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( ^ω^)は街で狩りをするようです
140
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:21:34 ID:TaDTeS/g0
(;´・_ゝ・`)「……本当に“ハングドランク”と関わりはないのか?」
ミ; ゚∀゚シ「いいか、よく聞け。俺はお前さん達に危害を加えるつもりはない。
お前さんの言うAwakerに出会ったのもこれが初めてなんだ。
話から察するに、他にもいるって事なんだな?」
(#゚;;-゚)「デミタス、ほんとうに何もしらないっぽいよ」
(;´・_ゝ・`)「待てディ……おい、それは何だ?」
ジョルジュの右腕に巻いている携帯端末に銃口を向けて、デミタスは尋ねる。
デミタスと呼ばれる男の抜け目の無さに内心舌を打つジョルジュ。
得体のしれない余所者、しかもサードに『セントラル』の存在を知られるのは面倒だった。
ジョルジュは右腕を掲げて見せて言った。
ミ; ゚∀゚シ「なんて事は無い時計だ」
(#゚;;-゚)「おなじのディもほしい」
(#´・_ゝ・`)「頼むから黙ってろディ」
141
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:21:56 ID:TaDTeS/g0
(´・_ゝ・`) 「で、CALLと表示されているようだが? 仲間からの通信だろ」
デミタスは鼻で笑う。
声色も表情も焦りは無く、優位性を得た事で余裕が出ていた。
ミ; ゚∀゚シ「間が悪いぜあの野郎……こちとら緊急事態だってのによ」
(´・_ゝ・`)「外部スピーカーに切り替えて聞かせろ」
ガコン、とエネルギーを装填する音を鳴らし、デミタスが威嚇する。
音声を聞かせるように要求したのは隠語による会話を防ぎたかった為だ。
選択権は無く、ジョルジュは要求に応じる。
少なくとも仲間がいる事、コミュニティに属している事は知られる。
二人が人間に悪意を持つようものなら抹殺しなければならない。
だが、二対一。分が悪いとジョルジュは考える。
ましてやサードの戦闘は未知数であった。
ミ; ゚∀゚シ「ブーン、すまねえ。サードの二人組に捕まっちまった」
『……ジョルジュ隊長、こっちもですお』
ミ; ゚∀゚シ「……なんだと?」
142
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:23:21 ID:TaDTeS/g0
『かなりの数に一帯を包囲されてる……これは明らかにセカンドの動きじゃないお。
ジョルジュ隊長、お互い何とか突破するしかないお』
ミ; ゚∀゚シ「分かった、後で合流地点を再指定しよう。
ブーン、通信はまだ出来るか? おい、てめえら――」
ジョルジュがデミタスを睨みつけて罵声を吐こうとしたが、
デミタスは銃を下ろしていた。既に敵意は無かった。
ミ; ゚∀゚シ「……てめえらの仲間じゃねえんだな?」
(;´・_ゝ・`)「違う! くそったれ! 本隊がもうここまで来ているってのか!」
(;#゚;;-゚)「デミタス、早くアジトに戻らなきゃ」
ディがデミタスに駆け寄り、腕を引っ張っている。
デミタス、ディの声は震えていた。尋常ではない怯え方だ。
それにアジトと言った。この辺りに二人の隠れ家があるのだろうか。
様々な疑問がジョルジュの脳内を飛び交うが、まずは敵の情報を知りたかった。
143
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:24:19 ID:TaDTeS/g0
ミ; ゚∀゚シ「随分ビビっちまってるようだが……この辺で見かけるシンボルと関係が?」
(;´・_ゝ・`)「あれを見たのか……そうだ。あれは奴等の仕業だ」
(;´-_ゝ-`)「俺達のような離反者を捕まえては拷問に掛けている。アンタの友人も事次第では……」
ミ; ゚∀゚シ「おい、聞こえたかよブーン。
そいつらが例のシンボルを持つコミュニティらしい。切り抜けられるか?」
ジョルジュは腕に巻いた端末に声を吹き込む。
『……了解。モールからの脱出は厳しそうだお。戦闘に備えるから一旦通信を切りますお』
ミ#,,゚∀゚シ「……デミタスとか言ったな。どういう連中なんだ? もっと情報をよこせ」
(;´・_ゝ・`)「……分かった。だが別動隊が迫っているかもしれない。手短に話すぞ」
(;#゚;;-゚)「デミタス、早くしないと」
(;´・_ゝ・`)「分かっている。しかし彼のコミュニティにも危険が迫る事になる。
みすみす放ってはおけん」
3人は一定の距離を保ちながら、ひしゃげた信号機の下に集まる。
いつの間にか頭上を雷雲が覆い始めていた。
__
144
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:25:52 ID:TaDTeS/g0
ブーンが異変に気付いたのは倉庫から出た瞬間だった。
3kmほど離れた地点からこちらへ接近する感染体の群れを感知したのだ。
恐らく先ほどのセカンドとの戦闘で気づかれたのだろう。
(; ω )(何なんだあいつら。サードのコミュニティだって? 冗談じゃないお)
尋常ではない数であった。
確認できただけでも感染体の数は100を越えている。
更に群れから飛び出すように向かってきている5つの反応がある。斥候だろう。
軍隊の如く統率されたサードの群れだ。
動きにはまとまりがある上、迅速だ。
飢えを満たそうとする野獣の動きとは明らかに異なる。
(; ω )(あの全てがサード……戦えば確実に殺されるお)
ブーンには恐ろしくて堪らなかった。
人ではない人の集団が、よもやあのような凄惨な拷問を行うと想像すると。
見つかればあのような死に方をするのだろうかと、幾度も恐怖が頭を過る。
145
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:26:35 ID:TaDTeS/g0
ニューポートセントレというモールにブーンは身を潜めている。
散開した衣服や什器、特に腐った血肉が悪臭放つという点で、
幾らか連中の鼻をごまかせるだろう。
幸運にもセカンドはおらず、モール内には5つの反応のみが離散して動いている。
(; ω )(今日は狩りを行うにも天気が悪すぎる。殆ど熱源探知だけが頼りだお)
雷雨が邪魔だった。雨脚が段々激しくなっている。
モールの天井はほぼ崩壊しており雨音が敵の足音を消している。
(; ω )(モールの外は包囲されているお)
モール内に侵入した敵の迎撃に備える。
モール2階、血で読めない看板を持つブティック。
その店内奥で急ぎBLACK DOGのエンジンを切り、
武器庫を手動で開いてSniper、Boosterカートリッジ、Landminesを取り出した。
146
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:26:55 ID:TaDTeS/g0
Sniperを背負い、BlueBulletGunを持ち、店のレジカウンターに身を隠す。
唾を飲み込み喉を鳴らすのも控えた。
情報処理システムが作ったマップ上を動く熱源反応を注視する。
屋内の敵を対象にアサシネーションを演算させるが、成功率は低い。
ましてや相手はサードである。
戦闘支援を担う情報処理システムはあくまで対セカンド、対人で組まれている。
故に得たいの知れていない対サード戦は、ブーン自身の経験に大きく委ねられてしまう。
(; ω )(……アーマーシステムで100体のサードの包囲網を……いや、無理だお)
己の思考を巡らす。
データの少ないサード戦を想定し、システムの提示する戦況を自分で修正しなければならない。
抗ウィルスエネルギーを持つこちらが有利なのは間違いない。
各個撃破は問題ないはずだ。
しかし、乱戦にもつれ込むだろう。
各個がギコ・アモット級の戦闘力を持つ事も考えられる。
そうなれば早い段階でアーマーシステムの負荷に耐えられず自滅してしまう。
戦闘は極力避けなければ。それがブーンの出した答えだ。
147
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:27:19 ID:TaDTeS/g0
今は相手の出方を伺うしかなかった。
既に退路という退路は経たれ始めている。
崩れた天井には中を覗き込もうと半人半獣の群れが張り付いていた
モールを完全に取り巻く包囲網が完成したらしく、外から声が響いた。
『隠れているのは分かっているぞ。まあ出てこいよ。
話をしようじゃないか、話を』
男の声だ。拡声器を通している。
ブーンをなだめるような調子であった。
(; ω )(……どこかで聞いた事のある声?)
男の声色が何か頭に引っかかった。
確かに聞いた覚えのある声だとブーンは記憶を辿るが、
その矢先、再び男の声が響き渡る。
148
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:27:56 ID:TaDTeS/g0
『何も取って食おうってんじゃない。
ビビっちまって仕方ねえとは思うがね、あくまで俺は友好的に話をしたいだけだ』
この男の何一つも信用出来なかった。
ジョルジュとの通信で、シンボルの所有者だと判明しているからだ。
かえって恐怖心が募ってゆく思いであった。
『お前は俺達と同じAwakerか? そうなら俺達のコミュニティに加われよ。
俺は約束するぞ。お前の安全も、人権も、
まっとうに人間として生きていける日々を保障する』
言葉一つ一つに心臓が反応する思いだった。
自らをAwakerと称する事にブーンは驚いた。
まるで自分達が新しい人種か何かのように振る舞っているように思えたのだ。
オットー・サスガ、モララー・スタンレーがそうだったように、
危険な思想の持主である事は疑いないだろう。
149
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:29:27 ID:TaDTeS/g0
拡声器を持つ男がモール内に入ってきた。
ブーンの位置からでは姿は伺えない。
緊迫した空気の中を打ち鳴らす踵の音が聞こえる。
ブーツでも履いているようだ。
フォーマルな正装に身を包んだ演説家のような、そんな堂々たる調子だ。
(; ω )「…………」
敵の姿が見えない事が更にブーンの恐怖心を煽る。
他の5つの反応は未だブーンを探している。
その内2つの距離は縮まりつつある、2Fに移動してきていた。
自分との距離はリーダー格の男が最も離れている。
Sniperの弾速なら問題無く頭部を破壊出来る。
リーダー格を殺し、連中の統率を乱して突破するのが最適だろう。
そう判断し、組み立て済のSniperを背から掴み取る。
ロックオンは控え、ブーンはそのままカウンター内に身を潜めた。
拡声器で話す男が同じ調子で続ける。
150
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:29:50 ID:TaDTeS/g0
『同じAwakerだから分かるぜ、お前の孤独が。
理性の無い化物に制圧された地上を生きる日々の辛さが。
俺なら全て理解してやれる』
『お前は今日まで生き延びてきた。それはとびきり優秀な事だ、尊敬するぜ。
だから是非ともウチに加わって欲しい。養うべき家族がたくさんいるんだ。
重要な役割を持ち、その中でお前は生き甲斐を再び得られるだろう。
無意味に生き続ける事は今日で終わりになるんだ、どうだ?』
(; ω )(連中にも家族が、いるのかお)
未だ色褪せない、ニュージャージーでの思い出が一瞬頭を過ぎるが、
家族という言葉で思い返すのはツンの顔や声、彼女と共に過ごしてきた日々であった。
必ず帰るという約束があった。
(; ω )(……僕には帰るべき場所がある。奴等が人を名乗ろうが関係は無い。
連中を殺してでも、ツンの元に帰る)
恐怖心に戦意が揺らぐ前に、ブーンは更に行動する。
151
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:30:32 ID:TaDTeS/g0
足元に忍ばせておいたリモートコントロール型の爆弾、Landminesにそっと手を伸ばす。
触れるとシステムの同期認証を示しLEDが蒼く染まる。
同時に専用のプラグインが働き、視界にコントロールモードが展開する。
2つの薄型の円盤が音を立てず浮遊する。
拡声器の男にターゲッティングを決定し、爆弾は緩やかに空中を進んでゆく。
(; ω )(隙を作り何とか突破するしかない)
そう決断した同時に、男がモールの中央で一際大きな声を上げた。
『それともお前は噂に聞くセントラルの生き残りか?
だとしたら案内をしてくれないか? 是非とも話がしたい!』
(; ω )「ッ!」
.
152
:
名無しさん
:2018/08/24(金) 18:31:41 ID:myXKKSuw0
マジかよ!
153
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:32:19 ID:TaDTeS/g0
ブーンは心臓が跳ね上がる感覚に襲われた。
(; ω )(連中は『セントラル』を知っている……)
セントラルとの接触を男が望んでいる。
目的は何だ? ブーンは口を閉ざしたまま続きを待つ。
男が再び拡声器で話し始めた。
『いわば共存関係を築きたいと考えている。
俺達が住処の安全を確保する。 代わりにお前達はまともな食料、水を提供してくれればいい。
子供達もたくさんいるんだ。今日まで生き延びた穴倉だろ? 安全な生活を送らせてやりたいんだ』
声が途切れる。返答を待っているようだ。
建前だけを聴けばまともだとブーンは思う。
だが、離反者を恐ろしい拷問に掛けて見せしめを行う、野蛮で残虐極まる連中だ。
モナーによる独裁制とも訳が違う。恐怖でその支配化に置くはずだ。
(; ω )(甘い考えは捨てろ。惑わされるな――――ここで殺さなくては)
何にしろ例のシンボルが全てを語っているとブーンには思えた。
この集団、この男を『セントラル』に近づけてはならない。
154
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:32:52 ID:TaDTeS/g0
ブーンは心臓が跳ね上がる感覚に襲われた。
(; ω )(連中は『セントラル』を知っている……)
セントラルとの接触を男が望んでいる。
目的は何だ? ブーンは口を閉ざしたまま続きを待つ。
男が再び拡声器で話し始めた。
『いわば共存関係を築きたいと考えている。
俺達が住処の安全を確保する。 代わりにお前達はまともな食料、水を提供してくれればいい。
子供達もたくさんいるんだ。今日まで生き延びた穴倉だろ? 安全な生活を送らせてやりたいんだ』
声が途切れる。返答を待っているようだ。
建前だけを聴けばまともだとブーンは思う。
だが、離反者を恐ろしい拷問に掛けて見せしめを行う、野蛮で残虐極まる連中だ。
モナーによる独裁制とも訳が違う。恐怖でその支配化に置くはずだ。
(; ω )(甘い考えは捨てろ。惑わされるな――――ここで殺さなくては)
何にしろ例のシンボルが全てを語っているとブーンには思えた。
この集団、この男を『セントラル』に近づけてはならない。
155
:
名無しさん
:2018/08/24(金) 18:33:07 ID:zgwqNqSw0
感染してる時点で要求飲めないわな
156
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:34:19 ID:TaDTeS/g0
(; ω )「あの拷問とシンボルは何だ!?」
ブーンは確固たる決意を固めて叫んだ。
Landminesを接近させる為に敵の気を散らしたかった。
ブーンの問いに対して、男は笑い声を上げた。
同時に5つの反応がブーンの潜む位置へと集中し始める。
レーダー上の動作は極めて慎重だ。
ブーンは左手に中距離用のBlueBulletGunを携えておいた。
男の笑い声が拡声器を通さずモール内にひとしきり響くと、
再び拡声器の割れた音声が流れ始める。
『やっと口を聞いてくれたなぁ。嬉しいぜ。
それはそうと、あれを見たか』
『いや、なあに、あれはだ、我々コミュニティに対する戒めだ。
モニュメントだよ――――これ以上繰り返すなかれ!……と、なあ?』
男は周りにも言い聞かすように、怒気を孕んだ声で主張を続ける。
周囲のサード達に返答や同意を示す反応は無い。
157
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:35:26 ID:TaDTeS/g0
『この世の何においてもまず第一に重要なものがある。
それはルールと法だ。その下に揺るぎない統制と安全が生まれるんだ』
『信じるべき神の名は知らん。その代わりにルールと法が俺達を強く守る。
しかしまあ何事も完璧なんてものは無い。
別の思想や離反者の出現は100%防げんものだ。ましてや俺達はAwakerの集団だからな。
謙虚さを忘れて出ていこうとする者がいる。残念な話だがな……』
『お前のコミュニティ、セントラルもそうじゃないのか?
終わっちまった世界で生きる上でしっかり成り立ってんのか? 過ちを感じた事は?
完璧には無理だろう? だがな、恐怖ならルールを最大限保ってくれる。俺はそう学んだ』
(; ω )「…………」
ブーンに否定は出来なかった。
およそ6年という短い歴史の中で、一度『セントラル』は男が指摘する通りの過ちを辿っている。
158
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:38:11 ID:TaDTeS/g0
(; ω )「否定はしないお。それでもお前の支配下に置かれるよりはマシだお」
『勘違いしているようだから繰り返すがな、俺は共存関係を築きたいんだ。うまくいくはずだ。
さっきも言っただろ? 家族がたくさんいるって。お互い助け合おうじゃないか? えェ?』
(; ω )「黙れ! セントラルはお前ら感染者の要求なんて飲めない。
だいたいお前のような奴と手を取り合うなんて、想像するだけ吐き気がする。
ここから去れ。これ以上近づけば容赦しないお」
脅すと、ブーンに迫っていた5つの反応がピタりと止まる。
モール中央の男はまだその場に立ったままだ。
『そうかよ……残念だな。お前が掛け合ってくれれば穏便に済んでいたものの。
ではお前さんを柱に吊るして、交渉材料にでもしてやろうかねェ』
男は踵の音を鳴り渡らせながらブーンの位置へ向かい始めた。
159
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:38:34 ID:TaDTeS/g0
(;゚ω゚)「これ以上近くなと言っただろう!!」
ブーンが叫んだ瞬間、男の背後に接近していたLandminesが蒼い爆発を生み出した。
『なっ―――――――』
男が驚嘆して上げた声は爆音に掻き消される。
ブルーエネルギーがモール内を走り回り、天井を突き抜け、
内外で様子を伺っていた者の身を焼きながら滅菌していった。
しかし致命傷にはならなかったようだ。
その場を離れていくのをブーンはレーダーで一瞬捉えていた。
燃え盛る炎の中をサーチしつつSniperを男のいた位置に向ける。
リーダー格の男はいない。
モール外へ逃がしてしまったようだ。
(;゚ω゚)「くそ」
サードは得体が知れない。今の瞬間、殺しておきたかった。
不意打ちを与えても存命している事から、かなりの頑強さと速度の程度を伺えた。
ブーンは緊張と恐怖が更に強まっていくのを必死に堪える。
160
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:39:46 ID:TaDTeS/g0
炎が瞬く間に燃え移ってゆく。
感染体の熱源反応が捉えられなくなるのが爆発物の難点ではあった。
ブーンは敵対象を動作のみで追ってゆく。
(; ω )(あれで諦めて逃げちゃくれないかお……くそっ)
モールを離れる様子は無い。
包囲網を保ったまま待ち構えているようだ。
様子を伺っていると、あの忌々しい拡声器の声色が外から届いた。
『やってくれたな』
(; ω )(全然効いてねえのかお……かなり速い)
『お前が今殺した中には父親だっていたんだぞ?
この人殺し野郎……なんて事をしてくれやがった。
残された妻や子供になんて説明すりゃあいいんだ? どうしたら許してくれるってんだ? ああ?』
『よく聞け。柱を見たんだよなあ? 俺がお前を直々に柱に吊るしてやる。
じゃなきゃ皆の怒りが収まらねェ。
いいか? セントラルの場所なんて古いパンフレットにも書いてあるくらいだぜ。
俺が言っている意味分かるよなあ?』
『言っとくが俺だけを殺したって無駄だぜ。こいつらが報復する。
お前の逃げ場なんてもうねェのさ。とっととモールから出て来い』
161
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:40:50 ID:TaDTeS/g0
(; ω )「……BLACK DOG」
ブーンは炎が遮ったその先を睨みつけながら、静かに愛機の名を告げる。
呼び寄せられたBLACK DOGがウィンドウを割って主の元へ向かう。
ブーンは従順なる愛機のボディに触れて、心無い機械に言い聞かせた。
(; ω )「……お前が動かなくなれば僕は終わりだ。
お前は最後の切り札だ。何かあればジョルジュ隊長の所へ向かってくれ」
アーマーシステムを持っても100体以上のサードを殲滅し切れるのか不明だった。
アノンという男の力も分からない。
それに、男の言う通り逃げ場はなかった。
自分に万が一があればBLACK DOGがジョルジュに知らせるよう、プログラムを書く。
ハンドル部分のタッチパネルが蒼く光り受信を示す。
(;゚ω゚)「行くぞBLACK DOG」
ブーンは蒼い炎の海に飛び込み、続いてBLACK DOGが追従する。
燃え盛る炎の中、アーマーシステムを起動して黒い鎧に身を包んだ。
162
:
名無しさん
:2018/08/24(金) 18:41:30 ID:zgwqNqSw0
感染者ってだけで交渉の余地ないのによく口が回るな拡声器野郎
163
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:42:18 ID:TaDTeS/g0
抗ウィルスエネルギーの弾幕を張りながら、男を追ってニューポート通りへ飛び出す。
瞬間、数多の感染体がブーンに殺到したが、容赦無く撃ち落とした。
次々にブーンは感染体を斬り落とす。肉を削ぎ落す。或いは首を落とす。
体が振り回されて軋み、頭の奥が鼓動に合わせて鋭く痛んだ。
腹の中に痛みと熱さを感じ、思わず吐き出す。
それでもブーンは最大限に鎧の力を引き出し、敵に攻撃を仕掛けてゆく。
サードの群れが相手なのだ。
速度を緩めれば途端に戦況は一転してしまうと考えた。
度々飛びそうになる意識を奥歯を噛んで留めた。
雷鳴轟く中、黒い暴風が異形の群れを襲い続けた。
女達も男達も悲鳴を上げてブーンから離れてゆく。
《お前ら下がれ! そいつは俺がやる!》
「あ、アノン……」
叫び声が拡声器を通して発せられ、乱れつつあった場を制した。
ブーンも攻撃を止め、自分の吐いた血が零れる口先を“アノン”と呼ばれた男に向ける。
164
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:42:53 ID:TaDTeS/g0
黒いレザージャケットに身を包んだ男が拡声器を投げ捨て、
亀裂により隆起している地面から飛び降りた。
一瞬、背に隠れた白い翼がはためいたのを見せる。翼のサイズは大きく、足首まで及ぶ。
翼を使う為の筋肉がジャケット越しでも隆々と浮き出、右胸に刺繍されたシンボルを強調させている。
黒色の長い髪はかなり傷んでいるように見え、しかし靡いた様は死神のようでもあった。
グローブを付けた右手には、今も尚血を吸っているかのような、赤黒く染まったバットに似た物が握られている。
柄は辛うじて元の白い色を残している。
仕上がりが荒いのか使い込んでいるのか不明だが、感染体の骨から削り出した物なのは間違いない。
恐らくはバットと同じ素材であろう仮面を顔面に付けている。
歪な皹と血の汚れでⅣの文字を顔面に書いているようでもある。
猟奇的なその仮面の隙間から覗き見えるのは、虎を思わせる金色の目だけだ。
男の顔はそれ以外隠されていた。
爪 ゚Ⅳ〉「免疫持ちのサイボーグか……俺はアノンだ。お前、名前は?」
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「……ブーン。お前だけはこの場で殺す」
勢いの増す雨の中、ブーンはBBBladeの蒼い刃を放出させる。
今はアノンとの一騎打ちを制する他、状況を覆す道は無いと思った。
第40話「アノン」終
165
:
名無しさん
:2018/08/24(金) 18:43:25 ID:QGqCCpvo0
支援間に合わなかった
今から読む乙
166
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:45:04 ID:TaDTeS/g0
以上です。次回は9月になります。
まとめは多分先生いらっしゃらないかと思うので自分で準備中です。
167
:
名無しさん
:2018/08/24(金) 18:46:26 ID:zgwqNqSw0
おつおつ
セントラルに安息の時はないなこりゃ
168
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:47:46 ID:TaDTeS/g0
>>79-103
まじでありがとうございます。嬉しさで死ぬ寸前でした
ドクオの飲んでたゲロはチョコ味ですね。ミスです。
阿部さんには元々AAを使っていなかったと思いますよ。
169
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:52:10 ID:TaDTeS/g0
今回の40話なんですが、合作「物語のページが( ^ω^)´・ω・)゚⊿゚)ξ 川 ゚ -゚)応えるようです」の
個人パートの冒頭と時系列が同じです。
ほぼ引用して使ったんですけど、合作とは内容が少し異なります。
ヒローイではなくイトーイを使用しているのも諸事情です。
ご理解くださいませ。
170
:
名無しさん
:2018/08/24(金) 18:56:49 ID:myXKKSuw0
乙!
171
:
名無しさん
:2018/08/24(金) 21:01:42 ID:JXHnnO5k0
更新早っ!これは楽しみが増えますなあ
172
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 21:31:20 ID:TaDTeS/g0
まとめました
https://hail1101.web.fc2.com/
173
:
名無しさん
:2018/08/24(金) 22:40:33 ID:YqeiVr560
アンノウンと完全に同じAAじゃ合作おかしなことになっちゃわないか?
174
:
名無しさん
:2018/08/24(金) 23:17:36 ID:He3LvZPU0
大丈夫!
よく有る他人のそら似よ
175
:
名無しさん
:2018/08/25(土) 00:08:40 ID:8qpWbvd60
アンノウンは最後に主人公格になれなかったっけ?
合作読み直してこよ
176
:
名無しさん
:2018/08/25(土) 09:17:36 ID:FWeueFSg0
おかえり(っ´;ω;`с )
ずっとまってたぜ(っ´;ω;`с )
177
:
名無しさん
:2018/08/25(土) 22:16:00 ID:0HYId6eA0
この緊迫感が街狩りよな
面白かったです乙
178
:
名無しさん
:2018/08/26(日) 02:40:22 ID:6b8AIm2c0
unknownさん出ちゃってるwwwww
179
:
名無しさん
:2018/08/26(日) 16:23:22 ID:V6etSDOA0
おかえりー!
180
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:43:14 ID:9nunWNwk0
お詫びと訂正
デミタスという名前を過去に使っておりました。
投下後に気づきました……誠に申し訳ございません。
第22話「Return of......」より
>('A`)「次期って言っても向こう3年先の話だけどな。でもそうだな……有力そうなのは、
>人類保護委員会のモナー、都市開発のデミタス。
>そして最有力候補が、議会長補佐のモララー・スタンレーだ」
('A`)「次期って言っても向こう3年先の話だけどな。でもそうだな……有力そうなのは、
人類保護委員会のモナー、都市開発のコーフィー・マックス。
そして最有力候補が、議会長補佐のモララー・スタンレーだ」
自分の甘さを戒めるためにもマックスコーヒーと訂正を致します。
その他、39話、40話の細かいミスはまとめにて後日修正致します。
皆様には重ねてお詫び申し上げます。
________
\ /川∥∥| ∥| /
\ /
│个 个 ヘ | ということで投下します。
│┌- )/ 9月に投下ってのも訂正します。
ヽヽ 丿//
181
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:43:44 ID:9nunWNwk0
――― チーム・ディレイク ―――
( ^ω^)B00N-D1:通称ブーン。本名:ホライゾン・ナイトウ。年齢20歳。
サイボーグ「システム・ディレイク」。強力な抗ウィルス細胞を持つ。
↑↓ ハングドランクという感染者のコミュニティと遭遇し、戦闘となる。
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 アーマーシステム:BLACK DOGⅡが変形しブーンの強化外骨格と化す機能。
その戦闘能力の高さ故にブーンにもダメージを与える。
ξ゚⊿゚)ξツン・ディレイク:年齢19歳。
ブーンを強化人間に改造した天才。ブーンとは幼馴染。
ブーンのプロポーズを受ける。
('A`)ドクオ・アーランドソン:年齢21歳。
ブーンの強力な武器や乗り物の開発を担当する。
スタンレー・ラボの真相を暴こうと企む。
( ><)ビロード・ハリス:年齢9歳。
ブーンより強力な抗ウィルス細胞を持つようだ。
182
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:44:26 ID:9nunWNwk0
――― チーム・アルドリッチ ―――
从 ゚∀从ハインリッヒ・アルドリッチ:年齢23歳。チームリーダー。
対セカンド人型戦闘兵器「バトルスーツ」の開発者である。
サード化したジョルジュに遂に恋心を打ち明けて実る。
ミ,, ゚∀゚シジョルジュ・ジグラード:年齢35歳。感染者。
バトルスーツ隊隊長だったが、セカンドウィルス感染後、自我を持つ異形と化す。
ブーンと共にニュージャージーの異変を調査する。
183
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:45:14 ID:9nunWNwk0
――― セントラルの人々 ―――
( ´Д`)モナー・ヴァンヘイレン:年齢不明。
モララーと共に独裁制の「新セントラル議会」を設立し、独裁者となる。
ショボンと共にモララー一派を探る。
(´・ω・`)ショボン・トットマン:年齢25歳。
スラム区のバー、バーボンハウスの店主である量産型の戦闘サイボーグ。
スタンレー・ラボの真相を追う。
阿部さん 阿部高和:28歳。
ディレイク系統の諜報用サイボーグ後期トライアル。
System-Hollowの中枢へハッキングするが、トラップにかかり機能停止する。
<_プ-゚)フ エクスト・プラズマン:10歳
孤児。阿部とは師弟関係を築いていた。
184
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:46:48 ID:9nunWNwk0
――― ラウンジ社 ―――
( ・∀・)モララー・スタンレー:年齢30歳。
ジョルジュのサード化を強制させた実行犯。役目を果たし死亡する。
( 〓 )⇔川 ゚ -゚)Hollow-Soldier(虚ろな兵士):年齢不明。
クローンテクノロジーにより量産され、部隊として編成された。
阿部のハッキングにより解放された一人がフォックスの計画阻止に動く。
( ^Д^)プギャー・ボンジョヴィ:年齢不明。プギャー総合病院の院長。
フォックスに従事している模様。
彼の使う医療器具がラウンジ社製であるが、社との関係は不明。
爪'ー`)y‐:フォックス・ラウンジ・オズボーン年齢不明。
人類の知恵と可能性に限界を感じ、セカンドウィルスをコントロールしようと考える。
何やら恐ろしい計画を立てている様子。
185
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:47:16 ID:9nunWNwk0
――― サード Awaker ―――
爪 ゚Ⅳ〉アノン:年齢不明。男。
自我を持つ感染者Awakerのコミュニティ「ハングドランク」のリーダー。
法とルールを破った者を拷問に掛ける。セントラルを接収したいと考える。
(´・_ゝ・`) デミタス:年齢不明。男。
元はサイボーグだったAwaker。「ハングドランク」から逃亡し追われている様子。
(#゚;;-゚)ディ:年齢不明。女。
デミタスと共に逃亡中のAwaker。子供のような話し方をする。
186
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:48:38 ID:9nunWNwk0
(;'A`)「嘘だろ」
阿部の変わり果てた姿を見たドクオが思わずそう言った。
ヒートの施術に一区切りが着いた頃、ショボンからラボで会いたいという連絡があった。
せっかくなのでラボではなく、バーボンハウスにて不味い酒にありつけながら話をと思っていたのだが、
想像していた以上に事態は緊迫したものだと理解する。
怯えた目のドクオに向かって、ショボンはベンチに阿部を寝かせながら言う。
(´・ω・`)「これが阿部さんの冗談だったら良いんだがそうじゃないらしい。
クローン兵のシステム中枢にハックした際、どうやらトラップを踏んでしまったようだ。
診てもらえるか?」
(;'A`)「……勿論診るが、ショボン、阿部さんは、もう……」
ドクオは大学の講義を思い出した。
確かサイボーグに関する情報技術の授業だ。
この手のトラップは致死性の物が多いと聞いた覚えがあった。
大抵のトラップやハッキングは脳の完全破壊を目的としている。
阿部は高度に電脳化しているサイボーグだ。
部分的に脳をサイバネティクスに置き換えている者とは違う。
それ故に情報戦を得意とするが、一度防壁を突破されれば脳を守る術を持たない。
循環機能――生命維持装置も停止している事から、脳死は疑いなかった。
187
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:49:28 ID:9nunWNwk0
ドクオの顔を見てショボンも諦めがついたのか、どっと息を吐く。
(´・ω・`)「……そうか。まあ、そうだろうな……。
僕の事は気にしなくていい。お互い昔は死と隣合わせだった。
こうなる覚悟はしていた。ただ、セントラルで過ごした6年間で忘れかけていただけさ」
サイボーグという事は知っていたが、ドクオにとってショボンは胡散臭いバーテンダーという印象が強かった。
いつだって彼はにこやかで、戦いとは無縁の存在のように思えていた。
だが、友を亡くした今の彼の表情は、まるで敵を睨みつけるかのような鋭さがあった。
困惑を浮かべるドクオの顔に気づき、ショボンは頭を掻きながら言う。
(´・ω・`)「エクストにどう説明する? 随分なついていたそうだけど」
(;'A`)「……あ、ああ、そうだな……どう伝えるべきか。ツンに頼むのは?
普段はビロードと一緒に面倒見てやってくれてんだ」
(´・ω・`)「そうだね。うん、それがいいだろうね」
こくりと頷いて見せた後、ドクオがタバコに火をつけて尋ねる。
(;'A`)「ショボン、何があった?
第5階層に厳重警備が敷かれているが、それと関係が?」
188
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:51:17 ID:9nunWNwk0
(´・ω・`)「順を追って説明する」
ショボンは語る。
まずモララーを介しクローン兵のシステム中枢にハックした事。
それにより敵の潜伏先の目途が立ち、第5階層のスラム区を中心に
捜査型アンドロイドを投入し厳重警戒を敷いている事。
ショボンはモナー総統の早急な手配だった事も付け加えておいた。
更に総合病院を経由したネットワークを利用していた事。
これもドクオのカンが当たっていた為、ドクオは目を丸くして驚きを見せる。
(´・ω・`)「カンってのは悪い方ばっかり当たるもんだよな」
そして阿部の停止。モララーの死。
最後にショボンは、システムから切り離されたクローン兵が、
この『セントラル』の何処かにいるという事を話して終えた。
(´・ω・`)「敵の目的を知る為にも、
まずはクローン兵と接触し情報を得たいが……」
189
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:52:18 ID:9nunWNwk0
押し黙って聞いていたドクオが、思考の末に重く口を開いた。
(;'A`)「……恐らく敵の目的は集団感染を引き起こす事だと思う。
自分で言ってて恐ろしい想像なのは分かってる。ただ、一連のジョルジュさんの事件。
あれは敵による実験だった事が明らかになっている」
頷いて耳を傾けるショボン。
実行犯だったモララーが犯行中にそれを匂わす発言をしていたと、
モナーやツンから聞いている。
(;'A`)「で、こっからはまた俺のカンなんだが……。
昨今ウェブ上を賑わすカルト集団。裏で扇動している奴が主犯格なんだろう。
まるでアメコミみてーなキャッチコピー付で市民を取り込んでるって噂だ」
(;'A`)「己の意思によってサード化するんだったら、宗教的な扇動はあながち方法として間違っていない。
モナーさんの総統としての統率力は評価しているが、
しかし現状の不安定なセントラルにおいては、宗教は精神的に響くものがあるかもしれねえ」
(´・ω・`)「信じるべき神は地上を見捨てなさったしな」
「神は乗り越えられる試練しかお与えにならない」とツンは言うがな。
ドクオはそう言って、3本目のタバコに火をつけて大きく煙を吐く。
(;'A`)「……ふー」
そして意を決して口を開いた。
('A`)「ショボン、そこに何とか潜入して頭を叩こう。俺とお前とでやるんだ」
190
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:53:53 ID:9nunWNwk0
「――――いや、3人だ」
そこへ、聞き覚えのある女の声が駐車場に響く。
ドクオとショボンは声の主に視線を向けた。
('A`)「へっ? 嘘だろ?」
予想だにしていなかった来客に二人は言葉を失う。
( 〓 )「やはりここに来たのは間違いじゃなかった」
現れたのは白いスーツと仮面に全身を覆い隠す女だった。
No.66は顔面を隠す黒いフェイスカバーをメット内に収納する。
精巧に作られた人形の如く美しい顔を露わにし、抑揚無く言葉を発した。
川 ゚ -゚)「Hollow-Soldier No.66だ。
話を聞いた限り、そこの阿部というサイボーグが私を解放してくれたようだな……。
頼む、私にも協力させてくれ。奴の計画を全て知っている。力になれるだろう」
(;´・ω・`)「……どっから湧いてきたんだ? だって今まさに議会が探し回ってんだよ?」
(;'A`)「ね、願ってもねえが……いいのか、クー? 自由になったってのに危険だぞ」
No.66は困惑する二人に黙って頷いて示す。
その直後、ドクオに名で呼ばれた事に気づいて思考する。
191
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:54:13 ID:9nunWNwk0
川 ゚ -゚)(クー……? ああ、そうか、私の名か。クー・ルーレイロ、クー……)
ナンバーではなく、名前を呼ばれた事に嬉しさを覚え、
クーは今まで凍り付いていた表情を少しだけ和らげた。
第41話「仮面の下」
時は遡りブーンがサードの群れに包囲される頃。
ジョルジュは敵の情報を知るべくデミタス、ディと対話を始めていた。
距離はお互い保ったままだが、敵が共通していると認識して場から敵意は消えている。
ミ,, ゚∀゚シ「デミタス、ディ、幾つか確認したい。
ハングドランクとかいうコミュニティは、セントラルを知っているのか?」
ジョルジュは二人に対し嘘を吐いていた事を悪びれもなく明かす。
デミタスは肩をすくめてジョルジュに返す。
(´・_ゝ・`)「ジョルジュとか言ったな。やはりセントラルの出だったんだな」
(#゚;;-゚)「うそつき」
192
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:54:42 ID:9nunWNwk0
ミ,, ゚∀゚シ「悪く思わないでくれ。あそこにゃ俺の友人も沢山いる。
そう簡単にコミュニティの存在を知られちゃ困るって、お前は理解出来るだろ?」
(´・_ゝ・`)「理解も何も、6年前の始まりの日、俺はセントラル防衛に携わっていたんだ」
ミ; ゚∀゚シ「冗談だろ? まさか、ワシントン・ブリッジ爆破作戦に?」
(´・_ゝ・`)「あの作戦の時に感染しちまってな。気づけばこの体さ。
以来、帰る場所が変わってしまったって話だよ」
セントラルの方角を一瞥し、デミタスは自分の不運を呪うように言った。
そんな事より、と切り替える。
(´・_ゝ・`)「セントラルの位置は当然アノンも知っている。
今も尚セントラルが生きていると知れば、奴は接収に動くだろう」
ミ,, ゚∀゚シ「アノン? 連中の頭か?」
(#゚;;-゚)「そう。アノンがリーダー。ハングドランクの」
193
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:55:06 ID:9nunWNwk0
(;´-_ゝ-`)「Hanged, drawn and quartered……略称“ハングドランク”のリーダーだ。
残虐極まる奴だ。そのうえ頭がかなりキレる。
俺が前に属していたAwakerのコミュニティもあいつに吸収されたんだ……」
歯をぎりと鳴らしデミタスが言った。
Hanged, drawn and quartered。
吊るし、内臓を抉り、八つ裂きに処す。
1241年に最初の執行記録を持ち、1790年に廃止されたイングランドで最も重い処刑方法。
アノンのコミュニティの名はその略称を冠し、そしてシンボルをも象り、
精神性と方向性の強靭さを主張する集団である事をデミタスは語る。
(;´・_ゝ・`)「アノンにはカリスマ性があるんだ。
恐怖に支配されて奴も、やがてアノンが正しいと信じて服従するんだ。
コミュニティには奴を救世主の如く崇める信者が山ほどいる」
(;´・_ゝ・`)「……俺のような新参者は脅されて良いように使われた。
危険な街から使えそうな資材や食料を漁り、納めた。
……供給のノルマを達せられなければ仲間が柱に吊るされるからな」
(;´・_ゝ・`)「俺は……他の感染者や非感染生存者のコミュニティを襲いもした!
だが、そんな日々に耐えられなくなって、機を見て仲間と共に脱出したんだ……」
194
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:55:26 ID:9nunWNwk0
ミ,, ゚∀゚シ「それでここまで追われちまったって話か。おかげでトンだ迷惑だぜ」
(#゚;;-゚)「デミタスを悪くいうな!!」
ディが明らかに敵意を露わにして叫び声を上げる。
咄嗟にデミタスが手で制して宥める。
(;´・_ゝ・`)「いいんだディ! ……だがな、ジョルジュ。
俺達が知り合えたのは悪い話じゃない。
おかげでお前を通してセントラルに警告する事が出来る」
ミ,, ゚∀゚シ「……そりゃ、どういう意味だ?」
(;´・_ゝ・`)「早く逃げろと言ってるんだ。
人間が勝てるはずがない。ハングドランクは総勢200人以上のAwakerの集団だ」
ミ,, ゚∀゚シ「ご忠告ありがとよ。だが、アノンさえ潰せば万事解決だろ?」
(;´・_ゝ・`)「それは間違いだ。連中はとことんアノンに心酔しちまってる。
アノンを殺した所で報復される。そして“他の誰かがアノンになる”だけだ。
アノンを殺してもセントラルは危機を免れない」
(;´・_ゝ・`)「それに、アノン自身が恐ろしく強い。
どんなサイボーグだろうが敵わない、絶対にだ。
お前の相棒には残念だが、生きて帰るのは不可能だろう」
195
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:55:46 ID:9nunWNwk0
フン、と鼻を鳴らしてジョルジュが返す。
ミ,,゚∀゚シ「セントラルを甘く見るな。特に俺の相棒は感染体殺しの技術の塊だぜ?
始まった日から今日まで何体ものセカンドをぶっ殺してきた、名うての狩人だ」
(;´・_ゝ・`)「……そいつ、免疫持ちのサイボーグなのか? だったら俺と――――」
その時、雷鳴とは異なる巨大な音が空を揺らした。
方角はブーンのいるニューポートの付近だ。
3人は崩れた高層ビルに駆け上がり、豪雨の中立ち上る煙と炎を見た。
(;´・_ゝ・`)「クソ、戦闘が始まったのか!」
(#゚;;-゚)「デミタス、すごいサイボーグだったら、連れてかなきゃ」
ディの言葉に、ジョルジュが眉を曲げてデミタスに尋ねる。
ミ;゚∀゚シ「どういう事だ? 確かに俺の相棒、ブーンは免疫持ちのサイボーグだ。
それがお前らと何の関係があンだよ?」
196
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:56:35 ID:9nunWNwk0
(;´・_ゝ・`)「……詳しくは俺も分からん。だが、奴等を破滅させる方法を知っていると、
俺達を匿ってくれているサイボーグ技師がそう言ってるんだ」
※
豪雨が地を打ち雷が空を断つ荒くれる空の下。
100を超える感染者達が作る円の中央、そこで二人は出方を伺っている。
アノンは血塗れのバットで肩を叩いて余裕を見せつつ、
対するブーンは右腕に掴むBBBladeの揺らぐ切先をアノンから離さなず、
両者は一定距離を保ちながら時計周りに周回し睨み合いを続ける。
ブーンの緊張した構えを見て、アノンは歪な仮面の下から笑い声を鳴らした。
爪 ゚Ⅳ〉「どうしたサイボーグ? かかって来ないのか? そんなに俺が怖いかよ?
それともスキャニングでもしてんのか? なら教えてやるよ。
俺の臓器配列は人間と同じだ。その殺菌エネルギーで頭か心臓を貫きゃ殺せるぜ?」
挑発に一瞬ブーンの歩みが止まったが、アノンの間合いに合わせて続ける。
アノンの言う通り弱点は人間と同じく頭部――脳だ。
だがサーモを通す限りバットと仮面の両方にウィルス反応が伺える。
どちらもウィルスで強化された生物とも言える。
BBBladeの一撃で破壊出来るかどうか明確ではなかった。
197
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:56:58 ID:9nunWNwk0
故に正面の守りは硬いように思えた。
加えて構えないアノンは隙があるようで無いとブーンに感じさせる。
ジャケットと髪に隠れた首筋はやすやすと狙わせてはくれないだろう。
それにジャケットの裏側に潜む筋繊維や骨格は分厚い。
アノンの装備と同様、ウィルスが徹底的に強化したものだ。
こちらもまた一撃で貫けるかどうか定かではなかった。
大火力を誇るBlueLazerCannonの使用を敏速なアノンが許すとも思えない。
仮に命中させられたとしても、その後の自分自身がどうなっているか分からなかった。
動作可能状態のままアノンを殺し、戦局的優位に立って他のサード連中に消えるよう命ずるのが最良手だ。
スタンバイモード終了/戦闘モードに移行/強制パージまで残り8m46s
アクセラレーターゲインLv7/生命維持システムを耐G仕様に変更し最大限稼働/
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以(対セカンドのセオリーに則り、順当にブルーエネルギーを注入してまず弱体化を狙う。
アーマーシステムに耐えられる時間は短い……短期決戦に持ち込む)
プランを固め、視界の一片に映るアーマーシステムプラグインを感覚的に操作する。
自分の手足の如く、鎧化したBLACK DOGが変形を始めた。
198
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:58:01 ID:9nunWNwk0
左腕アーマリーに格納されたSniperを2本展開する。
ブーンは予告無く武装した左腕をアノンに向け、2本のライフルに一発ずつカートリッジを消費させる。
爪 ゚Ⅳ〉「おおっと」
超高速でアノンに2条の蒼光が迫った。
アノンは一本をバットで打ち払い、一本を体をいなして難なく避けた。
次の瞬間、場は雷鳴が落ちたが如く蒼い光が迸った。
ブーン自身が駆けて追撃を開始したのだ。
アノンは金色の虎のような瞳でブーンの姿を追う。
左の首筋を狙う蒼刃にバットで受け応え拮抗し、生じた煙の中二人は言葉を交わす。
アノンが再びブーンの様子を見て嘲笑する。
爪 ゚Ⅳ〉「だいぶ無理してるなお前」
兜の口先は更にブーンの吐いた血に染まっていた。
豪雨にあてられようも夥しく流れた血が拭え切れない。
視界内で更新し続けるバイタル状況は悪くなる一方だ。
199
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:59:09 ID:9nunWNwk0
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「そのふざけたバットごと首をぶち折ってやる」
四肢に搭載したBoosterモジュールを起動し、出力を増大させる。
二人の足着くアスファルトが音を立てながら亀裂を生み出してゆく。
爪 ゚Ⅳ〉「やるねェ!」
二人同時に膝蹴りを繰り出し、お互い宙に放り出される。
同タイミングで着地し、両者は共に息を吐く。
ブーンはここまでの戦闘結果をシステムと共に参照する。
10段階あるアーマーの加速レベルの7段目で五分だと悟る。
十分これで戦えている。渡りあえている。拮抗している。
隙さえ生み出せば殺せると結論に至り、戦闘プランを構築する。
しかし、ブーンの思考の途中でアノンが突っ込んでくる。
テイルから放つレーザーで迎撃、アノンがこれを飛んで回避し、尚ブーンに向かう。
豪快に振るわれたバットをBBBladeで受けるが、ブーンは態勢を崩す。
アノンが何度もバットを真上から振るい続ける。
ブーンは辛うじてこれを受け続けるが、耐えきれず、加速度を上げて応戦する。
200
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/28(火) 23:59:36 ID:9nunWNwk0
再び場に雷鳴が如く蒼光が走る。
ブーンは可動限界値で動作し続け、アノンを圧倒する。
視界の周りに黒い滲みが覆い始めていくが、意に介さずアノンに刃を叩きつけてゆく。
首筋、腹部、手首、大腿、人体の急所を鋭く狙う刃を、
苦渋の声を仮面から漏らしながらアノンはバットで受け続ける。
爪 ゚Ⅳ〉「ハッハッハ! 更に速くなりがった!」
やがてアノンの動きに勝り、刃が肉を掠めてゆく。
掠る程度では十分に抗体を流すには至らず、アノンから変化は見受けられない。
アノンを凌駕すると同時、ブーンも限界を迎えていた。
視界は暗く色調を失い、狭窄が起こっている。
モノクロだったと思った世界が赤く染まり、酷い頭痛が絶えまなく襲う。
目の奥ではキラキラしたものが張り付いている。
雨が蒼光や雷鳴を受けて輝いたものではない。
アノンがたまらず上空へと離れる。
肩で息をするアノンを見、これを機とブーンは決する。
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以(奴の視界を奪う)
急襲のプランをシステムと共に組み立て、
ブーンは左腕に格納していたグレネードカートリッジを掌に忍ばせる。
201
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:00:20 ID:0IJSrADM0
ブーンが腰足のスラスターとバーニアンを噴出、凶悪な推進力を得て突撃する。
4本のテイルとSniperからレーザーを射出し牽制、
その弾幕を辛うじて回避したアノンに向かい、瞬間的に距離を詰める。
激突の目前、ブーンは左手に握ったグレネードカートリッジを握り潰し、爆発を生む。
爆発を厭う堪らずアノンは左腕で仮面の隙間を覆う。
隙だらけのアノンの背後にブーンが回る。
爪 ゚Ⅳ〉「見え見えなんだよ狙いが!」
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「おおおォォォォォォ―――――――ッ!」
急激な加速と旋回で視界に黒と赤のマーブル模様が生み出されてゆく中、
ブーンは咆哮を共にBBBladeを振るい始める。
202
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:01:38 ID:0IJSrADM0
「―――――アノン!」
そこへ突如として女の感染体がブーンの目の前に現れる。
( ゚ω゚)「――――しぃ、さん」
(*゚ー゚)
過剰なまでの加速度で朦朧とする意識の中、
その女の感染体にシーケルト・ゴソウの姿が重なる。
ブーンは無意識の内に全スラスターを停止、攻撃をストップする。
203
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:03:39 ID:0IJSrADM0
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「がふっ」
B00N-D1本体の耐性を越えた急加速と急停止が、
たちどころにあらゆる箇所で血管破裂を生じさせる。
視界は殆ど暗くて見えていない。
サイバネティクスが直接神経に作用した映像が霞んで見えている。
ブーンの耳の奥で女の弁明が聞こえていた。
/ ゚、。;/「アノン、私は、その、」
アノンは身を挺して庇おうとした女の肩に手を置き、
ブーンから遠ざかるように少し押す。
爪 ゚Ⅳ〉「ダイオード! 邪魔しやがって!
今回はブーンの優しさに免じて許してやる……だが次は殺すぞ」
/ ゚、。;/「あ、アノン……」
爪 ゚Ⅳ〉「ブーンに感謝しな」
爪 ゚Ⅳ〉「ブーン。最後のは中々良い狙いだったぜ。
だが俺には俺を死なせんとする絶対的な仲間が大勢いてよ。
こんな幕切れは俺も望んじゃいなかった……残念だよ」
アノンがバットを振り回してブーンを払う。
204
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:04:30 ID:0IJSrADM0
ィ'ト―-イ、
以` 益 以「あ゙あっ、」
ブーンが体を弛緩させながら血反吐を吐く。
兜の口先は空へ向けられ、しかしSniperの銃口はアノンに向けれており、弾丸を放った。
爪 ゚Ⅳ〉「俺の大切な女を殺さなかった事には感謝してる。
だがな、ルールと法に特例は無い。
俺に楯突いちまったお前を拷問にかけなきゃならねェ」
アノンは難なくそれを避け、ブーンにゆっくりと近寄る。
そして、バットを思い切り頭に振るった。
ブーンは辛うじて首を動かし頭部への直撃こそ免れたものの、左肩が粉々に砕け散る。
筋繊維と配線、血液と疑似体液を飛び散らせながら地へ落ちてゆく。
「ぶ、ブラック、ドッグ……」
千切れて消えそうになる意識の中、アーマーの強制パージが行われる。
BLACK DOGはひしゃげた左ボディから紫電を放ちながら場を離れてゆく。
逃げ出した機械を他の感染体が追おうとしたが、アノンが制した。
205
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:04:56 ID:0IJSrADM0
爪 ゚Ⅳ〉「放っておけ。行先の見当はついてんだからよ。
それにセントラルからこいつを助けに仲間が来るかもしれねェ。
そっから交渉するってのも悪かねェだろ?」
アノンの言葉はブーンの耳に入らなかった。
正確には集音装置が拾っていたが、ブーンの混濁した意識が受け付けていないのだ。
(;゚ω゚)「う、あ、ああうう………………」
視界が一度砂嵐のように覆われた後、情報が更新される。
左半身に著しい損傷/循環システムに異常発生――疑似体液及び血液コントロールに支障/
脳への血流障害甚大――生命維持装置稼働率40パーセント/
骨格損傷甚大/B00N-D1可動可能領域44パーセント/
206
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:05:20 ID:0IJSrADM0
(;゚ω゚)「あー、あー、」
視界の片隅に表示される文字を理解するのは困難であった。
目に落ちる雨粒が雷光を受け、降り注ぐ剣のように映った。
その中を降りてくる黒い者は死神のように見えた。
ふと、ブーンはヒートの言葉を思い出す。頭がおかしくなって幻覚や幻聴が聞こえると。
(;゚ω゚)「あ゙、あ、のん、」
自分が今まさにその状態なんだろうな、などとブーンは思考する。
だが、地上を生き続けて培われた闘争本能が再び剣を握らせた。
(;゚ω゚)「うう、うゔっ、ああ゙っ、ノ、ン、ころ゙ず」
左に折れ曲がった体を引きずり、アノンに向かってBBBladeを振るう。
システムに矯正させながらも振るわれた刃はふらふらと揺れる。
(;゚ω゚)「がはっ、あ、ああ! お前だげは、ころ、ず!!」
爪 ゚Ⅳ〉「すげェ、すげェぞお前!」
207
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:07:07 ID:0IJSrADM0
アノンはブーンを蹴り飛ばす。
再び地に転がったブーンに歩み寄り、バットを腹に打ち下ろした。
合成金属と強化筋繊維に覆われたブーンの腹部がぼっかりと凹む。
損傷してズタズタになっている内臓が圧迫され、
ブーンは血反吐を吐きながらのたうち回る。
爪 ゚Ⅳ〉「ハッハッハッハッハ! マジで凄いなお前!
まだ戦うってのか!? そんな体で凄すぎるぜ!
お前も大概バケモンだなあええ!?」
アノンは笑いながらバットでブーンを滅多打ちにした。
何度もバットを振り下ろす。
やがてブーンの腹部の装甲が割れ、腹の中から赤黒い血液が飛び散ると、
アノンは殴るのを止め、血塗れのバットを股間に立てて笑い声を響かせた。
爪 ゚Ⅳ〉「はははは! 俺のバットは吸血バットだぜェ!」
(;゚ω゚)「あ、がっ! や、やめ……たす、け」
爪 ゚Ⅳ〉「ああん?」
(;゚ω゚)「たす、け……しに、たく、な、ツン……つ、ん」
208
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:07:37 ID:0IJSrADM0
(;゚ω゚)「ツン、つん……いや、だ……ツん、あ゙ー、つん、いま、かえ、」
爪 ゚Ⅳ〉「……ブーンよ。女がいるのか。そりゃ気の毒だ。心の底からそう思う。
命乞いは構わない。大いにしてくれていい。
だが、さっきも言ったろ? 俺のルールと法に例外も特例も無いんだ……」
爪 ゚Ⅳ〉「お楽しみはこれからだ。まだ帰さないぞ今日は」
ブーンの長い髪を掴み、アノンが野獣の目を近づけて囁く。
「今夜だ、ブーン。今夜、そのツンとやらに届くよう精いっぱい叫んでくれ」
「お前のその努力次第で皆は助かるかもしれないぞ? いいな?」
「俺も寛容な心でセントラルと接するからよ……そうだ、俺も一緒に頑張るんだよ」
「頑張って、今夜一晩かけてじっくりお前を可哀そうな姿にしてやるからな」
(;゚ω゚)「やめ、や゙、たずけてっ、たす――――――」
209
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:09:16 ID:0IJSrADM0
「Good Night」
何故か聞き覚えのある、懐かしい声だった。
昔、子供の頃、寝かしつけてくれたような、そんな感じの声だ。
( ゚ω )
混濁し薄れてゆく意識の中ぶつりと音を鳴らし、
ブーンの視界一面は真っ黒に塗り替わった。
うるさい程耳を打つ雨音も、次第に遠くへと離れていった。
黒い雲は通り過ぎ、隠されていた日は沈み始めていた。
空が血のように赤く燃えている。
__
210
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:10:00 ID:0IJSrADM0
「あ、あ、」
ブーンが目を覚ましたのはそれから2時間後だった。
起こされたというのが正しいが。
最初はバケツに溜めた雨水をかけられた。
それでも起きなかった為にルシールで何度も小突かれ、
その内下卑た笑い声が頭の中に届き始めて意識を取り戻した。
おぼろげな意識の内に飛び込んできた光景は妙であった。
「あ、」
ノイズが混じる視界はどういう訳か二分している。
左の視界は下に、右の視界は正面を向いているという具合だ。
崩れた黒いバンダナが視界の半分を覆っている。これはすぐに分かった。
左の視界は何故かぶらぶらと安定せず、2メートルほど離れた地点を捉え続けている。
とにかく状況を確認しようと体を動かそうとするが、動かない。
211
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:10:56 ID:0IJSrADM0
ふらつく視界をよく見ると、両足首から先が無い事に気づいた。
分厚い針金のような物で縛られている事もそこで気づく。
腕を動かそうとするがやはり動かない為、目視を試みるも肝心の首も回らない。
違和感からして首も同様に縛られているとブーンは理解する。
次にシステムに身体チェックを実行させたが、
神経系統に不具合が発生しており首から先の情報が不鮮明だった。
頭部は――左顔面に重大な損傷がある事が判明する。
「おお、やっと起きたかブーン。ちょうどよかった」
アノンの声が左の視界外から届けられる。
何やらズリズリと引きずるような音が近づく。
「そろそろ目が覚める頃かと思ってな、鏡を用意してやったぞ」
「あ、あああ、」
「じっくりと見てくれ。これが今のお前の姿だ」
212
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:11:35 ID:0IJSrADM0
「まあ、まだまだ完成には程遠いんだが、見てくれよ」
「ああああああああ、あああやあああああ」
「俺はアーティスト、そしてお前は一流の素材だよ!
一緒に最高にグロテスクな作品を作ろうじゃないか! ええ!?」
.
213
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:12:08 ID:0IJSrADM0
(;゚ω。)「あ゙あああああああ!! ああ゙あああああああああああ!!」
爪 ゚Ⅳ〉「ヒャッハッハッハハハハハハハハ!!
すげェ! よくそんな声出せるな! どうなってんだよお前の体は!?」
叫び出したブーンを指さし、アノンが腹を抱えて笑う。
鏡に映されたブーンの姿は変わり果てていた。
首と足首を分厚い紐状の何かで縛られ自由を奪われている。
右腕はもぎ取られ数多の配線が飛び出、疑似体液を垂れ流している。
左腕は辛うじてズタボロの筋繊維と配線に繋がれたままだ。
左の顔面をしこたま殴られた為、眼底と筋繊維が崩れて機械の目玉が頬を伝っていた。
頭部の皮膚も一部根こそぎ剥がれ、およそ人らしくない灰色の頭蓋が露出している。
腹が割かれていた。
花弁の如く開かれた装甲の中から血みどろの金属骨格が見え、
そこから丁寧に引きずり出された腸が、
一方乱暴に引きちぎったであろう数多の配線と共にどこまでも伸びていた。
笑ながらアノンは、イスに腰掛け大きなテーブルに肘を付いた。
テーブルにはもぎ取られた腕や足、摘出された胃や肝臓といった臓器が綺麗に並べられている。
ぽっかりと空いた大穴から、ブーンに残された心肺の動きに合わせて血液と疑似体液が溢れていた。
自分の奇怪さ、鏡を見るまで潜んでいた激痛の余り叫び声を上げ続けるブーンに、
アノンはバットを片手に近づく。
214
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:13:02 ID:0IJSrADM0
アノンは磔のブーンを見上げ、飛び出している左目をバットで突きながら言った。
爪 ゚Ⅳ〉「悪いな、頭を強くぶん殴っちまって目玉が飛び出ちまった。
まるでサイボーグが涙を流すように見えて美しいもんだぜ、ブーン」
千切れた配線を伝い視覚プロフェッサに纏わりつく疑似体液を見て、
アノンは関心するような口ぶりで続ける。
爪 ゚Ⅳ〉「まだ口が利けるようにバラしてやった理由が分かるか?」
(;゚ω。)「ぎゃああああゔうううううううっ!! やめ゙、ぎぃいいいいいいいいいいっ!!」
まだ股間に残る性器を悉く握り潰しながらアノンが尋ねる。
ブーンがその痛みとおぞましい感触に体を震わせて悲鳴を上げる。
抵抗するブーンの様子を見て、アノンは潰れた性器から手を離す。
ブーンが叫ぶの止め虚ろな声を出し始めた頃、アノンが静かに口を開いた。
爪 ゚Ⅳ〉「まだ日は落ちたばかりだ。休憩がてらに少し話をしようぜ、ブーン」
(;゚ω。)「はな、し? お前と、はなす事なんて、」
爪 ゚Ⅳ〉「俺はお前ら人間に近づいて理解したいんだよ」
(;゚ω。)「なに゙を、言ってんだ……?」
爪 ゚Ⅳ〉「まあ分からねェよな。順を追って話してやる。昔話さ」
215
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:13:56 ID:0IJSrADM0
爪 ゚Ⅳ〉「ハングドランクの多くは俺を含め、元々はお前らがセカンドと呼ぶ化物だった」
アノンは周囲を取り巻く者達には聞こえないよう囁く。
ブーンの右の集音センサーが、その言葉を鮮明に拾うが、表情は理解に程遠い様相である。
アノンがブーンの顔を見て鼻で笑い、続ける。
爪 ゚Ⅳ〉「かつて俺達はドロやゼラチン質のように形を持たない存在だった。
何も思考する事が出来ない故、ひたすら本能のままに喰ったんだろうな。
その内思考する事を覚えた。が、それでも俺達の姿は気味の悪いスライムのままだった」
(;゚ω。)「うう、ぎ、ぎ、」
爪 ゚Ⅳ〉「食事を通して様々なDNAが腹を、神経を、血を通じてイメージとして思考を駆け巡った。
微生物、虫ケラ、魚、鳥、それから人間。
多くのイメージの中で最も人間の形姿が美しく完璧に見え、憧れを抱いた。
人になりてえと思って、更に喰った。喰う事で近づけると思ってな」
爪 ゚Ⅳ〉「その内成長してな、姿形を変えられるようになり、狩りは効率的になった。
だが憧れた人の姿には程遠く、最初は管や血管だけで人の姿をまねるのが精いっぱいだった。
だから更に喰った、喰いまくった」
216
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:14:28 ID:0IJSrADM0
「確かこのハドソン川一帯からプリンストンに掛けては大いに喰らった」
(;゚ω。)「ぎ、さ、ま、」
その言葉を聞いた瞬間、ブーンの脳裏で鮮明に蘇る記憶があった。
およそ6年前の『始まりの日』の事だ。
マンハッタン島を目指し、その半ばで両親を失った記憶。
両親の仇を討とうとワシントンブリッジの作戦に忍び込み、そこでフィレンクト夫妻を失った記憶。、
そして、忘れもしないセカンドの姿形の記憶。
(;゚ω。)「ぎざ、ま!」
ブーンは怒りで歯をガチガチと鳴らす。
アノンは鼻を鳴らして続ける。
爪 ゚Ⅳ〉「他の動物なんかにゃなれたんだぜ? だが、不思議と人の姿だけは難しいもんだった。
人に似た姿にはなれても、人間の持つ美しい顔だけは持つ事が出来なかった」
爪 ゚Ⅳ〉「それから目的も当ても無く西へ向かった。
逃げ惑う非感染者も、感染者も喰いながらな。
何人喰ったのかも忘れちまって諦めかけた頃、ようやく俺達は人に進化する事が叶ったんだ」
爪 ゚Ⅳ〉「どんな顔にしようか皆悩んだ。皆が心浮き立ってた、あれは良い思い出だ。
お前にも分かるはずだぜ、真新しい自分に変わる瞬間の感覚だよ」
217
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:14:48 ID:0IJSrADM0
爪 ゚Ⅳ〉「そういや一人だけどでけェ人間になっちまったな……ああ、そうだ、クォッチって奴だ。
あの野郎、この辺りに狩りに行くって言ってそのまま帰って来ねえ。
この辺で見かけてねェか?」
(;゚ω。)「クォ……チ……だって……あ、あれは、は、ハ、」
爪 ゚Ⅳ〉「知ってんのか?」
爪 ゚Ⅳ〉「ああ、お前が殺してくれたのか」
(;゚ω。)「うう、うううう、」
爪 ゚Ⅳ〉「そうかい。手間が省けたぜ。
ありゃ実は離反者でな……っと、話が逸れちまった」
218
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:15:08 ID:0IJSrADM0
爪 ゚Ⅳ〉「それでだ。悩んだ末、
俺は最も印象深く感じた人間の顔を記憶の中から選び、
それを俺の個体として留めるよう心に決めた。それ以来どういう訳か変えられねェ」
爪 ゚Ⅳ〉「不思議だろ? 生命の神秘ってやつか? まあ、それは置いといてだ、ブーン」
爪 ゚Ⅳ〉「……見た瞬間はよ、大抵の奴は信じられねェ! って顔をすんだ。
俺の成り立ちを聞いた後だからな。
でもそれは俺が人間に見えるからって事なんじゃねェのかって思うんだよ」
爪 ゚Ⅳ〉「それからさ。ヒト相手に取引が、交渉が、対話が出来るようになったのは。
これも俺達の、俺の人間のらしさ故だろうと俺は思う」
爪 ゚Ⅳ〉「だからお前にも聞きたい。お前にも俺が人間だと認めて欲しいのさ。
率直な意見で構わねェさ……そんなにビビらねェで感想を聞かせてくれ」
爪 ゚Ⅳ〉「安心しろって。何を言っても殺したりしねェよ」
219
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:16:10 ID:0IJSrADM0
「まあ、ちょっと見てくれよ、ブーン」
アノンはそう言い、仮面に手を掛けてゆっくりと外した。
( ゚ω。)「と」
現れたのはその瞳の色こそ獣なれど紛う事なき人間の顔であり、
そして、
( ゚ω。)「―――――ちゃ、ん」
「なんだって?」
( ゚ω。)「なんで、だお、なんでお前が、なんでなんでなんでなんで」
「おいおい、まさかよ、ふざけんなブーン……」
( ゚ω。)「うそだ、うぞだお、うぞだあぁぁぁあぁぁあああ」
220
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:16:35 ID:0IJSrADM0
道理で聞き覚えのある声だと思った。
戦いの果て、意識が途切れる瞬間、何故か寝かしつけられるような感覚に陥ったのも、
道理でだとブーンは思った。
思いたくはなかった。認めたくはない事であった。
顔を収めた写真もデータもこの地に置いてきたものだった。
だからこそ思い出は思い出のまま美しく残っていた。
だからこそ復讐という名のかがり火に炎が灯り続けた。
だからこそ今日まで街で狩りをし続けられた。
だからこそツンにプロポーズした。
未だ胸に生き続ける、最も敬愛し最愛であった男のようになりたかったから。
( ゚ω。)「なんで、おまえが、とーちゃんの、おあ、ううああ、」
( ФωФ)
( ゚ω。)「うううううううう、あ゙、あああ゙、ああああぁぁあぁぁあああああ」
221
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:18:02 ID:0IJSrADM0
「マジかよ……冗談きついぜブーン……」
そうアノンは小さく呟き、仮面を再び付ける。
そしてブーンから視線を外し、暗い声色で続けた。
爪 ゚Ⅳ〉「……すまねェ。心の底から同情する。本心だ。
もう二度とお前の前じゃ仮面は外さねェ」
( ゚ω。)「うゔ! うううゔっ!! もう、いやだ! ああああ!
いやだああああああこんなせかい、もう、もう、もう、」
爪 ゚Ⅳ〉「すまなかったな、辛い思いをさせちまった。
俺も心が痛む」
爪 ゚Ⅳ〉「難しいだろうが忘れてくれ。もう二度と見る事はねェよ」
222
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:19:31 ID:0IJSrADM0
( ゚ω。)「も、う、ころせ」
爪 ゚Ⅳ〉「……心は痛む。本当だ。しかしだ、しかしなんだブーン。例外は無いんだ。
お前が幾らこの世を離れたいと言ってもだ。
吊るし、内臓を抉り、そして八つ裂きにしたお前を生かしたままセントラルに連れていくよ」
( ゚ω。)「ころしでくれよ、もうこれじゃ、ツンのとこ、かえれない」
爪 ゚Ⅳ〉「そうだ、ツンだよ、ツン」
爪 ゚Ⅳ〉「俺は心の底からツンに頼むよ。俺達と仲良く生きていこうぜ!ってな。
そしてお前のこの姿をセントラルパークのベルヴェデーレ城の天辺に飾る。
永遠に俺の法とルールのモニュメントとなって、お前はツンを守り続けるのさ」
223
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:20:33 ID:0IJSrADM0
アノンが再びブーンの腸に手を掛ける。
適当な長さまで引きずり出し、両手でぶちりとねじ切った。
(;゚ω。)「ひ、い゙ィぃいいいぃぃいいいいぃ」
ブーンが金切り声を出しながら痙攣する。
アノンは黙々と引き千切った腸を更に半分に切る。
そしてブーンの見下ろす前で、クロス字を腸で描く。
次にテーブルに並べられたブーンの内臓を一つ手に取る。
クロス字の空いたスペースで内臓を絞ってH、D、A、Qと文字を書いた。
それから傍らで燃ゆる焚火から一本の薪を掴み、完成されたシンボルを照らして見せる。
瞬間、周囲を取り巻いていた感染体の群れが雄たけびを空に上げた。
アノンが拡声器を持ち、仮面の口元に運ぶ。
爪 ゚Ⅳ〉『Hanged, drawn and quartered!
俺達が地上のルールだ! 俺達が新世界の支配者だ!
いいか! 何があっても俺がお前らを守る! 子供達と女を守る!』
爪 ゚Ⅳ〉『生きたい奴は俺の言う事を聴け! 俺に従え!
そして俺になれ! さすればルールと法が俺達家族を守る!」
224
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:21:27 ID:0IJSrADM0
爪 ゚Ⅳ〉『今夜だ! 今夜ブーンを連れてセントラルに向かう!
ルール通り交渉から始める! 応じなければ攻撃する!
無用な殺しは許さん! 特に降伏者を手に掛けた奴は俺が粛清してやる!」
爪 ゚Ⅳ〉『女達は残って子供達とこのリンカーンパークを死守しろ!
必ず明日、安全な場所を手に入れて迎えに来る!』
《アノン! アノン! アノン! アノン! アノン!》
《ハングドランク! ハングドランク! ハングドランク!》
爪 ゚Ⅳ〉『セントラルは俺達ハングドランクの物となる!
ヒャッハッハッハッハッハ! 明日の朝刊が楽しみだなぁブーン!』
( ゚ω。)「ツン、にげ、て……にげて、くれ」
携帯端末は破壊されていた為、通信のしようがなかった。
ブーンは、決して戦いに応じたりしないよう、ただ祈る他なかった。
__
225
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:21:50 ID:0IJSrADM0
「待て! 無茶だ!」
「しぬよぜったい」
「無茶? 知らねえよ。俺が何て呼ばれて知ってから物を言え。
ここで逃げ帰れば命知らずの特攻野郎の異名に傷が付いちまうし、
惚れた女に愛想を尽かされちまうよ」
「馬鹿言うな! 相手はAwakerの群れだ! お前ら絶対に殺されるぞ!」
「知るかっつってンだ! 俺の相棒が窮地に立ってやがンだ。助けに行かねェと。
相変わらず世話を焼かせるクソヒーローだがな、あんなんでもセントラルは必要としてンだよ」
「それにセントラルの連中だって事情を知ったら命懸けで助けに行くだろうよ。
だったら俺達二人で行く。俺がアイツを助けてその技師とやらに直させる。なあ“レッドヘアー・リーパー”?」
「……ったくよォ、要請っつって聞いて飛んできたらこんな事態になってやがって。
サード連中相手にまともに戦うつもりはサラサラねえけどな。
奇襲を掛けてブーン攫って一旦コイツらのアジトに引く。その後はなんとかなんだろうよ」
「そういうこった。お前らは隠れ家にさっさと帰れ。
それとも俺と一緒に、ついでにお前らの仲間も奪還しに行くってンなら歓迎するが」
226
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:23:17 ID:0IJSrADM0
(;´・_ゝ・`)「……くそったれ! どうなっても知らんぞ!」
(#゚;;-゚)「ディはやばくなったらデミタス連れて逃げる」
ノハ#゚⊿゚)「っっし! 燃えてきたぜぇぇえええええええ!! 待ってろよブゥーン!!」
ミ,, ゚∀゚シ「決まりだな。主人を迎えに行くぞ、BLACK DOG」
ジョルジュの要請を受け、チーム・ディレイクはアップデートを終えたヒート・バックダレルを現場に投入。
BLACK DOGに跨るジョルジュは静かに遠方のリンカーンパークを見つめた。
第41話「仮面の下」終
第41話「仮面の下」終
227
:
名無しさん
:2018/08/29(水) 00:24:44 ID:NLikTX7M0
なんつーか物語畳みにきてる感じかなおつおつ
228
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/29(水) 00:25:33 ID:0IJSrADM0
ありがとうございました。
次の投下は9月です。
229
:
名無しさん
:2018/08/29(水) 00:26:11 ID:0IJSrADM0
>>227
もうちょっとだけ続くんじゃよ
230
:
名無しさん
:2018/08/29(水) 00:27:43 ID:NLikTX7M0
>>229
そりゃ楽しみだ
231
:
名無しさん
:2018/08/29(水) 03:33:56 ID:AdC/N9II0
投下乙
急展開すぎて乗っ取りを疑っちまったぜ…次の投下も楽しみにしてます
232
:
名無しさん
:2018/08/29(水) 07:40:19 ID:77gb/JGA0
やっぱおもしれー
アノンが怖すぎるけどかっけえ
233
:
名無しさん
:2018/08/30(木) 13:01:51 ID:BGtp8M1U0
もう来ないと思ってた続きを読んでるってなんだか不思議な気分
最後まで楽しみにしてます
234
:
名無しさん
:2018/09/09(日) 11:38:29 ID:iHGLEeHg0
久々に板見に来たら目を疑ったぜおい
帰ってきてくれてありがとう街狩り
235
:
名無しさん
:2018/09/13(木) 19:57:11 ID:InW64o8.0
最初から読んできた
あつい
236
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/09/25(火) 23:14:51 ID:0g8d74VY0
すみません、9月投下を予定していましたが10月に変更します。
237
:
名無しさん
:2018/09/26(水) 09:37:58 ID:NB0/iVmo0
(´・ω・`)そんなー
238
:
名無しさん
:2018/09/26(水) 18:41:42 ID:V855J9520
久しぶりにブーン系を覗いてみりゃ街狩りマジかよ
めちゃくちゃ嬉しいやんけ
239
:
名無しさん
:2018/09/26(水) 21:50:25 ID:V855J9520
やっぱ面白いな
黒の革ジャン、ルシール、そのカリスマ性、アノンのキャラの元ネタはウォーキンのニーガンかな
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