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('、`*川魔女の指先のようです
4
:
名無しさん
:2017/12/15(金) 21:35:55 ID:oTITfu5c0
(,,´Д`)「あぁ、良い香りだ」
この瞬間が、この上なく幸せな瞬間だ。
一日の始まりは夜明けであり、一日の始まりは自らが生きていることをこの上なく確かに自覚させてくれる。
冷たい風に目を細め、ギコはコートの襟を立てた。
風にあおられた木々がざわめく音は潮騒に似ており、彼の生まれ故郷であるジュスティアの海辺を連想させた。
コーヒーを一口飲み、魔法瓶を傍らに置く。
(,,´Д`)「ふぅ…… 美味い……」
朝日に照らされた美しい水面、ウミネコの鳴き声、遠くに見える漁船、鼻孔に残る潮の香。
全てが懐かしい故郷。
サーフィンに命を懸け、バイクでアウトバーンを爆走し、
毎日のように友人達と酒を飲んで夜遅くまで楽しんだ若かりし日々に思いを馳せる。
狩猟用のライフルを担いで山に入り、鹿狩りをしたあの日。
クラブで一夜限りの関係を持った名も知らぬ若い娘。
輝いていた青春時代は、潮騒と共にあった。
潮の香こそないが、幻の潮騒は彼の耳に残されたまま。
静かに目を閉じ、思う。
思い出すのは故郷の香りではなく、一〇代の頃に戦場で散った仲間の事だ。
上陸艇に乗り込み、波に揺られた悪天候の初日。
船内に入り込む冷たい海水と船酔いのために嘔吐した仲間の吐しゃ物の酸っぱい臭いは、今でも鮮明に思い出すことが出来る。
最悪の船内だった。
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