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('、`*川魔女の指先のようです

140名無しさん:2017/12/25(月) 23:00:15 ID:ZLy5QeVs0
『橋を封鎖しろ!今すぐに!』

バンブー島から外部に逃げるには、二つの橋を使う必要がある。
一つはジュスティアに通じる大きな橋――すでに封鎖済み――と、グルーバー島に通じる橋だ。
この橋を封鎖すれば、敵はバンブー島に閉じ込められる。
いくら正体不明の人間でも、四方を囲まれた狩場に誘い込まれれば間違いなく捕まる。

山で索敵をしていた五〇人がその命令に従い、一気に下山し、橋の確保と逃げ出した民間人の足止めを急いだ。
取り急ぎ行わなければならないのが、車輌で移動した民間人を島から出さない事だ。
万が一敵が車輌で逃亡を図った際にと用意した部隊が橋を封鎖するのが先か、車輌が通過するのが先か。
無線が上手く繋がってくれていることを願うばかりである。

『橋の封鎖、完了いたしました!通過車輌は今のところいません!』

物の数分で封鎖が完了したことに驚きと感動を覚え、兵士達の士気が高まる。
今なら間に合う。
仲間を殺した敵と邂逅し、仇を討てる。
事件の終わりが見えてきたことにより、兵士達はこれまで以上に慎重に、そして早急に行動を起こした。

山から下りてきた五〇人は半分に分かれ、一方は走って逃げる市民を追い、一方は陽動作戦の可能性を警戒して友軍の周囲に警戒の目を向けた。
市民に紛れていた兵士達はセダンに分乗し、敵を追うことにした。

三人の兵士が残り、殺されたグレーボヴィチの死体を死体袋に詰め、火葬場の中にある死体安置所に運んだ。
そこで手がかりになりそうな物を探し、仲間に伝えることで犯人像をより明確にする狙いがあった。
ステンレス製の台の上に寝かされて徐々に体温が低下していく死体を見つめ、バルトロメイ・アスタは慎重にアイスピックを引き抜いた。
赤黒い血がどろりと溢れ出し、死体袋の中に溜まっていく。
抜き取ったアイスピックをビニール袋に詰め、死体に何か残されていないかを調べようと、死体を袋から出して、死体が血で汚れないように気をつけつつ、体の傷を探していく。

ふと、誰かの視線を感じて顔を上げる。

だが誰もいない。
死体安置所には三人。
他の二人は死体に視線を向け、熱心に探し物をしている。
気のせいだと思い、再び視線を死体に向けた。

鈍い銃声が二つ、安置所に響いた。

「なっ?!」

目の前の死体が二つになっていたことも驚きだったが、彼に銃腔を向ける人物が若い女性である事にも驚いた。
鳶色の瞳は鋭い眼光を放ち、夜のように黒い髪は後ろで一つに束ね、長身の体を包むのは黒い喪服。
まるで地獄からの使者だ。
サプレッサーを付けたグロックの銃腔は彼女の瞳と同じく、静かに彼を睨めつけているだけだが、何よりも雄弁な存在だった。

この女性がイルトリア人であることは、言葉を聞かずともその雰囲気だけで十分に伝わった。
まさか、彼らが追っていたのがこれほどまでに若く美しい女性であるとは、夢にも思っていなかった。

この場に残っている友軍は三人だけ。
銃声は室外に漏れたとしても、物を叩く程度のそれに減っているだろうから、誰かに聞かれた可能性は少ない。
助けは期待できない。


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