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('、`*川魔女の指先のようです

219名無しさん:2018/01/07(日) 21:32:24 ID:9ft78oqo0
目頭を押さえ、ヒートは熟考する。

裏切り者の可能性を持つ男は、ペニーの存在を疎ましく思うと同時に、重要な駒として見ているに違いない。
確かにペニー一人がいれば戦場を作り上げるのは不可能ではないし、それは現に実証されている。
逆にそれがヒートにとって、不可解な点でもあった。
メンツを重んじるジュスティアが一人の兵士のために砲兵隊や戦車隊を派遣するだろうか。
そこまで切羽詰っているのか、それともそう思わされているのか。

いずれにしても、このまま踊らされ続けるのは海兵隊としては気に入らない。
影法師がいるのなら、せめてペニーのためにその影法師の邪魔をするのが上官としてヒートに出来る唯一の事だ。
出来る事が一つなら、それを徹底的にやるしかない。
ヒートは電話に手を伸ばし、影法師の邪魔を始めることにした。

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時を同じくして、遠く離れたティンカーベルにあるホテルの一室で、ペニサス・ノースフェイスは同じモーニングスター新聞の一面を眺めながら、
マグカップに注いだたっぷりの紅茶と山盛りのサラダ、そしてバターを塗ったトーストの朝食を摂っていた。
朝刊に昨夜の事が大々的に書かれているのを見て、遂にジュスティアの情報統制が崩れたのだと理解し、それは軍そのものの影響力が低下していることを示唆していた。
つまり、昨夜のペニーの戦闘は無意味ではなく、立派に相手の混乱を誘発して弱点を晒させるという大きな成果を生み出したのである。
だがこの戦果は彼女にとって、十分な物ではなかった。

もっと大きくしなければ、ジュスティア軍内部の裏切り者が反応をしない。
更に多くの血と屍を生み出し、動かざるを得ない状況を作り出すためには、大胆な襲撃が必要になる。
ペニーはライフルケースを背負い、ホテルから出て行った。
その鳶色の瞳は固い決意でぎらつき、煉獄の炎を彷彿とさせた。

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朝刊の内容も衝撃的だったが、昨夜にこうむった全体の被害の方が衝撃的だった。

重迫撃砲が二門、砲弾三〇発が失われ、死傷者は二九人。
山の南側だけでなく、北側にも撃ち込んだ砲弾の数は一〇〇発以上。
得られた成果はゼロ。
作戦指揮官である陸軍大将テックス・バックブラインドは網を張って狙撃手一人を戦場に引きずり込んだつもりが、逆に網を食い破られるという屈辱を味わうことになった。
妙な遠慮をしてしまったのがそもそも原因だった。
次の作戦では一切の遠慮はしないとテックスは固く誓った。

情報提供者から得た狙撃手の名前、姿を兵士達に共有し、市街地に隠れ潜んでいるペニサス・ノースフェイスという魔女を狩り立て、火炙りにしてそれをイルトリアの愚か者共に見せつけてやるのだ。
然る後、イルトリアとジュスティアはこんな見せかけだけの戦争ではなく、本物の戦争が始まる事だろう。
望むところだった。
軍人として生きてきて、戦争を嫌いになったことなど一度もない。
戦争こそが軍人にとっての生き場所であり死に場所なのだ。
ジュスティア陸軍の優位性を世界に知らしめ、秩序の守護者としての名を取り戻すのだ。

内線電話を取り、短縮番号を押した。


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