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( ^ω^)は街で狩りをするようです
40
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:41:35 ID:/6kuSotM0
「いいですか、ブーン」と続け、ずいとヒートが歩み寄る。
ノパ⊿゚)「アクセラレーターという身体機能の向上装置を持つので分かりますが、
アーマーシステムもこれと同じ分類で、私達に2割残る臓器に甚大な影響を与える代物です。
私のですら40年代当時はタブーとされた危険な代物なんです……あ、ちなみに私のはジャンクの粗悪品です。
最高速度は限定的な使用になると思いますが、使わずに越した事は無いです」
作業をしていた手をぴたりと止め、ブーンは己の耳たる集音機に意識を向ける。
ノパ⊿゚)「使わざるを得ないのも分かりますけど……
そのうち私みたいに頭おかしくなりますよ?」
(;^ω^)「……ええと、ヒートさんみたいってつまり……?」
ゾッとして思わず尋ねる。
彼女の戦闘時の豹変ぶりを聞いている為、妙な説得力を帯びているせいだ。
ノハ;゚⊿゚)「あ、あの、私の性格は関係ないですよ!!
あれは障害とかそういうのじゃなくてですね、元々の性格上の問題でして」
(;^ω^)「それはそれで怖いですお。で、どういう事ですかお?」
ノパ⊿゚)「たまーに幻覚とか幻聴があったりするんです……はい、軽度の脳障害持ちです。
そういう事もあって、戦闘から身を引いていたんですけどねェ……」
41
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:41:57 ID:/6kuSotM0
「ええと、ともかくですね」と取り繕い、
ノパ⊿゚)「無茶な戦い方は決してせず、無事に帰ってきてください!
という事を今日中に言いたかったんですよ私は! この後私シャットダウンするんで!」
( ^ω^)「……勿論ですお。もう自分一人の体じゃないなんて事は、5年前に知りましたから。
大切なご忠告でしたお、ヒートさん。ありがとうございますお」
ノハ;゚⊿゚)「あ、いえいえ! というかエラそうな事言っちゃってすみません!」
( ^ω^)「そういえばなんですけど、ヒートさんはこれの持ち主を知っていたとか」
ブーンが親指で額を指して尋ねた。
問われ、目じりと口の端を柔らかくしたヒートの表情は、半ば呆れているように見える。
ノパ⊿゚)「……はい。よーく知っていますよ。まああの人もまた無茶やる人でしたねー」
( ^ω^)「おお、本当にオッサンの事ご存知でしたかお。
……じゃあ、帰ってきたらゆっくり当時のお話を聞かせて欲しいですお」
ノハ*゚⊿゚)「もちろんです! では、無事に帰ってきてくださいね! 約束ですよ!!」
笑顔と共に踵を返しラボ内に戻るヒートを見送る。
( ^ω^)「……もう無茶はしないお」
何故スネークが死の間際にこのバンダナを託したのか。
――そうだ、誰かを守る為に戦い続ける必要があるのだ。
そう簡単に落としていけない命である事を、ヒートとの会話でブーンは再確認するのであった。
42
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:42:22 ID:/6kuSotM0
BLACK DOGⅡへの武器や燃料、食料、煙草など嗜好品の積み込み。
机に広げたフットホルダーの整備、BlueBulletGunやSniper、Cannonとの同期チェック、
グレネード型カートリッジの四肢への装填――出来るだけアーマーシステムに頼らずとしたドクオの計らいで、
両腕両足に出力追加のBoosterモジュールを新たに搭載した。
幾度となくこなしてきた調査準備をスムーズに終えて、
また一本と胸元のタバコに手を伸ばす。
すると、それを制するかのように腕に巻きつけていた端末がギター音を鳴らす。
ツンからの着信である。
( ^ω^)「そういえば最近ツンと会ってなかったお」
タッチパネルを指でたたくと、2枚のホログラムが展開される。
その内1枚に目線をそらしたツンの顔と、ワイプに自分の顔が表示された。
『も、も、もしもし?」
( ^ω^)「なんか久しぶりに顔を見た気がするお」
とはいうものの、横顔しか拝顔できないのだが。
何やら様子がおかしいのは見て伝わる。
『そ、そうね。最近は経営の事で第3階層に行く事が多かったから、
アンタの事は殆どドクオに指示してたものね』
頑なな様子でカメラを正面に捉えないツン。
一見そっけないようなこの態度を見て、ふとブーンは学生時代の事を思い出した。
43
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:42:42 ID:/6kuSotM0
( ^ω^)(確かあれは――そうだ、二人で出かける約束をした時だお)
正確にはその前日に待ち合わせを決めた時の事。
生身の脳が記憶を徐々に蘇らせて映像化してゆく。
『あ、明日は5年ぶりに家の方に行くじゃない?
だからその、なんていうか……ええと、その』
確か、後に知った事だが、誕生日を祝ってくれようと誘ってくれた日の事だ。
見に行きたい映画があんの!という理由で誘われ夜まで一緒に過ごし、
別れ際になってようやく小さな箱包みをそっけなく渡してきたのだ。
あの時に似ている。
結局その日は一日中どう過ごしたいかツンから聞き出せなく、
自分が全てのプランを考えてやっていたんだったか。
平和で安全だったあの頃を己の脳で再現してしまう。
ブーンは思わず笑いを浮かべて言う。
( ^ω^)「ツン、二人で『セントラル』で遊ばないかお?」
『えっ』
( ^ω^)「ここ最近二人で話す事もなかったし、
思えば『セントラル』を一緒にゆっくりと歩き回った事もなかったお」
『…………』
( ^ω^)「明日、やっと地元に帰るし。今日はツンと話したい気分なんだお」
44
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:43:12 ID:/6kuSotM0
『……わ、わわ、わかったわ! し、しかたないわね! そこまで言うんだったら付き合ってあげるわ!
ええとそ、そうね、第4階層の5番ステーション前でいいかしら?』
( ^ω^)「そこでいいお。17時に待ち合わせするお。
夕食もこっちで予約するから心配しないでいいお」
( ^ω^)「……それとビロードは誰かに頼んでおいた方がいいんじゃないかお……?」
と、ようやく我にかえったようで、正面に顔を向けるツン。
『あ、確かにそうね。それだったらガイルさんに頼もうかしらね。
ちょうどエクストも今日厄介になるみたいだし』
( ^ω^)「そうするといいお。じゃあ、17時に」
『わ、わかったわ。遅れたらタダじゃおかないんだから!』
最後は再び顔を背け、そのまま通話を切るツンであった。
45
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:43:49 ID:/6kuSotM0
通話相手を失い蒼色一面と化したホログラムをじっと見つめた後、
ブーンはメモリからドクオの番号に発信した。
『おう』
( ^ω^)「あーあのさ、唐突なんだけど特別な日に食事するとするじゃん?
こういう時ってショボンのバーボンハウスで大丈夫かお?」
『おま……ショボンの所だけはねーよ。それにこないだツンが出禁くらったじゃねえか』
(;^ω^)「あ、そうだった。他にセントラルに何があるのかわかんねーんだお」
『……いいか、第4階層のカジノリゾート区にオススメの店がある。
あとでアドレス送ってやっからチェックしてみろ』
( ^ω^)「おお、さすがドクオ。万年独り身、可能性ゼロのくせに
ここぞという時の為に日々あらゆる想定をしているだけはあるお」
『うるせーちくしょう! まあ明日から調査だ! 楽しんでこいよ! じゃあな!』
一方的に通話を切られ、再び沈黙する携帯端末をブーンは一瞥する。
持つべき者は頼れる友人であると素直に思う。
46
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:44:11 ID:/6kuSotM0
(;^ω^)「……今日、ツンにあれを渡そう。思い切って」
__
(;'A`)「まさかのブーンからのお誘いになるとは……やったじゃねえかツン。
本当に幼馴染止まりの関係も終わりだよ」
ξ;///)ξ「ふ、ふん! し、仕方がないから付き合ってあげるだけよ!」
从;゚∀从「しかもビロードお預かりとは……」
ξ゚⊿゚)ξ「へ? それがどうしたの?」
从;゚∀从「意味わかんねーか? 今日は帰さないって事かもしれないんだよ。
だとしたら案外やるじゃねーか。ブーンの奴、そういう所はお堅いと思ってたが……」
ξ´゚⊿゚)ξ「…………」
47
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:45:32 ID:/6kuSotM0
ξ;///)ξ「…………え、それってつまり……」
从 ゚∀从「つまりそういうことでしょ」
ξ(゚⊿゚;三;゚∀゚)ξ「ああああアホかああああああああああああああああああ!!!」
('A`)
从 ゚∀从
48
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:46:42 ID:/6kuSotM0
ξ;///)ξ「あいつアホかああああああああああああああああああああああああ!!!」
ξ;///)ξ「むりむりむりむりむりむりむりむりむりむり!!!!」
うおおおおおおおおおおおおおおξ;///)=〇)A')
从 ゚∀从(やだ、かわいい)
ξ;///)ξ「どうしようwwwwwwどうしようwwwwwwwwww
くぁぁぁぁぁぁ……心の準備が出来てないんですけど……」
从 ゚∀从「ところでドックン。あいつのナニって何でできてんの?」
('A`)「安心めされいハインぴっぴ。生まれたまま大きく育った砲を搭載しておる」
从 ゚∀从「ほーwwww砲だけにほーwwwwwww」
ξ(///;三;///)ξ「ほおおおおおおおおおおどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ!!!!!」
49
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:47:17 ID:/6kuSotM0
そして時刻は約束の17時を回り。
『セントラル』の生活基盤を担う第二階層が、最下層に掛けて外壁を制御する。
地上を撮影するカメラが日が落ちる様を捉えるのに合わせて、
外壁と天井を同様のパターンに変化させ、夜の訪れを演出する。
ホログラムで宙に投影された鳥が夕日をバックにし、
そのシルエットを遠い夕闇の中へと消えていく。
機能解除したブーンの眼にも、現実と遜色無い景観を構成する諸要素として全て映り込んでいる。
元々は巨大なカジノリゾートとして建造された地下都市。
故に人間の生態学的な秩序を保つ上で景観美、レクリエーションの確保も目的として、
外壁スクリーンを代表とするランドスケープ・アーキテクトは、荒巻スカルチノフが力を入れた分野の一つでもあった。
待ち合わせにした5番アクセサーステーションの前には広い貯水池があり、
ここにはツンが気分転換で書いたプログラムも存在する。
物理演算で組まれた風速と風向、それを受けて変化し続ける波である。
(#^ω^)「ツンのやつ、遅い」
ベンチに腰掛け、ゆらゆらと変化する橙色の水面を見つめながら、一人呟く。
ランニングをしている何人かに声をかけられたりしながら、更に15分待つ。
時の経過はプログラムされた自然にでも実感ができるであろう。
1月の極寒のニューヨークは体感できずとも、いや、だからこそ地下都市のこの快適さ全てが
人間の手によって創造されたものであるのだと、ブーンは改める。
こうして街を眺めるのは久方ぶりであった。
50
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:48:12 ID:/6kuSotM0
( ^ω^)(色々あったけど……まぎれもなくここは僕たちのホームだお)
ツンがプログラムした並みの音を聴きながら、そんな事を思うのは、
明日に再び地上へ出るからであろうか。
地上進出を目指す理由、それから、大切なのは帰る理由。
外に出るのは人々の為。では、帰るのは誰の為だろうか?
調査前になると決まってそんな考えが頭をよぎるが、
この日は特別、何故か帰還時の事を思い浮かべるのであった。
「お、お待たせ」
( ^ω^)「遅いおツン! いったい何分待ったと思って――――」
この世界で何よりも正確さを誇るその眼を一瞬疑った。
ξ;///)ξ「う、うるさいわね! なによ15分くらい!」
黒色のVネックノースリーブ。
足元をうっすら隠す長いイブニングドレスに身を包んだツンは、
周囲の創造物をバックにより美しく見えた。
前髪をアップにしているせいか、化粧のせいか分からないが、
顔を少し伏せていようがくっきりした猫目が目立つ。
ツンには珍しくセクシーなドレスも相まって、ブーンは目が離せずにいた。
51
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:48:37 ID:/6kuSotM0
ξ;///)ξ「べ、別に普通よこんなもん! 部屋着よ部屋着!
これでアタシいっつもコンビニ行ってるもん! 文句ある!?」
(;^ω^)「どこのセレブのつもりだお……似合ってるおツン。見違えたお」
ξ(///;三;///)ξ「べっ、べっべべべべべべべべべ!!!!」
ξ;///)ξ「べべべべべべ!! べ、別に褒められても嬉しくなんかないわよ!!
ほら! 行くわよ! どこに行くのよ!?」
( ^ω^)「まずはカジノでも行ってみるお」
ξ;///)ξ「ふ、ふーん。昔から大人な感じに憧れるわよねあんた。
あんたと違ってアタシはそういうの慣れてるから別にどうって事ないけど?」ボソボソ
(;^ω^)「んな敷居の高いもんじゃないから安心するお。ほら、行くお」
ξ;///)ξ「あっ―――ちょ、ちょっと、手ェ! 手ェ待って! 待って待って!
じゃなくてマテ茶が飲みたいだけだからね?
そんなに手が繋ぎたいなら繋いであげるわよ仕方がない」ブツブツ
(;^ω^)「はいはいマテ茶ね。あとで買ってやるから」
ξ;///)ξ「バカ! 本当はココアが飲みたいに決まってんでしょ!?
何で言わなきゃわからないのよ! バカ!」
(;^ω^)「はいはい、ココアですね」
52
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:49:29 ID:/6kuSotM0
(;^ω^)(こっちまで緊張してくるわ)
何気なくツンの手を取ったつもりであったが。
熱を帯びない機械同士の手は、しかし確かにお互いの緊張感を伝え合っていた。
いつぞや映画館に行った時のように、ぶつぶつ呟き続けるツンを引っ張ってゆく。
__
ξ*゚⊿゚)ξ「やったあまたまた勝ち! はじめてやったけど勝てるとけっこう楽しいものね!」
( ^ω^)「だお?」
見事に揃ったブラックジャックに、ツンが満面の笑みを見せる。
賭けた金額もさることながら有名な二人とあってギャラリーの注目を集めている。
遊んでいる内に緊張も解けた。
無邪気なツンの姿を見て、カジノに連れてきたのは正解だったとブーンは思う。
ξ゚⊿゚)ξ「でもアンタの場合絶対に勝てるからつまらないんじゃないの?」
( ^ω^)「そうでもないお。ここは対策万全だし、サイボーグ禁止のゲームも多いお。
バカラとか予想できるゲームなら僕でも負けるお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんだ。じゃあ明日からの占いがてら、アンタも勝負してみなよ」
( ^ω^)「そりゃいいかも」
53
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:50:42 ID:/6kuSotM0
(;^ω^)「ガチでやったらくっそ負けたわ」
ξ;゚⊿゚)ξ「何やってんのよ。先行き不安になるような事しないでよ」
(;^ω^)「くう、もう一勝負……ツン、アウトサイドベットの赤に賭けてきて」
ξ゚⊿゚)ξ「ルーレットね。じゃあアタシも同額黒に賭けよっかな。負けた方が夕飯おごり!」
( ^ω^)「受けて立とう」
ξ*゚⊿゚)ξ「いやっほう! アタシの勝ちー!!」
(;^ω^)「くう……運に見放されてるのかお……」
ξ*゚⊿゚)ξ「まぁまぁ勝負運は取っておくって事で……さ、
約束通りアンタのおごりでご飯食べにいきましょっか」
( ^ω^)「元から今日はおごるつもりだったし。勝敗とか別に気にしてないし」
ξ*゚⊿゚)ξ「強がるなって」
( ^ω^)「うっせ。あ、そろそろ店向かうお。ちょうど予約の時間だお」
54
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:51:06 ID:/6kuSotM0
ξ゚⊿゚)ξ「予約? アンタにしては気が利くわね」
(;^ω^)「はあ? 前だって僕が何から何まで計画立てたじゃねーかお」
ξ゚⊿゚)ξ「はあ? 前って? いつの話よそれ?」
( ^ω^)「14の時に行った映画館」
ξ;゚⊿゚)ξ「……いや! あれはね! あ、アタシだってすっごい悩んだんだから!
でも結局決められなかったんだったっけ……」
( ^ω^)「知ってるお。後でおばさんに聞いたから」
ξ;///)ξ「何でそんな事聞いてんのよ! くぁぁぁ枕に顔うずめて足バタバタしたい……」
( ^ω^)「にしても、懐かしいお。こうして二人で遊ぶってあれ以来だお?」
ξ゚⊿゚)ξ「確かにそうよね。今日までずっと働きづめだったものね」
( ^ω^)「そうだお。せっかくだから今日はパーっといくお」
ξ*゚⊿゚)ξ「しょーがないわねえ、付き合ってあげるわよ」
55
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:52:04 ID:/6kuSotM0
二人が向かったのは同カジノ内の3階に位置するパラダイスという名のレストランだ。
名が示すように、特に高級な肉の提供が売りらしい事をブーンは事前に確かめている。
体細胞由来のクローン技術は古くから今日まで続く食料問題の解決に役立っているが、
高級食材を提供するに辺り最も功績を上げたのは、以前より酪農に通じていた者である。
未だ食材にはあらゆる可能性が秘められていると言える。
ブーンはドクオが憧れている理由が分かった気がした。
スーツを着こなし完璧に来客をもてなすアンドロイドもさることながら、
わずか7つというテーブルの少なさが肉の提供数に限りがある事を物語っているように思えた。
その内の唯一空いている窓際のテーブルに案内される。
「B00N-D1じゃないか」
「ツン・ディレイク博士、なんて美しいのかしら」
ξ;///)ξ「…………」
食事中の人々も思わず手と口を止めて、通り過ぎる二人に目を奪われる。
そんな言葉を聞いてか顔を伏せる動作を、ブーンはセンサーを介し背後に感じる。
一方でブーンの闊歩は全く意に介さない堂々たるものである。
人の目には淑女をエスコートする打ってつけの紳士として映っている。
56
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:53:37 ID:/6kuSotM0
ξ;゚⊿゚)ξ「……パーっと過ごすっていうには、なんか落ち着かないわね」
席に座ると同時、ツンが思わず面向かって言う。
(;^ω^)「まあ、自惚れじゃないけど正直どこ行っても注目されるお」
ξ;゚⊿゚)ξ「それならショボンの所でも良かったのに」
(;^ω^)「それも思ったんだけど、さすがに今日はちょっと……」
ξ゚⊿゚)ξ「どうして? 別にアタシはどこでもよかったのに」
( ^ω^)「それは――――」
「失礼します」
言いかけるとアンドロイドが水とメニューを持ってきた。
人の話などなにも思わず聞き流すアンドロイドに対してブーンは口を閉ざす。
( ^ω^)「あ、このコースで頼みますお」
「食前酒は如何いたしましょうか?」
メニューのワリンリストから一つ選ぶらしいが、あまり理解の無いブーンは顔を顰める。
(;^ω^)「あー軽めのやつで、貴方のオススメがいいですお」
「畏まりました」
57
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:54:36 ID:/6kuSotM0
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん……それらしい品書きに見せているだけで、
せいぜいコンピュータが解読して似せて作った物よ」
( ^ω^)「そうなのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「カリフォルニア産というより、カリフォルニア産風よ、精度の高いね。
今となればこれが精いっぱいの高級品ね。
それでも十分雰囲気は楽しめるに違いないけど」
(;^ω^)「そりゃそうだお。平均使用金額3万セントラの高級店だお」
ξ;///)ξ「わ、分かってるわよ! 何が言いたいかって言うと……一度しか言わないわよ。
きょ、こういうお店に連れてきてもらえて、う、嬉しいわ。とっても」
( ^ω^)「……そりゃよかったお。僕も楽しいお」
――食事を終えてテーブルが片付いたら。
ブーンはポケットの中に忍ばせているある物を確かめつつ、意を決する。
58
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:54:56 ID:/6kuSotM0
前菜、スープ、魚料理、口直し、メインディッシュ、
サラダ、チーズ、菓子とフルーツ。
機械仕掛けの手を持つ二人が、精密にそれらを切り分けてゆく。
小気味よいジャズが奏でられる中、次々に口へと運んでいった。
いずれも第3階層の広域に渡る生産工場か農地から出荷された物であるが、
液体化食料などと比べてはならぬ程、味は別格であった。
ツンは、食事の途中で雰囲気は楽しめるという言葉を撤回していた。
それほどに美味かったのだ。
最後に食後のコーヒーとココアが運ばれる。
慣れた香りに鼻をくすぐられ、二人は充足した息を吐く。
ξ*゚⊿゚)ξ「美味しかったわ。また来たいくらい」
( ^ω^)「貸切もしてるらしいから、皆でパーティするお」
ξ*゚⊿゚)ξ「あーそれいいかも。調査が終わったら、その帰還祝いにでもどう?」
(;^ω^)「……そ、それよりも」
ξ*゚⊿゚)ξ「ん?」
――――ここだ。
会話の流れ的に、絶好のチャンスであった。
システムに「デートで相手を口説き落とす最良の手段」があってもこの機は逃さないだろう。
水を一口喉に通し、ブーンが切り出す。
59
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:55:56 ID:/6kuSotM0
( ^ω^)「帰還祝いじゃなくて、僕は別のお祝いがしたいと思ってるお」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ?」
(;^ω^)「えっと、それは……」
ごそごそとポケットを探り出すブーン。
ツンには何をしているのか全く理解が出来ず、ただ目を細めて見つめる。
しかしテーブルの中心に置かれた小箱を見て、
全てを悟ったように目を丸くした。
何も言わないままブーンが小箱を開き、橙に輝く宝石のついた指輪を見せる。
(;^ω^)「それは、僕とツンが祝福されるパーティにしたいお」
ξ;///)ξ「う、うそでしょ…………」
(;^ω^)「調査の時にブティックから拝借して……い、いつか渡したいと思ってたんだお」
ξ;///)ξ「…………」
60
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:56:27 ID:/6kuSotM0
(;^ω^)「……僕は、今まで敵討ちの為に生きてきたお。
でも、最近急に思うようになった事があって……多分、ジョルジュ隊長とハインさんを見てからだお。
敵討ちの為なんかじゃなくて、僕は、その、ツンの為に生きたいって思うようになったんだお」
ξ;///)ξ「……うん。アタシも、今はそこまで仇打ちにはこだわってないわ。
それより、皆や、あ、アンタが生きていればいいって思う」
(;^ω^)「ツン。明日、僕達がいた街へ、僕は行くお。
きっと6年前と変わらず危険な街だと思うから、だから、誓いたいんだお」
(;^ω^)「ツンの為に絶対生きて帰ってくると」
ξ;///)ξ「……うん……」
(;^ω^)「受け取ってくれるかお? い、イエスと言ってほしい」
「…………きょ、挙式は、」
(;^ω^)「へ?」
61
:
名無しさん
:2018/08/18(土) 22:57:14 ID:/6kuSotM0
何年ぶりだよおかえり
62
:
名無しさん
:2018/08/18(土) 22:57:20 ID:9ZMKsbGA0
超弩級のフラグか
63
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:57:38 ID:/6kuSotM0
「きょ、挙式は、マンハッタンのフォースユニバーサリスト教会がいいわ。
ここから近いし。それに、子供の頃少し憧れてたの」
「そ、それと、もし、いつか地上で暮らす事になって、
アンタが遠くに行って帰りが遅くなるような事があったら……毎日そこで祈るわ。
あ、アタシとアンタが永遠を誓うはずの場所なんだから。そこへアンタは帰ってくるの」
(;^ω^)「…………ん?」
ξ;///)ξ「なに間抜けな顔してんのよ!」
(;^ω^)「え、っていう事は」
64
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:58:04 ID:/6kuSotM0
「イエス、イエスよ、ナイトウ」
「本当かお……? イエスだお?」
こくりと頷いた後、ツンは機械仕掛けの黒い指をそっと差し出す。
ブーンはツンの手を取り、薬指に指輪をはめた。
ツンは胸元に手を運び、微笑みを浮かべてブーンに指輪を見せる。
肌の無い、精密さだけを求めた機械仕掛けのツンの手。
6年前の出来事を忘れまいと誓う為、皮膚を張らなかった手だ。
「ありがとう。幸せだわ。こんな気持ちになれるなんて。
生きていて良かった……ナイトウ、愛しているわ」
その指に、愛しい者の為に生きるという、新たな誓いがたてられた。
65
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:58:29 ID:/6kuSotM0
※
明朝6時。
外壁が白んだ朝焼けを演出し、柔な光で街を包みだす頃。
ブーンの住む高層アパートの最上階は一番にその光を受け、
カーテンの隙間から二人の目元を照らすのと同時に、ブーンの端末が鳴る。
着信だ。
ξ;-⊿-)ξ「何よ朝から……起きて。電話よ」
(;^ω^)「邪魔するのは誰だ――――ジョルジュ隊長から着信だお」
ξ゚⊿゚)ξ「ジョルジュさん?」
『よう。悪いな朝っぱらから』
( ^ω^)「いえ、構いませんお。にしても電話なんて珍しいですね。
予定通り今日そちらに向かいますお」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたんですか?」
『何だお前ら。朝まで二人きりって事は、やっとくっついたか』
ξ;///)ξ「どうでもいいでしょそんな事」
(;^ω^)「えーと、まあそういう事です。それよりどうしたんですかお?」
66
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:59:20 ID:/6kuSotM0
『いや、ツン博士がいてちょうどいい。よく聞け。
ニュージャージー一帯が妙だ……何か不穏な気配がある。
野性的ではない、何か人為的な物が存在しているようだ。痕跡から察するに凶悪な何かが』
『ツン、お前の母校で撮影した写真を送る。屋外のバスケットコートで発見した物だ。
少し覚悟してから開けよ。朝っぱらから強烈ですまねえが、急ぎ意見を聞きたい』
(;^ω^)「なんだ、これ……」
ネットを失ったバスケットゴールに、人の形に近い何かが縛り付けられている。
目玉や鼻を削がれ、皮膚を剥がれた首を出し、
足と首を太い針金のような何かで縛り付けられ、吊るされている。
腕は無い。
生殖器も落とされている。
限りなく人間に近いというだけで身体的特徴が伺えない。
生存者であったのか、セカンドであったのかすら不明だ。
引き裂かれた胴体から、肉がへばりついた肋骨が見える。
心臓は摘出されているようだ。太い血管がだらしなくぶらさがっている。
人間とほぼ同じ臓器配列だとすれば、臓器の殆どが摘出されているのが見て分かる。
血肉の殆どが流れ出て空洞と化した体内。
だが腸だけはまだ繋がっているらしく、コート上に伸びているようだ。
67
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 22:59:40 ID:/6kuSotM0
もう一枚、写真がブーンに送られる。
『飛んで空中からコートを撮影した。見ろ、これは明らかにアルファベットだ』
引きずり出されたであろう腸をぶつ切りにし、クロスを描いている。
×字が作り出す4つの空間に、それぞれ「H、D、A、Q」の文字が、血で描かれている。
『しかも、腐敗していない新鮮な死体だ。察するにこの拷問は最近行われたようだ。
このHDAQが何を意味するかは分からないが……シンボルか、あるいはメッセージか……」
『しかも、ここと別の場所にも同じマークがあるのを確認している。
同じような拷問を受けた死骸もだ……やはり人間のような形をした、な』
ξ;゚⊿゚)ξ「……そうなると、ますます人為的な行為と言えます。
拷問とは別に、何かを伝えているように考えられるかと……」
(;^ω^)「するとこれは、人間が人間にした仕業、って事になるのかお……?」
『そうかもしれん。この地上でこんな芸当が出来る人間と言えば、サイボーグかあるいは』
ξ;゚⊿゚)ξ(;^ω^)「サード……」
『やはり二人ともそう思うか……だろうな。以前から存在していた可能性だって考えられる』
68
:
名無しさん
:2018/08/18(土) 23:00:03 ID:9ZMKsbGA0
>>61
一言だけ…これは酷い
69
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 23:01:18 ID:/6kuSotM0
『どちらにせよ不気味な奴がいるって事に間違いはない。
それと、残念ながらナノマシン研究に関するデータは建物ごと全部ぶっとんじまったみたいだ』
『俺は南下ながら近辺を探ってみる。
ブーン、正午にリバティ科学センターで落ち合おう。詳細な位置は追って伝える』
(;^ω^)「了解」
『いいか、気をつけろよ。ただでさえこの辺のセカンドはかなり手強い。
だがこのマークに関しては調査はすべきだ。俺もやばいと思ったらすぐ逃げるぜ』
(;^ω^)「ええ、十分注意して下さい」
『直接話したい事が山ほどある。またあとでな』
通話を終える。嫌な緊迫感が部屋を包む。
二つの速い心臓の音がブーンのセンサーに届いて伝わった。
(;^ω^)「……なんなんだ、何が起こってんだお……。
僕達の故郷で、一体何者が、何の目的でこんな真似を……」
ξ; ⊿ )ξ「わからない。ただ、言えるのは、セカンド以外の何かもいるって事ね」
儀式めいた不気味な凶行が、いつまでも二人の脳裏から離れなかった。
70
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 23:01:48 ID:/6kuSotM0
ξ; ⊿ )ξ「ナイトウ……何か、これまでに無い嫌な予感がするわ……出来れば行って欲しくない。
ここでアタシと一緒にいて欲しい。ねえ、どうしよう? なんだか、本当に怖い。
アンタの出発前にこんな不安な気持ちになるなんて、初めの頃以来だわ」
(;^ω^)「ツン……心配するなお。必ず生きて戻ってくるって誓ったんだから」
ξ; ⊿ )ξ「うん、でも」
(;^ω^)「大丈夫、大丈夫だお」
ブーンが震えるツンを抱き寄せる。
(;^ω^)「僕はツンが作ったサイボーグだお。それが不安かお?
僕は全く不安なんかじゃない。ツンのおかげで何度も生きて帰ってきた。
今回だってそう、何も不安に感じる事なんか無いお」
(; ω )(そう、何も怖くない。たとえまた人を殺す事になってもだ。
絶対に君のもとに帰ってくる為にも、悪意から守る為にも、躊躇ったりはしない)
ξ; ⊿ )ξ「ナイトウ」
71
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 23:02:11 ID:/6kuSotM0
ξ; ⊿ )ξ「必ず、必ず生きて帰ってきて」
__
阿部「チッ、まずった」
(´・ω・`)「どうしたんです?」
阿部「データベース内を探っていたらトラップを踏んじまった。俺とした事が」
(;´・ω・`)「な、大丈夫なのか?」
阿部「敵さんもなかなかやるじゃない。甘く見ていた。
なあに、ケツの中にション――を出された時と比べりゃ―――――――」
(;´Д`)「どうしたんだ!?」
(;´・ω・`)「阿部さん!?」
阿部「クソッ、まずい――――いいか、よく聞―」
72
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 23:02:31 ID:/6kuSotM0
阿部「クローンを制御し――――発信源は―――第5階層の――――区の――地下。
プギャー総――院を介して―――――クローン――通信を―――」
(;´Д`)「なっ、プギャーだと!? 奴も、絡んでいるのか……!?」
(;´・ω・`)「阿部さん! もう十分だ! 早く戻ってこい!」
阿部「このウィルス――――対抗――できな――――」
(;´゚ω゚`)「回線を切るぞ!」
阿部「やめろ、まだ、だ――――ク――1人はシス――から切り離――」
阿部「――これで自ユウニ―――ショボン―――アトハ、たノ」
(;´゚ω゚`)「阿部さん! おい! 阿部さん!!」
73
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 23:04:18 ID:/6kuSotM0
(;´ ω `)「阿部さん……嘘だろ、ふざけんな……」
まだ言葉を発するかのように口を開いたまま、阿部が停止した。
彼の疑似体液や電力をコントロールする循環機関が動作していない。
脳の全てを電脳に置き換えている阿部のシステムが、今完全に破壊された事を、ショボンは理解する。
( ・∀・)「ひゅっ……ひゅーっ……」
阿部の停止直後、モララーが糸を切られたようにどさりと倒れ込んだ。
目口鼻からどす黒い血を垂れ流しながら矢継ぎ早に呼吸している。
光の無い目を見つめ、何者だったのかを見出したく、思わずモナーが問うた。
(;´Д`)「お前は一体、誰なんだ」
モララーは僅かに口の端を上げ、がちがちと歯を鳴らして言う。
( ・∀・)「モナー、迷惑をかけて、すまなかっ―――――」
(;´Д`)「モ、モララー……」
紛れもなく、これが初めて彼自身が発した言葉であると、モナーには思えた。
第39話「二つの事件」終
74
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 23:05:56 ID:/6kuSotM0
お久しぶりです。
はい、帰ってきてしまいました。
あんまりだらだら書くのも良くないですけど、ちと書きます
75
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 23:14:37 ID:/6kuSotM0
最後の投下から気づけば6年も経ってました。
当時読んでくださっていた方には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
仕事や他の趣味に没頭している内にブーン系から段々遠ざかってしまったのは
色々理由があったと思います。
当時のブーン系の状況の中で物凄い合作に参加できた事だとか、
前回38話のジョルジュの件とか一つ街狩りでやりたい事が終わってしまったり、
それでブーン系にけっこう満足してしまったっていうのもあったと思います。
しかし離れている時も作品の事をふと思い出す事もありました。
好きだった作品や街狩りを読み返す事もありました。
夢にまでイトーイが出てきたほどです。
気にはなっていたんです、本当に。
お盆休みだからという感じでもなく、気づいたら書いてました。
とりあえず今は続きを書きていきたいという気持ちでいっぱいです。
最後までお付き合いしていただければ幸いです。
ではまた次回の投下で!! フォーレバーイトーイ。
76
:
名無しさん
:2018/08/18(土) 23:23:51 ID:/6kuSotM0
6年ぶりかよ!おかえり!
幸せムードからの落差がw
続き楽しみにしてますよ!
77
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/18(土) 23:36:32 ID:/6kuSotM0
>>29
生きてます
今回から作中に名前が出たキャラクターのみ紹介します
78
:
名無しさん
:2018/08/18(土) 23:43:42 ID:/6kuSotM0
やっぱり死にますすみませんでした
79
:
名無しさん
:2018/08/18(土) 23:49:52 ID:l2gOgpak0
草
乙!スマブンで知ってから気になってたから嬉しい
80
:
名無しさん
:2018/08/18(土) 23:58:12 ID:JoB8Z3sM0
まじか
まじか…!
81
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 00:03:42 ID:Xpdbzjzw0
全くしょうがねぇやつだな。
さぁ読み返すかな
82
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 00:18:35 ID:lAAq3/no0
まじですみません。
自演と思われて結構なんですが、嫁が応援したい言うて書いてたみたいなんすけど同じワイファイ通してたようです。
83
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 00:21:56 ID:xnJaY/f20
おかえりなさい!!
待ってた甲斐がありました!!
84
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 02:15:40 ID:cHTpS.1E0
>>28
('A`)が頼んだのってチョコ味じゃね?
85
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 04:15:50 ID:iIM28y3g0
!?
復活!?
86
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 07:36:45 ID:bTl8XC0Q0
乙
おかえりなさい
87
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 09:57:41 ID:cHTpS.1E0
俺達は何も見てない
88
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 10:45:24 ID:zPSK2cCs0
待ってた
乙
89
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 12:23:24 ID:jOtoNtRY0
おい帰ってきたんだな?続き読めるんだな?だから最初から読み直してくるからな!
次も必ず待ってるからな!
90
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 16:56:24 ID:knq6JpNo0
ウソだろ続き来てる
待ってた おつ
91
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 17:15:32 ID:k8IAeO9M0
待ってたぜ……この時を……!
92
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 17:59:45 ID:qhp65XX60
タカポンニキボカロも投稿するんだよあくしろ
93
:
名無しさん
:2018/08/19(日) 23:35:30 ID:NCUPDhDo0
!!??
94
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 01:28:28 ID:9Ay2et2Y0
自演でも全然気にしないわ お帰り待ってたよ
95
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 17:18:35 ID:Rb63NhbY0
えっ鳥肌やばいんだけどうそまじで??
嬉しいおかえりなさいほんと待ってた…!!
96
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 19:13:38 ID:QjERtjMo0
このくそ自演野郎が!
罰として最低月一投下な
97
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 20:27:35 ID:BVUbB0js0
6年ぶりの連載で顔文字を失った挙句復帰話で機能停止した阿部さん…
98
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 22:17:36 ID:7Nxt/OsY0
ずっと全裸で待ってました
99
:
名無しさん
:2018/08/20(月) 22:19:17 ID:XXIhZ39k0
復活ありがとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
100
:
名無しさん
:2018/08/21(火) 06:54:10 ID:WqGoP/ws0
えええええええええええ復活ううううううう!!!???
今年は復活祭かな?
101
:
名無しさん
:2018/08/21(火) 16:36:00 ID:GpnlOfkQ0
ばかやろうよく戻ってきた!!待ってたぞ!!
102
:
名無しさん
:2018/08/22(水) 12:35:01 ID:kbgP5WSw0
街狩りが戻ってきたから思わず全部見返してきたぜ…
完結するまで乙はしないからな!!
103
:
名無しさん
:2018/08/23(木) 09:05:22 ID:s4eFmAk20
偽りのツイートみて超久々に板見に来たら
マジかよ
104
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 17:52:38 ID:TaDTeS/g0
; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; \
; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; |
; ; ; ;i-‐-‐-´ー-‐-‐ヽ; ; ; ; ; ; ; ;ノ)
; ; ; ;| ヾ; ; ; ; ;ノノ
; ; ; ;| ||ヾi、
; ; ; ;| / ヽ
; ; ; ;| `、
; ; ; / 〉
; ; / /////////////// / うれしいこと
/ _,-‐iて/ ̄ 〈
| ´ _ ヽ´ ヽ 言ってくれるじゃ
| `ー `、
|  ̄ ̄ ̄ ヽ ないの
| \
ヽ
/ / それじゃあ
ー´`>´
/´ とことんよろこばせて
,_,--、 〉
´`丶、 |-´ やるからな
`ヽ
__/ 〜前回のあらすじ〜
\ ´/ ・阿部さんがとまった
\ ヽ ・モララーがしんだ
\ i | ・ブーンがでかいフラグをたてた
`丶、 /
 ̄ ̄ ̄ ̄
105
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 17:52:59 ID:TaDTeS/g0
――― チーム・ディレイク ―――
( ^ω^)B00N-D1:通称ブーン。本名:ホライゾン・ナイトウ。年齢20歳。
サイボーグ「システム・ディレイク」。強力な抗ウィルス細胞を持つ。
↑↓ 故郷であるニュージャージ―の異変を調査する。
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以 アーマーシステム:BLACK DOGⅡが変形しブーンの強化外骨格と化す機能。
ニュージャージー調査はアーマーシステムの完成も目的。
ξ゚⊿゚)ξツン・ディレイク:年齢19歳。
ブーンを強化人間に改造した天才。ブーンとは幼馴染。
ブーンのプロポーズを受ける。
('A`)ドクオ・アーランドソン:年齢21歳。
ブーンの強力な武器や乗り物の開発を担当する。
スタンレー・ラボの真相を暴こうと企む。
( ><)ビロード・ハリス:年齢9歳。
ブーンより強力な抗ウィルス細胞を持つようだ。
106
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 17:53:30 ID:TaDTeS/g0
――― チーム・アルドリッチ ―――
从 ゚∀从ハインリッヒ・アルドリッチ:年齢23歳。チームリーダー。
対セカンド人型戦闘兵器「バトルスーツ」の開発者である。
サード化したジョルジュに遂に恋心を打ち明けて実る。
ミ,, ゚∀゚シジョルジュ・ジグラード:年齢35歳。感染者。
バトルスーツ隊隊長だったが、セカンドウィルス感染後、自我を持つ異形と化す。
ブーンと共にニュージャージーの異変を調査する。
107
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 17:54:00 ID:TaDTeS/g0
――― セントラルの人々 ―――
( ´Д`)モナー・ヴァンヘイレン:年齢不明。
モララーと共に独裁制の「新セントラル議会」を設立し、独裁者となる。
ショボンと共にモララー一派を探る。
(´・ω・`)ショボン・トットマン:年齢25歳。
スラム区のバー、バーボンハウスの店主である量産型の戦闘サイボーグ。
スタンレー・ラボの真相を追う。
阿部さん 阿部高和:28歳。
ディレイク系統の諜報用サイボーグ後期トライアル。
System-Hollowの中枢へハッキングするが、トラップにかかり機能停止する。
<_プ-゚)フ エクスト・プラズマン:10歳
孤児。阿部とは師弟関係を築いていた。
108
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 17:54:30 ID:TaDTeS/g0
――― ラウンジ社 ―――
( ・∀・)モララー・スタンレー:年齢30歳。
バイオテクノロジーの権威「ラウンジ社」の元社員で、優れた科学者だったらしい。
ジョルジュのサード化を強制させた実行犯であり、現在は収監されている。
( 〓 )川 ゚ -゚)Hollow-Soldier(虚ろな兵士):年齢不明。
スタンレー・ラボにより生み出された超人。 オリジナルはクー・ルーレイロ
クローンテクノロジーにより量産され、部隊として編成された。
阿部のハッキングにより一人解放される。
( ^Д^)プギャー・ボンジョヴィ:年齢不明。プギャー総合病院の院長。
フォックスに従事している模様。
彼の使う医療器具がラウンジ社製であるが、社との関係は不明。
爪'ー`)y‐:フォックス・ラウンジ・オズボーン年齢不明。
人類の知恵と可能性に限界を感じ、セカンドウィルスをコントロールしようと考える。
フォックスは意識を持つ感染者を「サード」と名づけ、ジョルジュにサード化を強制させる。
109
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 17:55:27 ID:TaDTeS/g0
No.66が最初に自覚した事は、自分は思考しているという事実であった。
「うっ……」
思わずうめき声をあげながら体を起こす。
はっとして周囲を見渡す。
暗く広大な空間には数多のタンクベッドがあり、
それに繋がれたかのようにクローン兵が微動だにせず収容されている。
No.66は再び無意識にベッドの中に身を潜めた。
No.66はここがHollow-Soldierの収容施設である事を知っている。
しかし、初めて自分自身の意思で頭を使う事に不慣れでいて、
一つずつゆっくりと確認していく必要があった。
110
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 17:55:48 ID:TaDTeS/g0
覚えている事といえばそう多くは無い。
ジョルジュ・ジグラードなる者を強制転化させる作戦は結果成功。
現存するHollo-Soldierのおよそ半数が第3階層の収監所に捕らわれた事。
そして、その後の作戦内容をスーツのストレージに送信された事。
No,66はそこまで思い出すと、ゾッとした感覚に襲われる。
それは初めての体験であり、身を貫くような衝撃であった。
そこでようやくNo,66は、システムから切り離されていると疑い始める。
( 〓 )(状況から察するに目覚めたのは私だけのようだ)
気を取り直し、念じる要領でフェイスカバーにモニターを表示させる。
現状がまず分からなかった。
スーツ、バイタル、それから後頭部に搭載されているSystem-Hollowのステータスをチェック。
いずれもメインシステムとは繋がったままだが、確実にスタンドアローンで動作している事を確認した。
( 〓 )(どういう事だ? いや、これか)
ストレージ内に妙なプログラムが存在する事に、すぐに気づいた。
内容を改める。どうやらメインシステムに対しオンライン状態であると偽装させる物らしい。
詰まるところ、実際には自分は切り離された状態にあるという事だった。
( 〓 )(一体誰が)
111
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 17:56:30 ID:TaDTeS/g0
そう思考した瞬間だった。
一斉に他のHollow-Soldierが体を起こし、全く同じ動作とタイミングでタンクベッドから降りる。
( 〓 )( 〓 )( 〓 )( 〓 )( 〓 )( 〓 )( 〓 )( 〓 )
その気味の悪い規則正しさを見てNo.66は起床時間になっていた事に気づくと、
他の者達に倣うように地面に足をついた。
しかし、無駄な行為であるとすぐに改める。
( 〓 )(命令が無ければこいつらは動けない)
Hollow-Soldierは命令無しでは決して動く事はない。
命令の下に思考し動作する。
ある意味AI以下の単純な機械にさせるために強力な調整を施されている。
同サイバーウェアを搭載させられた中、自律行動が許されたのはモララー、
作戦の都合上僅かなHollow-Soldierに与えるのみだった。
とはいえど、クローン兵の方は作戦終了後すぐに修正される限定的なものである。
112
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 17:57:21 ID:TaDTeS/g0
( 〓 )(まずは信頼出来る者に会わねばならん。
セントラルを守るには、例の計画を防ぐしかない)
System-Hollowの中枢を破壊しようにも、何処にあるのか検討も付かない。
恐らく、自分をこんな人形に作り上げた張本人もそこにいる事だろう。
そう思考すると、沸々と湧き上がる感情の芽生えを覚えた。
※
第3階層は行政区画末端に位置する行刑施設。
厳粛さを示すような佇まいを見せる正門から5つの装甲車が走り抜ける。
中央の車両を囲むように隊列を組み、階層の中心へと向かっている。
朝を迎えていた。
初老のただの人間であるモナーの顔には疲れが見えている。
彼の対面に座するショボンの傍らには、阿部が横たわっていた。
ショボンは腕を組み、心境の伺いようのない複雑な表情で阿部をじっと見ている。
( ´Д`)「今回の件は、すまなかった」
モナーが謝罪するのはこれで何度目になるか分からない。
113
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 17:57:48 ID:TaDTeS/g0
ショボンには気遣う余裕もなく、頷いて見せるのが精いっぱいであった。
(´・ω・`)「阿部さんも覚悟して危険を冒した事だったのでしょう。
おかげで他に敵がいる事を知れたんです」
(´・ω・`)「一度、今後の事を考えましょう」
阿部から目を離してショボンが言った。
( ´Д`)「……分かった。まずは現状を整理しよう。
急行させた捜査アンドロイドからは未だ手掛かりは得られていない」
プギャーの身柄を確保するべく、モナーはアンドロイドを病院とプギャーの自宅に向かわせていた。
逐一報告を受けているが、捜査に使えそうな痕跡は今のところ発見されていない。
病院に存在するのはいずれも看護アンドロイドと患者のみ。
自宅は当然もぬけの殻、PCをアナリストに解析させているが、
診察データ以外に出てくる物はなく、逆にプギャーの勤勉さが伺える始末だ。
しかしながら公開するべきビロードの細胞の研究データはおろか、
病院にあるべき抗ウィルス剤の複製が存在していなかったのである。
これがプギャーの秘匿性をにおわせている為、
モナーのプギャーに対する懐疑心をますます強めた。
114
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 17:58:25 ID:TaDTeS/g0
(´・ω・`)「監視カメラの方もまだ?」
( ´Д`)「記録を追わせているが、どうだろうな。
第5階層のスラム区に潜伏しているのは間違いなさそうだが」
第5階層のスラム区の何処かにモララーを操作していた発信源がある。
阿部の残した手掛かりの中でも最も重要な情報であった。
(´・ω・`)「クローン兵……いや、クー・ルーレイロの情報は?」
そして、阿部がシステムから切り離したというクローン兵。
彼女の身柄と安全の確保も急がれる。
( ´Д`)「今の所それらしき目撃情報は無い」
(´・ω・`)「まだ敵地にいるという事が考えられますね。
なんとか接触を試みたいが……彼女の自律行動に期待する他ありませんね」
現在、第5階層には武装した捜査アンドロイド100体が投入されている。
更にはアクセサーステーションを始めとする交通機関には検問が敷かれている。
万全は期されている。
115
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:00:15 ID:TaDTeS/g0
(´・ω・`)「私は助力を得る為、これからチーム・ディレイクのラボに向かいます。
そもそもスタンレー・ラボのきな臭さに気づいたのはドクオですし、
協力は惜しまんでしょう」
( ´Д`)「分かった。何かあればすぐに連絡してくれたまえ。
私は緊急会議を開く。しばらく第5階層が荒れるやもしれんしな」
こくりとショボンが頷く。
表情を再び複雑に塗りつぶしながら阿部の顔を見る。
(´・ω・`)(エクストの奴をところんよろこばせるんじゃなかったのかよ、阿部さん)
エクスト・プラズマンという孤児と知り合った。
エクストは2週間前の戦いで、ツン、阿部と行動を共にして以来、阿部とは師弟関係を築いていた。
戦い方など教わった試しは無くもっぱらカレー屋の手伝いばかりであったが、
それ以来エクストが孤独を感じる事は無かった。
__
116
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:00:55 ID:TaDTeS/g0
第40話「アノン」
荒廃した街を黒いバイクが走り抜ける。
ブーンは速度制限を促す標識を目に留める素振りも見せずにスピードを上げてゆく。
何者も彼を追う気配は、劈くような男のバイクのエンジン音のみが街を響かせていた。
半壊したエンパイアステートビルを横目に6thアベニューを駆け、
グリニッジヴィレッジのワシントン・スクエア公園を抜けるルートを辿る。
通常、街の様子など気にも留めないが、今日ばかりは両眼のサーチ機能をフルに使っていた。
( ^ω^)「セントラル南方に異常は無し」
あのシンボルがここまで及んでいないかどうか、ブーンは気がかりだった。
右手にはマンハッタン島とニュージャージーを分かつハドソン川がビル群から垣間見える。
川から向こうはブーンにとって故郷であると同時、未知の領域だ。
6年前に脱出して以来、故郷の情報を知れたのは昨日が初めての事である。
117
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:01:58 ID:TaDTeS/g0
例の写真が何度もブーンの頭を過っていた。
あの異常な拷問はシンボルが添えられている事から、一種のモニュメントのように見えた。
故に強い悪意と脅威をブーンは感じずにはいられなかった。
ツンも同様の気持ちであった。彼女はブーンの出発の間際までずっと震えていた。
慣れた地上の街がいつもと違うように見えていた。
自覚のある恐怖心が喉を飢えさせる。ブーンは水を一口だけ含んだ。
『ブーン、念のためミッション内容を確認しておこう』
ドクオの声がブーンの頭の中で流れる。
現地入りまではアルドボールでサポートしてくれる予定だ。
ドクオの声が妙に頼もしく感じた。話し相手の存在を有難く思う。
( ^ω^)「頼むお、ドクオ」
返答しながら調査計画を視界に展開する。
マップが開かれ、その横に予定時刻などをまとめたタスクが並ぶ。
118
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:03:20 ID:TaDTeS/g0
『今回の作戦はニュージャージー湾岸の工場地帯の安全確保と、
同地より3キロ離れた地点に位置する科学センター、その内部の安全確保だ』
まずは湾岸の工場地帯の方から侵入する。
セントラルとの位置関係上、資源確保が最も望まれる場所である為だ。
そこを制圧した後、南下してジョルジュとの合流ポイントである科学センターへ向かう。
( ^ω^)「ドクオ、奴等はどうかお?」
張り詰めた声でドクオに返す。
『まだ本作戦域に奴等の姿は見当たらない。
その手前、ニューヨークとの境ではまずまずの数を確認している。
楽しい歓迎パーティを開催してくれそうだぜ……』
( ^ω^)「……そいつは楽しみだお」
半ば自分を鼓舞するように言った。
通常の感染体だけならば問題は無い。
今回はそれ以上の存在――例えばギコのような――が脅威として考えられなくもなかった。
『で、だ……目的のナノマシンは後日改めて探索する。
センターの電源やらの整備もしなくちゃなんねーし、あくまで今日は安全確保って事で』
119
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:03:56 ID:TaDTeS/g0
( ^ω^)「了解……それにしてもドクオ、本当にナノマシンなんかあるのかお?」
『ナノマシンもしくは、それに関する資材や研究は残ってんだろうよ。
なんせ長距離航行を可能にしたのはナノマシンなんだ。
それにアルドボールで見る限り地上の破壊状況は軽いし』
ラボとしての最終的な目標はナノマシンデータの獲得である。
目的はブーンの耐G性能の強化。
感染体の進化が進んでいる現状、アーマーシステムの継続的な使用が不可欠と考えられた。
( ^ω^)「ナノマシンかお……ナノマシンも、
セカンドウィルスが地球にやって来た原因の一つと言えるお」
宇宙空間での長航路航行は人体に悪影響を及ぼす。
それを防いだのがナノマシンを利用した技術、「ナノバリア」だ。
ナノバリアの実現こそが、遥かなる宇宙の旅を可能にしたと言えた。
『なるほど、そうとも言えるな……うーん、考えもしなかった』
『まあ……こればかりは何とも言えないな。でも今度は奴等に対抗する為の武器になるんだ。
ナノマシンがありゃあ、お前の戦闘力は格段にアップするんだからよ』
遠く離れた『セントラル』にいるドクオに見える訳が無いが、
ブーンは軽く頷いて「だお」と返した。
120
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:04:19 ID:TaDTeS/g0
( ^ω^)「まずは、現地のセカンドの掃討だお」
『我等が『セントラル』にとっちゃ、それが最重要任務だからな。
ジョージ・ワシントン・ブリッジは崩れているし、ニュージャージーとは距離もある……
かといって安全な位置関係とも言えねえからなぁ。
今までマンハッタンに流れてこなかったのが奇跡とも言えるぜ』
再三、あのシンボルがブーンの脳内で蘇る。
あの悪意がマンハッタンにまで及ぶ事だけは許されない。
( ^ω^)「……なら、完全に脅威を絶ってやるまでだお」
ブーンは呟くように言った。
しかし、通信機を介してもなお、ドクオの耳には力強く響いた。
ニューヨークとニュージャージーの州境となっているハドソン・リバーが姿を現した。
( ^ω^)「BLACK DOG!」
同期したバイクに指令を飛ばして飛行モードへ移行させた。
川に突っ込む寸での所でBLACK DOGは変形を完了し、水面すれすれで車体を安定させる。
数メートルの助走の後、車体下のバーニアンを一気に噴射させてBLACK DOGは上昇した。
無骨な湾岸地帯がブーンの目前に、遠方には荒廃した大都市が広がる。
左には腕を失った自由の女神像が、今日も不気味に立ち竦んでいる。
121
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:04:39 ID:TaDTeS/g0
『ナイトウ、6年ぶりの故郷に行く気分はどうかしら?
あ、そうだった、アンタにとっては第二の故郷よね』
川の中腹に差し掛かるとツンからの通信が入った。
少し気分が落ち着いた様子で、ブーンは安心した。
( ^ω^)「ツン、声が聴きたかったお」
『う、うん』
プロポーズを受けてからというものの、ツンはブーンに対して棘を無くしていた。
( ^ω^)「……あのウザったかった煙突すら懐かしく感じるのは不思議だお」
「そうだったわね、懐かしいわ』
( ^ω^)「あ、ツン。ミッションが終わったらプリンストンに寄っていいかお?」
『……いいわよ。いま衛星でチェックしてるけど、安全そうだし。
ただ……セントラルからは遠いし、日が沈む前には帰ってらっしゃい』
最後に付け加えられた言葉は切実な感情が込められたように、ブーンは感じた。
最愛の者を不安にさせる理由などなく、ブーンは「勿論」と返した。
122
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:05:02 ID:TaDTeS/g0
ハドソン川を渡り終える。
視界に表示したモニターに、警告を示す赤色の輝点がぽつぽつと浮かび始めている。
感染体が発する独特な熱量反応だ。
( ^ω^)「さて、そろそろお喋りは止めて戦闘に備えるお」
『ブーン、気をつけろよ』
『ナイトウ、何かあったら緊急連絡を。これで通信を切るわ』
ここでアルドボールでのサポートは終了となった。
静寂と孤独とがブーンを切迫する。
BLACK DOGの飛行モードを終え、コンクリの地面を散らして派手に着陸した。
( ^ω^)「帰ってきた。こんなに近いのに、やっとだお」
目と鼻の先にある故郷の地を踏むのに6年の時を費やした。
ブーンの目前には巨大な工場が、未だ聳え立っていた。
幾重にも張り巡らされたパイプが何本もの灰色の搭を作っている。
傍らには元は綺麗な青色であったろう倉庫が、血を浴びたまま佇んでいる。
鼻につく苦い煙は一帯も昇っていない。あるのは廃工場が醸し出す哀愁のみだ。
ニューヨーク同様、人は消え去り、機能を失ったている。
故郷の変わり果てた姿を間近で見て、ブーンは束の間消失感を味わうのだった。
123
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:05:46 ID:TaDTeS/g0
胸ポケットのジッパーを開けて煙草を取り出している最中、
コンクリの地面を打ち鳴らす幾数の物音が工場内から流れた。
ブーンは小さく息を呑む。
( ^ω^)「さーて、たっぷり来やがったお」
煙草に火をつけて、高ぶる気を落ち着かせようと胸いっぱいに煙を入れた。
バイクの騒音を聞きつけ――意図的にエンジンを吹かせて誘き寄せた――、
異形の生物は倉庫の巨門の隙間からぞろぞろと姿を現した。
身の丈3メートル程の中型の感染体の群れ。
肩から4つ生えた長剣を思わせる鋭い腕と、筋肉が隆起した4つの足が特徴的である。
数はちょうど30体。どれも黒い肌を持ち、個体差はない。
( ^ω^)(サードではない、通常の感染体のようだお)
1cmほど吸った煙草を指でピンと弾き、 煙草が地に落ちるまでの一瞬、
ブーンの赤い機械の両目が感染体のスキャニングを終える。
人と馬の両方を併せ持ったような臓器配列だ。
感染体は口元からだらしなく涎を零し、足の蹄を鳴らして興奮と攻勢を示した。
ブーンがホルダーからBBBladeとBlueMachingunを取り出したと同時、
“黒肌の騎兵”は一斉に雄叫びを冬空にあげて、獲物に飛び掛った。
124
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:06:12 ID:TaDTeS/g0
( ^ω^)「速っ――」
反射的に一体の“騎兵”の首を刎ねた。
危うく敵の剣が自分の喉元を通るところであった。
遅れて心臓が跳ねているのをブーンは感じる。
このセカンド達は仲間を殺された事に対し動揺しなかった。
ウィルスが狂わせた思考のままに食欲と暴力を発散させるべく、
進路上を邪魔する同種の死骸を一瞬で薙いで駆け続ける。
かなりの破壊力を有した敵だとブーンは判断する。
強化ラバーと合成金属で覆われた体でも一溜まりも無いはずだ。
(;^ω^)「ちょっと甘く見てたお、もっと距離を取るお。BLACK DOG」
跳躍してブーンを串刺しにせんとする“騎兵”に投擲されたBBBladeが、その頭部を貫く。
同時にBLACK DOGの操縦部中央のタッチパネルが蒼く輝き、
唸りをあげて急転換、急発進を行う。
空中走行モードに切り替わったBLACK DOGがバーニアンを噴出させて安全圏に躍り出る。
しかし、空中が安全だと思われたのは束の間であった。
“騎兵”はその脚力を駆使して高速のジャンプを繰り、ブーンの位置に瞬きほどの間で到達する。
125
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:06:32 ID:TaDTeS/g0
敵の斬撃をBBBladeで切り払おうとするが、敵の剣には皹すら入らない。
BBBladeは切れ味故に交わる事は出来ない代物である。
それと拮抗する程に“騎兵”の持つ剣は硬かった。
( ;゚ω゚)「嘘だろ――――――うッ」
剣が交わった瞬間、ブーンは感染体の圧倒的な力に押され負けて体勢を崩す。
その状態でもう一撃を受け止めると、バイクごとブーンは地上へ落下を始める。
流転する視界の中、地上から飛んで来た多くのセカンドを捉える――
――この状態でこの数を相手にする事は不可能と判断する。
( ;゚ω゚)(仕方がない! BLACK DOG!!)
BLACK DOGに「アーマーシステム起動」を下す。
BLACK DOGはコクピットを中心にパーツの変形と飛散を開始する。
飛散したパーツ達は蒼色のマーカーをブーンの身体各位に射出しつつ、
セカンドの躍動を遥かに上回る速度で変形を進める。
背まで隠すブーンの金髪の一本一本まで蒼く光り輝く。
“騎兵”の群れはあまりの眩さに瞼を閉じていた。
視覚が回復すると同時に獲物の位置を確認する。
126
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:07:09 ID:TaDTeS/g0
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「行くぞ」
狼を思わせる口先が漏らした声色には冷ややかな殺意が込められていた。
感染体の群れは声を辿り更に上空へ視野を向ける。
バイクの元の姿形をイメージさせる鋭利なフォルムで全身を包むブーンの姿があった。
頭部は「バイクのフロントボディ」を想起せざるを得ない、
ソリッドなフォルムのヘルムで覆われている。
こめかみの辺りから後頭部に伸びた突起は、獲物を追う獰猛な獣の耳のようである。
腰を飾る四つのノズルはまるで異形の尾を思わせる。
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「Sniperを環状に並べガトリングを形成」
両腕部アーマリーからSniper全選択/ガトリング展開/ロックオン完了/
分厚い腕部が展開し、腕に組み込まれていた長く白い銃身が露わになる。
計8本の銃身が高速回転し、給弾・装填・発射・排莢のサイクルが1秒あたり2度繰り返される。
まるでスコールのように抗ウィルスエネルギーが感染体に降り注いだ。
追撃していた者も、地から機を窺っていた者も、次々に蒼色の光に討たれてゆく。
蒼の雨が冷め止むと同時に宙で血肉が散華し、そして地を盛大に汚した。
自分以外のバイタルサインが消えたのを確認すると、ブーンはアーマーを解いた。
127
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:09:08 ID:TaDTeS/g0
走行モードに戻ったBLACK DOGがアスファルトを打ち付けて着地する。
その巨大なコクピット内にブーンは降着した。
ブーンは胸ポケットのタバコの無事を確かめた後、一本咥える。
紫煙で視界を曇らせながらエネルギー残量をチェックする――調査に支障は無い。
抗ウィルス作用に侵された臓物が泡を立てながら血を流し、BLACK DOGの車輪を汚す。
殺意と暴欲が滞留していた場は、まるで時が止まったかのように静まりかえっている。
ブーンの視界のグラフィックは感染体の存在を描こうとしない。
周辺の安全は確保出来た。
( ^ω^)「気になるお。念のため内部を探索してみるお」
薄く空いた巨大なシャッターが手招きにされているような気がして、
ブーンは愛機と共に内部へ進む。
天井に空いた穴から日の光が差し込み、内部は明るい。
ブーンはコンテナや重機が入り組んだ道を作る中を縫って進んだ。
128
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:09:33 ID:TaDTeS/g0
( ^ω^)「かなり腐敗が進んでいるお」
幾つか死骸があった。
母体が死滅しウィルスも活動を終えたらしく、ブーンの視界に熱量は計測されていない。
どれも古い死骸らしく、植物があばら骨の隙間から芽吹いていた。
( ^ω^)「なるほど、ここはアンドロイドの工場だったのかお。
確かにニュージャージーには資材が期待できるお」
どうやらアンドロイド関連の部品や疑似体液を保管していた倉庫のようだ。
しかしながら中身は全て運び出されている。
ニュージャージーの「始まりの日」にでも持ち出されたのだろうかとブーンは考える。
痕跡からそのような推測に脳を使いながら奥へと進む。
BLACK DOGには狭いコンテナの間を抜けて、ひらけた場所に出た。
そこでブーンは胃に冷たい物が落ちたような感覚に襲われた。
(;^ω^)「あれは」
壁に血で描かれた、例のシンボルがあった。
129
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:11:15 ID:TaDTeS/g0
×字にH、D、A、Qの4つのアルファベット。
シンボルの前には血に染まった柱がある。ブーンが写真で見たようなグロテスクな遺体は無い。
他の感染体――例えば先ほどの騎兵にでも喰われたのだろうか。
(;^ω^)「そもそもなんでH、D、A、Qなんだお? 頭文字を取った略称か何かかお?」
バイクから降り、恐る恐るブーンは柱へと近づいて行った。
柱の根本には僅かだが肉が残っていた――新鮮だ。
それと毛髪付きの頭皮。指で血の汚れを落としてやると金色である事が分かった。
拷問に掛けられたのが感染体であったのか定かではないが、
やはり人に近いであろうとブーンは推測する。
そしてシンボルの持ち主も同様にそうであると。
ストレージに保存したデータを画像変換し、腕に巻き付けた端末でジョルジュに送信する。
直後に着信を受ける。ジョルジュだ。
『ブーン、今どこだ? そういえば位置情報を共有していなかったな』
(;^ω^)「あ、忘れてたお」
130
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:12:25 ID:TaDTeS/g0
『予定通りニューポートにいるのか。
なるほど、マンハッタン寄りの沿岸部にもシンボルがあるか……新しい物か?』
( ^ω^)「肉片から断定するに腐敗は全く進んじゃいませんお。かなり新しい物だお』
『やはり……ブーン、朝から調査して分かった事がある』
ジョルジュがそう言いながらブーンの端末にファイルを送信する。
ブーンは通信を介して直接視界内に展開する。
ニュージャージーのマップだ。
マップは赤い目印が加えられている。
(;^ω^)「まさかシンボルの分布図……?」
『ああ。あまり詳しく調査出来てないが、北を調べてみてな。これがドンピシャだ。
北に行くほどシンボルを見かける。いずれも死骸の状態は新しい』
『今はジャージーシティを探索しているが、ここには及んでいない。
どうやら近頃、こんなマネをしながら南下している奴がいるようだ』
(;^ω^)「……ハドソン川を挟んでこんな事が起こっているなんて、マジかお」
『正直寒気がするぜ。イカれた奴がセントラルの傍まで来てやがる』
131
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:12:45 ID:TaDTeS/g0
『ブーン、計画変更だ。こいつを狩ろう』
(;^ω^)「……しかし、そいつが人間という可能性が高いお。その場合は?」
『話が通じる相手だとでも思ってんのか? いいか、よく聞け』
『こいつはギコ・アモットとも違う。頭が元々ぶっ壊れてるとしか思えねえ。
セントラルの近くでクソイカれ野郎は野放しにできねえ』
(;^ω^)「……確かに、そう考えるのが自然ですお」
( ^ω^)「にしてもジョルジュ隊長、ハインさんが心配なんですね」
『……余計な事を口に出すんじゃねえ。
とにかく一旦合流しよう。狩りなら俺の感覚よりお前のセンサーのが役に立ちそうだ……っと、
間違っても俺を撃つんじゃねえぞ?』
( ^ω^)「大丈夫ですお。ジョルジュ隊長、腕に端末は巻き付けてますね?
そこからバイタルサインをキャッチしてマークしてますから、誤射には及ばずですお」
『何から何まで便利なこった……では通信を切る。慎重にな』
( ^ω^)「了解。ジョルジュ隊長も気をつけて」
132
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:13:28 ID:TaDTeS/g0
通信を終えたブーンはタバコに火をつけた。
同時に天井から差し込んでいた光が途絶える。
見上げてみると分厚い灰色の雲が空を覆っていた。
遠くでは雷鳴が唸り声をあげていた。
情報処理システムに天気を訪ねる――一帯は雷雨で荒れると回答。
次第に倉庫内に暗闇が立ち込めてゆく。
タバコの火種が静かに息吹いて揺らめいた。
「セントラルに近づいた事を後悔させてやる」
ブーンは吸い終えたタバコを思い切り指で弾いてバラバラに飛散させた。
( ^ω^)「任務を続行するお、BLACK DOG」
ブーンとジョルジュの地上調査から「狩り」へと作戦は移行した。
ジョルジュと合流する為、南に位置するリバティ科学センターへブーンは向かう。
雷の音が近づいていた。
__
133
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:14:55 ID:TaDTeS/g0
ミ,, ゚∀゚シ「ごっそうさん」
指先の長い爪を縮ませて――厳密には腕の中に収納――、
ジョルジュは腰バッグから布切れを取り、汚れた口元を拭う。
本日はこれで仕留めた獲物は3匹目だった。
ジョルジュはサード化してから食事の量が随分と増えていた。
単純に飢えを満たす為でもある。
しかし弱肉強食の地上世界を生きる事において、獲物を喰らう事が何より強くなる近道であった。
背後には腹を割かれた巨大な怪鳥が臓器と脂肪を地面に広げ、びくびくと痙攣して横たわっている。
黒い翼はもぎとられ、傍らで風を受けている。
頭部は幾多もの爪痕が深く刻まれており、その奇怪な原型は留めていない。
原型といえば、ジョルジュを包んでいた拘束衣も、かつての面影は無い。
ジョルジュを散々煩わせた楕円形のポッドは未だ右腕に残っているが、
その内容物である抗ウィルス剤は2週間前に使い切っている上、
コンピュータで感染体を制御&監視していた拘束衣のシステムも殆ど壊滅していた。
ミ,, ゚∀゚シ「ったく、我ながら化物だな……」
頑丈な特殊ラバーを突き破って生まれた翼が、黒い羽根で覆われてゆく。
筋繊維にも変化があり、胸元と背中の筋肉が次第に隆起してゆく。
今しがた採った細胞から遺伝子情報を継承した事を、ジョルジュは本能的に理解した。
134
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:16:02 ID:TaDTeS/g0
ミ,, ゚∀゚シ「……あとは要らねえよ」
ジョルジュは言い聞かせるように腹をさする。
一方で尾は骨身のまま肉や皮膚を覆う事は無く、鋭さを振りまいている。
愛着の湧いてきた爪と同様に、このままで良いと思っていた。
生きる上で必要な攻撃性と防御性を、ジョルジュは食事を通して感覚的に得ていた。
本を読んで知恵を得、それを使う事と同様の感覚であった。
ミ,, ゚∀゚シ「合流地点に向かおう」
ジョルジュは緑生い茂る崩壊したジャージーシティを東に進んでゆく。
ハドソン川から離れるほどニュージャージーは崩壊していた。
無傷でいられた建物など一つもない。
まるでビルでドミノ倒しでも行われたのか、高層アパートは軒並み傾いている。
足場は悪い。
アスファルトの地面は大きく亀裂している。
まるで谷のように深く、どこまでも伸びているようだ。
地面の隆起が持ち上げた車は、寸での所で谷底への落下を免れている。
何が起こったのか想像を膨らませながらジョルジュは黙々と歩く。
135
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:18:01 ID:TaDTeS/g0
バトルスーツで街を往くのと比べ、リアリティのようなものをジョルジュは覚える。
自分の目や手で触れるのではやはり違った。
映画の舞台さながらの圧倒的な光景には中々慣れなかった。
例えばアパートの一室でさえ当時の歴史が残っているのではと、度々ジョルジュは好奇心をくすぐられた。
地上で過ごす日々はそんな冒険の連続だった。
ニュージャージー東部は比較的セカンドの数が少ないようだった。
感染体が活発になるのは日が沈んでからだが、それにしても生物の気配が少ない。
出会ったのは先ほど喰らった大鳥くらいなものであった。
ミ,, ゚∀゚シ
灰色の雲以外動く物は何一つ無い。
自分ただ一人に残された都市のようだった。
通常であれば潜むその息遣いに気づいていたかもしれない。
136
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:18:53 ID:TaDTeS/g0
「動くな」
水一つ打たぬ静寂がジョルジュに気の緩みを生み出してしまったのだ。
137
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:19:35 ID:TaDTeS/g0
(;´・_ゝ・`)
(#゚;;-゚)
ミ; ゚∀゚シ「……サードか」
崩壊したビルに潜んでいた者が二人、ジョルジュの左右を挟む形で現れた。
咄嗟に身構え、首を振って相手を伺う。
どちらも、まさに半人半獣であった。
(;´・_ゝ・`)「動くな! 妙な動きをすれば容赦なく殺す!」
鼻と耳にピアスを通している男が、その場に声を響かせて銃口をギラつかせた。
その男は元々サイボーグであった事を胸部や四肢に残すサイバネティクスが証明している。
しかし、装甲を割って飛び出している牛に似た角と尾が、紛れもない「サード」である事を示していた。
(#゚;;-゚)「この銃、撃たれると、いたいいよ。死んじゃうかもよ」
男に反し、たどたどしく語るもう一方は女であった。
声色、それからボロボロのシャツに隠れた胸の膨らみから女だと判別出来よう。
肌は爬虫類を思わせるぎらぎらとした鱗で覆われている。
女の方がより鋭い尾を武器として得ている。
138
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:20:15 ID:TaDTeS/g0
ミ; ゚∀゚シ「……分かった」
そのどちらもサイボーグ用のエネルギー式のサブ機関銃を持っている。
女の脅し方から察して、抗ウィルスエネルギーを積んでいる可能性が否めず、
ジョルジュは要求を呑むしかなかった。
(;´・_ゝ・`)「やはり“Awaker”か。おい、何処から来た? 一人か?」
ミ; ゚∀゚シ(アウェイカー……?)
Awaker――アウェイカー、覚醒したもの。そのように男はジョルジュを呼んだ。
その独特な呼称を知り、ジョルジュは他に文化圏のようなものがあるのだと想像を膨らませる。
そんな思考に身を委ねる余裕があった。
少なくとも男の方は荒事に不慣れな様子だった。
ミ; ゚∀゚シ「そう言うお前らこそ誰だ? 何処から来た?」
ジョルジュは思い切って揺さぶりを掛ける。もっと情報を得たかった。
139
:
◆jVEgVW6U6s
:2018/08/24(金) 18:20:35 ID:TaDTeS/g0
(;´・_ゝ・`)「こちらの質問に答えろ! 見たところ知らない顔だ。
お前は“ハングドランク”の軍門に下ったんじゃないのか?」
ミ; ゚∀゚シ「ハングドランク……? 何だか知らねえが、俺は一人だ」
また聞きなれない固有名詞であった。
人物なのか、場所なのか、コミュニティの名称なのか。
ジョルジュには見当もつかなかった。
(#゚;;-゚)「本当に? この辺に一人で住んでるの?」
まるで子供のような話し方で女が質問する。
ジョルジュは両腕を広げながら返す。
ミ; ゚∀゚シ「そうだよ。この辺の高層アパート全部俺の家だよ、べっぴんさん。
お近づきに一軒プレゼントするからよ、その銃を下ろしてくれやしないかい?」
(#゚;;-゚)
(#゚;;-゚)「デミタァァァァス! ねえ聞いた? 私、べっぴんさんだって」
黙ってろディ!と、デミタスと呼ばれた男の声が通りに響き渡る。
ディと呼ばれた鱗肌の女が頬を膨らませている。
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