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('、`*川魔女の指先のようです
18
:
名無しさん
:2017/12/17(日) 07:55:28 ID:YAAXsb060
彼女の出身地であるイルトリアはヨルロッパ地方の西に位置し、比類のない軍事力を有する街として世界に知られている。
住民の銃保有率は八割――小学生以上のほぼ全員が持っている計算――を超え、何より軍への就職率は世界一である事から武人の都の名で呼ばれ、恐れられている。
彼女もまた軍人の一人として海兵隊に所属しており、今日は久しぶりの休暇を使って遠く離れたこの避暑地を訪れていたのであった。
穏やかな昼下がりの空気は、山頂に近づくにつれて冷えたものになり、肌寒さすら覚える。
ペニーの駆るバイクは滑らかにカーブを曲がり、山の奥へと進んでいた。
カモメが風に乗って並走し、やがて別れを惜しむ様子も見せずに旋回してどこかへと去る。
それを見送ると、水平線の先に浮かぶ小さな雲の群れに心が動いた。
人間とは不思議な生き物で、あり得ないと分かっていながらも多くの可能性を一瞬で連想し、それに胸を痛める事がある。
例えば、空の青に溶けて消えそうな雲の向こうの世界を勝手に創り上げ、雲の流れ行く先、雲の下の世界、そして雲がこれから作り上げる形を想像するのだ。
雲の輪郭が鮮明であればあるだけ、その思いは強くなってしまう。
雲の中に街があるのではないだろうか。
雲の下には見たことのない美しい世界があるのではないだろうか。
雲が成長し、巨大な積乱雲となって更に心躍らせてくれるのではないだろうかなど、実にささやかな想像が働く。
それはまるで意味のない行為だ。
何の生産性もなく、これといった理由もなく起こる不思議な現象だ。
しかし、その想いは空を飛ぶ発明を生み出し、空を越えた宇宙へと到達する発明まで作り出してしまった。
今ではその両方の発明が失われているが、文献に残された人類の空への執着心は称賛に値する。
空を見上げて心和ませ、そこに思いを馳せる不完全な生物であるが故に、
群青色からスカイブルーへと至る空の見事なグラデーションを見せつけられてしまえば、訓練された軍人といえども心を動かさざるを得ないのだ。
並木道に差し掛かり、ペニーの視線は正面に戻った。
木々が作り出した自然のトンネルには、木漏れ日が降り注いで緑に輝く天井を生み出している。
山肌から湧水が漏れ出ているそばを通り過ぎると、ひやりとした空気に思わず頬が緩む。
緩やかに続く勾配を上り、徐々に影が濃くなっていく。
ギアを一つ落とし、より傾斜の大きな坂道に備える。
連続した急なカーブをバイクと共に体を傾けながら丁寧に曲がり抜け、景色を楽しみながら山道を駆ける。
視線は常に自分の進行方向の先に向けられ、両脚はタンクをしっかりと挟みつつも、状況に応じて片側から押すようにして、車体を傾けた。
カーブに気を取られて速度が落ちないよう、エンジンの回転音を基に速度の維持を行う。
ほどなくして山頂に設けられた休憩施設〝ロード・ステーション(道の駅)〟が見えてきたため、立ち寄ることにした。
運転の間の小休憩、もしくはこの施設で腹ごなしをする目的で大勢の人間で賑わいを見せるロード・ステーションの駐輪場は非常に広く、優に一〇〇台近くのバイクが駐車出来る敷地があった。
ペニーはバイクを出しやすい端の方に駐車し、ヘルメットを抱えてフードコートに足を向けた。
ファーストフードから地元の名産品まで幅広く取り扱うフードコートには、たっぷりと香辛料を使った東洋の食事も並んでいた。
車やバイクで訪れる観光客の多い地域では、利用客の数と頻度を考えて休憩施設に力を入れることが多い。
飲食店は勿論の事、シャワー室や仮眠室が施設の一つとして設計されている事まである。
ペニーは喫茶店に立ち寄って具が沢山詰まったサンドイッチを注文することにした。
('、`*川「これをお願いします」
( '-')「かしこまりました」
間もなく、ペニーの注文した品がトレイに載せて渡された。
('、`*川「どうも」
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