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('、`*川魔女の指先のようです
5
:
名無しさん
:2017/12/15(金) 21:37:30 ID:oTITfu5c0
そして鋼鉄の船体が速度を落とし、いざ上陸となった時の緊張感。
心臓が張り裂けそうになり、鼓動で体が揺れた。
固い椅子に腰をおろしていながらも、少しも休んでいる気にならなかった。
隊長の号令で腰を持ち上げると、全員がそう訓練されていないにもかかわらず腰を屈めていた。
雷の音に似た砲声と銃声が、彼らの体に原初的な防衛反応を強いたのだ。
上官の罵る声に気圧され、船から飛び出す兵士達。
海岸の向かい側に聳え立つ崖に設置された機銃が火を噴くたびに悲鳴が上がり、自分達は敵の側面から接近しているのではなく正面から突撃する形になっているのだと、その時初めて知った。
後は皆、同じ気持ちと同じ思考によって体が動いていた。
安全な場所を目指して走る、ただそれだけだ。
目の前にいた友人が電動鋸で切り裂かれた様に、体の一部を失って浜に倒れる。
その体を踏み越え、塹壕を目指してただ走る。
迫撃砲が砂浜に直撃し、砂と死体と臓物を上空に舞い上げる。
曳光弾の軌跡が流れ星のように味方に降り注ぐ。
必死の思いで辿り着いた塹壕には勇猛果敢な兵士は一人もおらず、皆同じように体を丸め、銃弾と砲弾から身を守ろうとしていた。
一緒に上陸したはずの上官は手首だけとなり、その後に作戦指揮を担当するはずだった人間は海に沈んでいた。
戦場は混沌を極め、上陸してから敵軍を叩くという作戦は最初から破たんし、どれだけ味方兵士を助けられるかという戦争が始まった。
瞼を上げると、そこには死体も敵もいない。
長閑な景色が広がり、戦争は遠い過去だという事を思い出させてくれる。
もう、戦争は終わった。
これ以上友人を鉛弾で失うこともなく、自分に鉛弾が飛んでくることもない。
平和の尊さが身に沁みてよく分かる。
安全の中に感じる平穏こそが平和なのだと、八六歳になった今ようやく悟ることが出来た。
生きているだけで幸せなのだ。
立派な家も豪華な車も美しい妻がいなくても、幸せを感じ取ることは出来る。
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