為に、二茶根留と光世真宗を潰す」
(´メω・`)「それは知っている。何故、俺とブーンを狙った。そもそもどうやって知り得たのだ」
(‘_L’)「情報を得る力は自負しているからな。あの南蛮人には、部下が用があるらしい」
(‘_L’)「お前に関しては──そうだな、私情とでも言っておこうか」
久斗尚の口角が上がる。
目は笑っていない。目に見える殺気だ。
97
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:05:04 ID:2YOLjRA.0
(‘_L’)「お前のことが憎くてしょうがないんだ、渚本介」
悪寒。
渚本介の背中に冷たいものが走る。
どこかで聞いた台詞だ。誰かに似ている。
(‘_L’)「本当はこうして話す間も与えずに殺したいほどだ。憎くて憎くて、仕方なかった」
(‘_L’)「この三年間、お前を殺すことだけを考えてきた」
そうだ。これは──
(‘_L’)「我が野望を打ち砕いたお前への復讐。もはや、それだけが俺の生きる理由だったのだ」
──自分に似てるのだ。
かつて、天野擬古成に抱いていた猛烈な復讐心。ブーンをも巻き込んだ、復讐の旅。
後悔ばかりの生き様だった。そして、ブーンのおかげで生まれ変わった。
だが、復讐に明け暮れる"戦魔"も、また新たに生まれ変わってしまったのだ。
98
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:09:59 ID:2YOLjRA.0
思わず、目を瞑る。
自分には責任があるのだろう。
"戦魔"として生きた責任が。"戦魔"を生み出した責任が。
それは、己の手で終わらせなければならない。
(´メω-`)「……そうか」
だが、その責任を果たすにはどうすればいいのだろう。
今ここで大人しく斬られるわけにはいかない。
ブーンが元の時代へ帰る為に、久斗尚を止めなければならないのだ。
それなら、道は一つ。
(´メω・`)「なれば、俺はお前を止める。お前を止め、この戦乱の世を終わらせる」
(#‘_L’)「綺麗事を抜かすな! 戦魔、お前こそ戦乱そのものだ!」
声を張り上げ、久斗尚が立ち上がる。
(#‘_L’)「天野を斬るまで暴走を続けたお前に、戦を終わらせる筋合いはない!!」
(´メω・`)「いや、止めるさ。それが俺の責任だ」
99
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:10:27 ID:2YOLjRA.0
再度の睨み合い。
緊迫した空気が、辺りを包み込む。
(‘_L’)「…俺以外、にも」
久斗尚が口を開く。
怒りを必死に堪えているようだった。
(‘_L’)「俺以外にも、お前を狙う人間はごまんといる。」
(´メω・`)「ああ、何度か喧嘩を売られたよ」
(‘_L’)「俺の部下にもそういう奴がいてな」
(´メω・`)「部下?お前が相手しなくていいのか」
(‘_L’)「俺一人でお前に飛び掛かるほど馬鹿じゃない」
連れて行け、と兵達に指示する。
複数の槍で渚本介に立つように促すと、渚本介は素直に立ち上がった。
100
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:10:55 ID:2YOLjRA.0
(´メω・`)「最後に一つ。ブーンをどうするつもりだ」
歩き出す前に、渚本介が尋ねる。
無表情で久斗尚は答えた。
(‘_L’)「別の部下が、あの南蛮人に興味があるらしい」
(´メω・`)(別の部下…)
(‘_L’)「俺にとっても、あいつは殺し損ねた獲物だ。用が済んだら直ちに殺す」
(;´メω・`)「……」
渚本介の額に、冷や汗が流れる。
この場を切り抜けるとしても、ブーンの居場所を特定しなければならない。
兵士に促され、廊下を進んだ。
本丸の外に出る。外はすっかり日が沈んでいた。
101
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:11:34 ID:2YOLjRA.0
(´メω・`)「ここは…」
広大な敷地。作りは日本庭園と同じだ。
綺麗に敷き詰められた石庭。
石や砂を使って山や川を表現するのが石庭の特徴だが、此処は広すぎるあまり本物の芝生や小川もある。
その石庭の中央。
武装した筋骨隆々の男が、仁王立ちをしている。
(;´メω・`)(あいつは、まさか…)
見覚えのあるシルエット。見覚えのある顔。
男は、低くくぐもった声を出した。
102
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:12:02 ID:2YOLjRA.0
( ゚∋゚)「会いたかったぞ、戦魔」
天野家家臣、堂土狗久流。
三年前、渚本介が一騎討ちで辛勝した男。
馬を吹き飛ばす程の力を持ち、本隊の一員として、天野の従順な家臣として活躍した男。
かつて渚本介を追い込んだその男は、吹連の元に蘇っていた。
第四話 終
103
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:20:43 ID:2YOLjRA.0
──
ξ゚⊿゚)ξ「はあ…」
夜。自室のベッド。
リクルートスーツを脱ぎ捨て、ツンは携帯片手に寝転がっていた。
ξ゚⊿゚)ξ(…なんでこんなことしてるんだろ)
合同説明会に行くとき。一次試験を受けているとき。
ふと、我に返ってしまう瞬間がある。
周りには兵隊のように同じスーツを着込んだ学生。
職場の雰囲気や給料をアピールする、聞いたこともない会社。
大学で学んだことなんか生かしようがないとでも言いたげな雰囲気。
自分は、何がしたいんだろう。
ξ゚⊿゚)ξ(やりたいことをやって生きるって、どうやるんだろう…)
ふと、同じバイト先の、あの童貞ミュージシャンの顔が思い浮かんだ。
──
104
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:22:23 ID:2YOLjRA.0
第五話
「過去の呪い」
──
幾本もの松明が、辺りを照らしていた。
視界は問題ない。
( ゚∋゚)「お前のだろ?使え」
(´メω・`)「!」
狗久流が渚本介に刀を投げ渡す。
鞘と柄の部分を両手でキャッチし、それが虎恍丸であることを確認した。
(´メω・`)「…男らしく一騎打ち、ということか」
( ゚∋゚)「そんなところだ」
対する狗久流は、まだ何の武器も構えない。
だが、渚本介より頭一つは高く、二回りほど大きいその体つきから、既に巨大な威圧感を覚える。
( ゚∋゚)「お前に斬られて、俺は何日も何日も死の淵を彷徨った」
(´メω・`)「……」
( ゚∋゚)「蘇った俺を待っていたのは、負けたという事実だけだった。初の敗北だ。だから──」
105
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:23:03 ID:2YOLjRA.0
狗久流が足元に手を伸ばす。
辺りに、重い金属音が鳴り響いた。
巨大な鞘。
人の上半身を包み込むような、冗談のように大きな刀身。
(;´メω・`)(まさか…)
( ゚∋゚)「──お前を最も苦しめたこの刀で、俺は、誇りを取り戻す」
斬馬刀。
亡き暴君、天野擬古成の愛刀を、狗久流は握り締めた。
.
106
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:23:33 ID:2YOLjRA.0
(;´メω・`)「……悪趣味が」
虎恍丸を中段に構える。
あの斬魔刀は、剛拳と呼ばれた擬古成だからこそ操れると言ってもいい代物だった。
だが、力だけなら狗久流もそれに並ぶ。或いは、もっと強いかもしれない。
擬古成ほどの技術を、狗久流が持ち合わせているのなら。
あの死闘を繰り返すというのなら。
次は、勝てるかどうか怪しい。
(´メω・`)(様子見だな)
頭の中を切り替え、中段の構えのまま狗久流を見る。
その巨大な刀は、地面に寝かされるように構えられている。
脇構えだ。下から突き上げるように、或いは薙ぎ払うように振るつもりか。
107
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:23:55 ID:2YOLjRA.0
渚本介は構えを下段に下げた。
あの刀は、まともに受けると必ず押し負ける。
一撃目を流し、一瞬で距離を詰め、攻撃する。
流れをイメージした渚本介に、狗久流の視線が重なった。
( ゚∋゚)「──参る!」
(´メω・`)「!!」
脇構えのまま、狗久流が走り出す。
その体躯からは考えられないような速さだ。
渚本介は下段に構えたまま、その場に留まる。
直後、狗久流は背負い投げのように斬馬刀を振り上げた。
(# ゚∋゚)「せいやァァァァ!!!」
(´メω・`)(上か!)
軌道が変わった。だが、虎恍丸で攻撃を流すことは充分可能だ。
虎恍丸を上に向け、斬馬刀の軌道を読む為、視線を若干上げる。
108
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:25:08 ID:2YOLjRA.0
だが、振り下ろされてきたのは、白刃ではなかった。
(;´メω・`)(しまった…!)
横向きになった刀身──巨大な鎬地が、渚本介に振り下ろされて来ていた。
まるで頭上から壁が降ってくるような威圧感。
足捌きでは避けられないタイミングだ。
咄嗟に頭を下げ、手首と肘を折って刀の柄を向ける。
だが、斬馬刀の重さと狗久流の力は、その抵抗を遥かに上回り。
鎬地は、渚本介の頭と肩を捕らえた。
(;´メω・`)「がっ…!」
(# ゚∋゚)「トドメだ!!」
叩きつけられ、バランスを崩した渚本介に、狗久流が再度襲いかかる。
.
109
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:25:41 ID:2YOLjRA.0
もう一度、上段からの振り下ろし。
今度は刃を向けている。
(;´メω・`)「くっ!」
転がるように距離を取り、その攻撃を避ける。
斬馬刀が石庭の地面に突き刺さった。
( ゚∋゚)「相変わらずすばしっこい奴だ」
(;´メω・`)(クソ…頭に響くな)
世界が揺れて見える。耳の中に何かが鳴り響く。それほどの衝撃だった。
よろよろと立ち上がり、何とか虎恍丸を構え直す。
相変わらずの剛力。しかし、柔軟な攻撃だ。
以前より遥かに強くなっている。
( ゚∋゚)「さあ、遠慮なく行くぞ!」
(;´メω・`)「!」
110
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:26:04 ID:2YOLjRA.0
激しい頭痛を堪え、狗久流の動きに集中する。
斜めから振り下ろす袈裟斬り。渚本介は頭を下げて避けるも、此方のリーチは届かない。
すかさず、斬馬刀の返し胴が渚本介の脇腹を目掛けて襲いかかる。
瞬時に半歩分ほど下がり、その軌道は空を切った。
(´メω・`)(今だ!)
( ゚∋゚)「!!」
大股で踏み込み、突き。
最も捌きにくい攻撃で、狗久流の腹を狙う。
しかし、狗久流は伸びてくる虎恍丸を蹴り上げた。
がら空きになった渚本介の腹に、再度斬馬刀が襲いかかる。
111
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:26:33 ID:2YOLjRA.0
(;´メω・`)(避けられない!)
(# ゚∋゚)「せいやァァッ!!!」
何とか虎恍丸で受け止めることができた。
だが、狗久流の剛力をまともに受けた渚本介の体は、石庭から小川まで飛ばされた。
激しい音を立て、全身に水を被る。
(;´メω・`)「ぐはあッッ!」
( ゚∋゚)「勢いが無いな。戦魔よ」
低くくぐもった声が、渚本介に届く。
狗久流のシルエットが、擬古成と重なった。
(;´メω・`)(強い……)
どうすれば。
どうすれば勝てる。
ずぶ濡れの顔を荒く拭き、思考を巡らせる渚本介に。
狗久流が斬馬刀を引きずりながら迫ってくる。
──
112
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:27:08 ID:2YOLjRA.0
──
下半身に伝わる振動と、甲冑や轡がガチャガチャと揺れる音で、ブーンは目が覚めた。
いつの間にか眠らされていたらしい。
地面に勢いよく流れる石や草が視界に入る。
暫くぼうっと眺め、ブーンはようやく馬に乗せられているのだと気づいた。
手足は縛られていて動かない。
急に、焦りが生まれる。
(;^ω^)(ど、どうしよ…)
周りを見ると、同じように馬に乗った兵士達が並走している。
自分と同じ馬にも、もう一人乗っている。後ろから抱えるように綱を握っている。
ブーンが起きたことに気が付いたようだが、何も話しかけてこなかった。
勇気を振り絞り、後の男に声をかける。
(;^ω^)「あ、あの」
( `ー´)「あ?」
(;^ω^)「今、どこに向かってるんですかお?」
( `ー´)「……おまん、南蛮人なのに言葉がわかるんかい」
113
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:27:30 ID:2YOLjRA.0
男は全く別のことに驚いてるようだった。
妙な訛りが目立つ。
( `ー´)「まいいや。おいらは何も言わねえように言われてるんや」
(;^ω^)「そうですかお…」
( `ー´)「逆に聞きてえんだがよ、おまんのその荷物、何や? 暗器か?」
(;^ω^)「楽器ですお。ギターといいますお」
(;`ー´)「楽器!? おまん、南蛮人のくせに身分高いんやな」
(;^ω^)「いやあ……」
聞いたことはあった。
昔は、音楽や芸術は高貴な嗜みだから、庶民には触れ得ないものだったという。
しかし、実際はフリーターだ。身分で言えば高くないだろうとブーンは自覚していた。
( `ー´)「ほんならあれか、おまんちは全員音楽家ってやつかい」
(;^ω^)「そういうわけじゃないですお」
( `ー´)「羨ましいもんや。おいらは絵の一つも描かせてもらえんかった。ずっと刀と槍の練習さ」
何も言わないよう言われてる割に、よく喋る男だ、と思った。
単に話好きなのだろうか。
悪い気はせず、ブーンは段々落ち着きを取り戻してきた。
114
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:27:53 ID:2YOLjRA.0
( ^ω^)「武家の生まれなんですかお?」
( `ー´)「まあ一応そうやな。小せえけど」
男が遠慮がちに笑う。
( `ー´)「信じられっか?日が出て起きたら、飯も食わずにまずは刀の手入れをするんや」
( `ー´)「ほんで、それが終わったら足捌きと素振り。動けなくなった頃にやっと朝飯や」
( `ー´)「そんなんを毎日毎日や。何度逃げ出そうかと思ったことか」
(;^ω^)「はあ…」
( `ー´)「おまんも、そのぎたーとやらの稽古を毎日してたんやろ? 大変やなー」
( ^ω^)「僕はそれほど大変と思ったことはないですお。好きでやってるんで」
男は驚いたようだった。
暫く黙ったあと、「そうか」と笑った。
( `ー´)「…幸せもんやな、おまんは」
男の呟きは、走る馬が風を切る音にかき消された。
第五話 終
115
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 11:28:24 ID:2YOLjRA.0
ちょいと時間あけます!
116
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 12:00:30 ID:vg8jTqRA0
一旦乙!
117
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 12:30:33 ID:wtZg33bE0
よく来たな、乙
118
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 14:34:47 ID:G/NEEYbQ0
待ってましたあ!!
乙
119
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:14:19 ID:2YOLjRA.0
皆様ありがとうございます!
投下ぶちかまします!
120
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:14:45 ID:2YOLjRA.0
──
客人をお連れしました、と使者が声を掛ける。
川 ゚ -゚)「通せ」
襖が開き、一人の女が入ってきた。
よく見知った顔だ。
ζ(゚ー゚*ζ「師匠!」
尾付出麗。
健気で明るい少女が、空流に駆け寄ってきた。
ζ(゚ー゚*ζ「お久しぶりです」
川 ゚ー゚)「ああ。琴の稽古は怠ってないな?」
ζ(゚ー゚*ζ「もちろんです。琴は私の命ですから」
空流が微笑む。
かつて、出麗に琴を教えていた時期があった。故に出麗から師匠と呼ばれている。
だが、出麗にはもともと音楽の才能があった。伸びの速い教え子だった。
才能のある弟子だ。
川 ゚ -゚)「昨日、渚本介とブーンが来たよ」
ζ(゚ー゚*ζ「本当ですか!」
121
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:15:12 ID:2YOLjRA.0
嬉しそうに反応する出麗。
ご無事だったんですね、と呟いた。
川 ゚ -゚)「ブーンがな、何やら奇怪な楽器を持ってきたんだ。確か…」
ζ(゚ー゚*ζ「ぎたーです」
川 ゚ー゚)「そう、ぎたー。見事な音色だった」
ζ(゚ー゚*ζ「師匠はよく、琴の音色を着物や空に例えてましたね」
川 ゚ー゚)「ああ。あの色味や躍動感を目に見えるものにするなら、それが一番近い」
川 ゚ー゚)「ぎたーは、そうだな、木や森、川…難しいな」
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンは"ぎたーひとつあれば何でも表現できる"と言ってました」
ははは、と空流が笑う。
川 ゚ー゚)「"何でも"? はは、そうか。確かにあいつの演奏は見事だった」
ζ(゚ー゚*ζ「私もそう思います」
川 ゚ー゚)「もっとよく聴いてみたいもんだな。あいつが無事に帰ってくることを祈ろう」
──
122
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:15:36 ID:2YOLjRA.0
第六話
「新たな混沌」
──
全身が濡れてしまった渚本介。
衣服が重く感じる。
狗久流が。斬馬刀を引きずりながら走り出した。
(#゚∋゚)「せいッッ!!!」
(´メω・`)「!」
引きずってきた斬馬刀を、そのまま流れるように下から突き上げてきた。
距離を取ってその攻撃を避けるが、数多の小石が渚本介に襲い掛かる。
(;´メω・`)「くっ…」
(#゚∋゚)「隙ありィッ!!」
(;´メω・`)「!」
顔面にも飛んできたそれに、思わず顔を背ける。
目線を戻した途端、首筋に斬馬刀が迫っているのが見えた。
虎恍丸でそれを受け止めるも、またも体ごと吹き飛ばされた。
123
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:16:19 ID:2YOLjRA.0
(;´メω・`)「かはっ…!」
重すぎる一撃。
手の痺れも、頭痛も、一向に取れない。
(;´メω・`)(まともに斬馬刀の相手をしてられないな…)
鉄板を相手に戦っているようなものだ。
あの重さに対抗するわけにはいかない。
虎恍丸の刃も、接触部分が潰れているのがわかる。
(;´メω・`)(…渋沢に見せておくんだった)
鍛冶屋の友を思い出す。
彼は、擬古成に挑もうとする渚本介を案じていた。
だが、結果的に彼に虎恍丸を鍛え直させた。
辛い葛藤だった。
(#゚∋゚)「ふんッ!!」
(;´メω・`)「!!」
124
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:17:22 ID:2YOLjRA.0
胴を狙ってくる狗久流。
体をくの字に曲げて避け、返し胴を狙う。
しかし、狗久流は斬馬刀を下に向け、盾のように攻撃を防いだ。
そのまま斬馬刀で押し返し、渚本介の腹に前蹴りを見舞う。
バランスを崩した隙に斬馬刀を撃ち込むつもりだったが、渚本介は巧く体制を建て直した。
渚本介と狗久流の間に、またも距離が生まれる。
──「刀ってェのは、人斬りの道具だ。その理由が護身や復讐でも、人さえ斬ってりゃ刀は生きる」
──「でもよ、人の魂までは絶対に斬れねえ。絶対にだ」
──「考え直せ渚本介。おめぇが擬古成を斬ろうと、擬古成の天下統一の精神までは斬れねえ」
.
125
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:17:52 ID:2YOLjRA.0
(;´メω・`)(渋沢…)
ふと、三年前の渋沢の声が蘇る。
虎恍丸を握る手の力を、無意識に緩めた。
目を瞑る。
(;´メω-`)(俺は──お前に、謝らなければならない)
渋沢の言う通りだった。
擬古成を斬ろうと、擬古成の魂は生きている。
こうして、渚本介の前に立ち塞がっている。
復讐心に従わず、別の方法で擬古成を止める方法を探るべきだった。
そうしておけば、ブーンを危険に晒すことなく元の時代に帰せたかもしれない。
出麗を危険な目に合わせることもなかったかもしれない。
今こうして、ブーンがまた危機に遭うことも、吹連や狗久流が復活することもなかったかもしれない。
責任は、全て自分にある。
諸悪の根源は、この太田渚本介なのだ。
(;´メω-`)(…だからこそ、この戦乱を止めるべきは、この俺だ)
虎恍丸を握り直す。
頭痛は、いつの間にか治まっていた。
.
126
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:18:16 ID:2YOLjRA.0
( ゚∋゚)(──こいつ、目を瞑っているのか?)
この死闘の最中、何を考えている。
瞑想か。精神統一のつもりか。
そんな暇は、与えてられない。
(#゚∋゚)「せいッッッ!!」
(´メω-`)(──)
風を切る音が聞こえる。
見なくてもわかる。
斬馬刀が迫ってきているのだろう。
上段からの振り下ろし。
斬馬刀の重さにも、それを操る狗久流の力にも、恐れ入る。
だが、もう、斬り合う必要はない。
.
127
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:18:43 ID:2YOLjRA.0
(´メω・`)「そこだ!!」
(;゚∋゚)「!?」
両手で持った虎恍丸の柄を、振り下ろされてくる斬馬刀の柄に向ける。
狙いは、斬馬刀を握る、狗久流の指。
(;゚∋゚)「ぐあっ!」
衝撃。
指が潰れる感覚に顔が歪む。
斬馬刀が、その手から離れた。
(;゚∋゚)(しまった…)
武器を放してしまった。
斬られる。
血の気が引くのを感じながら、狗久流は渚本介へと顔を上げた。
128
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:20:10 ID:2YOLjRA.0
だが、渚本介が向けてきたのは、虎恍丸ではなかった。
(#´メω・`)「はあっ!」
(;゚∋゚)「!!」
──拳だ。
固く握られた右拳が、狗久流の鼻と頬を捉えた。
思わず下を向いた顔に、今度は左拳のアッパーが入る。
(;゚∋゚)「ぐっ…!!」
仰け反る。
鼻血が勢いよく流れるのを感じながら、よろよろと体制を整える。
(´メω・`)「喧嘩の真髄ってやつだ。構えろ」
渚本介は、虎恍丸を鞘に戻して地面に置いていた。
武器の無い両拳を構える。
左拳は突き出すように前へ。右拳は顎の横へ。
落ち着きを取り戻した狗久流が、手の甲で鼻血を拭く。
( ゚∋゚)「…刀では敵わないと悟ったか」
(´メω・`)「否。刀では終わらないからだ」
129
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:21:08 ID:2YOLjRA.0
そう、刀では終わらないのだ。
復讐。戦。それらの螺旋を止める方法は、刀で斬ることではない。
( ゚∋゚)「…徒手なら、勝てるとでも思ったか?」
狗久流の雰囲気が一変する。
その大きくて太い手が、開いたまま構えられた。
まるで切り裂くように横に向けられた両手。
"前羽の構え"だ。
( ゚∋゚)「琉球に、空手という徒手戦闘の技がある」
(´メω・`)「……」
( ゚∋゚)「凄絶なる鍛錬の末、五体を武器と化す。俺はこれを──」
狗久流の眼が、鋭く光った。
( ゚∋゚)「──体得している!!」
(´メω・`)「!」
狗久流が飛び掛る。
拳での攻撃を警戒していた渚本介の頭部に、狗久流の右足が飛んできた。
ハイキックだ。
顔を引き、鋭い蹴りを何とか避ける。
130
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:22:16 ID:2YOLjRA.0
(´メω・`)(五体が武器、か…)
予想以上の鋭さ。柔らかさ。
あれを貰ってしまっては、一撃で倒れそうだ。
( ゚∋゚)「せいッッ!!」
(´メω・`)「はッ!」
狗久流の上段突きを潜って躱す。
渚本介が同時に繰り出した左フックが、カウンター気味に狗久流の顎を捉えた。
(;゚∋゚)「ぐっ…」
頭がぐらつく。膝の力が抜ける。
これでは狙いが定まらない。
苦し紛れに繰り出した両手を、渚本介の両手が捕らえた。
掴み合いだ。
(;゚∋゚)「!?」
(´メω・`)「行くぞ、堂土狗久流」
手四つ。
現代で言えば、プロレスの試合でよく見られる、力比べだ。
渚本介が、大きく息を吸い込んだ。
.
131
:
名無しさん
:2018/09/02(日) 15:22:39 ID:2YOLjRA.0
(#´メω・`)「はあああッッ!!!」
(;゚∋゚)「ぬおっ…!!」
全体重を乗せた渚本介の力が、狗久流の両手に圧し掛かる。
抵抗はするが、手首が勝手に曲がっていく。
(;゚∋゚)「おおおおおおッ!!!」
徐々に、手首が曲がる。
膝が折れ、体ごと倒れていく。
(;゚∋゚)「おおおおおッ!!!」
抵抗を続ける。
だが、体はゆっくりと崩れていく。
(;゚∋゚)(この俺が、力負けをするだと…!?)
土下座をするように体が折れ。
ついに、狗久流は地面に倒れ込んだ。
手首への重さが、痛みへ変わる。
.
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