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('、`*川魔女の指先のようです

153名無しさん:2017/12/25(月) 23:18:02 ID:ZLy5QeVs0
ペニーはカーゴパンツのポケットの一つから手帳を取り出し、それを手渡した。
受け取った兵士がそれを見る。
それで十分だった。
視線と注意を逸らせれば、二人を殺すには十分だった。

電光石火の速度で抜き放ったサプレッサー付きのグロックが魔法のようにペニーの手に現れ、手帳に目を向けていた男の頭を銃腔が睨んだ。
物言わぬ銃腔が火を噴き、男の脳漿を吹き飛ばした。
事態に気付いたもう一人が銃を構える前に、ペニーは第二射を男の顔に撃ち込み、三発目を喉に当てた。
彼らが最期に残した言葉は、言葉にならないうめき声のような物だった。

頭の一部を失い、糸が切れた人形のように力なく崩折れる男の手から手帳を取り返し、全てが終わった。
この間、実に一秒半。
機能を失った検問を通り、ペニーはグルーバー島に戻ることが出来た。

しかし。

ペニーの背後からビームライトを点けたハンヴィーが猛スピードで迫ってきたのを見て、彼女は思わず目を見開いて驚愕した。
検問所に撃ち漏らしはいなかったはずだ。
となると、ペニーの動きを予想して動く別の部隊がいたという事になる。
これは完全に予想外だった。

一般兵ではないはずだ。
つまり、指揮から外れた別の部隊。
遊撃隊とも言うべき部隊が山に入っていたのだ。
それに選ばれるのは技量と経験がある人間。
間違いなく、厄介な相手だ。

予想外ではあったが、想定の範囲内ではあった。
必ず成功する作戦がないことは、百戦錬磨のペニーはよく知っている。
不都合が起こることも想定して作戦を組み立て、実行に移す。

ギアを更に上げ、追跡を振り切る事よりも自分にとって都合のいい場所に追い込むことを考えた。
ハンヴィーでは走ることの出来ない場所に誘導し、乗っている人間を降ろさせることが出来れば、
防弾使用のフロントガラスで護られたハンヴィーの優位性は完全に消失し、少なくとも有利な位置を先に手に入れることの出来るペニーに勝算がある。
市街地での戦闘は避けた方がいいだろう。

______________________∧,、___
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ハンヴィーに乗る陸軍所属のパレンティ・シーカーヘッドとヒッキー・キンドルは自分達の勘の良さに驚くと同時に、相手の技量に戦慄していた。
一撃離脱、一撃必殺を旨とする狙撃手としての仕事を見事に果たした腕利きの人間だ。

「見つけたぞ!」

ハンドを握るヒッキーに、ルーフから顔を出して機関銃を構えるパレンティが報告した。
彼らの眼前には赤いテールランプの尾を残して走るバイクが一台。
検問所を突破したイルトリアの狙撃手が乗るバイクは、グルーバー島の市街地へと逃げ込もうとしている。

イルトリア基地を襲った狙撃チームは山狩りの際に、狙撃手ならではの考えで行動をするようにと言われ、パレンティとヒッキーは本部の近くから山を見上げ、部隊の動きを見ていた。
本部の守りが手薄になってしまえば何らかの問題が生じかねないと危惧しての行動だったが、後にそれが大きな手柄を手に入れ、危惧が現実のものとなってしまった。


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