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('、`*川魔女の指先のようです
262
:
名無しさん
:2018/01/08(月) 07:28:54 ID:WgoVE2mI0
第七章 【魔女と呼ばれた女】
八月一二日、午前一〇時。
嵐が去り、ティンカーベルの上には透き通るような青空が広がっている。
連日の争いの空気など微塵も感じさせない空。
雲一つない空に、蝉達の合唱が響く。
グルーバー島の朝市にはいつもの半分以下の客しか集まっておらず、商品の数も半分以下だった。
新鮮な魚も食欲をそそるはずの料理の香りも、全てが人々の生存本能の前には霞んでしまうのだ。
戦争が本格的に始まってから島民の笑顔は消え、流れ弾に怯え続けていた。
砲兵隊、そして戦車隊が山に向けて大量の砲弾を撃ち込んだ結果、山肌が抉れ、小規模な山火事まで起きていた。
民間人の死傷者が出ていないのが奇跡だった。
街中には武装した迷彩服姿の兵士達が二人一組で哨戒する姿が見られ、ホテルなどの宿泊施設に立ち寄っては人相書きを見せて情報を集めていた。
協力する民間人もいるが、中には非協力的な人間もいた。
島民としてはすぐにでもこの事態を終わらせてほしい気持ちが強く、イルトリアとジュスティア、どちらがこの島の漁業を守るのかはさほど大きな問題ではなかった。
それよりも平穏な生活を取り戻したい気持ちが強く表れていた。
その苛立ちをジュスティア軍の人間にぶつけたい民間人は、しかし、軍人が持つライフルを前にしては態度だけでしかその不満を表現できなかった。
テックス・バックブラインドは砕けたガラス窓の向こうに見える街を、忌々しげな表情で眺めていた。
昨日、彼の理解者であり協力者であったアルバトロス・ミュニックとカリオストロ・イミテーションが殺された。
二人とも強化外骨格で武装し、万全の状態にあった。
相手が一人であろうとも、女子供であろうとも、手負いであろうとも、決して油断をしない冷徹な人間だった。
彼は二人を信頼していた。
二人は何度も不可能と思える任務を成功させ、ジュスティア陸軍の輝かしい栄光に貢献してきた。
そんな二人だからこそ彼はこの舞台に招き入れ、力を借りた。
強化外骨格と狙撃銃の組み合わせは抜群の成果を導き出した。
密漁船、基地の襲撃。
超遠距離からの精密な狙撃を完遂させ、残るは邪魔なイルトリア人の始末だけだった。
たった一人の狙撃手。
その存在が、何もかもを狂わせた。
余計な死者が増え、大勢の部下が死体袋に詰めて生まれ故郷に送られた。
ジュスティア側にとっては最小限の犠牲で終わらせるはずが、結果的にはイルトリア軍人よりも多くの死体を生むこととなった。
それでも、二人は最高の狙撃手であり続けた。
存在を悟られることなく、そして、余計な画策を働いた人間の始末まで請け負ってくれたのだ。
テックスにとって二人は欠かすことの出来ない大切なパズルの一片だった。
その二人が、生身の人間に殺された。
アルバトロスは鐘楼で、カリオストロは下水道で死んだ。
強化外骨格を身に纏ったまま、撃ち殺されたのだ。
対強化外骨格用の徹甲弾の存在は聞いていたが、それに対抗するために追加装甲を装備したアルバトロスは、強化外骨格の弱点であるバッテリーを狙われ、装甲の薄いカメラを撃ち抜かれた。
カリオストロは下水道の流れに身を隠し、汚水の中から狙撃を実行した。
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