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('、`*川魔女の指先のようです

21名無しさん:2017/12/17(日) 08:02:35 ID:YAAXsb060
臆病者、勇敢な者、姦計を企てる者、利害によって動く者など、戦場では人間の本質に触れることが非常に多かったため、
どれだけ豪胆を称する者でもひとたび鉛弾がヘルメットを掠めれば、たちどころに臆病な本性が露わになる瞬間を嫌と言うほど見てきた。
特に恐れを知らない新兵は必死に感情を隠し、戦場で一気にその感情を爆発させ、早死にした。
その姿を幾度も目撃し、幾度も彼らを宥めてきた経験があるからこそ、ペニーはこれを特技として身につけることが出来たのである。

今こうして話しかけている男は自分を大きく見せることで、異性に対してアピールする類の人間なのはまず間違いない。
戦場で勇者を気取る人間に多い人種である。

('、`*川「だから悪いですけど、遠慮しておきます」

これ以上の会話を望まないという意向を声に込めつつ、ペニーは半月刀のように細めた目で男を見た。
人が人を見るという行為には、いくつもの意味がある。
しかし、今回ペニーが男を見た意味は、彼に対しての警告と不快感の表れであった。
一瞥された男は鳶色の瞳の奥に殺意の色を見つけ、本能的に後退した。

彼の中に動物的な本能が残っていた事に、ペニーは安心した。
力づくで押し退けずに済んだ。

('、`*川「失礼するわ」

ペニーは臆した男達の間を悠々とすり抜け、ツーリングを再開することにした。
男達の姿が小さくなり、バックミラーの点となっても誰も彼女の後を追ってくる者はいなかった。

山頂から少し島の北側に下ると、そこにはキャンプサイトがある。
ハイキング客もツーリング客も幅広く利用出来る場所だが、特別な施設があるわけではなく、炊事場とトイレぐらいがあるだけだ。
逆にその不便さが客には好評だった。
折角文明から離れるためにキャンプをするのに、文明が生んだ便利な施設に囲まれていては元も子もない。

よく言えば自然のまま、悪く言えば貧相なキャンプサイトに到着したペニーは、さっそくテントを張ることにした。
利用客は彼女を含めてせいぜい一〇人程度しかいなかった。
夕方になれば更に人が増えるだろう。
人が増えてからでは設営は面倒になるので、まずは芝生の上に停めたバイクからパニアを分離させ、そこから二人用の小さなドームテントを取り出した。

軽量のフレームと防水布のテントは非常に小さいものの、一人で使う分には不自由しない。
テントの中で立ち上がることがなければ何も問題はないのだ。
続いてクッションの役割も果たす銀色のマットを床に敷き、薄手のシュラフをその上に放る。
マットがなければ朝露でシュラフが濡れ、乾燥させる時に時間がかかってしまう。

調理器具など他のキャンプ用具一式をテント内に残し、ペニーは再びバイクに跨った。
キャンプサイトでの窃盗被害にあうのは車が主であり、テント内に侵入しての犯行はまず起こりえない。
民家と異なり、テントには誰がいつ戻って来るのか、誰の目があるのか全く分からないのだ。
それに、盗まれたところでペニーはあまり困らないように訓練を受けているため、全く気にすることもない。

一泊分の食料を買い求めるため、バイクは来た道を戻って街へと向かう。
ツーリングに於いて過積載は禁物だ。
バイクが持つ機動性を損なうだけでなく、食糧そのものの鮮度に重大な被害をもたらす可能性がある。
一方で、ペニーは買い物が好きだった。
新たな食品、異なる価格、圧倒的な費用対効果をじかに味わい、その中からその日の献立を組み立てるのは料理をする者の特権であり、醍醐味でもある。


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