したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

('、`*川魔女の指先のようです

145名無しさん:2017/12/25(月) 23:04:45 ID:ZLy5QeVs0
そして、石の下に枝を二本、穴の上をまたぐ形で置く。
その上に大きな葉を乗せ、そこに一発の銃弾を乗せた。
葉のフライパンで銃弾を炒る様な奇妙な装置を作り上げ、ペニーはその場から駆け出した。

稜線から体を出さないように気を付け、島の西を目指す。
島の西には南の麓まで続く清流がある。
その清流に沿って進めば、自ずと敵の拠点にまで辿り着ける。
川の水流がペニーの跫音を隠してくれるため、絶好の奇襲ルートだった。

狙いは全滅ではなく、指揮官の殺害による指揮系統の麻痺。
全滅させるのはその後でいい。

落ち葉を踏みつける音が森に吸い込まれ、風の生み出したそれと同化していく。
闇の中でも駆け抜ける速度は堕ちていない。
生い茂る木々の間を難なく走り抜けるために、ペニーは目を暗闇に順応させてあった。
月光だけでも十分な光源となる今、ペニーは日中と同じ感覚で森を走ることが出来る。

違いは色彩が鮮やかでない事だけ。
モノクロの世界の中、浮かび上がる木々の輪郭や木の根のシルエットは分かり易く、それ故に躱すのは簡単だった。
夜行性の肉食獣を彷彿とさせるしなやかな動きで駆ける彼女の姿を見咎めるのは、物言わぬ動植物だけだ。
枝葉の間から降り注ぐ月光が光の柱となって幻想的な景色を作り出し、海底に降り注ぐ陽光を連想させる。

黒いマウンテンパーカーとオリーブドライのカーゴパンツという格好は、軍用の戦闘服の代用品だった。
マウンテンパーカーは保温性と防水性、そして透湿性が高く、極めて軽量で頑丈な点が特徴である。
激しい運動に支障をきたすこともなく、まさに理想的な上着と言えた。
カーゴパンツについてはチャックやボタンで留めることの出来るポケットが複数あり、弾倉を多く携行出来るからである。

弾の数は命を持たせるための時間と言い換えてもいい。
現代戦に於いてナイフが活躍する場面は減り、拳銃がその地位を獲得している。
だがいくら銃が優れた武器だとは言っても、弾がなければただの鈍器でしかない。
銃を鈍器としてではなく、本来の飛び道具として使うのであれば、弾は必要不可欠だ。

当然の理屈ではあるが弾は無限ではなく、ナイフのように研石があればどうにかなるような物ではない。
現地調達も必ず成功するわけではないし、当然、弾の中には不良品もある。
一〇〇人の敵に対して同じ弾数では足りない。
イルトリアではそのことを徹底して教え込まれ、拳銃の弾よりもライフルの弾を多く持つようにと訓練を受けている。

主に使われている拳銃の弾種は限られており、現地調達は比較的容易だ。
対してライフル弾はその種類が多く、仮に殺した敵から弾を奪っても自軍では使えないことが多々ある。

少し開けた場所に出て来た時、ペニーはその足を止めた。
周囲を見渡し、夜光塗料で浮かび上がる腕時計の針を見る。
一分弱で数百メートルを移動したことを確認し、再び地面を掘り始めた。
先ほどと同じ要領で火を起こし。

銃弾を葉に乗せようとした正にその時、ペニーが最初に仕掛けた装置がその役割を果たす時を迎えた。
熱され、乾燥した葉は燃え、そしてその上に乗っていた銃弾と共に火の中に崩れ落ちる。
そして、熱された銃弾の火薬がさく裂する。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板